説明

呼吸用保護具

【課題】面体に着脱自在に装着したブロワー装置を利用して、面口部に設けた排気弁や伝声器を保護する呼吸用保護具を提供すること。
【解決手段】面体の面口部1に排気弁3や伝声器4を設け、呼吸を補助する電動ファンを有するブロワー装置2を備え、ブロワー装置2を面口部1の外面に着脱自在に取り付け、ブロワー装置2は排気弁3や伝声器4を覆うカバー11を有し、カバー11に、呼気を排出し、音声を外部へ伝えるための開口部8,9を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
劣悪な環境で作業を行う際に着用し、空気中の有害物質を吸い込むのを防ぐ装置として、外気流入経路にフィルタを設置し、吸気時にフィルタを通して外気を吸引することにより、呼吸を助けるブロワー装置を装着し、面体の面口部に排気弁や伝声器を設けた全面型・半面型の呼吸用保護具が知られている。
ところが、一般的な呼吸用保護具は、ブロワー装置が面体に固定されているので(特許文献1及び特許文献2参照)、ブロワー装置やブロワー装置の奥に隠れた部品の交換・修理を行い難く、器具全体のメンテナンス性に劣る。
【0003】
また、従来、電動ファンユニット(ブロワー装置)をフィルタ装置に内蔵し、これら電動ファンユニット及びフィルタ装置を面体に着脱可能に取り付けた呼吸用保護具も公知である(特許文献3及び特許文献4参照)。
しかし、これらの呼吸用保護具は、たんに電動ファンユニットを面体に着脱可能としただけであって、排気弁や伝声器を保護するには、それぞれを被覆するカバーが別途必要で、カバー類を取り付けるためのスペースも広く取るため、器具全体が大きく重くなり、着用者の負担が増す。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3076433号公報
【特許文献2】実開平4−51928号公報
【特許文献3】特開2003−117013号公報
【特許文献4】特開2006−102324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、面体に着脱自在に装着したブロワー装置を利用して、面口部に設けた排気弁や伝声器を保護する呼吸用保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、面体の面口部に排気弁を設置し、呼吸を補助する電動ファンを有するブロワー装置を備えた呼吸用保護具に関し、該ブロワー装置を前記面口部の外面に着脱自在に取り付け、前記ブロワー装置は前記排気弁を覆うカバーを有し、該カバーに呼気を排出するための開口部を形成してある。
前記排気弁の近傍に前記開口部を穿設するのが望ましい。
前記面口部に伝声器又は拡声器を設置し、該伝声器又は拡声器を前記カバーで覆っても良い。
この時、前記面口部の前記伝声器の近傍に係止具を摺動自在に設け、前記カバーに前記係止具と嵌合可能な切欠部を形成し、該切欠部内に前記係止具とその摺動に伴って係脱する被係止具を設け、前記係止具を被係止具側へ摺動させた時に開放される前記切欠部の一部を、音声を外部へ伝えるための開口部とすることもできる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、面口部に取り付けるブロワー装置を利用して排気弁を保護するので、排気弁カバーを別途設ける必要が無く、このため、部品数を減らして、構造を簡易化できるだけでなく、カバー類を取り付けるためのスペースを削減して小型化することが可能である。
また、ブロワー装置に設けたカバーを面口部に被せるので、排気弁カバー等を装着するためにブロワー装置の吸い込み口及びフィルタを左右にずらす必要が無く、フィルタを効率が良い面口部の中心部に設置することができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、排気弁から排出された呼気をスムーズに外部へ逃がすことができる。
請求項3に係る発明によれば、面口部に伝声器或いは拡声器を設けても、ブロワー装置に設けたカバーで被覆して保護することができ、これら伝声器或いは拡声器を保護するカバー類を別途設ける必要が無い。
請求項4に係る発明によれば、係止具を摺動させるだけで簡単にブロワー装置を面口部に着脱することができるだけでなく、ブロワー装置を面口部へ取り付ける係止部分に形成した切欠部を利用して、音声を外部へ伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図9には、全面型の呼吸用保護具である実施例1を示す。
本発明の呼吸用保護具は、図1及び図2に示すように、着用者の顔面全体を覆う面体Aを有し、面体Aの面口部1にブロワー装置2を着脱可能に取り付けてある。
図3及び図4に示すように、面口部1は隔壁10で区画され、その内部に排気弁3、伝声器4及び面体側ダクト部7が設けられる。排気弁3は面口部1の下部に設置され、伝声器4は排気弁3の上方に設けられる。
面体側ダクト部7は面口部1の上部に設けられ、面口部1の内外を貫通している。また、面体側ダクト部7の奥には吸気弁14が設置されている(図4)。
さらに、伝声器4を挟んだ両側において隔壁10の先端には、係止具5がそれぞれ上下摺動自在に装着されている。
【0010】
ブロワー装置2は、隔壁10の先端部外周に被せて面口部1を覆うカバー11と、カバー11の内部に設置した電動ファン12及びブロワー側ダクト部6とを備える。
電動ファン12は、呼吸のタイミングを検知するセンサ15に接続され、吸気時に作動、或いは高速運転して、フィルタを通して外気を吸引する。
センサ15は面口部1の排気弁3と対応した位置に設けられ、排気弁3の動きに伴う光の反射方向の変化によって呼吸のタイミングを検知するようになっている。なお、センサ15の上方には、外光によるセンサ15の誤作動を防ぐためや、排気弁3から排出された呼気を後述する開口部8へスムーズに導くための仕切板16が設置されている。
【0011】
ブロワー側ダクト部6は、面口部1の面体側ダクト部7と対応する位置に設けられ、ブロワー装置2を面口部1に取り付けた時、面体側ダクト部7と連結できるようになっている。ブロワー側ダクト部6の外周には、面体側ダクト部7と気密をもって接続できるようにパッキン17が装着されている。
なお、パッキン17とOリング等を二重に用いて、ブロワー側ダクト部6と面体側ダクト部7の送気口7Aとの気密を取ることもできるが、本実施例では、面体側ダクト部7をブロワー側ダクト部6の送気口6Aより一回り大きい形状にして、送気口6Aを囲む最低限の大きさにしてあるのでコンパクトである。このため、送気口6A及びパッキン17の設置場所に自由度があり、呼吸用保護具全体のデザインにも自由度が生まれる。
【0012】
また、ブロワー装置2の外面において、電動ファン12の吸い込み口にはフィルタが着脱可能に取り付けられようになっており、外気はフィルタを通過してからブロワー側ダクト部6へ流入する。
本実施例では、フィルタをワンタッチでブロワー装置2の外面にはめ込むようになっており、フィルタ取付部分にはフィルタをワンタッチで外すための操作レバー18を設けてある。
なお、電動ファン12の吸い込み口及びフィルタは、フィルタが最も効率良く機能するよう、面口部1及びその外面を覆うカバー11の中心に設置される。
【0013】
カバー11は排気弁3を覆う形状となっているので、呼気を逃がすためにカバー11の下部(排気弁3の近傍)には複数の開口部8を穿設してある。
また、カバー11の両側先端部に、面口部1の係止具5を嵌合するための切欠部9が形成される。
切欠部9は、係止具5の摺動範囲を含むように縦長に形成され、切欠部9の下部には、係止具5とその摺動に伴って係脱する被係止具13が取り付けられる。
【0014】
本実施例では、一般的に多用されているネジによる取り付けは用いておらず、ネジを回す工具が不要であり、また、ネジ特有の緩みなどがないロック機能を有することから、被係止具13の上を摺動させてブロワー装置2と面口部1とを固定する係止具5を用いている。
本実施例における係止具5は、呼吸用保護具全体に対してコンパクトになっているが、当然、大きさの変化や使用個数の増減も自由であるため、デザインに自由度がある。また、設置箇所等のその他の制約があれば、それに合わせて対応できる。
【0015】
ブロワー装置2を面口部1へ取り付けるには、図5及び図6に示すように、ブロワー側ダクト部6と面体側ダクト部7とを接続すると共に、面口部1の係止具5をカバー11の切欠部9に嵌合する。すると、ブロワー装置2のカバー11が排気弁3や伝声器4を覆って保護する。
また、この時、係止具5は上方に移動させてあり、係止具5は、被係止具13が設けられていない切欠部9の上部に嵌合する。
【0016】
次に、図7に示すように、係止具5を下方へ摺動させ、係止具5と被係止具13を係合して(図8)、ブロワー装置2を面口部1に固定する。
係止具5が下方へ移動した結果、図9に示すように、切欠部9の上部が開放されて伝声器4から外部へ音声を伝える開口部となる。
また、図10に示すように、排気弁3の近傍においてカバー11には開口部8が形成されているので、これら開口部8を通して排気弁3から排出された呼気を外部へ逃がすことができる。
【0017】
図11及び図12は、半面型の呼吸用保護具である実施例2を示す。
本実施例の呼吸用保護具は、着用者の鼻と口を覆う面体Aを有し、面体Aの両側部には、着用者の頭の上部及び下部後方で支持するための装着用ベルト19をそれぞれ挿通してある。
また、面体Aの面口部1の外面にはブロワー装置2が着脱自在に取り付けられている。
面口部1及びブロワー装置2の構造並びに両者の取付構造は、実施例1と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0018】
なお、呼気を排出する開口部8の数や位置は上記実施例に限定されない。また、面口部1とブロワー装置2とを固定する係止部分とは別に、音声を伝える透孔等の開口部をカバー11の伝声器4近傍に形成しても良い。
さらに、電動ファン12は、呼吸のタイミングと関係なく常時作動させることもでき、この場合、センサ15または仕切板16を設置しないこともできる。
また、面口部1に伝声器4を設置しないこともあり、伝声器4に代えて拡声器を取り付けることもある。
フィルタの代わりに吸収缶を取り付けても良く、フィルタ或いは吸収缶をねじ込み、締付けリング等で取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1を示す呼吸用保護具の正面図。
【図2】本発明の実施例1を示す呼吸用保護具の側面図。
【図3】面口部及びブロワー装置の正面から見た分解斜視図。
【図4】面口部及びブロワー装置の背面から見た分解斜視図。
【図5】係止具開放状態における面口部及びブロワー装置の斜視図。
【図6】図5のA−A断面図。
【図7】係止具ロック状態における面口部及びブロワー装置の斜視図。
【図8】図7のB−B断面図。
【図9】図7のC−C断面図。
【図10】係止具ロック状態における面口部及びブロワー装置の下方から見た斜視図。
【図11】本発明の実施例2を示す呼吸用保護具の正面図。
【図12】本発明の実施例2を示す呼吸用保護具の側面図。
【符号の説明】
【0020】
A 面体
1 面口部
2 ブロワー装置
3 排気弁
4 伝声器
5 係止具
6 ブロワー側ダクト部
6A 送気口
7 面体側ダクト部
7A 送気口
8 開口部
9 切欠部
10 隔壁
11 カバー
12 電動ファン
13 被係止具
14 吸気弁
15 センサ
16 仕切板
17 パッキン
18 操作レバー
19 装着用ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面体の面口部に排気弁を設置し、呼吸を補助する電動ファンを有するブロワー装置を備えた呼吸用保護具において、該ブロワー装置を前記面口部の外面に着脱自在に取り付け、前記ブロワー装置は前記排気弁を覆うカバーを有し、該カバーに呼気を排出するための開口部を形成したことを特徴とする呼吸用保護具。
【請求項2】
前記排気弁の近傍に前記開口部を穿設した請求項1に記載の呼吸用保護具。
【請求項3】
前記面口部に伝声器又は拡声器を設置し、該伝声器又は拡声器を前記カバーで覆ってある請求項1又は2に記載の呼吸用保護具。
【請求項4】
前記面口部の前記伝声器の近傍に係止具を摺動自在に設け、前記カバーに前記係止具と嵌合可能な切欠部を形成し、該切欠部内に前記係止具とその摺動に伴って係脱する被係止具を設け、前記係止具を被係止具側へ摺動させた時に開放される前記切欠部の一部を、音声を外部へ伝えるための開口部とした請求項3に記載の呼吸用保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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