説明

咀嚼能力測定装置

【課題】色素を含有するグミゼリーを用いて咀嚼能力を測定する装置において、測定のための全工程を自動化する。
【解決手段】本発明に係る咀嚼能力測定装置は、グミゼリーの咬断片を収容するための容器と、容器を設置するための測定台12と、測定台12の上方位置に昇降及び鉛直軸回りの回転が可能に配備され、測定台12上の容器内へ侵入させることが可能な攪拌ヘッド3と、攪拌ヘッド3を昇降移動させるヘッド昇降駆動機構と、攪拌ヘッド3を鉛直軸回りに回転駆動するヘッド回転駆動機構と、測定台12上の容器に対して水の供給と排出を行なう給排水機構と、測定台12上の容器に収容されている咬断片から容器内の水中へ溶出した色素の濃度を測定する手段とを具え、予め回帰分析によって求められている関係式を用いて、濃度測定手段の出力値からグミゼリーの表面積増加量を導出し、これを咀嚼能力の測定値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼能力測定用食品としてのグミゼリーを用いて咀嚼能力を測定する咀嚼能力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔における極めて重要な機能に咀嚼が挙げられる。その咀嚼能力の客観的評価法として、咀嚼した一定重量の食品(ピーナッツ)を10メッシュの篩いにかけ、残留した粒子の乾燥重量を測定して、残留した粒子と通過した粒子の重量比率を評価値とする判定方法が知られている。
【0003】
従来の咀嚼能力測定用食品としては、ピーナッツ以外に、生米、にんじん、干しぶどう、かまぼこなどが用いられ、主に研究分野で活用されてきた。しかし、これらの天然食品では、食品の品質管理が難しいこと、またピーナッツなどでは義歯床下に入って痛みが生じ、義歯装着者に対する測定が困難であること、更に咬断片の乾燥が必要なために測定時間が1時間以上と著しく長いことなど、多くの欠点を有している。
【0004】
一方、チューイングガム、寒天、ワックスなどを代用食品とし、混合能力を評価する方法も考案されている。しかし、これらの方法は、最も重要な咀嚼能力を評価するにあたり、いわゆる顎口腔系の重要な機能である嚥下直前に至る食品を咀嚼する生理学的意義を反映しているとは言い難い。
【0005】
又、現行の手作業による測定方法では、測定条件を正確に規定することが困難であり、測定環境や計測者が異なれば、その測定結果の正確性、再現性が必ずしも高いとはいえないため、広く社会において汎用化を図る上で問題がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、咀嚼能力測定用食品としてグミゼリーを用い、咀嚼後の咬断片の表面から水中に溶出するゼラチンあるいはグルコースの濃度を測定し、その濃度から咀嚼後の粉砕食品の表面積の増加量を導出し、その表面積増加量を咀嚼能力の評価値とする咀嚼能力測定方法を開発した(特許文献1)。
該咀嚼能力測定方法によれば、グミゼリー咬断片の水洗時間、グルコースの溶出温度、及び溶出時間を規定することによって、精度の高い咀嚼能力評価値を得ることが出来る。
【0007】
ところで、咀嚼能力の測定においては、児童から高齢者まで様々な年齢層における集団検診や、歯が健全な人から、全部床義歯装着者や顎顔面補綴患者、また脳卒中等の術後の顎口腔運動障害者までを対象として、歯や口腔の状態に応じた測定を可能とすることが必要である。そのためには、これまで測定対象としてきたグミゼリーの成分であるゼラチンの含有率を変化させて硬さや食感を変えることや、グルコースの含有率や糖質の成分を変化させることで味を変えることが必要となってくる。
【0008】
この様な状況において、グミゼリー成分以外の何らかの測定対象物を含む安全な咀嚼能力測定用食品の開発と、その食品を用いた測定方法の確立が不可欠である。同時に、測定の目的や環境に加え、技術的エラーによる精度への影響を最小限に抑えることが出来るシステムの確立が必要となる。
【0009】
そこで本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、より高い測定精度が得られる新しい咀嚼能力測定用食品として、天然由来の色素(例えばカロチン)を加えたグミゼリーを開発し、そのグミゼリーを咀嚼能力測定用食品とする咀嚼能力測定方法及び装置を開発した(特許文献2、3)。
【0010】
上記咀嚼能力測定方法は、咀嚼後のグミゼリーの咬断片を水洗する水洗工程と、水洗後の咬断片を水中で一定時間だけ攪拌する攪拌工程と、攪拌によって咬断片から水中へ溶出した色素の濃度を測定する濃度測定工程と、測定された濃度から咀嚼能力を表わす測定値を導出する測定値導出工程とを有している。
【0011】
上記咀嚼能力測定方法によれば、高い精度で且つ簡便に咀嚼能力を測定することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2006/046377号公報
【特許文献2】特開2008−220600号公報
【特許文献3】特開2009−119031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、色素を含むグミゼリーを咀嚼能力測定用食品とする咀嚼能力測定装置においては、水洗工程から攪拌工程及び濃度測定工程を経て測定値導出工程まで至る一連の工程が完全に自動化されていないために、咀嚼能力測定値を得るために時間がかかる問題があった。又、一部の工程にて手動操作を余儀なくされるため、依然として測定精度に限界が生じていた。
【0014】
そこで本発明の目的は、咀嚼能力測定のための全工程を完全に自動化することによって測定時間を短縮すると共に、従来よりも更に高い精度の測定値を得ることが出来る咀嚼能力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る咀嚼能力測定装置は、
咀嚼後のグミゼリーの咬断片を収容するための容器と、
前記容器を設置するための測定台と、
測定台の上方位置に昇降及び鉛直軸回りの回転が可能に配備され、測定台上の容器の上部開口から容器内へ侵入させることが可能な攪拌ヘッドと、
攪拌ヘッドを昇降移動させるヘッド昇降駆動機構と、
攪拌ヘッドを鉛直軸回りに回転駆動するヘッド回転駆動機構と、
前記ヘッド昇降駆動機構とヘッド回転駆動機構の動作を制御する制御手段と、
測定台上の容器に対して一定温度範囲の水の供給と、容器内の水の排出を行なう給排水機構と、
測定台上の容器に収容されている咬断片から容器内の水中へ溶出した色素の濃度を光学的に測定する濃度測定手段と、
予め回帰分析によって求められている関係式を用いて、前記濃度測定手段の出力値からグミゼリーの表面積増加量若しくはこれに応じた量を導出し、導出された量を咀嚼能力の測定値とする演算処理手段
とを具えている。
【0016】
上記本発明の咀嚼能力測定装置においては、所定成分、所定形状を有する測定用グミゼリーを被験者に所定回数だけ咀嚼させたものを咀嚼能力測定対象(グミゼリー咬断片)とする。
咀嚼後のグミゼリー咬断片と水を容器内に収容した後、該容器を測定台に設置し、該容器内に攪拌ヘッドを降下させつつ、該攪拌ヘッドを回転させる。これによって、咬断片表面に付着した唾液や血液が除去される。その後、容器内の水を排出して、水洗工程を終了する。
【0017】
次に、測定台上の容器内に一定温度範囲内の水を一定量だけ注入し、攪拌ヘッドを一定時間だけ回転させて、容器内を攪拌する。これによって、咬断片の表面から水中へ色素が溶出することになり、攪拌工程を終了する。攪拌工程では、咬断片の表面積の増加量に応じた量の色素が水中へ溶出することになる。
攪拌工程の終了後、一定時間が経過した時点で、容器内の水に溶出している色素の濃度を測定し、濃度測定工程を終了する。
【0018】
最後に、予め回帰分析によって求められている関係式を用いて、色素濃度の出力値(電圧)からグミゼリー咬断片の表面積増加量を導出し、導出された量を咀嚼能力の測定値として出力し、測定値導出工程を終了する。
【0019】
具体的態様において、前記容器は光透過性を有し、前記濃度測定手段は、測定台(12)上の容器の両側に配備された発光素子と受光素子から構成される。
【0020】
他の具体的な態様において、前記攪拌ヘッド(3)は、測定台(12)上の容器の内部へ向けて突出する3本以上の攪拌子(30)を有し、これらの攪拌子(30)は、該容器の内周面に沿って円陣に配置され、容器内に収容されているグミゼリーの咬断片を攪拌ヘッドによって包囲することが可能である。
該具体的態様によれば、容器内の攪拌ヘッド(3)と容器内面との間に咬断片が噛み込むことなく、容器内の咬断片が均一に攪拌される。
【0021】
他の具体的な態様において、前記攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)の先端部には、攪拌子(30)が配列されている円周線の内側の角部に、R曲面(38)が形成されている。
該具体的態様によれば、容器内の最低位置まで攪拌ヘッドを降下させたとき、該攪拌ヘッドと容器底面との間に咬断片が噛み込む事態を回避することが出来る。
【0022】
他の具体的な態様において、前記ヘッド回転駆動機構は、攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)に埋設されたマグネットと、測定台(12)に内蔵された電磁駆動装置(5)とからから構成され、該電磁駆動装置(5)の回転によって攪拌ヘッド(3)を回転駆動する。
【0023】
他の具体的な態様において、前記電磁駆動装置(5)は、前記攪拌ヘッド(3)の攪拌子(30)の本数に応じた数のマグネットを具えたマグネットプーリ(51)と、該マグネットプーリ(51)を回転駆動する電動モータ(53)とから構成される。
【0024】
他の具体的な態様において、前記攪拌ヘッド(3)は、横方向の振動が可能に配備され、電磁駆動装置(5)によって攪拌ヘッド(3)を回転駆動する際の脱調によって、攪拌ヘッド(3)を横方向に振動させることが可能である。
該具体的態様によれば、容器内の最低位置まで攪拌ヘッドを回転させつつ降下させる過程で、攪拌ヘッドは横方向に振動するので、攪拌ヘッドが容器の底部まで降下したときに、攪拌ヘッドの下端面と容器底面との間に咬断片が噛み込む事態を効果的に回避することが出来る。
【0025】
他の具体的な態様において、前記攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)には給排水口が開設され、前記給排水機構は、一定温度範囲の水が貯蔵された恒温水槽と、恒温水槽から攪拌ヘッド(3)へ繋がる流路系と、該流路系に介在するポンプとを具え、該ポンプによって、恒温水槽内の水を攪拌ヘッド(3)の各給排水口へ供給する給水動作と、測定台上の容器に侵入した攪拌ヘッドの各給排水口から容器内の水を排出する排水動作とが可能である。
【0026】
更に他の具体的な態様において、前記攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)は、容器内に侵入した状態で容器の内周面に対向する外周面と、排水時の攪拌ヘッド(3)の回転方向に対して後方に位置する背面とを有し、各攪拌子(30)には2つの給排水口が開設され、第1の給排水口(34)は、各攪拌子(30)の外周面に開口し、第2の給排水口(35)は各攪拌子(30)の背面に開口している。
該具体的態様によれば、容器内で攪拌ヘッド(3)を排水のために回転させる過程における給排水口の目詰まりを防止することが出来る。
【0027】
更に他の具体的な態様において、前記演算処理手段には、前記濃度測定手段の出力値から得られる吸光度と、グミゼリーの細分化による表面積増加量との関係が、1次式の回帰式によって規定されている。
該具体的態様によれば、色素が溶出した水の吸光度とグミゼリーの表面積増加量との関係を、1次式の回帰式によって高い相関で表わすことが出来、これによって高い再現性を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る咀嚼能力測定装置によれば、測定台上の容器に対して咀嚼能力測定のための全ての工程を実施することが出来るので、全工程を完全に自動化することが可能であり、これによって測定時間を短縮することが出来ると共に、従来よりも更に高い精度の測定値を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明に係る咀嚼能力測定装置の外観を表わす斜視図である。
【図2】図2は、該咀嚼能力測定装置を側面から見た透視図である。
【図3】図3は、該咀嚼能力測定装置の流路系を表わす系統図である。
【図4】図4は、該咀嚼能力測定装置の構成を表わすブロック図である。
【図5】図5は、攪拌ヘッドの支持部の構成を表わす透視図である。
【図6】図6は、攪拌ヘッドの外観を表わす斜視図である。
【図7】図7は、電磁駆動装置の構成を表わす一部破断側面図である。
【図8】図8は、攪拌ヘッドを構成するヘッド下部材の側面図である。
【図9】図9は、攪拌ヘッドを構成するヘッド下部材の平面図である。
【図10】図10は、攪拌ヘッドを構成するヘッド下部材の底面図である。
【図11】図11は、攪拌ヘッドを構成するヘッド上部材の平面と断面を表わす図である。
【図12】図12は、攪拌ヘッドを構成する傘部材の平面と断面を表わす図である。
【図13】図13は、本発明に係る咀嚼能力測定装置の一連の動作の第1部を表わすフローチャートである。
【図14】図14は、本発明に係る咀嚼能力測定装置の一連の動作の第2部を表わすフローチャートである。
【図15】図15は、本発明に係る咀嚼能力測定装置の一連の動作の第3部を表わすフローチャートである。
【図16】図16は、測定セルの斜視図である。
【図17】図17は、測定ブロックに測定セルを設置した状態を表わす斜視図である。
【図18】図18は、容器内に攪拌ヘッドを降下させた状態を表わす一部破断側面図である。
【図19】図19は、容器内に攪拌ヘッドを降下させた状態を表わす一部破断底面図である。
【図20】図20は、測定用グミゼリーと細分化の様子を示す斜視図である。
【図21】図21は、測定用グミゼリーの分割数と表面積増加量との関係を示す図表である。
【図22】図22は、色素が溶出した水の吸光度とグミゼリーの表面積増加量との関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係る咀嚼能力測定装置は、咀嚼能力測定用食品として、測定環境に適応できる汎用性を有すると共に、将来的に食品開発の展開にも役立つ天然色素由来のカロチンを含有するグミゼリーを採用し、咀嚼後のグミゼリー咬断片の表面から溶出する色素濃度を光学的に測定し、測定された色素濃度から咀嚼能力評価値(咬断片表面)を導出するものである。
尚、グミゼリーとは、ゼラチンを含む食品であって、咀嚼により複数の咬断片に細分化することが可能なものをいう。
【0031】
咀嚼能力測定用食品となるカロチン色素を含有するグミゼリーは、例えば砂糖25、水飴15、マルトース25、ソルビトール6、含水ブドウ糖10、ゼラチン6、クエン酸1、オレンジ透明果汁6、オレンジ香料0.2、水5.3、カロチン色素0.5の組成を有し、所定形状、例えば21.1mm×21.1mm×9.0mmのブロック片(5.5g)に成型されている。このグミゼリーを被験者に30回自由咀嚼させたものを咀嚼能力測定対象(グミゼリー咬断片)とする。
【0032】
図1に示す如く、本発明に係る咀嚼能力測定装置(1)は、測定台(12)が設けられた筐体(11)を具え、測定台(12)上には、測定ブロック(4)が設置されている。該測定ブロック(4)には、測定室(41)が形成され、該測定室(41)を挟んで両側に、緑色(G)及び赤色(R)の発光ダイオードからなる2つの発光素子(42)(43)と、フォトダイオードからなる2つの受光素子(44)(45)とが対向配備されている。
【0033】
測定ブロック(4)の測定室(41)には、図16に示す測定セル(6)が設置される。測定セル(6)は、上部が開口したガラス製の光透過性容器(61)中に咀嚼後のグミゼリー咬断片(62)と水道水(63)とを収容したものである。
【0034】
図17に示す如く、測定ブロック(4)に測定セル(6)を設置した状態で、2つの発光素子(42)(43)と2つの受光素子(44)(45)は、光透過性容器(61)の上部を挟んで互いに対向することになり、G発光素子(42)から発せられた光は測定セル(6)を透過して受光素子(44)へ入射し、R発光素子(43)から発せられた光は測定セル(6)を透過して受光素子(45)へ入射して、それぞれ電圧に変換される。
【0035】
尚、各発光素子(42)(43)の中心波長と光度は次の通りである。
赤色(R):614〜628nm 87〜122mcd
緑色(G):520〜525nm 233〜333mcd
又、受光素子(44)(45)の受光波長は190nm〜1000nmであり、受光電圧を受光回路で増幅すると共に、温度補償回路によって温度補償を行なっている。
【0036】
図1の如く、測定ブロック(4)の上方位置には、攪拌ヘッド(3)が昇降及び鉛直軸回りの回転が可能に配備されており、攪拌ヘッド(3)はカバー(13)によって覆われている。
筐体(11)には、選択ダイヤル(14)、セットスイッチ(15)、ユニバーサルスイッチ(16)、電源スイッチ(17)等の入力操作部と、出力部となる液晶表示器(18)とが配備されている。
又、筐体(11)の側方には、温度調節器(21)を具えた恒温水槽(2)が配備されており、恒温水槽(2)は配管(22)を介して筐体(11)の内部へ繋がっている。
【0037】
筐体(11)の内部には、図2及び図3に示す如く流路恒温システム(7)が構成されている。
流路恒温システム(7)は、攪拌ヘッド(3)を昇降駆動する第1電動モータ(91)を具えたヘッド昇降機構(8)と、恒温水槽(2)内の水道水を吸入/吐出するシリンジポンプ(71)と、該シリンジポンプ(71)を駆動する第2電動モータ(92)を具えたシリンジ昇降機構(72)とを具えている。
【0038】
恒温水槽(2)の内部には、ヒータ(23)、温度センサ(24)、及び水位下限センサ(25)が配備されており、これによって、恒温水槽(2)には、常に一定温度範囲(38±1℃)の水道水が一定量だけ貯蓄されている。
恒温水槽(2)からの配管(22)は、筐体(11)の内部の電磁弁(74)を介して、第2の配管(76)と給水管(77)に分岐し、第2の配管(76)はシリンジポンプ(71)の出入口と繋がり、給水管(77)はY型継ぎ手(79)の一方の枝管を介して攪拌ヘッド(3)と繋がっている。又、Y型継ぎ手(79)の他方の枝管は排水管(78)を介してギアポンプ(73)と繋がっており、排水管(78)には、電磁弁(75)が介在している。
【0039】
攪拌ヘッド(3)を昇降駆動するヘッド昇降機構(8)は、図5に示す如く、昇降駆動されるべき支持ブロック(82)と、該支持ブロック(82)のU字溝(83)に係合するL字状のアーム(81)を具え、該アーム(81)の基端部(水平部分)には、支持ブロック(82)の前後両面に係合する2つの位置固定片(84)(85)が取り付けられている。そして、アーム(81)は、第1スプリング(86)によって後方に付勢されると共に、第2スプリング(87)によって下方に付勢され、これによってアーム(81)は、その軸回りの回転が許容された状態で、その軸方向及び上下方向の位置決めが行なわれている。
【0040】
アーム(81)の先端部(鉛直部分)には受け部材(89)が取り付けられ、該受け部材(89)は、断面U字状のガイド部材(88)に遊びをもって係合し、この状態でプランジャー(80)により左右方向の振れに対する減衰効果が与えられている。
受け部材(89)の下端部にはY型継ぎ手(79)が取り付けられており、Y型継ぎ手(79)には、攪拌ヘッド(3)が脱着可能に取り付けられる。
斯くして、攪拌ヘッド(3)は、ガイド部材(88)に対する受け部材(89)の遊びの範囲内で横方向の振動(アーム(81)の基端部を中心とする僅かな揺動)が可能に、支持ブロック(82)に支持されることになる。
尚、攪拌ヘッド(3)は、鉛直方向の外力を受けた場合、スプリング(87)が収縮若しくは伸張することにより、一定範囲内での上下動が可能である。
【0041】
攪拌ヘッド(3)は、図6に示す様に、ヘッド下部材(31)とヘッド上部材(32)と傘部材(33)とを互いに連結して構成されており、ヘッド下部材(31)は、鉛直下方へ突出する4本の攪拌子(30)を具えている。
【0042】
ヘッド下部材(31)の4本の攪拌子(30)は、図8〜図10に示す様に90度の位相差で円陣に配置され、その外周面は、前記測定セル(6)の光透過性容器(61)の内径よりも稍小さな外径を有する円筒面に形成されている。
各攪拌子(30)には、図10に示す様に4本の攪拌子(30)が配列されている円周線と交叉する2つの斜面(39)(39)が形成されている。
又、各攪拌子(30)の先端部には、図8に示す様に、4本の攪拌子(30)が配列されている円周線の内側の角部に、内側に向かって膨らむR曲面(38)が形成されている。
【0043】
図8に示す様に、各攪拌子(30)には、それぞれの先端部に、それぞれ2mmの内径を有する第1給排水口(34)と第2給排水口(35)が開設されている。第1給排水口(34)は、各攪拌子(30)の外周面に開口し、第2給排水口(35)は、攪拌ヘッド(3)が排水時に時計方向へ回転するときに各攪拌子(30)の後側(背面側)に位置することとなる斜面(39)に開口している。
両給排水口(34)(35)は、各攪拌子(30)の内部を経て、図9に示す如くヘッド下部材(31)の上面に凹設されている十字形の流路(36)へ繋がっている。
【0044】
図8及び図9に示す如く、攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)には、棒状のマグネット(37)が埋設されており、隣接する2つのマグネット(37)は互いに上下の極性が逆になっている。
【0045】
図11(a)(b)に示す様に、ヘッド上部材(32)は十字状を呈して、その中央部に貫通孔(32a)が開設されている。
又、図12(a)(b)に示す様に、傘部材(33)は四角錐台状を呈して、その中央部に貫通孔(33a)が開設されている。
【0046】
従って、図5に示す様にY型継ぎ手(79)に攪拌ヘッド(3)が連結されることにより、攪拌ヘッド(3)の全ての給排水口(34)(35)は、Y型継ぎ手(79)を介して、図3に示す給水管(77)と排水管(78)と連通することになる。
【0047】
図7に示す如く、測定台(12)には、攪拌ヘッド(3)と同軸上に、電磁駆動装置(5)が内蔵されている。電磁駆動装置(5)は、4本のマグネット(52)を円陣に配列した4極型マグネットプーリ(51)と、該4極型マグネットプーリ(51)を回転駆動する電動モータ(53)とから構成される。
尚、互いに隣接する2つのマグネット(52)は互いに上下の極性が逆になっている。
【0048】
電磁駆動装置(5)の電動モータ(53)は、パルス幅変調制御によって250rpm〜650rpmの範囲で回転数の設定が可能である。電動モータ(53)の駆動によって4極型マグネットプーリ(51)が回転すると、4本のマグネット(52)の回転に連れて、これら4本のマグネット(52)と攪拌ヘッド(3)の4本のマグネット(37)との間に反発力と吸引力が発生して、攪拌ヘッド(3)は4極型マグネットプーリ(51)の回転と同調して回転することになる。
斯くして、電磁駆動装置(5)によって攪拌ヘッド(3)を回転駆動する回転駆動機構が構成される。
【0049】
図4は、本発明に係る咀嚼能力測定装置の制御系を表わしており、前述の恒温水槽(2)に配備された水位下限センサ(25)及び温度センサ(24)、シリンジポンプ(71)やヘッド昇降機構(8)に配備された位置センサ(93)、発光素子(42)(43)、前述の入力操作部(94)、及び時間計測のためのタイマー(95)が、マイクロコンピュータからなる制御装置(9)の入力ポートに接続され、制御装置(9)の出力ポートには、前述の液晶表示器(18)、恒温水槽(2)に配備されたヒータ(23)、ヘッド昇降機構(8)、シリンジ昇降機構(72)、電磁弁(74)、ギアポンプ(73)、電磁駆動装置(5)、及び受光素子(44)(45)が接続されており、制御装置(9)による制御の下で後述の咀嚼能力測定動作が実行される。
【0050】
上記の咀嚼能力測定装置(1)においては、図3に示す如くY型継ぎ手(79)に攪拌ヘッド(3)を連結した状態で、ヘッド昇降機構(8)によって攪拌ヘッド(3)を昇降させ、攪拌ヘッド(3)を測定セル(6)の内部へ侵入させることが可能である。
又、この状態でシリンジポンプ(71)を動作させることによって、恒温水槽(2)の水道水を配管(22)(76)からシリンジポンプ(71)内へ一定量だけ吸引し、その水道水を給水管(77)からY型継ぎ手(79)を経て攪拌ヘッド(3)に導き、測定セル(6)に対する一定量の給水を行なうことが可能である。
【0051】
又、この状態でギアポンプ(73)を動作させることによって、測定セル(6)内の水を攪拌ヘッド(3)から排水管(78)へ吸引し、その水を排液として排出することが可能である。この際、攪拌ヘッド(3)は光透過性容器(61)の底部まで降下しており、各攪拌子(30)の先端部に給排水口(34)(35)が開口しているので、光透過性容器(61)内の水を全て排出することが出来る。
又、電磁駆動装置(5)の駆動によって、攪拌ヘッド(3)を回転させることが可能である。
【0052】
2つの発光素子(42)(43)からはそれぞれ、緑色(G)と赤色(R)の光が、1秒に50回の周期でパルス状に出射される。各発光素子から発せられた光は測定セル(6)を透過して受光素子(44)(45)に入射し、受光素子(42)からは、緑色及び赤色の波長毎に、測定セル(6)を透過した光の強さに応じた電圧が出力される。
尚、2つの発光素子(42)(43)からは、緑色及び赤色の波長毎に、1秒で50個の電圧データが得られるが、これらのデータを平均して出力電圧値とする。
【0053】
図13〜図15は、咀嚼能力測定動作のための一連の制御手続きを表わしている。
咀嚼能力の測定においては、図16に示す様に、予め、光透過性容器(61)の内部に咀嚼後のグミゼリーの咬断片(62)と水道水(63)を収容して、測定セル(6)を準備し、その直後に、測定セル(6)を測定準備の整った咀嚼能力測定装置にセットする。
【0054】
電源スイッチ(17)の操作によって電源が投入されると、先ず図13のステップS1では、恒温水槽(2)のタンク水量が充分であるか否かが判断され、ステップS2では、恒温水槽(2)のウォームアップが終了したか否かが判断される。
そして、ステップS3では、セットスイッチ(15)が押下されたか否かが判断され、イエスの場合はセット[SET]モードへ移行する。セットモードでは、各種の設定や確認を行なうことが出来、選択ダイヤル(14)の操作によって項目の選択を行ない、セットスイッチ(15)によって決定の操作を行なうことが出来る。
この様にして、咀嚼能力測定装置は測定準備が整うことになる。
【0055】
ステップS3でノーと判断されたときは、ステップS4にて測定ブロック(4)の測定室(41)に測定セル(6)が挿入されたか否かを判断する。このとき、前述の測定セル(6)が測定室(41)に挿入されると、ステップS4にてイエスと判断される。これによってステップS5に移行し、攪拌ヘッド(3)を時計方向に回転させつつ降下させる。
【0056】
そして、ステップS6では、攪拌ヘッド(3)の降下途中に攪拌ヘッド(3)を横方向に振動させる。攪拌ヘッド(3)が降下している過程では、攪拌ヘッド(3)と電磁駆動装置(5)との距離が大きいために、攪拌ヘッド(3)を一定の回転軸を保ったまま回転させる力が弱く、同極性のマグネットどうしが互いに反発する力に起因して脱調が生じ、これによって、攪拌ヘッド(3)には、前述の遊びの範囲内で、横振動が発生することになる。
この振動は、攪拌ヘッド(3)が光透過性容器(61)の底部に接近するに連れて小さくなる。これは、攪拌ヘッド(3)と電磁駆動装置(5)との距離が小さくなって、攪拌ヘッド(3)を一定の回転軸を保ったまま回転させる力が充分に強くなるためである。
【0057】
その後、ステップS7では、攪拌ヘッド(3)が光透過性容器(61)の底部に到着した時点で、攪拌ヘッド(3)の回転を停止させる。これによって、攪拌ヘッド(3)の横振動は完全に停止し、その後に電磁駆動装置(5)を動作させて攪拌ヘッド(3)を回転させれば、攪拌ヘッド(3)は一定の回転軸を中心として安定した回転を行なうことになる。
【0058】
続いてステップS8では、洗浄を1回だけ行なう設定となっているかどうかを判断し、ノーと判断されたときは、図14にステップS9に移行し、イエスと判断されたときは、図14のステップS14に移行する。
【0059】
図14のステップS9では、攪拌ヘッド(3)の時計方向の回転を開始し、ステップS10では、攪拌ヘッド(3)を回転させたまま、測定セル(6)からの排水を開始する。その後、排水が終了すると、ステップS11にて攪拌ヘッド(3)の回転を停止させる。
次にステップS12、S13では、25mLの洗浄水(水道水)を測定セル(6)に供給し、その後、ステップS14に移行する。
ステップS9による洗浄時間は5秒間に設定されている。
【0060】
ステップS14では、攪拌ヘッド(3)の時計方向の回転を開始し、ステップS15では、攪拌ヘッド(3)を回転させたまま測定セル(6)からの排水を開始する。排水が終了した後、ステップS16にて攪拌ヘッド(3)の回転を停止させる。
ステップS14による洗浄時間は5秒間に設定されている。
【0061】
続いて、ステップS17、S18では、25mLの計測水(水道水)を測定セル(6)に供給し、給水終了後、攪拌ヘッド(3)の回転を開始させる。
攪拌ヘッド(3)を一定時間(8秒間)だけ回転させて、測定対象である色素を水中に溶出させると共に、溶出した色素の濃度を均一化する。続いて、図15のステップS19に移行して、攪拌ヘッド(3)の回転を停止させ、ステップS20では、攪拌ヘッド(3)を上昇させ、5秒間の経過によって測定セル(6)内の咬断片を沈降させる。
尚、洗浄時間、溶出時間及び沈降時間は設定によって可変である。
【0062】
その後、ステップS21にて、発光素子(42)(43)を発光させ、受光素子(44)(45)の出力電圧を計測し、更にその電圧値から吸光度を算出し、その算出結果からグミゼリーの咬断による表面積増加量を導出し、ステップS22では、その表面積増加量を咀嚼能力測定値として液晶表示器(18)に表示する。
その後、図13のステップS3に戻って、新たな測定セル(6)の挿入に待機する。
【0063】
上記のステップS21における表面積増加量の導出は、予め回帰分析によって求められた、受光素子(44)(45)の出力電圧とグミゼリーの表面積増加量との関係を用いて行なわれる。
回帰分析においては、図20に示す様に、色素含有グミゼリーを均等に2分割、4分割、8分割、16分割、32分割、及び64分割して、表面積の異なる複数の試料を作製し、実測時と同じ条件で、各試料について受光素子の出力電圧の計測を行なった。そして、その計測値から吸光度を算出し、その算出結果と図21に示す各試料の表面積増加量との関係について回帰分析を施した。その結果を図22に示す。
【0064】
回帰分析の結果、例えば緑色(G)については、xを吸光度×10000、yを表面積増加量(mm)として、次の1次式による回帰式が得られた。
y=−0.6974x+856.66
尚、吸光度xは、咬断片と水を収容した測定セル(6)についての受光素子の出力電圧値Iと、水のみを収容した測定セル(6)についての受光素子の出力電圧値Ioから、次の関係式を用いて算出することが出来る。
x=−log10(I/Io)
【0065】
上記の回帰式の相関係数R2は0.996という極めて高い値を示しており、受光素子の出力電圧(吸光度)とグミゼリーの表面積増加量との間には極めて高い相関が認められた。
赤色(R)についてもほぼ同様の結果が得られた。
【0066】
そこで、この様にして得られた回帰式を図4に示す制御装置(9)に記憶させ、発光素子(42)(43)の出力電圧値からグミゼリーの咬断による表面積増加量を導出し、その値を咀嚼能力測定値として出力するのである。
【0067】
本発明に係る咀嚼能力測定装置によれば、測定セル(6)を測定台(12)上に設置したままの状態で、グミゼリー咬断片を一定時間だけ水洗する洗浄工程と、水洗後の咬断片を所定温度範囲の水中で一定時間だけ攪拌する攪拌工程と、攪拌後の咬断片を一定時間だけ水中に静置した後、受光素子の出力電圧を複数回に亘って測定し、その平均値を算出する濃度測定工程と、上記の回帰式を用いて受光素子の出力電圧をグミゼリーの咬断による表面積増加量に変換し、その値を咀嚼能力測定値とする測定値導出工程の、全ての工程を実施するので、全ての工程を完全に自動化することが出来、これによって測定時間の短縮を図ることが出来ると共に、手動操作に起因する誤差の解消によって精度の高い咀嚼能力測定値を得ることが出来る。
【0068】
洗浄工程において、攪拌ヘッド(3)を測定セル(6)内へ降下させるとき、攪拌ヘッド(3)を回転させると共に横方向に振動させるので、攪拌ヘッド(3)が測定セル(6)の光透過性容器(61)の底部へ到達する過程で、光透過性容器(61)の底面と測定セル(6)の下端面との間に、咬断片が噛み込むことが防止される。
【0069】
又、攪拌ヘッド(3)には、各攪拌子(30)の先端部の内側の角部に、R曲面(38)が形成されているので、図18及び図19に示す様に、攪拌ヘッド(3)が光透過性容器(61)の底部に至る過程で、各攪拌子(30)の下端面の下方に位置するグミゼリーの咬断片(62)が攪拌子(30)のR曲面(38)によって内側へ押し出される。従って、前述の攪拌ヘッド(3)の振動による効果と相俟って、攪拌子(30)の下端面と光透過性容器(61)の底面との間に咬断片(62)が噛み込むことが完全に防止される。
従って、図18及び図19に示す様に、攪拌ヘッド(3)の先端面が光透過性容器(61)の底面に当接する直前の位置(最低位置)まで、攪拌ヘッド(3)を降下させることが可能である。
【0070】
攪拌ヘッド(3)が最低位置まで降下することによって、全ての咬断片(62)は、攪拌ヘッド(3)の4本の攪拌子(30)によって包囲されることとなる。
尚、攪拌ヘッド(3)が降下する過程で、4本の攪拌子(30)の外周面と光透過性容器(61)の内周面との間には、僅かな隙間(0.5mm程度)が存在するに過ぎないので、該隙間に咬断片(62)が噛み込む虞はない。
この状態で、光透過性容器(61)内の咬断片(62)は攪拌ヘッド(3)の回転によって充分に攪拌されることとなる。ここで、攪拌ヘッド(3)の4本の攪拌子(30)は、仮にグミゼリーが咬断されることなく元の形状で光透過性容器(61)内に収容されていたとしても、これを包囲することが出来る。
従って、洗浄工程では、咬断片(62)の大きさや数に拘わらず、咬断片(62)の表面に付着した唾液や液体が完全に除去される。又、その後の攪拌工程では、咬断片(62)の表面から色素が充分に溶出することになる。
【0071】
この結果、濃度測定工程では、咀嚼による咬断片(62)の表面積の増加量に応じた色素濃度を測定することが出来、最終的に測定値導出工程では、精度の高い咀嚼能力測定値が導出されることになる。
特に、吸光度と表面積増加量の関係が1次式の回帰式により高い相関で規定されているので、更に高い測定精度が得られる。
【0072】
又、攪拌ヘッド(3)の各攪拌子(30)には、その外周面に第1給排水口(34)が開口すると共に、攪拌ヘッド(3)が排水時に時計方向へ回転するときに各攪拌子(30)の後側(背面側)に位置する斜面(39)に第2給排水口(35)が開口しており、攪拌ヘッド(3)を時計方向に回転させまま、測定セル(6)の排水を行なうので、第1給排水口(34)及び第2給排水口(35)に目詰まりが生じることはない。然も、給排水口(34)(35)は給水と排水の両方の動作に用いられるので、仮に排水時に咬断片が付着したとしても、給水時にその咬断片は除去される。
又、排水動作において、攪拌ヘッド(3)の給排水口(34)(35)は各攪拌子(30)の先端部、即ち光透過性容器(61)の底面付近にて開口しているので、光透過性容器(61)内の全ての水が排出されることになる。
【0073】
又、本発明に係る咀嚼能力測定装置を用いた咀嚼能力の測定によれば、いつでも、どこでも、だれにでも、簡単に咀嚼能力の測定を高い精度で、然も短時間(約1分間)で行なうことが出来るので、本発明の咀嚼能力測定装置を学校、医療機関、介護・福祉施設などに提供し、その結果を食事指導、歯科治療の効果判定、摂食・嚥下障害の診断、リハビリテーションなどの客観的評価に活用することによって、国民の健康増進とQOLの向上に貢献することが出来る。
【0074】
又、本発明に係る咀嚼能力測定装置によれば、日常食品であるグミゼリーを測定に用いていることから安全性が高く、然も、咀嚼の生理学的意義を忠実に数値評価することが出来る。従って、ヒトの生涯にわたるQOLやADLの充実に向けた身体と口の健康管理への支援が可能である。
【0075】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、回帰式は、受光素子の出力電圧値とグミゼリーの表面積増加量との関係を例えば3次式などの多項式によって規定したものであってもよい。咀嚼能力測定値としてはグミゼリーの表面積増加量に限らず、表面積増加量に応じた他の値、例えば表面積増加量に適当な演算処理を施して得られる値を採用することも可能である。
【0076】
攪拌ヘッド(3)としては、4本の攪拌子(30)を具えたものに限らず、3本若しくは5本以上の攪拌子(30)を具えたものを採用することが出来、この場合、攪拌子(30)の本数に応じた極数の電磁駆動装置(5)を採用する。
【0077】
又、図4に示す制御装置(9)には、プリンターを接続して咀嚼能力測定値を印字したり、USBコネクターを介してデータ処理用パーソナルコンピュータを接続して、咀嚼能力測定値に種々のデータ処理を施し、その結果を出力することも可能である。
【0078】
又、グミゼリーとしては、咀嚼によって細分化することが出来る食品としての種々のグミゼリーを用いることが出来る。又、グミゼリーに添加すべき色素としては、カロチン以外に、マリーゴールド色素やパプリカ色素を用いることが可能である。
更に、洗浄水及び計測水としては、水道水に限らず例えば蒸留水を用いることも可能であるが、水道水によっても充分な測定精度が得られることを確認している。
【符号の説明】
【0079】
(1) 咀嚼能力測定装置
(12) 測定台
(18) 液晶表示器
(2) 恒温水槽
(21) 温度調節器
(3) 攪拌ヘッド
(30) 攪拌子
(37) マグネット
(34) 給排水口
(35) 給排水口
(4) 測定ブロック
(41) 測定室
(42) G発光素子
(43) R発光素子
(44) 受光素子
(45) 受光素子
(5) 電磁駆動装置
(51) 4極型マグネットプーリ
(52) マグネット
(6) 測定セル
(61) 光透過性容器
(62) 咬断片
(63) 水道水
(7) 流路恒温システム
(71) シリンジポンプ
(72) シリンジ昇降機構
(73) ギアポンプ
(74) 電磁弁
(8) ヘッド昇降機構
(9) 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
咀嚼によって複数の咬断片に細分化することが可能な食品としてのグミゼリーに特定の色素を含有させてなる測定用のグミゼリーを用いて咀嚼能力を測定する装置において、
咀嚼後のグミゼリーの咬断片を収容するための容器と、
前記容器を設置するための測定台と、
測定台の上方位置に昇降及び鉛直軸回りの回転が可能に配備され、測定台上の容器の上部開口から容器内へ侵入させることが可能な攪拌ヘッドと、
攪拌ヘッドを昇降移動させるヘッド昇降駆動機構と、
攪拌ヘッドを鉛直軸回りに回転駆動するヘッド回転駆動機構と、
前記ヘッド昇降駆動機構とヘッド回転駆動機構の動作を制御する制御手段と、
測定台上の容器に対して一定温度範囲の水の供給と、容器内の水の排出を行なう給排水機構と、
測定台上の容器に収容されている咬断片から容器内の水中へ溶出した色素の濃度を測定する濃度測定手段と、
予め回帰分析によって求められている関係式を用いて、前記濃度測定手段の出力値からグミゼリーの表面積増加量若しくはこれに応じた量を導出し、導出された量を咀嚼能力の測定値とする演算処理手段
とを具えていることを特徴とする咀嚼能力測定装置。
【請求項2】
前記容器は光透過性を有し、前記濃度測定手段は、容器を透過する光を検知して光学的に濃度を測定するものである求項1に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項3】
前記攪拌ヘッドは、測定台上の容器の内部へ向けて突出する3本以上の攪拌子を有し、これらの攪拌子は、該容器の内周面に沿って円陣に配置され、容器内に収容されているグミゼリーの咬断片を攪拌ヘッドによって包囲することが可能である請求項2に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項4】
前記攪拌ヘッドの各攪拌子の先端部には、攪拌子が配列されている円周線の内側の角部に、R曲面が形成されている請求項3に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項5】
前記ヘッド回転駆動機構は、攪拌ヘッドの各攪拌子に埋設されたマグネットと、測定台に内蔵された電磁駆動装置とから構成され、該電磁駆動装置の回転によって攪拌ヘッドを回転駆動する請求項1乃至請求項4の何れかに記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項6】
前記電磁駆動装置は、前記攪拌ヘッドの攪拌子の本数に応じた数のマグネットを具えたマグネットプーリと、該マグネットプーリを回転駆動する電動モータとから構成される請求項5に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項7】
前記攪拌ヘッドは、回転及び降下中の横方向の振動が可能に配備され、電磁駆動装置によって攪拌ヘッドを回転駆動するときの脱調によって、攪拌ヘッドを横方向に振動させることが可能である請求項6に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項8】
前記攪拌ヘッドの各攪拌子の先端部には、攪拌ヘッドが容器内に侵入した状態で容器内へ水を供給し、若しくは容器内の水を排出するための開口が設けられ、該開口が前記給排水機構に繋がっている請求項1乃至請求項7の何れか記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項9】
前記攪拌ヘッドの各攪拌子には給排水口が開設され、前記給排水機構は、一定温度範囲の水が貯蔵された恒温水槽と、恒温水槽から攪拌ヘッドへ繋がる流路系と、該流路系に介在するポンプとを具え、該ポンプによって、恒温水槽内の水を攪拌ヘッドの各給排水口へ供給する給水動作と、測定台上の容器に侵入した攪拌ヘッドの各給排水口から容器内の水を排出する排水動作とが可能である請求項1乃至請求項7の何れかに記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項10】
前記攪拌ヘッドの各攪拌子は、容器内に侵入した状態で容器の内周面に対向する外周面と、排水時の攪拌ヘッドの回転方向に対して後方に位置する背面とを有し、各攪拌子の先端部に2つの給排水口が開設され、第1の給排水口は、各攪拌子の外周面に開口し、第2の給排水口は各攪拌子の背面に開口している請求項9に記載の咀嚼能力測定装置。
【請求項11】
前記演算処理手段には、前記濃度測定手段の出力値から得られる吸光度と、グミゼリーの細分化による表面積増加量との関係が、1次式の回帰式によって規定されている請求項1乃至請求項10の何れかに記載の咀嚼能力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−45196(P2012−45196A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190603(P2010−190603)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】