呼吸誘導装置、呼吸誘導方法、及びプログラム
【課題】コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させる。
【解決手段】時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納し、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【解決手段】時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納し、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツの再生技術に関し、特に、再生するコンテンツに適した呼吸に鑑賞者の呼吸を誘導する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽コンテンツなどの時間軸に沿って進行するコンテンツのテンポに基づいて鑑賞者の呼吸テンポが誘導される(コンテンツに呼吸が引き込まれる)という報告がなされている(例えば、非特許文献1参照)。また、この現象を利用し、例えば、音楽テンポに基づいて鑑賞者の呼吸を誘導する呼吸誘導技術の研究がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Haas F. etl. Effects of perceived musical rhythms on respiratory pattern. J.Appl. Physiol. 1986, 61, pp. 1185-1191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上述したコンテンツに呼吸が引き込まれる現象から、逆に、鑑賞者の呼吸をコンテンツの各再生位置に適した呼吸に同期させることが、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用に影響を与えると考えられる。このことから、コンテンツの各場面に適した呼吸に誘導するための情報を鑑賞者に呈示し、それによって鑑賞者の呼吸を誘導することで、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることができると期待できる。特に、コンテンツの鑑賞経験が浅い鑑賞者の場合には、コンテンツを鑑賞しただけでは呼吸テンポの誘導が十分になされない(呼吸の引き込みが浅い)という結果も出されており(例えば、非特許文献1参照)、このような鑑賞者に対しては特に有効な効果が期待できる。
【0005】
しかし、従来の呼吸誘導技術は、主にリラクゼーションや健康増進を目的としており、ある目標となる定常的な呼吸パターンに利用者の呼吸を誘導することのみを主眼に置いたものである。すなわち、従来の呼吸誘導技術では、コンテンツの各再生位置にそれぞれ適した呼吸に鑑賞者の呼吸を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させるという発想はない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では上記課題を解決するために、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納し、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示することとしたため、これによって、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、呼吸誘導装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【図2】図2は、呼吸分布付きコンテンツの一例を説明するための図である。
【図3】図3は、呼吸レベルV(t)を例示した図である。
【図4】図4は、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角φ(t)を例示した図である。
【図5】図5(A)(B)は、視覚情報として出力される呈示変数情報x(t)を例示した図である。
【図6】図6は、呼吸誘導方法を例示するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第1実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図8】図8は、第2実施形態における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図9】図9は、第2実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図10】図10(A)−(D)は、第3実施形態の呼吸目標呈示部の例を説明するための図である。
【図11】図11は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
【図12】図12は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図13】図13は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図14】図14は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図15】図15は、再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
〔用語の定義〕
以下のように用語を定義する。
【0012】
コンテンツ:各種音楽、音声、映画やテレビ番組等の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を意味する。
【0013】
コンテンツ情報:コンテンツを構成し、時間軸に沿って順次再生される情報を意味する。
【0014】
再生位置:時間軸に沿って順次再生される各コンテンツ情報の再生位置、つまり、コンテンツ再生における時間軸上の進行位置を意味する。より具体的には、例えば、フレーム位置、サンプル点、タイムコード、ソングポジションポインターなどが再生位置に対応する。
【0015】
呼吸目標設定位置:予め定められた少なくとも一部の再生位置を意味する。
【0016】
呼吸状態:周期的に行われる呼吸運動中の各状態を意味する。より具体的には、例えば、呼気運動を開始する時点の状態である呼気開始状態、呼気運動中の各時点での呼気状態、呼気運動を終了する時点の状態である呼気終了状態、吸気運動を開始する時点の状態である吸気開始状態、吸気運動中の各時点での吸気状態、吸気運動を終了する時点の状態である吸気終了状態などが呼吸状態に対応する。
【0017】
呼吸情報:人間の呼吸状態を計測して得られる情報を意味する。より具体的には、例えば、胸部回りや腹部回りの長さ、呼吸の気流量、呼気と吸気の温度差などを意味する。
【0018】
再生速度:ある再生位置Aのコンテンツ情報を再生してから次の再生位置Bのコンテンツ情報を再生するまでに要する時間の逆数を意味する。再生テンポやクロック間隔などに読み替え可能な概念である。
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を説明する。
【0020】
<構成>
図1は、呼吸誘導装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【0021】
図1に例示するように、第1実施形態の呼吸誘導装置1は、入力部10と、呼吸分布付きコンテンツ11aを格納する記憶部11と、コンテンツ再生制御部12と、再生部13と、呈示変数演算部14と、呼吸目標呈示部15と、制御部19とを有する。
【0022】
[入力部10]
入力部10は、呼吸分布付きコンテンツ11aの入力を受け付ける機能部であり、入力部10の例は、入力ポート、入力インタフェース、読み出し装置、受信装置などである。
【0023】
[呼吸分布付きコンテンツ11a]
図2は、呼吸分布付きコンテンツ11aの一例を説明するための図である。
【0024】
本形態の呼吸分布付きコンテンツ11aは、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含むデータ構造からなるデータである。
【0025】
本形態の例では、サンプル点を再生位置とし、音程や音の強さを示すMIDIデータをコンテンツ情報とし、すべてのサンプル点を呼吸目標設定位置とし、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報を呼吸目標情報とする。例えば、図2に例示する呼吸分布付きコンテンツ11aは、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、すべてのサンプル点τ(呼吸目標設定位置)に対して定められた、各サンプル点τにおいて望ましい「周期的な呼吸運動の位相」を特定するための情報Φ(τ)(呼吸目標情報)とを含むデータ構造からなるデータである。
【0026】
ここで、この例のサンプル点τは0以上の整数であり、値が大きいほど遅い時間に対応する。また、図2に例示する呼吸分布付きコンテンツ11aは、再生対象のサンプル点τが時間軸に沿って順次更新されながら、各再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報が順次再生される。この再生対象のサンプル点τの更新周期をサンプル更新間隔と呼び、予め定められたサンプル更新間隔の標準設定値をS0とする。
【0027】
また、本形態の呼吸目標情報Φ(τ)は、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報である。本形態では、人間の呼吸状態を示す呼吸レベルV(t)の周期的な変化によって「周期的な呼吸運動」を定量化し、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角を「周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報」とする。なお、本形態では、胸部回りや腹部回りの長さに対応する情報を呼吸レベルV(t)とし、時刻tでの呼吸レベルをV(t)で表す。なお、tは離散的な時刻に対応する整数インデックスであり、「時刻t」とは整数インデックスtに対応する時刻を意味する。また、γは時間遅延フィルターの遅延幅であり、その値は200msから800ms程度が望ましい。
【0028】
図3は、呼吸レベルV(t)を例示した図である。また、図4は、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角φ(t)を例示した図である。
【0029】
図3に例示するように、本形態の呼吸レベルV(t)は、呼気が開始される時刻である呼気開始時刻(bpe(n-1)等)で極大となり、呼気状態が進むにつれて減少し、吸気が開始される時刻である吸気開始時刻(bpi(n)等)で極小となり、吸気状態が進むにつれて増加し、次の呼気開始時刻(bpe(n)等)で再び極大となる、というように周期的に変化する。このような呼吸レベルV(t)の変化に応じ、図4に例示するような相空間での極座標の偏角φ(t)が定まる。
【0030】
本形態では、呼吸目標設定位置である各サンプル点τに対応するコンテンツ情報が再生される時点で好ましい偏角φ(t)が、当該サンプル点τに対応する呼吸目標情報Φ(τ)(図2参照)として、呼吸分布付きコンテンツ11aに予め設定されている(図2参照)。
【0031】
[記憶部11]
記憶部11は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの情報記憶装置である。
【0032】
[コンテンツ再生制御部12]
本形態のコンテンツ再生制御部12は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態のコンテンツ再生制御部12は、記憶部11の呼吸分布付きコンテンツ11aから抽出されたコンテンツ情報を入力とし、予め定められた再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力する。例えば、コンテンツ再生制御部12は、コンテンツ情報d(τ)を記憶部11に格納された呼吸目標分布付きコンテンツ11aから抽出されたコンテンツ情報d(τ)を入力とし、予め定められたサンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)(音響信号等)を順次出力する。例えば、コンテンツ再生制御部12は、サンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を呼吸目標分布付きコンテンツ11aから順次抽出し、抽出したコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する。
【0033】
[再生部13]
本形態の再生部13は、例えば、アンプ、スピーカー、画像表示装置などから構成される周知の呈示装置である。再生部13は、コンテンツ再生制御部12から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する。
【0034】
[呈示変数演算部14]
本形態の呈示変数演算部14は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部14は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力する。なお、本形態の第1設定位置は、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置である呼吸目標設定位置であり、本形態の誘導呼吸状態は、第1設定位置の呼吸目標情報が示す呼吸状態である。
【0035】
例えば、本形態の呈示変数演算部14は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応する各サンプル点τ=p(t)の呼吸目標情報Φ(p(t))を入力とし、当該呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成し、当該呈示変数情報x(t)を出力する。なお、p(t)は、時刻tの時点で再生されるコンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τを表す。より具体的には、例えば、本形態の呈示変数演算部14は、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1(図2)において、呼吸目標情報Φ(p(t1))を入力とし、呼吸目標情報Φ(p(t1))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t1)を生成して出力する。
【0036】
また、呈示変数情報x(t)は、呼吸目標情報Φ(p(t))の写像であり、例えば、呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を人間が直感的に理解しやすい数値に変換したものである。例えば、吸気開始から次の呼気開始に到るまでの吸気状態(図3参照)では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が大きくなり、呼気開始から次の吸気開始までの呼気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が小さくなるようにする。また、その逆に、吸気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が小さくなり、呼気開始から次の吸気開始までの呼気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が大きくなるようにしてもよい。呈示変数情報x(t)の具体例としては、例えば、以下の式(1)や(2)のものがある。
【0037】
x(t)=C・cos(Φ(p(t))+C0)+C1 …(1)
x(t)=mod(Φ(p(t)),π)+C1 …(2)
ただし、mod(Φ(p(t)),π)はΦ(p(t))をπで割った余りを表し、C,C0,C1は|C|≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0038】
[呼吸目標呈示部15]
本形態の呼吸目標呈示部15は、呈示変数情報を入力とし、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。また、本形態の呼吸目標呈示部15は、例えば、画像や光などの視覚情報や、音楽や音声などの聴覚情報や、振動などの触覚情報などを表示する周知の呈示装置である。呼吸目標呈示部15は、再生部13の一部であってもよいし、再生部13と別個に構成されてもよい。ただし、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部15による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とが異なることが望ましい。例えば、コンテンツが音楽コンテンツであり、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別が音波である場合、呼吸目標呈示部15による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別は音波以外であることが望ましい。本形態では、呼吸目標呈示部15が視覚情報を呈示し、その呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象が光である場合を例示する。すなわち、本形態の呼吸目標呈示部15は、呈示変数情報x(t)を視覚情報として出力する。
【0039】
図5(A)(B)は、視覚情報として出力される呈示変数情報x(t)を例示した図である。図5(A)は、ディスプレイ等で呈示変数情報x(t)をバーグラフの長さとして表示する例であり、図5(B)は、呈示変数情報x(t)を円の大きさ(円の半径)として表示する例である。
【0040】
[制御部19]
制御部19は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。制御部19は、呼吸誘導装置1の処理全体を制御する。
【0041】
<方法>
次に、本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0042】
図6は、呼吸誘導方法を例示するためのフローチャートである。
【0043】
まず、入力部10に呼吸分布付きコンテンツ11aが入力され(ステップS10)、記憶部11に格納される(ステップS11)。
【0044】
コンテンツ再生制御部12は、例えば、サンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を記憶部11の呼吸目標分布付きコンテンツ11aから順次抽出し、抽出したコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する(ステップS12)。再生部13は、例えば、コンテンツ再生制御部12から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する(ステップS13)。
【0045】
また、この例の呈示変数演算部14は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応する各サンプル点τ=p(t)の呼吸目標情報Φ(p(t))を入力とし、当該呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成し、当該呈示変数情報x(t)を出力する(ステップS14)。呼吸目標呈示部15は、入力された呈示変数情報x(t)を視覚情報として出力する(ステップS15)。
【0046】
次に、制御部19が、呼吸分布付きコンテンツ11aが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS19)。ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、t1+1を新たなt1としてステップS12の処理に戻る。一方、コンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。
【0047】
〔第1実施形態の変形例1〕
次に、第1実施形態の変形例1を説明する。なお、これ以降では、既に説明した事項との相違点を中心に説明し、既に説明した事項についての説明の繰り返しを省略する。また、既に説明した機能構成についてはそれらと同一の参照番号を用いて説明を省略する。
【0048】
第1実施形態では、すべてのサンプル点を呼吸目標設定位置とし、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報を呼吸目標情報とする呼吸分布付きコンテンツ11aを例示した。しかし、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点を呼吸目標設定位置とし、呼吸目標設定位置における呼気開始状態を特定するための情報を呼吸目標情報としてもよい。
【0049】
図7は、第1実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツ11a’を例示した図である。図7に例示する呼吸分布付きコンテンツ11a’は、時間軸に沿った各サンプル点τにそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点である各呼吸目標設定位置に対して定められた呼気開始状態を特定するための呼吸目標情報Bpe(μ)と、を含むデータ構造からなるデータである。なお、呼吸目標情報Bpe(μ)は、それに対応するサンプル点τ(呼吸目標設定位置)を示す。例えば、サンプル点τ=100に対して定められた呼吸目標情報Bpe(μ)の値は100である。また、μは説明上便宜的に付した指標であり、各呼吸目標情報Bpe(μ)を識別するための0以上の連続した整数である。値が大きいμほど時間的に後の呼吸目標情報に対応する。
【0050】
このような呼吸分布付きコンテンツ11a’を用いる場合、呈示変数演算部は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生されるコンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)に応じた第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成する。例えば、呈示変数演算部は、現時点の時刻t=t1でサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が時間軸に沿って再生される際に、再生されるコンテンツ情報d(p(t1))に対応するサンプル点τ=p(t1)から直近の過去及び未来の各呼吸目標設定位置(第1設定位置)の呼吸目標情報Bpe(m-1),Bpe(m)(図7参照)を用い、以下の式に従って呈示変数情報x(t1)を算出して出力する。
【0051】
θ(t1)=2・π(p(t1)-Bpe(m-1))/(Bpe(m)-Bpe(m-1)) …(3)
x(t1)=C・cos(θ(t1)+C0)+C1 …(4)
ただし、C,C0,C1は|C|≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0052】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態の呼吸分布付きコンテンツは、さらに、少なくとも一部の再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含み、呈示変数演算部は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呼吸目標呈示部は、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、呈示変数情報によって特定される各同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【0053】
<構成>
図1に例示するように、第2実施形態の呼吸誘導装置2は、入力部20と、呼吸分布付きコンテンツ21aを格納する記憶部21と、コンテンツ再生制御部12と、再生部13と、呈示変数演算部24と、呼吸目標呈示部25と、制御部19とを有する。
【0054】
[入力部20,記憶部21,呼吸分布付きコンテンツ21a]
入力部20は、呼吸分布付きコンテンツ21aの入力を受け付ける機能部であり、記憶部21は、呼吸分布付きコンテンツ21aを格納する。呼吸分布付きコンテンツ21aは、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、少なくとも一部の再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含むデータ構造からなるデータである。ここで、同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報の重要度を示す。すなわち、同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態と、その再生位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者100の呼吸と、を同期させる重要度が大きいほど大きな値をとる。
【0055】
図8は、第2実施形態における呼吸分布付きコンテンツ21aを例示した図である。
【0056】
図8に例示する呼吸分布付きコンテンツ21aは、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、すべてのサンプル点τ(呼吸目標設定位置)に対して定められた、各サンプル点τにおいて望ましい「周期的な呼吸運動の位相」を特定するための情報Φ(τ)(呼吸目標情報)とに加え、さらに、同期重要度設定位置である各サンプル点τにそれぞれ対応する係数である同期重要度α(τ)を含むデータ構造からなるデータである。
【0057】
[呈示変数演算部24]
本形態の呈示変数演算部24は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部24が生成する呈示変数情報は、第1実施形態で説明した第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態と、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の同期重要度と、を時間軸に沿って物理的に呈示するためのものである。なお、本形態の第2設定位置は、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置である呼吸目標設定位置である。
【0058】
本形態の呈示変数演算部24は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)の同期重要度α(p(t))を入力とし、第1実施形態で説明した呈示変数情報x(t)に加え、同期重要度α(p(t))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t)を生成して出力する。より具体的には、例えば、本形態の呈示変数演算部24は、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1(図8)において、呼吸目標情報Φ(p(t1))を入力とし、呼吸目標情報Φ(p(t1))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t1)を生成して出力するとともに、さらに、同期重要度α(p(t1))を入力とし、同期重要度α(p(t1))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t1)を生成して出力する。
【0059】
なお、呈示変数情報y(t)は、同期重要度α(p(t))の写像であり、例えば、同期重要度α(p(t))を人間の視覚特性や心理尺度等の生体特性を考慮した数値に変換したものである。例えば、同期重要度α(p(t))の対数値、指数値、同期重要度α(p(t))やその対数値や指数値の比例値を呈示変数情報y(t)とする。呈示変数情報y(t)の具体例としては、例えば、以下の式(5)のものがある。
【0060】
y(t)=C2・log(α(p(t)))+C3 …(5)
ただしC2,C3はC2>0, C3>0を満たす任意の定数であり、log( )は対数関数である。
【0061】
[呼吸目標呈示部25]
本形態の呼吸目標呈示部25は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報を入力とし、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態や同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する。また、本形態の呼吸目標呈示部25は、例えば、画像や光などの視覚情報や、音楽や音声などの聴覚情報や、振動などの触覚情報などを表示する周知の呈示装置である。呼吸目標呈示部25は、再生部13の一部であってもよいし、再生部13と別個に構成されてもよい。ただし、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部25による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とが異なることが望ましい。本形態では、呼吸目標呈示部25が視覚情報を呈示し、その呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象が光である場合を例示する。すなわち、本形態の呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報x(t),y(t)を視覚情報として出力する。
【0062】
例えば、呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報x(t),y(t)を入力とし、呈示変数情報y(t)で特定される輝度で、呈示変数情報x(t)で長さや大きさが特定されるバーグラフや円(図5(A)(B))などの図形を表示する。この際、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が大きいほど輝度が高くなるようにする。これにより、バーグラフや円などの図形の長さや大きさで呈示される呼吸目標の重要度をその図形の輝度でできる。また、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が閾値以下の場合(例えばy(t)=0の場合)、呈示変数情報x(t)で長さや大きさが特定されるバーグラフや円などの図形を表示しないことが望ましい。
【0063】
或いは、輝度ではなく、バーグラフや円などの図形の色調によって呈示変数情報y(t)を呈示してもよい。この際、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が閾値以下の場合(例えばy(t)=0の場合)に、バーグラフや円などの図形をバックグラウンドの色調にしてもよい。x(t)の呈示はx(t)の値によらず感覚量が一定であることが望ましく、y(t)は鑑賞者の感覚量と比例関係にあることが望ましい。感覚量に関しては、例えば、「G.A.Gescheider,宮岡徹(監訳),“心理物理学 方法・理論・応用(下)”, 2003,北大路書房」を参照。
【0064】
以上により、呈示変数情報x(t)が示す呼吸目標に対する追従の重要性を鑑賞者100に直感的に認識させることができる。
【0065】
<方法>
次に、図6を用いて本形態の再生速度同期方法を例示する。
【0066】
第1実施形態との相違点は、ステップS11,12の処理の代わりに、入力部20に呼吸分布付きコンテンツ21aが入力され(ステップS20)、記憶部21に格納される(ステップS21)点、ステップS14の処理の代わりに、呈示変数演算部24が、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)の同期重要度α(p(t))を入力とし、第1実施形態で説明した呈示変数情報x(t)に加え、同期重要度α(p(t))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t)を生成して出力する点(ステップS24)、ステップS15の代わりに、呼吸目標呈示部25が呈示変数情報x(t),y(t)を視覚情報として出力する点(ステップS25)である。
【0067】
〔第2実施形態の変形例1〕
図9は、第2実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツ21a’を例示した図である。
【0068】
第2実施形態の呼吸分布付きコンテンツ21aの代わりに、図9に例示するような、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点である各呼吸目標設定位置に対して定められた呼気開始状態を特定するための呼吸目標情報Bpe(μ)と、同期重要度設定位置である各サンプル点τにそれぞれ対応する係数である同期重要度α(τ)を含むデータ構造からなる呼吸分布付きコンテンツ21a’を用いてもよい。この場合の呈示変数情報x(t)は、第1実施形態の変形例1のものと同様であり、呈示変数情報y(t)は、第2実施形態のものと同様である。
【0069】
〔第2実施形態の変形例2〕
第2実施形態及びその変形例1では、誘導呼吸状態を呈示するための呈示変数情報と、同期重要度を呈示するための呈示変数情報とが、互いに独立した別個の情報であった。しかし、誘導呼吸状態と同期重要度とが1つの呈示変数情報によって表現されてもよい。例えば、第2実施形態及びその変形例1で例示したx(t)とy(t)との積x(t)・y(t)を呈示変数情報としてもよい。この場合、呼吸目標呈示部は、例えば、呈示変数情報に基づいて長さや大きさが定まる図形を表示することで、誘導呼吸状態と同期重要度とを同時に呈示できる。
【0070】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1,2実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第3実施形態では、呈示変数情報に基づき、誘導呼吸状態や同期重要度を触覚的に呈示する例を示す。
【0071】
<構成>
図1に例示するように、第3実施形態の呼吸誘導装置3は、第1,2実施形態又はそれらの変形例の呼吸誘導装置が具備する呼吸目標呈示部15,25を、呼吸目標呈示部35に置換したものである。
【0072】
[呼吸目標呈示部35]
図10は、第3実施形態の呼吸目標呈示部35の例を説明するための図である。ここで、図10(A)(C)は呼吸目標呈示部35の正面図の例であり、図10(B)(D)は呼吸目標呈示部35の右側面図の例である。
【0073】
図10に例示する呼吸目標呈示部35はマッサージ椅子であり、脚部35aと、脚部35aに支持された座部35bと、座部35bの縁部に1辺(支持端35ca)が支持された背もたれ35cと、背もたれ35cに設けられた施療子35dとを有する。施療子35dは、図示していないモータ等の駆動装置によって駆動され、少なくとも、背もたれ35cの支持端35caとその他端35cbとを結ぶ略直線上を背もたれ35cに沿って移動(第1移動)したり、背もたれ35cに対して略垂直方向に移動(第2移動)したりすることが可能となっている。この例では、誘導呼吸状態を呈示するための呈示変数情報x(t)に応じて施療子35dが背もたれ35cに沿って移動(第1移動)し、同期重要度を呈示するための呈示変数情報y(t)に応じて施療子35dが背もたれ35cに対して略垂直方向に移動(第2移動)する。例えば、呈示変数情報x(t)が大きいほど施療子35dの位置は支持端35caに近づき、呈示変数情報y(t)が大きいほど施療子35dの位置は背もたれ35cから突出する。すなわち、図10(A)(B)に例示する支持端35caの位置に対応する各呈示変数情報x(t),y(t)よりも、図10(C)(D)に例示する支持端35caの位置に対応する各呈示変数情報x(t),y(t)のほうが大きい。これにより、座部35bに座り、背もたれ35にその背中をあずけた鑑賞者100は、施療子35dの背筋方向(背骨に沿った方向)の位置によって誘導呼吸状態を触覚的に知覚し、施療子35dの突出量によって同期重要度を触覚的に知覚する。
【0074】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、第1−3実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第4実施形態では、再生対象となっている再生位置よりも後の再生位置に対応する呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態や同期重要度を呈示する。すなわち、本形態における第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する。
【0075】
<構成>
図1に例示するように、第4実施形態の呼吸誘導装置4は、第1−3実施形態又はそれらの変形例の呼吸誘導装置が具備する呈示変数演算部14,24を、呈示変数演算部44に置換したものである。
【0076】
[呈示変数演算部44]
本形態の呈示変数演算部44は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部44は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する再生位置を、第1設定位置又は第2設定位置として呈示変数情報を生成する。
【0077】
例えば、図2に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ11aの場合、本形態の呈示変数演算部44は、時刻t=t1においてサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が再生される際に、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)(第1設定位置)に対応する呼吸目標情報Φ(p(t2))を入力とし、前述の実施形態と同様に、呼吸目標情報Φ(p(t2))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t2)を生成して出力する。なお、サンプル更新間隔の標準設定値をS0とすると、
Φ(p(t2))=Φ(p(t1)+Δt/S0) …(6)
となる。ただし、Δtは正の定数である。すなわち、サンプル点τ=p(t2)は、サンプル点τ=p(t1)のサンプル情報d(p(t1))が再生されてからΔt秒後に到達するサンプル点である。
【0078】
また、例えば、図7に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ11a’の場合、本形態の呈示変数演算部44は、現時点の時刻t=t1でサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が時間軸に沿って再生される際に、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)から直近の過去及び未来の各呼吸目標設定位置(第1設定位置)の呼吸目標情報Bpe(m),Bpe(m+1)を用い、以下の式に従って呈示変数情報x(t2)を算出して出力する。
【0079】
θ(t2)=2・π(p(t2)-Bpe(m))/(Bpe(m+1)-Bpe(m)) …(7)
x(t2)=C・cos(θ(t2)+C0)+C1 …(8)
ただし、C,C0,C1はC≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0080】
また、例えば、図8や図9に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ21a,21a’の場合、本形態の呈示変数演算部44は、さらに、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1において、呈示変数情報x(t2)を生成して出力するとともに、さらに、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)(第2設定位置)に対応する同期重要度α(p(t2))を入力とし、同期重要度α(p(t2))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t2)を生成して出力する。なお、サンプル更新間隔の標準設定値をS0とすると、
α(p(t2))=α(p(t1)+Δt/S0) …(9)
となる。
【0081】
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、第1−4実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第5実施形態では、さらに、鑑賞者100の呼吸状態に呼吸目標分布付きコンテンツの呼吸目標情報が示す呼吸状態が同期するように、コンテンツ情報の再生位置を制御する。すなわち、第5実施形態では、さらに、鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、当該再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生する。
【0082】
<構成>
図1に例示するように、第5実施形態の呼吸誘導装置5は、第1−4実施形態又はそれらの変形例のコンテンツ再生制御部12がコンテンツ再生制御部52に置換され、さらに、呼吸計測部56、呼吸指数抽出部57及び再生速度演算部58が追加された構成である。
【0083】
[呼吸計測部56]
呼吸計測部56は、コンテンツの鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られる呼吸情報を出力する周知の装置である。本形態の例では、胸部回りや腹部回りの長さに対応する情報(呼吸レベル)を呼吸情報とし、胸部や腹部に巻き付けられたゴム管の抵抗変化から呼吸を検出する装置(例えば、日本光電製のTR-753Tや、ADInstruments製のMLT1132)を呼吸計測部56とする。この例の呼吸計測部56は、設定されたある任意の周期T1で呼吸レベルV(t)を計測して出力する(図3参照)。なお、V(t)は時刻tでの呼吸レベルを表す。
【0084】
[呼吸指標抽出部57]
本形態の呼吸指標抽出部57は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呼吸指標抽出部57は、鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、当該呼吸指標を出力するものである。
【0085】
《呼吸目標情報がΦ(τ)の場合(第1,2実施形態等)》
例えば、呼吸目標情報が、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報Φ(τ)である場合、呼吸指標抽出部57は、例えば、以下のように時刻tの呼吸指標φ(t)を生成する。
【0086】
1.呼吸計測部56から出力された時刻tにおける呼吸レベルV(t)を相空間の1次元目の値とする。
【0087】
2.呼吸レベルV(t)を時間遅延フィルターに通して得られる呼吸レベルV(t-γ)を相空間の2次元目の値とする。ここでγは時間遅延フィルターの遅延幅であり、呼吸の場合は200msから800ms程度が望ましい。
【0088】
3.相空間の直行座標系の点(V(t),V(t-γ))を極座標表示した場合の偏角を、呼吸指標φ(t)として求めて出力する(図4参照)。
【0089】
《呼吸目標情報がBpe(μ)の場合(第1,2実施形態の変形例1等)》
例えば、呼吸目標情報が、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点Bpe(μ)である場合、呼吸指標抽出部57は、呼吸計測部56から出力された呼吸レベルV(t)を入力とし、計測対象となる鑑賞者100の、時刻tからみた直近の未来の呼気開始時刻の予測値pbpe(n)を呼吸指標として出力する。ここで、nは説明上便宜的に付した指標であり、鑑賞者の呼吸回数に対応する整数である。
【0090】
図11は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
【0091】
呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば、現在の時刻t=t1からみた直近の過去の呼吸周期を、時刻t=t1からみた直近の未来の呼吸周期と推定して求めることができる。すなわち、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば以下のように算出することができる。
【0092】
pbpe(n)=bpe(n-1)+(bpe(n-1)-bpe(n-2))
=2・bpe(n-1)-bpe(n-2) …(10)
ここでbpe(n-1)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された時刻tからみた直近の過去の呼気開始時刻を表し、bpe(n-2)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された呼気開始時刻bpe(n-1)からみた直近の過去の呼気開始時刻を表す。
【0093】
[再生速度演算部58]
再生速度演算部58は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。再生速度演算部58は、呼吸目標情報と呼吸指標とを入力とし、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、設定した再生速度を特定する再生速度情報を出力する。すなわち、再生速度演算部58は、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態と、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態との相関が高くなるように、コンテンツの再生速度を設定する。
【0094】
図12−図14は、再生速度演算部58の処理機能を例示するための図である。ここでは、呼吸計測部56で呼吸レベルV(t)が得られるたびに、すなわち周期T1で、再生速度演算部58がサンプル更新間隔S(t)を定め、これを再生速度情報として出力する例を示す。
【0095】
《呼吸目標情報がΦ(τ)の場合(第1,2実施形態等)》
例えば、図12の例のように、呼吸目標情報が周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報Φ(τ)である場合、再生速度演算部58は、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相と、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相との差が小さくなるような再生速度を特定する再生速度情報を出力する。
【0096】
図12の例において、時刻t=t1の時点で、サンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))までの再生が終了しているとする。このとき呼吸分布付きコンテンツ21aに含まれるサンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)に対応する呼吸目標情報がΦ(p(t1))であり、時刻t=t1の時点で呼吸指標抽出部57から出力された呼吸指標がφ(t1)であったとする。再生速度演算部58は、これらの呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とを入力とし、これらが図4の相空間上でなす角を以下のように符号付きで求める。
【0097】
R(t1)=φ(t1)-Φ(p(t1)) …(11)
If |R(t1)|>π then L(t1)=R(t1)-Sgn(R(t1))・2π
else L(t1)=R(t1) …(12)
ただし、Sgn(δ)は符号関数であり、その関数値は、δ<0のときはSgn(δ)=-1となり、δ=0のときはSgn(δ)=0となり、δ>0のときはSgn(δ)=1となる。L(t1)>0の場合、時刻t1において鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より進んでいることになり、L(t1)<0の場合、時刻t1において鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より遅れていることになる。図13に、呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とL(t1)との関係を例示する。なお、図13はL(t1)<0の例である。
【0098】
そして、再生速度演算部58は、時刻t1でのサンプル更新間隔S(t1)を以下のように算出し、これを再生速度情報として出力する。
【0099】
S(t1)=S0/{α(p(t1))・C・L(t1)+1} …(13)
ここで、CはC>0を満たす任意の定数である。なお、第1実施形態のように呼吸目標分布付きコンテンツに同期重要度α(τ)が設定されていない場合にはα(τ)=1として処理すればよい。
【0100】
《呼吸目標情報がBpe(μ)の場合(第1,2実施形態の変形例1等)》
例えば、図14の例のように、呼吸目標情報が呼気運動を開始する時点として望ましい呼吸目標情報Bpe(μ)である場合、再生速度演算部58は、呼吸指標抽出部57から出力された呼吸指標である呼気開始時刻の予測値pbpe(n)と、呼吸目標分布付きコンテンツから抽出した第1設定位置の呼吸目標情報Bpe(m)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とを入力とし、サンプル点τ=p(t1)の同期重要度α(p(t1))を考慮しつつ、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)に、呼吸目標サンプル点Bpe(m)に対応するコンテンツ情報d(τ)の再生時刻が近づくように、サンプル更新間隔S(t1)を以下のように算出する。
【0101】
S(t1)=α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-S0}+S0 …(14)
ここで、α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-S0}は、サンプル更新間隔の変化量である。なお、第1実施形態の変形例1のように呼吸目標分布付きコンテンツに同期重要度α(τ)が設定されていない場合にはα(τ)=1として処理すればよい。
【0102】
[コンテンツ再生制御部52]
コンテンツ再生制御部52は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。コンテンツ再生制御部52は、再生速度情報とコンテンツ情報とを入力とし、当該再生速度情報で特定される再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力する。
【0103】
本形態のコンテンツ再生制御部52は、再生速度演算部58から出力された再生速度情報であるサンプル更新間隔S(t1)と、記憶部11(21)に格納された呼吸目標分布付きコンテンツから抽出されたコンテンツ情報d(τ)とを入力とし、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)(音響信号等)を順次出力する。
【0104】
<方法>
次に、本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0105】
図15は、再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【0106】
まず、ステップS10(又はS20)の処理が行われ、さらに、ステップS11(又はS21)の処理が行われる。
【0107】
また、鑑賞者100に取り付けられた呼吸計測部56が周期T1で鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られた呼吸情報である呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を出力する(ステップS56)。呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...は呼吸指標抽出部57に入力され、呼吸指標抽出部57は、前述のように呼吸指標を算出して出力する(ステップS57)。次に、制御部19が、必要時刻までの呼吸レベルが計測されたか否かを判定する(ステップS57−2)。具体的には、例えば、相空間の直行座標系の点(V(t),V(t-γ))を極座標表示した場合の偏角を呼吸指標とする場合には(第1,2実施形態等)、λ+1個の呼吸レベルV(t)が計測された否かが判定される。また、例えば、時刻tからみた直近の未来の呼気開始時刻の予測値pbpe(n)を呼吸指標とする場合には(第1,2実施形態の変形例1等)、1つの呼気開始時刻(bpe(1))を特定できる時刻までの呼吸レベルが計測されたか否かが判定される。
【0108】
ステップS57−2での判定結果がNoであった場合、ステップS56の処理に戻る。一方、ステップS57−2での判定結果がYesであった場合、再生速度演算部58は前述のように更新間隔S(t1)(再生速度情報)を算出して出力する(ステップS58)。
【0109】
コンテンツ再生制御部52は、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)と、呼吸目標分布付きコンテンツから抽出されたコンテンツ情報d(τ)とを入力とし、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する(ステップS52)。
【0110】
再生部13は、コンテンツ再生制御部52から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定されるコンテンツを出力する(ステップS13)。
【0111】
次に、ステップS14(又はS24,S34,S44)の処理が実行され、ステップS15(S25)の処理が実行された後、呼吸計測部56が新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1であるか否かを判定する(ステップS59)。ここで、新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1でないと判定された場合、ステップS52の処理に戻される。一方、新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1であると判定された場合、次に、制御部19が、呼吸分布付きコンテンツが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS19)。
【0112】
ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、t1+1を新たなt1としてステップS56の処理に戻される。一方、コンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。
【0113】
〔第6実施形態〕
第6実施形態は、第5実施形態の変形例である。本形態の呈示変数演算部は、さらに、再生速度情報を入力とし、本形態の第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する。すなわち、第4実施形態の場合、サンプル更新間隔S0は一定であったため、式(6)や式(9)によって時刻t=t1からΔt秒後の時刻t=t2でのΦ(p(t2)),α(p(t2))を高い精度で特定することができた。しかし、第5実施形態のようにサンプル更新間隔S(t)が変化する場合、式(6)や式(9)では、時刻t=t1からΔt秒後の時刻t=t2での呈示変数情報の誤差が大きくなってしまう。そこで、本形態では、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する時点の呈示変数情報を生成する。例えば、式(6)や式(9)の代わりに、
Φ(p(t2))=Φ(p(t1)+Δt/S(t1)) …(15)
α(p(t2))=α(p(t1)+Δt/S(t1)) …(16)
を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定する。なお、式(15)(16)の例では、p(t1)+Δt/S(t1)が、第1,2設定位置に相当する。
【0114】
<構成>
図1に例示するように、第6実施形態の呼吸誘導装置6は、第5実施形態の呼吸誘導装置5の呈示変数演算部を、呈示変数演算部64に置換したものである。
【0115】
[呈示変数演算部64]
本形態の呈示変数演算部64は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部64は、さらに、再生速度情報を入力とし、本形態の第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する。例えば、呈示変数演算部64は、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)が入力され、式(15)や(16)を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定して出力する。
【0116】
<方法>
次に、図15を用いて本形態の再生速度同期方法を例示する。
【0117】
第5実施形態との相違点は、ステップS14(S24,S34,S44)の代わりに、呈示変数演算部64が、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)を入力とし、式(15)や(16)を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定して出力する(ステップS64)点である。
【0118】
〔第7実施形態〕
第7実施形態は、第5実施形態の変形例である。本形態の呈示変数演算部は、再生速度情報と呼吸指標とを入力とし、誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成する。また、本形態の誘導呼吸状態は、再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態である。本形態の呈示変数演算部は、鑑賞者100の呼吸状態と再生速度情報とを考慮した誘導呼吸状態、すなわち、鑑賞者100の呼吸状態を基準として再生速度情報から定まる誘導呼吸状態を呈示する。
【0119】
<構成>
図1に例示するように、第7実施形態の呼吸誘導装置7は、第5実施形態の呼吸誘導装置7の呈示変数演算部14(24,44)が呈示変数演算部74に置換された構成である。
【0120】
[呈示変数演算部74]
本形態の呈示変数演算部74は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部74は、再生速度情報と呼吸指標とを入力とし、再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態を呈示するための呈示変数情報を生成する。
【0121】
例えば、呼吸指標が前述した相空間での極座標の偏角φ(t)であり、再生速度情報がサンプル更新間隔S(t)である場合には、例えば、以下の式(17)(18)に従って呈示変数情報x(t),y(t)を生成する。
【0122】
x(t)=C・cos(φ(t)+C4・(S0-S(t))/S0+C5)+C6 …(17)
y(t)=C2・log(α(p(t)))+C3 …(18)
ただし、C,C2,C3,C4,C5,C6は、|C|≦C6、C≠0、C2>0、C3>0を満たす定数であり、log( )は対数関数である。なお、第5実施形態で説明したように、再生速度情報は、第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる情報である。よって、再生速度情報と呼吸指標とを用いて生成される第7実施形態の呈示変数情報は、第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態である。例えば、第5実施形態で例示したサンプル更新間隔S(t)(再生速度情報)は、サンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)の呼吸目標情報Φ(p(t1))に応じて定まる情報である(式(11)-(13)参照)。よって、式(17)に例示した呈示変数情報x(t)は、サンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)の呼吸目標情報Φ(p(t1))に応じて定まる情報であるといえる。
【0123】
<方法>
次に、図15を用いて本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0124】
第5実施形態との相違点は、ステップS64の代わりに、式(17)(18)を用いて呈示変数情報x(t),y(t)を生成する点である。
【0125】
〔その他の変形例〕
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0126】
例えば、上述の呼吸目標呈示部15(25,35)は、視覚情報や触覚情報を鑑賞者100に呈示するものであった。しかし、呼吸目標呈示部として、聴覚情報を鑑賞者100に呈示するものを用いてもよい。
【0127】
また、上記の各実施形態やその変形例では、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられた呼吸目標分布付きコンテンツを例示した。しかし、呼吸目標情報や同期重要度が何れかの再生位置に対応付けられるのであれば、必ずしも、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられている必要はない。例えば、呼吸目標情報や同期重要度がコンテンツのサンプリング周波数と同じかその(1/自然数)倍の周波数で呼吸目標分布付きコンテンツに分布して記録されていても良いし、任意の間隔で記録されていても良い。任意の間隔で記録する際は、例えば、コンテンツ情報の開始点を特定する始点情報と、当該始点情報に対する呼吸目標情報や同期重要度の相対位置Δを特定する情報とを呼吸目標分布付きコンテンツに格納しておけばよい。また、呼吸目標情報や同期重要度は、離散データある必要もなく、アナログ的に記録されていても良い。また、呼吸目標情報や同期重要度は、コンテンツ全体に定義される必要もなく、その一部分にだけに対して定義されていてもよい。
【0128】
また、上記の各実施形態やその変形例では、再生速度演算部から出力される再生速度情報の具体例としてサンプル更新間隔を例示した。しかし、これは本発明を限定するものではなく、テンポ情報、フレーム位置、クロック周波数等、再生時間(速度)を調節できる信号を再生速度情報としてもよい。
【0129】
また、上記の第5実施形態やその変形例では、呼吸計測部から出力される呼吸情報の具体例として呼吸レベルを例示した。しかし、例えば、呼吸レベルの微分値などを呼吸情報としてもよい。なお、呼吸レベルの微分値は、例えば、呼吸の気流量を検出して得られる。
【0130】
また、上記の各実施形態やその変形例では、コンテンツ情報の具体例として、音程や音の強さを示すMIDIデータを示した。しかし、音楽、音声、映画やテレビ番組等の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を特定するその他のデータがコンテンツ情報であってもよい。また、コンテンツ再生速度制御部は、再生速度が変わっても、音であればピッチや音質を変更しない、映像であればコマ送りや早送りによる映像の乱れを抑える等の処理を含む再生時間制御処理を行うことが望ましい。
【0131】
また、第5実施形態やその変形例では、呼吸計測部が呼吸情報を出力するたびに、呼吸指標抽出部が呼吸指標を生成し、再生速度演算部がサンプル更新間隔を定めることとしたが、その他のタイミングでこれらの処理が行われてもよい。例えば、呼吸計測部が呼吸情報を生成する周期T1の整数倍(2倍以上)の周期で呼吸指標やサンプル更新間隔を生成してもよいし、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置や呼吸目標設定位置ごとに呼吸指標やサンプル更新間隔をしてもよい。
【0132】
また、図1に例示したブロック図の各ブロックは概念的に区切られた処理区分であり、それぞれが独立した装置として存在する必要はない。また、各ブロックが1つの装置として構成されている必要もなく、複数の装置に分散して配置されていてもよい。
【0133】
また、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0134】
〔各実施形態の特徴〕
各実施形態により得られる効果を列挙する。
【0135】
全実施形態及びその変形例では、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる「誘導呼吸状態」を時間軸に沿って物理的に呈示することとした。これにより、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導することが容易になる。結果として、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなり、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることが可能となる。
【0136】
また、第2実施形態やそこから派生する各変形例では、さらに、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の「同期重要度」を呈示することとした。同期重要度は、誘導呼吸状態と鑑賞者の呼吸状態とを同期させる重要性を示すものであり、このような同期重要度を感覚量に比例するよう呈示することにより、各再生位置における同期の重要性に応じてメリハリの利いた呈示が可能となる。
【0137】
第3実施形態では、誘導呼吸状態や同期重要度を、視覚情報や聴覚情報ではなく触覚情報として呈示した。この場合、誘導呼吸状態や同期重要度の呈示と、音楽や映画のような視覚情報や聴覚情報からなるコンテンツとが、互いに直接干渉することを防止できる。その結果、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。すなわち、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とを相違させることにより、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。
【0138】
第5実施形態では、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定することとした。これにより、鑑賞者の呼吸状態を誘導するだけではなく、コンテンツの再生速度を鑑賞者に追従させることが可能となる。すなわち、装置と鑑賞者との間の相補的な調節が行われることとなり、設定された呼吸目標及び呼吸目標の重要度と鑑賞者の呼吸パターンとの相関を高くすることが可能となる。
【0139】
第4,6実施形態では、鑑賞者の反応時間の遅れを考慮し、コンテンツの再生位置よりも未来、例えば、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を前もって鑑賞者に呈示した。これにより、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。
【0140】
特に第6実施形態では、順次更新されるコンテンツの再生速度を考慮して、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を前もって鑑賞者に呈示することとした。これにより、再生速度が変化しても、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を正確に特定できる。
【0141】
また、第7実施形態の誘導呼吸状態は、呼吸目標情報又はそれと同期重要度とを考慮して設定された再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態であった。すなわち、第7実施形態では、鑑賞者の呼吸状態を基準として再生速度情報から定まる誘導呼吸状態を呈示した。言い換えれば、鑑賞者の呼吸状態から誘導したい方向にずれた状態を誘導呼吸状態として呈示した。これにより、鑑賞者の呼吸と呈示される誘導呼吸状態とが極端に離れることがなくなるため鑑賞者にとってより自然な呈示となる。
【0142】
〔プログラム,データ構造,記録媒体〕
上述の構成をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0143】
また、処理内容を記述したプログラムや前述したデータ構造の呼吸目標分布付きコンテンツは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0144】
また、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツの流通は、例えば、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにや呼吸目標分布付きコンテンツを転送することにより、これら流通させる構成としてもよい。
【0145】
また、上述の各実施形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1−7 呼吸誘導装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツの再生技術に関し、特に、再生するコンテンツに適した呼吸に鑑賞者の呼吸を誘導する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽コンテンツなどの時間軸に沿って進行するコンテンツのテンポに基づいて鑑賞者の呼吸テンポが誘導される(コンテンツに呼吸が引き込まれる)という報告がなされている(例えば、非特許文献1参照)。また、この現象を利用し、例えば、音楽テンポに基づいて鑑賞者の呼吸を誘導する呼吸誘導技術の研究がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Haas F. etl. Effects of perceived musical rhythms on respiratory pattern. J.Appl. Physiol. 1986, 61, pp. 1185-1191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上述したコンテンツに呼吸が引き込まれる現象から、逆に、鑑賞者の呼吸をコンテンツの各再生位置に適した呼吸に同期させることが、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用に影響を与えると考えられる。このことから、コンテンツの各場面に適した呼吸に誘導するための情報を鑑賞者に呈示し、それによって鑑賞者の呼吸を誘導することで、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることができると期待できる。特に、コンテンツの鑑賞経験が浅い鑑賞者の場合には、コンテンツを鑑賞しただけでは呼吸テンポの誘導が十分になされない(呼吸の引き込みが浅い)という結果も出されており(例えば、非特許文献1参照)、このような鑑賞者に対しては特に有効な効果が期待できる。
【0005】
しかし、従来の呼吸誘導技術は、主にリラクゼーションや健康増進を目的としており、ある目標となる定常的な呼吸パターンに利用者の呼吸を誘導することのみを主眼に置いたものである。すなわち、従来の呼吸誘導技術では、コンテンツの各再生位置にそれぞれ適した呼吸に鑑賞者の呼吸を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させるという発想はない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では上記課題を解決するために、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納し、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示することとしたため、これによって、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導し、それによって鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、呼吸誘導装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【図2】図2は、呼吸分布付きコンテンツの一例を説明するための図である。
【図3】図3は、呼吸レベルV(t)を例示した図である。
【図4】図4は、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角φ(t)を例示した図である。
【図5】図5(A)(B)は、視覚情報として出力される呈示変数情報x(t)を例示した図である。
【図6】図6は、呼吸誘導方法を例示するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第1実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図8】図8は、第2実施形態における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図9】図9は、第2実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツを例示した図である。
【図10】図10(A)−(D)は、第3実施形態の呼吸目標呈示部の例を説明するための図である。
【図11】図11は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
【図12】図12は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図13】図13は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図14】図14は、再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図15】図15は、再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
〔用語の定義〕
以下のように用語を定義する。
【0012】
コンテンツ:各種音楽、音声、映画やテレビ番組等の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を意味する。
【0013】
コンテンツ情報:コンテンツを構成し、時間軸に沿って順次再生される情報を意味する。
【0014】
再生位置:時間軸に沿って順次再生される各コンテンツ情報の再生位置、つまり、コンテンツ再生における時間軸上の進行位置を意味する。より具体的には、例えば、フレーム位置、サンプル点、タイムコード、ソングポジションポインターなどが再生位置に対応する。
【0015】
呼吸目標設定位置:予め定められた少なくとも一部の再生位置を意味する。
【0016】
呼吸状態:周期的に行われる呼吸運動中の各状態を意味する。より具体的には、例えば、呼気運動を開始する時点の状態である呼気開始状態、呼気運動中の各時点での呼気状態、呼気運動を終了する時点の状態である呼気終了状態、吸気運動を開始する時点の状態である吸気開始状態、吸気運動中の各時点での吸気状態、吸気運動を終了する時点の状態である吸気終了状態などが呼吸状態に対応する。
【0017】
呼吸情報:人間の呼吸状態を計測して得られる情報を意味する。より具体的には、例えば、胸部回りや腹部回りの長さ、呼吸の気流量、呼気と吸気の温度差などを意味する。
【0018】
再生速度:ある再生位置Aのコンテンツ情報を再生してから次の再生位置Bのコンテンツ情報を再生するまでに要する時間の逆数を意味する。再生テンポやクロック間隔などに読み替え可能な概念である。
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を説明する。
【0020】
<構成>
図1は、呼吸誘導装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【0021】
図1に例示するように、第1実施形態の呼吸誘導装置1は、入力部10と、呼吸分布付きコンテンツ11aを格納する記憶部11と、コンテンツ再生制御部12と、再生部13と、呈示変数演算部14と、呼吸目標呈示部15と、制御部19とを有する。
【0022】
[入力部10]
入力部10は、呼吸分布付きコンテンツ11aの入力を受け付ける機能部であり、入力部10の例は、入力ポート、入力インタフェース、読み出し装置、受信装置などである。
【0023】
[呼吸分布付きコンテンツ11a]
図2は、呼吸分布付きコンテンツ11aの一例を説明するための図である。
【0024】
本形態の呼吸分布付きコンテンツ11aは、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含むデータ構造からなるデータである。
【0025】
本形態の例では、サンプル点を再生位置とし、音程や音の強さを示すMIDIデータをコンテンツ情報とし、すべてのサンプル点を呼吸目標設定位置とし、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報を呼吸目標情報とする。例えば、図2に例示する呼吸分布付きコンテンツ11aは、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、すべてのサンプル点τ(呼吸目標設定位置)に対して定められた、各サンプル点τにおいて望ましい「周期的な呼吸運動の位相」を特定するための情報Φ(τ)(呼吸目標情報)とを含むデータ構造からなるデータである。
【0026】
ここで、この例のサンプル点τは0以上の整数であり、値が大きいほど遅い時間に対応する。また、図2に例示する呼吸分布付きコンテンツ11aは、再生対象のサンプル点τが時間軸に沿って順次更新されながら、各再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報が順次再生される。この再生対象のサンプル点τの更新周期をサンプル更新間隔と呼び、予め定められたサンプル更新間隔の標準設定値をS0とする。
【0027】
また、本形態の呼吸目標情報Φ(τ)は、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報である。本形態では、人間の呼吸状態を示す呼吸レベルV(t)の周期的な変化によって「周期的な呼吸運動」を定量化し、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角を「周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報」とする。なお、本形態では、胸部回りや腹部回りの長さに対応する情報を呼吸レベルV(t)とし、時刻tでの呼吸レベルをV(t)で表す。なお、tは離散的な時刻に対応する整数インデックスであり、「時刻t」とは整数インデックスtに対応する時刻を意味する。また、γは時間遅延フィルターの遅延幅であり、その値は200msから800ms程度が望ましい。
【0028】
図3は、呼吸レベルV(t)を例示した図である。また、図4は、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角φ(t)を例示した図である。
【0029】
図3に例示するように、本形態の呼吸レベルV(t)は、呼気が開始される時刻である呼気開始時刻(bpe(n-1)等)で極大となり、呼気状態が進むにつれて減少し、吸気が開始される時刻である吸気開始時刻(bpi(n)等)で極小となり、吸気状態が進むにつれて増加し、次の呼気開始時刻(bpe(n)等)で再び極大となる、というように周期的に変化する。このような呼吸レベルV(t)の変化に応じ、図4に例示するような相空間での極座標の偏角φ(t)が定まる。
【0030】
本形態では、呼吸目標設定位置である各サンプル点τに対応するコンテンツ情報が再生される時点で好ましい偏角φ(t)が、当該サンプル点τに対応する呼吸目標情報Φ(τ)(図2参照)として、呼吸分布付きコンテンツ11aに予め設定されている(図2参照)。
【0031】
[記憶部11]
記憶部11は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの情報記憶装置である。
【0032】
[コンテンツ再生制御部12]
本形態のコンテンツ再生制御部12は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態のコンテンツ再生制御部12は、記憶部11の呼吸分布付きコンテンツ11aから抽出されたコンテンツ情報を入力とし、予め定められた再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力する。例えば、コンテンツ再生制御部12は、コンテンツ情報d(τ)を記憶部11に格納された呼吸目標分布付きコンテンツ11aから抽出されたコンテンツ情報d(τ)を入力とし、予め定められたサンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)(音響信号等)を順次出力する。例えば、コンテンツ再生制御部12は、サンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を呼吸目標分布付きコンテンツ11aから順次抽出し、抽出したコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する。
【0033】
[再生部13]
本形態の再生部13は、例えば、アンプ、スピーカー、画像表示装置などから構成される周知の呈示装置である。再生部13は、コンテンツ再生制御部12から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する。
【0034】
[呈示変数演算部14]
本形態の呈示変数演算部14は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部14は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力する。なお、本形態の第1設定位置は、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置である呼吸目標設定位置であり、本形態の誘導呼吸状態は、第1設定位置の呼吸目標情報が示す呼吸状態である。
【0035】
例えば、本形態の呈示変数演算部14は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応する各サンプル点τ=p(t)の呼吸目標情報Φ(p(t))を入力とし、当該呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成し、当該呈示変数情報x(t)を出力する。なお、p(t)は、時刻tの時点で再生されるコンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τを表す。より具体的には、例えば、本形態の呈示変数演算部14は、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1(図2)において、呼吸目標情報Φ(p(t1))を入力とし、呼吸目標情報Φ(p(t1))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t1)を生成して出力する。
【0036】
また、呈示変数情報x(t)は、呼吸目標情報Φ(p(t))の写像であり、例えば、呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を人間が直感的に理解しやすい数値に変換したものである。例えば、吸気開始から次の呼気開始に到るまでの吸気状態(図3参照)では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が大きくなり、呼気開始から次の吸気開始までの呼気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が小さくなるようにする。また、その逆に、吸気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が小さくなり、呼気開始から次の吸気開始までの呼気状態では位相が進むにつれて呈示変数情報x(t)の値が大きくなるようにしてもよい。呈示変数情報x(t)の具体例としては、例えば、以下の式(1)や(2)のものがある。
【0037】
x(t)=C・cos(Φ(p(t))+C0)+C1 …(1)
x(t)=mod(Φ(p(t)),π)+C1 …(2)
ただし、mod(Φ(p(t)),π)はΦ(p(t))をπで割った余りを表し、C,C0,C1は|C|≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0038】
[呼吸目標呈示部15]
本形態の呼吸目標呈示部15は、呈示変数情報を入力とし、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する。また、本形態の呼吸目標呈示部15は、例えば、画像や光などの視覚情報や、音楽や音声などの聴覚情報や、振動などの触覚情報などを表示する周知の呈示装置である。呼吸目標呈示部15は、再生部13の一部であってもよいし、再生部13と別個に構成されてもよい。ただし、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部15による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とが異なることが望ましい。例えば、コンテンツが音楽コンテンツであり、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別が音波である場合、呼吸目標呈示部15による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別は音波以外であることが望ましい。本形態では、呼吸目標呈示部15が視覚情報を呈示し、その呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象が光である場合を例示する。すなわち、本形態の呼吸目標呈示部15は、呈示変数情報x(t)を視覚情報として出力する。
【0039】
図5(A)(B)は、視覚情報として出力される呈示変数情報x(t)を例示した図である。図5(A)は、ディスプレイ等で呈示変数情報x(t)をバーグラフの長さとして表示する例であり、図5(B)は、呈示変数情報x(t)を円の大きさ(円の半径)として表示する例である。
【0040】
[制御部19]
制御部19は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。制御部19は、呼吸誘導装置1の処理全体を制御する。
【0041】
<方法>
次に、本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0042】
図6は、呼吸誘導方法を例示するためのフローチャートである。
【0043】
まず、入力部10に呼吸分布付きコンテンツ11aが入力され(ステップS10)、記憶部11に格納される(ステップS11)。
【0044】
コンテンツ再生制御部12は、例えば、サンプル更新間隔S0で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を記憶部11の呼吸目標分布付きコンテンツ11aから順次抽出し、抽出したコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する(ステップS12)。再生部13は、例えば、コンテンツ再生制御部12から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する(ステップS13)。
【0045】
また、この例の呈示変数演算部14は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応する各サンプル点τ=p(t)の呼吸目標情報Φ(p(t))を入力とし、当該呼吸目標情報Φ(p(t))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成し、当該呈示変数情報x(t)を出力する(ステップS14)。呼吸目標呈示部15は、入力された呈示変数情報x(t)を視覚情報として出力する(ステップS15)。
【0046】
次に、制御部19が、呼吸分布付きコンテンツ11aが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS19)。ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、t1+1を新たなt1としてステップS12の処理に戻る。一方、コンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。
【0047】
〔第1実施形態の変形例1〕
次に、第1実施形態の変形例1を説明する。なお、これ以降では、既に説明した事項との相違点を中心に説明し、既に説明した事項についての説明の繰り返しを省略する。また、既に説明した機能構成についてはそれらと同一の参照番号を用いて説明を省略する。
【0048】
第1実施形態では、すべてのサンプル点を呼吸目標設定位置とし、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報を呼吸目標情報とする呼吸分布付きコンテンツ11aを例示した。しかし、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点を呼吸目標設定位置とし、呼吸目標設定位置における呼気開始状態を特定するための情報を呼吸目標情報としてもよい。
【0049】
図7は、第1実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツ11a’を例示した図である。図7に例示する呼吸分布付きコンテンツ11a’は、時間軸に沿った各サンプル点τにそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点である各呼吸目標設定位置に対して定められた呼気開始状態を特定するための呼吸目標情報Bpe(μ)と、を含むデータ構造からなるデータである。なお、呼吸目標情報Bpe(μ)は、それに対応するサンプル点τ(呼吸目標設定位置)を示す。例えば、サンプル点τ=100に対して定められた呼吸目標情報Bpe(μ)の値は100である。また、μは説明上便宜的に付した指標であり、各呼吸目標情報Bpe(μ)を識別するための0以上の連続した整数である。値が大きいμほど時間的に後の呼吸目標情報に対応する。
【0050】
このような呼吸分布付きコンテンツ11a’を用いる場合、呈示変数演算部は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、再生されるコンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)に応じた第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t)を生成する。例えば、呈示変数演算部は、現時点の時刻t=t1でサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が時間軸に沿って再生される際に、再生されるコンテンツ情報d(p(t1))に対応するサンプル点τ=p(t1)から直近の過去及び未来の各呼吸目標設定位置(第1設定位置)の呼吸目標情報Bpe(m-1),Bpe(m)(図7参照)を用い、以下の式に従って呈示変数情報x(t1)を算出して出力する。
【0051】
θ(t1)=2・π(p(t1)-Bpe(m-1))/(Bpe(m)-Bpe(m-1)) …(3)
x(t1)=C・cos(θ(t1)+C0)+C1 …(4)
ただし、C,C0,C1は|C|≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0052】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態の呼吸分布付きコンテンツは、さらに、少なくとも一部の再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含み、呈示変数演算部は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、呼吸目標呈示部は、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、呈示変数情報によって特定される各同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する。
【0053】
<構成>
図1に例示するように、第2実施形態の呼吸誘導装置2は、入力部20と、呼吸分布付きコンテンツ21aを格納する記憶部21と、コンテンツ再生制御部12と、再生部13と、呈示変数演算部24と、呼吸目標呈示部25と、制御部19とを有する。
【0054】
[入力部20,記憶部21,呼吸分布付きコンテンツ21a]
入力部20は、呼吸分布付きコンテンツ21aの入力を受け付ける機能部であり、記憶部21は、呼吸分布付きコンテンツ21aを格納する。呼吸分布付きコンテンツ21aは、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、少なくとも一部の再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含むデータ構造からなるデータである。ここで、同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報の重要度を示す。すなわち、同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態と、その再生位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者100の呼吸と、を同期させる重要度が大きいほど大きな値をとる。
【0055】
図8は、第2実施形態における呼吸分布付きコンテンツ21aを例示した図である。
【0056】
図8に例示する呼吸分布付きコンテンツ21aは、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、すべてのサンプル点τ(呼吸目標設定位置)に対して定められた、各サンプル点τにおいて望ましい「周期的な呼吸運動の位相」を特定するための情報Φ(τ)(呼吸目標情報)とに加え、さらに、同期重要度設定位置である各サンプル点τにそれぞれ対応する係数である同期重要度α(τ)を含むデータ構造からなるデータである。
【0057】
[呈示変数演算部24]
本形態の呈示変数演算部24は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部24が生成する呈示変数情報は、第1実施形態で説明した第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態と、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の同期重要度と、を時間軸に沿って物理的に呈示するためのものである。なお、本形態の第2設定位置は、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置である呼吸目標設定位置である。
【0058】
本形態の呈示変数演算部24は、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)の同期重要度α(p(t))を入力とし、第1実施形態で説明した呈示変数情報x(t)に加え、同期重要度α(p(t))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t)を生成して出力する。より具体的には、例えば、本形態の呈示変数演算部24は、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1(図8)において、呼吸目標情報Φ(p(t1))を入力とし、呼吸目標情報Φ(p(t1))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t1)を生成して出力するとともに、さらに、同期重要度α(p(t1))を入力とし、同期重要度α(p(t1))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t1)を生成して出力する。
【0059】
なお、呈示変数情報y(t)は、同期重要度α(p(t))の写像であり、例えば、同期重要度α(p(t))を人間の視覚特性や心理尺度等の生体特性を考慮した数値に変換したものである。例えば、同期重要度α(p(t))の対数値、指数値、同期重要度α(p(t))やその対数値や指数値の比例値を呈示変数情報y(t)とする。呈示変数情報y(t)の具体例としては、例えば、以下の式(5)のものがある。
【0060】
y(t)=C2・log(α(p(t)))+C3 …(5)
ただしC2,C3はC2>0, C3>0を満たす任意の定数であり、log( )は対数関数である。
【0061】
[呼吸目標呈示部25]
本形態の呼吸目標呈示部25は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報を入力とし、コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態や同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する。また、本形態の呼吸目標呈示部25は、例えば、画像や光などの視覚情報や、音楽や音声などの聴覚情報や、振動などの触覚情報などを表示する周知の呈示装置である。呼吸目標呈示部25は、再生部13の一部であってもよいし、再生部13と別個に構成されてもよい。ただし、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部25による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とが異なることが望ましい。本形態では、呼吸目標呈示部25が視覚情報を呈示し、その呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象が光である場合を例示する。すなわち、本形態の呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報x(t),y(t)を視覚情報として出力する。
【0062】
例えば、呼吸目標呈示部25は、呈示変数情報x(t),y(t)を入力とし、呈示変数情報y(t)で特定される輝度で、呈示変数情報x(t)で長さや大きさが特定されるバーグラフや円(図5(A)(B))などの図形を表示する。この際、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が大きいほど輝度が高くなるようにする。これにより、バーグラフや円などの図形の長さや大きさで呈示される呼吸目標の重要度をその図形の輝度でできる。また、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が閾値以下の場合(例えばy(t)=0の場合)、呈示変数情報x(t)で長さや大きさが特定されるバーグラフや円などの図形を表示しないことが望ましい。
【0063】
或いは、輝度ではなく、バーグラフや円などの図形の色調によって呈示変数情報y(t)を呈示してもよい。この際、呈示変数情報y(t)に対応する同期重要度α(p(t))の値が閾値以下の場合(例えばy(t)=0の場合)に、バーグラフや円などの図形をバックグラウンドの色調にしてもよい。x(t)の呈示はx(t)の値によらず感覚量が一定であることが望ましく、y(t)は鑑賞者の感覚量と比例関係にあることが望ましい。感覚量に関しては、例えば、「G.A.Gescheider,宮岡徹(監訳),“心理物理学 方法・理論・応用(下)”, 2003,北大路書房」を参照。
【0064】
以上により、呈示変数情報x(t)が示す呼吸目標に対する追従の重要性を鑑賞者100に直感的に認識させることができる。
【0065】
<方法>
次に、図6を用いて本形態の再生速度同期方法を例示する。
【0066】
第1実施形態との相違点は、ステップS11,12の処理の代わりに、入力部20に呼吸分布付きコンテンツ21aが入力され(ステップS20)、記憶部21に格納される(ステップS21)点、ステップS14の処理の代わりに、呈示変数演算部24が、サンプル点τ=p(t)に対応するコンテンツ情報d(p(t))が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、再生される各コンテンツ情報d(p(t))に対応するサンプル点τ=p(t)の同期重要度α(p(t))を入力とし、第1実施形態で説明した呈示変数情報x(t)に加え、同期重要度α(p(t))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t)を生成して出力する点(ステップS24)、ステップS15の代わりに、呼吸目標呈示部25が呈示変数情報x(t),y(t)を視覚情報として出力する点(ステップS25)である。
【0067】
〔第2実施形態の変形例1〕
図9は、第2実施形態の変形例1における呼吸分布付きコンテンツ21a’を例示した図である。
【0068】
第2実施形態の呼吸分布付きコンテンツ21aの代わりに、図9に例示するような、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点である各呼吸目標設定位置に対して定められた呼気開始状態を特定するための呼吸目標情報Bpe(μ)と、同期重要度設定位置である各サンプル点τにそれぞれ対応する係数である同期重要度α(τ)を含むデータ構造からなる呼吸分布付きコンテンツ21a’を用いてもよい。この場合の呈示変数情報x(t)は、第1実施形態の変形例1のものと同様であり、呈示変数情報y(t)は、第2実施形態のものと同様である。
【0069】
〔第2実施形態の変形例2〕
第2実施形態及びその変形例1では、誘導呼吸状態を呈示するための呈示変数情報と、同期重要度を呈示するための呈示変数情報とが、互いに独立した別個の情報であった。しかし、誘導呼吸状態と同期重要度とが1つの呈示変数情報によって表現されてもよい。例えば、第2実施形態及びその変形例1で例示したx(t)とy(t)との積x(t)・y(t)を呈示変数情報としてもよい。この場合、呼吸目標呈示部は、例えば、呈示変数情報に基づいて長さや大きさが定まる図形を表示することで、誘導呼吸状態と同期重要度とを同時に呈示できる。
【0070】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1,2実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第3実施形態では、呈示変数情報に基づき、誘導呼吸状態や同期重要度を触覚的に呈示する例を示す。
【0071】
<構成>
図1に例示するように、第3実施形態の呼吸誘導装置3は、第1,2実施形態又はそれらの変形例の呼吸誘導装置が具備する呼吸目標呈示部15,25を、呼吸目標呈示部35に置換したものである。
【0072】
[呼吸目標呈示部35]
図10は、第3実施形態の呼吸目標呈示部35の例を説明するための図である。ここで、図10(A)(C)は呼吸目標呈示部35の正面図の例であり、図10(B)(D)は呼吸目標呈示部35の右側面図の例である。
【0073】
図10に例示する呼吸目標呈示部35はマッサージ椅子であり、脚部35aと、脚部35aに支持された座部35bと、座部35bの縁部に1辺(支持端35ca)が支持された背もたれ35cと、背もたれ35cに設けられた施療子35dとを有する。施療子35dは、図示していないモータ等の駆動装置によって駆動され、少なくとも、背もたれ35cの支持端35caとその他端35cbとを結ぶ略直線上を背もたれ35cに沿って移動(第1移動)したり、背もたれ35cに対して略垂直方向に移動(第2移動)したりすることが可能となっている。この例では、誘導呼吸状態を呈示するための呈示変数情報x(t)に応じて施療子35dが背もたれ35cに沿って移動(第1移動)し、同期重要度を呈示するための呈示変数情報y(t)に応じて施療子35dが背もたれ35cに対して略垂直方向に移動(第2移動)する。例えば、呈示変数情報x(t)が大きいほど施療子35dの位置は支持端35caに近づき、呈示変数情報y(t)が大きいほど施療子35dの位置は背もたれ35cから突出する。すなわち、図10(A)(B)に例示する支持端35caの位置に対応する各呈示変数情報x(t),y(t)よりも、図10(C)(D)に例示する支持端35caの位置に対応する各呈示変数情報x(t),y(t)のほうが大きい。これにより、座部35bに座り、背もたれ35にその背中をあずけた鑑賞者100は、施療子35dの背筋方向(背骨に沿った方向)の位置によって誘導呼吸状態を触覚的に知覚し、施療子35dの突出量によって同期重要度を触覚的に知覚する。
【0074】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、第1−3実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第4実施形態では、再生対象となっている再生位置よりも後の再生位置に対応する呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態や同期重要度を呈示する。すなわち、本形態における第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する。
【0075】
<構成>
図1に例示するように、第4実施形態の呼吸誘導装置4は、第1−3実施形態又はそれらの変形例の呼吸誘導装置が具備する呈示変数演算部14,24を、呈示変数演算部44に置換したものである。
【0076】
[呈示変数演算部44]
本形態の呈示変数演算部44は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部44は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する再生位置を、第1設定位置又は第2設定位置として呈示変数情報を生成する。
【0077】
例えば、図2に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ11aの場合、本形態の呈示変数演算部44は、時刻t=t1においてサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が再生される際に、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)(第1設定位置)に対応する呼吸目標情報Φ(p(t2))を入力とし、前述の実施形態と同様に、呼吸目標情報Φ(p(t2))が示す位相を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報x(t2)を生成して出力する。なお、サンプル更新間隔の標準設定値をS0とすると、
Φ(p(t2))=Φ(p(t1)+Δt/S0) …(6)
となる。ただし、Δtは正の定数である。すなわち、サンプル点τ=p(t2)は、サンプル点τ=p(t1)のサンプル情報d(p(t1))が再生されてからΔt秒後に到達するサンプル点である。
【0078】
また、例えば、図7に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ11a’の場合、本形態の呈示変数演算部44は、現時点の時刻t=t1でサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))が時間軸に沿って再生される際に、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)から直近の過去及び未来の各呼吸目標設定位置(第1設定位置)の呼吸目標情報Bpe(m),Bpe(m+1)を用い、以下の式に従って呈示変数情報x(t2)を算出して出力する。
【0079】
θ(t2)=2・π(p(t2)-Bpe(m))/(Bpe(m+1)-Bpe(m)) …(7)
x(t2)=C・cos(θ(t2)+C0)+C1 …(8)
ただし、C,C0,C1はC≦C1、C≠0を満たす任意の定数を表す。
【0080】
また、例えば、図8や図9に例示した呼吸目標分布付きコンテンツ21a,21a’の場合、本形態の呈示変数演算部44は、さらに、コンテンツ情報d(p(t1))が再生される時点の時刻t=t1において、呈示変数情報x(t2)を生成して出力するとともに、さらに、サンプル点τ=p(t1)よりも時間軸上で後に位置するサンプル点τ=p(t2)(第2設定位置)に対応する同期重要度α(p(t2))を入力とし、同期重要度α(p(t2))を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報y(t2)を生成して出力する。なお、サンプル更新間隔の標準設定値をS0とすると、
α(p(t2))=α(p(t1)+Δt/S0) …(9)
となる。
【0081】
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、第1−4実施形態及びそれらの変形例の変形例である。第5実施形態では、さらに、鑑賞者100の呼吸状態に呼吸目標分布付きコンテンツの呼吸目標情報が示す呼吸状態が同期するように、コンテンツ情報の再生位置を制御する。すなわち、第5実施形態では、さらに、鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、当該再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生する。
【0082】
<構成>
図1に例示するように、第5実施形態の呼吸誘導装置5は、第1−4実施形態又はそれらの変形例のコンテンツ再生制御部12がコンテンツ再生制御部52に置換され、さらに、呼吸計測部56、呼吸指数抽出部57及び再生速度演算部58が追加された構成である。
【0083】
[呼吸計測部56]
呼吸計測部56は、コンテンツの鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られる呼吸情報を出力する周知の装置である。本形態の例では、胸部回りや腹部回りの長さに対応する情報(呼吸レベル)を呼吸情報とし、胸部や腹部に巻き付けられたゴム管の抵抗変化から呼吸を検出する装置(例えば、日本光電製のTR-753Tや、ADInstruments製のMLT1132)を呼吸計測部56とする。この例の呼吸計測部56は、設定されたある任意の周期T1で呼吸レベルV(t)を計測して出力する(図3参照)。なお、V(t)は時刻tでの呼吸レベルを表す。
【0084】
[呼吸指標抽出部57]
本形態の呼吸指標抽出部57は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呼吸指標抽出部57は、鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、当該呼吸指標を出力するものである。
【0085】
《呼吸目標情報がΦ(τ)の場合(第1,2実施形態等)》
例えば、呼吸目標情報が、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報Φ(τ)である場合、呼吸指標抽出部57は、例えば、以下のように時刻tの呼吸指標φ(t)を生成する。
【0086】
1.呼吸計測部56から出力された時刻tにおける呼吸レベルV(t)を相空間の1次元目の値とする。
【0087】
2.呼吸レベルV(t)を時間遅延フィルターに通して得られる呼吸レベルV(t-γ)を相空間の2次元目の値とする。ここでγは時間遅延フィルターの遅延幅であり、呼吸の場合は200msから800ms程度が望ましい。
【0088】
3.相空間の直行座標系の点(V(t),V(t-γ))を極座標表示した場合の偏角を、呼吸指標φ(t)として求めて出力する(図4参照)。
【0089】
《呼吸目標情報がBpe(μ)の場合(第1,2実施形態の変形例1等)》
例えば、呼吸目標情報が、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点Bpe(μ)である場合、呼吸指標抽出部57は、呼吸計測部56から出力された呼吸レベルV(t)を入力とし、計測対象となる鑑賞者100の、時刻tからみた直近の未来の呼気開始時刻の予測値pbpe(n)を呼吸指標として出力する。ここで、nは説明上便宜的に付した指標であり、鑑賞者の呼吸回数に対応する整数である。
【0090】
図11は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
【0091】
呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば、現在の時刻t=t1からみた直近の過去の呼吸周期を、時刻t=t1からみた直近の未来の呼吸周期と推定して求めることができる。すなわち、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば以下のように算出することができる。
【0092】
pbpe(n)=bpe(n-1)+(bpe(n-1)-bpe(n-2))
=2・bpe(n-1)-bpe(n-2) …(10)
ここでbpe(n-1)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された時刻tからみた直近の過去の呼気開始時刻を表し、bpe(n-2)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された呼気開始時刻bpe(n-1)からみた直近の過去の呼気開始時刻を表す。
【0093】
[再生速度演算部58]
再生速度演算部58は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。再生速度演算部58は、呼吸目標情報と呼吸指標とを入力とし、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、設定した再生速度を特定する再生速度情報を出力する。すなわち、再生速度演算部58は、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態と、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態との相関が高くなるように、コンテンツの再生速度を設定する。
【0094】
図12−図14は、再生速度演算部58の処理機能を例示するための図である。ここでは、呼吸計測部56で呼吸レベルV(t)が得られるたびに、すなわち周期T1で、再生速度演算部58がサンプル更新間隔S(t)を定め、これを再生速度情報として出力する例を示す。
【0095】
《呼吸目標情報がΦ(τ)の場合(第1,2実施形態等)》
例えば、図12の例のように、呼吸目標情報が周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報Φ(τ)である場合、再生速度演算部58は、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相と、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相との差が小さくなるような再生速度を特定する再生速度情報を出力する。
【0096】
図12の例において、時刻t=t1の時点で、サンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))までの再生が終了しているとする。このとき呼吸分布付きコンテンツ21aに含まれるサンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)に対応する呼吸目標情報がΦ(p(t1))であり、時刻t=t1の時点で呼吸指標抽出部57から出力された呼吸指標がφ(t1)であったとする。再生速度演算部58は、これらの呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とを入力とし、これらが図4の相空間上でなす角を以下のように符号付きで求める。
【0097】
R(t1)=φ(t1)-Φ(p(t1)) …(11)
If |R(t1)|>π then L(t1)=R(t1)-Sgn(R(t1))・2π
else L(t1)=R(t1) …(12)
ただし、Sgn(δ)は符号関数であり、その関数値は、δ<0のときはSgn(δ)=-1となり、δ=0のときはSgn(δ)=0となり、δ>0のときはSgn(δ)=1となる。L(t1)>0の場合、時刻t1において鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より進んでいることになり、L(t1)<0の場合、時刻t1において鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より遅れていることになる。図13に、呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とL(t1)との関係を例示する。なお、図13はL(t1)<0の例である。
【0098】
そして、再生速度演算部58は、時刻t1でのサンプル更新間隔S(t1)を以下のように算出し、これを再生速度情報として出力する。
【0099】
S(t1)=S0/{α(p(t1))・C・L(t1)+1} …(13)
ここで、CはC>0を満たす任意の定数である。なお、第1実施形態のように呼吸目標分布付きコンテンツに同期重要度α(τ)が設定されていない場合にはα(τ)=1として処理すればよい。
【0100】
《呼吸目標情報がBpe(μ)の場合(第1,2実施形態の変形例1等)》
例えば、図14の例のように、呼吸目標情報が呼気運動を開始する時点として望ましい呼吸目標情報Bpe(μ)である場合、再生速度演算部58は、呼吸指標抽出部57から出力された呼吸指標である呼気開始時刻の予測値pbpe(n)と、呼吸目標分布付きコンテンツから抽出した第1設定位置の呼吸目標情報Bpe(m)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とを入力とし、サンプル点τ=p(t1)の同期重要度α(p(t1))を考慮しつつ、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)に、呼吸目標サンプル点Bpe(m)に対応するコンテンツ情報d(τ)の再生時刻が近づくように、サンプル更新間隔S(t1)を以下のように算出する。
【0101】
S(t1)=α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-S0}+S0 …(14)
ここで、α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-S0}は、サンプル更新間隔の変化量である。なお、第1実施形態の変形例1のように呼吸目標分布付きコンテンツに同期重要度α(τ)が設定されていない場合にはα(τ)=1として処理すればよい。
【0102】
[コンテンツ再生制御部52]
コンテンツ再生制御部52は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。コンテンツ再生制御部52は、再生速度情報とコンテンツ情報とを入力とし、当該再生速度情報で特定される再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力する。
【0103】
本形態のコンテンツ再生制御部52は、再生速度演算部58から出力された再生速度情報であるサンプル更新間隔S(t1)と、記憶部11(21)に格納された呼吸目標分布付きコンテンツから抽出されたコンテンツ情報d(τ)とを入力とし、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)(音響信号等)を順次出力する。
【0104】
<方法>
次に、本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0105】
図15は、再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【0106】
まず、ステップS10(又はS20)の処理が行われ、さらに、ステップS11(又はS21)の処理が行われる。
【0107】
また、鑑賞者100に取り付けられた呼吸計測部56が周期T1で鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られた呼吸情報である呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を出力する(ステップS56)。呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...は呼吸指標抽出部57に入力され、呼吸指標抽出部57は、前述のように呼吸指標を算出して出力する(ステップS57)。次に、制御部19が、必要時刻までの呼吸レベルが計測されたか否かを判定する(ステップS57−2)。具体的には、例えば、相空間の直行座標系の点(V(t),V(t-γ))を極座標表示した場合の偏角を呼吸指標とする場合には(第1,2実施形態等)、λ+1個の呼吸レベルV(t)が計測された否かが判定される。また、例えば、時刻tからみた直近の未来の呼気開始時刻の予測値pbpe(n)を呼吸指標とする場合には(第1,2実施形態の変形例1等)、1つの呼気開始時刻(bpe(1))を特定できる時刻までの呼吸レベルが計測されたか否かが判定される。
【0108】
ステップS57−2での判定結果がNoであった場合、ステップS56の処理に戻る。一方、ステップS57−2での判定結果がYesであった場合、再生速度演算部58は前述のように更新間隔S(t1)(再生速度情報)を算出して出力する(ステップS58)。
【0109】
コンテンツ再生制御部52は、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)と、呼吸目標分布付きコンテンツから抽出されたコンテンツ情報d(τ)とを入力とし、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のサンプル点τを更新しつつ再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報d(τ)を再生するための再生情報r(τ)を順次出力する(ステップS52)。
【0110】
再生部13は、コンテンツ再生制御部52から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定されるコンテンツを出力する(ステップS13)。
【0111】
次に、ステップS14(又はS24,S34,S44)の処理が実行され、ステップS15(S25)の処理が実行された後、呼吸計測部56が新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1であるか否かを判定する(ステップS59)。ここで、新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1でないと判定された場合、ステップS52の処理に戻される。一方、新たな呼吸レベルV(t1+1)を計測する時刻t=t1+1であると判定された場合、次に、制御部19が、呼吸分布付きコンテンツが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS19)。
【0112】
ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、t1+1を新たなt1としてステップS56の処理に戻される。一方、コンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。
【0113】
〔第6実施形態〕
第6実施形態は、第5実施形態の変形例である。本形態の呈示変数演算部は、さらに、再生速度情報を入力とし、本形態の第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する。すなわち、第4実施形態の場合、サンプル更新間隔S0は一定であったため、式(6)や式(9)によって時刻t=t1からΔt秒後の時刻t=t2でのΦ(p(t2)),α(p(t2))を高い精度で特定することができた。しかし、第5実施形態のようにサンプル更新間隔S(t)が変化する場合、式(6)や式(9)では、時刻t=t1からΔt秒後の時刻t=t2での呈示変数情報の誤差が大きくなってしまう。そこで、本形態では、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する時点の呈示変数情報を生成する。例えば、式(6)や式(9)の代わりに、
Φ(p(t2))=Φ(p(t1)+Δt/S(t1)) …(15)
α(p(t2))=α(p(t1)+Δt/S(t1)) …(16)
を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定する。なお、式(15)(16)の例では、p(t1)+Δt/S(t1)が、第1,2設定位置に相当する。
【0114】
<構成>
図1に例示するように、第6実施形態の呼吸誘導装置6は、第5実施形態の呼吸誘導装置5の呈示変数演算部を、呈示変数演算部64に置換したものである。
【0115】
[呈示変数演算部64]
本形態の呈示変数演算部64は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部64は、さらに、再生速度情報を入力とし、本形態の第1設定位置又は第2設定位置は、再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する。例えば、呈示変数演算部64は、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)が入力され、式(15)や(16)を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定して出力する。
【0116】
<方法>
次に、図15を用いて本形態の再生速度同期方法を例示する。
【0117】
第5実施形態との相違点は、ステップS14(S24,S34,S44)の代わりに、呈示変数演算部64が、再生速度演算部58から出力されたサンプル更新間隔S(t1)を入力とし、式(15)や(16)を用いて、時刻t=t2での呈示変数情報を特定して出力する(ステップS64)点である。
【0118】
〔第7実施形態〕
第7実施形態は、第5実施形態の変形例である。本形態の呈示変数演算部は、再生速度情報と呼吸指標とを入力とし、誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成する。また、本形態の誘導呼吸状態は、再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態である。本形態の呈示変数演算部は、鑑賞者100の呼吸状態と再生速度情報とを考慮した誘導呼吸状態、すなわち、鑑賞者100の呼吸状態を基準として再生速度情報から定まる誘導呼吸状態を呈示する。
【0119】
<構成>
図1に例示するように、第7実施形態の呼吸誘導装置7は、第5実施形態の呼吸誘導装置7の呈示変数演算部14(24,44)が呈示変数演算部74に置換された構成である。
【0120】
[呈示変数演算部74]
本形態の呈示変数演算部74は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呈示変数演算部74は、再生速度情報と呼吸指標とを入力とし、再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態を呈示するための呈示変数情報を生成する。
【0121】
例えば、呼吸指標が前述した相空間での極座標の偏角φ(t)であり、再生速度情報がサンプル更新間隔S(t)である場合には、例えば、以下の式(17)(18)に従って呈示変数情報x(t),y(t)を生成する。
【0122】
x(t)=C・cos(φ(t)+C4・(S0-S(t))/S0+C5)+C6 …(17)
y(t)=C2・log(α(p(t)))+C3 …(18)
ただし、C,C2,C3,C4,C5,C6は、|C|≦C6、C≠0、C2>0、C3>0を満たす定数であり、log( )は対数関数である。なお、第5実施形態で説明したように、再生速度情報は、第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる情報である。よって、再生速度情報と呼吸指標とを用いて生成される第7実施形態の呈示変数情報は、第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態である。例えば、第5実施形態で例示したサンプル更新間隔S(t)(再生速度情報)は、サンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)の呼吸目標情報Φ(p(t1))に応じて定まる情報である(式(11)-(13)参照)。よって、式(17)に例示した呈示変数情報x(t)は、サンプル点τ=p(t1)(第1設定位置)の呼吸目標情報Φ(p(t1))に応じて定まる情報であるといえる。
【0123】
<方法>
次に、図15を用いて本形態の呼吸誘導方法を例示する。
【0124】
第5実施形態との相違点は、ステップS64の代わりに、式(17)(18)を用いて呈示変数情報x(t),y(t)を生成する点である。
【0125】
〔その他の変形例〕
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0126】
例えば、上述の呼吸目標呈示部15(25,35)は、視覚情報や触覚情報を鑑賞者100に呈示するものであった。しかし、呼吸目標呈示部として、聴覚情報を鑑賞者100に呈示するものを用いてもよい。
【0127】
また、上記の各実施形態やその変形例では、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられた呼吸目標分布付きコンテンツを例示した。しかし、呼吸目標情報や同期重要度が何れかの再生位置に対応付けられるのであれば、必ずしも、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられている必要はない。例えば、呼吸目標情報や同期重要度がコンテンツのサンプリング周波数と同じかその(1/自然数)倍の周波数で呼吸目標分布付きコンテンツに分布して記録されていても良いし、任意の間隔で記録されていても良い。任意の間隔で記録する際は、例えば、コンテンツ情報の開始点を特定する始点情報と、当該始点情報に対する呼吸目標情報や同期重要度の相対位置Δを特定する情報とを呼吸目標分布付きコンテンツに格納しておけばよい。また、呼吸目標情報や同期重要度は、離散データある必要もなく、アナログ的に記録されていても良い。また、呼吸目標情報や同期重要度は、コンテンツ全体に定義される必要もなく、その一部分にだけに対して定義されていてもよい。
【0128】
また、上記の各実施形態やその変形例では、再生速度演算部から出力される再生速度情報の具体例としてサンプル更新間隔を例示した。しかし、これは本発明を限定するものではなく、テンポ情報、フレーム位置、クロック周波数等、再生時間(速度)を調節できる信号を再生速度情報としてもよい。
【0129】
また、上記の第5実施形態やその変形例では、呼吸計測部から出力される呼吸情報の具体例として呼吸レベルを例示した。しかし、例えば、呼吸レベルの微分値などを呼吸情報としてもよい。なお、呼吸レベルの微分値は、例えば、呼吸の気流量を検出して得られる。
【0130】
また、上記の各実施形態やその変形例では、コンテンツ情報の具体例として、音程や音の強さを示すMIDIデータを示した。しかし、音楽、音声、映画やテレビ番組等の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を特定するその他のデータがコンテンツ情報であってもよい。また、コンテンツ再生速度制御部は、再生速度が変わっても、音であればピッチや音質を変更しない、映像であればコマ送りや早送りによる映像の乱れを抑える等の処理を含む再生時間制御処理を行うことが望ましい。
【0131】
また、第5実施形態やその変形例では、呼吸計測部が呼吸情報を出力するたびに、呼吸指標抽出部が呼吸指標を生成し、再生速度演算部がサンプル更新間隔を定めることとしたが、その他のタイミングでこれらの処理が行われてもよい。例えば、呼吸計測部が呼吸情報を生成する周期T1の整数倍(2倍以上)の周期で呼吸指標やサンプル更新間隔を生成してもよいし、再生されるコンテンツ情報に対応する再生位置や呼吸目標設定位置ごとに呼吸指標やサンプル更新間隔をしてもよい。
【0132】
また、図1に例示したブロック図の各ブロックは概念的に区切られた処理区分であり、それぞれが独立した装置として存在する必要はない。また、各ブロックが1つの装置として構成されている必要もなく、複数の装置に分散して配置されていてもよい。
【0133】
また、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0134】
〔各実施形態の特徴〕
各実施形態により得られる効果を列挙する。
【0135】
全実施形態及びその変形例では、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの呼吸目標設定位置である第1設定位置の呼吸目標情報に応じて定まる「誘導呼吸状態」を時間軸に沿って物理的に呈示することとした。これにより、コンテンツの各再生位置にそれぞれ定められた呼吸状態に鑑賞者の呼吸状態を誘導することが容易になる。結果として、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなり、鑑賞者のコンテンツへの一体感や臨場感などといった心理作用を向上させることが可能となる。
【0136】
また、第2実施形態やそこから派生する各変形例では、さらに、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの同期重要度設定位置である第2設定位置の「同期重要度」を呈示することとした。同期重要度は、誘導呼吸状態と鑑賞者の呼吸状態とを同期させる重要性を示すものであり、このような同期重要度を感覚量に比例するよう呈示することにより、各再生位置における同期の重要性に応じてメリハリの利いた呈示が可能となる。
【0137】
第3実施形態では、誘導呼吸状態や同期重要度を、視覚情報や聴覚情報ではなく触覚情報として呈示した。この場合、誘導呼吸状態や同期重要度の呈示と、音楽や映画のような視覚情報や聴覚情報からなるコンテンツとが、互いに直接干渉することを防止できる。その結果、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。すなわち、コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、呼吸目標呈示部による呈示によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別とを相違させることにより、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。
【0138】
第5実施形態では、第1設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定することとした。これにより、鑑賞者の呼吸状態を誘導するだけではなく、コンテンツの再生速度を鑑賞者に追従させることが可能となる。すなわち、装置と鑑賞者との間の相補的な調節が行われることとなり、設定された呼吸目標及び呼吸目標の重要度と鑑賞者の呼吸パターンとの相関を高くすることが可能となる。
【0139】
第4,6実施形態では、鑑賞者の反応時間の遅れを考慮し、コンテンツの再生位置よりも未来、例えば、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を前もって鑑賞者に呈示した。これにより、コンテンツ製作者が意図する呼吸パターンに鑑賞者の呼吸を誘導できる可能性が高くなる。
【0140】
特に第6実施形態では、順次更新されるコンテンツの再生速度を考慮して、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を前もって鑑賞者に呈示することとした。これにより、再生速度が変化しても、Δt秒後に目標となる誘導呼吸状態を正確に特定できる。
【0141】
また、第7実施形態の誘導呼吸状態は、呼吸目標情報又はそれと同期重要度とを考慮して設定された再生速度情報に依存する補正値を用いて呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態であった。すなわち、第7実施形態では、鑑賞者の呼吸状態を基準として再生速度情報から定まる誘導呼吸状態を呈示した。言い換えれば、鑑賞者の呼吸状態から誘導したい方向にずれた状態を誘導呼吸状態として呈示した。これにより、鑑賞者の呼吸と呈示される誘導呼吸状態とが極端に離れることがなくなるため鑑賞者にとってより自然な呈示となる。
【0142】
〔プログラム,データ構造,記録媒体〕
上述の構成をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0143】
また、処理内容を記述したプログラムや前述したデータ構造の呼吸目標分布付きコンテンツは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0144】
また、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツの流通は、例えば、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、プログラムや呼吸目標分布付きコンテンツをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにや呼吸目標分布付きコンテンツを転送することにより、これら流通させる構成としてもよい。
【0145】
また、上述の各実施形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1−7 呼吸誘導装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを格納する記憶部と、
各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記呼吸目標設定位置である第1設定位置の前記呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力する呈示変数演算部と、
前記呈示変数情報を入力とし、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、前記呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する呼吸目標呈示部と、
を有する呼吸誘導装置。
【請求項2】
請求項1の呼吸誘導装置であって、
前記呼吸分布付きコンテンツは、さらに、少なくとも一部の前記再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含み、
前記呈示変数演算部は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記同期重要度設定位置である第2設定位置の前記同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示するための前記呈示変数情報を生成し、
前記呼吸目標呈示部は、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、前記呈示変数情報によって特定される各同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項3】
請求項1又は2の呼吸誘導装置であって、
前記第1設定位置又は前記第2設定位置は、前記再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの呼吸誘導装置であって、
鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、当該呼吸指標を出力する呼吸指標抽出部と、
前記呼吸目標情報と前記呼吸指標とを入力とし、前記第1設定位置に対応する前記呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応する前記コンテンツ情報が再生される時点での前記鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、設定した再生速度を特定する再生速度情報を出力する再生速度演算部と、
前記再生速度情報と前記コンテンツ情報とを入力とし、当該再生速度情報で特定される再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力するコンテンツ再生制御部と、
をさらに有する呼吸誘導装置。
【請求項5】
請求項4の呼吸誘導装置であって、
前記呈示変数演算部は、さらに、前記再生速度情報を入力とし、
前記第1設定位置又は前記第2設定位置は、前記再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、前記再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの呼吸誘導装置であって、
前記誘導呼吸状態は、前記第1設定位置の前記呼吸目標情報に対して定められた呼吸目標情報によって特定される呼吸状態である、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項7】
請求項4の呼吸誘導装置であって、
前記呈示変数演算部は、前記再生速度情報と前記呼吸指標とを入力とし、前記誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための前記呈示変数情報を生成し、
前記誘導呼吸状態は、前記再生速度情報に依存する補正値を用いて前記呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態である、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの呼吸誘導装置であって、
前記コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、前記呼吸目標呈示部による呈示によって前記鑑賞者に知覚される物理現象の種別とは異なる、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項9】
時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納するステップと、
各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数演算部が、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記呼吸目標設定位置である第1設定位置の前記呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力するステップと、
呼吸目標呈示部が、前記呈示変数情報を入力とし、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、前記呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するステップと、
を有する呼吸誘導方法。
【請求項10】
請求項1から8の何れかの呼吸誘導装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項1】
時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを格納する記憶部と、
各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記呼吸目標設定位置である第1設定位置の前記呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力する呈示変数演算部と、
前記呈示変数情報を入力とし、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、前記呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示する呼吸目標呈示部と、
を有する呼吸誘導装置。
【請求項2】
請求項1の呼吸誘導装置であって、
前記呼吸分布付きコンテンツは、さらに、少なくとも一部の前記再生位置である各同期重要度設定位置に対して予め定められた係数である同期重要度を含み、
前記呈示変数演算部は、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記同期重要度設定位置である第2設定位置の前記同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示するための前記呈示変数情報を生成し、
前記呼吸目標呈示部は、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、さらに、前記呈示変数情報によって特定される各同期重要度を時間軸に沿って物理的に呈示する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項3】
請求項1又は2の呼吸誘導装置であって、
前記第1設定位置又は前記第2設定位置は、前記再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも時間軸上で後に位置する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの呼吸誘導装置であって、
鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態を特定するための呼吸指標を抽出し、当該呼吸指標を出力する呼吸指標抽出部と、
前記呼吸目標情報と前記呼吸指標とを入力とし、前記第1設定位置に対応する前記呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該第1設定位置に対応する前記コンテンツ情報が再生される時点での前記鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際の再生速度を設定し、設定した再生速度を特定する再生速度情報を出力する再生速度演算部と、
前記再生速度情報と前記コンテンツ情報とを入力とし、当該再生速度情報で特定される再生速度で各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を順次再生するための再生情報を出力するコンテンツ再生制御部と、
をさらに有する呼吸誘導装置。
【請求項5】
請求項4の呼吸誘導装置であって、
前記呈示変数演算部は、さらに、前記再生速度情報を入力とし、
前記第1設定位置又は前記第2設定位置は、前記再生される各コンテンツ情報に対応する再生位置よりも、前記再生速度情報で特定される再生速度に依存する値だけ、時間軸上で後に位置する、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの呼吸誘導装置であって、
前記誘導呼吸状態は、前記第1設定位置の前記呼吸目標情報に対して定められた呼吸目標情報によって特定される呼吸状態である、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項7】
請求項4の呼吸誘導装置であって、
前記呈示変数演算部は、前記再生速度情報と前記呼吸指標とを入力とし、前記誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための前記呈示変数情報を生成し、
前記誘導呼吸状態は、前記再生速度情報に依存する補正値を用いて前記呼吸指標を補正した補正呼吸指標によって特定される呼吸状態である、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの呼吸誘導装置であって、
前記コンテンツ情報の再生によって鑑賞者に知覚される物理現象の種別と、前記呼吸目標呈示部による呈示によって前記鑑賞者に知覚される物理現象の種別とは異なる、
ことを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項9】
時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置である各呼吸目標設定位置に対して予め定められた呼吸状態を特定するための呼吸目標情報と、を含む、呼吸分布付きコンテンツを記憶部に格納するステップと、
各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、呈示変数演算部が、再生される各コンテンツ情報に対応する各再生位置に対して所定の関係にある何れかの前記呼吸目標設定位置である第1設定位置の前記呼吸目標情報に応じて定まる誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するための呈示変数情報を生成し、当該呈示変数情報を出力するステップと、
呼吸目標呈示部が、前記呈示変数情報を入力とし、前記コンテンツ情報が時間軸に沿って順次再生される際に、前記呈示変数情報によって特定される各誘導呼吸状態を時間軸に沿って物理的に呈示するステップと、
を有する呼吸誘導方法。
【請求項10】
請求項1から8の何れかの呼吸誘導装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−59420(P2011−59420A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209473(P2009−209473)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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