呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置
【課題】呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法。
【解決手段】a呼吸入力変数が演算装置に入力される段階と、b混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が演算装置に入力される段階と、c死腔率Xの初期値が演算装置に入力される段階と、d肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が自動演算装置に入力される段階と、e演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、f肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、g酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2が得られる段階と、h肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、i複数の混合静脈の酸・炭分圧V*nを初期値にしてb乃至hの段階が反復されて、複数の肺胞ガスの酸・炭分圧A*n及び呼吸特性値が決定される段階と、j呼吸特性値が決定される段階と、k心拍出量が算出される段階とを包含する呼吸特性値の予測方法。
【解決手段】a呼吸入力変数が演算装置に入力される段階と、b混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が演算装置に入力される段階と、c死腔率Xの初期値が演算装置に入力される段階と、d肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が自動演算装置に入力される段階と、e演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、f肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、g酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2が得られる段階と、h肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、i複数の混合静脈の酸・炭分圧V*nを初期値にしてb乃至hの段階が反復されて、複数の肺胞ガスの酸・炭分圧A*n及び呼吸特性値が決定される段階と、j呼吸特性値が決定される段階と、k心拍出量が算出される段階とを包含する呼吸特性値の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置に関する。より詳細には、本発明は、呼吸の換気ガス及び血液から得た基礎測定変数を使用して心肺器官の呼吸機能の特性、心拍機能の特性、肺臓構造の特性などの主要生理特性値等を予測することのできる非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成人の心臓の重さは350〜400g、長さは12〜15cm、幅は略9cmである。安静時の1分当りの心臓の拍動数は60〜70回で一日平均略10万回、一生(70歳基準)26億回の拍動をする。体中にある血液は略5Lであり、1回の心拍出量は、略60〜70cc、1分当りの心拍出量は略3.5〜5.0Lで、心臓から出た血液が体の中を一回循環するごとに略40〜50秒かかる。心臓の時間当たり機械的エネルギーの生産量は、略6,000calで、70年間の生産量を計算するとき、30トンの岩石をエベレスト山の頂上まで引き上げる量に比肩される。
【0003】
人体の心臓には2つのポンプがあり、心臓の収縮時に微細な時間間隔をおいて拍動するが、右心室は肺循環に、左心室は体循環に血液を吐出する。また、心臓には大動脈、肺動脈、冠状動脈、動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈、肺静脈、下大静脈、上大静脈など多くの血管があり、これらの総延べ長さは略96,000kmで地球赤道の周りを2回半を回る距離に相当する。また、外部からの電源供給がなくても自ら心臓が拍動を行うのは、右心房の筋肉の中にある洞房結節という細胞の塊りがあるため、緩慢なイオンチャンネル及び急速なイオンチャンネルを通じて略0.8秒の間隔で電気を集めた後に放電し、プルキンエ繊維素が電気を心臓周辺の筋肉に配分させることによって筋肉が統制された方法で興奮・収縮して弛緩するためである。
【0004】
人体の心臓と肺における血液の循環手順は、図1で示すように右心室270→(肺動脈弁)肺動脈240→肺毛細血管250→肺静脈230→左心房280→(僧帽弁)左心室290→(大動脈弁)大動脈210→動脈→全身毛細血管300→静脈→大静脈220→右心房260→(三尖弁)右心室270の経路を繰り返す。
【0005】
前記のような循環経路のうち、特に肺循環は、小循環ともいい、図2で示すのように右心室270から出た血液は、肺動脈240を通じて左右の肺200に到達し、肺胞120の周りに直径数μmの大きさである毛細血管に分布されて広がり、ここで、薄い肺胞膜を通じて呼吸空気と血液の間で非常に急速な酸素と二酸化炭素の交換をなした後、肺静脈230を通じて再び左心房280に戻る循環である。したがって、肺動脈240には、細胞の代謝によって二酸化炭素の多い静脈血が流れるとともに、肺静脈230には、ガス交換によって酸素が豊富になった動脈血が流れる。
【0006】
前記のような肺循環によって排出される呼吸空気と血液は、老廃物である二酸化炭素を除去し、代謝に必要な酸素を流入させる生命維持の機能を果す一方、人体は、その血液中に酸素の予備的貯蓄が少ないため、呼吸が停止すれば数分内に死亡することになる。また、呼吸器におけるガス交換特性に係る情報は、臨床医にとっては、医学的にも呼吸器患者、殊に重態患者の呼吸機能、代謝機能、心拍機能、回復程度などを判断するにおいて重要な情報源となるため極めて重要である。
【0007】
この他にも、手術後の患者の回復過程、殊に地下鉄や潜水艦や昇降機などのように密閉された空間に群集した乗り込み人が長い時間搭乗するときに二酸化炭素の増加によって起る呼吸生理及び換気の問題や、高山登攀者や高山地帯の住民が経験する希薄空気または低い大気圧による高山呼吸症など呼吸生理に関連するスポーツ医学、または、火災などの事故による煙に窒息して気道や肺細胞が損傷された患者の心肺機能の評価、マラソンやヘルスセンター運動など生活スポーツに係る利用者の心肺能力の測定などによる心肺能力の詳細な情報が健康指数や疾患の予測情報の手段として有用な情報になって活用される。
【0008】
しかし、これらの必要な情報を専門家が患者や被検者の体に対して侵襲的な方法によって直接測定することは、患者に苦痛と危険を加えるだけでなく、時間と経費を必要するとともに、ある種の測定は初めから不可能な場合もある。したがって、体外において非侵襲的かつリアルタイムで予測することのできるように、呼吸気体の酸・炭分圧及び流量情報と動脈血の基礎情報に基づいて臨床医と患者自身に必要とする呼吸特性値などの変数を数学的生理モデルによって予測してリアルタイムで提供することができれば非常に望ましいことと期待されるのである。
【0009】
心臓から肺に供給される血液の総量(心拍出量)を予測する第1の方法としては、特許文献1(心拍出量測定用カテーテル及び血液流速測定用カテーテル)の代表図、即ち、本願図3に図示する従来のカテーテルを利用した直接的な測定法がある。前記カテーテル500は、熱希釈法によって心拍出量を測定するために液体の吐出を行う開口部510と、前記開口部510から所定の間隔をおいて配設された温度検出素子サーミスター(thermistor)520を包含し、前記液体によって希釈された血液温度を検出する温度検出手段530と、前記サーミスター520の近傍に血流速度に関連する信号を検出する血液流速信号の検出手段540とを包含する複雑な要素によって構成され、また、前記血液流速信号の検出手段540は、自己発熱型サーミスター520を包含し、前記血流速度に関連する信号は前記サーミスター520が検出した熱平衡温度であることを特徴としている。
【0010】
前記カテーテルを利用する測定方法は、図4に示すように肺動脈用のカテーテルを頸静脈、大腿静脈、または主大静脈などに導管して、上大静脈または下大静脈、右心房260、右心室270を経て肺動脈までに挿入し、血液より高温または低温の液体を右心房260に注入した後、右心房260と右心室270で拡散希釈された液体の温度を肺動脈の中に位置しているサーミスターにより検知することによって、心拍出量を算出する方法である。これは熱希釈法(thermodilution technique)として分類される侵襲的な方法である。
【0011】
第2の方法としては、図5に図示した特許文献2(心拍出量と心電図をモニタリングするための電極設置方法及びこれを利用した装置)のように、手(または足)または腕(または脚)に多数の電極を設置してこれらから収集された電気信号を分析して心拍出量を評価する電極信号分析法がある。
【0012】
図5を参照してこの方法をより詳細に説明する。人体の右手(または腕)と右足(または脚)に設置される電流電極32a、32bと、人体の左手(または腕)と左足(または脚)に設置される電圧電極34a、34bと、制御信号に従って前記電極32a、32b、34a、34bを心拍出量測定部400aまたは心電図測定部400bの中、1つに連結するスイッチング手段400cと、前記スイッチング手段400cを通じて連結された電流電極32a、32bに高周波電流を印加して、前記電圧電極34a、34bから電圧を測定して心拍出量を測定する心拍出量測定手段と、前記スイッチング手段400cを通じて連結された電圧電極34a、34bから差動信号の入力を受けて心電図(ECG)を測定する心電図測定手段と、使用者の要求によって前記スイッチング手段400cに前記制御信号を提供して、前記心拍出量の測定手段及び前記ECG測定手段の測定値を入力して表示部に表示するように制御する制御手段とを包含して構成されることを特徴としている。
【0013】
第3の方法は、呼気ガスを測定して非侵襲的に心拍出量を評価するNICO(Non Invasive Cardiac Output)と称する方法がある。代表的なものとしてNovametrix Medical Systems社で開発した“部分的二酸化炭素の再呼吸法(Partial CO2 rebreathing method)”がある。この方法は、呼気ガスの中から二酸化炭素の分圧を測定し、これを使用して二酸化炭素に関するFick方程式の解を得て心拍出量を評価する方法である。しかし、この方法は、酸素の拡散に関する情報が使用されないことによって入力変数は簡潔であるが予測の正確度が低いという問題がある。
【0014】
第4の方法は、特許文献3に開示されているように、測定された心拍出量、酸素吸入量及び動脈血の酸素分圧などの過重な入力変数を使用し、酸素に関するFick方程式を解いて混合静脈血の酸素分圧を得る方法である。
【0015】
しかし、以上のような従来の測定法を検討した結果、前記第1の方法は、正確ではあるものの深刻な侵襲的方法であるため施術を受ける患者にとっては施術上の苦痛とともに、合併症または感染の危険をもたらすことがあり、第2の方法は、人体の特定部位に電極を正確に装着しなければならない実行上の煩わしさがあり、第3の方法は、二酸化炭素分圧の測定値のみをFick方程式に使用することによって、解法の過程が簡単というメリットはあるが、方程式の数が少なく、血液中の赤血球細胞に結合される酸素の情報が漏落されることによって、予測される情報の量が少なく、かつ正確性も劣るので心拍出量が6liter/min程度でなければ、信頼性が劣ると知られている。第4の方法も、酸素に関するFick方程式という制限された数式のみを利用するという点で、また、動脈波を探知するトランスジューサ(圧電センサー)を設置してここから出る心拍出量の情報を利用するので、使用の不便と正確性が低く、また、混合静脈血の炭酸ガス分圧の予測なしに酸素分圧のみを予測するという点でその情報が制限的である。
【0016】
ここで、以上の先行技術と本願発明を概略的に対比するとき、本願発明は、酸素と二酸化炭素に関する質量を全て保存させる質量平衡方程式、シャント率方程式、呼吸率方程式、換気−かん流比方程式などと増加した数の数式を利用し、心拍出量と混合静脈の酸・炭分圧の情報はもちろん、肺臓のシャント率、死腔率、末端毛細血管における酸・炭分圧の情報などを呼吸モデルの分類と解析方法によって素早く計算し、その結果によって有用かつ正確な医学情報を非侵襲的な方法でリアルタイムで提供することを特徴としているので、本発明の技術思想と先行技術とは大きな差異がある。
【0017】
人体の肺臓には、健常人の場合でも大・小の差はあるがシャントと生理学的な死腔があり、呼吸器患者の場合は、特にこれが深刻な程度になるため呼吸機能に相当な障害を起す。したがって、シャントと生理学的な死腔を考慮しない方法によって予測された呼吸特性値は、肺臓に対する理想的な結果のみであるため、実際の患者に対する臨床的測定値とはその分誤差があると見ても間違いない。また、たとえシャントと死腔を考慮して呼吸の問題を設定して解析するとしても、呼吸関連方程式の数式化の方法と、その解法の精密度によっては、やはり無視することのできない誤差が発生することもある。このような事情を鑑みて、本願発明は、酸素の質量平衡方程式、二酸化炭素の質量平衡方程式、酸素のシャント率方程式、二酸化炭素のシャント率方程式、換気の呼吸率方程式、血液の呼吸率方程式、酸素の換気−かん流比方程式、二酸化炭素の換気−かん流比方程式などと増加した数の数式を利用して、肺臓のシャントと生理学的死腔とを考慮するとともに混合静脈血のガス分圧などの境界値が知られていない呼吸問題を、3つの呼吸モデル分類を通じて体系的に求められる独特な方法を提供している。
【0018】
肺臓のガス交換過程は、血液が拡散を通じて二酸化炭素を排出するとともに酸素を取り込む過程であるため、必ず2つの成分ガスの分圧の増・減が反対方向に起る連結環を有している。一般的に呼気終末に肺胞ガスの酸・炭分圧A*と末端毛細管血の酸・炭分圧C*は平衡を通じてA*=C*になる。もし、肺臓に生理学的死腔がある場合、ガス交換ができなかった非機能性空気が混合され、肺胞でガス交換を終えた機能性空気に比べて呼気終末のガスは二酸化炭素分圧が低く、酸素分圧は高い。また、シャントがある場合、ガス交換ができなかった非機能性血液が混合され、末端毛細血管でガス交換を終えた機能性血液に比べて動脈血においては酸素分圧が低く、二酸化炭素の分圧は高い。したがって、呼気終末ガスや動脈血のガス分圧に対する測定が、そのまま、肺臓内部の肺胞ガスや末端毛細管血のガス分圧の予測に連結されなく、肺胞ガスや末端毛細管血の採取自体も非常に難しいので、直接的な測定を通じて末端毛細管血や肺胞ガスの酸・炭ガス分圧を検査することはほどんど不可能である。したがって、シャントや生理学的死腔を考慮して人体の心肺器官に関連されたいろいろな生理特性値を予測することは非常に重要であり、従来方法と比べて非侵襲的かつ体系的にリアルタイムで素早い予測手段と装置を提供する本発明は、進一歩した思想による測定方法と言える。
【特許文献1】韓国公開特許特1987−0002027号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第10−1999−0000417号明細書
【特許文献3】韓国公開特許特1999−22493号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記のように、従来技術における施術上の困難性、危険性、副作用、不正確性、時間的遅延、及びいろいろな制約を補完するべく案出された発明であって、本発明の目的は、呼吸の換気ガスにおいて吸気や呼気の流量と、その酸・炭分圧を測定し、動脈血の酸・炭分圧を測定して入力変数とし、これらを用いて酸素と二酸化炭素に関する質量平衡方程式などの数式システムをコンピューターによって解析する方法を提供する。また、前記結果の解析によって心肺器官における混合静脈血の酸・炭分圧、末端毛細管血の酸・炭分圧、肺胞ガスの酸・炭分圧、心拍出量、シャント率、なおかつ生理学的死腔率などを正確に予測する混合静脈暫定データ領域の設定を通じて非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸素と二酸化炭素の濃度V(以下、酸・炭濃度と略記する)の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式(mass balance equation)とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するために、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、(h)シャント率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0021】
前記(a)段階において、前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられ、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えれるか、または、測定された酸素分圧として与えられ、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に、二酸化炭素の分圧が測定され、前記吸気流量
【0022】
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部に出る総流量である呼気流量VEと同一に策定することができることを特徴とする。
【0023】
前記(h)段階において、前記シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。前記(f)段階において、前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素及び窒素に関する質量平衡方程式であることを特徴とする。
【0024】
前記(i)段階において、前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて前記自動演算装置に入力されることができ、前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子間隔が均一でなく、大きいサイズと小さいサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、初めの大きな格子が後で小さな格子に再分割されることもできることを特徴とする。
【0025】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式と、Fick方程式とを包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、(h)前記死腔率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0026】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0027】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、(h)シャント率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0028】
前記(h)段階において、シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0029】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)前記シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とが得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2が得られる段階と、(h)死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0030】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0031】
前記各呼吸特性値の予測方法の(j)段階において、前記呼吸率要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧との差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断し、前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中、いずれか1つであることを特徴とする。
【0032】
また、前記各呼吸特性値の予測方法の(k)段階において、心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、また、生理学的死腔率X**を利用して得られることを特徴とする。
【0033】
前記各呼吸特性値の予測方法の前記(a)段階において、血液補助情報値は、動脈血における酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)の段階が反復されて動脈血における二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることを特徴とする。
【0034】
また、前記目的を達成するために、本発明は、前記呼吸特性値の予測方法の中、いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含することを特徴とする呼吸特性値の表示装置を提供する。
【0035】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線で連結されて携帯可能であり、前記自動演算装置は、コンピュータープロセッサーまたは内蔵チップ(embedded chip)を使用することもできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、非侵襲的に呼吸特性値の予測を可能にする測定装置と、心肺器官の血液呼吸特性、心拍機能特性、肺臓機能特性などの生理特性を評価するために、複雑な問題を順次的に解析することのできる3つの呼吸モデルの分類と、前記それぞれの呼吸モデルに対するコンピューターの解析方法と、これに対応する演算装置によって構成される特徴を有し、さらに本発明は、肺臓にシャントや生理学的死腔のない場合を含めて、シャントや死腔がある場合にも正確かつ有効な予測方法であるメリットがある。これは、従来の肺動脈用カテーテルを右心房、右心室を経由して肺動脈にまで挿入する熱希釈法とは異なり、測定対象者に苦痛を与えるとともに、これによって発生するおそれのある感染と合併症を避けることができるとともに、手や足に電極を正確に装着しなければ電気的生態信号を受けられない電極付着法のような煩わしさがなく、呼吸によって発生する二酸化炭素データだけを使用するNovametrics社のCO2−再呼吸法のような、特定の狭い心拍出量の範囲においてのみ有効なCO2−再呼吸法とは異なり、肺胞毛細血管において二酸化炭素はもちろん、酸素拡散による平衡も考慮するため、広い範囲における心拍出量に対して肺臓−肺循環系の各種呼吸特性値を正確に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の好ましい実施形態において使用する用語は、できる限り現在広く使用されている一般的な用語を選択しているが、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合は、該当する発明の詳細な説明の部分でその意味を記載しているので、単純な用語としての名称ではなくその用語の有する意味によって本発明の内容を把握して欲しい。
【0038】
以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照して説明する。ただ、以下の実施形態によって本発明が制限されたり、限定されるものではなく、多様に変形されることができるとともに、本発明の技術的思想を包含する実施形態は、全て本発明の範囲に包含されるといえる。
【0039】
図1のように、人体における血液の循環は、大別して2つに分かれる。即ち、体の各器官を形成している細胞単位の組織に酸素を供給してこれらから二酸化炭素を回収する体循環(system circulation)と、回収された二酸化炭素を体外へ排出して酸素の供給を受ける肺循環(pulmonary circulation)である。体循環を終えた血液は、右心室から肺動脈(pulmonary artery)に供給されるとともに肺循環を始める。脱酸素化された混合静脈血液(mixed venous blood)は、肺臓の末端器官である肺胞で呼吸器官を通じて供給された新鮮な空気とガス交換して酸素化された動脈血液(arterial blood)となって肺静脈(pulmonary vein)を通じてさらに左心室に供給される。
【0040】
しかし、肺臓には、肺胞に供給された空気の中、肺毛細管血(pulmonary capillary blood)とガス交換できなくする死腔(dead space)が存在し、また、血液の中、肺胞空気とガス交換できなくするシャント(shunt)が存在する。このとき体外へ排出される空気には、結局、死腔内の空気が混合されているため、ガス交換をなした肺胞内の空気とは酸素−二酸化炭素の組成が異なることがあり、同じ理由によって、肺循環を終えた動脈血液(arterial blood)には、シャントによる混合静脈血液が混合されるため、完全に酸素化された肺末端毛細管血(pulmonary end−capillary blood)とは、酸素−二酸化炭素の組成が異なることがある。
【0041】
図6は、人体の肺胞で起るガス交換過程の模式図である。肺胞におけるガス交換過程は、基本的に1)肺胞と肺毛細血管、2)シャント、3)死腔、からなる3−区画の肺モデル(compartment lung model)で構成される。(場合によっては、肺胞と肺毛細血管とのガス交換を換気−かん流比(
:ventilation−perfusion ratio)の値が高い場合と正常の場合と低い場合とに区分して、5−区画の肺モデルとして定義することもある。)
以下、本願発明を詳細に説明するために数学式を使用する。また、この数学式などで使用される記号は下記のように定義される。
【0042】
:動脈血管内の二酸化炭素濃度[%]
:動脈血管内の酸素濃度[%]
:末端毛細血管内の二酸化炭素濃度[%]
:末端毛細血管内の酸素濃度[%]
:混合静脈内の二酸化炭素濃度[%]
:混合静脈内の酸素濃度[%]
:大気中の二酸化炭素の分圧比
:大気中の窒素価tmの分圧比
:肺胞内の二酸化炭素分圧[mmHg]
:肺胞内の水蒸気圧[mmHg]
:肺胞内の窒素分圧[mmHg]
:肺胞内の酸素分圧[mmHg]
:大気圧[mmHg]
:末端毛細管血の窒素分圧[mmHg]
:大気中の空気の窒素分圧[mmHg]
:大気中の空気の酸素分圧[mmHg]
:混合静脈血の窒素分圧[mmHg]
:毛細血管のかん流量[liters/min]
:シャント率における毛細血管のかん流量[liters/min]
:心拍出量[liters/min]
:肺胞でガス交換する空気の流量[liters/min]
:死腔空気の流量[liters/min]
:吸入または呼気される空気の総流量[liters/min]
:吸入空気の流量[liters/min]
:肺胞に出る二酸化炭素の流出量(carbon dioxide output)[ml/min]
:毛細血流に入る酸素流入量(oxygen uptake)[ml/min]
:呼吸率
:死腔率
:シャント率
:呼吸係数
:血液と空気に関する係数
【0043】
空気の吸入を通じて肺胞に供給された各成分気体(O2、CO2、N2)と、右心室から肺毛細血管に供給された混合静脈血液の各成分気体の間のガス交換は、肺胞膜(alveolar membrane)を通じて相互間の質量が保存されながらなされるが、これらの関係を数式化したものが下記の数学式1乃至数学式4で表現される質量平衡方程式である。
【0044】
(数学式1)
(数学式2)
(数学式3)
(数学式4)
【0045】
図7は、人体の肺胞における酸素−二酸化炭素のダイアグラムである。混合静脈血液と吸入空気の酸素−二酸化炭素の分圧を入力値で代入して前記質量平衡方程式を解くと、肺胞内の酸素−二酸化炭素の分圧の質量保存は、図7のように、この2つの入力値を両端末点とする1つの曲線からなるO2−CO2ダイアグラムに具体化される。
【0046】
前記曲線上の任意の1つの点は、前記質量平衡方程式を満足する肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧のみならず、この点に該当する換気−かん流比(
【0047】
)まで意味する。一般的にO2−CO2ダイアグラム上で換気−かん流比は、0〜無限大の分布を有する。左側の端末点である混合静脈血液の酸素−二酸化炭素の分圧点は、換気、
である点でシャント血液の分圧と同一であり、右側の端末点である吸入空気の酸素−二酸化炭素の分圧点は、かん流、
である点で死腔空気の分圧と同一である。
【0048】
健常人の場合でも、7%未満のシャント率と25%程度の死腔を有していると知られており、肺の上部に比べて下部において換気とかん流がすべて増加するが、換気に比べてかん流の増加量が大きいため、換気−かん流比は、肺の最上部で最も大きく、肺の下部になるほど漸次減少すると知られている。このように、肺胞膜を通じてガス交換することにより完全酸素化(full oxygenation)された肺末端毛細管血液は、シャント、換気−かん流比不均衡(heterogeneity)などによって完全に酸素化されていない血液と肺静脈(pulmonary vein)で合流した後、左心房に戻る動脈血液は、完全酸素化された血液とは酸素濃度において差がある場合がある。
【0049】
同様な理由によって、肺胞で血液とガス交換した肺胞ガスは、呼気の間、吸入空気と酸素−二酸化炭素の分圧が同じ死腔空気と混合されて体外に排出されるため、肺胞ガスは、呼気ガスと酸素−二酸化炭素の分圧が異なる場合がある。したがって、肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧は、肺の呼吸作用と心臓の血液循環によって発生する要素などを考慮して予測しなければならない。
【0050】
混合静脈血液(
)と動脈血液(
)間の酸素−二酸化炭素の濃度差異は、代謝的観点でなる組織における酸素消費(
:oxygen consumption)と二酸化炭素の生産(
:carbon dioxide production)と直接的な関係があり、これは下記の数学式5及び数学式6で表現されるフィックの原理(Fick’s principle)によって数式化される。
【0051】
(数学式5)
(数学式6)
【0052】
呼吸が安定された状態と云える正常状態において、代謝的観点である二酸化炭素の生産に対する酸素消費量の比で定義される呼吸率(respiratory quotient、
)は、質量平衡方程式から誘導されて肺胞と肺毛細管血液との間で起る二酸化炭素の除去と酸素の摂取との比を示す因子である呼吸交換率(R:respiratory exchange ratio)と同一である。もし、呼吸によって呼吸量の増減が発生すると、肺胞における呼吸交換率は、代謝作用による呼吸率より速く変われたので、この2つの因子が常に同一ではない。肺胞での呼吸交換率は、下記の数学式7及び数学式8のように示すことができる。
【0053】
(数学式7)
(数学式8)
【0054】
しかし、正常状態においては、この2つの因子から呼吸ガス/血液に関するいろいろな情報を得ることができる。まず、
と
から混合静脈血液と動脈血液、また、肺末端毛細管血液の酸素−二酸化炭素の濃度が1つの関係式によって定義されることができ、これを満足する3つの点の酸素−二酸化炭素の濃度の分布は、1つの線分上に存在する。
は、吸入空気と肺胞ガスの酸素と二酸化炭素分圧の関係式である。もし、肺胞ガスと肺末端毛細管血液の酸素−二酸化炭素の分圧が同一である場合、
と
の式から肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を求めることができる。臨床において肺胞酸素分圧(
)は酸素と二酸化炭素に関する肺胞換気方程式(alveolar ventilation equation)である下記の数学式9及び数学式10から誘導した数学式11から求めることができる。ただ、数学式11から誘導された値は、数学式8から誘導された下記の数学式12で求めた値より不正確である。また、数学式9と数学式10は基本的にRileyが提示した肺胞ガスの二酸化炭素分圧(
)が、動脈血液の二酸化炭素分圧(
)と殆ど同一であるとする仮定を前提にしている。前記2つ分圧の差は、1〜3mmHg程度に小さいが、呼吸不全を経験する患者の場合はさらに大きい差を示すため、数学式11から求められた肺胞の酸素分圧が必ずしも真の値であるとは言えない場合もある。
【0055】
(数学式9)
(数学式10)
(数学式11)
(数学式12)
【0056】
肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧をより正確に予測するためには、3−区画の肺を基本とする肺胞ガスと血液のガス交換、シャント、死腔を考慮して計算することのできるアルゴリズムで構成された電算解析が必要である。質量平衡方程式、シャント方程式、死腔関係式、呼吸率(
)、呼吸交換率(R)など多様な方程式を同時に満足させることのできる肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を探すためには、同一の計算を数多く反復しなければならない特性と、酸素−二酸化炭素の分圧から血液の濃度を求める複雑な計算に最も効果的な方法が電算解析であるためである。
【0057】
構成されたアルゴリズムを電算解析して肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を得るためには、いろいろ多様な入力値を必要とする。例えば、混合静脈血液、動脈血液、吸入空気、呼気空気の酸素−二酸化炭素の分圧などである。これらの中で特に混合静脈血液は、上大静脈または下大静脈から右心房を経て肺動脈までカテーテルを挿入してサンプリングしなければならないが、このような方法は患者には苦痛であるとともに、高度に熟練された臨床医だけが施術可能であり、長時間のカテーテル挿管時には合併症のおそれもあるため、生命に係る危険な重患者でない限りこのような施術は避けるべき医療行為である。しかし、混合静脈血液のサンプリングなしにも肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測することができるとすれば、上記で例挙した困難性を回避するのみならず、医療費の節減にも役に立つことになる。
【0058】
混合静脈血液と肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測するために、混合静脈血液が存在すると見られる領域を選定し、この領域の酸素−二酸化炭素の分圧値をアルゴリズムに代入し、質量平衡方程式、シャント方程式、死腔関係式、呼吸率(
)、呼吸交換率(
と
)などのような数学式を満足する肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を求めた後、これらの中で
と
の差が最少になる混合静脈血液と肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測値として確定する。肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測するために利用されるシャント率方程式は、下記の数学式13及び数学式14のように表現され、死腔率方程式は、数学式15及び数学式16のように表現され、換気−かん流比方程式は、数学式17乃至数学式20のように表現され、心拍出量方程式は、数学式21及び数学式22のように表現することができる。
【0059】
<シャント率方程式>
(数学式13)
(数学式14)
<死腔率方程式>
(数学式15)
(数学式16)
【0060】
<換気−かん流比方程式>
(数学式17)
(数学式18)
(数学式19)
(数学式20)
【0061】
<心拍出量方程式>
(数学式21)
(数学式22)
【0062】
次は、呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法及びその表示装置についてより詳細に説明する。
【0063】
図8は、本発明の1実施形態による肺臓−肺循環系の呼吸特性値の予測装置を示すブロック図である。前記装置は、換気ガスを通過させるマスクとノズル手段1、2と、前記ノズルに付着されたバイオセンサーから換気ガスの流量及び酸・炭分圧を測定するセンサー測定手段3、4、5と、前記測定変数を入力して心肺器官の各種生理特性値を算出する3つの呼吸模型に対する解析過程をプログラムにして内蔵したマイクロプロセッサーやコンピューター手段7と、前記の基礎測定変数と予測された生理特性値を液晶画面、コンピューター端末機、プリンタ、携帯電話、PDAなどに視覚的にディスプレイする手段8、とを包含して構成されている。本発明による呼吸ガス及び血液ガスの測定を通じて非侵襲的に呼吸特性値を予測する方法は、前記図8に図示した装置を通じて具現することができる。次に、本発明の呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法をさらに詳細に説明する。
【0064】
本発明による前記肺臓−肺循環系の呼吸特性値の予測装置は、心肺器官の生理特性値として、混合静脈血と末端毛細管血(または肺胞ガス)の酸・炭分圧のような血液呼吸特性値、心拍出量のような心拍機能特性値、シャント率や生理学的死腔率のような肺臓機能に係る特性値を同時に予測することができる。
【0065】
より具体的には、換気ガスを通過させるノズル段階と、ノズルに付着されたバイオセンサーを通じて、吸気や呼気の流量
、これの酸・炭分圧I*と呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*などを測定して呼吸気体の基礎変数とする段階と、動脈血の酸・炭濃度a*を測定する段階と、前記測定変数を入力して、酸素と二酸化炭素に関する質量平衡方程式などの数式システムを解析して心肺器官のいろいろ重要な生理特性値を獲得する段階とを包含する。前記生理特性値を獲得する段階は図9〜図12を参照して次に詳細に説明する。
【0066】
前記生理特性値は、出力変数として混合静脈血と末端毛細管血(または肺胞ガスも共に)の酸・炭分圧のような呼吸機能の特性値、心拍出量のような心拍機能の特性値、シャント率及び生理学的死腔率のような肺臓の構造的特性値を包含する。
【0067】
赤血球のヘモグロビンなどと結合/分離されて、血液と呼吸空気中に拡散される酸素及び二酸化炭素の分圧と濃度は、肺胞と末端毛細血管で互に平衡状に到達して、当該気体の解離曲線を通じて相互変換することができる。
【0068】
入力データに入る基礎測定変数はその数が少ない反面、求めるべきの呼吸特性値はその数が非常に多いため、本発明では前述した酸素の質量平衡方程式、二酸化炭素の質量平衡方程式、酸素のシャント率方程式、二酸化炭素のシャント率方程式、換気の呼吸率方程式、血液の呼吸率方程式、酸素の換気−かん流比方程式、二酸化炭素の換気−かん流比方程式などの数学式を利用してシステムを構成する。
【0069】
前記の少ない数の基礎測定変数を利用して、多い数の呼吸特性値を求めるために、まず、入力変数が多く、出力変数の数が少ない易い問題から、入力変数は少なく出力変数の多い難しい問題の順に配列した後の、3つの呼吸モデルの類型に分類し、簡単なモデルで導出された解析方法と結果をより難しいモデル問題の解決に使用する体系的な方法を採択する。
【0070】
まず、<第1呼吸モデル>は、シャントや生理学的な死腔のない肺臓に関するものであって、混合静脈の酸・炭分圧V*と吸気の酸・炭分圧I*が与えられる理想的な場合である。次の<第2呼吸モデル>は、シャントや生理学的死腔がある肺臓に対して、混合静脈血の情報V*と、動脈血の酸・炭分圧a*が与えられ、さらに吸気ガス情報I*と呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*が与えられる場合である。最後に<第3呼吸モデル>は、やはり肺臓にシャントや生理学的死腔があり、気体境界値I*と気体補助情報値である呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*とが与えられ、動脈血の酸・炭濃度a*が与えられるが、混合静脈の酸・炭濃度V*は、知られていない未知数である場合であって、実際の人体の呼吸生理問題に最も近接しており、その分解析も難しい。
【0071】
まず、<第1呼吸モデル>の解法は、換気−かん流比曲線またはKelmanの曲線と関連されたものであって、この方法を次に簡略説明する。
【0072】
コンピュータープログラムでまず外部do−loopを作って換気−かん流比
の初期値を与え、内部do−loopを作ってここで肺胞ガスの酸素分圧情報a1を初期値として与え、二酸化炭素分圧a2を質量平衡方程式を解いて算出し、このpair値であるA*=(a1、a2)を使用して換気−かん流比(
)*を計算する。換気−かん流比の要件である
=(
)*を満足する場合、A*を取って内部do−loopを外れる。外部do−loopで
の初期値を更新して、前記の計算過程を反復すると、一定の増分の
の値に対応する肺胞ガスの酸・炭分圧の集合であるKelmanの曲線を得ることになるが、これを換気−かん流比曲線またはO2−CO2ダイアグラムという。
【0073】
しかし、<第2呼吸モデル>及び<第3呼吸モデル>においては、肺臓にシャントや生理学的死腔があるため、<第1呼吸モデル>に比べて未知数または出力変数が多く、その分問題の解析方法も拡張せざるを得ない。<第2呼吸モデル>は、混合静脈の情報V*と、動脈血の情報a*とが、また、吸入ガス情報I*と、呼気終末ガスの情報ET*とが与えられる場合である。この問題の解析方法は、前記で説明したように、外部do−loopを設けて死腔率Xの初期値を設定する段階と、内部do−loopで肺胞ガスの酸素分圧a1の初期値を設定して質量平衡方程式システムを解析した結果によって肺胞ガスの二酸化炭素分圧a2を求める段階と、A*=(a1、a2)を使用してシャント率要件として酸素のシャント率Y1を式(6)によって求め、シャント率Y2を式(7)によって求め、この2つの値が同一であるかを試験する段階と、シャント率要件を満足しない場合、外部do−loopの初期に戻って死腔率Xの初期値を更新して前記の計算を反復する段階と、シャント率要件を満足する場合、内部と外部do−loopを全部外れる。このとき、記憶素子に最終的に貯蔵された値から肺胞ガスの酸・炭分圧A*、シャント率Y*、生理学的死腔率X*などを取って問題の回答として取り入れる段階と、その次に入力された吸入空気量
と、計算されたX*とY*の値を使用して、式(14)または(15)に従って心拍出量Qtotalを決定する。
【0074】
最終的に<第3呼吸モデル>は、やはりシャントと生理学的死腔がある場合であるが、吸気情報I*と呼気終末ガスの情報ET*とが与えられるとともに、動脈血の酸・炭ガス分圧a*が与えられるが、混合静脈の情報V*は与えられない呼吸の問題である。これは、<第2呼吸モデル>に比べて入力変数は減り、出力変数が増える場合であって、本発明の呼吸特性値の予測方法は、大別して自動入力装置に入力される初期値に従って、4つの類型に分類することができ、これを次に説明する。
【0075】
図9は、本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの前記4つの類型の中、第1類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。図9を参照するとき、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0076】
まず、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される(S901)。前記自動演算装置は、図8で図示された3つの呼吸モデルに対する解析過程をプログラムに内蔵したマイクロプロセッサーやコンピューター手段7でなることができる。
【0077】
前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧で与えられることができ、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えられるか、または、測定された酸素分圧で与えられることができる。
【0078】
また、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に二酸化炭素の分圧が与えられることができ、前記吸気流量
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部へ出る総流量である呼気流量VEと同一に策定されることもできる。
【0079】
次いで、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S902)、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される(S903)。ただし、間呼吸入力変数及び初期値を前記自動演算装置に入力する手順に制限されない。次いで、(d)死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される(S904)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S905)。
【0080】
その後、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる(S906)。(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とを獲得する(S907)。前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素、及び窒素に関する質量平衡方程式になることができる。
【0081】
(h)もし、シャント率要件が満足された場合(S908)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される(S909)。前記シャント率要件は、酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断されることを意味する。もし、前記シャント率要件が満足されない場合は、前記(c)段階に戻って前記ステップを反復する。
【0082】
(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして、前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される(S910)。
【0083】
前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて、前記自動演算装置に入力されることができ、前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子の間隔が不均一であり、大きなサイズと小さなサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、始めの大きい格子が後の小さい格子に再分割されることもできる。
【0084】
次いで、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件を満足する特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S911)、これによる呼吸特性値が決定され(S912)、(k)心拍出量が算出される(S913)。前記呼吸率の要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧の差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断することを意味する。もし、前記呼吸率要件を満足する特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められない場合、さらに(a)ステップから再び反復する。
【0085】
また、前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中いずれか1つを意味し、前記(k)段階における心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、そして生理学的死腔率X**を利用して得ることができる。
【0086】
次の図10は、本発明の1実施形態において第3呼吸モデルの第2類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートある。図10を参照するとき、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0087】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1001)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1002)、(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1003)、(d)シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される(S1004)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S1005)。(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる(S1006)。(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる(S1007)。(h)もし、死腔率要件が満足された場合(S1008)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される(S1009)。(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして、前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される(S1010)。(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1011)、これによる呼吸特性値が決定され(S1012)、(k)心拍出量が算出される(S1013)。
【0088】
前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、図9を参照して記述された前記第1類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。ただ、第1類型と第2類型の差異点は、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、(c)段階で死腔率Xの初期値が入力されることに反して、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、(c)段階でシャント率Yの初期値が入力される点である。また、第2類型の(h)段階で死腔率の要件は、酸素の死腔率X1と二酸化炭素の死腔率X2の差異が一定範囲内にあるかを対比して判断されることを意味する。もし、前記死腔率要件が満足されない場合、前記(c)段階に戻って前記ステップを反復する。
【0089】
図11は、本発明の1実施形態において第3呼吸モデルの第3類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。図11を参照するとき、前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0090】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1101)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1102)、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1103)、(d)死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される(S1104)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S1105)。(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる(S1106)。(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1による酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られ(S1107)、(h)シャント率の要件が満足されると(S1108)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定され(S1109)、(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定され(S1110)、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1111)、これによる呼吸特性値が決定され(S1112)、(k)心拍出量が算出される(S1113)。
【0091】
前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、図9を参照して記述された前記第1類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。ただ、第1類型と第3類型の差異点は、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階で死腔率Xの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られることに反して、前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階で死腔率Xの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる点である。
【0092】
図12は、本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第4類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。図12を参照するとき、前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0093】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1201)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1202)、(c)シャント率Yの初期値を入力変数にして前記自動演算装置に入力され(S1203)、(d)シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され(S1204)、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力され(S1205)、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られ(S1206)、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1による酸素の死腔率X1と二酸化炭素の死腔率X2とが得られ(S1207)、(h)死腔率の要件が満足されると(S1208)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定され(S1209)、(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定され(S1210)、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1211)、これによる呼吸特性値が決定され(S1212)、(k)心拍出量が算出される(S1213)。
【0094】
前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、図10を参照して記述された前記第2類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。
【0095】
ただ、第2類型と第4類型の差異点は、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階でシャント率Yの初期値を考慮して、肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られることに反して、前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階でシャント率Yの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧のA2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる点である。
【0096】
本発明による前記第1類型、第2類型、第3類型、及び第4類型の(a)段階で、前記血液補助情報値は、動脈血の酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)段階が反復されて動脈血の二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることができる。
【0097】
本発明による呼吸特性値の表示装置は、前記第1類型、第2類型、第3類型または第4類型による呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含する。
【0098】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線に連結されて携帯可能であり、前記自動演算装置はコンピュータープロセッサーまたは内蔵チップを使用することができる。
【0099】
図13は、本発明の1実施形態による換気−かん流比の曲線である。図13の曲線(1)、(2)、(3)、(4)、(5)は、5人の患者に対する<第1呼吸モデル>の問題を解析した結果としての換気−かん流比の曲線である。各曲線の左側端の大きい菱形表示V1、V2、...、V5は、臨床データセットM中の混合静脈の酸・炭分圧の測定値V*を示す。また、これらの中にある黒の菱形は、<第3呼吸モデル>の問題を計算して求められた混合静脈の濃度データV**としてV*点らと正確に一致することを確認することができる。
【0100】
黒丸a1、a2、...、a5は、臨床データセットM中の動脈血の酸・炭濃度a*の値を表示する。各曲線の中央部にある大きい三角形A1、A2、...、A5は、臨床データセットMの中のV*、a*、I*、ET*の値と本発明で提供する<第2呼吸モデル>の解析方法を使用して確定した肺胞ガス分圧A*であり、その中の小さい黒三角形は、臨床データセットMの中で血液境界値V*を未知数と見なして使用せず、本発明で提供する<第3呼吸モデル>の解析方法を適用して計算した肺胞ガス分圧A**値として、この値はA*値と正確に一致することを確認することができる。
【0101】
空白の四角E1、E2、...、E5は、臨床データセットMに入っている呼気終末ガスの炭酸ガス分圧を<第1呼吸モデル>で求められた換気−かん流比の曲線上に表示したものであり、その付近の小さな黒四角形は、<第2呼吸モデル>の解析結果から算出された呼気終末ガスの酸素分圧値を追加して呼気終末ガスの酸・炭分圧点ET*を正確に表示したものであり、これらの値は、さらに本発明の<第3呼吸モデル>の解析のために必要な呼気終末ガスの酸・炭分圧情報ET*の値として使用された。結論的に前記の計算値と臨床値を比較した図表から、本発明の体系的な呼吸解析方法が心肺器官の各種生理特性値らを正確に予測していることを確認することができる。
【0102】
以上、限定された実施形態及び図面によって本願発明を説明したが、これは、本発明の理解のために提供されたものであり、本発明は前記の実施形態などに限定されるものではなく、本発明の当業者であればこのような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0103】
したがって、本発明の思想は、実施形態に限定されてはならなく、本発明の請求範囲のみならず、この請求範囲と均等であるか等価的な変形に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】人体の心臓と肺臓における血液の循環順序を示す模式図である。
【図2】人体の肺循環において酸素と二酸化炭素が交換される過程を示した模式図である。
【図3】従来技術においてカテーテルを利用して肺臓に供給される血液の総量(心拍出量)を予測する方法を示す模式図である。
【図4】従来技術において前記カテーテルを利用して心拍出量を算出する方法を示す模式図である。
【図5】従来技術において手または足に多数の電極を設置して、これらから収集された電気信号を分析して心拍出量を評価する電極信号分析法を示す模型図である。
【図6】人体の肺胞で発生するガス交換の過程を示す模式図である。
【図7】人体の肺胞における酸素−二酸化炭素のダイアグラムである。
【図8】本発明の1実施形態による肺臓−肺循環系における呼吸特性値の予測装置を示すブロック図である。
【図9】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第1類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。
【図10】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第2類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。
【図11】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第3類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。
【図12】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第4類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。
【図13】本発明の1実施形態による換気−かん流比の曲線図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置に関する。より詳細には、本発明は、呼吸の換気ガス及び血液から得た基礎測定変数を使用して心肺器官の呼吸機能の特性、心拍機能の特性、肺臓構造の特性などの主要生理特性値等を予測することのできる非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成人の心臓の重さは350〜400g、長さは12〜15cm、幅は略9cmである。安静時の1分当りの心臓の拍動数は60〜70回で一日平均略10万回、一生(70歳基準)26億回の拍動をする。体中にある血液は略5Lであり、1回の心拍出量は、略60〜70cc、1分当りの心拍出量は略3.5〜5.0Lで、心臓から出た血液が体の中を一回循環するごとに略40〜50秒かかる。心臓の時間当たり機械的エネルギーの生産量は、略6,000calで、70年間の生産量を計算するとき、30トンの岩石をエベレスト山の頂上まで引き上げる量に比肩される。
【0003】
人体の心臓には2つのポンプがあり、心臓の収縮時に微細な時間間隔をおいて拍動するが、右心室は肺循環に、左心室は体循環に血液を吐出する。また、心臓には大動脈、肺動脈、冠状動脈、動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈、肺静脈、下大静脈、上大静脈など多くの血管があり、これらの総延べ長さは略96,000kmで地球赤道の周りを2回半を回る距離に相当する。また、外部からの電源供給がなくても自ら心臓が拍動を行うのは、右心房の筋肉の中にある洞房結節という細胞の塊りがあるため、緩慢なイオンチャンネル及び急速なイオンチャンネルを通じて略0.8秒の間隔で電気を集めた後に放電し、プルキンエ繊維素が電気を心臓周辺の筋肉に配分させることによって筋肉が統制された方法で興奮・収縮して弛緩するためである。
【0004】
人体の心臓と肺における血液の循環手順は、図1で示すように右心室270→(肺動脈弁)肺動脈240→肺毛細血管250→肺静脈230→左心房280→(僧帽弁)左心室290→(大動脈弁)大動脈210→動脈→全身毛細血管300→静脈→大静脈220→右心房260→(三尖弁)右心室270の経路を繰り返す。
【0005】
前記のような循環経路のうち、特に肺循環は、小循環ともいい、図2で示すのように右心室270から出た血液は、肺動脈240を通じて左右の肺200に到達し、肺胞120の周りに直径数μmの大きさである毛細血管に分布されて広がり、ここで、薄い肺胞膜を通じて呼吸空気と血液の間で非常に急速な酸素と二酸化炭素の交換をなした後、肺静脈230を通じて再び左心房280に戻る循環である。したがって、肺動脈240には、細胞の代謝によって二酸化炭素の多い静脈血が流れるとともに、肺静脈230には、ガス交換によって酸素が豊富になった動脈血が流れる。
【0006】
前記のような肺循環によって排出される呼吸空気と血液は、老廃物である二酸化炭素を除去し、代謝に必要な酸素を流入させる生命維持の機能を果す一方、人体は、その血液中に酸素の予備的貯蓄が少ないため、呼吸が停止すれば数分内に死亡することになる。また、呼吸器におけるガス交換特性に係る情報は、臨床医にとっては、医学的にも呼吸器患者、殊に重態患者の呼吸機能、代謝機能、心拍機能、回復程度などを判断するにおいて重要な情報源となるため極めて重要である。
【0007】
この他にも、手術後の患者の回復過程、殊に地下鉄や潜水艦や昇降機などのように密閉された空間に群集した乗り込み人が長い時間搭乗するときに二酸化炭素の増加によって起る呼吸生理及び換気の問題や、高山登攀者や高山地帯の住民が経験する希薄空気または低い大気圧による高山呼吸症など呼吸生理に関連するスポーツ医学、または、火災などの事故による煙に窒息して気道や肺細胞が損傷された患者の心肺機能の評価、マラソンやヘルスセンター運動など生活スポーツに係る利用者の心肺能力の測定などによる心肺能力の詳細な情報が健康指数や疾患の予測情報の手段として有用な情報になって活用される。
【0008】
しかし、これらの必要な情報を専門家が患者や被検者の体に対して侵襲的な方法によって直接測定することは、患者に苦痛と危険を加えるだけでなく、時間と経費を必要するとともに、ある種の測定は初めから不可能な場合もある。したがって、体外において非侵襲的かつリアルタイムで予測することのできるように、呼吸気体の酸・炭分圧及び流量情報と動脈血の基礎情報に基づいて臨床医と患者自身に必要とする呼吸特性値などの変数を数学的生理モデルによって予測してリアルタイムで提供することができれば非常に望ましいことと期待されるのである。
【0009】
心臓から肺に供給される血液の総量(心拍出量)を予測する第1の方法としては、特許文献1(心拍出量測定用カテーテル及び血液流速測定用カテーテル)の代表図、即ち、本願図3に図示する従来のカテーテルを利用した直接的な測定法がある。前記カテーテル500は、熱希釈法によって心拍出量を測定するために液体の吐出を行う開口部510と、前記開口部510から所定の間隔をおいて配設された温度検出素子サーミスター(thermistor)520を包含し、前記液体によって希釈された血液温度を検出する温度検出手段530と、前記サーミスター520の近傍に血流速度に関連する信号を検出する血液流速信号の検出手段540とを包含する複雑な要素によって構成され、また、前記血液流速信号の検出手段540は、自己発熱型サーミスター520を包含し、前記血流速度に関連する信号は前記サーミスター520が検出した熱平衡温度であることを特徴としている。
【0010】
前記カテーテルを利用する測定方法は、図4に示すように肺動脈用のカテーテルを頸静脈、大腿静脈、または主大静脈などに導管して、上大静脈または下大静脈、右心房260、右心室270を経て肺動脈までに挿入し、血液より高温または低温の液体を右心房260に注入した後、右心房260と右心室270で拡散希釈された液体の温度を肺動脈の中に位置しているサーミスターにより検知することによって、心拍出量を算出する方法である。これは熱希釈法(thermodilution technique)として分類される侵襲的な方法である。
【0011】
第2の方法としては、図5に図示した特許文献2(心拍出量と心電図をモニタリングするための電極設置方法及びこれを利用した装置)のように、手(または足)または腕(または脚)に多数の電極を設置してこれらから収集された電気信号を分析して心拍出量を評価する電極信号分析法がある。
【0012】
図5を参照してこの方法をより詳細に説明する。人体の右手(または腕)と右足(または脚)に設置される電流電極32a、32bと、人体の左手(または腕)と左足(または脚)に設置される電圧電極34a、34bと、制御信号に従って前記電極32a、32b、34a、34bを心拍出量測定部400aまたは心電図測定部400bの中、1つに連結するスイッチング手段400cと、前記スイッチング手段400cを通じて連結された電流電極32a、32bに高周波電流を印加して、前記電圧電極34a、34bから電圧を測定して心拍出量を測定する心拍出量測定手段と、前記スイッチング手段400cを通じて連結された電圧電極34a、34bから差動信号の入力を受けて心電図(ECG)を測定する心電図測定手段と、使用者の要求によって前記スイッチング手段400cに前記制御信号を提供して、前記心拍出量の測定手段及び前記ECG測定手段の測定値を入力して表示部に表示するように制御する制御手段とを包含して構成されることを特徴としている。
【0013】
第3の方法は、呼気ガスを測定して非侵襲的に心拍出量を評価するNICO(Non Invasive Cardiac Output)と称する方法がある。代表的なものとしてNovametrix Medical Systems社で開発した“部分的二酸化炭素の再呼吸法(Partial CO2 rebreathing method)”がある。この方法は、呼気ガスの中から二酸化炭素の分圧を測定し、これを使用して二酸化炭素に関するFick方程式の解を得て心拍出量を評価する方法である。しかし、この方法は、酸素の拡散に関する情報が使用されないことによって入力変数は簡潔であるが予測の正確度が低いという問題がある。
【0014】
第4の方法は、特許文献3に開示されているように、測定された心拍出量、酸素吸入量及び動脈血の酸素分圧などの過重な入力変数を使用し、酸素に関するFick方程式を解いて混合静脈血の酸素分圧を得る方法である。
【0015】
しかし、以上のような従来の測定法を検討した結果、前記第1の方法は、正確ではあるものの深刻な侵襲的方法であるため施術を受ける患者にとっては施術上の苦痛とともに、合併症または感染の危険をもたらすことがあり、第2の方法は、人体の特定部位に電極を正確に装着しなければならない実行上の煩わしさがあり、第3の方法は、二酸化炭素分圧の測定値のみをFick方程式に使用することによって、解法の過程が簡単というメリットはあるが、方程式の数が少なく、血液中の赤血球細胞に結合される酸素の情報が漏落されることによって、予測される情報の量が少なく、かつ正確性も劣るので心拍出量が6liter/min程度でなければ、信頼性が劣ると知られている。第4の方法も、酸素に関するFick方程式という制限された数式のみを利用するという点で、また、動脈波を探知するトランスジューサ(圧電センサー)を設置してここから出る心拍出量の情報を利用するので、使用の不便と正確性が低く、また、混合静脈血の炭酸ガス分圧の予測なしに酸素分圧のみを予測するという点でその情報が制限的である。
【0016】
ここで、以上の先行技術と本願発明を概略的に対比するとき、本願発明は、酸素と二酸化炭素に関する質量を全て保存させる質量平衡方程式、シャント率方程式、呼吸率方程式、換気−かん流比方程式などと増加した数の数式を利用し、心拍出量と混合静脈の酸・炭分圧の情報はもちろん、肺臓のシャント率、死腔率、末端毛細血管における酸・炭分圧の情報などを呼吸モデルの分類と解析方法によって素早く計算し、その結果によって有用かつ正確な医学情報を非侵襲的な方法でリアルタイムで提供することを特徴としているので、本発明の技術思想と先行技術とは大きな差異がある。
【0017】
人体の肺臓には、健常人の場合でも大・小の差はあるがシャントと生理学的な死腔があり、呼吸器患者の場合は、特にこれが深刻な程度になるため呼吸機能に相当な障害を起す。したがって、シャントと生理学的な死腔を考慮しない方法によって予測された呼吸特性値は、肺臓に対する理想的な結果のみであるため、実際の患者に対する臨床的測定値とはその分誤差があると見ても間違いない。また、たとえシャントと死腔を考慮して呼吸の問題を設定して解析するとしても、呼吸関連方程式の数式化の方法と、その解法の精密度によっては、やはり無視することのできない誤差が発生することもある。このような事情を鑑みて、本願発明は、酸素の質量平衡方程式、二酸化炭素の質量平衡方程式、酸素のシャント率方程式、二酸化炭素のシャント率方程式、換気の呼吸率方程式、血液の呼吸率方程式、酸素の換気−かん流比方程式、二酸化炭素の換気−かん流比方程式などと増加した数の数式を利用して、肺臓のシャントと生理学的死腔とを考慮するとともに混合静脈血のガス分圧などの境界値が知られていない呼吸問題を、3つの呼吸モデル分類を通じて体系的に求められる独特な方法を提供している。
【0018】
肺臓のガス交換過程は、血液が拡散を通じて二酸化炭素を排出するとともに酸素を取り込む過程であるため、必ず2つの成分ガスの分圧の増・減が反対方向に起る連結環を有している。一般的に呼気終末に肺胞ガスの酸・炭分圧A*と末端毛細管血の酸・炭分圧C*は平衡を通じてA*=C*になる。もし、肺臓に生理学的死腔がある場合、ガス交換ができなかった非機能性空気が混合され、肺胞でガス交換を終えた機能性空気に比べて呼気終末のガスは二酸化炭素分圧が低く、酸素分圧は高い。また、シャントがある場合、ガス交換ができなかった非機能性血液が混合され、末端毛細血管でガス交換を終えた機能性血液に比べて動脈血においては酸素分圧が低く、二酸化炭素の分圧は高い。したがって、呼気終末ガスや動脈血のガス分圧に対する測定が、そのまま、肺臓内部の肺胞ガスや末端毛細管血のガス分圧の予測に連結されなく、肺胞ガスや末端毛細管血の採取自体も非常に難しいので、直接的な測定を通じて末端毛細管血や肺胞ガスの酸・炭ガス分圧を検査することはほどんど不可能である。したがって、シャントや生理学的死腔を考慮して人体の心肺器官に関連されたいろいろな生理特性値を予測することは非常に重要であり、従来方法と比べて非侵襲的かつ体系的にリアルタイムで素早い予測手段と装置を提供する本発明は、進一歩した思想による測定方法と言える。
【特許文献1】韓国公開特許特1987−0002027号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第10−1999−0000417号明細書
【特許文献3】韓国公開特許特1999−22493号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記のように、従来技術における施術上の困難性、危険性、副作用、不正確性、時間的遅延、及びいろいろな制約を補完するべく案出された発明であって、本発明の目的は、呼吸の換気ガスにおいて吸気や呼気の流量と、その酸・炭分圧を測定し、動脈血の酸・炭分圧を測定して入力変数とし、これらを用いて酸素と二酸化炭素に関する質量平衡方程式などの数式システムをコンピューターによって解析する方法を提供する。また、前記結果の解析によって心肺器官における混合静脈血の酸・炭分圧、末端毛細管血の酸・炭分圧、肺胞ガスの酸・炭分圧、心拍出量、シャント率、なおかつ生理学的死腔率などを正確に予測する混合静脈暫定データ領域の設定を通じて非侵襲的呼吸特性値の予測方法及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸素と二酸化炭素の濃度V(以下、酸・炭濃度と略記する)の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式(mass balance equation)とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するために、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、(h)シャント率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0021】
前記(a)段階において、前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられ、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えれるか、または、測定された酸素分圧として与えられ、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に、二酸化炭素の分圧が測定され、前記吸気流量
【0022】
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部に出る総流量である呼気流量VEと同一に策定することができることを特徴とする。
【0023】
前記(h)段階において、前記シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。前記(f)段階において、前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素及び窒素に関する質量平衡方程式であることを特徴とする。
【0024】
前記(i)段階において、前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて前記自動演算装置に入力されることができ、前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子間隔が均一でなく、大きいサイズと小さいサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、初めの大きな格子が後で小さな格子に再分割されることもできることを特徴とする。
【0025】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式と、Fick方程式とを包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、(h)前記死腔率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0026】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0027】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、(h)シャント率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0028】
前記(h)段階において、シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0029】
また、前記目的を達成するために、本発明は、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(c)前記シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とが得られる段階と、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2が得られる段階と、(h)死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び(k)心拍出量が算出される段階と、を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法を提供する。
【0030】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする。
【0031】
前記各呼吸特性値の予測方法の(j)段階において、前記呼吸率要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧との差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断し、前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中、いずれか1つであることを特徴とする。
【0032】
また、前記各呼吸特性値の予測方法の(k)段階において、心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、また、生理学的死腔率X**を利用して得られることを特徴とする。
【0033】
前記各呼吸特性値の予測方法の前記(a)段階において、血液補助情報値は、動脈血における酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)の段階が反復されて動脈血における二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることを特徴とする。
【0034】
また、前記目的を達成するために、本発明は、前記呼吸特性値の予測方法の中、いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含することを特徴とする呼吸特性値の表示装置を提供する。
【0035】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線で連結されて携帯可能であり、前記自動演算装置は、コンピュータープロセッサーまたは内蔵チップ(embedded chip)を使用することもできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、非侵襲的に呼吸特性値の予測を可能にする測定装置と、心肺器官の血液呼吸特性、心拍機能特性、肺臓機能特性などの生理特性を評価するために、複雑な問題を順次的に解析することのできる3つの呼吸モデルの分類と、前記それぞれの呼吸モデルに対するコンピューターの解析方法と、これに対応する演算装置によって構成される特徴を有し、さらに本発明は、肺臓にシャントや生理学的死腔のない場合を含めて、シャントや死腔がある場合にも正確かつ有効な予測方法であるメリットがある。これは、従来の肺動脈用カテーテルを右心房、右心室を経由して肺動脈にまで挿入する熱希釈法とは異なり、測定対象者に苦痛を与えるとともに、これによって発生するおそれのある感染と合併症を避けることができるとともに、手や足に電極を正確に装着しなければ電気的生態信号を受けられない電極付着法のような煩わしさがなく、呼吸によって発生する二酸化炭素データだけを使用するNovametrics社のCO2−再呼吸法のような、特定の狭い心拍出量の範囲においてのみ有効なCO2−再呼吸法とは異なり、肺胞毛細血管において二酸化炭素はもちろん、酸素拡散による平衡も考慮するため、広い範囲における心拍出量に対して肺臓−肺循環系の各種呼吸特性値を正確に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の好ましい実施形態において使用する用語は、できる限り現在広く使用されている一般的な用語を選択しているが、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合は、該当する発明の詳細な説明の部分でその意味を記載しているので、単純な用語としての名称ではなくその用語の有する意味によって本発明の内容を把握して欲しい。
【0038】
以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照して説明する。ただ、以下の実施形態によって本発明が制限されたり、限定されるものではなく、多様に変形されることができるとともに、本発明の技術的思想を包含する実施形態は、全て本発明の範囲に包含されるといえる。
【0039】
図1のように、人体における血液の循環は、大別して2つに分かれる。即ち、体の各器官を形成している細胞単位の組織に酸素を供給してこれらから二酸化炭素を回収する体循環(system circulation)と、回収された二酸化炭素を体外へ排出して酸素の供給を受ける肺循環(pulmonary circulation)である。体循環を終えた血液は、右心室から肺動脈(pulmonary artery)に供給されるとともに肺循環を始める。脱酸素化された混合静脈血液(mixed venous blood)は、肺臓の末端器官である肺胞で呼吸器官を通じて供給された新鮮な空気とガス交換して酸素化された動脈血液(arterial blood)となって肺静脈(pulmonary vein)を通じてさらに左心室に供給される。
【0040】
しかし、肺臓には、肺胞に供給された空気の中、肺毛細管血(pulmonary capillary blood)とガス交換できなくする死腔(dead space)が存在し、また、血液の中、肺胞空気とガス交換できなくするシャント(shunt)が存在する。このとき体外へ排出される空気には、結局、死腔内の空気が混合されているため、ガス交換をなした肺胞内の空気とは酸素−二酸化炭素の組成が異なることがあり、同じ理由によって、肺循環を終えた動脈血液(arterial blood)には、シャントによる混合静脈血液が混合されるため、完全に酸素化された肺末端毛細管血(pulmonary end−capillary blood)とは、酸素−二酸化炭素の組成が異なることがある。
【0041】
図6は、人体の肺胞で起るガス交換過程の模式図である。肺胞におけるガス交換過程は、基本的に1)肺胞と肺毛細血管、2)シャント、3)死腔、からなる3−区画の肺モデル(compartment lung model)で構成される。(場合によっては、肺胞と肺毛細血管とのガス交換を換気−かん流比(
:ventilation−perfusion ratio)の値が高い場合と正常の場合と低い場合とに区分して、5−区画の肺モデルとして定義することもある。)
以下、本願発明を詳細に説明するために数学式を使用する。また、この数学式などで使用される記号は下記のように定義される。
【0042】
:動脈血管内の二酸化炭素濃度[%]
:動脈血管内の酸素濃度[%]
:末端毛細血管内の二酸化炭素濃度[%]
:末端毛細血管内の酸素濃度[%]
:混合静脈内の二酸化炭素濃度[%]
:混合静脈内の酸素濃度[%]
:大気中の二酸化炭素の分圧比
:大気中の窒素価tmの分圧比
:肺胞内の二酸化炭素分圧[mmHg]
:肺胞内の水蒸気圧[mmHg]
:肺胞内の窒素分圧[mmHg]
:肺胞内の酸素分圧[mmHg]
:大気圧[mmHg]
:末端毛細管血の窒素分圧[mmHg]
:大気中の空気の窒素分圧[mmHg]
:大気中の空気の酸素分圧[mmHg]
:混合静脈血の窒素分圧[mmHg]
:毛細血管のかん流量[liters/min]
:シャント率における毛細血管のかん流量[liters/min]
:心拍出量[liters/min]
:肺胞でガス交換する空気の流量[liters/min]
:死腔空気の流量[liters/min]
:吸入または呼気される空気の総流量[liters/min]
:吸入空気の流量[liters/min]
:肺胞に出る二酸化炭素の流出量(carbon dioxide output)[ml/min]
:毛細血流に入る酸素流入量(oxygen uptake)[ml/min]
:呼吸率
:死腔率
:シャント率
:呼吸係数
:血液と空気に関する係数
【0043】
空気の吸入を通じて肺胞に供給された各成分気体(O2、CO2、N2)と、右心室から肺毛細血管に供給された混合静脈血液の各成分気体の間のガス交換は、肺胞膜(alveolar membrane)を通じて相互間の質量が保存されながらなされるが、これらの関係を数式化したものが下記の数学式1乃至数学式4で表現される質量平衡方程式である。
【0044】
(数学式1)
(数学式2)
(数学式3)
(数学式4)
【0045】
図7は、人体の肺胞における酸素−二酸化炭素のダイアグラムである。混合静脈血液と吸入空気の酸素−二酸化炭素の分圧を入力値で代入して前記質量平衡方程式を解くと、肺胞内の酸素−二酸化炭素の分圧の質量保存は、図7のように、この2つの入力値を両端末点とする1つの曲線からなるO2−CO2ダイアグラムに具体化される。
【0046】
前記曲線上の任意の1つの点は、前記質量平衡方程式を満足する肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧のみならず、この点に該当する換気−かん流比(
【0047】
)まで意味する。一般的にO2−CO2ダイアグラム上で換気−かん流比は、0〜無限大の分布を有する。左側の端末点である混合静脈血液の酸素−二酸化炭素の分圧点は、換気、
である点でシャント血液の分圧と同一であり、右側の端末点である吸入空気の酸素−二酸化炭素の分圧点は、かん流、
である点で死腔空気の分圧と同一である。
【0048】
健常人の場合でも、7%未満のシャント率と25%程度の死腔を有していると知られており、肺の上部に比べて下部において換気とかん流がすべて増加するが、換気に比べてかん流の増加量が大きいため、換気−かん流比は、肺の最上部で最も大きく、肺の下部になるほど漸次減少すると知られている。このように、肺胞膜を通じてガス交換することにより完全酸素化(full oxygenation)された肺末端毛細管血液は、シャント、換気−かん流比不均衡(heterogeneity)などによって完全に酸素化されていない血液と肺静脈(pulmonary vein)で合流した後、左心房に戻る動脈血液は、完全酸素化された血液とは酸素濃度において差がある場合がある。
【0049】
同様な理由によって、肺胞で血液とガス交換した肺胞ガスは、呼気の間、吸入空気と酸素−二酸化炭素の分圧が同じ死腔空気と混合されて体外に排出されるため、肺胞ガスは、呼気ガスと酸素−二酸化炭素の分圧が異なる場合がある。したがって、肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧は、肺の呼吸作用と心臓の血液循環によって発生する要素などを考慮して予測しなければならない。
【0050】
混合静脈血液(
)と動脈血液(
)間の酸素−二酸化炭素の濃度差異は、代謝的観点でなる組織における酸素消費(
:oxygen consumption)と二酸化炭素の生産(
:carbon dioxide production)と直接的な関係があり、これは下記の数学式5及び数学式6で表現されるフィックの原理(Fick’s principle)によって数式化される。
【0051】
(数学式5)
(数学式6)
【0052】
呼吸が安定された状態と云える正常状態において、代謝的観点である二酸化炭素の生産に対する酸素消費量の比で定義される呼吸率(respiratory quotient、
)は、質量平衡方程式から誘導されて肺胞と肺毛細管血液との間で起る二酸化炭素の除去と酸素の摂取との比を示す因子である呼吸交換率(R:respiratory exchange ratio)と同一である。もし、呼吸によって呼吸量の増減が発生すると、肺胞における呼吸交換率は、代謝作用による呼吸率より速く変われたので、この2つの因子が常に同一ではない。肺胞での呼吸交換率は、下記の数学式7及び数学式8のように示すことができる。
【0053】
(数学式7)
(数学式8)
【0054】
しかし、正常状態においては、この2つの因子から呼吸ガス/血液に関するいろいろな情報を得ることができる。まず、
と
から混合静脈血液と動脈血液、また、肺末端毛細管血液の酸素−二酸化炭素の濃度が1つの関係式によって定義されることができ、これを満足する3つの点の酸素−二酸化炭素の濃度の分布は、1つの線分上に存在する。
は、吸入空気と肺胞ガスの酸素と二酸化炭素分圧の関係式である。もし、肺胞ガスと肺末端毛細管血液の酸素−二酸化炭素の分圧が同一である場合、
と
の式から肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を求めることができる。臨床において肺胞酸素分圧(
)は酸素と二酸化炭素に関する肺胞換気方程式(alveolar ventilation equation)である下記の数学式9及び数学式10から誘導した数学式11から求めることができる。ただ、数学式11から誘導された値は、数学式8から誘導された下記の数学式12で求めた値より不正確である。また、数学式9と数学式10は基本的にRileyが提示した肺胞ガスの二酸化炭素分圧(
)が、動脈血液の二酸化炭素分圧(
)と殆ど同一であるとする仮定を前提にしている。前記2つ分圧の差は、1〜3mmHg程度に小さいが、呼吸不全を経験する患者の場合はさらに大きい差を示すため、数学式11から求められた肺胞の酸素分圧が必ずしも真の値であるとは言えない場合もある。
【0055】
(数学式9)
(数学式10)
(数学式11)
(数学式12)
【0056】
肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧をより正確に予測するためには、3−区画の肺を基本とする肺胞ガスと血液のガス交換、シャント、死腔を考慮して計算することのできるアルゴリズムで構成された電算解析が必要である。質量平衡方程式、シャント方程式、死腔関係式、呼吸率(
)、呼吸交換率(R)など多様な方程式を同時に満足させることのできる肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を探すためには、同一の計算を数多く反復しなければならない特性と、酸素−二酸化炭素の分圧から血液の濃度を求める複雑な計算に最も効果的な方法が電算解析であるためである。
【0057】
構成されたアルゴリズムを電算解析して肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を得るためには、いろいろ多様な入力値を必要とする。例えば、混合静脈血液、動脈血液、吸入空気、呼気空気の酸素−二酸化炭素の分圧などである。これらの中で特に混合静脈血液は、上大静脈または下大静脈から右心房を経て肺動脈までカテーテルを挿入してサンプリングしなければならないが、このような方法は患者には苦痛であるとともに、高度に熟練された臨床医だけが施術可能であり、長時間のカテーテル挿管時には合併症のおそれもあるため、生命に係る危険な重患者でない限りこのような施術は避けるべき医療行為である。しかし、混合静脈血液のサンプリングなしにも肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測することができるとすれば、上記で例挙した困難性を回避するのみならず、医療費の節減にも役に立つことになる。
【0058】
混合静脈血液と肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測するために、混合静脈血液が存在すると見られる領域を選定し、この領域の酸素−二酸化炭素の分圧値をアルゴリズムに代入し、質量平衡方程式、シャント方程式、死腔関係式、呼吸率(
)、呼吸交換率(
と
)などのような数学式を満足する肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を求めた後、これらの中で
と
の差が最少になる混合静脈血液と肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測値として確定する。肺胞ガスの酸素−二酸化炭素の分圧を予測するために利用されるシャント率方程式は、下記の数学式13及び数学式14のように表現され、死腔率方程式は、数学式15及び数学式16のように表現され、換気−かん流比方程式は、数学式17乃至数学式20のように表現され、心拍出量方程式は、数学式21及び数学式22のように表現することができる。
【0059】
<シャント率方程式>
(数学式13)
(数学式14)
<死腔率方程式>
(数学式15)
(数学式16)
【0060】
<換気−かん流比方程式>
(数学式17)
(数学式18)
(数学式19)
(数学式20)
【0061】
<心拍出量方程式>
(数学式21)
(数学式22)
【0062】
次は、呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法及びその表示装置についてより詳細に説明する。
【0063】
図8は、本発明の1実施形態による肺臓−肺循環系の呼吸特性値の予測装置を示すブロック図である。前記装置は、換気ガスを通過させるマスクとノズル手段1、2と、前記ノズルに付着されたバイオセンサーから換気ガスの流量及び酸・炭分圧を測定するセンサー測定手段3、4、5と、前記測定変数を入力して心肺器官の各種生理特性値を算出する3つの呼吸模型に対する解析過程をプログラムにして内蔵したマイクロプロセッサーやコンピューター手段7と、前記の基礎測定変数と予測された生理特性値を液晶画面、コンピューター端末機、プリンタ、携帯電話、PDAなどに視覚的にディスプレイする手段8、とを包含して構成されている。本発明による呼吸ガス及び血液ガスの測定を通じて非侵襲的に呼吸特性値を予測する方法は、前記図8に図示した装置を通じて具現することができる。次に、本発明の呼吸ガス及び血液ガスの測定による非侵襲的呼吸特性値の予測方法をさらに詳細に説明する。
【0064】
本発明による前記肺臓−肺循環系の呼吸特性値の予測装置は、心肺器官の生理特性値として、混合静脈血と末端毛細管血(または肺胞ガス)の酸・炭分圧のような血液呼吸特性値、心拍出量のような心拍機能特性値、シャント率や生理学的死腔率のような肺臓機能に係る特性値を同時に予測することができる。
【0065】
より具体的には、換気ガスを通過させるノズル段階と、ノズルに付着されたバイオセンサーを通じて、吸気や呼気の流量
、これの酸・炭分圧I*と呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*などを測定して呼吸気体の基礎変数とする段階と、動脈血の酸・炭濃度a*を測定する段階と、前記測定変数を入力して、酸素と二酸化炭素に関する質量平衡方程式などの数式システムを解析して心肺器官のいろいろ重要な生理特性値を獲得する段階とを包含する。前記生理特性値を獲得する段階は図9〜図12を参照して次に詳細に説明する。
【0066】
前記生理特性値は、出力変数として混合静脈血と末端毛細管血(または肺胞ガスも共に)の酸・炭分圧のような呼吸機能の特性値、心拍出量のような心拍機能の特性値、シャント率及び生理学的死腔率のような肺臓の構造的特性値を包含する。
【0067】
赤血球のヘモグロビンなどと結合/分離されて、血液と呼吸空気中に拡散される酸素及び二酸化炭素の分圧と濃度は、肺胞と末端毛細血管で互に平衡状に到達して、当該気体の解離曲線を通じて相互変換することができる。
【0068】
入力データに入る基礎測定変数はその数が少ない反面、求めるべきの呼吸特性値はその数が非常に多いため、本発明では前述した酸素の質量平衡方程式、二酸化炭素の質量平衡方程式、酸素のシャント率方程式、二酸化炭素のシャント率方程式、換気の呼吸率方程式、血液の呼吸率方程式、酸素の換気−かん流比方程式、二酸化炭素の換気−かん流比方程式などの数学式を利用してシステムを構成する。
【0069】
前記の少ない数の基礎測定変数を利用して、多い数の呼吸特性値を求めるために、まず、入力変数が多く、出力変数の数が少ない易い問題から、入力変数は少なく出力変数の多い難しい問題の順に配列した後の、3つの呼吸モデルの類型に分類し、簡単なモデルで導出された解析方法と結果をより難しいモデル問題の解決に使用する体系的な方法を採択する。
【0070】
まず、<第1呼吸モデル>は、シャントや生理学的な死腔のない肺臓に関するものであって、混合静脈の酸・炭分圧V*と吸気の酸・炭分圧I*が与えられる理想的な場合である。次の<第2呼吸モデル>は、シャントや生理学的死腔がある肺臓に対して、混合静脈血の情報V*と、動脈血の酸・炭分圧a*が与えられ、さらに吸気ガス情報I*と呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*が与えられる場合である。最後に<第3呼吸モデル>は、やはり肺臓にシャントや生理学的死腔があり、気体境界値I*と気体補助情報値である呼気終末ガスの酸・炭分圧ET*とが与えられ、動脈血の酸・炭濃度a*が与えられるが、混合静脈の酸・炭濃度V*は、知られていない未知数である場合であって、実際の人体の呼吸生理問題に最も近接しており、その分解析も難しい。
【0071】
まず、<第1呼吸モデル>の解法は、換気−かん流比曲線またはKelmanの曲線と関連されたものであって、この方法を次に簡略説明する。
【0072】
コンピュータープログラムでまず外部do−loopを作って換気−かん流比
の初期値を与え、内部do−loopを作ってここで肺胞ガスの酸素分圧情報a1を初期値として与え、二酸化炭素分圧a2を質量平衡方程式を解いて算出し、このpair値であるA*=(a1、a2)を使用して換気−かん流比(
)*を計算する。換気−かん流比の要件である
=(
)*を満足する場合、A*を取って内部do−loopを外れる。外部do−loopで
の初期値を更新して、前記の計算過程を反復すると、一定の増分の
の値に対応する肺胞ガスの酸・炭分圧の集合であるKelmanの曲線を得ることになるが、これを換気−かん流比曲線またはO2−CO2ダイアグラムという。
【0073】
しかし、<第2呼吸モデル>及び<第3呼吸モデル>においては、肺臓にシャントや生理学的死腔があるため、<第1呼吸モデル>に比べて未知数または出力変数が多く、その分問題の解析方法も拡張せざるを得ない。<第2呼吸モデル>は、混合静脈の情報V*と、動脈血の情報a*とが、また、吸入ガス情報I*と、呼気終末ガスの情報ET*とが与えられる場合である。この問題の解析方法は、前記で説明したように、外部do−loopを設けて死腔率Xの初期値を設定する段階と、内部do−loopで肺胞ガスの酸素分圧a1の初期値を設定して質量平衡方程式システムを解析した結果によって肺胞ガスの二酸化炭素分圧a2を求める段階と、A*=(a1、a2)を使用してシャント率要件として酸素のシャント率Y1を式(6)によって求め、シャント率Y2を式(7)によって求め、この2つの値が同一であるかを試験する段階と、シャント率要件を満足しない場合、外部do−loopの初期に戻って死腔率Xの初期値を更新して前記の計算を反復する段階と、シャント率要件を満足する場合、内部と外部do−loopを全部外れる。このとき、記憶素子に最終的に貯蔵された値から肺胞ガスの酸・炭分圧A*、シャント率Y*、生理学的死腔率X*などを取って問題の回答として取り入れる段階と、その次に入力された吸入空気量
と、計算されたX*とY*の値を使用して、式(14)または(15)に従って心拍出量Qtotalを決定する。
【0074】
最終的に<第3呼吸モデル>は、やはりシャントと生理学的死腔がある場合であるが、吸気情報I*と呼気終末ガスの情報ET*とが与えられるとともに、動脈血の酸・炭ガス分圧a*が与えられるが、混合静脈の情報V*は与えられない呼吸の問題である。これは、<第2呼吸モデル>に比べて入力変数は減り、出力変数が増える場合であって、本発明の呼吸特性値の予測方法は、大別して自動入力装置に入力される初期値に従って、4つの類型に分類することができ、これを次に説明する。
【0075】
図9は、本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの前記4つの類型の中、第1類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。図9を参照するとき、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0076】
まず、(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される(S901)。前記自動演算装置は、図8で図示された3つの呼吸モデルに対する解析過程をプログラムに内蔵したマイクロプロセッサーやコンピューター手段7でなることができる。
【0077】
前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧で与えられることができ、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えられるか、または、測定された酸素分圧で与えられることができる。
【0078】
また、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に二酸化炭素の分圧が与えられることができ、前記吸気流量
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部へ出る総流量である呼気流量VEと同一に策定されることもできる。
【0079】
次いで、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S902)、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される(S903)。ただし、間呼吸入力変数及び初期値を前記自動演算装置に入力する手順に制限されない。次いで、(d)死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される(S904)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S905)。
【0080】
その後、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる(S906)。(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とを獲得する(S907)。前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素、及び窒素に関する質量平衡方程式になることができる。
【0081】
(h)もし、シャント率要件が満足された場合(S908)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される(S909)。前記シャント率要件は、酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断されることを意味する。もし、前記シャント率要件が満足されない場合は、前記(c)段階に戻って前記ステップを反復する。
【0082】
(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして、前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される(S910)。
【0083】
前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて、前記自動演算装置に入力されることができ、前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子の間隔が不均一であり、大きなサイズと小さなサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、始めの大きい格子が後の小さい格子に再分割されることもできる。
【0084】
次いで、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件を満足する特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S911)、これによる呼吸特性値が決定され(S912)、(k)心拍出量が算出される(S913)。前記呼吸率の要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧の差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断することを意味する。もし、前記呼吸率要件を満足する特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められない場合、さらに(a)ステップから再び反復する。
【0085】
また、前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中いずれか1つを意味し、前記(k)段階における心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、そして生理学的死腔率X**を利用して得ることができる。
【0086】
次の図10は、本発明の1実施形態において第3呼吸モデルの第2類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートある。図10を参照するとき、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0087】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1001)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1002)、(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1003)、(d)シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される(S1004)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S1005)。(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる(S1006)。(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる(S1007)。(h)もし、死腔率要件が満足された場合(S1008)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される(S1009)。(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして、前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される(S1010)。(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1011)、これによる呼吸特性値が決定され(S1012)、(k)心拍出量が算出される(S1013)。
【0088】
前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、図9を参照して記述された前記第1類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。ただ、第1類型と第2類型の差異点は、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、(c)段階で死腔率Xの初期値が入力されることに反して、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、(c)段階でシャント率Yの初期値が入力される点である。また、第2類型の(h)段階で死腔率の要件は、酸素の死腔率X1と二酸化炭素の死腔率X2の差異が一定範囲内にあるかを対比して判断されることを意味する。もし、前記死腔率要件が満足されない場合、前記(c)段階に戻って前記ステップを反復する。
【0089】
図11は、本発明の1実施形態において第3呼吸モデルの第3類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。図11を参照するとき、前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0090】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1101)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1102)、(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1103)、(d)死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される(S1104)。(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される(S1105)。(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる(S1106)。(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1による酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られ(S1107)、(h)シャント率の要件が満足されると(S1108)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定され(S1109)、(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定され(S1110)、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1111)、これによる呼吸特性値が決定され(S1112)、(k)心拍出量が算出される(S1113)。
【0091】
前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、図9を参照して記述された前記第1類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。ただ、第1類型と第3類型の差異点は、前記第1類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階で死腔率Xの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られることに反して、前記第3類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階で死腔率Xの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる点である。
【0092】
図12は、本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第4類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。図12を参照するとき、前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、下記のようなステップで構成される。
【0093】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力され(S1201)、(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力され(S1202)、(c)シャント率Yの初期値を入力変数にして前記自動演算装置に入力され(S1203)、(d)シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力され(S1204)、(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力され(S1205)、(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られ(S1206)、(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1による酸素の死腔率X1と二酸化炭素の死腔率X2とが得られ(S1207)、(h)死腔率の要件が満足されると(S1208)、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定され(S1209)、(i)一定の間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧Vnを初期値にして前記(b)乃至(h)のステップが反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧Vnに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定され(S1210)、(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中で、呼吸率の要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると(S1211)、これによる呼吸特性値が決定され(S1212)、(k)心拍出量が算出される(S1213)。
【0094】
前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、図10を参照して記述された前記第2類型による呼吸特性値の予測方法と類似するため、細部的な説明は省略する。
【0095】
ただ、第2類型と第4類型の差異点は、前記第2類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階でシャント率Yの初期値を考慮して、肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られることに反して、前記第4類型による呼吸特性値の予測方法は、(d)段階でシャント率Yの初期値を考慮して肺胞ガスの二酸化炭素分圧のA2の初期値が前記自動演算装置に入力され、(f)段階で演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる点である。
【0096】
本発明による前記第1類型、第2類型、第3類型、及び第4類型の(a)段階で、前記血液補助情報値は、動脈血の酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)段階が反復されて動脈血の二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることができる。
【0097】
本発明による呼吸特性値の表示装置は、前記第1類型、第2類型、第3類型または第4類型による呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含する。
【0098】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線に連結されて携帯可能であり、前記自動演算装置はコンピュータープロセッサーまたは内蔵チップを使用することができる。
【0099】
図13は、本発明の1実施形態による換気−かん流比の曲線である。図13の曲線(1)、(2)、(3)、(4)、(5)は、5人の患者に対する<第1呼吸モデル>の問題を解析した結果としての換気−かん流比の曲線である。各曲線の左側端の大きい菱形表示V1、V2、...、V5は、臨床データセットM中の混合静脈の酸・炭分圧の測定値V*を示す。また、これらの中にある黒の菱形は、<第3呼吸モデル>の問題を計算して求められた混合静脈の濃度データV**としてV*点らと正確に一致することを確認することができる。
【0100】
黒丸a1、a2、...、a5は、臨床データセットM中の動脈血の酸・炭濃度a*の値を表示する。各曲線の中央部にある大きい三角形A1、A2、...、A5は、臨床データセットMの中のV*、a*、I*、ET*の値と本発明で提供する<第2呼吸モデル>の解析方法を使用して確定した肺胞ガス分圧A*であり、その中の小さい黒三角形は、臨床データセットMの中で血液境界値V*を未知数と見なして使用せず、本発明で提供する<第3呼吸モデル>の解析方法を適用して計算した肺胞ガス分圧A**値として、この値はA*値と正確に一致することを確認することができる。
【0101】
空白の四角E1、E2、...、E5は、臨床データセットMに入っている呼気終末ガスの炭酸ガス分圧を<第1呼吸モデル>で求められた換気−かん流比の曲線上に表示したものであり、その付近の小さな黒四角形は、<第2呼吸モデル>の解析結果から算出された呼気終末ガスの酸素分圧値を追加して呼気終末ガスの酸・炭分圧点ET*を正確に表示したものであり、これらの値は、さらに本発明の<第3呼吸モデル>の解析のために必要な呼気終末ガスの酸・炭分圧情報ET*の値として使用された。結論的に前記の計算値と臨床値を比較した図表から、本発明の体系的な呼吸解析方法が心肺器官の各種生理特性値らを正確に予測していることを確認することができる。
【0102】
以上、限定された実施形態及び図面によって本願発明を説明したが、これは、本発明の理解のために提供されたものであり、本発明は前記の実施形態などに限定されるものではなく、本発明の当業者であればこのような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0103】
したがって、本発明の思想は、実施形態に限定されてはならなく、本発明の請求範囲のみならず、この請求範囲と均等であるか等価的な変形に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】人体の心臓と肺臓における血液の循環順序を示す模式図である。
【図2】人体の肺循環において酸素と二酸化炭素が交換される過程を示した模式図である。
【図3】従来技術においてカテーテルを利用して肺臓に供給される血液の総量(心拍出量)を予測する方法を示す模式図である。
【図4】従来技術において前記カテーテルを利用して心拍出量を算出する方法を示す模式図である。
【図5】従来技術において手または足に多数の電極を設置して、これらから収集された電気信号を分析して心拍出量を評価する電極信号分析法を示す模型図である。
【図6】人体の肺胞で発生するガス交換の過程を示す模式図である。
【図7】人体の肺胞における酸素−二酸化炭素のダイアグラムである。
【図8】本発明の1実施形態による肺臓−肺循環系における呼吸特性値の予測装置を示すブロック図である。
【図9】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第1類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。
【図10】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第2類型による呼吸特性値の予測方法を図示するフローチャートである。
【図11】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第3類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。
【図12】本発明の1実施形態による第3呼吸モデルの第4類型による呼吸特性値を予測する方法を図示するフローチャートである。
【図13】本発明の1実施形態による換気−かん流比の曲線図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸素と二酸化炭素の濃度V(以下、酸・炭濃度と略記する)の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式(mass balance equation)とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、
(h)シャント率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項2】
前記(a)段階において、前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項3】
前記(a)段階において、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項4】
前記(a)段階において、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に、二酸化炭素の分圧が測定されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項5】
前記(a)段階において、前記吸気流量
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部に出る総流量である呼気流量VEと同一に策定することができることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項6】
前記(h)段階において、前記シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項7】
前記(f)段階において、前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素及び窒素に関する質量平衡方程式である下記の式(1)、(2)及び(3)を包含することを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
「式中、
は、末端毛細血管内の二酸化炭素濃度[%]、
は、末端毛細血管内の酸素濃度[%]、
は、混合静脈内の二酸化炭素濃度[%]、
は、混合静脈内の酸素濃度[%]、
は、肺胞内の二酸化炭素分圧[mmHg]、
は、肺胞内の窒素分圧[mmHg]、
は、肺胞内の酸素分圧[mmHg]、
は、末端毛細管血の窒素分圧[mmHg]、
は、大気中の空気の窒素分圧[mmHg]、
は、大気中の空気の酸素分圧[mmHg]、
は、混合静脈血の窒素分圧[mmHg]を意味する。
は、毛細血管のかん流量[liters/min]、
は、肺胞でガス交換する空気の流量[liters/min]、
は、吸入空気の流量[liters/min]、
は、呼吸係数、
は、血液と空気に関する係数を意味する。」
【請求項8】
前記(i)段階において、前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて前記自動演算装置に入力されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項9】
前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子間隔が均一でなく、大きいサイズと小さいサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、初めの大きな格子が後で小さな格子に再分割されることもできることを特徴とする請求項8に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項10】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式と、Fick方程式とを包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、
(h)前記死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項11】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項10に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項12】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、
(h)シャント率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項13】
前記(h)段階において、シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項12に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項14】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、
(h)死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項15】
前記(h)段階の死腔率要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項14に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項16】
前記(j)段階において、前記呼吸率要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧との差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項17】
前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中いずれか1つであることを特徴とする請求項16に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項18】
前記(k)段階において、心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、また、生理学的死腔率X**を利用して得られることを特徴とする請求項16に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項19】
前記(a)段階における血液補助情報値は、動脈血における酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)の段階が反復されて動脈血における二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることを特徴とする請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項20】
請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含してなることを特徴とする呼吸特性値の表示装置。
【請求項21】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線で連結されて携帯可能にすることを特徴とする請求項20に記載の呼吸特性値の表示装置。
【請求項22】
前記自動演算装置は、コンピュータープロセッサーまたは内蔵チップ(embedded chip)を使用することを特徴とする請求項21に記載の呼吸特性値の表示装置。
【請求項1】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸素と二酸化炭素の濃度V(以下、酸・炭濃度と略記する)の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式(mass balance equation)とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素のシャント率Y1と二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、
(h)シャント率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項2】
前記(a)段階において、前記血液補助情報値は、動脈血の酸・炭分圧a*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項3】
前記(a)段階において、前記気体境界値は、吸気の酸・炭分圧I*として与えられるか、または、測定された酸素分圧として与えられることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項4】
前記(a)段階において、前記気体補助情報値は、呼気終末ガスの酸・炭濃度ET*として、特に、二酸化炭素の分圧が測定されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項5】
前記(a)段階において、前記吸気流量
は、外部から肺臓に入る外部空気の総流量であり、肺臓から外部に出る総流量である呼気流量VEと同一に策定することができることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項6】
前記(h)段階において、前記シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項7】
前記(f)段階において、前記呼吸気体に関する方程式群は、酸素、二酸化炭素及び窒素に関する質量平衡方程式である下記の式(1)、(2)及び(3)を包含することを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
「式中、
は、末端毛細血管内の二酸化炭素濃度[%]、
は、末端毛細血管内の酸素濃度[%]、
は、混合静脈内の二酸化炭素濃度[%]、
は、混合静脈内の酸素濃度[%]、
は、肺胞内の二酸化炭素分圧[mmHg]、
は、肺胞内の窒素分圧[mmHg]、
は、肺胞内の酸素分圧[mmHg]、
は、末端毛細管血の窒素分圧[mmHg]、
は、大気中の空気の窒素分圧[mmHg]、
は、大気中の空気の酸素分圧[mmHg]、
は、混合静脈血の窒素分圧[mmHg]を意味する。
は、毛細血管のかん流量[liters/min]、
は、肺胞でガス交換する空気の流量[liters/min]、
は、吸入空気の流量[liters/min]、
は、呼吸係数、
は、血液と空気に関する係数を意味する。」
【請求項8】
前記(i)段階において、前記複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nは、複数個に分割された“混合静脈格子”の格子点に対応され、それぞれ血液境界値に設定されて前記自動演算装置に入力されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項9】
前記“混合静脈格子”に分割された格子点は、格子間隔が均一でなく、大きいサイズと小さいサイズとが混合されたマルチグリッド(multi grid)で構成され、初めの大きな格子が後で小さな格子に再分割されることもできることを特徴とする請求項8に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項10】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式と、Fick方程式とを包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用するべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの酸素分圧A1の初期値と、肺胞ガスの二酸化炭素分圧の推測値A2とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、
(h)前記死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項11】
前記(h)段階において、死腔率の要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項10に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項12】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)死腔率Xの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記死腔率Xの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と、肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素のシャント率Y1と、二酸化炭素のシャント率Y2とが得られる段階と、
(h)シャント率の要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項13】
前記(h)段階において、シャント率の要件は、前記酸素のシャント率Y1と前記二酸化炭素のシャント率Y2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項12に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項14】
(a)血液補助情報値、気体境界値、気体補助情報値及び吸気流量などの呼吸入力変数が自動演算装置に入力される段階と、
(b)混合静脈の酸・炭濃度Vの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(c)シャント率Yの初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(d)前記シャント率Yの初期値を入力変数にして肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値が前記自動演算装置に入力される段階と、
(e)前記呼吸入力変数及び初期値が、酸素、二酸化炭素及び窒素の質量平衡方程式とFick方程式を包含する呼吸気体に関する方程式群を解析することに使用されるべく、前記自動演算装置に内蔵された演算ルーチンに入力される段階と、
(f)前記演算ルーチンによって呼吸気体に関する方程式群の解析で肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1が得られる段階と、
(g)前記肺胞ガスの二酸化炭素分圧A2の初期値と肺胞ガスの酸素分圧の推測値A1とによる酸素の死腔率X1と、二酸化炭素の死腔率X2とが得られる段階と、
(h)死腔率要件が満足された場合、肺胞ガスの酸・炭分圧A*と関連された呼吸特性値が決定される段階と、
(i)一定間隔を有する複数の混合静脈の酸・炭分圧(V*)nを初期値にして前記(b)乃至(h)の段階が反復されて、前記それぞれの混合静脈の酸・炭分圧(V*)nに対応される複数の肺胞ガスの酸・炭分圧(A*)n及び呼吸特性値が決定される段階と、
(j)前記複数の肺胞ガスの酸・炭分圧の中、呼吸率要件が満足される特定の肺胞ガスの酸・炭分圧A**が定められると、これによる呼吸特性値が決定される段階と、及び
(k)心拍出量が算出される段階と、
を包含することを特徴とする呼吸特性値の予測方法。
【請求項15】
前記(h)段階の死腔率要件は、前記酸素の死腔率X1と前記二酸化炭素の死腔率X2との差異が一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項14に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項16】
前記(j)段階において、前記呼吸率要件は、計算された値から得られる呼吸率と、測定された吸気ガスと呼気終末ガスの酸・炭分圧との差異から得られる呼吸率の差異が、一定範囲内にあるかを対比して判断することを特徴とする請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項17】
前記(j)段階で決定される呼吸特性値は、肺胞ガスの酸・炭分圧A**、末端毛細管血の酸・炭分圧C**、換気−かん流比(
)**、シャント率Y**、または生理学的死腔率X**の中いずれか1つであることを特徴とする請求項16に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項18】
前記(k)段階において、心拍出量は、測定された吸気空気量
または呼気空気量VE、また、生理学的死腔率X**を利用して得られることを特徴とする請求項16に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項19】
前記(a)段階における血液補助情報値は、動脈血における酸素の酸・炭分圧a1*だけが使用され、前記(a)乃至(k)の段階が反復されて動脈血における二酸化炭素の酸・炭分圧a2*が決定されることを特徴とする請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法。
【請求項20】
請求項1、10、12、または14の中いずれか1項に記載の呼吸特性値の予測方法によって予測された呼吸特性値が、前記自動演算装置に連結されて視覚的に表示される情報端末機を包含してなることを特徴とする呼吸特性値の表示装置。
【請求項21】
前記呼吸特性値の表示装置は、前記情報端末機が前記自動演算装置に有線または無線で連結されて携帯可能にすることを特徴とする請求項20に記載の呼吸特性値の表示装置。
【請求項22】
前記自動演算装置は、コンピュータープロセッサーまたは内蔵チップ(embedded chip)を使用することを特徴とする請求項21に記載の呼吸特性値の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−207874(P2009−207874A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318239(P2008−318239)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
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