説明

品質予測装置、操業条件決定方法、品質予測方法、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】製造プロセスの実績データから類似例を高速に検索し、製品の予測品質データを高精度に生成する品質予測装置を提供する。
【解決手段】品質予測装置は、製造プロセスのプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データに基づいて製品の品質を予測する。品質予測装置は、実績データ記憶部から実績データを抽出するデータ抽出部と、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成部と、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを抽出し、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を予測する予測部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板や厚板、鋼管等の製造プロセスの操業中または操業後に、操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値に基づいて、そのプロセス変数値と類似した過去の類似事例を検索し、検索の結果得られた類似事例の材質値に基づいて製品の材質値を予測する、品質予測装置、操業条件決定方法、品質予測方法、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板や厚板、鋼管等の製品を製造するための操業条件は、顧客からの注文に応じて要求される仕様より決定される。製造の過程では、これまでに行われた工程での操業実績と、これから行われる工程での操業予定条件に基づいて、製品が要求される仕様を満たしているか否かの評価が行われる。従来、操業条件に基づく製品の品質予測は、過去の知見や作業者の記憶や判断に基づき行われていた。また、作業者の知見等に頼るのではなく、計算機を用いて操業条件に基づく製品の品質予測を行う手法も提案されている。
【0003】
計算機を用いて製品の品質予測を行う場合、対象の物理モデルを構築する必要があるが、大規模、複雑、非線形かつ非定常なプロセスにおいては、物理モデルを構築することが難しく、実績データに基づきモデルを作成し、製品の品質予測に適用している。このようなモデルは、対象を表現する適切な数式がなく、プロセスや設備の変化に適応したモデルの自動修正が必要である。そこで、予測したい製品の操業条件に類似した過去の操業実績を検索し、その操業実績に対応する品質実績から予測を行う事例ベース推論を用いることが有効である。しかし、オンライン予測を行うためには処理の高速化が必須であるが、過去の実績データが大量であると予測の処理速度が課題となっている。
【0004】
このような課題を解決するために、例えば、特許文献1には、プロセスのプロセス変数値と材質値の実績データを過去事例として検索用のデータベースに格納する際に、プロセス変数値を量子化して格納し、予測する製品のプロセス変数値に類似した類似事例の検索を近接した量子化メッシュに対してのみ行う品質予測方法が開示されている。近接した量子化メッシュに対してのみ検索を行うことで、品質予測の処理速度の高速化を図っている。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載の手法では、図25に示すように、製造プロセスにおける過去の操業データ(x,y)が実績データベース1に格納されている。ここで、xは操業条件(入力情報)、yは品質値(出力情報)を示し、kは時間を表す。品質予測装置3は、実績データベース1に格納されている操業データを取得し、操業条件を量子化して検索用テーブル5を作成する。検索用テーブル5の各量子空間には、操業データが振り分けられている。品質を予測する製品を製造するための操業条件(要求点)xkqが入力されると、品質予測装置3は、検索用テーブル5より要求点が存在する量子空間を特定し、要求点の存在する量子空間近傍の量子空間に含まれる操業データを検索し、要求点の近傍データとして抽出する。このように、要求点の近傍メッシュのデータのみを用いて品質予測することで、品質予測の処理速度を高速にすることができる。
【0006】
そして、品質予測装置3は、近傍データを用いて局所モデルを生成し、要求点に対して予測される品質値を予測する。また、品質予測装置3は、製品が所望の品質値を保持するよう操業制御することもできる。特許文献1に記載の手法では、確率密度関数を用いて局所モデルを生成することで、大きなバラツキがある品質データの予測も高い精度で行うことができる。
【0007】
また、特許文献2には、過去の製造実績から、材料推定値と推定誤差とを算出し、下工程(これから行われる工程)の操業条件の指示値を出力する鋼材の製品品質制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−33536号公報
【特許文献2】特開2003−268428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1では、プロセスの材料値に影響を及ぼす入力変数の数が増加すると、量子化された領域の数が指数的に増加するため、各領域に含まれる過去データの数が減少してしまう。さらには、過去データが存在しない領域が増加してしまい、予測精度が悪化するという問題があった。また、領域数の増加に伴い検索処理に要する時間が増え、品質予測処理の高速性が失われてしまう。
【0010】
上記特許文献2では、入力される素材成分や操業条件の指示値と蓄積されたデータを用いて品質予測を行っているが、ルールベースで行っている入力データの削減が製造プロセスの設備更新や経年変化によって適切ではなくなっている状況に対応していない。また、材質推定モデルを線形モデルで近似しているため、大規模、複雑、非線形かつ非定常なプロセスで製造される製品の品質予測においては十分な精度で予測できないという問題があった。さらに、大規模、複雑、非線形かつ非定常なプロセスの製品を予測するためには大量のデータが必要であるが、データベースに蓄積された過去事例が膨大になるにつれ、事例の検索に要する時間が増加し、オンラインでの予測に必要な高速性を維持することができないという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、大規模、複雑、非線形かつ非定常なプロセスの実績データから類似例を高速に検索し、製品の予測品質データを高精度に生成することが可能な、新規かつ改良された品質予測装置、操業条件決定方法、品質予測方法、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置が提供される。本発明の品質予測装置は、製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶部から、実績データを抽出するデータ抽出部と、データ抽出部により抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成部と、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出し、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を予測する予測部と、を備える。検索用テーブル作成部は、過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割部と、分割候補点で分割されたプロセス変数値空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、局所領域における品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出部と、各局所領域について算出されたあてはまり指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点によりプロセス変数値空間を確定分割するモデル選択部と、モデル選択部により確定分割点にて確定分割されたプロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定部と、プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を検索用テーブルとして出力する分割結果出力部と、を備えて、再分割対象領域判定部により再分割が必要と判定された局所領域に対して、プロセス変数値空間分割部による分割候補点設定と、確率密度関数算出部によるあてはまり指標算出と、モデル選択部による確定分割と、再分割対象領域判定部による再分割の要否判定とを繰り返し、予測部は、品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出することを特徴とする。
【0013】
あてはまり指標は、局所領域における品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを表す尤度関数の値としてもよい。
【0014】
このとき、モデル選択部は、確定分割点にて確定分割したプロセス変数値空間の局所領域のうち、尤度関数の値が最小となる局所領域を再分割対象領域として選択する。
【0015】
また、あてはまり指標は、局所領域における正規化された品質データのヒストグラムと、当該品質データを確率密度関数にあてはめた確率分布との誤差の絶対値の積分の符号を反転させた値としてもよい。
【0016】
データ抽出部は、実績データ記憶部に記憶された実績データの集合から所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して実績データの部分集合を複数作成し、検索用テーブル作成部は、実績データの部分集合の数をKとして、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の部分集合に属する実績データに基づいて検索用テーブルを作成し、予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の部分集合に対応する検索用テーブルから抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を示す予測品質データを算出し、得られたK個の予測品質データに基づいて、当該K個の予測品質データを代表する値を、品質予測対象製品の予測品質データとして算出してもよい。
【0017】
K個の予測品質データを代表する値は、K個の予測品質データの平均値であってもよい。
【0018】
予測部は、K個の予測品質データのバラツキ度合いを算出してもよい。
【0019】
バラツキ度合いは、K個の予測品質データについての標準偏差であってもよい。
【0020】
データ抽出部は、同じ要素を重複して抽出することを許容する条件で、実績データの集合から所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して、実績データの部分集合を複数作成してもよい。
【0021】
データ抽出部は、同じ要素を重複して抽出することを許容しない条件で、実績データの集合から当該集合の要素数よりも少ない所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して、実績データの部分集合を複数作成してもよい。
【0022】
予測部は、検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された実績データの各品質データに対して処理時刻に応じた重み付けを行い、重み付けされた各品質データの平均値を品質予測対象製品の予測品質データとしてもよい。
【0023】
予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された実績データの各品質データに対して処理時刻に応じた重み付けを行い、重み付けされた各品質データの平均値を、k番目の予測品質データとしてもよい。
【0024】
このとき、予測部は、検索用テーブルから抽出された実績データの各品質データに対する重み付けを、現在時刻と処理時刻との時刻差が小さいほど大きく設定してもよい。
【0025】
また、予測部は、検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、未定係数を乗じたプロセス変数値の線形和として品質データを推定する重回帰モデルの未定係数値を算出し、重回帰モデルに品質予測対象製品のプロセス変数値を設定して取得される値を予測品質データとしてもよい。
【0026】
さらに、予測部は、検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、予め設定された確率密度関数のパラメータを算出し、確率密度関数モデルに該算出されたパラメータと予め設定した確率値を設定して取得される値を予測品質データとしてもよい。
【0027】
予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、未定係数を乗じたプロセス変数値の線形和として品質データを推定する重回帰モデルの未定係数値を算出し、重回帰モデルに品質予測対象製品のプロセス変数値を設定して取得される値を、k番目の予測品質データとしてもよい。
【0028】
また、予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、予め設定された確率密度関数のパラメータを算出し、確率密度関数モデルに該算出されたパラメータと予め設定した確率値を設定して取得される値を、k番目の予測品質データとしてもよい。
【0029】
予測部は、生成した予測品質データをユーザに提示する出力装置に出力してもよい。
【0030】
また、プロセス変数値空間分割部は、プロセス変数値空間を、分割候補点においてそれぞれ2つの局所領域に分割し、確率密度関数算出部は、分割候補点で分割された局所領域のうち少なくともいずれか一方の局所領域に属するデータ点数が基準値未満となるとき、当該分割候補点を候補から除外してもよい。
【0031】
再分割対象領域判定部は、プロセス変数値空間の分割回数が予め設定された最大分割数に達したとき、分割処理を終了してもよい。
【0032】
プロセス変数値空間分割部は、局所領域の再分割時において、プロセス変数値空間分割部により設定された分割候補点のうち分割しようとする局所領域の領域外となる分割候補点を候補から除外してもよい。
【0033】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記品質予測装置を用いて、製造途中の製品の予測品質データを生成し、生成した予測品質データに基づき製造される製品が所望の品質データとなるように製造プロセスの操業条件を決定する操業条件決定方法が提供される。かかる操業条件決定方法では、データ抽出部により、製造プロセスにおける過去の実績データを記憶する実績データ記憶部から、既に工程が終了し実績が確定したプロセス変数値のみを確定実績データとして抽出し、検索用テーブル作成部により、確定実績データに基づいて検索用テーブルを作成し、予測部により、品質予測対象製品の予測品質データを出力するために必要な、確定実績データに含まれる操業条件以外の、決定対象である操業条件の決定されるべき値の候補である代表値を複数作成し、各代表値と確定実績データとの組合せについて予測品質データを生成して、所望の品質データに最も近い予測品質データとなった代表値を製造プロセスの操業条件として決定することを特徴とする。
【0034】
プロセス変数値の代表値は、各プロセス変数値に対して検索用テーブルの作成時に採用された分割候補点で区分された各区間における代表値としてもよい。
【0035】
ここで、プロセス変数値の代表値は、各プロセス変数値に対して検索用テーブルの作成時に採用された分割候補点で区分された各区間における中間値としてもよい。
【0036】
また、予測部により、確定実績データと、当該確定実績データに含まれるプロセス変数値以外のプロセス変数値が取り得る代表値とからなる複数の入力データを作成し、各入力データに基づいて、検索用テーブルから当該入力データに類似する実績データを取得し、取得した実績データを未確定のプロセス変数値の取り得る代表値毎に層別して、それぞれについて予測品質データを生成し、所望の品質データに最も近い予測品質データの代表値を製造プロセスの操業条件として決定してもよい。
【0037】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測方法が提供される。かかる品質予測方法は、製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶部から、実績データを抽出するデータ抽出ステップと、データ抽出ステップにより抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成ステップと、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出し、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を予測する予測ステップと、を含む。検索用テーブル作成ステップは、過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割ステップと、分割候補点で分割されたプロセス変数値空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、局所領域における品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出ステップと、各局所領域について算出されたあてはまり指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点によりプロセス変数値空間を確定分割するモデル選択ステップと、モデル選択ステップにて確定分割点にて確定分割されたプロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定ステップと、プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を検索用テーブルとして出力する分割結果出力ステップと、を含んで、再分割対象領域判定ステップにより再分割が必要と判定された局所領域に対して、プロセス変数値空間分割ステップと、確率密度関数算出ステップと、モデル選択ステップと、再分割対象領域判定ステップとを繰り返し、予測ステップは、品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出することを特徴とする。
【0038】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムが提供される。かかるコンピュータプログラムは、製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶手段から、実績データを抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段により抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成手段と、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出し、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を予測する予測手段と、を備える。検索用テーブル作成手段は、過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割手段と、分割候補点で分割されたプロセス変数値空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、局所領域における品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出手段と、各局所領域について算出されたあてはまり指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点によりプロセス変数値空間を確定分割するモデル選択手段と、モデル選択手段により確定分割点にて確定分割されたプロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を検索用テーブルとして出力する分割結果出力手段と、を備えて、再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、プロセス変数値空間分割手段による分割候補点設定と、確率密度関数算出手段によるあてはまり指標算出と、モデル選択手段による確定分割と、再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返し、予測手段は、品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出することを特徴とする品質予測装置として機能させる。
【0039】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。かかる記憶媒体は、製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶手段から、実績データを抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段により抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成手段と、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出し、抽出された実績データに基づいて、品質予測対象製品の品質を予測する予測手段と、を備え、検索用テーブル作成手段は、過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割手段と、分割候補点で分割されたプロセス変数値空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、局所領域における品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出手段と、各局所領域について算出されたあてはまり指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点によりプロセス変数値空間を確定分割するモデル選択手段と、モデル選択手段により確定分割点にて確定分割されたプロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を検索用テーブルとして出力する分割結果出力手段と、を備えて、再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、プロセス変数値空間分割手段による分割候補点設定と、確率密度関数算出手段によるあてはまり指標算出と、モデル選択手段による確定分割と、再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返し、予測手段は、品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する実績データを検索用テーブルから抽出することを特徴とする品質予測装置として機能させるためのプログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように本発明によれば、大規模、複雑、非線形かつ非定常なプロセスの実績データから類似例を高速に検索し、製品の予測品質データを高精度に生成することが可能な、品質予測装置、操業条件決定方法、品質予測方法、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る検索用テーブル作成部の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る品質予測装置による検索用テーブル作成処理を示すフローチャートである。
【図4】プロセス変数値空間の領域分割決定方法を示す説明図である。
【図5】品質データへの確率密度関数のあてはまり度合いを表すあてはまり指標の説明図である。
【図6】あてはまり指標として、正規化された品質データのヒストグラムと適用する確率分布の誤差との絶対値の積分を用いる場合を説明する説明図である。
【図7】プロセス変数値空間の領域再分割方法を示す説明図である。
【図8】検索用テーブルの一構成例を示す説明図である。
【図9】予測部における製品の品質予測処理を示すフローチャートである。
【図10】製品の製造時刻に基づく重み係数の一設定例を示すグラフである。
【図11】製品の製造時刻に基づく重み係数の他の一設定例を示すグラフである。
【図12】確率密度関数に基づく材質の予測値を算出する処理を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る品質予測装置により予測する操業条件を説明するための説明図である。
【図14】同実施形態に係る品質予測装置による操業条件決定処理を示すフローチャートである。
【図15】材料の成分値のうち材質値に影響の大きい2つの成分値と、下流工程の温度条件の合計3因子をプロセス変数値として、特許文献1の手法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。
【図16】図15で用いた3因子に上流工程での操業条件を加えた合計7因子をプロセス変数値として、特許文献1の手法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。
【図17】図15と同じ7因子をプロセス変数値として、同実施形態に係る品質予測装置による品質予測方法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。
【図18】品質予測装置を用いて最適操業条件ガイダンスを行う場合の一処理例を示すフローチャートである。
【図19】品質予測装置より抽出された類似事例および最適操業条件の一表示例を示す説明図である。
【図20】本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【図21】同実施形態に係る検索用テーブル作成部の構成を示すブロック図である。
【図22】同実施形態に係る品質予測装置の製品の品質予測処理を示すフローチャートである。
【図23A】本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置を用いて材質値予測を行ったときのプロセス変数値の選択状況を示した説明図である。
【図23B】本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置を用いて材質値予測を行ったときのプロセス変数値の選択状況を示した説明図である。
【図24】本発明の実施形態に係る品質予測装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図25】従来の品質予測装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0043】
<1.第1の実施形態>
[品質予測装置の概略構成]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る品質予測装置100の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る検索用テーブル作成部120の構成を示すブロック図である。
【0044】
本実施形態に係る品質予測装置100は、製造プロセスのプロセス変数値および製造された製品の品質データである材質値に関するデータベース(検索用テーブル)を作成し、作成したデータベースから材質値を予測したい製品のプロセス変数値に類似するプロセス変数値を持つ過去の類似事例を検索することにより、製造される製品の材質値を予測する。本実施形態では、製造プロセスの一例として薄板の製造プロセス10を取り上げ、製品の品質予測装置100の構成およびその機能について説明する。
【0045】
まず、製造プロセス10において製造される製品の品質予測を行うため、製造プロセス10より、プロセス変数値および材質値が取得される。
【0046】
薄板の製造プロセス10におけるプロセス変数値としては、例えば、処理時刻、試片番号、採取部位、圧延コイル番号、巻番号、注文厚み、注文巾、連続焼鈍ライン入側板厚、連続焼鈍ライン入側板巾、冷延材質コード、連続焼鈍ライン中央速度、加熱ゾーン出側板温、第1均熱ゾーン出側板温、第2均熱ゾーン出側板温、第1冷却ゾーン出側板温、再加熱ゾーン出側板温、過時効ゾーン出側板温、第2冷却ゾーン出側板温、調質圧延工程伸び率、調質圧延工程圧延力、圧延ラインにおける粗圧延最終スタンド出側温度、仕上出側温度、巻取り温度等がある。また、精錬工程を終了した時点での溶鋼内のC量、Si量、Mn量、P量、S量、Cu量、Ni量、Cr量、Mo量、Nb量、V量、Ti量、B量、Al量、N量、O量、Ca量等もプロセス変数値として用いられる。製造プロセス10では、これらの値を計測する各種センサや入力するための端末が複数設置されている。また、製造プロセス10には、材質値として、降伏強度(YP)、引張強度(TS)、延性(EL)、ランクフォード値(R値)を計測する装置、あるいはこれらの結果を入力するための端末が複数設置されている。
【0047】
各種センサにより計測され、あるいは端末より入力されたプロセス変数値や、装置により計測され、あるいは端末より入力された材質値は、データ処理部20に入力される。データ処理部20は、入力された各種情報を操業オペレータに提示して製造プロセスの操業状態を通知する。また、データ処理部20は、入力された各種情報のうち少なくとも1つを、後述する実績データベース30に記録する。さらに、データ処理部20は、操業オペレータによって品質を予測する対象のプロセス変数値等の情報が入力される入力装置としても機能する。データ処理部20は、具体的には、薄板の製造プロセス10における計測や制御、データ収集を行うプロセスコンピュータ(プロコン)やビジネスコンピュータ(ビジコン)により構成される。
【0048】
実績データベース30は、製造プロセス10における実績データとしてプロセス変数値および製造された製品の材質値を記憶する記憶部である。実績データベース30は、一定時刻毎、一定長さ毎、あるいは薄板製品の製造単位であるコイル毎に製造プロセスでの処理時刻と関連付けて、データ処理部20より入力されるプロセス変数値および材質値を格納している。この際、実績データベース30に格納されるデータは、周期や長さが揃えられた同一単位の情報とされている。
【0049】
品質予測装置100は、実績データベース30に記憶された実績データ、すなわちプロセス変数値および材質値を取得し、製品の品質を予測する装置である。品質予測装置100は、図1に示すように、データ抽出部110と、検索用テーブル作成部120と、記憶部130と、予測部140とを備える。
【0050】
データ抽出部110は、実績データベース30より、プロセス変数値および材質値を抽出する。実績データベース30より抽出するプロセス変数値および材質値は、予め設定することができる。具体的には、データ抽出部110は、例えば、材質を予測する製品の処理時刻から予め設定された所定時間だけ遡った過去時刻から現在時刻までのプロセス変数値および材質値を抽出する。データ抽出部110は、抽出したプロセス変数値および材質値を検索用テーブル作成部120へ出力する。
【0051】
検索用テーブル作成部120は、データ抽出部110より抽出されたプロセス変数値および材質値をプロセス変数値空間の木構造の分割を用いて分類した検索用テーブル132を作成する。検索用テーブル作成部120は、図2に示すように、データ入力部121と、プロセス変数値空間分割部122と、確率密度関数算出部123と、モデル選択部124と、再分割対象領域判定部125と、分割結果出力部126とからなる。
【0052】
データ入力部121は、データ抽出部110が実績データベース30から抽出したプロセス変数値および材質値が入力されるインタフェースである。データ入力部121は、データ抽出部110より入力されたプロセス変数値および材質値をプロセス変数値空間分割部122へ出力する。
【0053】
プロセス変数値空間分割部122は、データ入力部121より入力されたプロセス変数値および材質値からなるプロセス変数値空間を分割する分割候補点を複数設定する。
【0054】
確率密度関数算出部123は、プロセス変数値空間分割部122により作成された分割候補点について、プロセス変数値空間の仮分割を行う。そして、確率密度関数算出部123は、仮分割されたプロセス変数値空間の各局所領域について、材質値を確率変数とする確率密度関数を算出し、局所領域における品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する。
【0055】
モデル選択部124は、分割対象の局所領域に対する分割候補点の中から、各局所領域について算出されたあてはまり指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定する。モデル選択部124は、確定分割点によりプロセス変数値空間を確定分割する。
【0056】
再分割対象領域判定部125は、モデル選択部124により決定された確定分割点においてプロセス変数値空間を分割したときに、全体の領域分割数と予め設定された最大分割数とを比較して、領域の再分割の要否を判定する。再分割対象領域判定部125により領域の再分割が必要と判断されると、プロセス変数値空間分割部122、確率密度関数算出部123およびモデル選択部124が機能され、領域の再分割が行われる。
【0057】
分割結果出力部126は、再分割対象領域判定部125により領域の再分割が不要であると判定されたとき、分割処理の結果を品質予測装置100の記憶部130や表示装置40へ出力する。分割結果出力部126から出力される分割処理の結果は検索用テーブル132として利用される。
【0058】
なお、検索用テーブル作成部120による検索用テーブル作成処理の詳細については後述する。
【0059】
図1の説明に戻り、記憶部130は、品質予測装置100による品質予測処理に必要な情報を記憶する。記憶部130には、例えば、分割結果出力部126より出力された分割処理の結果が検索用テーブル132として記憶されている。検索用テーブル132は、後述の予測部140による品質予測処理にて用いられる。検索用テーブル132には、例えば、図8下に示す表のように、プロセス変数値空間の各局所領域を特定するプロセス変数値の範囲が規定されている。なお、図8に示す検索用テーブル132の構成は一例であって、他の形式で構成されていてもよい。
【0060】
予測部140は、検索用テーブル132を用いて、予測対象に類似する類似事例を検索し、類似事例のプロセス変数値および材質値を用いて、品質を予測する対象製品の材質値(予測品質データ)を予測する。類似事例とは、予測対象のプロセス変数値が存在する局所領域内に存在する過去の操業データである。なお、予測部140による品質予測処理の詳細については後述する。予測部140は、予測品質データを表示装置40へ出力する。
【0061】
表示装置40は、品質予測装置100において作成された検索用テーブル132の内容や予測品質データを操業オペレータに提示する出力装置の一例である。表示装置40としては、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いることができる。なお、図1では、表示装置40を品質予測装置100とは別体として構成した例を示したが、本発明はかかる例に限定されず、品質予測装置100が表示装置40等の情報を提示する出力手段を備えるように構成することもできる。
【0062】
以上、本実施形態に係る品質予測装置100について、製造プロセス10の実績データを取得し、予測品質データを出力するシステムとともに説明した。
【0063】
[品質予測装置による品質予測処理]
次に、図3〜図11に基づいて、本実施形態に係る品質予測装置100による品質予測処理について説明する。なお、図3は、本実施形態に係る品質予測装置100による検索用テーブル作成処理を示すフローチャートである。図4は、プロセス変数値空間の領域分割決定方法を示す説明図である。図5は、品質データへの確率密度関数のあてはまり度合いを表すあてはまり指標の説明図である。図6は、あてはまり指標として、正規化された品質データのヒストグラムと適用する確率分布の誤差との絶対値の積分を用いる場合を説明する説明図である。図7は、プロセス変数値空間の領域再分割方法を示す説明図である。図8は、検索用テーブル132の一構成例を示す説明図である。図9は、予測部140における製品の品質予測処理を示すフローチャートである。図10は、製品の製造時刻に基づく重み係数の一設定例を示すグラフである。図11は、製品の製造時刻に基づく重み係数の他の一設定例を示すグラフである。
【0064】
本実施形態に係る品質予測装置100は、操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値に基づいて、そのプロセス変数値と類似した過去の類似事例を検索し、検索の結果得られた類似事例の材質値に基づいて製品の材質値を予測する。このため、品質予測装置100は、まず、品質の予測を行う対象のプロセス変数値から、当該プロセス変数値と類似する類似事例を検索するための検索用テーブル132を作成する。そして、品質予測装置100は、検索用テーブル132を用いて、製品の品質を予測する品質予測処理を行う。以下、品質予測装置100にて行われる検索用テーブル作成処理および品質予測処理について、詳細に説明する。
【0065】
(検索用テーブル作成処理)
検索用テーブル作成部120による検索用テーブル作成処理は、図3に示すように、まず、データ入力部121に、データ抽出部110が実績データベース30から抽出したプロセス変数値および材質値が入力されることにより開始される(S100)。プロセス変数値データは複数(p個)のデータu,u,・・・,uからなり、それらは連続値、離散値のいずれであってもよい。p個のプロセス変数値のデータをまとめてp次元ベクトルu=(u ・・・ u)と表現する。全体でN個のプロセス変数値データu,u,・・・,uが得られるとする。
【0066】
一方、材質値のデータyは、N個のプロセス変数値データu,u,・・・,uに対応して得られるものであり、各プロセス変数値データに対応する材質データをy,y,・・・,yと表す。これらの材質値データは連続値、離散値のいずれであってもよい。以下の処理において、材質値のデータyを確率変数とみなし、その確率密度関数はプロセス変数値による空間の領域に依存して決定されるものとする。データ入力部121は、プロセス変数値データおよび材質値データをプロセス変数値空間分割部122へ出力する。
【0067】
次いで、プロセス変数値空間分割部122は、プロセス変数値データuを構成する各データu,u,・・・,uの分割候補点を作成する(S102)。分割候補点は、例えば、操業知見に基づき決定することもでき、また、離散データの場合にはデータの取り得る値の中間値としたり、一定間隔でデータを分割する値に設定したり、一定データ数間隔でデータを分割する値に設定したりすることができる。あるいはこれらの組合せによっても分割候補点を決定することができる。プロセス変数値データの各データ(u,u,・・・,u)に対し分割候補点がそれぞれm,m,・・・,m個であったとすると、すべての分割候補点数は、下記数式1により表される。
【0068】
【数1】

【0069】
一例として、2つのプロセス変数値データを構成するデータ(u,u)からなるプロセス変数値空間において分割候補点を設定した場合を考える。操業知見や取り得る値の中間値とする等の方法を用いて分割候補点を設定したとき、例えば図4に示すように、プロセス変数値のデータuについて3つの分割候補点u11,u12,u13が、データuについては2つの分割候補点u21,u22が設定されたとする。すなわち、プロセス変数値空間には5つの分割候補点が設定されている。
【0070】
プロセス変数値空間分割部122により分割候補点が設定されると、確率密度関数算出部123は、プロセス変数値空間を各プロセス変数値の各分割候補点で2分割する(S106)。なお、ステップS104の処理は、プロセス変数値空間の分割が2回目以降である場合に行われるため、かかる処理については後述する。ステップS106で行われる分割は正式な分割点(確定分割点)を決定するための仮の分割である。図4の例では、確率密度関数算出部123は、プロセス変数値空間を分割候補点u11、u12、u13、u21、u22でそれぞれ2分割して、分割候補1−1〜1−5を作成する。
【0071】
さらに、確率密度関数算出部123は、各分割候補1−1〜1−5について、分割して得られた2つの局所領域のいずれかに属するデータ点数が基準値以上であるか否かを判定する(S108)。局所領域に属するデータ点数が基準値より少ない場合には、確率密度関数をあてはめても精度が低いため、ステップS108では、確率密度関数のあてはめを行わない分割候補を外す処理を行っている。なお、基準値は、例えば10〜100程度の数に設定するのがよく、全体のデータ数が多い場合にはデータ数の数パーセント程度の値に設定してもよい。
【0072】
ステップS108で局所領域に属するデータ点数が基準値より少ないと判定した分割候補については、確率密度関数算出部123は、確率密度関数のあてはめは行わず、ステップS116の処理を実行する。一方、局所領域に属するデータ点数が基準値以上であると判定した分割候補については、確率密度関数算出部123は、確率密度関数のあてはめを行う(ステップS110)。なお、どの分割候補点で分割しても得られた局所領域のいずれかに属するデータ点数が基準値未満の場合は、確率密度関数算出部123は、その局所領域での分割は行わず、次にあてはまり指標が最小である局所領域を分割対象とする。なお、あてはまり指標についての説明は後述する。
【0073】
ステップS110では、確率密度関数算出部123は、各分割候補について、分割された2つの局所領域それぞれにプロセス変数値ベクトル(u ・・・ u)が属する品質データyに対して確率密度関数f(y;β)をあてはめる(S110)。ここで、βは確率密度関数fのパラメータ(以下、「確率パラメータ」とも称する。)である。確率密度関数によって1または複数のパラメータからなるが、ここではこれらをまとめて確率パラメータβとして表現している。
【0074】
確率密度関数の例としては、正規分布、対数正規分布、指数分布等がある。正規分布の確率密度関数は、下記数式2で表される。この場合、確率密度関数fの確率パラメータは、平均μおよび標準偏差σの2つである。したがって、これらの2つの確率パラメータをまとめてβ=(μ,σ)と表現する。また、expは指数関数を表す。
【0075】
【数2】

【0076】
また、対数正規分布の確率密度関数は、下記数式3で表される。この場合、確率密度関数fの確率パラメータは、対数平均μ´および対数標準偏差σ´の2つである。したがって、これらの2つの確率パラメータをまとめてβ=(μ´、σ´)と表現する。また、lnは自然対数を表す。
【0077】
【数3】

【0078】
さらに、指数分布の確率密度関数は、下記数式4で表される。この場合、確率密度関数fの確率パラメータはλである。確率パラメータは1つであるが、他の確率密度関数と同様に、β=λと表現される。
【0079】
【数4】

【0080】
なお、本実施形態では、対数正規分布の確率密度関数を用いている。
【0081】
確率密度関数の確率パラメータβは、対象となる領域Mに属するプロセス変数値ベクトルu=(ui1,ui2,・・・,uip)に対応する品質データ{y|u∈M}を用いて、統計確率手法により決定することができる。確率パラメータβは、領域Mごとに決定されるので、βと表現することができる。
【0082】
決定された確率パラメータβと対象となる領域Mに属するプロセス変数値ベクトルu=(ui1,ui2,・・・,uip)に対応する品質データ{y|u∈M}を用いて下記数式5で計算される値L(β)を尤度関数と呼ぶ。また、尤度関数L(β)の対数をとり符号を反転させた下記数式6で表される関数を、負の対数尤度関数と呼ぶ。
【0083】
【数5】

【0084】
尤度関数は確率パラメータβを算出する際に用いることができる。本実施形態では、確率パラメータβを算出する統計確率手法として最尤法を用いる。最尤法は、与えられたデータに対して尤度関数を最大にするように未知パラメータを推定する手法である。
【0085】
また、尤度関数は、対象となる領域に属する品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを表すものであり、尤度関数の値が大きいほど品質データへの確率密度関数のあてはまりがよいと評価される。尤度関数は確率密度関数の積で定義され、また、確率密度関数は0〜1の値を取ることから、一般に尤度関数の値は非常に小さい値となり、数値計算的に計算し難い。このため、尤度関数の対数をとった対数尤度関数を用いることが多い。対数は単調関数であるから、尤度関数を大きくすることは対数尤度関数を大きくすることと等価となる。さらに、対数尤度関数の符号を反転させた負の対数尤度関数も一般的に用いられ、この場合、尤度関数を大きくすることは負の対数尤度関数を小さくすることと等価となる。
【0086】
局所領域に対して確率密度関数のあてはめがされると、確率密度関数算出部123により各局所領域について領域に含まれる品質データへの確率密度関数のあてはまり度合いを表す評価指標(あてはまり指標)が算出され、モデル選択部124により各局所領域についてあてはまり指標の評価がなされる(ステップS112)。モデル選択部124は、分割対象の局所領域に対する分割候補点の中からあてはまり指標を基準として分割点を選択する。あてはまり指標は、領域に含まれる品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを示す評価指標であり、本実施形態では数式5で計算される尤度関数を用いている。あてはまり指標として尤度関数を用いる場合は、分割して得られた2つの局所領域の尤度関数の積を分割候補点のあてはまり指標とし、それが最大のものを確定分割点として選択するのがよい。
【0087】
確率密度関数算出部123は、このような手法により各局所領域のあてはまり指標を算出する。そして、モデル選択部124は、各局所領域について算出されたあてはまり指標を用いて分割候補点ごとのあてはまり指標を算出し、あてはまり指標が最大であった分割候補点を確定分割点として決定する。
【0088】
例えば、図4の例では、分割候補1−1〜1−5において、仮分割された2つの局所領域のあてはまり指標がそれぞれ算出される。そして、モデル選択部124は、各分割候補1−1〜1−5についてのあてはまり指標を算出する。あてはまり指標として尤度関数を用いる場合には、各分割候補1−1〜1−5において仮分割された2つの局所領域の尤度関数の積が、それぞれの分割候補のあてはまり指標となる。各分割候補1−1〜1−5についてあてはまり指標を算出すると、モデル選択部124は、これらのうちあてはまり指標が最大である分割候補点を確定分割点として決定する。
【0089】
なお、本実施形態では、尤度関数を用いて領域に含まれる品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを示すあてはまり指標を算出したが、本発明はかかる例に限定されない。尤度関数に代わるあてはまり指標として、正規化された品質データのヒストグラムとあてはめた確率分布との誤差の絶対値の積分を用いてもよい。具体的には、まず、対象となる領域Mに属するプロセス変数値ベクトルに対応する品質データのヒストグラムをh(y)として、その積分値が1となるように正規化されたヒストグラムを算出する。これは、下記数式7より算出できる。
【0090】
【数6】

【0091】
そして、数式7から算出される正規化された品質データのヒストグラムとあてはめた確率分布関数との誤差の絶対値の積分を下記数式8より算出する。これは、図6に示すように、正規化された品質データのヒストグラムとあてはめた確率分布との差分であるハッチング部分の面積に相当する。この面積が小さいほど、すなわち正規化された品質データのヒストグラムとあてはめた確率分布との誤差が小さいほど、領域に含まれる品質データのあてはまりの度合いがよいことを示す。あてはまり指標が大きいほど領域に含まれる品質データのあてはまりの度合いがよいことを示すようにするためには、例えば、数式8で算出された値の符号を反転させた値をあてはまり指標として用いればよい。
【0092】
【数7】

【0093】
また、本実施形態では、ステップS104〜S114の処理を、分割候補毎に実施している。このため、ステップS112では、1つの分割候補についてのあてはまり指標が算出されると、それ以前に算出された分割候補のあてはまり指標のうち最大のものと比較し、あてはまり指標が大きい方の分割候補点でのデータを分割候補点データとして保存しておく。このとき、分割候補点、確率パラメータ、尤度関数等が分割データとして保存される。そして、すべての分割候補点についての判定を終えたとき、あてはまり指標が最大であった分割候補点が確定分割点として採用される。
【0094】
あてはまり指標がそれ以前に算出されたあてはまり指標の最大値より小さい場合には、当該分割候補点における分割データは保存せず、ステップS116の処理へ進む。一方、あてはまり指標がそれ以前に算出されたあてはまり指標の最大値以上である場合には、当該分割データをメモリ(図示せず。)に保存する(S114)。そして、モデル選択部124は、全プロセス変数値の全分割候補点についてステップS104〜S114の処理を実行したか否かを判定する(S116)。全プロセス変数値の全分割候補点についてステップS104〜S114の処理が終了していなければ、ステップS104に戻り、処理を繰り返す。一方、全プロセス変数値の全分割候補点についてステップS104〜S114の処理が終了している場合には、確定分割点において局所領域を確定分割する領域分割処理を実行する(S118)。
【0095】
ステップS118にて領域分割処理が実行されると、再分割対象領域判定部125は、全体の領域分割数を1つ増やし、現在の領域分割数の値を更新する(S120)。そして、再分割対象領域判定部125は、更新された領域分割数が最大分割数に達したか否かを判定する(S122)。かかる処理は、全体の領域分割数があらかじめ指定した最大分割数に満たない場合に、分割して得られた局所領域をさらに分割して、予測精度を上げることを指向するために行われる。
【0096】
ステップS122にて、全体の領域分割数が最大分割数に達していないと判定された場合、再分割対象領域判定部125は、分割して得られた局所領域のうち、あてはまり指標が最小である局所領域を分割対象として決定する(S124)。ただし、その領域に属するデータ点数が基準値未満の場合は分割対象とせず、次にあてはまり指標が最小である局所領域を分割対象とする。なお、すべての領域について、各領域に属するデータ点数が基準値未満となった場合には、全体の領域分割数が最大分割数に達していない場合でも当該処理は終了し、ステップS126の処理が行われる。再分割対象とする局所領域が決定されると、検索用テーブル作成部120は、ステップS104からの処理を繰り返す。最大分割数は初期値を10〜20程度として、得られた結果と予測精度とを見ながら順次増加させるのが適当である。
【0097】
ステップS124にて分割対象とされた局所領域に対するステップS104〜S120の分割処理は、プロセス変数値空間の2回目以降の分割となる。プロセス変数値空間の分割が2回目以降となる場合、すなわち一旦分割された局所領域を再分割する場合、プロセス変数値空間分割部122は、領域外の分割候補点は除外する(S104)。このため、初回の分割候補点はM個であるが、再分割時はそれより少なくなる。
【0098】
例えば、図7において、直前の回でプロセス変数値uの値u13が確定分割点として決定されたとき、プロセス変数値空間は局所領域A、Aの2つに確定分割される。そして、全体の領域分割数が1増加されるとともに、生成された2つの局所領域それぞれについて確率密度関数が算出され、あてはまり指標が算出される。次の領域の確定分割点を決定する際には、局所領域A、Aのうちあてはまり指標の小さい方についてステップS104〜S120の処理が実行される。なお、図7の例では、あてはまり指標の小さい局所領域Aが次に分割される。
【0099】
一方、ステップS122にて、全体の領域分割数が指定した最大分割数に達したと判定した場合は、再分割対対象領域判定部125は分割処理を終了する。そして、分割結果出力部126より、ステップS102〜S120により実行された分割結果を検索用テーブル132として、品質予測装置100の記憶部130に出力し記録する(S126)。この検索用テーブル132は、プロセス変数値による空間を局所領域に分割する方法を定義した情報である。分割結果出力部126は、表示装置40に分割結果を出力して、検索用テーブル132の内容を操業オペレータに提示するようにしてもよい。
【0100】
以上、本実施形態に係る品質予測装置100の検索用テーブル作成部120による検索用テーブル作成処理について説明した。かかる検索用テーブル作成処理により、データ抽出部110により実績データベース30から抽出された実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間は、例えば図8上に示すように、複数の局所領域(例えば局所領域1〜6)に分割される。記憶部130の検索用テーブル132には、例えば図8下の表に示すように、各局所領域について、プロセス変数値空間を分割する範囲が規定されている。
【0101】
このように検索用テーブル132を作成することにより、プロセス変数値空間を分割する過程で操業データが層別される。したがって、本実施形態に係る品質予測装置100を用いた検索用テーブル132の作成では、従来予めモデルの入力変数をプロセスとの相関が高いものだけに絞り込む必要があったのに対し、入力変数中にプロセスとの相関の低い変数が含まれている場合であってもそのプロセス変数値は空間分割に採用されないため、モデルの精度に影響することがなく、また、予め入力変数をプロセスと相関の高いものだけに絞り込む必要がない。
【0102】
さらに、本実施形態に係る品質予測装置100を用いた検索用テーブル132の作成では、プロセス変数値空間を分割する際に、モデルの予測精度がよくなるように、プロセス変数値とその分割位置とが逐次検索される。これにより、プロセス変数値の数が増加しても空間分割数を適切に抑えることができる。
【0103】
ここで、あてはまり指標を用いる有効性について図5を用いてより詳細に説明する。例えば、分布Aに示すように品質データのバラツキは大きいが品質データの分布が一山である局所領域に対応する操業条件Aと、分布Bに示すように品質データのバラツキは小さいが品質データの分布が二山になっている局所領域に対応する操業条件Bとを考える。品質データの分布が二山になっている操業条件Bには、操業条件B1とB2との2つの操業条件が含まれている可能性が高い。この場合、1つの操業条件からなる操業条件Aに対応する局所領域を分割するよりも、2つの操業条件B1とB2が分割されることを期待して、操業条件Bに対応する局所領域を分割した方がより品質のよくなる条件を求めることができると考えられる。
【0104】
検索用テーブル作成部120による検索用テーブル作成処理において用いられる評価指標としては、あてはまり指標の代わりにバラツキの評価指標を用いる方法も考えられる。バラツキの評価指標の例としては、例えば、領域内のデータの分散×データ点数(σ×n)や、領域内のデータの分散(σ)が考えられる。
【0105】
再分割対象領域判定部125において、分割対象とする局所領域を決定する際に、バラツキの評価指標を基準として分割対象領域を選択すると、図5に示す2つの分布のうち、品質データのバラツキの大きい操業条件Aに対応する局所領域が優先して分割されることになる。これに対して、あてはまり指標を基準として分割対象領域を選択すると、品質データのバラツキは小さいが分布が二山となっている操業条件Bに対応する局所領域が優先して分割される。このように、本実施形態では確率密度関数のあてはまり指標に基づいて分割候補点を決定することで、品質の良くなる条件に対応する局所領域を効率的に求めることができると期待される。
【0106】
(品質予測処理)
検索用テーブル作成部120により検索用テーブル132が作成されると、図9に示すように、予測部140は、検索用テーブル132を参照して、品質を予測する対象のプロセス変数値と類似する過去の類似事例の検索を行う。品質予測対象製品のプロセス変数値は、例えば、データ処理部20より品質予測装置100の予測部140へ入力される(S200)。そして、予測部140は、データ処理部20から入力されたプロセス変数値に基づき、記憶部130内の検索用テーブル132を検索するための入力値を作成する(S202)。
【0107】
検索用テーブル132への入力値が作成されると、この入力値を検索キーとして、検索用テーブル132より類似事例の検索が行われる(S204)。ステップS204では、プロセス変数値空間において、予測したい製品のプロセス変数値データと同じ局所領域に存在する類似事例のプロセス変数値データおよび製品の材質値が抽出される。そして、予測部140は、検索用テーブル132の検索の結果得られた類似事例のプロセス変数値、製品の材質値、製造プロセス10での処理時刻あるいは製造プロセス10での処理時刻に対応する実績データベースの格納番号を用いて、予測対象の製品の材質値を予測する(S206)。なお、格納番号は、処理時刻に対応して時系列で付されているものとする。
【0108】
ステップS206での予測対象の製品の材質値の予測は、例えば、ステップS204で取得された複数の類似事例の材質値の平均値を、予測対象の製品の材質値とすることにより行うことができる。また、製造プロセス10においては、設備の経時変化等によりプロセス変数値および製品の材質値の特性が変化することがある。この場合、ステップS204で取得された複数の類似事例に対して、製造プロセス10での処理時間に基づき重み付けをして材質値の平均値を算出するようにすることで、予測値の精度を高めるようにすることができる。
【0109】
具体的には、まず、予測部140は、検索で得られたすべての類似事例に対して、その処理時刻と現在時刻との差で定義される時刻差tを算出する。次いで、予測部140は、時刻差tに基づいて重み係数Wを算出し、重み係数Wを用いて重み付き平均値を算出する。ここで、予測部140は、例えば図10に示すように重み付けを設定することができる。
【0110】
すなわち、例えば図10に示す、下記数式9で表される重み係数の分布を用いて、現在時刻に近づくほど指数的に大きくなる重みを類似事例の材質値に設定することができる。数式9において、expは指数関数、λは予め設定された指数関数の正値パラメータ、Mは類似事例の個数を表す。指数関数の正値パラメータλは、時刻差に基づく重みの度合いを調整するためのパラメータであり、値が大きいほど最新の類似事例に高い重みが設定される。このパラメータは、製造プロセスに関する知識から経験的に決定してもよく、あるいは予測値が最も実績値に一致するよう調整して決定してもよい。このような重み付けを行うことにより、設備の経時変化による特性の変化を反映した予測値を算出することができる。
【0111】
そして、予測部140は、検索で得られたすべての類似事例の製品の材質値yと、これに対する重み係数Wとより、数式10から重み付き平均値yを取得する。
【0112】
【数8】

【0113】
なお、時刻差tに基づいて重み係数を算出する式は、上記数式9に限定されるものではなく、例えば、図11に示す線形関数等、現在時刻において最も高い重みを有する任意の単調関数の式を用いてもよい。また、重み係数は、図10、図11に示したように関数式より算出する方法以外にも、例えば時刻差の範囲と重み係数を対応表にした重み係数テーブルを予め作成し、時刻差の値から重み係数テーブルを参照して重み係数を決定することもできる。
【0114】
なお、過去事例に対する重みを設定して平均値を算出する方法としては、予測対象製品のプロセス変数値と過去事例のプロセス変数値に基づいて、重み係数を決定する方法を用いてもよい。具体的には、予測したい事例のプロセス変数値と類似事例のプロセス変数値の差分量から重み係数を算出し、材質値に乗じた上で加算することで得られる差分量重み付き平均値を製品の予測値とするようにしてもよい。
【0115】
上記の製造プロセスの処理時刻や、あるいはプロセス変数値に基づいて重み係数を算出し、重み付き平均値を算出して予測値とする方法は、単独で適用してもよく、またそれぞれの手法を組み合わせて時刻差とプロセス変数値の両者を考慮した重み係数を求めて、予測値を算出してもよい。
【0116】
また、具体的な予測値の他の算出方法としては、検索の結果得られた複数個の類似事例のプロセス変数、および材質値の実績データから重回帰モデルを作成し、予測対象のプロセス変数値を、この重回帰モデルに入力して材質の予測値を求める方法がある。重回帰モデルの未定係数は、類似事例のプロセス変数と材質の実績値より、最小二乗法等の最適化手法で算出し、この未定係数値に予測したい時点のプロセス変数値を乗じて和を取った線形和を算出して、予測値とする。
【0117】
さらに、他の具体的な予測値の算出方法としては、検索の結果得られた複数個の類似事例の材質値に基づいて、予め設定された関数形の確率密度関数のパラメータを算出し、この確率密度関数モデルに基づいて予測値を算出する方法がある。一般にプロセス変数値と材質値の間には、測定ノイズ等の外乱や、センサで測定できない等の理由で時系列データベースに収集されていない因子の影響により、ほぼ同一のプロセス変数値であるにもかかわらず材質値が互いに異なるという、いわゆるバラツキが存在する。特に鉄鋼プロセスのような、高温環境等の理由で測定センサの設置に制約が多く、かつ外乱ノイズの多い製造プロセスにおいては、相当量のバラツキが存在する。
【0118】
このようなバラツキの大きい材質値の予測においては、顧客との取り決めで設定された材質の保証範囲を予測対象製品が満足しているかが重要であり、平均的な材質値を予測するよりも、ある所定の確率における材質値の範囲を予測することが有用であり、過去事例に基づく材質値の確率密度分布による予測が適切である。予測値の算出に用いる確率密度関数は、予め関数式を設定しておく必要があり、対象の製造プロセスに関する知識や、あるいは材質値のデータの度数分布に基づいて、分布を適切に表現できる関数を選定すればよい。具体的には、正規分布関数、指数分布関数、ポアソン分布関数、対数正規分布関数等統計学の研究分野で提案された関数を用いるのが一般的であるが、本発明は、これらの関数に限定されるものではなく、任意の関数系を用いることができる。
【0119】
これら確率密度関数のパラメータ(例えば正規分布関数の場合は、平均値と標準偏差)は、検索の結果得られた複数個の類似事例の材質値より算出される。この算出されたパラメータと、予め設定した確率値(例えば材質値の平均値を中心とする確率90%)を、上記設定した確率密度関数の累積確率密度逆関数に代入して演算する処理によって、製品の材質値の範囲を算出し、予測値とすることができる。図12に、確率密度関数に基づく材質の予測値の算出する処理を模式的に表した図を示す。
【0120】
以上、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100の構成と、これによる品質予測処理について説明した。本実施形態によれば、大規模、複雑、非線形かつ非定常な製造プロセスの実施データより類似例を高速に検索することができ、大規模、複雑、非線形かつ非定常な要因が影響を与える製品の材質の予測値を常に高い精度に維持することができる。また、操業並びに材質の安定化や不良発生頻度の低減に大きく寄与することができる。
【0121】
<2.第2の実施形態>
次に、図13および図14に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る品質予測装置による品質予測方法について説明する。本実施形態に係る品質予測装置は、材質値を予測したい製品の製造の途中工程において、望ましい材質を得るための操業条件を決定する。本実施形態の品質予測装置も第1の実施形態に係る品質予測装置100と同様に構成することができるので、ここでは装置構成の詳細な説明は省略し、製品の製造の途中工程における操業条件の決定方法を説明する。なお、図13は、本実施形態に係る品質予測装置により予測する操業条件を説明するための説明図である。図14は、本実施形態に係る品質予測装置による操業条件決定処理を示すフローチャートである。また、装置の各機能部については、以下の実施形態においても第1の実施形態と同一の符号を用いて説明する。
【0122】
[操業条件を決定する状況の説明]
本実施形態に係る品質予測装置100では、製造プロセス10において、順次行われる工程の途中で、望ましい材質の製品を得るための製造条件を決定することができる。例えば、図13に示すように、製造プロセス10で行われる各工程を、実施順に、プロセス1、プロセス2、プロセス3、・・・と表す。ここで、プロセス1は操業条件x、プロセス2は操業条件xで操業され、プロセス2に続いて行われるプロセス3は未実施であり、プロセス3の操業条件は未確定であるとする。このとき、本実施形態に係る品質予測装置100は、所望の材質値を有する製品を製造するためのプロセス3の操業条件を決定する。
【0123】
[製造条件決定処理]
品質予測装置100は、図14に示すように、まず、データ入力部110より材質値を予測する製品のプロセス変数値をデータ処理部20から取得する(S300)。この際、すでに製造プロセス10における処理が完了し、実績が確定したプロセス変数に関する値のみデータ処理部20より入力される。
【0124】
次いで、予測部140は、実績が確定したプロセス変数値について、検索用テーブル132を検索するための入力値を作成する(S302)。
【0125】
さらに、予測部140は、材質予測に必要なプロセス変数値の中で、未だ処理が確定していないためにステップS300では取得されなかったプロセス変数値について、該プロセス変数値が取り得るすべての操業範囲を網羅するようにプロセス変数値の代表値を作成する(S304)。この代表値は、望ましい材質を得るために決定される操業条件の候補となる値であり、予測部140は、これらの中から最も望ましい材質を得ると予測された操業条件を最終的な操業条件として決定する。
【0126】
予測部140は、各プロセス変数値について、検索用テーブル132の作成時に採用された分割候補点で区切られたプロセス変数値の各区間について1つずつ代表値を決定する。例えば、図8上に示すプロセス変数空間において、データuが未確定であるとき、予測部140は、分割候補点u20、u21、u22、u23の各区間について1つずつ代表値u(1)、u(2)、u(3)を決定する。このとき、代表値は、例えば、各区間の中間値とすることができる。このとき、さらに取得されていないプロセス変数値が複数ある場合は、予測部140は、それぞれのプロセス変数値の代表値のすべての組み合わせを作成する。
【0127】
その後、予測部140は、ステップS302で作成したプロセス変数値の実績についての入力値と、ステップS304で作成した未確定のプロセス変数値が取り得る代表値とに基づいて、検索用テーブル132を参照するための入力データを作成する(S306)。ステップS306において、入力データは、ステップS304で作成されたプロセス変数値の代表値のすべての組み合わせの数だけ作成される。これらの入力データは、予測対象の製品が今後、取り得る操業条件をすべて網羅したものに相当する。
【0128】
次いで、ステップS306で作成した入力データのうちの1つについて、記憶部130内の検索用テーブル132の検索を行い、入力データに類似した類似事例を選択する処理を行う(S308)。ステップS308の処理は、具体的には、図9のステップS204における類似事例の選択方法と同様に行うことができる。ステップS308の処理はステップS306で作成された入力データのすべてについて行われ、各入力データに類似する類似事例が抽出され、抽出された類似事例のデータからなる集合を作成する。このとき、異なる入力データに対して、同じ類似事例が抽出されることもある。この場合、類似事例のデータからなる集合では同じ類似事例のデータは1つしか含まないようにする。
【0129】
さらに、予測部140は、ステップS308で作成された類似事例のデータからなる集合を、ステップS304で作成した未確定のプロセス変数値の取り得る代表値毎に層別し、その層別毎に予測したい製品の材質値を算出する予測演算を行う(S310)。ステップS310の具体的な処理としては、例えば図9のステップS206の処理とすることができる。
【0130】
ステップS310の処理は、ステップS304で作成した未確定のプロセス変数値の取り得る代表値のすべてに対して行われる(S312)。これは、予測対象製品が今後取り得る操業条件の全てに対して、各々の材質予測値を算出することに相当する。ステップS312ですべての入力データの予測演算が完了していないと判定された場合には、ステップS310の処理を繰り返し行う。一方、ステップS312ですべての入力データの予測演算が完了したと判定された場合には、後述のステップS314の処理を行う。
【0131】
すべての入力データの予測演算が完了すると、予測部140は、ステップS300〜S312までの処理で算出した各操業条件に対する材質の予測値を、予め設定した評価関数に基づいて評価する。そして、予測部140は、最も良好な材質予測値となった入力データを選択し、その入力データに相当するプロセス変数値の代表値に換算して、換算した値を出力する(S314)。
【0132】
以上、本実施形態に係る品質予測装置100による操業条件決定処理について説明した。本実施形態によれば、大規模、複雑、非線形かつ非定常な製造プロセスの実施データより類似例を高速に検索することができ、製造の途中工程において、望ましい材質を得るための操業条件を決定することができる。これにより、操業並びに材質の安定化や不良発生頻度の低減に大きく寄与することもできる。
【0133】
[実施例1]
以下、図15〜図17に、製造プロセスとして、鉄鋼の薄板製造プロセスを対象とし、材質値を予測した例を示す。本実施例では、品質予測装置を薄板の製造プロセスに対して適用した例について説明するが、本発明はかかる例に限定されない。品質予測装置100は、操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と、製造された製品の材質値を取得可能な製造プロセスに対して適用することができる。
【0134】
薄板の製造プロセスに適用する場合、プロセス変数値としては、例えば、処理時刻、試片番号、採取部位、圧延コイル番号、巻番号、注文厚み、注文巾、連続焼鈍ライン入側板厚、連続焼鈍ライン入側板巾、冷延材質コード、連続焼鈍ライン中央速度、加熱ゾーン出側板温、第1均熱ゾーン出側板温、第2均熱ゾーン出側板温、第1冷却ゾーン出側板温、再加熱ゾーン出側板温、過時効ゾーン出側板温、第2冷却ゾーン出側板温、調質圧延工程伸び率、調質圧延工程圧延力、圧延ラインにおける粗圧延最終スタンド出側温度、仕上出側温度、巻取り温度等とすることができる。また、精錬工程を終了した時点での溶鋼内のC量、Si量、Mn量、P量、S量、Cu量、Ni量、Cr量、Mo量、Nb量、V量、Ti量、B量、Al量、N量、O量、Ca量等もプロセス変数値として用いられる。また、薄板の材質値として、降伏強度(YP)、引張強度(TS)、延性(EL)、ランクフォード値(R値)等を用いることができる。これらの値は、製造プロセスに設けられた各種センサや計測装置、情報を入力するための端末から入力される。
【0135】
図15は、材料の成分値のうち材質値に影響の大きい2つの成分値と、下流工程の温度条件の合計3因子をプロセス変数値として、上記特許文献1の手法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。図16は、図15で用いた3因子に、上流工程での操業条件を加えて、合計7因子をプロセス変数値として、上記特許文献1の手法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。図17は、図16と同じ7因子をプロセス変数値として、本実施形態に係る品質予測装置100による品質予測方法を用いて材質値予測を行ったときの予測値と実績値との関係を示すグラフである。本例では、値が小さくなるほど材質が良好であるように材質値を正規化している。
【0136】
製造プロセスにおいては、材料の成分値のバラツキや、上流工程での製造条件のバラツキが、下流工程の材質値に影響するため、過去の操業実績データとこれから製造する材料の成分値や上流工程の製造条件をもとに、下流工程の操業条件を調整している。図15と図16とを比較すると、上流工程での操業条件を加えることで、予測精度の向上を狙ったものであるが、かえって精度が悪くなっていることがわかる。一方、図16と図17とを比較すると、プロセス変数値を増やすことによって、予測精度が向上していることがわかる。これより、本実施形態に係る品質予測装置100による品質予測の精度が従来の品質予測手法と比較して高いことが確認された。
【0137】
[最適操業条件ガイダンスへの応用]
また、本発明の第2の実施形態に係る品質予測装置100を用いて、最適操業条件を操業オペレータにガイダンスすることも可能である。図18に、品質予測装置100を用いて最適操業条件ガイダンスを行う場合の一処理例を示す。図18では、品質予測装置100を用いてコイル毎の最適操業条件(温度条件)をガイダンスする処理を示し、温度条件を変化させたときの品質指標を最良とする温度条件がガイダンスされる。本例では、累積確率80%となる材質値を品質指標としており、これが最小となる温度条件を最適操業条件とする。
【0138】
図18に示すように、まず、予測対象コイルのプロセス変数値のデータが入力されると(S400)、品質予測装置100は、評価用データ1本1本について、温度条件を変えて、検索用テーブル132より該当する過去の実績データを抽出する(S402)。すべての温度条件について実績データの抽出を終えると、品質予測装置100は、抽出された過去の実績データを操業条件毎に、ここでは温度条件毎に層別する(S404)。図19に示す例では、実績データを温度条件について水準1〜5に層別している。
【0139】
そして、品質予測装置100は、操業条件別に確率分布モデルを作成し、品質指標を算出する(S406)。本例では、温度条件の層別それぞれについて確率分布モデルが作成され、累積確率80%となる材質値が求められる。さらに、品質予測装置100は、品質指標が最適となる操業条件を決定する(S408)。本例では、品質指標である累積確率80%となる材質値が最小となる温度条件が最適操業条件として決定される。
【0140】
その後、品質予測装置100は、ステップS402で抽出されステップS404で層別された過去の類似事例や、ステップS408で決定された最適操業条件を提示する(S410)。類似事例や最適操業条件は、例えば図19に示すように複合グラフとして図示することができる。図19では、温度条件毎の材質値を散布図として示すことで、各層に分布されたコイルの品質を目視することができる。また、温度条件毎の過去の実績データ数も棒グラフにより表してもよい。品質予測装置100は、累積確率80%となる材質値が最小となる温度条件(図19では水準4)を最適操業条件として操業オペレータにガイダンスする。
【0141】
このように、品質予測装置100を用いて、最適操業条件をガイダンスする機能を構成することも可能である。
【0142】
<3.第3の実施形態>
以下で説明する本発明の第3の実施形態では、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100に対して、いわゆるアンサンブル学習の手法を適用する例について、詳細に説明する。本実施形態に係る品質予測装置では、プロセス変数値に関するデータおよび材質値に関するデータを含む実績データから検索用テーブルを作成する際にアンサンブル学習の手法を適用して、複数の検索用テーブルを作成する。本実施形態に係る品質予測装置は、作成した複数の検索用テーブルをそれぞれ利用して以下で説明する処理を実施することで、品質の予測精度を更に向上させることができる。また、アンサンブル学習の手法を適用することで、品質の予測値の誤差も推定できるようになる。
【0143】
ここで、先だって説明したアンサンブル学習の手法を適用しない第1の実施形態に係る品質予測装置を適用した場合であっても、十分な品質の予測精度を得ることが可能である。従って、品質予測の範囲、要求される予測精度、設計コスト、演算コスト等の条件を勘案して、第1の実施形態に係る品質予測装置を利用するか、以下で説明する第3の実施形態に係る品質予測装置を利用するかを適宜選択することが望まれる。
【0144】
なお、以下の説明において、上記の第1の実施形態に係る説明の中で述べた事柄と実質的に同じ内容の事柄については、重複説明を避けるために詳細な説明を省略する場合がある。
【0145】
[品質予測装置の概略構成]
まず、図20および図21を参照して、本実施形態に係る品質予測装置200の概略構成について説明する。図20は、本実施形態に係る品質予測装置200の概略構成を示すブロック図である。図21は、本実施形態に係る検索用テーブル作成部220の構成を示すブロック図である。
【0146】
本実施形態に係る品質予測装置200は、製造プロセスのプロセス変数値および製造された製品の品質データである材質値に関するデータベース(検索用テーブル)を、アンサンブル学習の手法を用いて複数作成し、作成した各データベースから材質値を予測したい製品のプロセス変数値に類似するプロセス変数値を持つ過去の類似事例を検索することにより、製造される製品の材質値をそれぞれ予測する。その後、得られた複数の材質値を利用して、製造される製品の材質値を代表する値を算出する。本実施形態においても、製造プロセスの一例として薄板の製造プロセス10を取り上げ、製品の品質予測装置200の構成およびその機能について説明する。
【0147】
製造プロセス10により製造される製品の品質を予測するための品質予測システムは、図20に示したように、製造プロセス10、データ処理部20、実績データベース30、表示装置40および品質予測装置200を備える。ここで、本実施形態に係る製造プロセス10、データ処理部20、実績データベース30および表示装置40については、第1の実施形態に係る製造プロセス10、データ処理部20、実績データベース30および表示装置40と同様の構成を有し、同様の効果を奏するものである。従って、以下では詳細な説明は省略する。
【0148】
品質予測装置200は、実績データベース30に記憶された実績データ、すなわちプロセス変数値および材質値を取得し、アンサンブル学習の手法を利用して製品の品質を更に精度良く予測する装置である。品質予測装置200は、図20に示すように、データ抽出部210と、検索用テーブル作成部220と、記憶部230と、予測部240とを備える。第1の実施形態に係る品質予測装置100と本実施形態に係る品質予測装置200との間の主な違いは、データ抽出部210、検索用テーブル作成部220および予測部240が有する機能の違いにある。
【0149】
データ抽出部210は、第1の実施形態に係るデータ抽出部110と同様にして、実績データベース30より、プロセス変数値および材質値をそれぞれN個ずつ抽出する。ここで、抽出されたN個のプロセス変数値のつくる集合を{ui=1〜Nと表記することとし、抽出されたN個の材質値のつくる集合を{yi=1〜Nと表記することとする。さらに、各プロセス変数値と当該プロセス変数値に対応する材質値とを組にしたものの集合を、{(u,y)}i=1〜Nと表記することとする。
【0150】
データ抽出部210は、続いて、N個のプロセス変数値と材質値の組の集合{(u,y)}i=1〜NからランダムにN’個(N’≦N)のデータの組を抽出する処理をK回繰り返して、プロセス変数値および材質値からなるデータセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’(k=1,・・・,K)を作成する。このK個のデータセットは、N個のプロセス変数値および材質値の組の部分集合であるといえる。ここで、抽出されたプロセス変数値および材質値からなるデータセットの個数Kは、例えば、数十〜数百程度の値に設定される。
【0151】
なお、データ抽出部210は、プロセス変数値および材質値の組からN’個のデータの組を抽出する際、重複を許さずにランダムにN’個(この場合、N’<Nとなる。)抽出するように構成されていてもよいし、重複を許してランダムにN’個(この場合、N’≦Nとなる。)抽出するように構成されていてもよい。
【0152】
データ抽出部210は、以上のようにして作成したK個のデータセット(すなわち、実績データの部分集合)を、検索用テーブル作成部220に出力する。
【0153】
ここで、図20および図21において、検索用テーブル作成部220が複数のブロックを用いて記載されているが、これはK個のデータセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’(k=1,・・・,K)を各ブロックが処理するイメージを表現したものである。つまり、検索用テーブル作成部220がK個のブロックで構成され、k番目のブロックにはk番目のデータセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’が入力され、k番目のブロックでは、データセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’を利用して検索用テーブルが作成されることをイメージしたものである。なお、一つの検索用テーブル作成部220により、K個のデータセットに対して処理を行ってもよいことは言うまでもない。
【0154】
それぞれの検索用テーブル作成部220は、図21に示したように、データ入力部221と、プロセス変数値空間分割部222と、確率密度関数算出部223と、モデル選択部224と、再分割対象領域判定部225と、分割結果出力部226とを備える。ここで、入力されたデータに対して上記処理部が実施する処理の内容は、第1の実施形態に係るデータ入力部121、プロセス変数値空間分割部122、確率密度関数算出部123、モデル選択部124、再分割対象領域判定部125および分割結果出力部126が実施する処理の内容と同様である。従って、以下ではこれらの処理部が実施する処理の内容については、詳細な説明は省略する。
【0155】
データセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’が入力されると、検索用テーブル作成部220は、k=1〜Kのそれぞれについて、入力されたデータセット{(u(k),y(k))}j=1〜N’を利用して、第1の実施形態に示した方法で検索用テーブルを作成する。検索用テーブル作成部220は、作成したそれぞれの検索用テーブルを、記憶部230に出力する。その結果、図20に示したように、記憶部230には、K個の検索用テーブルが記憶されることとなる。
【0156】
予測部240は、記憶部230に記憶されているK個の検索用テーブルをそれぞれ利用し、k(k=1〜K)番目の検索用テーブルに対応する予測値y(k)を算出する。ここで、予測部240が予測値y(k)を算出する方法については、第1の実施形態に示した方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。このような処理により、予測部240は、K個の検索用テーブルに対応したK個の予測値y(1),y(2),…,y(K)を算出することとなる。
【0157】
次に、予測部240は、算出したK個の予測値y(1),y(2),…,y(K)を利用し、K個の予測値y(1),y(2),…,y(K)を代表する値として、下記数式11により平均値yを算出する。算出された平均値yが、着目する製品の予測値(すなわち、予測品質データ)として利用される。また、予測部240は、下記数式12に従って、K個の予測品質データのバラツキ度合いとして標準偏差σを算出する。標準偏差σは、下記数式13で表現される計算誤差の指標Δ±を算出するために利用される。この計算誤差の指標Δ±は、正規分布を仮定した信頼区間を表すものである。ただし、下記数式13に含まれるパラメータβは、信頼区間の有意水準を意味する。また、tK−1,β/2は、自由度K−1を有するt分布の累積確率が1−β/2となる点を意味する。
【0158】
【数9】

【0159】
なお、計算誤差の指標としては、上記数式13に示した指標Δ±の他にも、y(k)(k=1〜K)を値の大きい順に並べて上位および下位から所定個ずつ除いたデータセットの値の幅を利用することも可能である。
【0160】
予測部240は、このようにして算出した予測品質データyや指標Δ±を、表示装置40へと出力する。表示装置40は、公知の表示形式を利用して、予測品質データyをディスプレイ等の所定の表示手段(図示せず。)に表示させる。また、表示装置40は、上記のΔ±等で示される計算誤差を予測品質データyと併せて表示させてもよい。
【0161】
なお、上記説明では、K個の予測値y(1),y(2),…,y(K)を代表する値として平均値を利用する場合について説明したが、平均値以外にも、K個の予測値の最頻値、中央値、最大値、最小値等といった各種統計量を算出して、予測品質データyとして利用してもよい。
【0162】
以上、本実施形態に係る品質予測装置200の概略構成について説明した。
【0163】
[品質予測装置による品質予測処理]
次に、図22に基づいて、本実施形態に係る品質予測装置200による品質予測処理について説明する。なお、図22は、本実施形態に係る品質予測装置200による品質予測処理を示すフローチャートである。
【0164】
品質予測装置200による品質予測処理は、図22に示すように、データ抽出部210が実績データベース30からプロセス変数値および材質値をそれぞれN個抽出することにより開始される(S500)。
【0165】
次いで、データ抽出部210は、抽出したN個のプロセス変数値および材質値の組から、ランダムにN’個のデータの組を抽出する処理をK回繰り返し、N’個のプロセス変数値およびN’個の材質値からなるデータセットをK個(Kセット)作成する(S502)。データ抽出部210により作成されたK個の新たなデータセットは、検索用テーブル作成部220に入力される。
【0166】
次に、検索用テーブル作成部220は、入力されたk番目のデータセットを利用して、図3に示したような第1の実施形態に係る検索用テーブル作成処理に則して、k番目のデータセットに対応する検索用テーブルを作成する(S504)。検索用テーブル作成部220は、作成したk番目のデータセットに対応する検索用テーブルを、記憶部230に記憶させる。
【0167】
続いて、予測部240は、k番目データセットに対応する検索用テーブルに基づき、図9に示したような第1の実施形態に係る品質予測処理に則して、予測値y(k)を算出する(S506)。
【0168】
ここで、ステップS504〜S506の処理は、k=1〜Kのそれぞれについて実行される。その後、品質予測装置200は、処理をステップS508に進める。
【0169】
次に、予測部240は、算出したK個の予測値y(k)を利用して、これらK個の予測値を代表する値(例えば、K個の予測値の平均値)を算出する。このようにして得られた値が、予測品質データとして利用される(S508)。また、予測部240は、算出したK個の予測値を代表する値を利用して、指標Δ±を算出してもよい。予測部240により算出された予測品質データや指標Δ±は、表示装置40に出力される。
【0170】
続いて、表示装置40は、予測部240により算出された予測品質データを出力する(S510)。また、予測部240が指標Δ±を出力した場合には、表示装置40は、予測品質データと併せて指標Δ±を出力してもよい。ステップS510の処理を終了すると、品質予測装置200は、一連の処理を終了する。
【0171】
以上、本実施形態に係る品質予測装置200による品質予測処理の流れについて説明した。
【0172】
以上、本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置200の構成と、これによる品質予測処理について説明した。本実施形態によれば、大規模、複雑、非線形かつ非定常な製造プロセスの実施データより類似例を高速に検索することができ、大規模、複雑、非線形かつ非定常な要因が影響を与える製品の材質の予測値を常に高い精度に維持することができる。また、操業並びに材質の安定化や不良発生頻度の低減に大きく寄与することができる。
【0173】
<4.第4の実施形態>
[操業条件決定処理]
次に、本発明の第4の実施形態に係る品質予測装置による品質予測方法について簡単に説明する。本実施形態に係る品質予測装置は、材質値を予測したい製品の製造の途中工程において、望ましい材質を得るための操業条件を決定する。
【0174】
ここで、本実施形態に係る品質予測装置は、第3の実施形態に係る品質予測装置200と同様に構成することができるので、ここでは装置構成の詳細な説明は省略する。
【0175】
また、操業条件の決定処理の詳細についても、品質予測装置200により予測された、アンサンブル学習の手法による予測品質データを利用する以外は、第2の実施形態に示した操業条件の決定処理と同様に実施することが可能である。更に、本実施形態に係る品質予測装置200を用いて、最適操業条件を操業オペレータにガイダンスすることも同様に実施することが可能である。
【0176】
本実施形態によれば、大規模、複雑、非線形かつ非定常な製造プロセスの実施データより類似例を高速に検索することができ、製造の途中工程において、望ましい材質を得るための操業条件をより高精度に決定することができる。これにより、操業並びに材質の安定化や不良発生頻度の低減に大きく寄与することもできる。
【0177】
[実施例2]
以下、実施例1に示した製造プロセスに再度着目し、かかる製造プロセスに対して本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置200を適用した例を示す。なお、本実施例で利用した製造プロセスのプロセス変数値および材質値のデータ取得期間を実施例1の場合よりも長く設定し、本実施例で利用したプロセス変数値および材質値を、実施例1よりも更に長い期間の操業に対応する実績データとした。
【0178】
また、本実施例では、実施例1で利用した合計7因子のプロセス変数値に対して、更に7つの成分値および6つの上流工程での操業条件を加え、合計20因子をプロセス変数値とした。
【0179】
まず初めに、合計20因子からなるプロセス変数値および材質値を利用し、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100により材質値の予測を行った。その結果、図23Aに示したように、20因子のプロセス変数値のうち、表中に○で示した合計14因子のプロセス変数値を領域分割に用いた検索用テーブルを利用した場合に、予測精度が最良となった。この検索用テーブルによる予測値と実際の実績値との差分が、実際の操業で規定されている許容範囲内に含まれる割合を求めたところ、84.67%であった。予測値と実績値との差分は、品質予測装置の予測精度と考えることができる値である。
【0180】
このように、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100を用いた場合には、プロセス変数値が合計20因子に増えた場合であっても、約85%という高い予測精度を実現できることがわかった。
【0181】
次に、合計20因子からなる同じデータを利用し、本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置200により材質値の予測を行った。この際、重複を許容する条件のもとで20個(K=20)のデータセットを作成するように設定した。
【0182】
その結果、それぞれ予測精度が最良となった20個の検索用テーブルにおいて領域分割に用いられたプロセス変数値の一部は、図23Bに示したようになった。これらの検索用テーブルに基づく予測値(20個の予測値の平均値を利用した。)と実際の実績値との差分が、実際の操業で規定されている許容範囲内に含まれる割合を求めたところ、94.05%であった。このように、本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置200のように、検索用テーブルを作成するにあたってアンサンブル学習の手法を取り入れることにより、約85%という高い予測精度を実現した第1の実施形態に係る品質予測装置100よりも更に優れた予測精度を実現可能であることが明らかとなった。
【0183】
この割合の差は、次のように考えることができる。
すなわち、本発明の第1の実施形態に係る品質予測装置100では、与えられた20個のプロセス変数値を全て利用して領域分割を行った場合、分割領域が細かくなって各領域に含まれるデータの数が少なくなってしまい、予測精度が低下してしまうため、結果的に14個のプロセス変数値だけを用いた検索用テーブルが最良となったと考えられる。この場合、領域分割に使用されなかった6つのプロセス変数値の影響は、製品の品質予測に反映されないこととなる。
【0184】
一方、本発明の第3の実施形態に係る品質予測装置200では、図23Bに例示したように、データセットによって領域分割に用いられるプロセス変数値が異なるため、あるデータセットで作成された検索用テーブルでは領域分割に用いられなかったプロセス変数値が、他のデータセットで作成された検索用テーブルでは用いられている場合が生じる。そのため、データセット全体では、第1の実施形態に係る品質予測装置100よりも、より多くのプロセス変数値の影響を反映させることが可能となり、材質値の予測精度が更に向上したと考えられる。
【0185】
<5.品質予測装置のハードウェア構成例>
次に、図24を参照しながら、本発明の実施形態に係る品質予測装置100のハードウェア構成について、詳細に説明する。図24は、本発明の実施形態に係る品質予測装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0186】
品質予測装置100は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、品質予測装置100は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0187】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、品質予測装置100内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0188】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0189】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、品質予測装置100の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。品質予測装置100のユーザは、この入力装置909を操作することにより、品質予測装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0190】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、品質予測装置100が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、品質予測装置100が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。なお、本発明の実施形態では、出力装置911は、品質予測装置100とは別体の表示装置40として設けられている。
【0191】
ストレージ装置913は、品質予測装置100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0192】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、品質予測装置100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0193】
接続ポート917は、機器を品質予測装置100に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、品質予測装置100は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0194】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0195】
以上、本発明の実施形態に係る品質予測装置100の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0196】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0197】
10 製造プロセス
20 データ処理部
30 実績データベース
40 表示装置
100,200 品質予測装置
110,210 データ抽出部
120,220 検索用テーブル作成部
121,221 データ入力部
122,222 プロセス変数値空間分割部
123,223 確率密度関数算出部
124,224 モデル選択部
125,225 再分割対象領域判定部
126,226 分割結果出力部
130,230 記憶部
132,232 検索用テーブル
140,240 予測部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置であって、
前記製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶部から、実績データを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部により抽出された前記実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成部と、
品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出し、抽出された前記実績データに基づいて、前記品質予測対象製品の品質を予測する予測部と、
を備え、
前記検索用テーブル作成部は、
過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割部と、
前記分割候補点で分割された前記プロセス変数値空間の各局所領域について、前記品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、前記局所領域における前記品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出部と、
前記各局所領域について算出された前記あてはまり指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記プロセス変数値空間を確定分割するモデル選択部と、
前記モデル選択部により前記確定分割点にて確定分割された前記プロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定部と、
前記プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を前記検索用テーブルとして出力する分割結果出力部と、
を備えて、前記再分割対象領域判定部により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記プロセス変数値空間分割部による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出部によるあてはまり指標算出と、前記モデル選択部による確定分割と、前記再分割対象領域判定部による再分割の要否判定とを繰り返し、
前記予測部は、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の前記局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出することを特徴とする、品質予測装置。
【請求項2】
前記あてはまり指標は、前記局所領域における前記品質データへの確率密度関数のあてはまりの度合いを表す尤度関数の値であるとすることを特徴とする、請求項1に記載の品質予測装置。
【請求項3】
前記モデル選択部は、前記確定分割点にて確定分割した前記プロセス変数値空間の局所領域のうち、前記尤度関数の値が最小となる前記局所領域を再分割対象領域として選択することを特徴とする、請求項2に記載の品質予測装置。
【請求項4】
前記あてはまり指標は、前記局所領域における正規化された前記品質データのヒストグラムと、当該前記品質データを確率密度関数にあてはめた確率分布との誤差の絶対値の積分の符号を反転させた値とすることを特徴とする、請求項1に記載の品質予測装置。
【請求項5】
前記データ抽出部は、前記実績データ記憶部に記憶された前記実績データの集合から所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して前記実績データの部分集合を複数作成し、
前記検索用テーブル作成部は、前記実績データの部分集合の数をKとして、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の前記部分集合に属する前記実績データに基づいて、前記検索用テーブルを作成し、
前記予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の前記部分集合に対応する前記検索用テーブルから抽出された前記実績データに基づいて、前記品質予測対象製品の品質を示す予測品質データを算出し、得られたK個の予測品質データに基づいて、当該K個の予測品質データを代表する値を、前記品質予測対象製品の予測品質データとして算出することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項6】
前記K個の予測品質データを代表する値は、K個の前記予測品質データの平均値であることを特徴とする、請求項5に記載の品質予測装置。
【請求項7】
前記予測部は、前記K個の予測品質データのバラツキ度合いを算出することを特徴とする、請求項5または6に記載の品質予測装置。
【請求項8】
前記バラツキ度合いは、前記K個の予測品質データについての標準偏差であることを特徴とする、請求項7に記載の品質予測装置。
【請求項9】
前記データ抽出部は、同じ要素を重複して抽出することを許容する条件で、前記実績データの集合から所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して、前記実績データの部分集合を複数作成することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項10】
前記データ抽出部は、同じ要素を重複して抽出することを許容しない条件で、前記実績データの集合から当該集合の要素数よりも少ない所定数の要素をランダムに抽出する処理を繰り返し実行して、前記実績データの部分集合を複数作成することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項11】
前記予測部は、前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された前記実績データの各品質データに対して処理時刻に応じた重み付けを行い、重み付けされた前記各品質データの平均値を品質予測対象製品の予測品質データとすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項12】
前記予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された前記実績データの各品質データに対して処理時刻に応じた重み付けを行い、重み付けされた前記各品質データの平均値を、当該k番目の予測品質データとすることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項13】
前記予測部は、前記検索用テーブルから抽出された前記実績データの各品質データに対する重み付けを、現在時刻と処理時刻との時刻差が小さいほど大きく設定することを特徴とする、請求項11または12に記載の品質予測装置。
【請求項14】
前記予測部は、前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の前記実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、未定係数を乗じたプロセス変数値の線形和として品質データを推定する重回帰モデルの未定係数値を算出し、
前記重回帰モデルに品質予測対象製品のプロセス変数値を設定して取得される値を予測品質データとすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項15】
前記予測部は、前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の前記実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、予め設定された確率密度関数のパラメータを算出し、
確率密度関数モデルに該算出されたパラメータと予め設定した確率値を設定して取得される値を予測品質データとすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項16】
前記予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の前記実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、未定係数を乗じたプロセス変数値の線形和として品質データを推定する重回帰モデルの未定係数値を算出し、
前記重回帰モデルに品質予測対象製品のプロセス変数値を設定して取得される値を、当該k番目の予測品質データとすることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項17】
前記予測部は、k=1〜Kのそれぞれについて、k番目の前記検索用テーブルから、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データが複数抽出されたとき、抽出された複数の前記実績データのプロセス変数値および品質データに基づいて、予め設定された確率密度関数のパラメータを算出し、
確率密度関数モデルに該算出されたパラメータと予め設定した確率値を設定して取得される値を、当該k番目の予測品質データとすることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項18】
前記予測部は、生成した前記予測品質データをユーザに提示する出力装置に出力することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項19】
前記プロセス変数値空間分割部は、前記プロセス変数値空間を、前記分割候補点においてそれぞれ2つの局所領域に分割し、
前記確率密度関数算出部は、前記分割候補点で分割された前記局所領域のうち少なくともいずれか一方の前記局所領域に属するデータ点数が基準値未満となるとき、当該分割候補点を候補から除外することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項20】
前記再分割対象領域判定部は、前記プロセス変数値空間の分割回数が予め設定された最大分割数に達したとき、分割処理を終了することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項21】
前記プロセス変数値空間分割部は、前記局所領域の再分割時において、前記プロセス変数値空間分割部により設定された前記分割候補点のうち分割しようとする前記局所領域の領域外となる前記分割候補点を候補から除外することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の品質予測装置。
【請求項22】
前記請求項1〜21のいずれか1項に記載の品質予測装置を用いて、製造途中の製品の予測品質データを生成し、生成した前記予測品質データに基づき製造される製品が所望の品質データとなるように前記製造プロセスの操業条件を決定する操業条件決定方法であって、
前記データ抽出部により、前記製造プロセスにおける過去の実績データを記憶する実績データ記憶部から、既に工程が終了し実績が確定したプロセス変数値のみを確定実績データとして抽出し、
前記検索用テーブル作成部により、前記確定実績データに基づいて前記検索用テーブルを作成し、
前記予測部により、品質予測対象製品の予測品質データを出力するために必要な、前記確定実績データに含まれる操業条件以外の、決定対象である操業条件の決定されるべき値の候補である代表値を複数作成し、前記各代表値と前記確定実績データとの組合せについて前記予測品質データを生成して、所望の品質データに最も近い前記予測品質データとなった前記代表値を前記製造プロセスの操業条件として決定することを特徴とする、操業条件決定方法。
【請求項23】
前記プロセス変数値の代表値は、前記各プロセス変数値に対して前記検索用テーブルの作成時に採用された分割候補点で区分された各区間における代表値であることを特徴とする、請求項22に記載の操業条件決定方法。
【請求項24】
前記プロセス変数値の代表値は、前記各プロセス変数値に対して前記検索用テーブルの作成時に採用された分割候補点で区分された各区間における中間値であることを特徴とする、請求項22に記載の操業条件決定方法。
【請求項25】
前記予測部により、
前記確定実績データと、当該確定実績データに含まれるプロセス変数値以外のプロセス変数値が取り得る代表値とからなる複数の入力データを作成し、
前記各入力データに基づいて、前記検索用テーブルから当該入力データに類似する実績データを取得し、
取得した前記実績データを未確定のプロセス変数値の取り得る代表値毎に層別して、それぞれについて前記予測品質データを生成し、所望の品質データに最も近い前記予測品質データの前記代表値を前記製造プロセスの操業条件として決定することを特徴とする、請求項22〜24のいずれか1項に記載の操業条件決定方法。
【請求項26】
製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測方法であって、
前記製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶部から、実績データを抽出するデータ抽出ステップと、
前記データ抽出ステップにより抽出された前記実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成ステップと、
品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出し、抽出された前記実績データに基づいて、前記品質予測対象製品の品質を予測する予測ステップと、
を含み、
前記検索用テーブル作成ステップは、
過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割ステップと、
前記分割候補点で分割された前記プロセス変数値空間の各局所領域について、前記品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、前記局所領域における前記品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出ステップと、
前記各局所領域について算出された前記あてはまり指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記プロセス変数値空間を確定分割するモデル選択ステップと、
前記モデル選択ステップにて前記確定分割点にて確定分割された前記プロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定ステップと、
前記プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を前記検索用テーブルとして出力する分割結果出力ステップと、
を含んで、前記再分割対象領域判定ステップにより再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記プロセス変数値空間分割ステップと、前記確率密度関数算出ステップと、前記モデル選択ステップと、前記再分割対象領域判定ステップとを繰り返し、
前記予測ステップは、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の前記局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出することを特徴とする、品質予測方法。
【請求項27】
コンピュータを、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶手段から、実績データを抽出するデータ抽出手段と、
前記データ抽出手段により抽出された前記実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成手段と、
品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出し、抽出された前記実績データに基づいて、前記品質予測対象製品の品質を予測する予測手段と、
を備え、
前記検索用テーブル作成手段は、
過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割手段と、
前記分割候補点で分割された前記プロセス変数値空間の各局所領域について、前記品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、前記局所領域における前記品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出手段と、
前記各局所領域について算出された前記あてはまり指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記プロセス変数値空間を確定分割するモデル選択手段と、
前記モデル選択手段により前記確定分割点にて確定分割された前記プロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、
前記プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を前記検索用テーブルとして出力する分割結果出力手段と、
を備えて、前記再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記プロセス変数値空間分割手段による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出手段によるあてはまり指標算出と、前記モデル選択手段による確定分割と、前記再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返し、
前記予測手段は、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の前記局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出することを特徴とする品質予測装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項28】
コンピュータに、製造プロセスの操業条件およびプロセスの状態量からなるプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記製造プロセスにおける過去の実績データに基づいて、製品の品質を予測する品質予測装置として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記製造プロセスにおける過去の製造実績に係わるプロセス変数値と品質データとを含む実績データを記憶する実績データ記憶手段から、実績データを抽出するデータ抽出手段と、
前記データ抽出手段により抽出された前記実績データに基づいて、品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データの検索に用いる検索用テーブルを作成する検索用テーブル作成手段と、
品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出し、抽出された前記実績データに基づいて、前記品質予測対象製品の品質を予測する予測手段と、
を備え、
前記検索用テーブル作成手段は、
過去の実績データのプロセス変数値からなるプロセス変数値空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定するプロセス変数値空間分割手段と、
前記分割候補点で分割された前記プロセス変数値空間の各局所領域について、前記品質データを確率変数とする確率密度関数を算出して、前記局所領域における前記品質データへの当該確率密度関数のあてはまりの度合いを表すあてはまり指標を算出する確率密度関数算出手段と、
前記各局所領域について算出された前記あてはまり指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記プロセス変数値空間を確定分割するモデル選択手段と、
前記モデル選択手段により前記確定分割点にて確定分割された前記プロセス変数値空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、
前記プロセス変数値空間の局所領域の分割結果を前記検索用テーブルとして出力する分割結果出力手段と、を備えて、前記再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記プロセス変数値空間分割手段による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出手段によるあてはまり指標算出と、前記モデル選択手段による確定分割と、前記再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返し、
前記予測手段は、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と同一の前記局所領域に存在するプロセス変数値を類似のプロセス変数値として、前記品質予測対象製品のプロセス変数値と類似するプロセス変数値を有する前記実績データを前記検索用テーブルから抽出することを特徴とする品質予測装置として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−80458(P2013−80458A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198716(P2012−198716)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu−ray
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】