説明

和紙製ナプキン

【課題】 ナプキン本体とライナーで構成し、着用時の肌当りが良好で経血又は尿を十分に吸収することが出来る和紙製ナプキンの提供。
【解決手段】 ナプキン本体は肌に接する側の上生地8と反対側の下生地9の周囲を縫い付けすると共に、上記下生地9の中央部にはスリット6を設け、該スリット6から上下生地8,9間に吸収材を内部に収容したライナー10を出し入れ可能としたもので、少なくともナプキン本体の上記上生地8は和紙製糸を用いて編織し、そして表面を毛羽立たせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は和紙から成る糸を使用して構成したもので、着用する場合の違和感を無くした和紙製ナプキンに関するものである。ところで、本発明が対象とするナプキンは生理用としてのみならず、失禁用として用いることも出来る。
【背景技術】
【0002】
一般的に使用している生理用ナプキンは使い心地が良いように薄くて吸収力に優れているが、これらの多くは製造過程や製品自体に石油系化学合成物質を使用している。例えば、表面にはポリエステルやポリプロピレン等の不織布、吸収材には綿状パルプや高分子吸収体が使われている。
【0003】
そしてこれらは大量のゴミと成ってダイオキシン発生源となるばかりか、敏感な腟周辺の皮膚呼吸を妨げ、カブレ、カユミの原因となり、さらに粘膜で覆われている女性器に長期間にわたって触れさせることに関して人体への影響が懸念される。薬理成分は皮膚に塗ったり、湿布したりすることで吸収されるように、生理用ナプキンの有害物質を長年にわたって吸収し続け、生命創造の根源である子宮がダイオキシンやその他の化学物質で汚染される心配がある。
【0004】
又、従来の紙ナプキンや吸収材の多くは便利な使い捨てタイプであり、一度の使用をもって使い捨てられている。一人の女性は10代から50代まで生理があって、この間に約1万個以上の生理用ナプキンが使い捨てられることになり、地球上の資源の枯渇が叫ばれている中、生理用ナプキンを製造する為に世界の森林が次々となぎ倒されていく。
【0005】
従来より、洗濯して何度も再使用の出来る生理用ナプキンも存在しており、これにはオーガニックコットンが使用されている。しかし、日本では原料の綿花を自給出来ずに綿花の供給を外国からの輸入に依存している現状がある。さらには、オーガニックコットンの使用をうたっている製品の中には、製造から日本に輸入され販売されるまでの間には製品に何らかの化学的な処理が施されている疑いもあり、安全な生理用ナプキンとは言い切れない。何故なら、国内での使用の実情を調査すると、オーガニックコットンを用いた生理用ナプキンの使用時に女性器のカブレやカユミを訴えている人が数多く存在している。
【0006】
発明者は以前に和紙で作った糸を編製した生地を用いた生理用ナプキンを開発し、平成12年7月28日付けで特許出願を行っている(特開2002−35035)。この生理用ナプキンは人体の動きにフィットして経血を効率良く吸収出来ると共に、化学合成物質を含まずして生分解が可能で地球上の生命系に無害な生理用ナプキンである。
【0007】
すなわち、ナプキン本体と吸収材を収容しているライナーで構成し、ナプキン本体の肌に接する側の上生地は和紙製糸を使用して編織した生地から成り、下生地の中央にはスリットを設けて収容部にライナーを入れ、ナプキン本体をパンツにセットすると共に、両側に形成した羽根部を下側に折り曲げて互いに止着される。
【0008】
ところで、ナプキン本体を構成している上生地は肌に接することになるが、和紙製糸を用いて編織した生地であることから肌当りが好ましくない。すなわち、多少ゴワゴワした感があり、着用には違和感が残る。又、経血を十分に吸収することが出来ずに肌に少し残る場合がある。このことは、生理時の経血のみならず、失禁した場合の尿の吸収に関しても同じように問題となる。
【特許文献1】特開2002−35035号に係る「生理用ナプキン」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように従来の生理用ナプキン及び失禁用ナプキンには上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、経血や尿を効率よく吸収することが出来、又自在に変形して人体の動きにピッタリとフィットして着用にも違和感が無く、さらに洗濯して何度も再使用することが出来、さらに化学合成物質を含まずして生分解が可能で地球上の生命系に無害な和紙製ナプキンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るナプキンはその素材を和紙とした点に特徴がある。和紙の原料は植物の靭皮繊維であり、この靭皮繊維と人の皮膚には共通点がある。植物の茎の周囲を取り巻く外皮の約1/3以上を失うと植物は死んでしまうと言われるが、人の皮膚も約1/3以上を火傷などで失うと死んでしまう。すなわち、植物の外皮も人の皮膚も失う限界が1/3である点が共通し、それ以下であれば死なずに回復することが出来る。
【0011】
この事実から植物の外皮も人の皮膚もそれぞれの生命力に大事な部分であることが解り、又植物の外皮にある靭皮繊維を人が皮膚のように纏うことが如何に整合性のある選択であることかが理解できる。本発明に係るナプキンは昔から馴染み深く人体にとって無害で天然の和紙を素材として製作した和紙製糸を使用した編織生地、あるいは和紙製糸を使用して編成した丸編生地を用いている。ナプキンにも色々あるが、本発明ではナプキンの形状・構造は特に限定しないこととし、少なくとも肌に接する上生地は和紙製糸を用いた編織生地が使用される。
【0012】
ところで、和紙製糸は和紙を細長く裁断して適当な撚りを加えることで製造される。この和紙製糸を湯通し処理したりギアー状ロールを通すことで柔らかくし、又摩擦抵抗を小さくする為にワキシング処理を施すことも出来る。この和紙製糸は吸水能力が綿糸に比較して約3倍ほど勝り、さらに和紙製糸を編織物とすることでその表面観は3次元的立体様相を成すことが出来る。
【0013】
表面が3次元立体となることで、隙間が経血や尿の通過道となり、経血や尿はスムーズに誘導されて和紙製糸に吸収され、編織生地に生じる隙間にも経血や尿が吸着する。又編織生地の編織の形態によっては、該編織生地に生じる隙間に吸着される経血や尿により強い表面張力を働かせ、安定してより効率良く経血や尿を吸着させることが可能である。
【0014】
一方、和紙製糸を用いた編織生地、又は和紙製糸を使用して編成した丸編生地を加工した本発明のナプキンは自在に変形して人体にフィットし、身体の動きに対しても柔軟に追従することが出来る。さらに洗濯して何度となく再使用することが可能であり、生分解が可能で地球上の生命系に無害であって、化学合成物質を含まない。さらに、本発明では少なくとも肌に接する上生地には起毛することで毛羽立たせて着用感を向上させている。ここで、起毛の具体的な手段は問わないが、起毛することで空気が溜まる層が形成される。
【発明の効果】
【0015】
和紙は人体に有害と言われる石油化学系の化学合成物質を含んでいない為に、該和紙製糸から成る編織生地を使用した本発明のナプキンは人体に無害である。そして土中に廃棄処分しても自然界で分解され、自然界の生命系にも無害である。又和紙製糸を用いた編織生地から成るナプキンは強度があり、弾力性があり、又柔軟性があり、さらには通気性に優れている。
【0016】
しかし素材が和紙である為に経血や尿を効率よく吸収することが出来、経血や尿を吸収した状態でも人体の動きに応じて柔軟にフィットすることが出来る。特に、起毛することで繊維の一本、一本が肌に接し、経血や尿は毛管現象によって吸収される。そして、起毛することで上生地表面積全体が柔らかくなり、一層肌に優しいナプキンとなる。又、起毛することで上生地が削られて2割程度薄く感じるが、しかし起毛によって空気層が形成され、肌との接触部分が温かく、冷え性の女性には適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ライナーの具体例。
【図2】ライナーの展開図。
【図3】ナプキン本体の具体例。
【図4】ナプキン本体の展開図。
【図5】生理用ナプキンの着用状態。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の生理用ナプキンを構成するライナー示している実施例である。このライナーの外形形状は従来の生理用ナプキンと大差はなく、又同図に示す形状に限定するものではないが長円形を成している。そしてライナーは図2に示しているように上生地1と下生地2、及び吸収材3を有し、吸収材3は図1に点線で示しているように上下生地1,2より一回り小さくなっている。そして吸収材3は上生地1と下生地2との間に挟まれて上下生地1,2はその外周部が止着されている。止着手段は任意であるが、一般には縫い合わせされる。
【0019】
ここで、上生地1及び下生地2は和紙製糸を使用して編織した生地であり、これを長円形に裁断して用いられる。又上記吸収材3も和紙製糸を用いて編織した生地が使用され、上下生地1,2に挟まれる吸収材3の枚数は経血の量に応じて選択することが出来る。すなわち、吸収材3の枚数を異にしたライナーを準備しておけばよく、生理時の経血量に応じて適当なものを使用することが出来る。
【0020】
図3は本発明の生理用ナプキンを構成するナプキン本体を示している実施例であり、このナプキン本体に前記図1に示しているライナーを収容して使用する。同図の点線は収容したライナーを示している。ナプキン本体は長円形の収容部4とその両側に羽根部5a,5bを設けており、図4に示しているように上生地8と下生地9から成り、上下生地8,9は周囲が縫い合わされている。そして下生地9の中央には縦方向にスリット6が形成され、このスリット6は開くことが出来る。
【0021】
ナプキン本体はその外周部が縫い合わされていて、上下生地8,9間にはライナー10が収容されるが、このライナー10はスリット6から出し入れ可能となっている。又羽根部5a,5bの先端には粘着テープ(マジックテープ)7a,7bが設けられ、両羽根部5a,5bは互いに連結することが出来る。
【0022】
すなわち、図5に示しているように、パンツの下側繋ぎ部を両羽根部5a,5bによって抱きかかえ、外れないように粘着テープ7a,7bにて止着する。粘着テープ7aは羽根部5aの表側に、一方の粘着テープ7bは羽根部5bの裏側に設けられている。勿論、羽根部5a,5bの連結手段は粘着テープに限定することはなく、ホック、ボタンなどを使用することもある。同図の(a)は肌に接する上側、(b)は下側を示し、パンツ11に生理用ナプキンを当て、両羽根部5a,5bを下側に折り曲げて外れないように粘着テープ7a,7bにて止着する。
【0023】
この生理用ナプキンはナプキン本体の収容部4に設けているスリット6からライナー10を入れることが出来る為に、生理時の経血量に応じて該ライナー10,10…の枚数を調整する。さらなる吸収力を得る為には、編織の目が絡み合った和紙製糸を使用して編成した丸編生地が適している。これら実施例では、上生地、下生地、及びライナーが共に和紙製糸から成る編織生地を使用しているが、少なくとも肌に当る上生地は和紙製糸を用いた編織生地で構成することが必要であるが、他の下生地及び吸収材3に関しては他の素材を使用することもあり得る。
【0024】
一方、ナプキン本体の収容部4にライナー10を収容する場合に限らず、ナプキン本体の上生地中央にライナー10を重ね合せて止着することもある。この場合には収容部4にスリット6を設ける必要はなく、上生地8に粘着テープ等にて位置ズレしないように止着する。又収容部を必要としないことから下生地9がなくてもよい。そしてライナー10をナプキン本体の中央に重ね合せて使用することで、経血を吸着したライナー10を簡単に取外して洗うことが出来る。
【0025】
一方、本発明の生理用ナプキンにヨモギの薬理成分を含浸させることが出来る。これは素材となる和紙にヨモギの薬理成分を漉き込み、この和紙を用いて和紙製糸を作ると共に、この糸を編織した生地を使用する。すなわちヨモギを細かく粉砕してこれを原料液に混入し、粉砕したヨモギを混入している原料液を漉くことで、ヨモギの薬理成分を含浸した和紙が出来上がる。
【0026】
又和紙製糸を用いて編織した生地をヨモギを細かく粉砕した溶液に浸すことでヨモギの薬理成分を含浸させることが出来る。或は和紙製糸を用いて編織した生地をヨモギを細かく粉砕して糊を混ぜた溶液に浸すことでヨモギの薬理成分を付着させることが出来る。又、別の方法として、糊を塗ったり吹き付けたりした和紙製糸を用いて編織した生地を、ヨモギを細かく粉砕した溶液に浸すことでヨモギの薬理成分を付着させてもよい。使用する糊の種類は特に限定しないが、人体に無害なデンプンが適している。
【0027】
そして、ヨモギの薬理成分が含浸又は付着した編織生地を使用して生理用ナプキンの上生地及び下生地、さらには吸収材を製作する。このようにヨモギの薬理成分を含浸又は付着することで、女性器の衛生状況の維持、又は自然治療の回復を図ることが出来、さらにはヨモギに限らず、キハダ、ドクダミ、ユキノシタ、ビワ等の薬草を使用することもある。
【0028】
一方、本発明の生理用ナプキンは少なくとも着用する際に肌に当る上生地を起毛して毛羽立たせている。起毛する具体的な手段は限定しないが、和紙製糸の段階で表面を毛羽立たせ、この和紙製糸を用いて編織した生地を使用してナプキンを製作することが出来る。又は、和紙製糸を用いて編織した生地の表面を起毛機によって適度に毛羽立たせることも可能である。
【0029】
勿論、生地の段階で起毛する場合、表面と裏面を毛羽立たせる場合と表面だけを毛羽立たせるがある。肌に接する面を起毛して毛羽立たせることで、着用した場合のゴアゴア感が無くなり、肌当りが向上する。すなわち、非常に細い毛羽が肌に当り、柔らかい触感が得られる。又、無数の毛羽が肌に接することで、経血は毛管現象によって吸収され、経血が肌に残ることはない。そして、無数の毛羽が立つことで、該毛羽によって空気層が形成され、肌接触部分は温かく、冷え性の女性には特に適している。
【0030】
ところで、以上述べた実施例は生理用ナプキンを対象として説明したが、失禁用ナプキンの場合も同じである。吸収・吸着する対象は経血でなく尿であるが、その形態は生理用ナプキンと同じように構成出来る。肌に接する上生地の表面を起毛することで、肌当りは良好となり、又経血より粘度の低い尿は羽毛を介して毛細管現象により素早く吸収することが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 上生地
2 下生地
3 吸収材
4 収容部
5 羽根部
6 スリット
7 粘着テープ
8 上生地
9 下生地
10 ライナー
11 パンツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理用又は失禁用のナプキンにおいて、少なくとの肌に接する側の上生地が和紙製糸を使用して編織した生地から成り、表面を毛羽立たせたことを特徴とする和紙製ナプキン。
【請求項2】
ナプキン本体とライナーで構成する生理用又は失禁用のナプキンにおいて、ナプキン本体は肌に接する側の上生地と反対側の下生地の周囲を縫い付けすると共に、上記下生地の中央部にはスリットを設け、該スリットから上下生地間に吸収材を内部に収容したライナーを出し入れ可能としたもので、少なくともナプキン本体の上記上生地は和紙製糸を用いて編織し、そして表面を毛羽立たせたことを特徴とする和紙製ナプキン。
【請求項3】
肌に接する側の上記上生地にはライナーを重ねて止着可能とし、該ライナーの少なくとも上生地は和紙製糸を用いて編織し、そして表面を毛羽立たせた請求項2記載の和紙製ナプキン。
【請求項4】
ナプキン本体とライナーで構成する生理用又は失禁用のナプキンにおいて、ナプキン本体の中央には内部に吸収材を収容しているライナーを重ねて止着可能とし、該ライナーの少なくとも上生地は和紙製糸を用いて編織し、そして表面を毛羽立たせたことを特徴とする和紙製ナプキン。
【請求項5】
上記ナプキン本体の両側には羽根部を形成すると共に、両羽根部先端には互いに連結する為の止着部を備えた請求項2、請求項3、又は請求項4記載の和紙製ナプキン。
【請求項6】
ライナーを構成する上下生地の間に収容して経血又は尿を吸収する為の吸収材として、和紙製糸から成る編織生地を用い、そして表面を毛羽立たせた請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載の和紙製ナプキン。
【請求項7】
ヨモギ等の薬草成分を含浸又は付着した請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、又は請求項6記載の和紙製ナプキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−373(P2011−373A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147602(P2009−147602)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507301383)株式会社 アイトスファースト (2)
【Fターム(参考)】