説明

吸音及び吸振用低密度ポリウレタンフォームの製造方法

吸音及び吸振用途において良好に機能する可とう性ポリウレタンフォームは各々のヒドロキシル当量が1200〜3000でありかつ少なくとも70%の第一級ヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオールオキシドの混合物から製造される。エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの5〜80質量%は公称で二官能価であり、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの0.5〜20質量%は公称官能価が4以上であり、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの残部は1.5質量%以上であるが、公称で三官能価である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年12月29日に出願された米国仮特許出願第61/290,604号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は低密度吸音及び吸振性ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
車室の騒音が自動車乗客の快適性経験の主な要因なので、騒音及び振動の管理は自動車製造者にとって重要な課題である。したがって、騒音及び振動軽減手段が通常に自動車に組み込まれる。これらの軽減手段は、しばしば、ポリウレタンフォームであり、そのフォームは、たとえば、座席の目的などのある機能目的、又は、ある美的目的を発揮することが要求されうる。座席は車両内の吸音の50%までを示すことができ、そしてヘッドライナー及び計器パネルなどのトリム部品はさらなる音を吸収する。これらの特定の部品はその特定の用途のために要求される物理的特性及びその他の性能特性を有しなければならない。したがって、ほとんどの場合には、騒音及び振動吸収性はフォームの物理的特性を犠牲にすることはできない。
【0004】
製造者は常に製造コストを低減しようとしているので、もちろん、コストは別の考慮点である。フォーム製品でこれを行うための1つの方法はその密度を低減することである。というのは、所与の体積の部品を製造するのに、より少量の原料が必要だからである。ある製造者は、現在、これらの製品のフォーム密度を約10%低減することを望んでおり、約44〜50kg/mから約36〜42kg/mに低減することを望んでいる。
【0005】
これを達成するための最も単純でかつ最も経済的なアプローチは配合物中の水の量を増加することである。水はイソシアネート基と反応し、二酸化炭素を放出し、その二酸化炭素は発泡性ガスを形成する。配合物中の水の量を増加させることにより、追加の水と反応するために十分な量のイソシアネート基が存在するかぎり、より多量の二酸化炭素が形成されうる。
【0006】
水とイソシアネート基との反応は、また、ポリイソシアネート分子間に尿素結合を形成することにより成長ポリマー鎖を延長する。水−ポリイソシアネート反応は、それ自体で、非常に剛性でかつ脆いポリマーを形成する。この脆さを克服しそして可とう性でかつ弾力性のある材料を製造するために、高い当量のポリオールをフォーム配合物中に添加する。ポリオール上のヒドロキシル基はイソシアネート基と反応して、ウレタン結合を形成する。ポリオールとイソシアネート基との間で起こるウレタン生成反応は、それゆえ、水−イソシアネート反応との競争になる。これらの反応は、高分子量ポリマー鎖の構築及び二酸化炭素の発生が適切なシーケンスにおいて進行するようにバランスされねばならない。ポリオールの量と比較して、水の量を増加させると、これらの反応の間のバランスを維持することが困難になる。高含水量の系では、処理条件の小さい変動、たとえば、触媒又は成分の量又はモールド温度の小さい変動に敏感になる傾向がある。したがって、これらの高含水量の配合物では、製造設備において良好な品質のフォームを一貫して製造することは益々困難になる。フォームは大きな空隙及び不完全なモールド充填の領域を、特にショットの最後に有する傾向がある。さらに、しばしば、成形品ごとにフォーム品質の大きな変動があり、そのことも、処理の不安定性を示す。より高い密度では、モールドをオーバーパッキングすること(すなわち、モールドをかろうじて充填するのに要求されるよりも多量のフォーム配合物を射出すること)により、これらの問題が幾分か克服されうる。しかし、フォームの密度が低減されると、成形フォーム密度がフォーム配合物のいわゆる最少充填密度により近づいていくので、オーバーパッキングはほとんど又は全く起こりえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高含水量のプロセスにおける、弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームの製造のための組成物であって、低密度(42kg/m以下)及び良好な吸音特性を有し、かつ、加工が容易であるフォームを提供するものを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1つの態様において、各々のヒドロキシル当量が1200〜3000でありかつ少なくとも70%の第一級ヒドロキシル基を含む、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物であって、前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの5〜80質量%は公称で二官能価であり、前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの0.5〜20質量%は公称官能価が4以上であり、そして前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの残部は1.5質量%以上であるが、公称で三官能価である、混合物である。
【0009】
本発明は、また、第一の態様のエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物をポリイソシアネートとブレンドすること、及び、得られたブレンドを、該ブレンドが弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを形成するように硬化するのに十分な条件に付すことを含む、ポリウレタンの調製方法である。
【0010】
本発明のポリオール混合物は弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを高含水量の配合物中で調製するのに特に適する。それゆえ、本発明は、第一の態様のエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物を、ポリイソシアネートと、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシド100質量部当たり4〜7質量部の水の存在下にブレンドすること、及び、得られたブレンドを、該ブレンドが弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを形成するように硬化するのに十分な条件に付すことを含む、弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームの調製方法にも関する。
【0011】
本発明のポリオール混合物を含むフォーム配合物は、高含水量の配合物中であっても、容易に加工される傾向があり、42kg/m以下の密度のフォームを生じることが発見された。その理由は明確に理解されるものでなくそして予期されないものである。その現象はポリオール混合物の平均官能価に直接的に関係されないようである。というのは、良好な結果では、3種のすべてのタイプのポリオールが存在しているかぎり、平均官能価は約2.3という低い値から3.0を大きく超える範囲まで非常に大きく変動してよいからである。その現象はポリオール混合物が特定の可とう性フォームを調製するために使用されるときに観測されるよりも若干遅い反応速度であることに関連されうる。このことは、また、個々のポリオールの反応性は、混合物がジオール及びトリオール成分のみの混合物よりもゆっくりと反応することが期待されないような反応性であることから、非常に驚くべきことである。にもかかわらず、ポリオール混合物を含むフォーム配合物は、36〜42kg/mの範囲の密度であっても、また、モールドのオーバーパッキングがないときでさえ、一貫して良好な品質の成形品を生じることができる。
【0012】
さらに、フォームは吸音及び吸振用途において良好に機能する。
【0013】
ポリオール混合物は少なくとも3種の異なるエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドを含む。その各々はヒドロキシル当量が少なくとも1200であり、好ましくは少なくとも1500であり、より好ましくは少なくとも1700であり、3000以下であり、好ましくは2500以下であり、そして最も好ましくは2200以下である。混合物中の成分ポリオールは好ましくは各々のヒドロキシ当量が互いに300の範囲内にある。その各々は少なくとも70%の第一級ヒドロキシル基、好ましくは少なくとも75%の第一級ヒドロキシル基を有し、残部は第二級ヒドロキシル基である。第一級ヒドロキシル基の割合は100%までであってよく、又は、90%までであってよい。エチレンオキシドキャップは重合したオキシエチレンのブロックであり、それは各場合にポリオールの5〜30質量%を構成することができる。
【0014】
エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの5〜80質量%は公称で二官能価である。「公称で」二官能価とは、ポリオールが二官能価の出発化合物から調製されることを意味する。ポリプロピレンオキシドは、重合されたときに、特に、強塩基条件下にアニオン重合プロセスにおいて重合されたときに、ある量の一官能性不純物を生成することはよく知られている。結果として、ポリ(プロピレンオキシド)の実際の平均官能価は公称の官能価よりも若干低い傾向がある。本発明の目的では、官能価はすべて公称官能価であり、ポリオールの官能価はその出発化合物の官能価と同一であるものと考えられることを意味する。
【0015】
二官能エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの合計質量の5〜25%を構成し、なおもより好ましくは、その5〜15質量%を構成する。
【0016】
エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、そしてなおもより好ましくは1〜5質量%は公称で四官能価以上である。これらの成分の官能価は8又はさらにはそれ以上であることができ、好ましい官能価は6〜8である。
【0017】
エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドポリオールの残部は公称で三官能価である。三官能価ポリオールは混合物の少なくとも1.5質量%を構成すべきであり、好ましくは10〜94.5質量%、より好ましくは80〜94.5質量%を構成する。
【0018】
ポリオール混合物は成分ポリオールを別々に製造しそしてそれらをブレンドすることにより調製されうる。開始剤化合物の混合物をアルコキシル化することにより混合物(又は成分ポリオールのサブコンビネーション)を製造することも可能である。このような出発化合物の混合物は二官能価スターター及び三官能価スターターの混合物、二官能価スターター及び四官能価以上のスターターの混合物、三官能価スターター及び四官能価以上のスターターの混合物、又は、二官能価スターター、三官能価スターター及び四官能価以上のスターターの混合物であることができる。高官能価(4+)スターターは、特に、しばしば、重合プロセスを促進するために、二官能価もしくは三官能価スターターと混合される。
【0019】
エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの得られた混合物は1種以上の有機ポリイソシアネートとの反応を通じて、種々のポリウレタンポリマーを調製するのに有用である。「ポリウレタン」ポリマーは、ウレタン基を有し、場合により、尿素基などの他の基を有するポリマーを示すための短縮語として本明細書中に使用される。ポリウレタンを製造するために使用される特定の製造プロセスは本発明にとって重要とは考えられない。それゆえ、モールディング、キャスティング、バルク重合、分散重合又は溶液重合などの種々の方法は用いられてよい。同様に、非気泡性エラストマー、微孔性エラストマー、構造フォーム、剛性断熱フォーム、粘弾性フォーム、可とう性フォーム(成形タイプ又はスラブストックタイプの両方)及び種々のタイプの強化ポリマーなどを含む広い範囲のポリウレタン製品は調製されうる。スラブストックフォーム製造プロセスなどの発泡プロセス、特に、成形フォーム製造プロセスは特に興味のあるプロセスである。弾性力のある可とう性ポリウレタンフォームは最も興味深い。
【0020】
ポリオール混合物と反応してポリウレタンを製造する有機ポリイソシアネートは芳香族、脂環式又は脂肪族イソシアネートであることができる。芳香族ポリイソシアネートは好ましく、これらの中で、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び/又はポリマーMDI(PMDI)は、一般的に、より大きな反応性、入手可能性及びコストに基づいて好ましい。MDIは2,4’−異性体、4,4’−異性体、又はそれらのある混合物であってよい。PMDIは、一般に、1種以上のポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びあるMDIの混合物であり、混合物のMDIの一部は、2,4−異性体、4,4’−異性体のいずれか又は両方であってよい。ポリイソシアネートは、一般的に、約0.6〜約1.5であり、好ましくは0.7〜1.2であり、そしてなおもより好ましくは0.7〜0.9であるイソシアネートインデックスを提供するのに十分な量で使用されが、これらの範囲外の値が特定の状況で有用であることができる。イソシアネートインデックスはポリウレタンを製造するために使用される反応混合物中のイソシアネート反応性基/イソシアネート基の当量比に等しい。
【0021】
ポリオール混合物と有機ポリイソシアネートとの間の反応は、使用される特定の製造プロセスに有用であるか、又は、得られるポリマーに所望の特性を付与するために有用であることができる、様々なタイプの他の材料の存在下で行うことができる。これらとしては、たとえば、触媒、発泡剤、セルオープナー、界面活性剤、架橋剤、連鎖延長剤、充填剤、着色剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、強化繊維、酸化防止剤、防腐剤、酸スカベンジャーなどが挙げられる。
【0022】
本発明のポリオール混合物は、弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを製造するのに有用である。これは、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシド100質量部あたりに4〜7質量部、特に4.5〜6質量部の水を含む高含水量の配合物中で特に利点を提供する。ポリウレタンフォームは、水の存在下に、有機ポリイソシアネートとポリオール混合物を反応させることによって、これらの高含水量の配合物から製造される。フォームは、スラブストック(フリーライズ)プロセス又はクローズドモールド内で製造されうる。成形プロセスは、自動車の座席、ダッシュボード、計器パネル及び他の自動車内装トリム部品などの製品を製造するのに好ましい。
【0023】
様々な他の成分は、上述のポリイソシアネート、ポリオール及び水に加えて、弾力性のある可とう性フォームを製造するためのフォーム配合物中に存在することができる。
【0024】
少なくとも1種の触媒は、通常、フォーム配合物中に存在するであろう。1つの好ましいタイプの触媒は第三級アミン触媒である。第三級アミン触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの間の反応に対して触媒活性を有しそして少なくとも1個の第三級アミン基を有する任意の化合物であることができる。代表的な第三級アミン触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、1,4−ジアゾビシクロ−2,2,2−オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン、4,4'−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−セチルN,N−ジメチルアミン、N−ココ−モルホリン、N,N−ジメチルアミノメチルN−メチルエタノールアミン、N,N,N'−トリメチル−N'−ヒドロキシエチルビス(アミノエチル)エーテル、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)N−イソプロパノールアミン、(N,N−ジメチル)アミノエトキシエタノール、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7、N,N−ジモルホリノジエチルエーテル、N−メチルイミダゾール、ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミノ−2−プロパノール、テトラメチルアミノビス(プロピルアミン)、(ジメチル(アミノエトキシエチル))((ジメチルアミン)エチル)エーテル、トリス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、1,2−エチレンピペリジン及びメチルヒドロキシエチルピペラジンが挙げられる。
【0025】
アミン開始された低(最大で200)ヒドロキシル当量のポリオールも有用な触媒である。これらとしては、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミンにより開始されたポリオールが挙げられる。
【0026】
フォーム配合物は上述した第三級アミン触媒に加えて、又は、その代わりとして、1種以上の他の触媒を含むことができる。これらのうちで特に興味深いのは、スズカルボキシレート及び四価のスズ化合物である。これらの例としては、オクタン酸第一スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジメルカプチド、ジアルキルスズジアルキルメルカプト酸、ジブチルスズオキシド、ジメチルスズジメルカプチド、ジメチルスズジイソオクチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0027】
触媒は、通常、少量で使用される。たとえば、使用する触媒の合計量は、エチレンオキシドでキャップされたポリオール100質量部当たり0.0015〜5、好ましくは0.01〜1質量部であることができる。スズ触媒は、通常、これらの範囲の下限に向いた量で使用される。
【0028】
発泡性組成物は架橋剤を含んでよく、もし使用するならば、好ましくは、エチレンオキシドでキャップされたポリオール100質量部当たり2質量部以下、0.75質量部以下、又は、0.5質量部以下の少量で使用される。架橋剤は、1分子当たり少なくとも3個のイソシアネート反応性基を含み、イソシアネート反応性基当たりの当量が30〜約125、好ましくは30〜75である。グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリトリトールなどの化合物も使用することができるが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアミノアルコールは好ましいタイプである。
【0029】
界面活性剤は、好ましくは、膨張しそして硬化するときにフォームを安定化するのを支援するためにフォーム配合物中に含まれる。界面活性剤の例としては、たとえば、プロピレングリコールに対するプロピレンオキシド、次いで、エチレンオキシドの逐次付加により調製されるもの、固体又は液体オルガノシリコーン、及び、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテルなどの、非イオン性界面活性剤及び湿潤剤が挙げられる。長鎖アルキル酸硫酸エステル、アルキルスルホン酸エステル及びアルキルアリールスルホン酸のアルカノールアミン塩及び第三級アミンなどのイオン性界面活性剤も使用することができる。固体又は液体オルガノシリコーンと同様に、プロピレングリコールにプロピレンオキシド、次いで、エチレンオキシドを逐次付加することによって調製される界面活性剤は好ましい。有用なオルガノシリコーン界面活性剤の例としては、Tegostab(Goldschmidt Chemical Corp.の商標)B-8729及びB-8719LF、ならびに、Osi SpecialtiesからのNiax(商標)L2171界面活性剤などの市販のポリシロキサン/ポリエーテルコポリマーが挙げられる。非加水分解性液体オルガノシリコーンはより好ましい。界面活性剤が使用されるときには、それは、通常、エチレンオキシドでキャップされたポリオール100質量部当たり0.0015〜1質量部の量で存在する。
【0030】
セルオープナーは、好ましくは、フォーム配合物中に存在する。セルオープナーは重合反応の間に気泡壁を破壊し、そして連続気泡構造の形成を促進するように機能する。高い連続気泡含有分(数を基礎に少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%)は、通常、騒音及び振動吸収用途で使用されているフォームにとって有利である。有用なタイプのセルオープナーとしては、分子量が5000以上である、エチレンオキシドのホモポリマー又はエチレンオキシドと少量割合のプロピレンオキシドとのランダムコポリマーが挙げられる。これらのセルオープナーは、好ましくは、ヒドロキシル官能価が少なくとも4であり、より好ましくは少なくとも6である。セルオープナーは、好ましくは、エチレンオキシドでキャップされたポリオールの混合物100質量部当たりに約0.5〜約5質量部の量で使用される。
【0031】
セルオープナー、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシド混合物以外に、フォーム配合物は、好ましくは、エチレンオキシドでキャップされたポリオール100質量部当たりに10質量部以下、より好ましくは2質量部以下の、当量が500以上である任意のポリオールを含む。当量が500以上である他のポリオールがフォーム配合物中に存在しないことが最も好ましい。
【0032】
正確に2個のイソシアネート反応性基を有し、そしてイソシアネート反応性基当たりの当量が499以下、好ましくは250以下である化合物を意味する連鎖延長剤も存在してよい。連鎖延長剤は、存在する場合は、通常、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物100質量部当たり10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは、2質量部以下などの少量で使用される。適当な連鎖延長剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチルトルエンジアミン、アミン末端ポリエーテル、たとえば、Huntsman Chemical CompanyのJeffamine D-400、アミノエチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1,5-ジアミノ-3-メチルペンタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、それらの混合物などが挙げられる。
【0033】
発泡反応は、全体のコストを低減し、製品に難燃性、荷重支持特性及びその他の物理特性を向上させることができる充填材の存在下で行うことができる。充填材はポリウレタンフォーム配合物の合計質量の約50%までを構成することができる。適当な充填材としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト、大理石、硫酸バリウム(バライト粉)、粉砕ガラスグラナイト、粉砕ガラス、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、カーボン、アラミド、シリカ、シリカ-アルミナ、ジルコニア、タルク、ベントナイト、三酸化アンチモン、カオリン、石炭ベースのフライアッシュ及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0034】
弾力性のある可とう性フォームを製造するために使用されるポリイソシアネートの量は、通常、0.6〜1.20のイソシアネートインデックスを提供するのに十分な量であるが、より広い範囲が特殊な場合に使用できる。好ましい範囲は 0.7〜1.05であり、より好ましい範囲は0.75〜1.05である。
【0035】
弾力性のある可とう性フォームはスラブストックプロセス又は成形プロセスにおいて本発明により製造されうる。スラブストックフォームは、使用に要求される形状及びサイズに切断される大きなバンとして形成される。成形プロセスはいわゆるホット成形プロセス又はコールド成形プロセスのいずれかであることができる。成形型中でフォームの表面上に一体化スキンを形成することができる。フォーム配合物を導入する前に成形型中にフィルム、布帛、皮革又は他のカバー材を挿入して、望ましい外観表面を有するフォームを製造することができる。
【0036】
本発明によるエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物を含むポリウレタンフォーム配合物は、特に、上述のとおりの高含水量の配合物でうまく加工(処理)されうることが判った。良好な加工(処理)とは、本明細書において、工業設備で良好な品質のフォームを一貫して製造することができるフォーム配合物の能力を指す。良好な加工(処理)は、フォームが長時間にわたって製造されるときに、一貫して均一な気泡構造、完全なモールド充填性、一貫して良好な表面外観、一貫したフォーム密度及びフォーム物理特性の一貫性により示される。本フォーム配合物は、他の高含水量フォーム配合物では有意な製品非一貫性をしばしば引き起こす、操作温度、触媒濃度その他のプロセス条件の小さな変化を許容する。
【0037】
フォームを潰して、気泡を開放することがしばしば好ましい。高い連続気泡含有分(数を基礎として少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%)は、通常、騒音及び振動吸収用途で使用されるフォームにとって有利である。
【0038】
弾力性のある可とう性フォームは、ASTM D−3574ボールリバウンド試験を用いて決定して弾力性を有するものであることを特徴とし、そのボールリバウンド試験は指定された条件でボールを落としたときに、フォームの表面からボールがリバウンドする高さを測定する。ASTM試験の下で、フォームは少なくとも40%、特に、少なくとも50%の弾力性を示す。フォームは、また、有利には、密度が2.0〜10ポンド/立方フィート(pcf)(32〜160kg/m)の範囲、好ましくは2.0〜2.65ポンド/立方フィート(pcf)(32〜42kg/m)の範囲である。密度はASTM D3574によって便利に測定される。
【0039】
フォームは、自動車座席及びダッシュボード、ヘッドライナー、計器パネル及びトリムなどの他の自動車内装品などの騒音及び振動吸収用途に特に有用である。フォームは1000〜4000Hzの範囲の周波数にわたって、下記の小キャビン試験での音圧の少なくとも10%を吸収する。
【0040】
比較サンプルA
配合ポリオール混合物を下記の成分を混合することにより調製する。
【0041】
【表1】

【0042】
40〜60℃に加熱された100cm×100cm×2.5cm試験成形型を装備した高圧衝突混合機械で、この配合ポリオールを、約32質量%のイソシアネート含有分のポリマーMDIと反応させる。イソシアネートインデックスは各場合に0.8である。
【0043】
得られるフォームはコア密度が44.4kg/mである。この配合物を変性して水含有量を5%に増加させ、40kg/m以下の密度のフォームを製造しようとするときに、良好な品質のフォームへと加工するのが困難になる。フォームは有意な表面欠陥又は悪い気泡構造を示し始める。
【0044】
例1〜4
下記の配合ポリオール配合物から0.8のイソシアネートインデックスで比較サンプルAと同一の一般様式で成形フォーム例1〜4を製造する。
【0045】
【表2】

【0046】
これらの4種のすべての配合物は非常に良好に加工されて、一貫した物理特性、均一な気泡構造及びあったとしてもほとんど少量でしか存在しない表面欠陥を有するフォームを一貫して製造する。
【0047】
フォームを粉砕して、気泡を開放し、コア密度をASTM D3574により測定する。引張強さ、引裂強さ、伸び率及び50%圧縮永久歪みをASTM D3574により測定する。フォームが音を吸収する能力を、挿入損失を測定するRenault Petit Cabine 試験により、500、1000、2000及び4000Hzで評価する。9つの拡声器を有するコンクリートベースは励起チャンバーを形成し、その励起チャンバーはレシービングチャンバーと0.8mmスチールシートにより分離されており、そこに、700×700×20mm試験サンプルを収納する。レシービングチャンバーは半無響性フードであり、それが伝達される音エネルギーの反射を抑制する。フードはマイクロフォンを装備している。拡声器はフィルタ処理されたホワイトノイズにより励起され、各試験周波数で約80dBの音圧レベルを生じる。レシービングチャンバーにおける音圧を、配置されたシートメタルディバイダのみにより測定する。その後、配置された試験サンプル及び5kg/m重レベルにより再び測定する。音圧差は挿入損失である。挿入損失が大きいほど、吸音が良好であることを示す。
【0048】
結果を下記の表1に示す。比較のために、比較サンプルAの物理特性試験の結果も示す。
【表3】

【0049】
本発明のフォーム例は、フォーム密度が10%以上低減されても、比較サンプルAの物理特性(引張り強さ、引裂き強さ、伸び率及び圧縮永久歪み)と非常に類似した物理特性を有する。本発明のフォームは、また、容易に加工され、そのことは非常に驚くべきことである。繰り返し製造したフォームサンプルはすべて良好な気泡構造を示しそして良好な成形型充填性を示す。本発明のフォーム例は、また、1000〜4000Hzの範囲の周波数にわたって、吸音を良好に行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々のヒドロキシル当量が1200〜3000でありかつ少なくとも70%の第一級ヒドロキシル基を含む、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの混合物であって、前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの5〜80質量%は公称で二官能価であり、前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの0.5〜20質量%は公称官能価が4以上であり、そして前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの残部は1.5質量%以上であるが、公称で三官能価である、混合物。
【請求項2】
前記エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドは各々のヒドロキシル当量が1700〜2200である、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
公称官能価が4以上であるエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドは公称官能価が6〜8である、請求項1又は2記載の混合物。
【請求項4】
二官能価のエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドはエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの合計質量の5〜15質量%を構成する、請求項1〜3のいずれか1項記載の混合物。
【請求項5】
公称官能価が4以上であるエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドはエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの1〜5質量%を構成する、請求項1〜4のいずれか1項記載の混合物。
【請求項6】
公称官能価が4以上である、公称で三官能価のエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドはエチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシドの80〜95質量%を構成する、請求項1〜5のいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の混合物をポリイソシアネートとブレンドすること、及び、得られたブレンドを、該ブレンドが弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを形成するように硬化するのに十分な条件に付すことを含む、ポリウレタンの調製方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の混合物を、ポリイソシアネートと、エチレンオキシドでキャップされたポリプロピレンオキシド100質量部当たり4〜7質量部の水の存在下にブレンドすること、及び、得られたブレンドを、該ブレンドが弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームを形成するように硬化するのに十分な条件に付すことを含む、弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームの調製方法。
【請求項9】
前記弾力性のある可とう性ポリウレタンフォームは密度が36〜42kg/mである、請求項8記載の方法。

【公表番号】特表2013−515837(P2013−515837A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547093(P2012−547093)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059162
【国際公開番号】WO2011/081793
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】