説明

呼吸誘導装置

【課題】自然な呼吸誘導を行うことができる呼吸誘導装置を小型・安価に構成する。
【解決手段】人体40の体表面の互いに異なる部位に刺激を与える複数の刺激子11,12と、それら各刺激子11,12によって人体40の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する制御手段20と、前記刺激パターンに基づき、各刺激子11,12を駆動する駆動信号を生成する駆動手段30とを備え、前記刺激パターンは人体40に、複数の刺激子11,12の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を生じさせることで、呼吸を誘導するものとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は人にリラックス感を喚起するといった用途に用いることができ、また例えば医療現場において治療や治療への併用といった用途に用いることが考えられる呼吸誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には被施療者にリラックス感を喚起するため、被施療者の呼吸周期に応じて施療動作を行うマッサージ機(マッサージ椅子)が記載されている。
【0003】
特許文献1ではマッサージ機は人体に対して刺激を周期的に与える施療手段(施療子)と、人体の呼吸周期を検出する検出手段と、検出手段で検出される呼吸周期に応じて施療手段が人体に与える刺激を制御する制御手段とを備えるものとされ、検出手段は人体を押圧する施療手段にかかる負荷を検出する力センサによる押圧力情報から呼吸周期を検出するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3324886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されているように、呼吸周期に応じて人体に刺激を与えれば、リラックス感を喚起することができる。また、特許文献1に記載されているように、呼吸周期よりも刺激周期を長くすれば、呼吸周期が長周期となるように誘導することができ、早期にリラックス状態に導くことができる。しかしながら、刺激を与える施療子を人体に沿って移動させ、施療子を人体の体表面に空間連続的に押し付けるマッサージ機のような機械は大掛りな機構が必要となり、装置の大型化は避けられない。
【0006】
一方、振動子や電気刺激子を人体の体表面の一箇所に押し当てて呼吸を誘導する方法も提案されており、この方法によれば装置を小型化したり、ウェアラブルにすることができるものの、単に呼吸周期毎に振動子や電気刺激子を駆動するだけでは呼吸誘導感が不足するといった問題があった。
【0007】
この発明の目的は大掛りな機構を用いることなく、小型に構成することができ、良好かつ自然な呼吸誘導を行えるようにした呼吸誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明によれば、呼吸誘導装置は人体の体表面の互いに異なる部位に刺激を与える複数の刺激子と、それら各刺激子によって人体の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する制御手段と、前記刺激パターンに基づき、各刺激子を駆動する駆動信号を生成する駆動手段とを備え、前記刺激パターンは人体に、複数の刺激子の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を生じさせることで、呼吸を誘導するものとされる。
【0009】
請求項2の発明では請求項1の発明において、前記刺激パターンは仮現運動によって前記錯覚を生じさせるべく、複数の刺激子の駆動開始タイミングをそれら刺激子の配列方向に従い、順次ずらすように構成される。
【0010】
請求項3の発明では請求項1の発明において、前記刺激パターンはファントムセンセーションを用いて前記錯覚を生じさせるべく、複数の刺激子の駆動強度を徐々に変化させるように構成される。
【0011】
請求項4の発明では請求項3の発明において、刺激子の数は2つとされ、それら2つの刺激子は同じタイミングで駆動されて、一方の刺激子の駆動強度は漸減され、他方の刺激子の駆動強度は漸増される。
【0012】
請求項5の発明によれば、呼吸誘導装置は人体の体表面の互いに異なる部位に刺激を与える複数の刺激子と、それら各刺激子によって人体の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する制御手段と、前記刺激パターンに基づき、各刺激子を駆動する駆動信号を生成する駆動手段とを備え、前記刺激パターンは人体に、各刺激子が互いに異なるタイミングで刺激を与えることで、呼吸を誘導するものとされる。
【0013】
請求項6の発明では請求項1乃至5のいずれかの発明において、複数の刺激子は人体の背中に、背筋方向に沿って配列される。
【0014】
請求項7の発明では請求項1乃至6のいずれかの発明において、刺激子に振動モータを用いる。
【0015】
請求項8の発明では請求項1乃至7のいずれかの発明において、前記刺激パターンは呼吸周期の吸気区間中もしくは呼気区間中にのみ刺激を与えるものとされる。
【0016】
請求項9の発明では請求項1乃至8のいずれかの発明において、人体の呼吸状態を計測する呼吸計測部と、その呼吸計測部で計測された呼吸状態から呼吸指標を抽出する呼吸指標抽出部とを具備し、制御手段は呼吸指標抽出部で抽出された呼吸周期に前記刺激パターンを同期させ、かつ予め設定された目標呼吸周期に前記抽出された呼吸周期が徐々に近づくように前記刺激パターンの同期を設定する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、大掛りな機構は不要であり、自然な呼吸誘導を行うことができる呼吸誘導装置を小型かつ安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明による呼吸誘導装置の基本構成例を示すブロック図。
【図2】刺激子の設置位置例を模式的に示した図。
【図3】この発明の実施例1における刺激パターンを示す図。
【図4】この発明の実施例1における刺激パターンの変形例を示す図。
【図5】この発明の実施例2における刺激パターンを示す図。
【図6】この発明の実施例3における刺激パターンを示す図。
【図7】この発明の実施例4における刺激パターンを示す図。
【図8】この発明による呼吸誘導装置の実施例5における構成を示すブロック図。
【図9】呼吸指標を説明するための図。
【図10】実験条件を説明するための図。
【図11】実験結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【実施例1】
【0020】
図1はこの発明による呼吸誘導装置の機能構成例を示したものであり、呼吸誘導装置はこの例では第1刺激子11及び第2刺激子12と、制御手段20と、駆動手段30とによって構成されている。
【0021】
第1刺激子11及び第2刺激子12は人体40(図1ではブロックで示している)の体表面の互いに異なる部位に刺激を与えるもので、この例では振動モータが用いられ、振動モータによって人体40の体表面に触覚(体性感覚)を与えるものとされる。
【0022】
制御手段20は例えばコンピュータによって構成され、第1,第2刺激子11,12それぞれを通じて人体40の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する。
【0023】
駆動手段30は制御手段20から入力される刺激パターンに基づき、第1,第2刺激子11,12を駆動する駆動信号を生成する。駆動手段30は第1駆動回路31と第2駆動回路32を備えており、これら第1,第2駆動回路31,32によって第1,第2刺激子11,12をそれぞれ駆動する駆動信号が生成され、第1,第2刺激子11,12に出力される。第1,第2駆動回路31,32は例えば増幅器とされる。
【0024】
図2は人体40への第1,第2刺激子11,12の設置例を模式的に示したものである。第1,第2刺激子11,12はこの例では人体40の背中に、背筋(せすじ)方向(背骨と平行方向)に沿って配列されて設置されており、第1刺激子11は腰に位置され、第2刺激子12は背に位置されている。
【0025】
図3は制御手段20が出力する刺激パターン(刺激パターン信号)を示したものであり、制御手段20はこの例では200Hzの正弦波信号の振幅の有無で刺激パターンを生成して出力する。なお、図3では正弦波の図示は省略しており、正弦波の振幅の有無のみを簡略化して示している。図3に示したグラフの縦軸は刺激強度を表し、横軸は時間を表す。
【0026】
刺激パターンは誘導したい呼吸周期Tp毎に同じ動作を繰り返すように制御される。第1刺激子11用の刺激パターンは呼吸周期Tp中、T1時間だけ振幅があり、それ以外は振幅0となっている。第2刺激子12用の刺激パターンは呼吸周期Tp中、T2時間だけ振幅があり、それ以外は振幅0となっている。これら第1,第2刺激子11,12用の刺激パターンは第1,第2刺激子11,12の駆動開始タイミングをずらすように構成されており、第1刺激子11の駆動開始から時間差Tdを持って第2刺激子12が駆動されるように構成されている。T1,T2,Tdは、
0<T1<Tp
0<T2<Tp
Td+T2<Tp
を満たすように設定される。
【0027】
刺激パターンはこの例では人体40に、第1,第2刺激子11,12の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を仮現運動によって生じさせるものとされ、時間差(遅れ時間)Tdは仮現運動が生じる範囲で、即ち1秒を超えない範囲(詳細は下記文献1,2等でも論じられている)で設定する。
【0028】
文献1:J.H.Kirman,“Tactile apparent movement:The effects of interstimulus onset interval and stimulus duration”,Perception & Psychophysics,Vol.15,No.1,pp.1-6,1974
文献2:丹羽真隆等,“振動触覚を用いた情報提示のための仮現運動と刺激条件”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol.14, No.2, pp.223-232,2009
【0029】
この例では上述したように仮現運動を生じさせ、人体40に第1,第2刺激子11,12の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を生じさせることで、自然な呼吸誘導を行うものとなっている。なお、遅れ時間Tdは仮現運動が生じやすいよう、T1の値に応じて設定される。
【0030】
図4は図3に示した刺激パターンの変形例を示したものである。図3では第1,第2刺激子11,12用の刺激パターンはそれぞれT1及びT2時間、連続して刺激を与えるものとなっているが、図4は時間幅Tbの刺激列に細分化したものである。このような刺激列によって刺激を与えるようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
実施例2では第1刺激子11の駆動強度を漸減させ、第2刺激子12の駆動強度を漸増させる。つまり、第1刺激子11による刺激強度は徐々に小さくなるようにし、一方、第2刺激子12による刺激強度は徐々に大きくなるように制御する。これにより、ファントムセンセーションを生じさせ、このファントムセンセーションを用いて実施例1と同様、人体40に、第1,第2刺激子11,12の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を生じさせることで、自然な呼吸誘導を行う。
【0032】
図5はファントムセンセーションを生じさせるべく、制御手段20が生成・出力する刺激パターンを示したものである。刺激パターンは図3と同様、簡略化して示している。制御手段20は200Hzの正弦波信号の振幅を図5に示したように変化させる。
【0033】
第1,第2刺激子11,12用の刺激パターンは第1,第2刺激子11,12が同じタイミングで駆動され、かつ同じT3時間駆動されるように構成されており、第1刺激子11用の刺激パターンのT3時間における刺激強度は図5に示したように漸減され、第2刺激子12用の刺激パターンのT3時間における刺激強度は漸増される。
【実施例3】
【0034】
実施例3は実施例2と同様、ファントムセンセーションを用いて吸気誘引刺激と呼気誘引刺激の双方を行うようにしたものであり、図6に制御手段20が生成・出力する刺激パターンを示す。
【0035】
この例では図6に示したように、吸気時には第1刺激子11による刺激強度は漸減され、第2刺激子12による刺激強度は漸増される。これにより、吸気時には腰から上方の背へ、つまり尾側から頭側へ感覚が生じ、吸気が誘引される。
【0036】
一方、呼気時には第1刺激子11による刺激強度は漸増され、第2刺激子12による刺激強度は漸減される。これにより、呼気時には背から下方の腰へ、つまり頭側から尾側へ感覚が生じ、呼気が誘引される。
【0037】
なお、このような尾側から頭側へ生じる感覚による吸気誘引及び頭側から尾側へ生じる感覚による呼気誘引は一般的な個人特性に合致するものであり、デフォルトで図6に示したような刺激パターンを制御手段20が生成・出力するように設定しておけば、呼吸誘導において調節なしで対応できる範囲を広くすることができる。
【実施例4】
【0038】
実施例4は人体40に刺激を与える範囲を目標吸気区間中もしくは目標呼気区間中に限定する。目標吸気区間は呼吸周期Tpのうち、吸気誘導を想定する区間をさし、目標呼気区間は呼吸周期Tpのうち、呼気誘導を想定する区間をさす。
【0039】
図7は制御手段20が生成・出力する刺激パターンと目標呼吸パターンとを示したものであり、この例では目標吸気区間にのみ刺激を与えるものとなっている。このように目標吸気区間にのみ刺激を与え、感覚を生じさせることをデフォルトとする。
【実施例5】
【0040】
実施例5では図8に示したように、図1に示した構成に加え、呼吸計測部50と呼吸指標抽出部60とを備えるものとされる。
【0041】
呼吸計測部50は人体40(呼吸誘導装置使用者)の呼吸状態を計測する。呼吸状態の計測は例えば呼吸に伴う胴の周囲長変化、呼気と吸気の気流や温度変化、姿勢変化による荷重移動等を周知技術により測定することによって行われ、これらの一部または組み合わせを使用者の呼吸状態として出力する。
【0042】
呼吸指標抽出部60はコンピュータ等で構成され、呼吸計測部50から入力される呼吸状態から図9に示したような呼吸周期、呼気時間、吸気時間、呼気開始、吸気開始等の呼吸状態の特徴、即ち呼吸指標を抽出する。
【0043】
このような呼吸計測部50と計測指標抽出部60を備えることにより、制御手段20は生成する刺激パターンに使用者の呼吸状態の特徴を反映させたり、同期を取ったりすることができる。
【0044】
制御手段20が使用者の呼吸周期に刺激パターンを同期させ、かつ使用者の呼吸周期を予め設定された目標呼吸周期に誘導する場合のアルゴリズムの一例を下記に示す。
【0045】
(1)誘導したい最終的な目標となる目標呼吸周期Tp’を設定する。但し、Tp’>0。
(2)使用者の現在の呼吸周期tpを呼吸指標抽出部60より受け取る。
(3)刺激パターンを生成する際に用いる呼吸周期Tpを、
Tp=tp+(Tp’−tp)/N
に設定し、1呼吸周期分の刺激パターンを生成する。但し、N>1。
(4)吸気開始出力を呼吸指標抽出部60より受け取ったら、Tp時間分の刺激パターンの出力を開始する。これにより、第1,第2刺激子11,12が駆動され、刺激が与えられる。
(5)以下、上記(2)〜(4)を繰り返す。
【0046】
上記において、Nを所定の大きさとすることにより、目標呼吸周期Tp’に使用者の呼吸周期tpを徐々に近づけていくことができ、負担なく呼吸を誘導することができる。
【0047】
[実験]
被験者に対し、呼吸誘導を適用し、呼吸の合わせやすさについて評価させる実験を行った。
【0048】
実験においては図10(a)に示したように椅子70の背もたれ部に第1〜第3の振動モータよりなる3つの刺激子11〜13を腰、背、肩の位置にそれぞれ位置させて設置した。そして、頭側から尾側への感覚生起を刺激パターンAとし、尾側から頭側への感覚生起を刺激パターンBとした。図10(b)は仮現運動により感覚生起を生じさせる場合の刺激パターンA,Bを示す。なお、呼吸周期Tpは4.5秒とした。
【0049】
被験者に対し、感覚生起に対して呼吸の吸気または呼気を合わせるように指示し、そのときの呼吸を呼吸計測器(TR−751,日本光電工業(株)製)で計測した。また、各実験終了後に5段階評価で呼吸の合わせやすさを評価させた。被験者の数は8名とした。
【0050】
実験結果を図11の表1に示す。表1中の同期しやすさは呼吸計測器での測定データから計算した呼吸位相の刺激開始(振動開始)時点での分散を順位付けた和(順位和)を示し、合わせやすさも被験者の主観評価による順位和を示す。いずれも数字が小さい方が結果が良となる。
【0051】
誘導方法は吸気及び呼気のどちらを感覚生起に合わせたかを示し、矢印で示した向きは感覚生起方向(↑は尾側から頭側、↓は頭側から尾側)を示す。なお、表2は表1より誘導方法を吸気または呼気の2つの項目にまとめて整理した結果を示す。
【0052】
これら表1及び表2より、目標呼気区間中に感覚を生起させるより、目標吸気区間中に感覚を生起させる方が良いことがわかる。また、吸気時に尾側から頭側(矢印↑)の感覚を生起させる誘導方法が呼気パターンの安定性及び主観評価ともに最も良いことがわかる。
【0053】
以上説明したように、この発明では呼吸誘導を人体の体表面の互いに異なる離散的な位置に設置した複数の刺激子によって行うものとなっており、複数の刺激子の空間的配置を考慮し、刺激子の駆動順序や駆動強度等を調節することにより、仮現運動やファントムセンセーションを生じさせ、あたかも空間連続的に体表面を刺激されているかのように使用者に感じさせるものとなっている。これにより、自然な呼吸誘導を行うことができ、大掛りな機構を必要としないため、呼吸誘導装置を小型かつ安価に構成することができる。
【0054】
また、実験結果からも検証されたように、背筋方向に複数の刺激子を設置し、吸気時には尾側から頭側に移動する感覚を生起させ、呼気時には頭側から尾側に移動する感覚を生起させるようにすれば、呼吸誘導を一般的な個人特性に合致させることができ、つまり実施例3に示したような刺激パターンをデフォルト設定とすれば、パラメータ調節の手間を省き、呼吸を合わせやすくすることができる。
【0055】
なお、目標とする呼吸パターンのうち、目標吸気区間または目標呼気区間のみに使用者に刺激された感覚を生じさせるように限定すれば、使用者が過度の呼吸誘導感を感じるのを抑えつつ、目標呼吸パターンに誘導することができる。この場合、実施例4で示したように目標吸気区間にのみ使用者に感覚を生じさせることをデフォルト設定とすることは実験結果からも効果があることが検証されており、このようにデフォルトを設定すれば、パラメータ調節の手間を省くことができる。
【0056】
上述した実施例1〜5では刺激子として第1,第2刺激子の2つを用いているが、刺激子の数はこれに限らず、例えば実験で用いたように3つとしてもよく、さらに4つ以上用いてもよい。この場合、刺激子の設置は背筋方向に沿って背中に等間隔に配列するのが好ましい。
【0057】
また、刺激子には振動モータに限らず、下記文献3に記載されているような振動を伝えるスピーカや下記文献4に記載されているような電気的に神経を刺激する電極等を用いることもできる。
【0058】
文献3:Y.Hashimoto, H.Kajimoto,“An Emotional Tactile Interface Completing with Extremely High Temporal Bandwidth”,SICE Annual Conference,pp.1457-1462,2008
文献4:谷江等,“電気パルス刺激における強度差ファントムセンセーション像の位置弁別特性”,計測自動制御学会論文集,Vol.15, No.4, pp.505-512, 1979
【0059】
さらに、刺激子は駆動手段によって単に駆動されるものとなっているが、例えば下記文献5に記載されているようにフィードバック機構を具備するようにしてもよい。
文献5:丹羽真隆等,“安定した振動提示のためのフィードバック制御による振動子の振動状態制御”,バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol.11, No.1, pp.59-68, 2006
【0060】
また、制御手段は刺激パターンの生成において、振幅の有無や変化を調節するのみならず、例えば信号の周波数等を変えるようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の体表面の互いに異なる部位に刺激を与える複数の刺激子と、
それら各刺激子によって前記人体の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する制御手段と、
前記刺激パターンに基づき、前記各刺激子を駆動する駆動信号を生成する駆動手段とを備え、
前記刺激パターンは前記人体に、前記複数の刺激子の間を空間連続的に刺激されているような錯覚を生じさせることで、呼吸を誘導するものとされていることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項2】
請求項1記載の呼吸誘導装置において、
前記刺激パターンは仮現運動によって前記錯覚を生じさせるべく、前記複数の刺激子の駆動開始タイミングをそれら刺激子の配列方向に従い、順次ずらすように構成されていることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項3】
請求項1記載の呼吸誘導装置において、
前記刺激パターンはファントムセンセーションを用いて前記錯覚を生じさせるべく、前記複数の刺激子の駆動強度を徐々に変化させるように構成されていることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項4】
請求項3記載の呼吸誘導装置において、
前記刺激子の数は2つとされ、
それら2つの刺激子は同じタイミングで駆動されて、一方の刺激子の駆動強度は漸減され、他方の刺激子の駆動強度は漸増されることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項5】
人体の体表面の互いに異なる部位に刺激を与える複数の刺激子と、
それら各刺激子によって前記人体の体表面に与える刺激パターンを生成して出力する制御手段と、
前記刺激パターンに基づき、前記各刺激子を駆動する駆動信号を生成する駆動手段とを備え、
前記刺激パターンは前記人体に、前記各刺激子が互いに異なるタイミングで刺激を与えることで、呼吸を誘導するものとされていることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載のいずれかの呼吸誘導装置において、
前記複数の刺激子は前記人体の背中に、背筋方向に沿って配列されることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のいずれかの呼吸誘導装置において、
前記刺激子に振動モータを用いることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項8】
請求項1乃至7記載のいずれかの呼吸誘導装置において、
前記刺激パターンは呼吸周期の吸気区間中もしくは呼気区間中にのみ刺激を与えるものとされていることを特徴とする呼吸誘導装置。
【請求項9】
請求項1乃至8記載のいずれかの呼吸誘導装置において、
前記人体の呼吸状態を計測する呼吸計測部と、
その呼吸計測部で計測された呼吸状態から呼吸指標を抽出する呼吸指標抽出部とを具備し、
前記制御手段は前記呼吸指標抽出部で抽出された呼吸周期に前記刺激パターンを同期させ、かつ予め設定された目標呼吸周期に前記抽出された呼吸周期が徐々に近づくように前記刺激パターンの同期を設定することを特徴とする呼吸誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−19852(P2012−19852A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158573(P2010−158573)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】