説明

吹き流し形フィルタ及びその製造方法

【課題】袋状の濾材の作製に手間と時間と熟練とを必要とせず、作製容易な吹き流し形フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタにおいて、前記袋状の濾材12が二枚の濾材片12a、12bからなり、前記二枚の濾材片12a、12b間に凹凸部を有する凹凸シートからなるセパレータ14が配されており、前記セパレータ14の各凹部14a又は凸部14bが前記二枚の濾材片12a、12b内側面に接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般ビルの空調設備、工場空調設備、電算機室や病院の空調設備などに使用されるフィルタであって、塵埃に対して高い捕集効率と低い圧力損失で塵埃保持容量が極めて大きく、長期使用が可能であり、特に中高性能フィルタに適した吹き流し形フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吹き流し形フィルタとしては本出願人による製品が知られている(非特許文献1参照)。図19及び図20に示すように、この吹き流し形フィルタ1にあっては、該フィルタ1の空気流入口の周囲に格子状の枠3が設けられており、この枠3に複数の袋状の濾材2の入口部周囲の端部が取り付けられている。袋状の濾材2は、極細繊維からなるガラスマットと不織布が積層された二枚の濾材片2a、2bからなり、これら二枚の濾材片2a、2bを縫製して袋状にしたものである。
【0003】
図20に示すように、袋状の濾材2を構成する濾材片2aと濾材片2bとの間には、セパレータ4が縫製又は超音波接着などで断面コの字状に接合されている。これにより、該濾材2の間隔が保持され、使用時に濾材2が膨らみすぎて、隣の濾材2と接触してデットスペースが生じないように、該濾材2の袋形状を所定の大きさに保っている。
【0004】
また、図21に示すように、断面菱形状のセパレータを濾材片間に縫製又は接着により取り付けた吹き流し形フィルタも提案されている(特許文献1参照)。
【非特許文献1】日本バイリーン株式会社の2001年6月発行の製品カタログ(製品名VG−90VG−98)
【特許文献1】特開昭52−37274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記2種の吹き流し形フィルタにあっては、いずれも袋状の濾材の間隔保持のため、図20に示すように、多数のセパレータ4を1個ずつ、各セパレータ4の両端部を各濾材片2a、2bに縫製又は接着により接合しなければならず、その作業には極めて多くの手間と時間とを要していた。また、特許文献1に記載のフィルタの場合、セパレータの形状を維持しつつ、各濾材片への接合作業を行わなければならず、作業が繁雑な上、高度熟練を必要し、作業効率の向上が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、袋状の濾材の作製に手間と時間と熟練とを必要とせず、作製容易な吹き流し形フィルタ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタにおいて、前記袋状の濾材が二枚の濾材片からなり、前記二枚の濾材片間に凹凸部を有する凹凸シートからなるセパレータが配されており、前記セパレータの各凹部又は凸部が前記二枚の濾材片内側面に接合されていることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0008】
請求項2記載の発明は、袋状の濾材及びセパレータが熱可塑性の繊維からなり、前記セパレータが濾材を構成する濾材片間に熱融着によって接合されていることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0009】
請求項3記載の発明は、セパレータが、穴あきシート又はネット状シートからなることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0010】
請求項4記載の発明は、保持枠が、該吹き流し型フィルタの空気流入口周囲に配される外枠と、前記外枠内を仕切るように配される支持部材とからなり、前記支持部材が、断面コ字型又はC字型のカバー部材と、前記カバー部材内に抜け止め状態に固定される支持棒とからなり、前記カバー部材と支持棒とで前記濾材の開放端周りが挟持されて該濾材が支持されるようにしたことを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0011】
請求項5記載の発明は、可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0012】
請求項6記載の発明は、複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタの製造方法において、前記濾材を構成する二枚の濾材片間に凹凸部を有する凹凸シートからなるセパレータを各凹部又は凸部が接触するように配し、次いで、前記袋状の濾材を構成する二枚の濾材片間の奥行き方向の少なくとも2カ所に前記セパレータを仮止めし、次いで、前記セパレータの各凹部又は凸部が接触する各濾材片と対向する濾材片との間に櫛歯状治具の歯を挿入し、この後、前記セパレータの各凹部又は凸部と各凹部又は凸部が接触する各濾材片とを接合することを特徴とする吹き流し形フィルタの製造方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を備えたことにより、本発明の吹き流し形フィルタ及びその製造方法にあっては、袋状の濾材の作製に手間と時間と熟練とを必要とせず、その作製はきわめて容易である、との効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の吹き流し形フィルタ(以下、フィルタという)及びその製造方法を図面に従ってさらに詳しく説明する。本発明のフィルタは、複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなるものである。
【0015】
図1及び図2に示すように、袋状の濾材12は、対向して配置した二枚の濾材片12a、12bから構成されている。尚、濾材12は、必ずしも2枚の濾材片から構成されている必要はなく、一枚の濾材片を2つ折りして重ね合わせ、その各片を濾材片とすることもできる。
【0016】
各濾材片12a、12bの構造や材質としては特に限定されず、織物、編物、不織布など、従来より吹き流し形フィルタに使用されている濾材を構成する濾材片をそのまま適用することができる。このような濾材片としては、例えばガラスマットと不織布が積層された濾材片や、メルトブロー法によって極細繊維を形成している過程で短繊維を吹き込み、極細繊維と短繊維とを混合してい得られる濾材片などを挙げることができる。
【0017】
各濾材片12a、12bの材質の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール及び合成パルプなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、綿及びパルプ繊維などの天然繊維、ガラス繊維などの無機繊維などを単独で、又は複数種の繊維を組合せたものを適用することができる。
【0018】
上記繊維の中でも熱可塑性繊維を濾材片の材質として、或いは熱可塑性繊維を濾材片の構成繊維の一部として適用した場合、超音波融着加工の採用が可能となる。超音波融着加工を採用した場合、超音波融着加工による融着部分は硬くなる。このため、超音波融着加工によって濾材片周囲を超音波融着して袋状の濾材を作製したとき、該濾材の保形性が高くなり、保形材を用いなくても袋状の濾材形状が保持され、自立型のフィルタとすることができる。
【0019】
このように、熱可塑性繊維を濾材片の構成繊維の全部又は一部として適用した場合、超音波融着加工の採用が可能となり、この超音波融着加工によって袋状の濾材を作製することができ、これにより、従来の袋状の濾材において行われていた濾材周囲への縁取り材の取り付けやS字状の吊り下げ具の取り付け作業を省略することができるといったメリットがある。また、縫製加工時に穴が開いたりすることがなく、使用時にその穴の部分から濾材が破れたりすることがないというメリットもある。さらに、ガラス繊維などを用いないことから、ガラス繊維の破損を防ぐための保護材の使用も省略できるというメリットも生じることになる。
【0020】
また、各濾材片12a、12bの面密度も特に限定されないが、好ましくは40〜400g/m2、より好ましくは60〜300g/m2、さらに好ましくは80〜250g/m2である。各濾材片12a、12bの厚さも限定されないが、好ましくは3〜20mm、より好ましくは4〜15mm、さらに好ましくは5〜10mmである。尚、濾材片の厚さは、単位面積1cm2あたり1g荷重時の値をいう。
【0021】
各濾材片12a、12bの材質としては、環境に悪影響を与え難い材料として可燃性材料のみからなることが望ましい。そのような材質とすることで、使用後の廃棄時に分別処理が不要となる上、熱源としてリサイクルすることが可能となる。また、各濾材片12a、12bには難燃剤を含ませることもできる。この場合、リン系などのノンハロゲン系の材料とするのが望ましい。
【0022】
前記各濾材片12a、12bの具体例としては、例えばメルトブロー法によって製造された平均繊維径が0.1〜10ミクロンの極細繊維5〜50質量%と、平均繊維径が10〜100ミクロンの熱融着性繊維50〜95質量%とが混在し、前記熱融着性繊維の熱融着によって繊維相互が固定された不織布からなるものを挙げることができる。この濾材片を用いた濾材の場合、JIS比色法効率(JISB9908に規定される試験値)95%以上の高性能フィルタ、同比色法効率90%以上の準高性能フィルタ、同比色法効率80%以上の中性能フィルタに適合させることができる。
【0023】
また、濾材片12a、12bには、スパンボンド不織布やネットなどの布帛を補強材として積層したものも好適に使用できる。この場合、補強材によって耐摩耗性が向上するという利点がある。補強材の好ましい具体例としては、芯成分がポリエステル樹脂で鞘成分がポリエチレン樹脂からなる芯鞘型繊維のスパンポンド不織布を挙げることができる。
【0024】
補強材の材質としては、上述した濾材片と同じ材質のものがよい。また、濾材片と同じく補強材の構成繊維の全部又は一部に熱可塑性繊維を適用すれば、超音波融着加工の採用が可能となり、濾材片と補強材とを超音波融着したとき、両者は強固に一体化することになる。この場合、縁取り材の取り付けやS字状の吊り下げ具の取り付け作業を省略でき、また、ガラス繊維などを用いないことから、保護材の使用も省略できるというメリットも生じることになる。
【0025】
補強材の面密度も特に限定されないが、好ましくは8〜80g/m2、より好ましくは10〜60g/m2、さらに好ましくは15〜40g/m2である。また、補強材の厚さも限定されないが、好ましくは0.01〜1.5mm、より好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.1〜0.8mmである。尚、補強材の厚さは、JIS L1085−1998(不織布しん地試験方法)に規定されている6.1.2A法により得られる厚さである。
【0026】
図2に示すように、上記二枚の濾材片12a、12b間にはセパレータ14が配されて接合されており、これにより、袋状の濾材12の間隔が保持され、使用時に濾材12が膨らみすぎて、隣の濾材12と接触してデットスペースが生じないように、該濾材12の袋形状が所定の大きさに保たれるようになっている。
【0027】
このセパレータ14は凹部14aと凸部14bを有する凹凸シートからなる。図2に示す形態では、ジグザグ状に折り加工されてした凹部14aと凸部14bを有する凹凸シートを用いている。セパレータ14を構成する凹凸シートの別の形態としては、図3に示すようにサインカーブを描くように円弧状の凹部と凸部が連続して設けられている凹凸シートや、図4及び図5に示すように、表裏に矩形状の凹部14aと凸部14bが連続して設けられた凹凸シートを挙げることができる。
【0028】
セパレータ14を構成する凹凸シートの構造や材質としては特に限定されず、上記濾材を構成する濾材片と同じく、織物、編物、不織布など、従来より吹き流し形フィルタに使用されているものを適用することができる。
【0029】
セパレータ14の材質の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール及び合成パルプなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、綿及びパルプ繊維などの天然繊維、ガラス繊維などの無機繊維などを単独で、又は複数種の繊維を組合せたものを適用することができる。
【0030】
セパレータの材質としては、上述した濾材片や補強材と同じ材質のものがよい。また、濾材片や補強材と同じくセパレータの構成繊維の全部又は一部に熱可塑性繊維や熱接着性繊維を適用すれば、超音波融着加工や熱融着加工が可能となる。
【0031】
セパレータの面密度も特に限定されないが、好ましくは10〜120g/m2、より好ましくは15〜100g/m2、さらに好ましくは20〜80g/m2である。また、セパレータの厚さも限定されないが、好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.1〜1.8mm、さらに好ましくは0.1〜1.5mmである。尚、セパレータの厚さは、JIS L1085−1998(不織布しん地試験方法)に規定されている6.1.2A法により得られる厚さである。
【0032】
またセパレータ14は、濾材片や補強材と同じく環境に悪影響を与え難い材料として可燃性材料のみからなることが望ましい。そのような材質とすることで、使用後の廃棄時に分別処理が不要となる上、熱源としてリサイクルすることが可能となる。また、セパレータ14には難燃剤を含ませることもできる。この場合、リン系などのノンハロゲン系の材料とするのが望ましい。
【0033】
このように構成されたセパレータ14の各凹部14a又は凸部14bが、図1及び図2に示すように、前記二枚の濾材片12a、12bの内側面にそれぞれ接合され、濾材12を構成する濾材片12a、12bとセパレータ14とが一体化されている。セパレータ14と濾材片12a、12bの接合方法としては特に限定されず、縫製加工、接着剤による接着加工、ヒートシール加工、及び超音波加工による熱融着加工などを適用することができる。例えばセパレータ14及び濾材片12a、12bの構成繊維に熱可塑性繊維を含ませた場合、セパレータ14と濾材片12a、12bとの接合に超音波融着加工が可能となり、セパレータと濾材片との接合作業をより効率的で、かつ確実にすることができ、接合作業の手間を大幅に省けることになる。
【0034】
図2並びに図6〜図9に示すように、超音波融着加工を行った場合、セパレータ14と濾材片12a、12bとの融着部分Mは硬くなる。このため、超音波融着加工によって濾材片12a、12bとセパレータ14とを超音波融着した場合には、該濾材の保形性が高くなり、保形材を用いなくても袋状の濾材形状が保持され、自立型のフィルタとすることができる。
【0035】
このように、熱可塑性繊維をセパレータに適用した場合、該濾材の保形性が高くなり、従来の袋状の濾材において行われていた濾材周囲への縁取り材の取り付けやS字状の吊り下げ具の取り付け作業を省略することができるといったメリットがある。また、縫製加工時に穴が開いたりすることがなく、使用時にその穴の部分から濾材が破れたりすることがないというメリットもある。
【0036】
尚、図4及び図5に示すセパレータ14の場合、このセパレータ14を濾材片12a、12b間に接合すると、各凹部14a及び凸部14bの平面状の頂面がそれぞれ濾材片12a、12b間に接合することになるため、セパレータ14は濾材片12a、12b間に強固に接合される反面、その接合された各凹部14a及び凸部14bの頂面部分によって、濾材片12a、12bの濾過面積が少なくなるという不具合が生じることになる。このような不具合を解消するため、図5に示すような穴あきシートやネット状シートを凹凸シートとして用いるのが望ましい。
【0037】
次に、上記袋状の濾材の製造方法について説明する。まず、濾材を構成する二枚の濾材片とセパレータとを準備する。使用する濾材片及びセパレータには熱可塑性繊維を含む材質のものを用いるのが望ましい。熱可塑性繊維を含む材質のものを用いた場合、濾材片とセパレータとの接合に超音波融着加工を採用することができ、接合作業の手間を大幅に削減することができるからである。以下、図6〜図9に示す例では、濾材片12a、12b及びセパレータ14に熱可塑性繊維を含む材質のものを用いた。
【0038】
次いで、図6に示すように、濾材12を構成する二枚の濾材片12a、12bが相対向するように配置し、これら濾材片12a、12b間に凹部14aと凸部14bを有する凹凸シートからなるセパレータ14を各凹部14a又は凸部14bが接触するように配置する。
【0039】
次いで、前記袋状の濾材12を構成する二枚の濾材片12a、12b間の奥行き方向の少なくとも2カ所、例えばセパレータ14の入り口部分111と出口部分112にホッチキスや超音波ホッチキスなどで仮止めする。尚、濾材片12a、12bとセパレータ14には、予め仮止めする部分にマーキングを施しておくと、仮止め作業を効率よく行うことができる。
【0040】
次いで、セパレータ14の各凹部14aが接触する各濾材片12aと、各凹部14bが接触する濾材片12bとの間に図6中矢印に示すように櫛歯状治具113の歯を挿入し、一方の濾材片12a又は12bと凹部14a又は凸部14bとを接合するときに、他方の濾過片12a又は12bが熱融着するのを防止する。尚、使用する櫛歯状治具113としては、超音波融着時にセパレータ14が該治具113に融着しない若しくは融着し難い材料であればよく、具体的には段ボール、またはフローグラスを貼り付けた段ボール紙などを櫛歯状に裁断したものを用いることができる。
【0041】
次いで、セパレータ14の各凹部14a又は凸部14bとこれら各凹部14a又は凸部14bが接触する各濾材片12a又は12bとを超音波融着装置115を用いて超音波融着し接合する。尚、図示の例の他、使用する濾材片及びセパレータに熱接着性繊維を含む材質のものを用いてヒートシールによってセパレータ14と濾材片12a、12bとを熱接着し接合することもできる。勿論、手間はかかるが縫製による接合も可能である。
【0042】
図示の例では、超音波融着装置115による超音波融着に先だって、濾材片12a上には、超音波融着時の位置決めのため、超音波融着部分が露出するような長穴114aを有する位置決めシート114を配置した。
【0043】
濾材片12a、12bにセパレータ14を接合した後、二枚の濾材片12a、12bの周囲を入り口部分となる部分を除いて超音波融着により接合し、袋状の濾材12の製造が完了する。
【0044】
次に、吹き流し形フィルタの全体構成について説明する。図1に示すように、本発明の吹き流し形フィルタ11は、上述の袋状の濾材12が保持枠13に取り付けられて構成されている。袋状の濾材12を取り付ける保持枠13としては特に限定されず、複数の袋状の濾材が並設して取り付けられる構造を有するものであれば、従来より使用されている保持枠であっても使用可能である。
【0045】
図1に示すフィルタ11においては、6個の袋状の濾材12が並設して保持枠13に取り付けられている。保持枠の材質としては、例えば木材、金属、合成樹脂などを挙げることができるが、環境に悪影響を与え難い材料として可燃性の材料のみから構成されているのが望ましい。可燃性の材料のみから保持枠を構成した場合、使用後の廃棄時に分別する必要が無く、熱源としてリサイクル活用することができる。可燃性材料の中でも合成樹脂の場合、押出成形や金型加工など成形性に優れ、特に耐久性や強度を考慮した場合、ノリルやポリカーボネートなどの合成樹脂がより望ましい材料といえる。また、難燃剤を添加した合成樹脂も可燃性の樹脂として使用可能であり、添加される難燃剤としてはリン酸などのノンハロゲン系難燃剤が好ましい。
【0046】
次に、図示の保持枠について説明する。図1及び図10に示すように、保持枠13は外枠15と支持部材16とからなる。図10、並びに図11A、図11B、図12A、図12B、図13A、図13B、図14A、図14Bに示すように、外枠15は該フィルタ11の空気流入口周囲に配される枠であり、係合一体化される断面コ字型の外側枠101と内側枠102とからなる。図11A及び図12Aに示すように外側枠101は、側枠片101aと上下枠片101bとからなる。側枠片101a及び上下枠片101bの両端部は45°に切り欠かれており、これら各片101a、101bの端部を接合することで、外枠15の外側の枠が構成されるようになっている。また、側枠片101aには、接合部材101cが突設されており、この接合部材101cが上下枠片101bの両端部に設けた窪み(図示しない)に嵌り込み、側枠片101a及び上下枠片101bの端部の接合がなされるようになっている。
【0047】
図13A及び図14Aに示すように内側枠102は、側枠片102aと上下枠片102bとからなる。側枠片102a及び上下枠片102bの両端部は45°に切り欠かれており、これら各片102a、102bの端部を接合することで、外枠15の内側の枠が構成されるようになっている。また、上下枠片102bには、接合部材102cが突設されており、この接合部材102cが側枠片102aの両端部に設けた窪み(図示しない)に嵌り込み、側枠片102a及び上下枠片102bの端部の接合がなされるようになっている。
【0048】
また、図11B、図12B、図13B、及び図14Bに示すように、外側枠101の上下枠片101bと内側枠102の側枠片102aには、それぞれ桂柱突起101d、102dが設けられ、外側枠101の側枠片101aと内側枠102の上下枠片102bには、それぞれ前記桂柱突起101d、102dが係合する受け穴101e、102eが設けられており、外側枠101と内側枠102とを重ね合わせたとき、前記桂柱突起101d、102dと受け穴101e、102eとが係合し、外側枠101と内側枠102とが係合一体化するようになっている。
【0049】
また、図15に示すように、外側枠101と内側枠102とを係合させたとき、前記外枠15に後述する支持棒18の端部突起18aを受容する空隙103とくびれ部18bを受容する受け穴104とが形成されるように、外側枠101と内側枠102の上下枠片101b、102bには支持棒18の取り付け位置に対応する箇所にそれぞれ空隙103と受け穴104を形成するための凹部104a、104bが形成されている。
【0050】
支持部材16は前記外枠15内を仕切るように配される。図1及び図10に示す形態では、5個の支持部材16が外枠15内に配されて該外枠15内を6つに仕切っている。この支持部材16は、図15に示すようにカバー部材17とこのカバー部材17内に抜け止め状態に固定される支持棒18とからなる。
【0051】
図16に示すように、カバー部材17は断面コ字型又はC字型をなしており、このカバー部材17の開口縁部には内側に向かう突起17aが設けられている。このため、このカバー部材17の開口を通して支持棒18をカバー部材17内部に挿入したとき、支持棒18が開口部分で引っ掛かり、該支持棒18をカバー部材17内に抜け止め状態に固定できるようになっている。そして、図18に示すように、支持棒18を図18中矢印に示すようにカバー部材17内に濾材12の開放端周りと共に押し込みながら挿入することで、濾材12の開放端部をカバー部材17と支持棒18とで挟持させ、濾材12の支持がなされるようになっている。
【0052】
図17に示すように、支持棒18の両端部には、根元にくびれ部18bを有する端部突起18aが設けられており、図15に示すように、前記外枠15の空隙103に支持棒18の端部突起18aを受容させ、前記外枠15の受け穴104に支持棒18のくびれ部18bを受容させることにより、前記外枠15に支持棒18が抜け止め状態に固定されるようになっている。
【0053】
次に、本発明のフィルタの組立手順を説明する。まず、複数の袋状の濾材12を準備し、各袋状の濾材12を構成する濾材片12aと濾材片12bとの間にセパレータ14を縫製又は超音波接着などで接合する。次いで、各濾材12の開放端部同士を超音波ホッチキスなどで接合する。
【0054】
次いで、各濾材12の開放端部の接合部分に当たる部分にカバー部材17の開口を配置する。この後、濾材12のカバー部材17の開口に当たる位置に支持棒18を配置し、図18に示すように、支持棒18をカバー部材17内部に押し込む。これにより、濾材12の開放端部をカバー部材17と支持棒18とで挟持させ、濾材12を支持できるようになる。
【0055】
次いで、図1、並びに図10、図11A、図11B、図12A、図12B、図13A、図13B、図14A、図14Bに示すように、外枠15の外側枠101と内側枠102とをそれぞれ組立てる。次いで、外側枠101と内側枠102の上下枠片101b、102bに設けた空隙103と受け穴104を形成するための凹部104a、104bに支持棒18の端部突起18aとくびれ部18bを配置し、外側枠101と内側枠102との間に濾材12の開放端部を配置し、この状態で外側枠101と内側枠102とを係合させる。また、必要に応じて係合部分に接着剤を用いて接着固定する。これにより、濾材12の開放端部を挟持する支持部材16の支持棒18は、外枠15の空隙103に端部突起18aを受容され、外枠15の受け穴104にくびれ部18bを受容されて、前記外枠15に支持棒18が抜け止め状態に固定される。また、濾材12は外側枠101と内側枠102との間に挟持されて支持されるようになる。
【0056】
本発明のフィルタの全体の大きさとしては特に限定されないが、好ましくは外枠15の外寸が200〜800mmであり、実用的は、例えば290mm、305mm、595mm、650mmなどの寸法を採用することができる。また、支持部材間の距離も特に限定されないが、好ましくは50〜150mmを採用することができる。
【0057】
尚、本発明のフィルタは、上述の例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のフィルタを示す斜視図。
【図2】本発明のフィルタの濾材を示す拡大断面図。
【図3】本発明のフィルタの濾材の別の形態を示す拡大断面図。
【図4】本発明のフィルタの濾材の別の形態を示す拡大断面図。
【図5】図4の濾材におけるセパレータを示す拡大斜視図。
【図6】本発明のフィルタの濾材の製造過程を示し、濾材片間にセパレータを配し、これらの間に櫛歯状治具を挿入しようとしているところを示す斜視図。
【図7】濾材片とセパレータとを接合するときに使用する位置決めシートを示す平面図。
【図8】超音波融着装置によって濾材片とセパレータとを接合していることろを示す斜視図。
【図9】同じく図8の拡大断面図(位置決めシートは省略)。
【図10】本発明のフィルタにおける保持枠を示す斜視図。
【図11A】本発明のフィルタの外側枠の側枠片を示す斜視図。
【図11B】同じく正面図。
【図12A】本発明のフィルタの外側枠の上下枠片を示す斜視図。。
【図12B】同じく正面図。
【図13A】本発明のフィルタの内側枠の側枠片を示す斜視図。
【図13B】同じく正面図。
【図14A】本発明のフィルタの内側枠の上下枠片を示す斜視図。。
【図14B】同じく正面図。
【図15】外枠に支持棒が抜け止め状態に固定された状態を示す拡大断面図。
【図16】支持部材のカバー部材を示す斜視図。
【図17】支持部材の支持棒を示す斜視図。
【図18】支持部材のカバー部材と支持棒とで濾材の開放端部を挟持させる状態を示す拡大断面図。
【図19】従来のフィルタを示す斜視図。
【図20】従来のフィルタの袋状の濾材を示す拡大断面図。
【図21】従来のフィルタの別例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0059】
12 ・・・ 袋状の濾材
12a、12b ・・・ 濾材片
13 ・・・ 保持枠
14 ・・・ セパレータ
14a ・・・ 凹部
14b ・・・ 凸部
15 ・・・ 外枠
16 ・・・ 支持部材
17 ・・・ カバー部材
18 ・・・ 支持棒
18a ・・・ 端部突起
18b ・・・ くびれ部
101 ・・・ 外側枠
101a ・・・ 側枠片
101b ・・・ 上下枠片
102 ・・・ 内側枠
102a ・・・ 側枠片
102b ・・・ 上下枠片
103 ・・・ 空隙
104 ・・・ 受け穴
113 ・・・ 櫛歯状治具
114 ・・・ 位置決めシート
114a ・・・ 長穴
115 ・・・ 超音波融着装置
M ・・・ 融着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタにおいて、
前記袋状の濾材が二枚の濾材片からなり、前記二枚の濾材片間に凹凸部を有する凹凸シートからなるセパレータが配されており、前記セパレータの各凹部又は凸部が前記二枚の濾材片内側面に接合されていることを特徴とする吹き流し形フィルタ。
【請求項2】
袋状の濾材及びセパレータが熱可塑性の繊維からなり、前記セパレータが濾材を構成する濾材片間に熱融着によって接合されていることを特徴とする請求項1記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項3】
セパレータが、穴あきシート又はネット状シートからなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項4】
保持枠が、該吹き流し型フィルタの空気流入口周囲に配される外枠と、前記外枠内を仕切るように配される支持部材とからなり、
前記支持部材が、断面コ字型又はC字型のカバー部材と、前記カバー部材内に抜け止め状態に固定される支持棒とからなり、
前記カバー部材と支持棒とで前記濾材の開放端周りが挟持されて該濾材が支持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項5】
可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項6】
複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタの製造方法において、
前記濾材を構成する二枚の濾材片間に凹凸部を有する凹凸シートからなるセパレータを各凹部又は凸部が接触するように配し、
次いで、前記袋状の濾材を構成する二枚の濾材片間の奥行き方向の少なくとも2カ所に前記セパレータを仮止めし、
次いで、前記セパレータの各凹部又は凸部が接触する各濾材片と対向する濾材片との間に櫛歯状治具の歯を挿入し、
この後、前記セパレータの各凹部又は凸部と各凹部又は凸部が接触する各濾材片とを接合することを特徴とする吹き流し形フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−244928(P2007−244928A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67688(P2006−67688)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】