説明

味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法

【課題】 見栄えが良く、しかも復元性に優れていて、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元しうる味付け具材入り乾燥スープ粥を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 加熱した水に米を投入し、加熱を継続して粥を作り、それにさらに水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れて味付けスープ粥を得、次いでこれを所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥することを特徴とする味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法;並びに前記方法により製造される味付け具材入り乾燥スープ粥を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具を含み、味付けをしたスープとして食する味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法に関し、復元性に優れた味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法に関するものである。
より詳しく述べると本発明は、味付けをした、野菜その他の具材を含み、さらに米も一種の具材として、スープとして食するという新しいコンセプトの製品の味付け具材入り乾燥スープ粥に関するものであって、使用した各種の具材、緑色野菜等の素材の持つ彩りを損なうことなく保存され、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元しうる味付け具材入り乾燥スープ粥を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の即席食品の市場拡大に伴って、健康志向の面から、低カロリー食品である粥の要望は比較的多い。
そこで、レトルト製品のように、粥単独の製品、或いはこれに軽い塩味程度の味付けをした製品が販売されている。
しかしながら、そのようなレトルト製品の中身の80〜90%は水分であり、運搬には相当の労力を必要とし、また消費者にとっても一度にまとめて数多くを購入する対象にはし難く、不便であった。
【0003】
このため、水分を除去し、しかも使用に際して迅速に復元するような乾燥製品の開発が行なわれている。
その際、使用勝手の良い1食単位の製品を製造することが多く、その内容量に応じて必要な内容量の大きさの容器やモールドトレーに所定量を注入して凍結し、次いで凍結乾燥して乾燥品を得ている。
その中で、粥単独の製品においては、超緩慢凍結が乾燥品の復元に大きな影響を与えるとしているのが見られるが、味付けし、さらに具材を入れた状態の乾燥製品について触れているものはなかった。
そしてお粥の持つイメージの特長的な米の粒の存在に関して述べているものが多いが、粘性を考慮に入れず、米の粒の存在にこだわらずに、米を他の具材と同列の具材の1つとして考慮するスープの状態にして喫食しようとするものはこれまでみられなかった。
【0004】
例えば、特許文献1には、凍結乾燥粥の製造方法が提案されている。
この特許文献1は粥単独に関するものであり、緩慢凍結を採用して凍結乾燥し、米の粒が残るような状態の乾燥製品ができ、復元性が良いとしている。
しかしながら、この特許文献1には具材と一緒にしたものについては、それを含むといった程度の触れ方をしているに過ぎず、具体的な記載はなく、特に凍結温度が低下して物性が変化する味付けした粥については全く触れられていない。
【0005】
次に、特許文献2には即席乾燥粥の製造法が示されている。
この特許文献2では、水またはスープで粥を作り、緩慢凍結を採用して凍結乾燥し、復元の良い乾燥製品を得ることができる、としている。
しかしながら、その中では具材の投入等については全く触れられていない。
【0006】
さらに特許文献3には固形即席粥が提案されている。
この特許文献3は凍結乾燥した粥とそれに使用する具材とを別にして凍結乾燥し、製品として包装する際に、組み合わせて一緒に包装する、といった内容のものであり、粥を味付けすること、及び粥と具材とを混合して凍結乾燥するといった発想はない。
【0007】
一般的に、でんぷん質を多く含み、加熱調理したときに糊化する製品を凍結乾燥に供する場合には、緩慢凍結を採用して、その過程で形成される氷結晶を大きくして凍結乾燥に供し、乾燥製品の復元を良好にしようとすることについては、凍結乾燥食品の製造に携わっている者であれば、通常採用している方法であるが、その詳細な方法はそれぞれの製品の特性を把握して、異なる方法を採用しているのが一般的である。
米の粒が存在する米単独成分を使用した粥については、加熱の過程で米より遊離してくる成分はほとんどがでんぷん質のもので、その成分が糊状を呈している。このような粥の中には分子量の小さい成分の溶質は含まれていないため、十分な時間を掛けての比較的高い温度条件下での凍結を行うことで、大きな氷結晶を形成させることができ、その後の凍結乾燥の結果、大きい氷結晶の跡が大きな空隙として残り、そのために復元の際には水分の容易に侵入しうる乾燥製品を得ることができる、としている。
しかしながら、前記3種の特許文献には味付けした粥については全く触れていない。
【0008】
しかも、単純に前記3種の特許文献に記載されているような手法を具材入りの味付け乾燥粥に適用しても、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元して美味しく喫食しうる味付け具材入り乾燥スープ粥を製造することはできない。
【0009】
即ち、通常の味付けのあるスープ粥として、コンパクトな、限られた容積の乾燥品を得るには、喫食状態より濃い味付けをしたものが要求される。味付けには、食塩、しょうゆ、糖類、アミノ酸等の比較的分子量の小さい成分を含む調味料類及び各種のエキス類を使用することになる。しかも、数種類の調味料類やエキス類を使用すると、プレーンな状態の、或いは軽い塩味のついた程度の粥の数倍の濃度となる。
その結果、このような味付けのある乾燥スープ粥を製造するにあたっては、米単独の粥に比較して、製品全体が明らかな凝固点降下をきたし、従来の方法の緩慢凍結工程を適用した場合には、凍結の工程で局部的に調味料類を主成分とする溶質が分離して濃縮化する現象をきたし、或いは粥全体の凝固点降下の現象をきたすことになる。
従って、一部に凍結を維持できない状態の部分があって、そのまま凍結乾燥工程に移したときに、その部分が局部的に発泡現象を起こし、或いは十分な昇華によらない蒸発乾燥の部分の比率が高くなる等の現象があり、その結果の乾燥品は所望する外観状態を得ることができず、また、喫食に際しての熱湯注入時の復元性などの特性に支障となるような大きな影響を与えることになり、その解決が要望されていた。
【0010】
【特許文献1】特許第2554010号
【特許文献2】特開平9−65884号公報
【特許文献3】特開平7−87909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、具を含み、味付けをしたスープとして食する味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法において、彩りが良く、しかも復元性に優れていて、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元しうる味付け具材入り乾燥スープ粥を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、具入りで味付けしたスープ粥の乾燥製品の製造方法において、先ず粥の製造を行い、味付けのための各種の調味料類、エキス類を加えて混合し、さらにそれぞれの具に合った前処理を行った各種の具材を添加・混合したスープ粥を所定の小枠の容器に秤量して注入した後、その後の凍結工程を3段階に分けて行なってから凍結乾燥することで、目的とする彩りが良く、復元性の良い乾燥品を得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、請求項1に係る本発明は、加熱した水に米を投入し、加熱を継続して粥を作り、それにさらに水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れて味付けスープ粥を得、次いでこれを所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥することを特徴とする味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法を提供するものである。
次に、請求項2に係る本発明は、凍結工程として、所定の容器に注入された味付け具材入りスープ粥を、先ず−1℃〜−4℃の温度条件下に置き、次いで−10℃〜−15℃の温度条件下に移して凍結を進行させ、さらに−30℃以下の温度条件下で残りの水分を十分に凍結状態にし、その後に凍結乾燥することを特徴とする、請求項1記載の味付け具材入り乾燥ス−プ粥の製造方法を提供するものである。
さらに、請求項3に係る本発明は、請求項1又は2に記載の方法により製造される味付け具材入り乾燥スープ粥を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、具を含み、味付けをしたスープとして食する味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法において、復元性に優れていて、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元しうる味付け具材入り乾燥スープ粥とその製造方法が提供される。
また、喫食に際しては、復元がスムーズで、味のバランスが良く、具材の変色、退色等の変化もなく、良好な品質のものである。
さらに、本発明によれば、成形性が良く、彩りの良い味付け具材入り乾燥スープ粥とその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法に関し、加熱した水に米を投入し、加熱を継続して粥を作り、それにさらに水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れて具材入り味付けスープ粥を得、次いでこれを所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥することを特徴とするものである。
【0016】
請求項1に係る本発明においては、まず加熱した水に米を投入し、加熱を継続して粥を作る。
このような粥の作り方については常法に従い行えばよい。
請求項1に係る本発明において用いる米としては、通常、短粒種の米、好ましくは短粒種のうるち米の精白米が挙げられるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて予め前処理した玄米等を用いることもできる。
請求項1に係る本発明においては、加熱した水に米を投入するにあたり、予め上記した米を洗浄しておくが、洗浄米の代わりに無洗米を使用することもできる。
米を洗浄した後、水に浸漬し、次いで十分に水切りしておく。水への浸漬処理は、15〜25℃程度の水に米を20〜60分程度浸漬することにより行うことが好ましい。
【0017】
このように予め前処理した米を加熱した水に投入し、加熱を継続して粥を作る。
このときの水には、ビタミンEなどの酸化防止剤を予め添加しておくことが好ましい。
水の使用量は作成する粥の柔らかさの度合いに応じて異なり、一義的に決定することは困難である。例えば、五分粥を作成する場合には、米量の10倍の水、七部粥を作成する場合には米量の7倍の水、全粥を作成する場合には米量の5倍の水、をそれぞれ使用すればよい。
粥を製造する工程において、水温が60℃以上に到達した段階で、これに前記のように予め前処理した米を投入する。
投入後、加熱を継続して粥を作る。全体の温度が95℃程度に到達したら、その時点から15〜25分間程度、好ましくはゆっくり攪拌しながら加熱を行う。
このようにして粥が作られる。通常、この時点で一旦、加熱を止める。
【0018】
このようにして得られた粥に、さらに水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れる。
なお、水の添加、調味料・香辛料類にての味付け、具材の投入は、いずれを先に行ってもよく、その順序は特に制限されないが、野菜等の彩りの色褪せを防止するには、これらは最後に投入することが好ましい。
【0019】
水の添加は、粥の製造中に蒸発した水分の補充を行う意味の他、復元性に優れた味付け具材入り乾燥スープ粥に適した水分比率の維持を行う意味がある。
このときの水の添加量を一義的に決定することは困難である。
一般には、水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れた後の粥について、糖度(Brix)が10°前後になるような量の水を添加するが、これに制限されるものではない。
例えば、通常の5分粥の製造工程で、先ず米と予め酸化防止剤(ビタミンEなど)を分散させた水との割合を1:10程度とし、水を加熱しておき、その中に米を投入して粥を作り、その後にその全質量の30〜60%程度の水を注入して加熱しさらに緩めの粥とすることもできる。
【0020】
味付け用の調味料・香辛料類としては、例えば食塩、しょうゆ、砂糖、味噌、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、各種エキス(野菜エキス、かつおエキス、酵母エキスなど)、ごま油、しょうが粉末、わさび粉末、からし粉末、鷹の爪、コショウ、ごまなどを挙げることができる。
なお、一部の調味料・香辛料類については、予め所定量の水に溶解あるいは分散しておいた方が作業性がよい。
【0021】
具材としては、スープ粥の種類に応じて様々なものを用いることができる。具体的には例えば、ほうれんそう、チンゲン菜、ねぎ、三つ葉などの野菜類;ジャガイモ、サツマイモなどのイモ類;コーン;大豆、小豆、ひよこまめ、レンズマメなどの豆類;春雨;こんにゃく;しいたけ、しめじ、きくらげなどのきのこ類;ワカメ、コンブ、もずく、天草などの海藻類;貝柱、シジミ、ハマグリなどの貝類;しらす、じゃこなどの小魚;高菜漬け、シバ漬け、キュウリ漬けなどの漬物;かきたま;とうふなどを挙げることができる。
これら具材は、必要に応じてそれぞれの具材に合った前処理をしておく。
【0022】
このようにして請求項1に係る本発明においては、先ず粥の製造を行い、味付けのための各種の調味料・香辛料類を加えて混合し、さらにそれぞれの具材に合った前処理を行った各種の具材を添加・混合して、味付け具材入りスープ粥を製造する。
【0023】
次いで、これを所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥する。
即ち、上記のようにして得られた味付け具材入りスープ粥を所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥する。
例えば、調味料・香辛料類で味付けし、具材を投入したスープ粥の所定量を小枠の容器に注入し、これを凍結庫にて凍結し、次いで凍結乾燥することにより、ブロック状の乾燥品(乾燥味付け具材入りスープ粥)を得ることができる。
特に上記のようにして得られた味付け具材入りスープ粥を所定の小枠の容器に秤量して注入した後に、その後の凍結工程を請求項2に記載したように3段階に分けて行なってから凍結乾燥することにより、目的とする彩りが良く、復元性の良い乾燥品(乾燥味付け具材入りスープ粥)を得ることができる。
【0024】
請求項2に係る本発明は、凍結工程として、所定の容器に注入された味付け具材入りスープ粥を、先ず−1℃〜−4℃の温度条件下に置き(第1段階)、次いで−10℃〜−15℃の温度条件下に移して凍結を進行させ(第2段階)、さらに−30℃以下の温度条件下で残りの水分を十分に凍結状態にし(第3段階)、その後に凍結乾燥することを特徴とする、請求項1記載の味付け具材入り乾燥ス−プ粥の製造方法である。
【0025】
凍結工程を開始するにあたっては、予め味付け具材入りスープ粥を所定の容器に注入し、所定の容器に注入された味付け具材入りスープ粥について、その表面をポリエチレンシートのような薄いシート状物にて覆い、これを凍結工程の第1段階に供する。
【0026】
凍結工程の第1段階においては、所定の容器に注入され、その表面をポリエチレンシートのような薄いシート状物にて覆われた味付け具材入りスープ粥を、比較的高い温度の−1℃〜−4℃の温度条件下、好ましくは−2℃〜−3℃の温度条件下に置く。
このように凍結工程の第1段階は、所定の容器に注入され、その表面をポリエチレンシートのような薄いシート状物にて覆われた味付け具材入りスープ粥を、冷蔵庫などで比較的高い温度の−1℃〜−4℃の温度条件下に置くものであるから、すべてが凍結まで至るものではなく、いわば次の凍結工程をスムーズに行うための準備を行う段階ともいうことができる。
【0027】
所定の容器に注入され、その表面をポリエチレンシートのような薄いシート状物にて覆われた味付け具材入りスープ粥が、上記温度条件の庫内で平衡に達するにはかなりの時間を要するが、ポリエチレンシートのような薄いシート状物で表面を覆う操作は、庫内での表面からの水分の蒸発による、表面の収縮を防止する効果がある。
この凍結工程の第1段階で、大方水分は氷結晶の核となる部分が形成されており、一部に氷結晶のみられる部分もあるが、全てが凍結状態には至っておらず、局部的には過冷却の状態にある部分も存在すると考えられ、全体的には緩いシャーベット状を呈していて、それで平衡状態を保っているようにみられる。この段階では、局部的に氷結晶の生成があっても、粥の持つ粘性が溶質の移動を阻害していると考えられ、味付けに使用した溶質の移動はまだ多くはみられていない。
【0028】
この凍結工程の第1段階を行う時間は、要するに所定の容器に注入され、その表面をポリエチレンシートのような薄いシート状物にて覆われた味付け具材入りスープ粥を比較的高い温度の−1℃〜−4℃の温度条件下に置くことにより、味付け具材入りスープ粥に局部的に氷結晶が生成して、緩いシャーベット状を呈するようになるまでであるが、一般に5時間以上、5〜20時間程度で充分である。
【0029】
次いで、凍結工程の第2段階においては、凍結工程の第1段階を行って局部的に氷結晶が生成して緩いシャーベット状を呈するようになった味付け具材入りスープ粥を、−10℃〜−15℃の温度条件下、好ましくは−12℃〜−13℃の温度条件下に置いて凍結を進行させる。
前記したように、ここでは既に凍結工程の第1段階を終了していることから、味付け具材入りスープ粥は既に凍結の準備段階にある状態にあり、粗い氷結晶の核は生成されつつある。
従って、凍結工程の第2段階においては、そのような状態の味付け具材入りスープ粥を−10℃〜−15℃の温度条件下に移すことによって凍結を進行させる。
このように味付け具材入りスープ粥は既に凍結の準備段階にある状態にあり、粗い氷結晶の核は生成されつつあることから、凍結工程の第2段階においては、前記したような温度条件下(低温条件下)に保持することによって、比較的大きい粒子の氷結晶が生成されやすく、全体の凍結は比較的スムーズに進行し、ほとんどの部分が凍結するまでに、その対象となる製品の厚さにもよるが、4〜5時間で到達し、多くの時間を要しない。一般に5〜20時間程度で全体がほぼ凍結状態を呈するようになる。
【0030】
さらに、凍結工程の第3段階においては、−30℃以下、好ましくは−30〜−35℃の温度条件下で、味付け具材入りスープ粥の残りの水分を十分に凍結状態にする。
凍結工程の第2段階の終了時においては、味付け具材入りスープ粥が−10℃〜−15℃の低温条件下でほとんどの水分が氷結晶化した段階で、残りのほんのわずかの水分が未凍結状態で残っているため、この凍結工程の第3段階においては、−30℃以下の温度条件下に移して全体をより強固な凍結状態にして、次の段階の凍結乾燥に供する。
この凍結工程の第3段階を行う時間は、要するにほんのわずかの水分が未凍結状態で残っている味付け具材入りスープ粥について、全体をより強固な凍結状態としうるようになるまでであるが、一般に5時間以上、6〜12時間程度で充分である。
【0031】
これらの凍結段階を揃えることによって、大規模凍結乾燥品製造の工業生産面における凍結庫の稼動面から考慮すると、作業の継続する中で、必ずしも一定ではないことのありがちな1個の凍結庫の稼動による凍結工程では得られない、均等な凍結状態の製品が作られ、その後の凍結乾燥の工程を経て製造された乾燥品は均等なものとなるメリットを有している。
【0032】
凍結乾燥に供するに際して、ポリエチレンシートのような薄いシート状物は取り外さなくとも良い。味付け具材入りスープ粥の表面とポリエチレンシートのような薄いシート状物の間には、小さい気泡がどの枠の製品にも存在し、その気泡が凍結乾燥機へ搭載して機内が真空になったときに膨張し、味付け具材入りスープ粥の表面から剥離する。従って、凍結乾燥工程での乾燥及び乾燥効率の障碍にはならないからである。しかしながら、凍結乾燥中に昇華した水蒸気の移動する力によってトレーから離れてしまうことがあるので、その防止処置が必要である。
【0033】
凍結乾燥工程は、できるだけ高い真空条件を使用することにより、十分な凍結状態を維持して行うことで、収縮のない乾燥品を得ることができる。具体的には、−30℃以下の凍結を維持することのできる100Pa以下の真空条件が望ましく、特に80Pa以下の真空条件がより望ましい。また、乾燥中の製品温度は、しょうゆなどの調味料の温度による変化のない50℃を超えないようにして行うのが良く、特に45℃を超えないようにして行うのがより望ましい。
【0034】
このようにして味付け具材入り乾燥スープ粥を製造することができる。
このようにして得られる味付け具材入り乾燥スープ粥を提供するのが、請求項3に係る本発明である。
即ち、請求項3に係る本発明は、請求項1又は2に記載の方法により製造される味付け具材入り乾燥スープ粥である。
【0035】
このような工程を経て得られた味付け具材入り乾燥スープ粥は、成形性が良く、彩りの良い乾燥品を得ることができた。
また、喫食に際しては、復元がスムーズで、味のバランスが良く、具材の変色、退色等の変化もなく、良好な品質のものであった。
【0036】
本発明の味付け具材入り乾燥スープ粥は、トマト味、チーズ味、さらにミネストローネ風、トムヤムクン風等のエスニック風のものへの展開も考えられるし、中華風、リゾット風、パエリア風などの新しいタイプのスープ粥への応用も考えられるものとなる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
国産無洗米1360gを用意し、これを予め30分ほど水浸し、投入前に水切りをしておいた。
一方、加熱用容器に6800gの水を用意し、その中に4.3gのビタミンE製剤を分散・溶解し、加熱した。水温が65℃に到達した段階で、これに前記のように水切りをした米を投入し、加熱を継続した。全体が95℃に達した時点から20分間ゆっくり撹拌をしながら加熱を行って、一旦加熱を止めた。この段階で米は粥状になっている。次いで、予め秤量しておいた調味料・香辛料類を添加して混合した。この際、一部の調味料については予め所定量の水に溶解しておいた。
味付け用の調味料・香辛料類として、食塩、淡口しょうゆ、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、野菜エキス、かつおエキス、酵母エキスなどを用い、さらに、しょうが粉末、ゴマ油も添加した。
【0039】
また、これに具材として、ほうれんそう、しいたけ、しめじを投入した。これらほうれんそう、しいたけ、しめじについては各々以下の前処理を行なってから投入した。
まず、ほうれんそうについては、生鮮原料について枯葉等のトリミングを行い、赤い根部の2cm上部のところでカットし、洗浄した。洗浄したほうれんそうを1%食塩溶液中で90秒間煮沸し、直ちに水冷し、水切りを行なった。水切り後30mmの長さにカットした。
次に、しいたけについては、一般に市販されている2mm巾にスライスされている長さが標準30mmの乾燥しいたけを使用し、これを復元と加熱を同時に行い、10分間煮沸した。その後の取り扱いやすさを考慮して水冷し、水切りを行なった。
さらに、しめじについては、生鮮の市販のぶなしめじを使用し、傘の部分の直径12mm以下のものを長さ30mm以下となるようにカットし、洗浄して90秒間煮沸し、水冷して水切りした。
【0040】
粥に調味料・香辛料類を入れて混合し均等になったときに、再度加熱を80℃に到達するまで行い、前記の予め前処理しておいたほうれんそう、しいたけ、しめじ、並びに、巾1.5mmの輪切り状唐辛子の各具材をそれぞれ所定量ずつ入れてさらに混合した。
【0041】
この段階で、加工中に蒸発した水分の補充を行なう意味で水を加えて調整した。その際に実際の固形分とは異なるが、糖度計の読みを指標とし、糖度(Brix)が丁度10°になるように水200gを加え、合計9650g味付け具材入りのスープ粥を得た。
【0042】
この味付けした、具材入りのスープ粥を、テーパーのついた上面の大きさが82mm×60mm、深さ32mmの成型用モールドトレー64個を構成するトレーに注入し、64面に均等に各種の具材が存在しているように調整しながら積載した。この結果、平均して1個のモールドトレーには150gの味付け具材入りスープ粥が注入されたことになる。
【0043】
次に、モールドトレーに注入した、味付け具材入りのスープ粥の表面をポリエチレンシートで覆い、先ず−2℃の冷蔵庫に移して凍結の準備を行った。5時間後の段階で、全体が−2℃の温度状態を示し、味付け具材入りのスープ粥はまだ凍結に至ることはなく、局部的にはシャーベット状になっている部分が混在しているが、溶質の移動はみられなかった。
これを−12℃の凍結庫に移すと、数時間で軽い凍結状態を呈するようになり、時間の経過と共にしっかりした凍結状態になった。比較的早い速度での凍結が行われるので、調味料・香辛料類の溶質の濃縮化している部分がほとんど見られなかった。
さらに5時間後に、−30℃以下のところに移して凍結状態をより強固なものとした。
【0044】
次いで、これを80Paの真空条件下の凍結乾燥に供して、工程中の製品のどの部分の温度も45℃を超えないようにして乾燥を行い、大きさがほぼ80mm×58mm×31mmの直方体であって、平均質量26.0g、水分含有率2.8%の味付け具材入り乾燥スープ粥の製品を得た。
この乾燥製品(味付け具材入り乾燥スープ粥)は、見栄えが良く、しかも氷結晶の存在した部分の空隙が大きく、その製品の1個に200mlの熱湯を注入して復元し、喫食に供したところ、2分以内に喫食できる状態になり、幾分の粘性のある、具材たっぷり感のスープ粥として良好なものであった。
本実施例1において、凍結に要した合計時間及び乾燥製品(味付け具材入り乾燥スープ粥)の特徴について表1に示す。なお、乾燥製品の特徴については、外観、熱湯による復元の程度及び調味料類の分散の程度について、熟練したパネラー5名により判定した。
【0045】
実施例2(じゃこと卵のスープ粥;味付け具材入り乾燥スープ粥の製造)
国産無洗米1130gを用意し、これを予め30分ほど水浸し、投入前に水切りをしておいた。
一方、加熱用容器に5650gの水を用意し、その中に4.3gのビタミンE製剤を分散・溶解し、加熱した。水温が65℃に到達した段階で、これに米を投入し、加熱を継続した。全体が95℃に達した時点から20分間ゆっくり撹拌をしながら加熱を行って、一旦加熱を止めた。この段階で米は粥状になっている。次いで、予め秤量しておいた調味料・香辛料類を添加して混合した。この際、一部の調味料については前以て所定量の水に溶解しておいた。
味付け用の調味料・香辛料類として、食塩、淡口しょうゆ、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、野菜エキス、チキンエキス、酵母エキスなどを添加した。
【0046】
また、これに具材としてかきたま、きくらげ、しらす、高菜漬けを投入した。
具材として投入するかきたま、きくらげ、しらす、高菜漬けについては、各々以下の前処理を行なった。さらに、炒り白ごま、5mmスライスした凍結乾燥わけぎも用意した。
【0047】
まず、かきたまについては、鶏卵を割卵し、ビタミンEを添加して撹拌し、流動している95℃以上に加熱を継続している2%でんぷん溶液中にゆっくり投入して作製し、加熱を停止し、予め作製しておいた7.4%濃度のでんぷん溶液を加えて冷却し、後の工程の粥との混合に備えたが、割卵後の液状卵の状態の質量の4.5倍量のかきたま溶液となった。
次に、きくらげについては、ほぼ15mm角程度の大きさの乾燥きくらげを使用し、その質量の30倍以上の水中で5分間煮沸し、次の工程の取扱いやすさを考慮して水冷し、水切りを行なって後の工程の粥との混合に備えたが、乾燥品質量の12.7倍量の質量となった。
また、しらすについては、釜揚げ、冷凍した凍結乾燥状態の長さ15〜20mmのしらす原料について、解凍して選別を行ない、別に14.0%濃度の淡口しょうゆ液を作り、そのしょうゆ溶液の1.43%量のジンジャーパウダーを添加し、同様にしょうゆ溶液の0.17%量のビタミンE製剤を添加して加熱し、90℃に達した時点でしらすを投入し、加熱を継続し、一旦温度が降下して全体が90℃に達したときに加熱を止め、その状態で自然冷却を待ち、1時間後に汁切りを行い、後の工程の粥との混合に備えたが、質量でしらす原料量の1.52倍量のしらすとなった。
さらに、高菜漬けについては、通常の高菜漬けを10mm×10mmの大きさに切断し、汁切りを行なって、粥との混合に備えたが、初期質量の95%量になった。
【0048】
粥に調味料・香辛料類を入れて混合し均等になったときに、再度加熱を80℃に到達するまで行い、前記の予め前処理しておいたかきたま、きくらげ、しらす、高菜漬けの各具材、及び炒り白ごま、凍結乾燥わけぎをそれぞれ所定量ずつ入れてさらに混合した。
【0049】
この段階で、加工中に蒸発した水分の補充を行なう意味で水を加えて調整した。その際に実際の固形分とは異なるが、糖度計の読みを指標とし、糖度(Brix)が10.5°になるように水220gを加え、合計9710g味付け具材入りのスープ粥を得た。
【0050】
この味付け具材入りのスープ粥を、テーパーのついた上面の大きさが82×60mm、深さ32mmの成型用モールドトレー64個を構成するトレーに注入し、64面に均等に各種の具材が存在しているように調整しながら積載した。この結果、平均して1個のモールドトレーには151gの味付け具材入りスープ粥が注入されたことになる。
【0051】
次に、モールドトレーに注入した、味付け具材入りのスープ粥の表面をポリエチレンシートで覆い、先ず−2℃の冷蔵庫に移して凍結の準備を行った。5時間後の段階で、全体が−2℃の温度状態を示し、味付け・具入り粥はまだ凍結に至ることはなく、局部的にシャーベット状になっている部分が混在しているが、溶質の移動はみられなかった。
これを−12℃の凍結庫に移すと、軽い凍結状態を呈するようになり、時間の経過と共にしっかりした凍結状態になった。比較的早い速度での凍結が行われるので、調味料類の溶質の濃縮化している部分がほとんど見られない。
さらに5時間後に、−30℃以下のところに移して凍結をより強固なものとした。
【0052】
次いで、これを80Paの真空条件下の凍結乾燥に供して、工程中の製品の温度がどの部分も45℃を超えないようにして乾燥を行い、大きさがほぼ80mm×58mm×31mmの直方体であって、平均質量24.8g、水分含有率3.2%の味付け具材入り乾燥スープ粥の製品を得た。
この乾燥製品(味付け具材入りの乾燥スープ粥)は見栄えが良く、しかも氷結晶の存在した部分の空隙が大きく、その製品の1個に200mlの熱湯を注入して復元し、喫食に供したところ、2分以内に喫食できる状態になり、幾分か粘性のある、具材たっぷり感のスープ粥として良好なものであった。
【0053】
比較例1(2段階凍結法)
実施例1において、−12℃の凍結を行わずに2段階の凍結を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。凍結に要した合計時間及び乾燥製品(味付け具材入り乾燥スープ粥)の特徴について表1に示す。
【0054】
比較例2(1段凍結法)
実施例1において、−2℃及び−12℃の凍結を行わずに−30℃でのみ凍結を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。凍結に要した合計時間及び乾燥製品(味付け具材入り乾燥スープ粥)の特徴について表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示されるように、乾燥製品の熱湯による復元は、実施例1では良好であったが、比較例1では局部的に復元しにくい部分があり、比較例2では表面が糊化しているため復元し難く、復元が十分でなかった。また、比較例1では、調味料類が均等に分散しておらず、このため外観も良いものではなかった。
以上のように、実施例に示されるような本発明の3段階凍結法により、水分の多い食品でも均一に凍結を行うことが出来、しかも熱湯により良好な復元がなされることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
請求項1〜3に係る本発明によれば、復元性に優れていて、熱湯を注ぐだけで短時間に容易に復元しうると共に、成形性が良く、見栄えの良い味付け具材入り乾燥スープ粥が提供される。
従って、請求項1〜3に係る本発明は、食品工業分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した水に米を投入し、加熱を継続して粥を作り、それにさらに水を加え、調味料・香辛料類にて味付けし、具材を入れて味付け具材入りスープ粥を得、次いでこれを所定の容器に注入し、凍結工程を経た後に凍結乾燥することを特徴とする味付け具材入り乾燥スープ粥の製造方法。
【請求項2】
凍結工程として、所定の容器に注入された味付け具材入りスープ粥を、先ず−1℃〜−4℃の温度条件下に置き、次いで−10℃〜−15℃の温度条件下に移して凍結を進行させ、さらに−30℃以下の温度条件下で残りの水分を十分に凍結状態にし、その後に凍結乾燥することを特徴とする、請求項1記載の味付け具材入り乾燥ス−プ粥の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造される味付け具材入り乾燥スープ粥。

【公開番号】特開2006−262780(P2006−262780A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85729(P2005−85729)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(397009004)アサヒフードアンドヘルスケア株式会社 (14)
【出願人】(301016986)日本エフディ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】