説明

周波数逓倍器

本発明は、信号用の入力手段と、ポイント間に所定の位相差をもつ複数のポイントで信号にアクセスするための手段とを備える、パルス列である信号のパルス周波数を逓倍するためのデバイスを開示する。このデバイスは、アクセスされた信号ペアを結合するための第1のレベルにある手段を更に備え、すべての結合されるペア内で同一の位相距離があり、各第1のレベルの結合手段からの出力はパルス列である。このデバイスは、第1のレベルからのパルス列を結合するための第2のレベルにある結合手段を更に備え、第1のレベルにある結合手段は、出力パルス列中のパルスが、結合されるアクセスされた信号ペア中の第1の信号の立上り側腹部に常に一致する立上り側腹部と、前記ペア中の第2の信号の立下り側腹部に常に一致する立下り側腹部とを有する手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号用の入力手段と、ポイント間に所定の位相差をもつ複数のポイントで信号にアクセスするための複数のアクセス手段とを備え、パルス列の形式の信号の周波数を逓倍するための周波数逓倍器に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数逓倍器は、さまざまな技術、例えば通信システムにおける重要な構成単位である。広範囲の周波数がしばしば望まれ、したがって調整可能な周波数逓倍器の要望が生じる。一般に、発生器の調整範囲が広くなるほど周波数逓倍器の雑音特性は悪くなる。そこで、現行の周波数逓倍器では調整範囲及び雑音特性に関して兼ね合いをとる必要がある。したがって、雑音仕様に応えるためには、広い周波数バンドを含むように複数の異なる周波数逓倍器を使用することが必要なことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、主にデジタル周波数逓倍器の分野を対象とし、したがってその範疇の周波数逓倍器の問題を解決することを対象とする。それらの問題の中で、以下の問題が挙げられる。
【0004】
通常、nを整数として、2nの形式の逓倍率だけしか得られない。2n以外の倍率が得られる解決策では、固定幅のパルスが最小パルス幅の異なる整数値でクロックされる。これにより、不要な周波数成分を多く含む出力周波数スペクトルが生じる。また、マイクロ波範囲など、より高い周波数に適さない非対称性及び回路の複雑さが増す。
【0005】
また、多くの提案されたデジタル逓倍器はさまざまな信号に対して非対称であり、これは非常に高い周波数で特に問題になる。また、多くの解決策はかなり複雑であり、ジッタが増す。
【0006】
更に、多くのデジタル逓倍器はXORゲートやORゲートなどの論理回路を使用して、立上り時及び立下り時の両方でパルスを生成する。これにより、逓倍器の出力中の連続したパルスに変動する曲線形態が生じることがある。
【0007】
なお、本文中の「周波数逓倍器(frequency multiplier)」という語句は、パルス列中のパルス周波数に関することを指摘している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
現行のデジタル周波数逓倍器の問題を克服するために、本発明は、信号用の入力手段と、ポイント間に所定の位相差をもつ複数のポイントで信号にアクセスするための複数のアクセス手段とを備える、パルス列の形式の信号のパルス周波数を逓倍するためのデバイスを提案する。
【0009】
このデバイスは、アクセスされた信号ペアを結合するための第1のレベルにある複数の手段を更に備え、すべての結合されるペア内で同一の位相距離があり、その場合の各第1のレベルの結合手段からの出力は新しいパルス列である。
【0010】
このデバイスはまた、第1のレベルからのパルス列を1つの単一のパルス列に結合するための第2のレベルにある結合手段を備え、本発明によれば、第1のレベルにある結合手段は、その結合手段の出力パルス列中のパルスが、結合されるアクセスされた信号ペア中の第1の信号からの立上り側腹部(rise flank)に常に一致する立上り側腹部と、前記ペア中の第2の信号の立下り側腹部(fall frank)に常に一致する立下り側腹部とを有するような手段である。
【0011】
この設計の利点は以下の詳細な説明の中で明白になる。
【0012】
適切には、結合される信号ペア内の位相距離は式(360/[2×N])+180により計算され、ここで、Nは所望の逓倍率であり、Nは任意の整数又は非整数で、1よりも大きい。
【0013】
第1の信号が第2の信号に対して360/([2×N])+180だけ遅延させられるということは、また第2の信号が第1の信号に対して360−(360/([2×N])+180)=180−(180/N)だけ遅延させられるということと同等であり、それは360°の位相差は0°の位相差と区別できないからである。
【0014】
また、第1のレベルの結合手段は、各ペアの第1の信号と第2の信号との間で区別をしないので、同じ絶対値の正の位相差及び負の位相差は同等である。
【0015】
好ましくは、第1のレベルにある結合手段はAND機能をもつ論理回路を含み、第2のレベルにある結合手段はOR機能をもつ論理回路を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下に詳細に説明される。
【0017】
図1に、本発明によるデバイス100の第1の実施形態が示される。
【0018】
基本パルス周波数finをもつパルス列の入力信号は、デバイスの入力ポート110に入力される。入力ポートは、好ましくは遅延線である構成要素120に信号を入力し、各ペア内で等しい位相間隔をもつ複数の信号ペア(signal pairs)を得ることができるよう、構成要素120にさまざまな時間間隔でタップ(tapped)する、すなわちアクセスすることができる。
【0019】
「ペア内の位相間隔(phase separation within the pairs)」という語句は、各ペアが、サンプル間に位相距離をもつ第1の信号サンプル及び第2の信号サンプルを含むことを意味する。
【0020】
入力パルス周波数finよりも4倍高いパルス周波数をもつパルス列は、デバイス100によって以下の方法で得られる。
【0021】
各ペア内の位相差は、本発明によれば、Nを所望の逓倍率として、式(360/[2×N]+180)により計算される。後に示されるように、Nは、実質的に、任意の数で、整数又は非整数であり、1よりも大きいことが可能である。したがって、図1におけるような「4逓倍」のデバイスの場合、位相差は360/8+180=225°、又は等価的に180−(180/N)=180−(180/8)=135°である必要がある。
【0022】
また、図1のデバイスは、入力信号が以下の8つのポイントでアクセスされ、ペアで4つの結合デバイスA、B、C、Dに入力されるよう設計されている。
・A: 45−270= 225
・B:135−360= 225
・C: 90−225=−135
・D:180−315=−135
ここで、360°を加えても位相差は変化せず、360°+(−135°)=225°であるので、上記の最後の2つのペアの位相差、すなわち−135°は式の条件を満たしている。
【0023】
次に図2に転じると、図1のデバイスの組合せの原理が示される。すなわち、図の上部に、図1に示された実施形態のペアにおけるような、2つのパルス列の間に225度の位相差をもつ2つのパルス列が示される。2つのパルス列の下方に、ANDゲート又は同様の機能をもつ回路、例えばNANDゲート及びインバータの機能を有する、図1に示され、本発明に含まれる結合デバイスからの出力として形成されるパルス列が示される。
【0024】
図2から分かるように、組合せから生じるパルス列は、デバイスへの入力パルス列と同じパルス周波数をもち、しかし減少したパルス幅をもつパルス列である。
【0025】
また、本発明の別の興味深い特徴が、図2の図を調べれば明らかになる。すなわち、結合される信号の両方はパルス列(実際には異なる位相をもつポイントでアクセスされた同一のパルス列)であるので、両方の信号はパルスを含み、それらのパルスは「立上り」側腹部及び「立下り」側腹部を有する。また2つの信号の組合せとして生じる信号もパルス列であり、それらのパルスは立上り側腹部及び立下り側腹部を有する。
【0026】
注目すべき特徴は、結合された信号中のパルスの立上り側腹部はすべて、結合される同一の信号の中のパルスの立上り側腹部に一致し、結合された信号中のパルスの立下り側腹部の場合も同様である。結合された信号中のパルスはすべて同一のパルス形状(立上り/立下り)から生成されるので、結合された信号中のパルスのすべてが同一の形状を有することになるために、この特徴は有益である。
【0027】
図2に示された実施形態では、結合された信号の立上り側腹部は、最上部に示された信号すなわち「位相ゼロ」をもつ信号の立上り側腹部に一致し、結合された信号の立下り側腹部は、第2の信号すなわち「ゼロ信号」に対して225°遅延させられた信号の立下り側腹部に一致する。
【0028】
次に図1に戻ると、結合手段からの出力信号は第2の結合手段Eへの入力として使用されることがこの図に示される。したがって、AND機能は信号ペアの第1のレベルの結合とみることができ、このデバイスは第1のレベルの結合からの出力信号用の第2のレベルの結合も含む。
【0029】
第2のレベルの結合デバイスEは、ORゲート又はXORゲートの機能をもつ回路であり、その結果生じる出力信号が図3に示される。この図では、4つの第1のレベルの結合器の各々からの出力信号が、A〜Dのラベルを付けて示され、これらの4つのパルス列はすべて同じパルス周波数を有し、しかし、このパルスは異なる時間に現れ、その結果、これらのパルスを図3の最下部に示された1つのパルス列に容易に結合できることが明らかになる。
【0030】
当然、各々が入力パルス列と同じパルス周波数finをもつ4つのパルス列の結合により、図1に示されたデバイスの目的であった、その周波数の4倍、すなわち4×finをもつパルス列が生じることになる。このようにして、「4倍(times four)」の周波数逓倍器が得られた。
【0031】
ここで、第1のレベルで結合されるパルス・ペアの間の位相差に関して観察することができる。すなわち、位相差は、第1のレベルの結合手段によって生成された信号が360°内で「等距離(equidistant)」になるように選択される必要があり、すなわち4つの結合器が使用される場合、位相差は360/4=90である必要がある。図1を参照すると、第1の信号は、実際に45、135、225、315であり、したがって第1の信号の各々の間は90°であることが分かる。
【0032】
これらの位相とそれらの順序が固定されると、各信号ペア中の信号のうちの第2の信号は、すべてのペアにおいて同じ量、すなわちすべての場合に+225°(=−135°)又はすべての場合に+135°(=−225°)だけシフトされることが重要である。
【0033】
図4に本発明の別の実施形態400が示される。すなわち、図4の実施形態は、本発明による逓倍器を使用して可変逓倍率を達成することができることを説明するのに役立つ。したがって、図4の逓倍器は、ポイント間に選択された位相距離をもつ多数のポイントでアクセスできる遅延線420をも含むという点で、図1〜図3を参照して図示及び説明された逓倍器に似ている。
【0034】
次に、アクセスされた信号は、前記の実施形態と同様に第1のレベルの結合回路A’、B’、C’、D’にペアで供給され、ペア中の第1の信号と第2の信号との間に同一の位相距離があり、また各ペアの中の連続する第1の信号間にも同一の位相距離がある。
【0035】
先の実施形態に加えて、図4に示されたデバイスは、また一組のスイッチを備え、それによって各ペア中の第2の信号に遅延線の交互のポイントからアクセスでき、したがってペアで結合される第1の信号と第2の信号との間の位相差を変えることができるようになる。
【0036】
前に示された式、すなわちNを所望の逓倍率として、(360/[2×N]+180)又は(180−180/N)を念頭において、それによって図4に示されたスイッチをどのように使用して逓倍率を変えることができるか分かる。
【0037】
図4に示された位置が維持される場合、「2倍」の逓倍器が得られることになる。式に戻ると、「2倍」の逓倍器は360/4+180=270の位相差を有する必要があり、これは図4に示された位置にあるスイッチをもつ図4の回路に当てはまる。
【0038】
このようにして、前に示された信号ペアの代わりに、図4において結合器を左から右に参照して、以下の信号ペアが得られることになる。
【0039】
【表1】

【0040】
分かるように、位相差は、45−315=−270及び225−135=90=−270である。
【0041】
しかし、スイッチが入れ替えられた場合、ペア内の位相距離は代わりに以下のようになる。
【0042】
【表2】

【0043】
したがって、スイッチを入れ替えることによって、2つの追加の結合器が使用可能になり、その結果第1の信号と第2の信号との間にそれぞれ
A:−225
B:−225
C: 135
D: 135
の位相距離をもつ4つの出力信号(A、B、C、D)が得られる。
【0044】
前記と同じように、−225°は、−225°+360°=135°と同等であるとみなすことができる。
【0045】
したがって、「4逓倍(multiply by four)」の回路が、スイッチを代わりの位置に入れ替えることによって得られる。図1における前記の実施形態と同様に、第1のレベルの結合器からの出力パルス列は、次にOR回路又はXOR回路E’を使用して結合される。
【0046】
図4の回路を見れば分かるように、スイッチのいくつか(45°及び225°)は、対称性の理由で示されているだけであり、決して切り替えられない。
【0047】
このスイッチは、いくつかのよく知られた適切な方法のうちのいずれかで実現することができ、ここでは詳細な説明はされない。しかし、理解しやすいように、1つの可能なスイッチの実施形態500、いわゆるトランスミッション・ゲート・スイッチが図5に示される。
【0048】
図5に示されるように、この種のスイッチはPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの並列接続を含む。この種のスイッチは、スイッチを作動するために使用される制御電圧に対して対称な伝達関数を与え、低いオン抵抗及び高いオフ・インピーダンスを与える。スイッチが使用されるので、図4のデバイスによってノイズやジッタが付加されない。
【0049】
本発明の逓倍器の背後にある一般的な原理を今までに理解されたであろう。しかし、例として、「3逓倍(multiply by three)」の回路は、信号が60°、120°、180°、240°、300°及び360°のそれぞれの位相位置を有するポイントで遅延線にアクセスすることによって達成できることを指摘できる。
【0050】
次に、AND回路を使用して、信号は次のようにペアになる。すなわち、300°−60°、60°−180°、180°−300°であり、したがって、(360/[2×N]+180)の基本条件を、この場合はNを3として360/6+180=60+180=240を満たしている。次に、これらのペアは図1又は図4に示されたOR回路で結合される。
【0051】
遅延が24の等距離の位相に分割される場合、逓倍器は、例えばスイッチを使用して、位相を結合するとき本発明の背後にある原理を適切に応用することによって、逓倍率2、3、4、6又は12のいずれにも設定することができる。この原理は、非整数の倍率を含む1より大きい任意の逓倍率に適用でき、その例が図6と関連して以下に示される。
【0052】
図6に本発明を使用する非整数逓倍器600が示される。図6のデバイスでは、「1.5逓倍」の回路が、アクセスされた信号の3周期を入力信号の2周期の間に達成するように位相を結合することによって得られる。
【0053】
適切には、入力信号は2周期までの遅延でアクセスされ、アクセスされた信号は3つのAND型回路A”、B”、C”を使用してペアで結合される。
【0054】
前記の逓倍器と同様に、図6の逓倍器600は第1のレベルの結合器、この場合はANDゲートを使用する。デバイス600は3つのANDゲートを第1のレベルの結合器として使用し、アクセスされた入力信号は以下の方法でペアに結合される。すなわち、
・360°−60°
・600°−300°
・120°−540°
である。
【0055】
分かるように、360/2×1.5+180=300であるので、Nを所望の逓倍率として、(360/[2×N]+180)の原理に従っている。(120−540=−420=2×360−420=300)
ANDゲートから、1.5逓倍のための適切な幅のパルスが生成される。しかし、1つのパルスが入力信号の各周期ごとに各ANDゲートから出力され、したがって所望のパルスの2倍のパルスが生成される。
【0056】
入力信号の2周期の間に単一のAND型回路から生じる、この場合は2の多重のパルスを有するのを避けるために、ANDゲートからの出力はフリップ・フロップによってゲートで制御され、その後ORゲートに出力される。これらのフリップ・フロップは、イネーブルが作動させられた場合のみ信号をDからQに伝達する(イネーブルが再びローになった場合でも、リセットが与えられるまでずっと信号は伝達されることになる)。リセットが作動させられた場合、Qの出力は0にリセットされ、次のイネーブル・パルスが与えられるまでそこに保持される。イネーブル信号及びリセット信号は、それぞれパルス列中の前のパルス及び次のパルスのQ出力によって与えられる。
【0057】
フリップ・フロップからの出力はORゲートE”に入力され、ORゲートE”はANDゲートからの個々のパルス列を、デバイスに入力されたパルス列の1.5倍のパルス周波数をもつ単一のパルス列に結合する。
【0058】
デバイス600の始動の間、又は例えば逓倍率を変更するとき、1つのフリップ・フロップ(例えば第1のフリップ・フロップ)以外のすべてのフリップ・フロップは、安定動作させるためにリセット信号が与えられなければならない。これは、第1のフリップ・フロップ以外のすべてのフリップ・フロップのリセット入力に追加のORゲートを配置することによって可能である。ORゲートへの入力の1つは図6におけるようであり、他は始動(start-up)リセット信号である。第1のフリップ・フロップで、追加のORゲートがイネーブル入力に配置され、1つの入力によって始動時に第1のフリップ・フロップが確実に開くように、始動リセット信号が与えられる。
【0059】
デバイス600で使用するためのゲート型フリップ・フロップを実現することができる方法の例が、図7に示される。その例には図8に示された真理値表を有するSR型フリップ・フロップ及びスイッチが含まれる。
【0060】
イネーブルがハイであるか、又はイネーブルが、ハイであった1つ前のSRフリップ・フロップ入力である場合、SRフリップ・フロップの出力はハイである。SRフリップ・フロップ出力がハイであるとき、スイッチは閉じられ、デバイス600の入力Qはデバイス600の出力に通される。リセットがハイになると、SRフリップ・フロップの出力はローになり、イネーブルが再びハイになるまでローのままである。SRフリップ・フロップの出力がローになると、スイッチは、デバイス600の出力がアースされる(ローになる)位置になる。
【0061】
しかし、図6に示されるような2周期の遅延は必ずしも必要ない。例えば、イネーブル・リセット信号のシーケンスが保持される限り、600°の入力は600−360=240°の入力で置き替えることができる。ある場合では、例えば連続する入力パルスが周波数変調信号におけるように同一でない場合に、依然として2周期の遅延を有することが好ましい。
【0062】
更に、1より大きい任意の1/2逓倍率、すなわち1.5、2.5、3.5などは、2入力周期の遅延又は単一の周期遅延の2周期シーケンスを利用して出力位相を適切に選択することによって達成できる。3周期遅延、又は単一の周期遅延のうちの3周期シーケンスの場合、1より大きい任意の1/3逓倍率、すなわち1.33、1.67、2.33、2.67などが同様の方法で達成できる。n周期遅延、又は単一の周期遅延のうちのn周期シーケンスの場合、N及びMを1以上の整数として任意のN+M/nの逓倍率を達成できる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態で使用されるn周期遅延は、例えば直列に接続されたn個のいわゆる遅延ロック・ループの使用によって設計できる。適切なDLLの例が図9に示される。DLLはそれ自体既に知られているので、ここで更に詳細に説明されない。
【0064】
更に、遅延は、第2の遅延の出力における位相を第1の遅延の入力位相と直接比較することによっても得ることができる。遅延自体は、DLL以外に、例えば能動回路(インバータ)又は可変受動遅延線などのどのような種類も可能である。使用が可能な別のタイプの遅延は強誘電体可変遅延線である。
【0065】
したがって、上記及び添付図面に示された本発明の実施形態を使用して示されたように、発振器調整範囲の適切な選択及び本発明による可変逓倍率をもつデバイスにより、非常に広い範囲の周波数発生器を実現できる。
【0066】
例として、f0からf1の動作周波数範囲をもつVCOを考えよう。更にf1=1.4×f0を仮定しよう。1.3、1.5、2、2.5、3及び4の可変逓倍率をもつ逓倍器がVCOに接続された場合、f0と4f1(=5.6×f0)との間の全周波数範囲が含まれることになる。
【0067】
結論として、本発明は、例えば以下の利点をもつ周波数逓倍器を可能にする。
・AND(又はNAND)ゲートの使用により波形がより対称的になる。
・2n以外の整数の逓倍率を、他の周波数成分が低含有量の状態で達成できる。
・非整数の逓倍率を、他の周波数成分が低含有量の状態で達成できる。
・逓倍率を制御信号(すなわち図4に示されるようにスイッチを制御すること)によって変えることができる。
・信号経路を対称にできる。
・結果として生じたパルスは、同一のパルスの「縁部」から生成されるので、同一の波形を有する。
・1つのVCO及び可変式逓倍器をもつシステムにより、非常に小型で、柔軟で、広帯域で、用途の広い周波数発生器が製作され、単一チップ上に直接実装されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】4逓倍を与える本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明による信号の第1の結合を示す図である。
【図3】可変の逓倍率をもつ本発明の実施形態を示す図である。
【図4】図2の実施形態で使用するのに適したスイッチを示す図である。
【図5】非整数の倍率の逓倍を可能にする本発明の実施形態を示す図である。
【図6】非整数逓倍器で使用するための構成要素を示す図である。
【図7】非整数逓倍器で使用するための構成要素を示す図である。
【図8】本発明で使用するための遅延構成要素を示す図である。
【図9】本発明を使用する適切なDLLの例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス列形式の信号のパルス周波数を逓倍するための周波数逓倍回路(100、400、600)であって、
前記信号用の入力手段(110、410、610)と、
ポイント間に所定の位相差をもつポイントで前記信号にアクセスするための複数のアクセス手段とを備え、
アクセスされた信号ペアを結合するための第1のレベルにある複数の結合手段であって、すべての前記結合されるペア内で同一の位相距離があり、各第1のレベルの結合手段からの出力が新しいパルス列である、複数の結合手段(A、B、C、D;A’、B’、C’、D’;A”、B”、C”、D”)を更に備え、
前記第1のレベルからの前記パルス列を1つの単一のパルス列に結合するための第2のレベルにある結合手段(E、E’、E”)を更に備え、
前記第1のレベルにある結合手段は、前記第1のレベルにある結合手段の出力パルス列中のパルスが、前記結合されるアクセスされた信号ペア中の第1の信号の立上り側腹部に常に一致する立上り側腹部と、前記ペア中の第2の信号の立下り側腹部に常に一致する立下り側腹部とを有するように結合することを特徴とする周波数逓倍回路。
【請求項2】
前記結合されるペア内の前記位相距離が、Nを所望の逓倍率、Nを1より大きい任意の数字として、式(360/[2×N])+180により計算されることを特徴とする請求項1に記載の周波数逓倍回路。
【請求項3】
前記第1のレベルにある結合手段のうちの1つ又はいくつかの入力に接続されたスイッチング手段を更に備え、
前記スイッチング手段を使用して、前記結合手段への入力が切り替えられて、Nを前記所望の逓倍率、Nを1より大きい任意の数字として、前記式(360/[2×N])+180に従った、前記結合された信号ペア内の別の位相距離を前記結合手段に与えることを特徴とする請求項2に記載の周波数逓倍回路。
【請求項4】
前記スイッチが使用されて、前記第1のレベルの結合手段の1つ又は複数への入力信号を切断することを特徴とする請求項3に記載の周波数逓倍回路。
【請求項5】
前記第1のレベルにある結合手段がAND機能をもつ論理回路を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の周波数逓倍回路。
【請求項6】
前記第2のレベルにある結合手段がOR機能をもつ論理回路を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の周波数逓倍回路。
【請求項7】
前記入力信号の2周期の間に前記第1のレベルにある結合手段から多重のパルスが生じるのを避けるために、前記第1のレベルの結合手段の出力と前記第2のレベルの結合手段の入力との間にフリップ・フロップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の周波数逓倍回路。
【請求項8】
パルス列形式の信号のパルス周波数を逓倍する方法であって、
ポイント間に所定の位相差をもつ複数のポイントで前記信号にアクセスする工程と、
すべての結合されるペア内に同一の位相距離があるようにアクセスされた前記ポイントからのペアの信号を、第1のレベルで結合する工程であって、各第1のレベルの結合からの出力が新しいパルス列になる、工程(A、B、C、D;A’、B’、C’、D’;A”、B”、C”、D”)とを含み、
前記第1のレベルからのパルス列を1つの単一のパルス列に第2のレベルで結合する工程(E、E’、E”)を更に含み、
前記第1のレベルで結合する工程では、前記第1のレベルの出力パルス列中のパルスが、前記結合されるアクセスされた信号ペア中の第1の信号の立上り側腹部に常に一致する立上り側腹部と、前記ペア中の第2の信号の立下り側腹部に常に一致する立下り側腹部とを有するように結合されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記結合されるペア内の前記位相距離が、Nを所望の逓倍率、Nを1より大きい任意の数字として、式(360/[2×N])+180により計算されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のレベルにある結合の1つ又はいくつかで使用される信号の間の前記位相距離を、Nを前記所望の逓倍率、Nを1より大きい任意の数字として、前記式(360/[2×N])+180に依然として従う、前記結合される信号ペア内の前記位相距離と交替させる能力を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記交替によって、前記第1のレベルの結合手段のうちの1つ又は複数への入力信号のうちの少なくとも1つを切断することも可能であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のレベルで結合する工程がAND機能をもつ論理演算を含むことを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第2のレベルで結合する工程がOR機能をもつ論理演算を含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記入力信号の2周期の間に前記第1のレベルにある結合手段から生じる多重のパルスを有するのを避けるために、前記第1のレベルの結合手段の出力と前記第2のレベルの結合手段の入力との間にフリップ・フロップの使用を更に含むことを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−521703(P2007−521703A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511708(P2005−511708)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001919
【国際公開番号】WO2005/057786
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】