説明

吹付工法および吹付施工システム

【課題】 廃棄物を再利用することで資源採取量の低減を図り、もって環境に与える影響を軽減するとともに施工コストの低減を図ることができる吹付工法および吹付施工システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂に加水し、人工砂を加圧環境下で混練して地盤材料を製造し、地盤材料を被吹付面に吹き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば汚泥やペーパースラッジ、石灰精製残滓等の廃棄物からなる人工砂を地盤材料に利用し、法面等の被吹付面に吹き付ける吹付工法および吹付施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貯水池や廃棄物処理場等の場合、遮水性を有する基盤層を形成する必要がある。従来、基盤層は、水や有害物質の漏洩を防止する遮水層と、供用時の異物や重機、紫外線等による遮水層の破損・劣化を防止する保護層とが積層された構成からなり、例えば、遮水層として周知の遮水シートと養生マットとを2重に敷設し、その上に周知の遮光シートを敷設し、さらにその上面を土砂や畳、タイヤ等の保護層で被覆する構成からなる。
【0003】
また、地山法面等には、地山の崩落や法面部の浸食を防止するために法面に安定基盤層を形成する必要がある。従来、安定基盤層は、所定の強度を有するモルタルやコンクリートを法面に吹き付けることで形成される。
また、岩盤地山や有害土壌の法面などに植生基盤層を形成し、緑化を施す場合がある。従来、植生基盤層は、種子と肥料を混合した客土を法面に厚く吹き付けることで形成される。
【0004】
一方、近年では、産業廃棄物を再利用して植物生育基盤を形成する方法が提案されている。これは、植物性破砕チップにペーパースラッジ焼却灰およびセメントを混合して吹き付ける工法である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−100318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の遮水性を有する基盤層では、遮水シート等の資材を複数層に積層させて形成されているため、基盤層が厚くなって貯水池や廃棄物処理場の容量が減少するとともに、コストがかかるという問題がある。また、遮水シート等は外力に対する抵抗力が小さいため、供用時に遮水シートが破損して水や有害物質が漏洩する虞があり、また、遮水シート接合部の信頼性は低いため、接合部から水や有害物質が漏洩する虞があるという問題が存在する。さらに、保護層の流失防止のため法面の勾配は緩やかにする必要があり、広い用地が必要となるという問題が存在する。
【0006】
また、上記した従来の安定基盤層では、セメントや砂、砂利等の天然資源を大量に用いるため、資源の浪費となり、且つ資源調達に伴って環境に影響を与えるとともに、建設コストも高くなるという問題が存在する。
また、上記した従来の植生基盤層では、洗掘防止のための接合剤、或いは保水性を確保するための保水団粒形成材やつなぎ材等の改質材料を混合することとなり、建設コストが高くなるという問題が存在する。
【0007】
また、上記した、産業廃棄物を再利用して植物生育基盤を形成する従来の工法では、吹き付けられる地盤材料の粘着性が小さいため、急勾配の法面に吹き付けると流れてしまい、均等の厚さに吹き付けられないという問題が存在する。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、廃棄物を再利用することで資源採取量の低減を図り、もって環境に与える影響を軽減するとともに施工コストの低減を図ることができる吹付工法および吹付施工システムを提供することを目的とする。また、急勾配な法面(被吹付面)にも吹き付けることが可能な吹付工法および吹付施工システムを提供することを目的とする。また、複数の層を積層させることなく、耐久性・遮水性・遮光性に優れた層を形成し、全体の層厚さを薄くすることができる吹付工法および吹付施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、少なくとも粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂に加水し、該人工砂を加圧環境下で混練して地盤材料を製造し、該地盤材料を被吹付面に吹き付けることを特徴としている。
【0010】
石灰成分には自硬性があるため、粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂は、加水しても再泥濘化しない安定した粒状体材料となる。したがって、請求項1に係る発明の特徴により、加水されて加圧環境下で人工砂が混練されると、人工砂に含まれる未反応の粘土成分が人工砂粒体の表面を被覆するとともに、この粘土成分が、人工砂に含有された石灰成分と反応して徐々に固化するため、地盤材料は、粒状のまま粘着性の高い材料に変化する。また、この地盤材料は、長期に亘って時間の経過とともに固結するため、地盤材料を被吹付面に吹き付けて形成された地盤(以下、吹付層と記す。)の強度は増大する。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の吹付工法において、前記人工砂中に固化材を添加して攪拌することを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、地盤材料の発現強度は固化材によって更に大きくなる。また、固化材の添加量に比例して、地盤材料の発現強度は増加する。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の吹付工法において、前記被吹付面に吹き付ける直前に、前記地盤材料に混合液を混合することを特徴としている。
【0014】
このような特徴により、吹付層の遮水性能は高くなるとともに、粘土成分に残存する石灰成分が混合液と反応することで固化するため、被吹付面に吹き付けられた地盤材料の発現強度は殆ど低下しない。また、地盤材料を被吹付面に吹き付ける際の、地盤材料の跳ね返りが軽減されるとともに、地盤材料の密着性能が増大する。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか記載の吹付工法において、前記人工砂中に植生材を混入して攪拌することを特徴としている。
【0016】
このような特徴により、植生材が混入された地盤材料が被吹付面に吹き付けられ、植生材が埋設された吹付層が形成される。なお、吹付層は、空隙が数多く形成されて保水性に優れた層であるため、植物の成長は促進される。
【0017】
請求項5記載の発明は、地盤材料を製造する地盤材料製造システム部が備えられている吹付施工システムにおいて、前記地盤材料製造システム部には、少なくとも粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂に加水して該人工砂を加圧環境下で混練する加圧混練装置が備えられていることを特徴としている。
【0018】
このような特徴により、人工砂が加水されるとともに加圧環境下で混練され、人工砂の粒体の表面に未反応の粘土成分が被覆され、この粘土成分が、人工砂に含有された石灰成分と反応して徐々に固化される。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に係る吹付工法によれば、地盤材料は、粘着性が高くなるため、急勾配の法面にも吹き付けることが可能となる。また、地盤材料は、長期に亘り固化して強度が増加するため、相当の強度を発揮することができ、地盤材料によって形成された吹付層は、破損や損傷を防止することができる耐久性に優れた層となる。また、地盤材料によって形成された吹付層は、遮光性に優れており、保護性能(耐久性能)と遮光性能とを兼ね備えた層となるため、保護層と遮光層とを積層させる必要がなく、全体の層厚さを薄くすることができる。また、地盤材料は、廃棄物を再利用した安価な人工砂からなるため、吹付工事の施工費用の低減を図ることができるとともに、廃棄物の有効利用によって廃棄物を処分することができ、もって廃棄物処分費用の低減を図ることができる。さらに、廃棄物を再利用することで資源材料の使用を削減することができ、資源採取による環境への影響を低減させることができる。
【0020】
また、請求項2に係る吹付工法によれば、固化材によって地盤材料の発現強度は増大するため、吹付層の破損や損傷を防止することができる。また、固化材の混入量を調整することで、吹付層の強度を調整することができる。
【0021】
また、請求項3に係る吹付工法によれば、吹付層は遮水性に優れた層となり、耐久性・遮光性・遮水性に優れた層を形成することができる。これによって、全体の層厚さを薄くすることができる。なお、混合液の種類を適宜選択することで、吹付層の遮水性能を調整することができる。
【0022】
また、請求項4に係る吹付工法によれば、吹付層は植物の成長促進に適した層となるため、緑化された植生層を形成することができる。
【0023】
また、請求項5に係る吹付施工システムによれば、粒状のまま粘着性の高い地盤材料を製造することができるとともに、長期に亘って時間の経過とともに固結する地盤材料を製造することができる。これによって、急勾配の法面にも吹き付けることが可能となるとともに、高強度の吹付層を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態について、図面に基いて説明する。
本実施の形態の概略構成は、細粒土を石灰処理して製造された人工砂を用いることを主眼としており、人工砂に固化材や植生材を添加・攪拌し、固化材や植生材が添加された人工砂に加水し、加水された人工砂を加圧環境下で混練して地盤材料を製造し、この地盤材料を圧送して被吹付面に向けて吹き付ける構成からなり、被吹付面への吹付直前に地盤材料に混合液を混合させている。また、乾燥によるひび割れを防止するため、人工砂に繊維状の補強材を添加・攪拌させてもよく、これによって、靭性を向上させ、ひび割れを防止することができる。
【0025】
まず、本実施の形態に係る吹付工法に使用される材料について説明する。
人工砂は、粘土成分を含有する廃棄物と、石灰成分を含有する廃棄物とを混合して製造されており、必要に応じて高炉セメント等の固化材や混和材等が混合されている。具体的には、粘土成分を含有する廃棄物として汚泥を使用し、石灰成分を含有する廃棄物としてペーパースラッジ焼却灰(以下、PS灰)を使用しており、汚泥を脱水して固化させたプレスケーキにPS灰を混合・解砕して粒状化することによって、粘土粒の表面に灰微粉が付着した構造(いわば粘土粒の表面に灰微粉がまぶされた状態)の原料粒状体を調製し、この原料粒状体に高炉セメント等の固化材や混和材等を混合して製造される。図1に示すように、人工砂は、5mm以下程度の粘土粒1の表面にPS灰2が付着した構成からなる原料粒状体に、更に高炉セメント等の固化材3が加えられものであり、ポゾラン反応などにより安定処理された材料であり、加水しても再泥濘化しない安定した粒状体である。なお、PS灰2(石灰成分)に自硬性があるため、固化材や混和材等が混合されてなくてもよい。
【0026】
PS灰は、古紙をリサイクルする過程で発生するペーパースラッジを焼却した焼却灰や、ペーパースラッジを焼却する際にそれに石灰精製残滓を混合し、その混合物を焼却して調製した改質焼却灰である。石灰精製残滓は、たとえば紙製品のコーティング材等として利用される炭酸カルシウム微粉末の製造過程において発生するもので、その主成分は水酸化カルシウムであるが、従来においては有効利用されることなく単に廃棄物として埋立処分されているものである。なお、ペーパースラッジに対する石灰精製残滓の混合量は適宜設定すれば良いが、焼却により生成されるPS灰に含有される石灰成分(CaO)が20〜30%程度となるように混合量を調整すると良く、その場合、ペーパースラッジ1ton当たりの混合量は50kg程度で良い。
【0027】
また、製造された人工砂に添加・攪拌する固化材としては、セメントや石灰系材料等が使用され、人工砂に添加・攪拌する植生材としては、植物の種子、及びバーク堆肥や乾燥ペーパースラッジ、木材チップ、繊維屑などの有機質系廃棄物(肥料)が使用される。また、吹付直前で地盤材料に混合する混合液としては、水や、汚泥と水とを混練させてなる混練泥水、ベントナイト廃液と水とを混練させてなるベントナイト混練泥水等が使用され、汚泥やベントナイト廃液等の廃棄物を有効活用することが望ましい。さらに、補強材としては、鋼製または化学繊維性のファイバーであり、有機質の繊維屑やペーパースラッジ、ポリプロピレンシート等の無機質の切れ屑等でもよく、廃棄物を有効活用することが望ましい。
【0028】
次に、本実施の形態に係る吹付工法に使用される吹付施工システムについて説明する。
図2は吹付施工システムを表す図である。図2に示すように、吹付施工システムは、大別すると、地盤材料を製造する地盤材料製造システム部10と、混合液を製造して該混合液を地盤材料の吹付け直前で地盤材料に混合させる混合液製造システム部11とから構成されている。
【0029】
地盤材料製造システム部10は、投入口12aから人工砂が投入されるホッパー12と、所定量の人工砂を計量する計量ミキサー13と、人工砂に固化材や植生材、補強材等の添加材を添加・攪拌する攪拌ミキサー14と、人工砂と添加材とからなる調合人工砂に水を加え、加圧環境下で所定時間混練し、圧送管(デリバリーホース16)に高圧圧送する加圧混練装置(モルタルガン15)とから構成されている。ホッパー12の排出口12bと計量ミキサー13の投入口13aとは第1のコンベア17を介して、計量ミキサー13の排出口13bと攪拌ミキサー14の投入口14aとは第2のコンベア18を介して、攪拌ミキサー14の排出口14bとモルタルガン15の投入口15aとは第3のコンベア19を介して、それぞれ接続されている。
【0030】
混合液製造システム部11は、汚泥やベントナイト廃液等からなるプレスケーキに水を添加・混練させて混練汚泥やベントナイト混練汚泥を製造する混練泥水製造ミキサー20と、混練泥水製造ミキサー20の排出口20aからデリバリーホース16の先端に接続された圧送ホース21を介して、水や混練泥水、ベントナイト混練泥水等の混合液を圧送するポンプ22とから構成されている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る吹付工法によって吹付層を構築する工程を説明する。
なお、本吹付工法によって構築される吹付層は、軽量、高強度の層となることから、廃棄物処理場の遮水シートの破損を防止する保護・遮光層、或いは岩石地山の法面保護被覆層としても有効である。また、本吹付工法によって構築される吹付層は、高濃度混練泥水や膨潤性のあるベントナイト混練泥水を用いることで透水係数がk=10−6〜10−8cm/sec以下となることから、遮水性が確保された遮水層としても有効である。また、地盤材料に混合液を混合させず、或いは少量の混合液を混合させて吹き付けた場合、吹付層には無数の空隙が形成されるうえ、吹付層はポーラスなPS灰を原料としているため保水性が極端に良いものとなり、さらに、吹付層は固化材を添加させなくても、0.5Mpa程度の強度を発現するため、本吹付工法によって構築される吹付層は、根が成長し易く、且つ、雨水による浸食の少ない植生層としても有効である。
【0032】
図3は吹付工法における地盤材料の製造工程を表す図であり、図4は地盤材料を吹き付ける工程を表す図である。また、各用途毎の地盤材料および混合液の標準的な配合を図5に示すが、必要に応じて適宜調整可能である。
【0033】
図2,図3に示すように、まず、地盤材料製造システム部10において地盤材料の製造を行う。具体的には、予め製造された人工砂をホッパー投入口12aからホッパー12内に投入する。ホッパー12内に投入された人工砂は、ホッパー排出口12bから第1のコンベア17上に放出され、第1のコンベア17によって計量ミキサー投入口13aに運ばれ、計量ミキサー13内に投入される。
【0034】
計量ミキサー13においては、人工砂を計量し、所定量の人工砂を、計量ミキサー排出口13bから第2のコンベア18上に放出する。このとき、人工砂は、製造する地盤材料の量に応じて、所定(例えば図5に示す配合表)の配合になるように計量される。第2のコンベア18上の人工砂は、第2のコンベア18によって攪拌ミキサー投入口14aに運ばれ、攪拌ミキサー14内に投入される。
【0035】
攪拌ミキサー14においては、搬入された人工砂に、攪拌ミキサー14内に別途投入された添加材を添加する。保護層や遮光層、遮水層として吹付層を構築する場合、人工砂には、セメント等の固化材が添加され、必要に応じて鋼製又は化学繊維ファイバー等の補強材も添加される。このとき、固化材は、用途に応じて所定(例えば図5に示す配合表)の配合になるように計量されて添加される。また、遮水層のみとして吹付層を構築する場合は、固化材を添加させなくてもよい。また、植生層として吹付層を構築する場合は、人工砂に種子と肥料(植生材)を添加する。また、植生層として吹付層を構築する場合、肥料成分の増量、および靭性・浸食抵抗性の向上を図るべく、補強材として、有機質の繊維屑やペーパースラッジ等の有機質のものを使用する。そして、人工砂と、添加された固化材や補強材、植生材とを攪拌して固化材等を含有する人工砂(調合人工砂)を製造し、この調合人工砂を、攪拌ミキサー排出口14bから第3のコンベア19上に放出する。第3のコンベア19上の調合人工砂は、第3のコンベア19によってモルタルガン投入口15aに運ばれ、モルタルガン15内に投入される。
【0036】
モルタルガン15においては、搬入された調合人工砂に少量の水を加え、約1.0Mpa以上の加圧環境下で所定時間(具体的には、2〜5分程度)混練して、所定配合の地盤材料を製造する。このとき、水は、所定(例えば図5に示す配合表)の配合になるように計量されて加えられる。そして、製造された地盤材料を、モルタルガン15に備えられた図示せぬコンプレッサーの圧縮空気によってデリバリーホース16内に圧送する。
【0037】
一方、図2,図4に示すように、混合液製造システム部11において混合液を製造し、この混合液をデリバリーホース16の先端部に圧送する。具体的には、混練泥水製造ミキサー20によって、汚泥やベントナイト廃液を脱水して固化させたプレスケーキ(粘土)と水とを混練させて混合液(混練泥水またはベントナイト混練泥水)を製造する。このとき、粘土と水との配合は、用途に応じて所定(例えば図5に示す配合表)の配合になるように調合する。なお、吹付層の遮水性能を示す透水係数は、混合液の基材や濃度にも左右されるが、水だけからなる混合液を使用した場合、10−4〜10−5cm/sec程度、混練泥水からなる混合液を使用した場合、10−5〜10−6cm/sec程度、膨潤性のあるベントナイト混練泥水からなる混合液を使用した場合、10−7〜10−8cm/sec程度となる。したがって、強度が重点となる保護層では、低濃度の混練泥水または水のみからなる混合液を使用し、遮水性が重点となる遮水層では、高濃度の混練泥水またはベントナイト混練泥水からなる混合液を使用する。
【0038】
そして、上記した混合液を、ポンプ22の圧力によって圧送ホース21内に圧送し、デリバリーホース16の先端部内に流入させてデリバリーホース16内の地盤材料と混合させる。なお、植生層を構築する場合、混合液を混合させずに、地盤材料だけを吹き付けても良い。
【0039】
混合液が混合された地盤材料は、モルタルガン15の圧力によって、デリバリーホース16の先端から吹き出る。作業員Aは、デリバリーホース16の先端部を持ち、被吹付面Bに向けることで、地盤材料を高圧で叩きつけるように被吹付面Bに吹き付ける。なお、廃棄物処理場の例の場合、まず、法面に遮水シートを敷き、その上に地盤材料を吹き付けることで、保護・遮光・遮水層を兼ねた吹付層を構築する。
【0040】
上記した吹付工法によれば、人工砂が加水した後に加圧環境下で混練されると、人工砂に含まれる未反応の粘土成分が図1に示す反応済みの人工砂粒体の表面を被覆するとともに、上記粘土成分が人工砂に含有された石灰成分と反応して徐々に固化するため、地盤材料は、粒状のまま粘着性の高い材料に変化する。したがって、1:1.5程度の急勾配の法面にも吹き付けることが可能となる。
【0041】
また、上記地盤材料は、長期に亘って時間の経過とともに固結するため、該地盤材料からなる吹付層の強度は増大する。したがって、吹付層は、相当の強度を発揮することができ、破損や損傷を防止することができる耐久性に優れた層となる。
【0042】
また、上記工法によって構築された吹付層は、遮光性に優れており、保護性能(耐久性能)と遮光性能とを兼ね備えた層となるため、保護層と遮光層とを積層させる必要がなく、全体の層厚さを薄くすることができる。これによって、この吹付層を廃棄物処理場の保護層として利用する場合、処分場の容量を増加させることができる。
【0043】
また、地盤材料は、廃棄物を再利用した安価な人工砂からなるため、吹付工事の施工費用の低減を図ることができるとともに、廃棄物の有効利用によって廃棄物を処分することができ、これによって、廃棄物処分費用の低減を図ることができる。さらに、廃棄物を再利用することで資源材料の使用を削減することができ、資源採取による環境への影響を低減させることができる。
【0044】
また、被吹付面Bに吹き付ける直前に、地盤材料に液状の混合液を混合するため、吹き付ける際の跳ね返りを防止することができるとともに、地盤材料の密着性能が増大させることができる。また、地盤材料に液状の混合液を混合すると、人工砂の粒体表面に混合液が被覆されて吹付層の遮水性能は高くなるため、吹付層は遮水性に優れた層となり、耐久性・遮光性・遮水性に優れた層を形成することができる。これによって、全体の層厚さを薄くすることができる。また、混合液の種類を適宜選択することで、吹付層の遮水性能を調整することができる。なお、被覆された混合液も、残存する石灰成分によって固化するため、被吹付面に吹き付けられた地盤材料の発現強度は殆ど低下しない。
【0045】
また、人工砂中に固化材が添加・攪拌されるため、地盤材料の発現強度は固化材によって更に大きくなる。これによって、吹付層の破損や損傷を防止することができる。また、固化材の添加量に比例して、地盤材料の発現強度は増加するため、吹付層の目標強度に応じて添加する固化材の量を適宜変更させれば、固化材の混入量を調整することで、吹付層の強度をある程度調整することができる。例えば、セメント無添加の場合、吹付層は28日材令で0.5Mpaの強度を示し、セメントが50kg/mの場合、吹付層は28日材令で3〜5Mpaの強度を示し、セメントが100kg/mの場合、吹付層は28日材令で7〜10Mpaの強度を示す。また、この強度に対する添加量は、山砂等を利用する工法に比べて半分以下であり、材料費の低減を図ることができる。
【0046】
また、人工砂中に植生材を混入して攪拌されるため、植生材が混入された地盤材料が被吹付面に吹き付けられ、植生材が埋設された吹付層が形成され、緑化された植生層を形成することができる。これによって、耐浸食性のある地盤と植生とが一体となった基盤を構築することができ、信頼性が高い植生地盤を構築することができる。
【0047】
以上、本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、現場で、人工砂と固化材等の添加材とを調合して地盤材料を製造しているが、本発明は、予め工場等で人工砂と固化材等の添加材とを調合しておいてもよく、調合済みの調合人工砂を現場に搬入し、この調合人工砂をモルタルガンに投入して水を加えて、加圧環境下で所定時間混合し、地盤材料を製造してもよい。また、上記した実施の形態では、現場において、粘土等と水と混練することで、地盤材料に混合させる混合液を製造しているが、本発明は、予め製造された混合液を現場に搬入してもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、吹付層の乾燥ひび割れを防止するため、地盤材料に化学繊維製のファイバー等の補強材を混入させているが、本発明は、被吹付面に鉄筋を配筋し、吹付層内に鉄筋を埋設させることで乾燥ひび割れを防止しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態を説明するための人工砂を表す図である。
【図2】本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態を説明するための吹付施工システムを表す図である。
【図3】本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態を説明するための地盤材料の製造工程を表す図である。
【図4】本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態を説明するための地盤材料の吹付工程を表す図である。
【図5】本発明に係る吹付工法および吹付施工システムの実施の形態を説明するための標準配合を表す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 地盤材料製造システム部
11 混合液製造システム部
12 ホッパー
13 計量ミキサー
14 攪拌ミキサー
15 モルタルガン(加圧混練装置)
16 デリバリーホース
20 混練泥水製造ミキサー
21 圧送ホース
22 ポンプ
B 被吹付面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂に加水し、該人工砂を加圧環境下で混練して地盤材料を製造し、該地盤材料を被吹付面に吹き付けることを特徴とする吹付工法。
【請求項2】
請求項1記載の吹付工法において、
前記人工砂中に固化材を添加して攪拌することを特徴とする吹付工法。
【請求項3】
請求項1または2記載の吹付工法において、
前記被吹付面に吹き付ける直前に、前記地盤材料に混合液を混合することを特徴とする吹付工法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の吹付工法において、
前記人工砂中に植生材を混入して攪拌することを特徴とする吹付工法。
【請求項5】
地盤材料を製造する地盤材料製造システム部が備えられている吹付施工システムにおいて、
前記地盤材料製造システム部には、少なくとも粘土成分を含有する廃棄物と石灰成分を含有する廃棄物とからなる人工砂に加水して該人工砂を加圧環境下で混練する加圧混練装置が備えられていることを特徴とする吹付施工システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−265943(P2006−265943A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85893(P2005−85893)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(505108421)三興開発株式会社 (1)
【Fターム(参考)】