説明

吹付工法及び吹付工

【課題】湧水がある地山においても施工でき、剥がれ落ちず、植生の生育が可能な吹付工法及び吹付工を提供する。
【解決手段】吹付材料に砕氷を混合した状態で地山に吹き付け、地山に吹き付けた吹付材料を硬化させた後に砕氷を溶かすことで砕氷の跡に空洞を形成する吹付工法である。砕氷が溶けた跡が空洞となるので、(1)透水性が高く、湧水等を速やかに排水することができる。(2)地山と同程度の低強度であり、周辺地山と一体に復旧できる。(3)無数の空洞に根が定着するため、植物の生育が可能である。(4)軽量であり、自重で剥がれ落ちることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付工法及び吹付工に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂の切土法面や盛土法面において、施工後の雨水や湧水等により溝状に削られ部分崩壊が起こることがある。このような場合、排水処理を行い土質材料により埋め戻す方法が一般的である。
【0003】
また、高所法面など容易に土質材料を運搬できない箇所では、吹付機械により植生基材やコンクリート・モルタル・ソイルモルタル等を吹き付ける方法がとられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、植生基材の場合には、湧水が常時ある場合には吹き付けをすることができない。また、湧水処理が不十分であると、吹き付け後、再度流れ出る可能性がある。
コンクリートやモルタルの場合にも、湧水が常時ある場合には吹き付けをすることができない。また、付着力が弱く、自重により剥がれ落ちる危険がある。また、吹付面の硬度が高く法面を緑化しても植生が生育できないという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、湧水がある地山においても施工でき、剥がれ落ちず、植生の生育が可能な吹付工法及び吹付工を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、吹付材料に砕氷を混合した状態で地山に吹き付け、地山に吹き付けた吹付材料を硬化させた後に砕氷を溶かすことで砕氷の跡に空洞を形成することを特徴とする吹付工法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吹付工法により地山に施工されたことを特徴とする吹付工である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、湧水がある地山においても施工でき、剥がれ落ちず、植生の生育が可能な吹付工法及び吹付工を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る吹付工法により復旧した地山1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る吹付工法により復旧した地山1の断面図である。図1に示すように、崩落した地山1に対して、吹付工2により法面が復旧されている。吹付工2は、内部に無数の空洞3を有している。このため、地山1内の湧水4が吹付工2を透過して排水される。
【0012】
ここで、吹付材料について説明する。本発明に係る吹付材料は、通常の吹付コンクリートの材料であるセメント、骨材、水、その他の材料に加えて、砕氷を混合してなる。砕氷の大きさは空洞3の大きさと同程度である。
また、吹付ノズルにおいて、急結材が混合される。なお、砕氷が溶ける前に吹付材料が硬化し、求められる強度が発現するように、急結材の種類、分量を適宜調整する。
【0013】
砕氷の大きさは、空洞3の大きさにほぼ等しく、例えば1〜2cmである。砕氷の大きさは復旧する法面の性状に応じて適宜変更される。
本発明に係る吹付材料は砕氷を混合する点以外は通常の吹付材料と同様であるため、汎用の法面吹付機で施工できる。
【0014】
次に、本発明に係る吹付工法について説明する。
まず、法面吹付機にセメント、骨材、水、その他の材料を投入し、混合する。次に、専用の冷却槽から必要量の砕氷を法面吹付機に投入し、セメント、骨材その他の材料と混合する。夏場は冷水を使用する等、混合した材料の温度を低下させておくことにより砕氷の早期の溶け出しを防止する。
【0015】
次に、混合した材料を吹付ノズルに供給し、吹付ノズルにおいて急結材を混合した後、直ちに地山1に吹付材料を吹き付け、硬化させる。その後、砕氷を溶かす。なお、通常は、気温により自然に砕氷が溶けるのを待てばよい。吹付材料の硬化後、砕氷が溶けることで、砕氷の跡が無数の空洞3となる。以上により、吹付工2が完成する。
【0016】
なお、空洞3の大きさ(≒砕氷の大きさ)により吹付工2の強度、透水性が変わる。このため、地山1と吹付工2の強度が同程度となり、かつ、所望の透水性が得られるように、砕氷の大きさ、配合量を適宜調整する。
その後、吹付工2に周辺地山と同様の植物を生育させることで、吹付工2を周辺地山と一体化させることができる。
【0017】
本実施形態に係る吹付工法により施工された吹付工2は、砕氷が溶けた跡である無数の空洞3を内部に有している。このため、以下の特徴がある。
(1)透水性が高く、湧水等を速やかに排水することができる。
(2)地山と同程度の低強度であり、周辺地山と一体に復旧できる。
(3)無数の空洞に根が定着するため、植物の生育が可能である。
(4)軽量であり、自重で剥がれ落ちることがない。
【0018】
なお、吹付コンクリート、吹付モルタル、ソイルモルタル等を選択でき、吹付材料に用いる骨材その他の材料を適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 地山
2 吹付工
3 空洞
4 湧水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付材料に砕氷を混合した状態で地山に吹き付け、
地山に吹き付けた吹付材料を硬化させた後に砕氷を溶かすことで砕氷の跡に空洞を形成することを特徴とする吹付工法。
【請求項2】
請求項1に記載の吹付工法により地山に施工されたことを特徴とする吹付工。

【図1】
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【公開番号】特開2011−202445(P2011−202445A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71886(P2010−71886)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】