説明

吸音遮水不織布

【課題】開繊性,絡まり性を改善し、形態安定性に優れ、取り扱い時の変形もなく加工性も良好な自動車用フロアーマット等に用いる吸音遮水不織布を提供する。
【解決手段】撥水性繊維と非撥水性繊維と熱接着性繊維とを混繊して不織布を形成すると共に、該不織布を構成する撥水性繊維と他の繊維との混繊比率を10/90〜55/45の範囲とし、目付質量を200〜500g/m2、通気度を50.0〜300.0cc/cm2/sec、初期伸張弾性率を30〜1000N/5cm/100%の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用フロアーマット,玄関マット等に好適に用いられる吸音遮水不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用マット,玄関マット等では吸音層に水分が混入すると吸音性能を損なうし、浸透した底面の素材を傷めたり、湿度保持によるカビ等の繁殖を助長したりして好ましくない。そのためマット等に撥水能を付与することが検討され、種々の手段が提案されてきた。例えばマット本体の裏面に不織布を積層配置して不織布に撥水剤を含有した高分子接着剤を含浸させたもの(例えば特許文献1参照)、気孔形成用化合物を分散せしめた撥水剤含有高分子組成物を溶融状態で表皮材の裏面にラミネートすることによって裏打層を形成し、この裏打層中の気孔形成化合物を気泡化することによって裏打層に連続気泡構造を形成したもの(例えば特許文献2参照)などである。
【特許文献1】国際公開WO2004/058014号公報
【特許文献2】特開2004−159987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の吸音,遮水性マットは何れも不織布に対し撥水剤含有高分子化合物を含浸あるいはラミネートをしたものであり、裏材に短繊維層を使用し、その構成短繊維自身に撥水性を有するものを使用したものは見当たらない。
【0004】
そこで、本発明者は撥水性短繊維を使用した吸音,遮水性マットの形成について検討を行なった。その結果、撥水性短繊維は繊維の摩擦係数が低く、繊維の絡まりが悪いためにウエブの形成が難しいこと、そのため、たとえ形成してもウエブの形態保持性に難があることを知見した。また、更にウエブに吸音性能を付与するには繊維の繊度の組み合わせ、目付質量,厚さ,密度などが関係し、繊維の絡まり性など相反することがあって、撥水性と吸音性を両立させることが極めて困難であることも分かった。
【0005】
本発明は上述の如き諸事情をふまえ、不織布構成短繊維に着目して、特に撥水性短繊維に対し、熱接着性複合短繊維を含む非撥水性短繊維の混繊をはかると共に、好適な目付質量と、該目付質量下の特性を見出すことにより自動車マット,玄関マット等に好適な吸音性と撥水性を兼ね備えた不織布を提供することを目的とするものでる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的に適合する本発明は、先ず基本的に撥水性短繊維と非撥水性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊からなる不織布であって、該不織布を構成する撥水性短繊維と他の短繊維との混繊比率が10/90〜55/45の範囲であり、かつ目付質量が200〜500g/m2で、通気度が50.0〜300.0cc/cm2/sec、初期伸張弾性率が30〜1000N/5cm/100%の特性を有する吸音遮水不織布にある。
【0007】
ここで、上記不織布を構成する撥水性短繊維は、繊度が1.0〜20デシテックス(dtex)の範囲であることが好ましく、また、自身撥水性を有する繊維でもよく、ポリエステル,ナイロン等の通常撥水性を有しない繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理等により撥水性を付与せしめた繊維であってもよい。
【0008】
一方、不織布を構成する熱接着性複合短繊維としては、高融点樹成分を芯部とし、低融点樹脂成分を鞘部とする芯鞘構造で、鞘部成分の融点が80〜160℃の範囲であり、かつ該繊維の不織布構成繊維に占める混繊比率が5/95〜20/80の範囲であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
上記の如く撥水性短繊維に対し熱接着性複合短繊維を含む非撥水性短繊維を所定の配合比で混繊することにより撥水性短繊維により撥水能を付与すると共に、非撥水性短繊維の混繊により撥水性短繊維の欠点である開繊性や繊維間の絡まりを改善することができ、また熱接着性複合短繊維を混繊することにより繊維間の固定を良好として形態安定性を図ることができる。しかも、これらの改善にあたっては各短繊維の混繊比率が重要で、本発明における混繊比率は頗る有効であり、通気度,初期伸張弾性率を特定することにより良好な吸音性能,撥水性能を得ることが出来ると共に取り扱い時の変形も起こらず、加工性も良好である効用を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、更に本発明吸音遮水不織布の具体的態様について詳述する。本発明不織布は先ず、前述したように吸音能と遮水能を兼ね備えた不織布であり、撥水性短繊維と、非撥水性短繊維及び熱接着性複合短繊維を混繊し、形成することによって構成される。ここで、撥水性短繊維はポリエステル,ナイロンなどの通常繊維を撥水処理した繊維、あるいはポリエチレン,ポリプロピレン等の繊維自身、撥水能を有するものが含まれる。
【0011】
撥水処理は繊維の表面にシリコンあるいはフッ素樹脂加工することによって得ることができる。しかし、撥水処理した繊維は短繊維の摩擦係数が低く、繊維間の絡まり性に劣る難がある。この場合撥水能は摩擦係数で代用することができるので、摩擦係数0.05〜0.20の範囲が通常の目安とされる。撥水性短繊維の繊度としては1.0〜20.0デシテックス(dtex)の範囲が好ましく、1.0デシテックス未満ではマット自身が密となり、通気度が制御し難く、嵩高を制御し難いので好ましくない。一方、20デシテックスを超えると嵩高は制御し易いが、通気度は制御しにくいので好ましくない。
【0012】
次に非撥水短繊維は通常の繊維であって、繊維自身、撥水能を有しないものであり、前記撥水性短繊維の開繊性,絡まり性を改善するために混繊され、例えばナイロン,ポリエステル系繊維が挙げられる。この短繊維の繊度は前記撥水性短繊維と同じく1.0〜20.0デシテックス(dtex)の範囲が好ましく、1.0デシテックス未満ではマット自身、密になり通気度が制御しにくく、嵩高を制御しにくい。また20.0デシテックスを超えると嵩高は制御し易いが通気度は制御しにくい。
【0013】
一方、接着性複合短繊維は不織布の形態安定性を保持する上に有効であり、例えばポリエステル系樹脂,ポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン形樹脂,ポリアミド系樹脂の何れかの熱可塑性樹脂の高融点成分を芯とし低融点成分を鞘部とする芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。
【0014】
具体例としては、高融点ポリエステル成分(融点250℃〜270℃程度)と低融点ポリエステル成分(融点80℃〜160℃程度)の複合繊維、エステル/ナイロン複合繊維,ポリエステル/ポリエチレン複合繊維,ポリプロピレン/ポリエチレン等が挙げられ、特に高融点ポリエステルと低融点ポリエステルとの複合繊維は最も実用的である。熱接着性複合繊維は前述の如く高融点成分を芯とし、低融点成分を鞘とする芯鞘型が好ましく、サイドバイサイド型は接着面が反面となるので好ましくない。
【0015】
上記芯鞘型複合短繊維を構成する前記高融点成分の融点は低融点成分の融点より50℃以上高いことが好ましく、低融点成分の融点は80℃〜160℃の範囲にあることが好ましい。高融点成分の融点が低融点成分の融点より50℃未満であると繊維間の接着時、軟化して所望の通気度を得ることができない。また、低融点成分の融点が80℃未満であると繊維間の接着を実施する処理条件が難しく、耐熱性の面から好ましくない。低融点成分の融点が160℃を超えると他の高融点繊維の熱特性に影響し、接着を実施することで通気特性が変動するので好ましくない。なお、前記した撥水性短繊維と非撥水性短繊維の融点は上述の熱接着性複合短繊維に用いられる高融点樹脂あるいはそれと同等の融点を有することが望ましい。
【0016】
複合短繊維は繊度が1.0〜10.0デシテックス(dtex)の範囲であることが好ましく、1.0未満では繊維間の接着点が多くなり、不織布の形態保持には好ましいが、逆に不織布が密になり、通気度が制御しにくく、また嵩高も制御しにくくなるので好ましくない。一方、10.0デシテックスを超えると繊維間の接着点が少なくなり、嵩高は得られるが形態保持性に劣ることになる。
【0017】
本発明不織布は以上の説明の如く、撥水性短繊維,非撥水性短繊維,熱接着性複合短繊維を混繊することによって構成されるが、ここで重要なことは各繊維の混繊比率である。不織布を形成するウエブを作成するには繊維間の絡まり性が重要で、摩擦係数が低いと問題になる。また、不織布の形態保持性が悪くなる。ウエブを形成するには短繊維の均一開繊が必要で、ウエブの撥水性短繊維だけでは充分な絡まりが得られず、非撥水性短繊維を使用することにより開繊性や繊維の交絡を改善することができる。
【0018】
また、作成された不織布は取り扱い中に形態の保持がよくないニードル加工だけではこれを改善することができないので、形態を安定させるために接着性複合短繊維を混繊し、繊維間を接着固定することによって安定化を図ることが必要となる。即ち、開繊性や絡まり性、さらに形態保持安定の改善には上記撥水性短繊維,非撥水性短繊維,熱接着性複合短繊維を混繊することが必要で、かつ、有効な改善をはかるためにはこれら各繊維の混繊比率が重要な役割を有している。
【0019】
本発明においては、上記の混繊比率に対応するべく、先ず撥水性短繊維と接着性複合短繊維を含む非撥水性短繊維の混繊比率を10/90〜55/45の範囲となるようにした。換言すれば撥水性短繊維の比率を10〜55重量%の範囲で混繊せしめるようにした。これは、撥水性短繊維が10重量%未満であると不織布の適度な撥水能を得ることができず、撥水能に難を生じ、一方、55重量%を超えると撥水能は充分であるが、繊維間の絡着性が劣り、不織布の形態保持性を損なうことになるからである。従って上記15〜55重量%の範囲での混繊比率が効果的である。また非撥水性短繊維における熱接着性複合短繊維と通常の非撥水性短繊維との混繊比率も、熱接着性複合短繊維の比率によって不織布における繊維間接着、換言すれば形態保持性と通気度制御が異なるので重要な因子であり、本発明不織布の作成にあたっては非撥水性短繊維に対する熱接着性複合短繊維の混繊比率が5/95〜20/80の範囲が採用される。
【0020】
熱接着性複合短繊維が20重量%を超えると通気度制御が難しく、また5重量%未満では繊維間の接着が弱く、マットとしての形態保持性に劣るので好ましくない。従って熱接着性複合短繊維は少なくとも5〜20重量%混繊することが肝要である。。
【0021】
以上、本発明不織布の構成各繊維について述べて来たが、更に以上の繊維構成からなる不織布に吸音性,遮水性を付与するにあたっては以下の如き所要の各特性を具備せしめることが肝要である。このうち不織布に遮水性を付与せしめるには前記撥水性短繊維を混繊することによって得られるが、吸音性の付与には構成繊維の繊度の組み合わせ,目付質量,厚さ,密度などが関連を有しており、自動車マット,玄関マット等の裏材に用いられる不織布としては、その目付質量はマットの重量から200〜500g/m2が適正かつ有効である。
【0022】
不織布の目付質量が200g/m2未満では不織布としてのクッション性が乏しくなるので好ましくなく、500g/m2を超えると、クッション性能は十分にあるが、通気性の制御が困難となる。そこで本発明においては一応、目付質量を上記200g/m2〜500g/m2として特定し、吸音性能に関係する不織布特性である通気度を50.0〜300.0cc/cm2/secの範囲とした。
【0023】
通気度が50cc/cm2/sec未満ではマットの裏材として使用した場合、加工によって通気度が低下してしまって、通気性等の性能が低下し、また、通気度が300cc/cm2/secを超えると裏材として使用した場合、加工によって吸音性能や排水性能を充分に得ることができないので何れも不適である。
【0024】
また、本発明不織布は不織布取り扱い時における加工性を保持することも必要であり、そのためには初期伸張弾性率を30〜1000N/5cm/100%の範囲とすることが好適である。初期伸張弾性率が30N/5cm/100%未満では不織布の取り扱い時、容易に変形して加工性が劣り、一方、1000N/5cm/100%を超えると不織布が硬いものとなり、取り扱いも悪く、製品として硬く仕上がるので好ましくない。
【0025】
以上のように本発明不織布は撥水性短繊維と、熱接着性複合短繊維を含む非撥水性短繊維とを所要混繊比率で混繊すると共に、更に吸音,遮水性能に適合した特性を具備せしめることによって吸音,遮水不織布として構成されるが、この不織布の作成は通常、以下の如き工程によって行なわれる。
【0026】
即ち、先ず撥水性短繊維と非撥水性短繊維と熱接着性複合短繊維を所要割合で混繊し、カーディング加工してウエブを作成する。そして、このウエブをニードルパンチ加工することによって繊維間の交絡処理を行い、更に連続して熱処理機に通して繊維間の接着をする。熱処理は熱接着性複合短繊維の低融点成分の融点を超え、高融点成分の融点以下あるいは撥水性又は非撥水性短繊維の融点以下の温度とする。
【0027】
なお、その後、場合によっては更に熱ロールを通して不織布の厚さ調整などを図り、所要の特性を具備せしめるよう調整する。以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
繊度13.3デシテックス(dtex)、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20重量%と、繊度6.7デシテックス(dtex)、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20重量%と、繊度3.3デシテックス(dtex)、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20重量%と、繊度6.7デシテックス(dtex)、繊維長64mmの黒原着ポリエステル繊維(融点:260℃)でシリコン処理された撥水能を有する繊維(東レ株式会社製:F071)30質量%と、繊度4.4デシテックス(dtex)、繊維長51mmのベージュ原着ポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%を均一混合し、次いでカーディングして繊維層を得た。
【0029】
引き続き、表面に深さ9mm、打ち込み本60数本/cm2、裏面に同様に深さ11mm、打ち込み本数60本/cm2、更に表面に深さ11mm,打ち込み本数60本/cm2,裏面に同様に深さ11mm打ち込み本数60本/cm2のニードルパンチ処理を施し、190℃のピンテンター式処理機で47秒間熱処理し、出口部に設置した一対の鉄製ローラに通して巻き取った。得られた不織布の目付質量は293.4g/m2で、厚さ4.1mmであった。
【0030】
実施例2
撥水性繊維(株式会社クラレ製:P800)の繊度が2.2デシテックス(dtex)で、繊維長51mmである以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は314.8g/m2で、厚さ3.5mmであった。
【0031】
実施例3
繊度13.3デシテックス(dtex),繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)25重量%と繊度6.7デシテックス(dtex),繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度3.3デシテックス(dtex),繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20重量%と、繊度11.1デシテックス(dtex),繊維長64mmの黒原着ポリエステル繊維(融点:260℃)でシリコン処理された撥水能を有する繊維(高安株式会社製:BK841)15重量%である以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は338.1g/m2で厚さ3.4mmであった。
【0032】
実施例4
出来上がり不織布の目付質量を変更した以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は489.1g/m2で厚さ4.2mmであった。
【0033】
実施例5
非撥水性繊維/撥水性繊維の比率が50/50である以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は325.9g/m2で厚さ3.9mmであった。
【0034】
比較例1
出来上がり不織布の目付質量を変更した以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は159.5g/m2で厚さ3.0mmであった。
【0035】
比較例2
繊度6.7デシテックス(dtex)、 繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)10重量%と、繊度3.3デシテックス(dtex)、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)10重量%と、熱接着性繊維の混繊比率が30重量%である以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は345.6g/m2で、厚さ2.8mmであった。
【0036】
比較例3
非撥水性繊維/撥水性繊維の比率が95/5で、熱接着性繊維の混繊比率が3重量%で、ニードルパンチ加工で表面に深さ9mm、打ち込み本数30本/cm2、裏面に同様に深さ9mm、打ち込み本数30本/cm2とした以外は実施例1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は297.9g/m2で、厚さ3.5mmであった。
【0037】
比較例4
非撥水性繊維/撥水性繊維の比率が100/0で、熱接着性繊維の混繊比率が10重量%である以外は実施例と1と同じ条件で処理を行なった。得られた不織布の目付質量は310.0g/m2で、厚さ3.7mmであった。
【0038】
以上の各実施例,各比較例により得られた不織布を夫々、通気度,撥水性,吸音性,取り扱い性について対比し、その性能を比較した。その結果を別表1に示す。なお、表中の各項目については下記に基づいて測定あるいは評価を行なった。
【0039】
(イ)目付質量:g/m2
50cm×50cmの大きさを切り出し、その時の重さを測定し、1m2当たりの重量に換算する。
【0040】
(ロ)厚さ:mm
15cm×15cmの大きさを切り出し、初荷重0.05g/m2を掛けて、4隅の高さを測定し、その平均値で示す。
【0041】
(ハ)通気度:cc/cm2/sec
JIS L 1096の6.27.1に記載のフラジール形試験機で測定した。
【0042】
(ニ)初期伸張弾性率:N/5cm/100%
強伸度測定
縦方向に5cm×30cmの試料をn=5採取する。東洋ボールドイン社製テンシロンを用い、掴み間隔20cmで引っ張り速度20cm/minで5%伸張応力を100%に換算して示す。n=5の平均値で表わす。
【0043】
(ホ)撥水性評価
不織布表面に蒸留水10ccのせる。この状態で120min後の不織布裏面への浸水状態を調べ下記基準に基づいて評価した。
評価
不織布裏面への透水が全くない ○
不織布裏面への透水はないが湿っていた △
不織布裏面への透水し、水が溜まっていた ×
(ヘ)吸音性
JIS A 1405に基づき、管内法による建築材料の垂直入射吸音率を測定した。
【0044】
(ト)取り扱い性
不織布の表面の状態、不織布の引き回しによる伸び変形の状態、加工のし易さを下記分類に評価した。
不織布表面はフェルト状で取り扱いに問題ない。 ○
不織布の引き回しによる伸び変形が見受けられる。 △
不織布が硬く取り扱いが悪い。 ×
【0045】
【表1】

上記表より、本発明吸音遮水不織布は他の不織布に比し撥水性と共に取扱性において格段に優れており、吸音効果と相俟って極めて効果的であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性短繊維と非撥水性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊からなる不織布であって、
該不織布はその目付質量が200〜500g/m2の範囲で、それを構成する撥水性短繊維と他の短繊維との混繊比率が10/90〜55/45の範囲であり、かつ通気度が50.0〜300.0cc/cm2/sec、初期伸張弾性率が30〜1000N/5cm/100%の特性を有していることを特徴とする吸音遮水不織布。
【請求項2】
不織布を構成する撥水性短繊維の繊度が1.0〜20デシテックス(dtex)の範囲である請求項1記載の吸音遮水不織布。
【請求項3】
撥水性短繊維が自身撥水性を有する繊維またはポリエステル,ナイロン等の通常撥水性を有しない繊維をシリコン処理あるいはフッ素処理により撥水性を付与せしめた繊維である請求項1または2記載の吸音遮水不織布。
【請求項4】
不織布を構成する熱接着性複合短繊維が高融点樹脂成分を芯部とし、低融点樹脂成分を鞘部とする芯鞘構造で、鞘部成分の融点が80〜160℃の範囲であり、不織布構成繊維に占める該繊維の混繊比率が5/95〜20/80の範囲である請求項1,2または3記載の吸音遮水不織布。