説明

吸音パネル

【課題】従来よりも排水性の向上した吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音パネル10は、前面板20と、前記前面板20に対向する背面板22と、前記前面板20と前記背面板22とを繋ぐ底面板12と、を備えるとともに、前記前面板20、背面板22及び底面板12によって形成される収容空間29の液体を排出する排出口44が設けられたハウジング16を備える。さらに、前記収容空間29に収容されるとともに、前記排出口44まで延設される延設部46を有する吸音材18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音壁等に使用される吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高速道路、一般道路及び鉄道での車両走行に伴う騒音を防止するため、これらの道路や線路の側壁として防音壁が使用されている。防音壁は吸音パネルと呼ばれる部材を複数積層させることによって形成される。
【0003】
例えば、特許文献1及び図8には、従来の吸音パネル100が開示されている。吸音パネル100は、ハウジング110と吸音材114を含んで構成される。ハウジング110は吸音材114を収容する収容部材である。また、ハウジング110の前面板102にはガラリまたはグリルと呼ばれる開口部108が形成される。開口部108からハウジング110内部に伝播した騒音は、ハウジング110内の吸音材114によって吸収減衰される。
【0004】
吸音材114は、グラスウール等の繊維材料から構成されており、吸水性を有している。したがって、車両の水はねや風による雨水の巻上げ等により開口部108を経由して吸音材114に付着した液体は、そのまま吸音材114に吸収される。吸音材114に吸収された液体は、吸音材114の底面側に移動してやがて吸音材114から滴下する。この滴下した液体をハウジング110外に排出するために、ハウジング110には排出口116が設けられている。例えば図8では、前面板102の被締結部118と底面板106の被締結部120の間隙を排出口として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3167392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、排出口116を設けても、吸音材114に含まれる液体が排出口116から排出されずにハウジング110内に留まる場合がある。例えば、図8では、底面板106の形状が、排出口116を頂点としてそこから下方に傾斜するスロープ状に形成されている。この場合、吸音材114から滴下した液体は、排出口116から排出されるよりも寧ろ底面板106を伝って下方に流れ、底面板106と背面板104との折り曲げ部122に溜まってしまう。そこで、本発明は、従来よりも排水性の向上した吸音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、吸音パネルに関するものである。当該吸音パネルは、前面板と、前記前面板に対向する背面板と、前記前面板と前記背面板とを繋ぐ底面板と、を備えるとともに、前記前面板、背面板及び底面板によって形成される収容空間の液体を排出する排出口が設けられたハウジングを備える。さらに、前記収容空間に収容されるとともに、前記排出口まで延設される延設部を有する吸音材を備える。
【0008】
ここで、前記排出口は、前記底面板を下にした前記吸音パネルの正立状態において、前記吸音材の底部より下方に位置するように設けられていることが好適である。また、前記延設部は、前記吸音材の底部から前記排出口まで延設されていることが好適である。
【0009】
また、前記前面板、背面板及び底面板の少なくとも2つに互いを締結するための被締結部が設けられていることが好適である。この場合において、前記被締結部は、前記延設部と、前記延設部の潰れを防止するスペーサを挟んだ状態で締結されていることが好適である。さらに、一方の前記被締結部と他方の前記被締結部との間隙によって前記排出口が形成されることが好適である。
【0010】
また、本発明の一つの態様は、吸音パネルに関するものである。当該吸音パネルは、前面板と、前記前面板に対向する背面板と、前記前面板と前記背面板とを繋ぐ底面板と、を備えるとともに、前記前面板、背面板及び底面板によって形成される収容空間の液体を排出する排出口が前記底面板に設けられたハウジングを備える。また、前記収容空間に収容されるとともに、前記底面板を下にした前記吸音パネルの正立状態において、前記排出口の上まで延設される延設部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも吸音パネルの排水性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る吸音パネルの構成を例示する斜視図である。
【図2】防音壁の組み立て工程を例示する図である。
【図3】本実施の形態に係る吸音パネルの構成を例示する斜視断面図である。
【図4】本実施の形態に係る吸音パネルの構成を例示する分解図である。
【図5】本実施の形態に係る吸音パネルの構成を例示する側面断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における吸音パネルの別例の構成を示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における吸音パネルの別例の構成を示す側面断面図である。
【図8】従来の吸音パネルを例示する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本実施の形態に係る吸音パネル10を例示する。以下、図1〜図7では、底面板12を下にした正立状態の吸音パネル10を示す。図2に示すように、吸音パネル10は主に正立状態にて複数積層され、これによって防音壁14が組み立てられる。
【0014】
図1に戻り、吸音パネル10は、ハウジング16と吸音材18(図3参照)を含んで構成される。ハウジング16は、吸音材18を収容する収容部材である。ハウジング16は、前面板20、背面板22、底面板12を含んで構成される。
【0015】
前面板20は、防音壁14の組み立ての際に、車両等の騒音源に対面するように配置される。前面板20にはガラリまたはグリルと呼ばれる開口部24が設けられている。この開口部24を介してハウジング16内の吸音材18に騒音を吸収させる。このことから、吸音性能を確保する上で、前面板20に占める開口部24の割合は高い方が好適である。例えば、前面板20に占める開口部24の割合は70%以上80%以下とすることが好適である。
【0016】
背面板22は、前面板20に対向している。ハウジング16に収容される吸音材18を固定するために、背面板22に吸音材18を押さえる凸部25を設けてもよい。また、底面板12は、前面板20と背面板22とを繋いでいる。前面板20、背面板22及び底面板12によって吸音材18を収容するための収容空間29(図3参照)が形成される。
【0017】
防音壁14の組み立ての際に、吸音パネル10が積層されて使用されることから、上層の吸音パネル10の重量に抗して形状を維持し得るような剛性材料からハウジング16を構成することが好適である。例えば、ハウジング16は金属材料から構成され、具体的にはアルミニウム板やめっき鋼板等が使用される。また、剛性を高めるために、前面板20、背面板22及び底面板12に加えて、前面板20と背面板22を繋ぐ側面板26と天面板28とを含んでハウジング16を構成してもよい。この場合、隙間なく吸音パネルを積層させるために、底面板12と天面板28との形状を略同一にすることが好適である。
【0018】
また、ハウジング16の成型を容易にするために、図4に示すように、ハウジング16を単一部材から構成する代わりに、複数の部品から構成するようにしてもよい。この場合、それぞれの部品同士を締結するために、各部品には被締結部を設けることが好適である。
【0019】
例えば図4においては、ハウジング16を、前面板ユニット30、背面板ユニット32及び2つの側面板ユニット34から構成している。前面板ユニット30は、前面板20と天面板28を一体にしたユニットである。さらに、隣接するユニットと締結するための被締結部36A〜36Cが設けられている。また、背面板ユニット32は、背面板22と底面板12を一体にしたユニットである。さらに、隣接するユニットと締結するための被締結部38A〜38Cが設けられている。また、側面板ユニット34は、側面板26と被締結部42A、42Bが設けられている。ハウジング16の組み立ての際には、前面板ユニット30の被締結部36A、36Bと背面板ユニット32の被締結部38A、38Bとをそれぞれリベット等の締結手段40(図1参照)で締結する。また、側面板ユニット34の被締結部42Aと前面板ユニット30の被締結部36Cとを締結するとともに、側面板ユニット34の被締結部42Bと背面板ユニット32の被締結部38Cとを締結する。
【0020】
また、図3に示すように、ハウジング16には、ハウジング16内の収容空間29内の液体をハウジング16外に排出する排出口44が設けられている。ここで、吸音材18から滴下される液体を効率よく排出するために、吸音パネル10の正立状態において、吸音材18の底部47よりも下方に排出口44を設けることが好適である。例えば図3では、前面板ユニット30の被締結部36Aと背面板ユニット32の被締結部38Aとの間隙を排出口44として利用している。
【0021】
吸音材18は、吸音性の材料から構成される。例えば、ウレタン等のスポンジ状の材料を使用してもよい。また、ポリエステルやグラスウール等の繊維材料を袋状のフィルム内に収容したものを使用してもよい。ここで、繊維材料を収容するフィルムは、フッ素樹脂等の、耐候性に優れた材料を用いることが好適である。
【0022】
また、吸音材18は、ハウジング16の収容空間29に収容可能な形状であり、例えば略板形状であってよい。また、前面板20の開口部24から入って来る騒音を漏れなく吸収するため、吸音材18は、開口部24を覆うようにハウジング16内に収容されていることが好適である。
【0023】
さらに吸音材18は、ハウジング16の排出口44まで延設される延設部46を備えている。上述したように、吸音材18は、スポンジ状の材料や繊維材料から構成されており、吸水性を有している。したがって、車両の水はねや風による雨水の巻上げ等により開口部24を経由して吸音材18に付着した液体は、そのまま吸音材18に吸収される。この液体は、延設部46に沿って流れて排出口44から排出される。このように、延設部46を吸音材18内の液体の導管として利用することでハウジング16内の排水性が向上する。ここで、吸音パネル10の正立状態において、吸音材18の底部47よりも排出口44を下方に設けるとともに、吸音材18の底部47から排出口44まで延設部46を延設させることが好適である。このような構成とすることで、吸音材18内の液体の多くを延設部46に誘導するとともに、排出口44から排出することができる。
【0024】
また、延設部46が排出口44から外れてしまわないように、延設部46を排出口44に固定することが好適である。例えば、ハウジング16の2つの締結部の間隙を排出口44として利用している場合には、2つの締結部の間に延設部46を挟んだ上で締結する。図3においては、前面板ユニット30の被締結部36Aと背面板ユニット32の被締結部38Aとの間に延設部46を挟んだ上で、締結手段40で被締結部36A及び38Aを締結している。
【0025】
ここで、2つの被締結部を締結する際に、その間に挟まれた延設部46が潰れてしまう場合がある。延設部46が潰れると、その分液体の排出が滞るおそれがある。そこで、図5に示すように、延設部46の潰れを防止するスペーサ50を挟んだ状態で2つの被締結部を締結することが好適である。スペーサ50は例えば延設部46の厚さT以上の厚さを有している。さらに、被締結部と同等の剛性を備えていることが好適である。例えば、被締結部と同一材料から構成されていることが好適である。
【0026】
なお、上述の実施の形態では、2つの被締結部の隙間を排出口44として利用していたが、この形態に限らない。例えば、開口部24の特定のガラリを排出口44として利用してもよい。具体的には図6に示すように、開口部24の最下部のガラリ52から延設部46を引き出してもよい。
【0027】
また、上述の実施の形態では、延設部46を排出口44まで延設させていたが、この形態に限られない。例えば、吸音パネル10の正立状態において、延設部46の液体が確実に排出口44に滴下されればよい。具体的には図7に示すように、底面板12に排出口44を設けるとともに、吸音パネル10の正立状態において、延設部46の端部が排出口44の上まで延設するように延設部46を構成する。こうすることで、延設部46を流れる液体は延設部46から排出口44に滴下される。なお、吸音材18の液体を効率よく排出口44に導くために、吸音材18の底部47から排出口44に向かって延設部46を延設させることが好適である。
【符号の説明】
【0028】
10 吸音パネル、12 底面板、14 防音壁、16 ハウジング、18 吸音材、20 前面板、22 背面板、24 開口部、25 凸部、26 側面板、28 天面板、29 収容空間、30 前面板ユニット、32 背面板ユニット、34 側面板ユニット、36 前面板ユニットの被締結部、38 背面板ユニットの被締結部、40 締結手段、42 側面板ユニットの被締結部、44 排出口、46 延設部、47 吸音材の底部、50 スペーサ、52 最下部のガラリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、前記前面板に対向する背面板と、前記前面板と前記背面板とを繋ぐ底面板と、を備えるとともに、前記前面板、背面板及び底面板によって形成される収容空間の液体を排出する排出口が設けられたハウジングと、
前記収容空間に収容されるとともに、前記排出口まで延設される延設部を有する吸音材と、
を備えることを特徴とする、吸音パネル。
【請求項2】
請求項1記載の吸音パネルであって、
前記排出口は、前記底面板を下にした前記吸音パネルの正立状態において、前記吸音材の底部より下方に位置するように設けられ、
前記延設部は、前記吸音材の底部から前記排出口まで延設されていることを特徴とする、吸音パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸音パネルであって、
前記前面板、背面板及び底面板の少なくとも2つに互いを締結するための被締結部が設けられ、
前記被締結部は、前記延設部と、前記延設部の潰れを防止するスペーサを挟んだ状態で締結され、
一方の前記被締結部と他方の前記被締結部との間隙によって前記排出口が形成されることを特徴とする、吸音パネル。
【請求項4】
前面板と、前記前面板に対向する背面板と、前記前面板と前記背面板とを繋ぐ底面板と、を備えるとともに、前記前面板、背面板及び底面板によって形成される収容空間の液体を排出する排出口が前記底面板に設けられたハウジングと、
前記収容空間に収容されるとともに、前記底面板を下にした前記吸音パネルの正立状態において、前記排出口の上まで延設される延設部を有する吸音材と、
を備えることを特徴とする、吸音パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−83112(P2013−83112A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224501(P2011−224501)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(511245983)有限会社勝公 (1)
【出願人】(511245994)小田鐵網株式会社 (1)
【出願人】(511246005)有限会社ナクス (1)
【Fターム(参考)】