説明

和室床構造及び和室床の気密改修方法

【課題】和室内への外気の侵入又は和室内の空気の床下への流出を抑制するとともに湿気を床下へ排出することを可能とする和室床構造及び気密改修方法を提供する。
【解決手段】隙間を空けて敷き並べられた荒床板5の上に透湿性と気流の遮断性を有したシート部材6を敷設する。畳7が敷き詰められる範囲の端縁では、畳の端面と当接する部材、例えば柱9、畳寄10、敷居12の鉛直面に沿ってシート部材を立ち上げ、柱、畳寄、敷居等の側面に粘着テープ15で固定する。荒床板の上に設けられた畳寄や敷居の下方には隙間13,14があり、これらの隙間にはシート部材の端縁を一旦押し込んだ後、反転して隙間から引き出し、引き出された上端部を畳寄又は敷居に沿って立ち上げて固定する。なお、立ち上げられたシート部材の上端部は畳の表面より下方となるように固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、通気を制限するとともに、湿気を床下に排出することが可能となる和室床構造及び和室床の気密改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会に向けて二酸化炭素の排出量の削減が要請されており、住宅においても二酸化炭素の排出量を低減できる省エネルギー住宅の建築が推進されている。新築住宅に関しては、気密化の促進又は断熱性能の向上等による省エネルギーを目的とした住宅が多く建築されている。しかし、旧来の住宅に関しては、断熱性又は気密性が低いために暖房や冷房のエネルギー効率が悪い住宅が多く存在している。特に、畳が敷き詰められた和室では、床部分の気密性が低くなっているものが多い。
【0003】
このような和室の気密改修方法が、例えば非特許文献1に提案されている。これは、通気を許容するように根太の上面に間隔を空けて荒床板が敷き並べられ、この荒床上に畳を敷きつめた既存木造住宅の和室について改修を行うものであり、荒床板を合板に替えるとともに合板のジョイントに気密テープを張って合板間の隙間を塞ぐものである。また、荒床板と敷居間等の隙間に断熱材を充填する等の気密改修方法も提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国土交通省 国土技術政策総合研究所、独立行政法人 建築研究所監修 「既存住宅の省エネ改修ガイドライン」 財団法人建築環境・省エネルギー機構 平成22年7月6日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように合板間の隙間や畳と敷居間の隙間を閉塞すると気密性は向上するが、床から湿気を屋外に排出することができず、室内と屋外との温度差により畳の裏に結露を生じやすくなる。また、既存住宅の改修においては、短時間で改修を終了することにより当該住宅に住んでいる居住者の肉体的及び精神的負担を軽減することが望まれる。
【0006】
本願発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易かつ短時間の施工で、室内と屋外との間の通気を抑制するとともに湿気の床下への排出を可能とする和室床構造及び和室床の気密改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 所定の間隔で設けられた根太の上に、複数の板材がそれぞれの板材間に通気が生じる程度の隙間を設けて敷き並べられた荒床と、 該荒床の上に敷きつめられる畳と、を有する和室床構造であって、 透湿性と気流の遮断性を有したシート部材が前記板材の上に敷設され、該シート部材の上に前記畳が敷きつめられており、 前記畳が敷きつめられる領域の端縁では、前記シート部材が前記板材と前記畳との間から連続し、前記畳の端面と対向するように設けられた畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げられ、 前記シート部材の立ち上げられた部分の上端部は、前記畳の表面よりも下方の位置で前記畳寄に粘着テープで固定されていることを特徴とする和室床構造を提供する。
【0008】
この和室床構造は、隙間を設けて敷き並べられた板材上にシート部材が敷設されているので、板材間に生じる通気を制限することができる。また、畳の下側から連続して畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げられて畳寄に固定されるので、和室の周縁部つまり敷きつめられた畳と畳寄との隙間に生じる通気を制限することができる。したがって、暖房時には床下からの冷気の和室内への侵入及び暖められた室内空気の床下への流出を低減することができる。また、冷房時には暖気の侵入及び冷気の流出を低減することができる。
さらに、シート部材が透湿性を有しており、畳の下面から湿気を床下に排出することができ、結露を抑制するとともに、結露が生じても湿気が畳の下側に滞留するのを低減することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の和室床構造おいて、 前記シート部材は、前記畳の下側から前記畳寄の下側に進入し、該畳寄の下側で反転して該畳寄の下側から引き出され、前記畳寄の前記畳の端面と対向する面に沿って鉛直方向に立ち上げられるものとする。
【0010】
この和室床構造では、和室の周縁部に設けられた畳寄と板材との隙間にシート部材がループ状にして押し入れられており、シート部材が板材上で水平方向に移動するのが許容される。したがって、畳を敷き並べるとき等において、シート部材が畳とともに水平方向に移動しても、シート部材及びシート部材が畳寄に固定された部分に引張力が作用するのを抑制することができる。これにより、シート部材による通気の抑制が損なわれるのを防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の和室床構造において、 前記シート部材の透湿抵抗値は0.19m・s・Pa/μg以下であり、防風性が10s以上であるものとする。
【0012】
この和室床構造のシート部材は、透湿抵抗値及び防風性が調整されたものである。
透湿抵抗とは水蒸気を透過する程度をいい、透湿抵抗値が高いほど湿気を通しにくく、透湿抵抗値が小さいほど湿気を通しやすくなる。一方、防風性とは、透気抵抗度のことであり、単位面積、単位圧力差あたりの規定された体積の空気が通過する時間で示され、数値が大きいほど防風性が高いことを示すものである。
したがって、透湿抵抗値の上限と防風性の下限を調整したシート部材を畳の下の隙間を塞ぐように敷設することにより、床下からの外気の和室内への侵入や和室内の空気の床下への流出を抑制するとともに、湿気の床下への排出を可能とする。これにより、和室の気密性を向上させるとともに畳の裏面の結露を抑制することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、 既存木造建築物の和室床の気密性を向上させる気密改修方法であって、 複数の板材がそれぞれの板材間に通気が生じる程度の隙間を設けて敷き並べられている荒床上に、透湿性と気流の遮断性を有するシート部材を敷設し、 該シート上に畳を敷きつめるものとし、 前記シート部材は、前記畳が敷きつめられる領域の端縁で、前記板材の上面に沿った位置から連続し、前記畳の端面と対向するように設けられた畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げ、 前記シート部材の立ち上げられた部分の上端部を、前記畳の表面よりも下方の位置で前記畳寄に粘着テープで固定することを特徴とする和室床の気密改修方法を提供する。
【0014】
この気密改修方法では、シート部材を板材上に敷設した後、畳の下側となる部分から連続して畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げ、畳寄に固定するので、板材間の隙間及び畳と畳寄との間の隙間等を通る通気を制限し、床下からの外気の和室内への侵入及び室内空気の床下への流出を低減することが可能となる。したがって、空気調和のためのエネルギー効率を向上させることとなり二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、湿気を畳の下面から床下に排出することができ、屋外と室内の温度差による結露を抑制するともに、結露が生じても畳の下に湿気が滞留するのを低減することが可能となる。
さらに、この気密改修方法は、短時間の作業及び低廉なコストで改修工程が終了するので、居住者の負担が軽減されるとともに低費用による良好な効果が得られる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本願発明に係る和室床構造及び気密改修方法では、簡易かつ短時間の作業で、和室内への外気の侵入又は和室内の空気の床下への流出を制限し、暖房等のエネルギー効率を向上させることが可能となる。また、湿気の床下への排出が可能となり、和室の気密性の向上及び室内と屋外との温度差により生じる結露の抑制を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の一実施形態である和室床構造を備えた和室の一部を示す概略斜視図である。
【図2】本願発明の一実施形態である和室床構造の概略断面図である。
【図3】本願発明の一実施形態である和室床構造の敷居が設けられた部分の概略断面図である。
【図4】図2又は図3に示す和室床構造における和室の周縁部の柱が設けられた部分を示す概略断面図である。
【図5】本願発明の他の実施形態である和室床構造を示す概略断面図である。
【図6】改修前の和室床構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本願発明の一実施形態である和室床構造を備えた和室の一部を示す概略斜視図であり、図2は部分断面図である。
この和室床構造では、図1及び図2に示すように、基礎1の上に支持された土台2又は大引3に根太4が支持され、この根太4の上に板材である荒床板5を通気が損なわれない程度の隙間を空けて敷き並べられている。そして、この荒床板5と根太4とによって形成された荒床の上に透湿性及び気流の遮断性を備えたシート部材6を敷設し、このシート部材6の上に畳7が敷きつめられている。
【0018】
上記根太4は、土台2又は大引3の上に載せ掛けるように支持され、所定の間隔で配置されている。そして、荒床板5は根太4の上に敷き並べられて固定され、複数の荒床板5間に1mmから15mm程度の隙間が設けられている。そして、部屋の端縁では荒床板5が壁面8aより壁8の中心側にまで突き入れられている。
【0019】
本実施形態の和室の壁8は、柱9の壁厚方向の寸法内で仕上がるいわゆる真壁仕様となっており、壁面8aが室内17に対して柱9の面より後退した位置となっている。壁8の下方には畳の端面と対向する畳寄10が設けられており、この畳寄10の側面と柱9の側面とはほぼ同一の鉛直面上に位置するものとなっている。したがって、畳7の端面が畳寄10の側面に当接するように敷き詰められたときに、柱9が設けられた位置では畳7が柱9に当接している。また、襖11や障子(図1には図示していない)が設けられる部分では、図3に示すように、柱間に敷居12が配置され、畳7の端面はこの敷居12の側面に対向するものとなっている。
【0020】
上記畳寄10は、上面の高さが敷き詰められた畳7の上面の高さとほぼ一致するように設けられており、畳寄10の下面と荒床板5の上面との間には隙間13が形成されている。また、敷居12も上面が畳7の上面とほぼ同じ高さとなるように調整して設置されており、敷居12の下面と荒床板5の上面との間には隙間14が生じている。
なお、壁面材は上記畳寄10の上面に下端縁を当接し、柱9もしくは間柱又はこれらの間に取り付けられた胴縁等に固定される。
【0021】
上記シート部材6は、ポリエチレンの極細長繊維をランダムに積層した不織布で形成されており、透湿性及び気流の遮断性を備えたものである。
このシート部材6は、上記荒床板5の上の畳7が敷きつめられる全領域に敷設される。そして、和室の周縁部つまり畳7が敷きつめられる範囲の端縁では、図2に示すように荒床板5と畳寄10との隙間13に、畳7の下側から連続するシート部材6がループ状に曲折して押し込まれている。ループ状となった上側は、隙間13から引き出されたところで、畳寄10の側面に沿って鉛直方向に立ち上げられている。つまり、シート部材6は畳7が敷き詰められた和室内の領域から連続して 荒床板5と畳寄10との隙間13に入り込み、畳寄10の下側で反転して隙間13から引き出されて畳寄10の側面に沿って鉛直方向に曲げ上げられる。曲げ上げられたシート部材6の上端部は、畳寄10の側面に粘着テープ15で固定されている。
なお、シート部材6の立ち上げられた上端部の位置は、畳7の表面よりも下方となっており、畳7が敷かれた室内からは見えないようになっている。
【0022】
敷居12が設けられた周縁部では、図3に示すように、敷居12と荒床板5との隙間14に、畳寄10と荒床板5との隙間13と同様にシート部材6がループ状にして押しいれられており、隙間14から引き出されたシート部材の端縁が敷居12の側面に固定されている。
また、柱9が設けられた位置では、畳寄10又は敷居12が設けられた範囲との境界位置に、畳寄10又は敷居12の軸線と直角方向の切り込みがシート部材6に設けられる。この切り込みで切り分けられた部分6aが、図4に示すように柱9の側面に沿って鉛直方向に折りたたまれ、上端縁が柱9の側面に固定されている。
【0023】
上記シート部材6としては、透湿抵抗値が0.19m・s・Pa/μg以下で、かつ防風性が10s以上であるものを用いるのが望ましい。上記のような透湿抵抗値の上限と防風性の下限が調整されたものであれば、床下16から外気が和室内へ侵入するのを制限して、空気調和のための効率を著しく劣化させない程度にすることができるとともに、畳7の裏面に結露による障害が生じない程度の透湿性を備えたものとなる。
なお、上記透湿抵抗値はJIS A 1324に規定されたカップ法により測定したものであり、上記防風性はJIS P 8117に規定された試験方法により測定したものである。
【0024】
このようなシート部材6は、ポリエチレン以外にもポリプロピレン等からなる繊維をシート状にして形成することもできる。また、本実施の形態に係るシート部材6に限定されるものではなく、透湿抵抗値及び防風性が調整されたものであれば他のシート部材を用いることもできる。例えば、透湿防水シートとして市販されている旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ株式会社製、商品名「タイベック ハウスラップ」等を使用することができる。このような透湿防水シートは、建築物の外壁に設けられる通気層の内側に貼付され、湿気を外壁から屋外に排出するとともに、雨水等の侵入を防ぐものとして用いることができるものである。
【0025】
畳7は上記のようにシート部材6が敷設された上に敷き詰められており、和室の周縁部における畳7の端面は、畳寄10、敷居12又は柱9の側面と対向している。しかし、畳7の端面は正確に平坦な面とはなっておらず、畳と畳との間及び畳と畳寄との間には通気が生じる程度の隙間が生じている。
【0026】
このような和室床構造において、荒床板5間の隙間又は壁8の下部を通り、上記畳7と畳7との間又は畳7と畳寄10との間を経て生じる通気がシート部材6によって制限されている。つまり、図2中の矢印Aで示すように床下16から根太4の間を通って壁8内に入り、荒床板5と畳寄10との隙間13及び畳の端面と畳寄10との間を通って室内17に至る通気が、畳7の下側から連続して畳寄10の側面に固定されたシート部材6によって遮蔽される。また、荒床板5の隙間18から畳7の端面と隣り合う畳7の端面との隙間を通って室内17に至る通気が、畳7の下面と荒床板5との間に介挿されたシート部材6によって制限される。
また、シート部材6は透湿性を有するものであることにより、畳7の下側の湿気を床下16に排出することができる。したがって、室内17で暖房を使用することにより屋外と室内とで気温差が生じたときに、畳7の下側で結露が生じるのを抑制するととともに、結露が発生した場合にも、荒床板5間の隙間18から湿気を床下16に排出することができる。
さらに、畳寄10又は敷居7の下側の隙間にシート部材6が押し入れられることにより、シート部材6はゆとりをもって敷設されることとなる。これにより、シート部材6に引張力が作用することが抑制される。
【0027】
次に、上記シート部材6を用いて和室床の気密性を改修する方法を説明する。
この気密改修方法は、既存木造建築物の和室の気密性を向上させるとともに、結露による障害の発生を抑制するものであり、特に、図6に示すように根太4の上に荒床板5を配列した荒床を有する床構造を、上記シート部材6を用いた和室床構造に改修するものである。
改修前の床構造は、基礎1上の土台2又は大引に根太4が支持され、この上に荒床板5が隙間を設けて配列されている。そして、この上に畳7が敷き並べられている。このような床構造では、図6中に矢印Bで示すように、荒床板5の隙間18及び畳7と隣接する畳7との隙間に生じる通気や、図6中に矢印Cで示すように、床下16から根太4の間を通り、壁内から荒床板5と畳寄10との隙間13を経て室内17に至る通気が生じ易くなっている。
【0028】
このような既存木造構造物の和室床の改修は次のような工程で行うことができる。
まず、和室に敷かれている畳7を上げ、荒床板5の上を清掃して畳7が敷きつめられる領域に前述のシート部材6を敷設する。シート部材6は、幅1m程度としてロール状に巻かれたものを使用することができる。このようなロール状のシート部材を用いるときには、和室の荒床上の全域を覆うようにシート部材を敷き並べ、幅1mのシート部材が互いに隣り合う部分では双方のシート部材を100mm程度重ね合わせる。そして、荒床の周縁部では、畳7が敷き詰められる範囲の周縁より、上方に立ち上げられる部分の長さを確保して切断する。つまり、畳寄10や敷居12等の下側の隙間13,14内に押し込むシート部材6の長さ、及びシート部材6を畳寄10や敷居7の側面に沿って立ち上げる長さを考慮して切断する。
【0029】
畳寄10や敷居12等が設けられている範囲は、上記シート部材6の端部をループ状にして畳寄10、敷居12等の下側の隙間13,14に押し込み、ループ状となった上側のシートを隙間13,14から引き出して畳寄10、敷居12等の側面に沿って上方に立ち上げる。この立ち上げた上端部11aを畳寄10又は敷居12の側面に粘着テープ15で固定する。固定するシート部材6の上端縁は、畳7の上面より低い位置とし、畳7を敷き詰めたときにシート部材6が見えないようにする。上記粘着テープ15で固定することにより、シート部材6の外側つまりシート部材6と畳寄10との間から室内17へ通気が生じるのを遮断する。
【0030】
畳寄10や敷居12の下側にこれらを支持する部材等が設けられて、畳寄10や敷居12の下側にシート部材6を押し入れることができない部分では、当該部分の両側に畳寄10や敷居12の軸線と直角方向の切り込みを設け、畳寄10や敷居12の下側に押し入れることができる範囲と分けて上方に立ち上げ、上端部を同様に固定する。
また、畳8の端面が柱9と対向する部分でも同様に柱9の位置の両側に切り込みを設け、畳寄10や敷居12が設けられた範囲と分けて、図4に示すようにシート部材6の端部を立ち上げ、柱9の側面に固定する。
上記のように切り込みを設けた部分では、この部分から通気が生じるのを防ぐように、粘着テープ等でシート部材6を柱等に貼り付けるのが望ましい。
【0031】
このようにして、畳7が敷かれる全領域にシート部材6を敷き並べた後、シート部材6の重ね合わせた部分をタッカー等で荒床板5に打ち付け、重ね合わせた部分からの通気を防ぐ。そして、敷設されたシート部材6の上に畳7を敷き並べて改修を完了する。
【0032】
なお、本願発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
例えば、本実施の形態では、真壁仕様の和室床構造及び気密性改修方法を説明したが、図5に示すように、壁28を柱29の壁厚方向の範囲外で仕上げる大壁仕様、つまり壁面が柱29の側面より室内側となった和室にも適用することができる。
大壁仕様の和室の場合は、壁28の下方に設けられた畳寄30が柱29の室内に面した側面より室内37側に突き出して設けられる点で真壁仕様と異なっているが、畳寄30や敷居(図5には図示しない)の下方には多くの場合に隙間33がある点では真壁仕様と同様である。したがって、畳27と荒床板25との間にシート部材26を敷設するとともに、真壁仕様と同様に畳寄30の下側の隙間33にはシート部材26をループ状にして押し込み、畳寄30の鉛直面に沿って立ち上げられた部分の上端縁を畳寄30に粘着テープ35で固定することができる。
【0033】
また、床の間や飾り棚等が設けられた和室の場合にも、本発明の和室床構造及び気密改修方法を採用することができる。
床の間や飾り棚は多様なものがあるが、床の間又は飾り棚が設けられた位置でも畳7、27の端面と対向する部分には、畳7,27の端縁に沿って横方向の部材が設けられ、畳の端面がこの部材の鉛直面と対向するものとなる。したがって、この部分でもシート部材6,26を畳7,27の下側から畳の端面と対向する鉛直面に沿って立ち上げ、畳7,27の上面より下方で室内から見えないように固定することができる。
【0034】
さらに、本実施の形態では荒床板5、25と畳寄10,30または敷居12との間に存在する隙間13,33,14に、シート部材6,26を挿入したあと反転させて畳寄10,30又は敷居12に沿って立ち上げて固定する構成としたが、畳寄10,30又は敷居12の下側の隙間にシート部材6,26を挿入することなく、荒床板5,35上から連続して畳寄10.30又は敷居12等の側面に沿って立ち上げて固定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,21:基礎、 2,22:土台、 3:大引、 4,24:根太、 5,25:荒床板、 6,26:シート部材、 7,27:畳、 8,28:壁、 9,29:柱、 10,30:畳寄、 11:ふすま、 12:敷居、 13,14,33:隙間、 15,35:粘着テープ、 16,36:床下、 17,37:室内、 18:荒床板の隙間、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で設けられた根太の上に、複数の板材がそれぞれの板材間に通気が生じる程度の隙間を設けて敷き並べられた荒床と、
該荒床の上に敷きつめられる畳と、を有する和室床構造であって、
透湿性と気流の遮断性を有したシート部材が前記板材の上に敷設され、該シート部材の上に前記畳が敷きつめられており、
前記畳が敷きつめられる領域の端縁では、前記シート部材が前記板材と前記畳との間から連続し、前記畳の端面と対向するように設けられた畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げられ、
前記シート部材の立ち上げられた部分の上端部は、前記畳の表面よりも下方の位置で前記畳寄に粘着テープで固定されていることを特徴とする和室床構造。
【請求項2】
前記シート部材は、前記畳の下側から前記畳寄の下側に進入し、該畳寄の下側で反転して該畳寄の下側から引き出され、前記畳寄の前記畳の端面と対向する面に沿って鉛直方向に立ち上げられることを特徴とする請求項1に記載の和室床構造。
【請求項3】
前記シート部材の透湿抵抗値は0.19m・s・Pa/μg以下であり、防風性が10s以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の和室床構造。
【請求項4】
既存木造建築物の和室床の気密性を向上させる気密改修方法であって、
複数の板材がそれぞれの板材間に通気が生じる程度の隙間を設けて敷き並べられている荒床上に、透湿性と気流の遮断性を有するシート部材を敷設し、
該シート上に畳を敷きつめるものとし、
前記シート部材は、前記畳が敷きつめられる領域の端縁で、前記板材の上面に沿った位置から連続し、前記畳の端面と対向するように設けられた畳寄に沿って鉛直方向に立ち上げ、
前記シート部材の立ち上げられた部分の上端部を、前記畳の表面よりも下方の位置で前記畳寄に粘着テープで固定することを特徴とする和室床の気密改修方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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