説明

哺乳類の有核細胞に由来するマイクロベシクル及びその用途

【課題】哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より小さいマイクロベシクルを提供する。
【解決手段】本発明のマイクロベシクルを用いて治療又は診断用物質を特定の組織又は細胞へ伝達することができ、具体的には、単核球、マクロファージ、樹枝状細胞、幹細胞などに由来するマイクロベシクルを用いて、癌組織、血管又は炎症組織などへ前記治療及び/又は診断用物質を特異的に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の有核細胞に由来するマイクロベシクル(microvesicles)、及びそのマイクロベシクルを用いて治療用及び/又は診断用物質を伝達する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
疾病の治療のために薬物を個体に投与する場合、投与される薬物が標的位置へ伝達されてその効果を発揮することを助けるために、薬物伝達システム(Drug Delivery System、DDS)が使用できる。薬物が生体に吸収又は利用される速度があまり遅くて吸収されなかった薬物があまり速く体外へ消失する場合には、薬物の放出速度を遅らせる薬物伝達システムが採用される。副作用の激しい薬物を使用する場合には、必要な組織又は細胞へのみ薬物を伝達する必要がある。例えば、癌治療のための抗癌剤の中には、癌細胞だけでなく、正常細胞に対しても強い毒性を示すものが多い。この場合、癌細胞又は癌組織にのみ抗癌剤を伝達することができれば、癌治療過程における患者の苦痛及び不便を減らすことができる。
【0003】
1960年代に最初使用されて以来、リポソームが薬物伝達システムとして広く研究されてきた。例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などのポリマーをリポソームと接合(conjugation)して、薬物を内包したリポソームが血液から容易に除去されないようにして薬物の血中での循環半減期(circulatory half-life)を増加させたステルスリポソーム(stealth liposome)が開発された。この方法で抗癌剤としてのドキソルビシン(doxorubicin)を伝達するドキシル(DOXIL)が商用化された。ところが、リポソームとステルスリポソームは、特定の細胞を認識する能力がないため、特定の細胞又は特定の組織へ薬物を伝達する目的では使用することができない。特定の標的に結合できるように単一標的抗体などを接合したリポソームも開発されているが、未だ臨床試験を通過して商用化されたものはない。
【0004】
人工的に合成した脂質からなるリポソームの代わりに、自然的な細胞膜を用いた伝達システムが開発されている。薬物を含む培養液で培養される形質転換微生物が分泌するベシクルを薬物伝達に利用する方法が公開された(特許文献1、“Compositions and methods for targeted in vitro and in vivo drug delivery to mammalian cells via bacterially derived intact minicells”)。ところが、バクテリア細胞膜成分からなるベシクルには、グラム陰性菌の場合は脂質多糖類(lipopolysaccharides)などが含まれているため、体内に投与したとき、人体における免疫反応などの多様な副作用をもたらすおそれがある。これとは異なり、ヒトの赤血球細胞膜を用いた伝達システムも公開された(特許文献2、“Cell and sub-cell methods for imaging and therapy”)。血中での寿命が120日の赤血球細胞膜からなるベシクルに、医療用映像を得るための造影剤(image contrasting agent)又は放射線治療のための補助剤として用いられる金属粒子、金属イオンを入れてこれらを血中で長らく維持させることができる。しかし、赤血球細胞は、特定の細胞又は特定の組織を認識する能力がないため、特定の細胞又は特定の組織へ薬物を伝達する目的では使用することができない。また、赤血球細胞は、核がなくて形質転換が不可能なので、特定の細胞又は組織を認識するタンパク質を細胞膜の表面に発現させることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/078954
【特許文献2】米国特許公開第2007/0243137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決するために研究した結果、形質転換可能な哺乳類の有核細胞に由来するマイクロベシクルを用いて治療及び/又は診断のための物質を特定の細胞又は組織などの標的に効果的に伝達することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
よって、本発明の目的は、哺乳類の有核細胞に由来するマイクロベシクルを含む組成物、疾病の治療用及び/又は診断用物質が負荷(loading)された前記マイクロベシクルを含む薬学的組成物、前記マイクロベシクルを用いて物質を特定の標的に伝達する方法、前記マイクロベシクルを含む治療用又は診断用物質伝達システム、及び前記マイクロベシクルを含むキットなどを提供することにある。
【0008】
ところが、本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は以下の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む組成物を提供する。
【0010】
本発明で使用される哺乳類の有核細胞は、特異的細胞又は組織への誘導が可能な細胞、疾病の治療用又は診断用物質を発現する細胞などを含む。また、前記哺乳類の有核細胞は、特異的細胞又は組織へ誘導されるように形質転換された細胞、疾病の治療用及び/又は診断用物質が発現するように形質転換された細胞などを含む。
【0011】
本発明のマイクロベシクルは、哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いて製造することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを含む、薬学的組成物を提供する。
【0013】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞から自然的に分泌され、前記細胞より小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディング(shedding)マイクロベシクルを含む、薬学的組成物を提供する。
【0014】
前記治療用及び/又は診断用物質は、前記有核細胞に由来するもの及び細胞の外部から注入されたものなどを含む。
【0015】
前記治療及び/又は診断のための多様な物質は、本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに下記の方法を用いて負荷することができる。
【0016】
第一、治療及び/又は診断のための多様な物質を既に負荷した細胞からマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造する。例えば、治療及び/又は診断のための多様な物質を培養液に含ませて細胞を培養すると、前記物質の負荷された細胞を得ることができ、或いは電気穿孔法で細胞に物質を負荷することができる。また、このような細胞から自然的に分泌されるシェディングマイクロベシクル、又は超音波分解、押出、機械的分解などの方法で製造したマイクロベシクルには、前記物質が負荷されている。
【0017】
第二、マイクロベシクルの製造過程で前記物質をマイクロベシクルに負荷する。例えば、細胞の含まれた溶液に前記物質を添加した後、細胞より大きさが小さいフィルターに通過させる押出法でマイクロベシクルを製造すると、マイクロベシクルに前記物質が負荷される。
【0018】
第三、シェディングマイクロベシクル又はマイクロベシクルを製造した後、前記物質を負荷することができる。例えば、多様な物質を懸濁液に含ませてマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルと培養し、或いは既に製造したシェディングマイクロベシクル又はマイクロベシクルに物質を電気穿孔法で負荷することができる。
【0019】
ところが、本発明で使用できる物質をマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷する方法は、前述した例に限定されるものではない。
【0020】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達用組成物を提供する。
【0021】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいシェディングマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達用組成物を提供する。
【0022】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達システムを提供する。
【0023】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいシェディングマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達システムを提供する。
【0024】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階;前記懸濁液から製造されたマイクロベシクルを分離する段階;及び前記分離されたマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【0025】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階;及び前記治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階。
【0026】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して、前記哺乳類の有核細胞と治療用又は診断用物質を含む混合懸濁液を得る段階;及び前記混合懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解、及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階。
【0027】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来シェディングマイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液からシェディングマイクロベシクルを分離する段階;及び前記分離されたシェディングマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【0028】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来シェディングマイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階;及び前記培養液から、前記治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを分離する段階。
【0029】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを使用することを含む、疾病の治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法を提供する。
【0030】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを使用することを含む、疾病の治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法を提供する。
【0031】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法を提供する。
【0032】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法を提供する。
【0033】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の診断に必要なプライマー、プローブ、アンチセンス核酸又は抗体が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを含む、疾病診断用キットを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る前記治療及び/又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することにより、目標の細胞又は組織に主に治療用及び/又は診断用物質を伝達し、他所への治療用及び/又は診断用物質の伝達を抑制すると、薬物等の治療用物質の副作用を減らして疾病の治療過程における患者の苦痛及び不便を減らすことができ、特異的細胞又は特異的組織にのみ薬物を伝達することにより治療効能を増加させることができ、特に転移癌のように既存の抗癌治療方法では治療が難しい場合に少ない副作用で効果的に転移癌を治療することができ、目標の細胞又は組織にのみ診断用物質が伝達されるようにすることにより、疾病に関連した細胞又は組織を容易に診断することができる。
【0035】
また、哺乳類の有核細胞が発現する標的誘導物質、治療用物質又は診断用物質は単一物質の精製過程なしでマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの表面及び/又は内部に負荷することができ、負荷された物質は本来の機能を効果的に行うことができる。
【0036】
また、疾病の治療用及び/又は診断用物質が負荷された本発明の哺乳類有核細胞由来マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクル及びその製造方法は、in vitro及び/又はin vivoで治療及び/又は診断用、又は実験用として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】哺乳類有核細胞又は形質転換された哺乳類有核細胞から、マイクロベシクル、及び標的誘導物質、治療用物質、診断用物質などの多様な物質が負荷されたマイクロベシクルを製造する方法を示す模式図である。
【図2】押出法で製造した哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図3】押出法で製造した哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの大きさを示すグラフである。
【図4】単核球細胞、押出法で製造したマイクロベシクル、及び超音波分解法で製造したマイクロベシクルの膜タンパク質のトポロジーを示す図である。
【図5】シクロデキストリンが含まれたマイクロベシクルの大きさを示すグラフである。
【図6】ポリエチレングリコールが含まれたマイクロベシクルの大きさを示すグラフである。
【図7】細胞由来miRNA負荷マイクロベシクルを標的細胞に処理した後、miRNAの伝達効果を確認した図である。
【図8】血管内皮細胞由来VEGF受容体を負荷したマイクロベシクルを用いてVEGFとの結合能力を確認したグラフである。
【図9】VEGF受容体を形質転換を介して負荷した細胞由来マイクロベシクルを用いてVEGFとの結合能力を確認したグラフである。
【図10】ICAM−1を形質転換を介して負荷した細胞由来マイクロベシクルを用いて免疫細胞と血管内皮細胞との結合を阻害することを示すグラフである。
【図11】ドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルの製造の際に使用されたドキソルビシンの濃度に対する、負荷されたドキソルビシンの量を示すグラフである。
【図12】ドキソルビシンが負荷され且つ押出法で製造した有核細胞由来マイクロベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図13】ドキソルビシン−マイクロベシクルに負荷されたドキソルビシンを示す写真である。
【図14】酸化鉄が負荷された有核細胞由来マイクロベシクルの製造結果を示す写真である。
【図15】有核細胞由来マイクロベシクルを用いてGFP遺伝子を細胞へ伝達した結果を示す写真である。
【図16】有核細胞由来マイクロベシクルを用いてRFP遺伝子を細胞へ伝達した結果を示す写真である。
【図17】有核細胞由来マイクロベシクルを用いてナノパーティクルQ−dotを細胞へ伝達した結果を示す写真である。
【図18】有核細胞由来マイクロベシクルを細胞に伝達した結果を示す写真である。
【図19】有核細胞由来マイクロベシクルを用いてタンパク質RNase Aを細胞へ伝達した結果を示す写真である。
【図20】有核細胞由来マイクロベシクルを用いて抗炎症薬物を伝達した後、TNF−αとIL−6の分泌を測定したグラフである。
【図21】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いて、TNF−αを処理したHUVEC細胞へ特異的にドキソルビシンを伝達した結果を示す写真である。
【図22】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いて、TNF−αを処理したHUVEC細胞へ特異的にドキソルビシンを伝達した結果を示すグラフである。
【図23】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いて、TNF−αを処理したHUVEC細胞へ特異的にアポトーシス効果を示すグラフである。
【図24】有核細胞由来マイクロベシクルを用いて多様な薬物を伝達することができ、アポトーシスを引き起こすことができることを示す結果である。
【図25】有核細胞由来ドキソルビシン−マイクロベシクルがICAM−1を過発現する細胞及び発現しない細胞における効果を示すグラフである。
【図26】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルが分裂する細胞にのみ作用することを示す写真である。
【図27】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを投与する場合、マウスにおける癌の成長が阻害されることを示す結果である。
【図28】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを処理した後、癌組織における血管マーカーCD31の領域を示すグラフである。
【図29】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを処理した後、癌組織における、分裂する細胞マーカーであるPH−3で染色された細胞の数を示すグラフである。
【図30】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いて癌組織へドキソルビシンが伝達されることを示す写真である。
【図31】有核細胞由来のドキソルビシン負荷マイクロベシクルとドキソルビシンをマウスに入れた後、脾臓と心臓に存在するドキソルビシンを示す写真である。
【図32】ドキソルビシン負荷マイクロベシクルとドキソルビシンの濃度による癌組織の成長を示すグラフである。
【図33】ドキソルビシン負荷マイクロベシクルとドキソルビシンを処理したときのマウスの体重を測定したグラフである。
【図34】ドキソルビシン負荷マイクロベシクルとドキソルビシンを処理したときのマウスの血中の白血球数を測定したグラフである。
【図35】マイクロベシクルが作用するにあたり膜タンパク質とトポロジーが重要であることを示すグラフである。
【図36】多様な薬物の負荷されたマイクロベシクルが癌組織の成長を阻害することを示すグラフである。
【図37】ゲムシタビンとカルボプラチンを負荷したマイクロベシクルがヒト肺癌細胞の成長を阻害することを示すグラフである。
【図38】ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを処理した後、肺に転移される黒色腫の数を測定して示すグラフである。
【図39】黒色腫のあるマウスにドキシルビシン負荷マイクロベシクルを処理した後、マウスの生存率を示すグラフである。
【図40】骨髄由来マイクロベシクルが骨髄組織にターゲッティングされることを示す図である。
【図41】骨髄由来マイクロベシクルを用いてドキソルビシンを骨髄組織へ伝達することができることを示すグラフである。
【図42】ICAM−1を形質転換して負荷した有核細胞由来マイクロベシクルを用いて単核球に細胞特異的薬物を伝達した結果を示すグラフである。
【図43】サイトカラシンDを処理した単核球細胞から得たシェディングマイクロベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図44】ナノ粒子としての量子ドットが負荷されたシェディングマイクロベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図45】単核球由来シェディングマイクロベシクルを用いてドキソルビシンを細胞特異的に伝達してアポトーシスを誘導したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む、組成物を提供する。
【0039】
本発明で使用される哺乳類の有核細胞は、単核球(monocyte)、マクロファージ(macrophage)、樹枝状細胞(dendritic cell)及び幹細胞(stem cell)よりなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。また、前記哺乳類の有核細胞は、幹細胞から分化した細胞よりなる群から選ばれたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明の「マイクロベシクル」は、哺乳類の有核細胞から人為的に製造されたベシクルであって、自然的に分泌される「シェディングマイクロベシクル」とは区別される。本発明の「マイクロベシクル」は、由来した細胞の細胞膜成分からなる脂質二重膜によって内部と外部が区分され、細胞の細胞膜脂質及び細胞膜タンパク質、核酸、並びに細胞成分などを持っており、元来細胞より大きさが小さいものを意味するが、これに限定されるものではない。
【0041】
一方、シェディングマイクロベシクルは、細胞が自然的に分泌するベシクルであって、由来する細胞の細胞膜細分からなる脂質二重膜によって内部と外部が区分され、細胞の細胞膜脂質及び細胞膜タンパク質、核酸並びに細胞成分を持っており、元来細胞より大きさが小さいものを意味する。
【0042】
本発明のマイクロベシクルは、哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いて製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明の一具現例において、前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの膜が前記哺乳類の有核細胞の細胞膜以外の成分をさらに含むことができる。
【0044】
前記細胞膜以外の成分として、標的誘導物質(targeting molecule)、標的細胞との細胞膜融合に必要な物質(fusogen)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、ポリエチレングリコールなどを含むことができる。また、前記細胞膜以外の成分は、多様な方法によって追加でき、細胞膜の化学的変形などを含む。
【0045】
例えば、前記マイクロベシクルの膜成分がチオール基(−SH)又はアミン基(−NH)を用いた化学的方法で変形し、或いは前記マイクロベシクルにポリエチレングリコールを化学的に結合させることにより前記マイクロベシクルの膜成分が化学的に変形したものであってもよい。
【0046】
本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの製造の際に、前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの膜成分を化学的に変形させる段階をさらに含むことができる。
【0047】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞よりその大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを含む、薬学的組成物を提供する。
【0048】
本発明で使用される哺乳類の有核細胞は、特異的細胞又は組織などへの誘導が可能な細胞や、疾病の治療用又は診断用物質を発現する細胞などを含む。
【0049】
また、本発明の哺乳類の有核細胞は形質転換された細胞を含む。具体的に、前記形質転換された細胞は治療、診断、標的誘導物質、又は標的細胞との細胞膜融合に必要な物質を発現するように形質転換された細胞;及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる形質転換された細胞を含むが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記哺乳類の有核細胞は物質処理又は遺伝子導入によって形質転換されたものであってもよく、2回以上形質転換されたものであってもよい。
【0051】
前記本発明の一具現例において、前記哺乳類の有核細胞は一つ以上の特定タンパク質の発現を抑制するように形質転換されたものであってもよい。
【0052】
前記本発明の一具現例において、前記哺乳類の有核細胞は細胞接合分子、抗体、標的誘導タンパク質、細胞膜融合タンパク質自体、及びこれらの融合タンパク質よりなる群から選ばれる一つ以上を発現するように形質転換されたものであってもよい。
【0053】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞よりその大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを含む、薬学的組成物を提供する。
【0054】
本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷する物質は、特に限定されず、例えば、治療用及び/又は診断用物質であってもよく、前記哺乳類の有核細胞又は形質転換された有核細胞が発現している物質であってもよい。必要に応じては、前記哺乳類の有核細胞に由来せずに細胞の外部から用意された物質を負荷してもよいが、これに限定されない。すなわち、前記治療用及び/又は診断用物質は前記有核細胞に由来するもの、及び細胞の外部から注入されたものなどを含む。また、負荷される物質は1つでも、2つ以上でもよい。
【0055】
本発明の別の具現例において、前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、サイトカイン、成長因子、抗体、標的誘導タンパク質、細胞膜融合タンパク質自体、及びこれらの融合タンパク質よりなる群から選ばれる一つ以上を発現する細胞、又は発現するように形質転換された細胞から用意できるが、これに限定されない。また、前記物質をマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの表面に物理、化学、及び/又は生物学的方法で負荷することができるが、これに限定されない。
【0056】
細胞に存在しない治療及び/又は診断のための多様な物質をマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに次の様々な方法で負荷することができる。
【0057】
第一、治療又は診断のための多様な物質を既に負荷した細胞からマイクロベシクルを製造する。例えば、治療及び診断のための多様な物質を培養液に含ませて細胞を培養すると、前記物質の負荷された細胞を得ることができ、或いは電気穿孔法で細胞に物質を負荷することができる。このような細胞から自然的に分泌されるシェディングマイクロベシクル、又は超音波分解、押出、機械的分解などの方法で製造したマイクロベシクルには、前記物質が負荷されている。
【0058】
第二、マイクロベシクルの製造過程で前記物質をマイクロベシクルに負荷する。例えば細胞の含まされた溶液に前記物質を添加した後、細胞より大きさが小さいフィルターに通過させる押出法でマイクロベシクルを製造すると、マイクロベシクルに前記物質が負荷される。
【0059】
第三、シェディングマイクロベシクル又はマイクロベシクルを製造した後、前記物質を負荷することができる。例えば、多様な物質を懸濁液に含ませてマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルと培養し、或いは電気穿孔法で既に製造したシェディングマイクロベシクル又はマイクロベシクルに物質を負荷することができる。
【0060】
ところが、本発明で使用できる物質をマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷する方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0061】
本発明に使用される治療用及び/又は診断用物質は、抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤(angiogenesis inhibitor)、ペプチド(peptide)、タンパク質(protein)、毒素(toxin)、核酸(nucleic acid)、ビーズ(bead)、マイクロ粒子(microparticle)及びナノ粒子(nanoparticle)よりなる群から選ばれる一つ以上でありうるが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記核酸は、DNA、RNA、アプタマー(aptamer)、LNA(locked nucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)、及びモルホリノ(morpholino)よりなる群から選ばれたものでありうるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記ナノ粒子は、酸化鉄、金、炭素ナノチューブ又は磁気ビーズ(magnetic bead)を含むナノ粒子でありうるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明の一具現例において、前記治療用及び/又は診断用物質は蛍光を放出する物質でありうるが、これに限定されるものではない。例えば、前記蛍光を放出する物質が蛍光タンパク質又は量子ドット(quantum dot、Qdot)であってもよい。
【0065】
前記本発明の別の具現例において、前記治療用及び/又は診断用物質が一つ以上の抗癌剤でありうる。
【0066】
本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、特定の細胞又は組織などへの誘導が可能なベシクルを含む。前記特異的組織は血管、癌又は炎症組織でありうるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明における「癌」とは、正常なアポトーシスの均衡が破れる場合、細胞が過多増殖し、周辺組織に浸潤しうる特徴を持つ疾病群をいう。肺癌、喉頭癌、胃癌、大腸/直腸癌、肝癌、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、子宮頚部癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌などの上皮細胞などに由来する癌腫(carcinoma)、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、繊維細胞癌などの結合組織細胞に由来する肉腫(sarcoma)、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血細胞に由来する血液癌、神経組織に発生する腫瘍などよりなる群から本発明が治療しようとする標的が選択できるが、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明における「血管疾患」は、血管内或いは血管壁に代謝性、感染性、毒性又は免疫性原因によって血管内或いは血管壁に障害が発生する疾患群である。動脈硬化症(或いは粥状硬化症)、挟心症、急性心筋梗塞、脳卒中、血管性痴呆、その他の虚血性血管疾患などの代謝性血管疾患、敗血症、播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation)、血栓/塞栓症、血管炎、糸球体腎炎、急性呼吸不全症候群、肺気腫などの感染性、毒性、又は免疫性血管疾患などよりなる群から、本発明が治療しようとする標的が選択できるが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明における「炎症」は、体液が組織細胞の間に増加して現れる浮腫、血管拡張による充血、発熱物質と血管拡張による発熱、アラキドン酸代謝産物による疼痛現象などの症状又は症候として現われ、時間によって急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症に分類することができ、病態生理によって感染性、アレルギー性、自己免疫性、毒性、代謝性、外傷性炎症疾患に分類することができる。鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、鼻咽喉炎、喉頭炎、気管支炎、喘息、慢性閉鎖性肺疾患、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、肺線維化などの呼吸器系炎症疾患、口腔炎、食道炎、胃炎、消化性潰瘍、過敏成長症候群、炎症性腸疾患、胆嚢炎、胆道炎、膵臓炎、肝炎などの消化器系炎症疾患、アトピー皮膚炎、乾癬などの皮膚炎症疾患、心内膜炎、心筋炎、心嚢炎、血管炎、動脈硬化症、敗血症などの心血管系炎症疾患、甲状腺炎、副甲状腺炎、糖尿病などの内分泌系炎症疾患、糸球体腎炎、腎症、間質性腎炎、睾丸炎、卵巣炎、子宮内膜炎、膣炎などの泌尿生殖系炎症疾患、リウマチ性関節炎、脊椎関節病症、骨関節炎、痛風、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、筋病症、シェーグレン症候群、ベーチェット病、抗リン脂質症候群などの筋骨格系炎症疾患、血管性痴呆、アルツハイマー病、退行性脳疾患、うつ病、精神分裂症などの脳精神系炎症疾患などよりなる群から、本発明が治療しようとする標的が選択できるが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明における前記薬学的組成物は、前記抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ペプチド、タンパク質、毒素、核酸、ビーズ、マイクロ粒子及びナノ粒子のうちの少なくとも1種の有効成分以外に、薬学的に許容される担体、すなわち食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム及びこれらの成分のうち少なくとも1種を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液など他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び/又は潤滑剤をさらに添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤に製剤化することができる。ひいては、当該技術分野における適正の方法、或いはRemingtonの文献(Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Company, Easton PA)に開示されている方法を用いて、各成分に応じて好ましく製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、剤形には特に限定はないが、注射剤又は吸入剤に製剤化することが好ましい。
【0071】
本発明の薬学的組成物の投与方法は、特に限定されるものではないが、目的の方法によって静脈内、皮下、腹腔内、吸入又は局所適用などのように非経口投与又は経口投与することができる。投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによってその範囲が異なる。1日投与量は、治療を必要とする個体に投与されることにより、軽減した疾病状態に対する治療に充分な本発明の治療用物質の量を意味する。治療用物質の効果的な量は、特定の化合物、疾病の状態及びその深刻度、治療を必要とする個体によって異なり、当業者によって通常的に決定できる。非制限的例として、本発明に係る組成物の人体に対する投与量は患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患の程度によって異なり、体重70kgの成人患者を基準に、一般的には0.1〜1000mg/日、好ましくは1〜500mg/日であり、一定の時間間隔で1日1回〜数回に分割して投与してもよい。
【0072】
本発明における「個体」とは、癌、血管疾患又は炎症疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的にはヒト又は非ヒトの霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬及び牛などの哺乳類を意味する。
【0073】
本発明の別の側面は、本発明に係るマイクロベシクルを含む、疾病の治療用及び/又は診断用物質伝達用組成物を提供する。
【0074】
前記組成物は、疾病治療用及び/又は診断用物質を組織又は細胞特異的に伝達することを可能とする。
【0075】
本発明の別の側面は、本発明に係るマイクロベシクルを含む、疾病の治療用及び/又は診断用物質伝達システムを提供する。
【0076】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいシェディングマイクロベシクルを含む、治療用又は診断用物質伝達用組成物を提供する。
【0077】
本発明の別の側面は、前記哺乳類の有核細胞に由来するシェディングマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達システムを提供する。
【0078】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された前記哺乳類有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法を提供する。
【0079】
前記本発明に係る製造方法の一具現例は、下記の段階を含む:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解、及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いて、マイクロベシクルを製造する段階、前記懸濁液から製造されたマイクロベシクルを分離する段階、及び前記分離されたマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【0080】
前記本発明に係る製造方法の別の具現例は、下記の段階を含む:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階、及び前記治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いて、マイクロベシクルを製造する段階。
【0081】
前記本発明に係る製造方法の別の具現例は、下記の段階を含む:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して、前記哺乳類の有核細胞と治療用又は診断用物質を含む混合懸濁液を得る段階、及び前記混合懸濁液から押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階。
【0082】
本発明の別の側面は、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された前記哺乳類有核細胞由来シェディングマイクロベシクルの製造方法を提供する。
【0083】
前記本発明に係る製造方法の一具現例は、下記の段階を含む:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液からシェディングマイクロベシクルを分離する段階、及び前記分離されたシェディングマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【0084】
前記本発明に係る製造方法の別の具現例は、下記段階を含む:哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階、及び前記培養液から前記治療用又は診断用物質の負荷されたシェディングマイクロベシクルを分離する段階。
【0085】
前記治療用及び/又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの製造方法は、前記処理によって製造されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを含む懸濁液から前記治療用及び/又は診断用物質の負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを分離する段階をさらに含むことができる。
【0086】
前記分離段階は、密度勾配(density gradient)、超遠心分離(ultracentrifugation)、濾過(filtration)、透析(dialysis)及び自由流動電気移動法(free-flow electrophoresis)よりなる群から選ばれた方法を用いて行われてもよい。
【0087】
前記本発明の製造方法は、前記マイクロベシクルの膜に前記原形質体の細胞膜以外の成分を追加する段階をさらに含んでもよい。前記追加される成分はシクロデキストリン及びポリエチレングリコールを含む。
【0088】
また、前記本発明の製造方法は、マイクロベシクルの膜成分を化学的に変形させる段階をさらに含んでもよい。前記化学的変形方法は前述したとおりである。
【0089】
また、前記本発明の製造方法は、前記哺乳類の有核細胞の細胞膜と比較してトポロジーが変形された膜を有するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを除去する段階をさらに含むことができる。
【0090】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された前記本発明のマイクロベシクルを使用することを含む、治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法を提供する。すなわち、本発明のマイクロベシクルを用いて疾病の治療用又は診断用物質を標的細胞又は組織へ伝達することが可能である。
【0091】
前記本発明の一具現例において、2種以上の前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することができる。
【0092】
例えば、前記マイクロベシクルに2種以上の前記治療用又は診断用物質が共に負荷されているものを用いて、2種以上の前記治療用又は診断用物質を伝達することができる。
【0093】
前記本発明の別の具現例において、1種の前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル、2種以上の前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた2つ以上のマイクロベシクルを用いて前記治療用又は診断用物質を伝達することができる。例えば、前記2つ以上のマイクロベシクルを同時に投与することができる。
【0094】
前記本発明の別の具現例において、1種の前記治療用間又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル、2種以上の前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた2つ以上のマイクロベシクルを順次投与して前記治療用又は診断用物質を伝達することができる。
【0095】
また、本発明は、疾病の治療用及び/又は診断用物質が負荷された哺乳類有核細胞由来シェディングマイクロベシクルを使用することを含む、治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法を提供する。
【0096】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷された前記本発明のマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法を提供する。
【0097】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法を提供する。
【0098】
本発明の別の側面は、哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の診断に必要なプライマー、プローブ、アンチセンス核酸又は抗体が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを含む、疾病診断用キットを提供する。
【0099】
[マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを用いた物質の伝達]
本発明では、特定の組織へ誘導される細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用し、或いは標的タンパク質を発現した形質転換細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することができる。これに加えて、前記細胞と形質転換細胞に細胞膜融合物質が発現するように形質転換された細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することができる。
【0100】
血液に存在する人体免疫体系の単核球、単核球に由来するマクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞などは癌組織及び炎症組織へ誘導されることが知られている。したがって、単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞などの細胞膜からなるマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、癌組織及び炎症組織へ誘導される。特定の細胞又は組織に特異的に発現した基質に選択的に結合するタンパク質を発現するように形質転換させた細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、特定の細胞又は組織へ誘導される。よって、本発明では、このような細胞からマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造し、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに治療又は診断のための物質を負荷して当該物質を標的とした細胞、組織又は血液に伝達する。
【0101】
単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞などが特定の組織へ誘導されるとき、細胞膜に存在する多様な細胞膜タンパク質(plasma membrane protein)が関与する。例えば、単核球細胞の表面にはLFA−1(leukocyte function-associated antigen-1)、Mac−1(macrophage-1 antigen)などのインテグリン(integrin)を含む多様な細胞接合分子(cell adhesion molecule)が存在する。これらの細胞接合分子は血管細胞の表面に存在するICAM−1(intercellular adhesion molecule-1)、VCAM−1(vascular cell adhesion molecule-1)などの細胞接合分子と結合することができる。単核球は、LFA−1などの細胞接合分子を用いて、血管細胞の表面に発現したICAM−1などの細胞膜タンパク質と相互作用し、血管内皮細胞を通過して炎症組織及び癌組織へ誘導される。
【0102】
細胞を形質転換して癌又は組織特異的細胞膜タンパク質を細胞の表面に発現させ、血管、癌組織及び炎症組織を含む多様な組織へ誘導することができる。例えば、乳癌組織の細胞表面にはERBB2細胞膜タンパク質が過多発現する。T細胞に存在するT細胞受容体(T-cell receptor、TCR)の形質転換を介して癌細胞特異的伝達が可能である。TCRの細胞外部部分に、ERBB2タンパク質を認知することが可能な抗体と細胞内部部分にTCRの細胞内信号伝達が可能なCD3ζ(zeta)タンパク質とを融合した融合タンパク質を発現させるように形質転換したT細胞は、乳癌組織へ誘導される。また、大腸癌、膵臓癌、肺癌などで過多発現する癌胚芽抗原(carcinoembryonic antigen、CEA)を認知する抗体とCD3ζタンパク質とを融合した融合タンパク質を発現させるように形質転換したT細胞は、大腸癌、膵臓癌及び肺癌組織へ誘導される。
【0103】
特定の組織又は細胞へ誘導される細胞自体を用いて特定の標的に薬物を伝達する目的に利用しようとすれば、伝達しようとする物質のために細胞が大きく影響を受けることがある。例えば、ドキソルビシンは、毒性があまり強いため、伝達を担当する細胞が死ぬ問題がある。
【0104】
細胞全体を利用せず、細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用すれば、この問題を回避することができる。細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、細胞膜タンパク質などの細胞膜成分が元来細胞と類似又は事実上同一なので、元来細胞が標的する同一の特定組織又は細胞に誘導される。必要な場合、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造する過程で核酸分解酵素などを添加して、治療用又は診断用物質の伝達に必要がない核酸などをマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの内部で除去することができる。
【0105】
[マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクル及びその製造]
本発明において、「マイクロベシクル」は、哺乳類の有核細胞から人為的に製造されたベシクルであって、由来する細胞の細胞膜成分からなる脂質二重膜によって内部と外部が区分され、細胞の細胞膜脂質及び細胞膜タンパク質、核酸、並びに細胞成分を持っており、元来細胞より大きさが小さいことを意味するが、これに限定されるものではない。本発明において、シェディングマイクロベシクルとは、細胞が自然的に分泌するベシクルであって、由来する細胞の細胞膜成分からなる脂質二重膜によって内部と外部が区分され、細胞の細胞脂質及び細胞膜タンパク質、核酸、並びに細胞成分を持っている元来細胞より大きさが小さいことをいう。
【0106】
細胞から製造されるマイクロベシクルは、既存のリポソームのように多様な大きさに容易に製造することができ、伝達しようとする多様な治療用又は診断用物質を容易に負荷させることができるため、1種又は多種の物質を伝達することができるので、単独治療、併合治療、診断だけでなく、診断及び治療の2つの目的で使用する診断−治療(theragnosis, pharmacodiagnosis)に利用することができる。この際、伝達しようとする多様な物質は、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに内包(encapsulated)されてマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの二重膜の内側に存在してもよく、細胞膜タンパク質のように前記物質の全部又は一部がマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの二重膜に埋め込まれ或いは組み込まれていてもよく、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの表面に結合されていてもよい。
【0107】
また、癌の血管を介して癌組織にある物質が伝達されるとき、一般的に100nm以上の物質はEPR(enhanced permeability and retention)効果によって癌組織に長らく止まることができる。よって、100nmより大きいマイクロベシクルに負荷された薬物は、癌組織に止まることが可能な時間が長くて薬物の効果を極大化することができるため、診断及び治療に有用である。また、肺組織は、その構造上、粒径1μm以下の粒子のみが吸入を介して肺胞まで伝達できるので、粒径1μm以下のマイクロベシクルに喘息などの治療のための炎症抑制剤などの物質を負荷して肺組織に効果的に薬物を伝達することができる。このようにマイクロベシクルの大きさは、診断用及び治療用物質が必要な組織に応じて多様な大きさに製造できる。好ましくは、本発明のマイクロベシクルの大きさは10nm以上10μm以下であってもよい。
【0108】
本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに治療用及び/又は診断用物質を負荷して「個体」に投与するために、自己由来細胞から製造したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することができる。他の個体に由来する細胞を使用すると、主組織適合性複合体(major histocompatibility complex、MHC)の差異により免疫反応を誘発することができる。ところが、自己由来細胞から製造したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルはこのような免疫反応を誘発しない。自己由来細胞を使用する代わりに、MHCが適合な他家由来細胞を用いて、免疫反応の誘発を回避することもできる。また、他の個体に由来する細胞を用いて製造したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルも、免疫反応問題がなければ使用可能である。マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルが免疫反応を起こす場合にも、免疫抑制剤と共に使用することもできる。
【0109】
本発明において、全ての細胞からマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造することができ、例えば、特定の細胞又は組織などの標的へ誘導されるように形質転換可能な哺乳類の有核細胞から製造できる。例えば、試験管内細胞(in vitro cell)としては単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び間葉幹細胞を含む試験管内で培養可能な全ての細胞を用いることができ、生体内細胞(in vivo cell)としては単核球、マクロファージ、樹枝状細胞、骨髄由来間葉幹細胞、脂肪由来間葉幹細胞及びその他の幹細胞、癌組織又は炎症組織から採取した細胞又は組織に由来する細胞などを用いることができる。
【0110】
特定の組織へ物質を伝達するために、特定の組織に誘導される細胞又は形質転換した細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することができる。例えば、単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞などから製造したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、癌組織又は炎症組織へ誘導される。特定の組織へ誘導されるタンパク質を過多発現し或いは非特異的(non-specific)誘導に関与するタンパク質の発現を減少させた又はこれらを組み合わせた形質転換細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、癌組織又は炎症組織へ効果的に誘導される。
【0111】
細胞の形質転換は、細胞に刺激を与えてタンパク質などの物質の発現を増加又は変化させる方法と、遺伝子導入によってタンパク質の発現を増加又は抑制させる方法であって、当業界における通常の方法を使用することができる。細胞に特定の刺激を与えてタンパク質発現の変化を誘導することができる。例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)にTNF−αを処理すると、細胞膜にICAM−1の発現が増加する[J. Exp. Med. 177; 1277-1286 (1993)]。単核球にPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)を処理すると、細胞膜タンパク質LFA−1が活性化(activation)される[J. Exp. Med. 163; 1132-1149 (1986)]。遺伝子導入による細胞の形質転換を介して特定のタンパク質を発現或いは抑制させることができる。特定のタンパク質の発現を増加させる方法は、プラスミド(plasmid)DNA、RNA又はウィルス(virus)[PNAS. 90 (18); 8392-8396 (1993)]を利用することができ、リン酸カルシウム沈澱法(calcium phosphate precipitation)[Current Protocols in Cell Biology 20.3.1-20.3.8 (2003)]、リポフェクタミン誘導(lipofectamine mediated)[PNAS. 84 (21); 7413-7417 (1987)]、電気穿孔(electroporation)[Nucleic Acids Research. 15 (3) 1311-1326 (1987)]、微量注射法(microinjection)[Mol Cell Biol. 2(9); 1145-1154 (1982)]、超音波誘導(ultrasound mediated)[Human Gene Therapy. 7(11); 1339-1346 (1996)]などの方法だけではく、一般的に知られている全ての方法を使用することができる。
【0112】
癌細胞、癌組織、血管又は炎症組織などに特異的に結合することが可能なタンパク質又は抗体を細胞の表面に直接発現させ或いは融合タンパク質として発現させ、この細胞からマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造することができる。また、治療用及び/又は診断用物質を発現する細胞、又は発現するように形質転換された細胞からマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造することができる。また、前記組み合わせ物質が発現する細胞、又は発現するように形質転換された細胞からもマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造することもできる。特定のタンパク質の発現を抑制させるために、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA、LNA、PNAなどを用いることができる。ある細胞に由来するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルが2種の標的へ誘導される場合、その細胞で1種又は多種の特定タンパク質の発現を抑制させて1つの標的への誘導を減少させて物質伝達の特異性を高めることができる。或いは、2回以上形質転換した細胞を使用することもできる。例えば、1次形質転換した細胞を2次形質転換して使用してもよい。
【0113】
単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞などの細胞が自然的に分泌するシェディングマイクロベシクルを分離して使用することができる。前記治療用又は診断用物質を負荷した細胞から分泌されるシェディングマイクロベシクルを分離することもでき、シェディングマイクロベシクルを分離した後でシェディングマイクロベシクルに物質を負荷することもできる。サイトカラシンD(cytochalasin D)、LPA(lysophosphatidic acid)、トロンビン(thrombin)、ATP(adenosine triphosphate)又はKClなどの物質を処理して、細胞から自然的に分泌されるシェディングマイクロベシクルの分泌を促進することができる。サイトカラシンDを処理する場合、細胞表面のアクチン(actin)の構造を変化させて細胞膜からのシェディングマイクロベシクルの分泌を促進する。細胞を培養する懸濁液の流れなどにおいて、細胞と懸濁液が相対的に動くようにして、シェディングマイクロベシクルの形成をさらに促進することもできる。ところが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。
【0114】
本発明に係る前記マイクロベシクルは多様な機械的、電気的、化学的方法でも製造できる。浸透圧を用いた細胞溶解、電気穿孔(electroporation)、超音波分解(sonication)、均質化(homogenization)、洗剤(detergent)処理、冷凍−解凍(freeze-thaw)、押出(extrusion)、機械的分解、化学的物質処理などの方法を使用することができるが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。例えば、細胞入りの溶液に金属、セラミック、又は充分に固いプラスチックボールを入れた後、揺らして細胞を機械的方法で分解することもできる。押し出してマイクロベシクルを製造する場合には、孔径が大きいフィルターから小さいフィルターへ細胞含有溶液を順次通過させ、細胞を適正大きさに粉砕することができる。例えば、孔径が10μm→5μm→1μmの順に小さくなる3つのフィルターを順次用いて、マイクロベシクルを製造することができる。
【0115】
[治療用又は診断用物質]
本発明では、細胞又は形質転換された哺乳類の有核細胞が発現している物質を使用し、必要に応じて、前記哺乳類の有核細胞に由来せず且つ細胞の外部で用意された物質を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
本発明において、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷することが可能な哺乳類有核細胞由来前記治療用又は診断用物質としては、当業界で通常使用されるタンパク質又はペプチド、核酸、脂質及び細胞代謝産物などを多様な種類の物質が制限なく使用できる。
【0117】
前記タンパク質又はペプチドは、VEGF(vascular endothelial growth factor)、EGF(epidermal growth factor)などの成長因子、IL−1、IFN−γ、IL−10などのサイトカイン(cytokine)類、各種抗体治療剤、受容体、蛍光タンパク質及び多様なペプチド又はタンパク質を制限なく使用することができる。前記タンパク質又はペプチドは、細胞内に発現してもよく、細胞膜にディスプレイ(display)されてもよく、全体又は活性を示す部位が単独で又は融合タンパク質の形で発現してもよい。特に、マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの表面に負荷されたタンパク質又はペプチドは、単独で存在する場合より局所濃度(local concentration)が高いため、単独で存在する場合より活性が高いことがよく知られている。このようなタンパク質又はペプチドは、リガンドとして作用して細胞への信号伝達を行うことができ、或いは多様なリガンドの機能を阻害するのに利用することができるが、これらの例に限定されるものではない。
【0118】
本発明に係る前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷することが可能な核酸として、DNA、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA、センスRNAを使用することができるが、これらに限定されるものではない。このような核酸はセンス効果、アンチセンス効果、RNA干渉及びタンパク質の機能阻害などの目的で利用できる。
【0119】
本発明において、前記哺乳類有核細胞に由来しないマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに含ませることが可能な治療用又は診断用物質としては、当業界で通常使用される抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ペプチド、タンパク質、毒素、核酸、ビーズ、マイクロ粒子及びナノ粒子などの多様な種類の物質が制限なく使用できる。
【0120】
前記抗癌剤は、癌の成長及び転移を抑制させるために使用される全ての薬剤を総称し、大部分の抗癌剤は癌細胞のDNAの複製、転写、翻訳過程を遮断する。本発明の治療用物質として使用できる抗癌剤の種類は特に限定されない。抗癌剤は、抗癌剤選択の際に考慮すべき一般的な条件、例えば癌細胞の種類、抗癌剤の吸収速度(治療期間と抗癌剤の投与経路)、腫瘍の位置、腫瘍の大きさなどに応じて選択できる。前記本発明で使用できる抗癌剤は、DNAアルキル剤(DNA alkylating agent)としてのメクロレタミン(mechlorethamine)、クロラムブシル (chlorambucil)、フェニルアラニン(phenylalanine)、マスタード(mustard)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、カルムスチン(carmustine、BCNU)、ロムスチン(lomustine、CCNU)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、ブスルファン(busulfan)、チオテパ(thiotepa)、シスプラチン(cisplatin)及びカルボプラチン(carboplatin)などが使用でき、抗癌抗生剤(anti-cancer antibiotics)としてのダクチノマイシン(dactinomycin)(アクチノマイシンD(actinomycin D))、ドキソルビシン(doxorubicin:adriamycin(アドリアマイシン))、エピルビシン(epirubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、プリカマイシン(plicamycin)、マイトマイシン(mitomycin)及びCブレオマイシン(C Bleomycin)などが使用でき、植物アルカロイド(plant alkaloid)としてのビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ダウノルビシン(daunorubicin)、タクソール(taxol)、オンコビン(oncovin)、プレドニゾン(prednisone)、シスプラチン(cisplatin)、ハーセプチン(herceptin)、リツキシマブ(rituximab)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)及びイリドデカン(iridotecan)などよりなる群から選択できる。また、当業界で通常使用される放射性物質を用いることもできる。ところが、本発明で使用できる抗癌剤はこれらの例に限定されるものではない。
【0121】
また、本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷できる抗炎症剤は、デキサメタゾン(dexamethasone)、インドメタシン(indomethacin)、イブプロフェン(ibuprofen)、プロピオン酸クロベタゾール(clobetasol propionate)、酢酸ジフロラゾン(diflorasone diacetate)、プロピオン酸ハロベタゾール(halobetasol propionate)、アムシノニド(amcinonide)、フルオシノニド(fluocinonide)、フランカルボン酸モメタゾン(mometasone furoate)、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、ジクロフェナク(diclofenac)及びピロキシカム(piroxicam)などよりなる群から選択できるが、本発明で使用できる抗炎症剤はこれらの例に限定されるものではない。
【0122】
前記血管新生阻害剤は、既存の血管から新しい血管が作られる過程を抑制するために使用される全ての薬剤を総称し、大部分の血管新生阻害剤は癌の成長と転移を抑制し、炎症反応を抑制することができる。本発明の治療用物質として使用できる血管新生阻害剤の種類は特に限定されない。
【0123】
本発明に係る前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに治療用又は診断用物質としてタンパク質又はペプチドを含ませることができる。例えば、後述する実施例で使用したRNase Aだけでなく、VEGF、EGFなどの成長因子、IL−1、IFN−γ、IL−10などのサイトカイン類、各種抗体治療剤、多様なペプチド又はタンパク質、DNase以外に、癌の成長と転移を抑制し且つ炎症反応を抑制することが可能な多様なタンパク質及びペプチドを制限なく使用することができる。
【0124】
本発明に係る前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに治療用又は診断用物質として毒素を含ませることができる。毒素は、多様な生物体に由来するものであって、体内に吸収されたときに毒性を示しうるものを総称する。この毒素を介してアポトーシスを誘導することができる。本発明の治療用物質として使用できる毒素の種類は特に限定されない。
【0125】
本発明において、蛍光タンパク質を暗号化(encode)する核酸又は多様な蛍光物質を負荷したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを診断に利用することができる。特定の細胞又は組織を標的とするマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに、蛍光タンパク質を暗号化しているプラスミドDNAを負荷し、これを生体に注入すると、その標的細胞又は組織の存在を、蛍光タンパク質から放出される蛍光信号から分かることができる。また、特定の細胞又は組織を標的とするマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに、蛍光放出量子ドットを含む多様な蛍光物質を含ませ、これを生体に注入すると、その標的細胞又は組織の存在を蛍光信号から分かることができる。特定の標的細胞又は組織から発生する蛍光を診断に利用することができる。アポトーシスを誘導する蛍光放出量子ドットは治療目的でも利用することができる。
【0126】
マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷することが可能な他の治療用又は診断用物質の例として、蛍光物質以外に、他のマイクロ粒子又はナノ粒子を使用することができる。酸化鉄、金、炭素ナノチューブなどのマイクロ粒子又はナノ粒子を使用することができるが、これらに限定されるものではない。磁気ビーズなどのビーズをマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷して使用することもできる。酸化鉄などの磁性粒子は磁気共鳴映像(MRI)を得る造影剤として利用できる。ナノ粒子に結合した核酸、ナノ粒子に結合したタンパク質なども使用することができ、診断に有用な放射性物質も使用することができる。
【0127】
本発明に係る前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを用いて2種以上の物質を伝達することができる。例えば、2種以上の物質を同時に負荷したマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを用いて2種以上の物質を伝達することができる。また、1種又は2種以上の物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを複数個使用して、2種以上の物質を伝達することができる。例えば、3種の物質を伝達する場合、各物質を含む第1、第2、第3マイクロベシクルを製造して使用することができる。第1、第2物質を含む第4マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルと、第3物質を含む第5マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを用意し、第4、第5マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを用いて3種の物質を伝達することができる。第1、第2、第3マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを同時に投与することもでき、順次投与することもできる。第4、第5マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを同時に投与することもでき、順次投与することもできる。
【0128】
マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを他の分子又は他の細胞構成成分から分離するために、密度勾配、超遠心分離、濾過、透析及び自由流動電気移動法などの方法を使用することができるが、本発明の前記選別方法はこれらに限定されるものではない。
【0129】
密度勾配は密度の異なる物質を区分するときに最も多用される方法であって、本発明のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルは、自由分子(free molecule)などと密度が区分されるため、密度勾配を介して分離することができる。この方法の具体的な例としては、フィコール(Ficoll)、グリセロール(Glycerol)、スクロース(Sucrose)、オプティプレップ(OptiPrepTM)などの密度勾配を使用することができるが、本発明の密度選別方法がこれらに限定されるものではない。例えば、治療及び診断のための分子が負荷されたマイクロベシクルと、前記分子が負荷されていないマイクロベシクルとの密度が異なる性質を用いて、2つのマイクロベシクルを分離することができる。密度勾配は遠心分離又は電気泳動(electophoresis)などと共に使用することができる。マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを選別するために、ゲル濾過(gel filtration)又は限外濾過(ultrafiltration)を使用することもできる。大きさの小さい分子を除去するために、濾過の代わりに透析を使用することができる。この他にも、自由流動電気移動法を使用することもできる。
【0130】
目的に応じて大きさが一定の範囲にあるマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを選別して使用することができる。マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルの大きさを選別する段階は、治療用又は診断用物質をマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに負荷する段階より先に行ってもよく、同時に行ってもよく、後で行ってもよい。
【0131】
本発明において、細胞膜の構成成分の一部が改質されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを製造して使用することもできる。例えば、別途用意した融合タンパク質と細胞との混合液からマイクロベシクルを製造し、融合タンパク質が表面に露出されたマイクロベシクルを用意することができる。マイクロベシクルの表面にポリエチレングリコールを結合させてステルス−マイクロベシクルを製造することができる。また、マイクロベシクルにシクロデキストリンを添加する場合、不特異的ターゲッティングを減少させることができる。シクロデキストリンは、水溶性と脂溶性を同時に持っている物質であって、マイクロベシクルの表面に付いて脂質間の不特異的結合を阻害することができる。化学的にマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを改質して使用することもできる。例えば、細胞膜の表面にシステインを含むタンパク質の部分が露出された細胞からマイクロベシクルを製造した後、システインのチオール基に化学的な方法で様々な分子を結合させてマイクロベシクルを改質することができる。また、細胞膜タンパク質に存在するアミン基に化学的な方法で多様な分子を結合させて改質することもできる。
【0132】
本発明において、前記治療用及び/又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクル及びその製造方法は、特定物質の特定細胞又は組織などへの伝達のために、in vitro及び/又はin vivoにて治療及び/又は診断用、又は実験用として使用できる。例えば、酵素又は前記治療用及び/又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクル及びその製造方法は、in vitro実験用として使用でき、in vitro実験を介してin vivoにて治療可能な形態に細胞を変形する用途としても使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0133】
図1に本発明の一具現例に係るマイクロベシクルの製造過程と、診断及び治療用物質を負荷したマイクロベシクルの製造過程を図式的に示す。
【0134】
図2の透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)イメージより分かるように、実施例1の方法によって単核球から押出法で製造したマイクロベシクルは、脂質二重層からなっており、100〜200nmの大きさを有し、略球状をしている。
【0135】
動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)粒度分析器を用いて実施例1の押出法でマイクロベシクルの大きさを測定した結果を図3に示す。マイクロベシクルは、200〜300nmの大きさ及び250nmの平均粒径を有する。図2のTEMイメージで測定したものとほぼ一致する。
【0136】
実施例1の方法によって単核球から押出法で製造したマイクロベシクルの膜が元来細胞膜と同じトポロジーを維持していることを次の方法で確認した。実施例1の方法によって単核球から押出法で製造したマイクロベシクルと、実施例2の方法によって単核球から超音波分解方法で製造したマイクロベシクルをトリプシン(trypsin)で処理し、細胞膜タンパク質のうちマイクロベシクルの外部に露出された領域を消化(digestion)させた。その後、高温で処理してトリプシンを変性させた後、マイクロベシクルを溶解(lysis)させて膜の内部と外部のタンパク質を全て溶液に露出させ、細胞膜タンパク質のうちLFA−1の細胞外領域を認知する抗体と、細胞内部の細胞質に存在するタンパク質としてのβ−アクチン(beta-actin)を認知する抗体で処理した結果を図4に示した。「+」で表示したものはトリプシンを処理した結果を示し、「−」で表示したものはトリプシンで処理していない結果を示す。押出法で製造した後、トリプシンで処理したマイクロベシクルにおいて、LFA−1の細胞外領域は消えるが、β−アクチンの量は減少しなかった。もし細胞膜の一部でも内外が入れ替わって一部のLFA−1の細胞外領域がマイクロベシクルの内部に向かえば、これはトリプシンによって消化されないため、抗体反応を誘発しなければならない。しかし、LFA−1抗体反応が現れなかったため、存在していたLFA−1の細胞外領域は全てマイクロベシクルの外部に向かっていたことが分かる。これから押出法で製造したマイクロベシクルの場合、LFA−1以外の他の細胞膜タンパク質も、同様に元来細胞膜から細胞の外部に向かった部分が全てマイクロベシクルの外部に向かっていることを椎論することができ、これはマイクロベシクル膜が元来細胞膜と同一のトポロジーを維持していることを意味する。
【0137】
図4を参照すると、押出法で製造したマイクロベシクルとは異なり、超音波分解方法で製造したマイクロベシクルの場合は、トリプシンで消化した後、LFA−1抗体反応信号が現れた。これより分かるように、超音波分解方法でマイクロベシクルを製造する場合、細胞膜タンパク質のトポロジーが変わったマイクロベシクルも一部存在する。
【0138】
細胞膜のトポロジーが変わる方法でマイクロベシクルを製造した後、目的に応じて、元来細胞の細胞膜とトポロジーが同じマイクロベシクルのみを選択して使用することができる。細胞膜タンパク質のうち、細胞質ドメイン(cytoplasmic domain)を認知する抗体などの物質を用いて、この細胞質ドメインが外部に露出されたマイクロベシクルを除去することができる。このようにすると、細胞膜の内外が入れ替わったマイクロベシクルは除去され、残ったマイクロベシクルの外部には元来細胞の細胞膜の外部に露出された細胞膜タンパク質のみが存在する。
【0139】
図43はサイトカラシンDの処理後、細胞から自然的に分泌されるシェディングマイクロベシクルのTEMイメージである。
【0140】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0141】
実施例1:押出法によるマイクロベシクルの製造
図1は哺乳類の有核細胞又は形質転換された哺乳類の有核細胞からマイクロベシクルと標的誘導物質、治療用物質、診断用物質などの多様な物質が負荷されたマイクロベシクルを製造する方法を図式的に示す。
【0142】
図1に示した模式図によって単核球又はマクロファージからマイクロベシクルを製造した。図1において押出法と密度勾配の方法を使用した。
【0143】
単核球としてのU937細胞(ATCC No.CRL−1593.2)又はマクロファージ細胞Raw264.7細胞(ATCC No.TIB−71)を5×10cells/mLの濃度でPBS(phosphate buffered saline)溶液3mLに懸濁(resuspension)した。前記懸濁液を孔径10μmのメンブレインフィルター(membrane filter)に3回通過させた後、孔径5μmのメンブレインフィルターに3回通過させ、次いで孔径1μmのメンブレインフィルターに3回通過させた。容量5mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)にそれぞれ50%オプティプレップ1mL、5%オプティプレップ1mL、メンブレインフィルターを通過した細胞懸濁液3mLを順次入れた。その後、100,000×gで2時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。50%オプティプレップと5%オプティプレップとの間の層でマイクロベシクルを得た。
【0144】
実施例2:超音波分解法によるマイクロベシクルの製造
図1に示した模式図によって単核球又はマクロファージからマイクロベシクルを製造した。図1において超音波分解と密度勾配の方法を使用した。
【0145】
単核球又はマクロファージを2×10cells/mLの濃度でPBS溶液3mLに懸濁した。Cycle0.5とamplitute50の条件で超音波発生器(UP400s、Heilscher)によって30回超音波分解を行った後、さらに水槽式超音波発生器(water bath sonicator)で30分間超音波分解を行った。容量5mLの超遠心分離チューブにそれぞれ50%オプティプレップ1mL、5%オプティプレップ1mL、超音波分解した細胞懸濁液3mLを順次入れた。その後、100,000×gで2時間超遠心分離を行った。50%オプティプレップと5%オプティプレップとの間の層でマイクロベシクルを得た。
【0146】
実施例3:単核球由来マイクロベシクルの特性分析
実施例1の方法によって単核球で製造したマイクロベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッド(glow-discharged carbon-coated copper grid)で3分間吸着させた。前記グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニル(uranylacetate)で1分間染色(staining)した。JEM101(Jeol, Japan)電子顕微鏡で観察した結果を図2に示す。
【0147】
図2の透過電子顕微鏡のイメージに示すように、単核球から押出法で製造したマイクロベシクルは、脂質二重層からなっており、100〜200nmの大きさを有し、大略球状をしている。
【0148】
実施例1の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを5μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈(dilution)した。マイクロベシクル入りのPBS1mLをキュベット(cuvette)に入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図3に示した。図3に示すように、マイクロベシクルは200〜300nmの大きさ及び250nmの平均粒径を有するものと確認された。
【0149】
実施例1の方法によって単核球から押出法で製造したマイクロベシクル、実施例2の方法によって単核球から超音波分解方法で製造したマイクロベシクル、及び単核球細胞をそれぞれ5μg用意した後、トリプシン0.5μgを37℃で20分間処理した。トリプシンを処理したものと、トリプシンを処理していないものにそれぞれ5×ローティング染色剤(loading dye、250mM Tris−HCl、10% SDS、0.5%ブロモフェノールブルー、50%グリセロール)を最終的に1×となるように仕込み、100℃で5分間処理した。8%ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)を用意し、サンプルを負荷した。80Vで2時間電気泳動した後、400mAで2時間タンパク質をPVDF(polyvinylidene fluoride)メンブレインでトランスファー(transfer)した。スキムミルク(skim milk)をPBSに3%となるように溶かした後、メンブレインを当該溶液で2時間ブロッキング(blocking)した。LFA−1とβ−アクチン抗体を4℃で12時間処理した。PBSで2回洗浄した後、それぞれペルオキシダーゼ(peroxidase)が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。PBSで30分間洗浄した後、ECL(enhanced chemiluminescence、Amersham Co.No.RPN2106)基質(substrate)で確認して図4に示した。「+」で表示したものはトリプシンを処理した結果を示し、「−」で表示したものはトリプシンを処理していない結果を示す。
【0150】
図4に示すように、押出法で製造した後、トリプシンで処理したマイクロベシクルと細胞では、細胞膜タンパク質LFA−1の細胞外領域は消えるが、β−アクチンの量は減らないものと確認された。もし細胞膜の一部でも内外が入れ替わって一部のLFA−1の細胞外領域がマイクロベシクルの内部に向かえば、これはトリプシンによって分解されないため、抗体反応を誘発しなければならない。しかし、トリプシンを処理したマイクロベシクルと細胞では、LFA−1抗体反応が現れなかったため、存在していたLFA−1の細胞外領域はマイクロベシクルの外部に向かっていることが分かる。
【0151】
前記結果より、押出法で製造したマイクロベシクルの場合、LFA−1以外の他の細胞膜タンパク質も同様に、元来細胞膜から細胞の外部に向かった部分が全てマイクロベシクルの外部に向かっていることを推論することができ、これはマイクロベシクル膜が細胞の細胞膜と同一のトポロジーを維持していることを意味する。
【0152】
また、図4に示すように、押出法で製造したマイクロベシクルとは異なり、超音波分解方法で製造したマイクロベシクルの場合は、トリプシンで分解した後、LFA−1抗体反応信号が現れた。前記結果より分かるように、超音波分解方法でマイクロベシクルを製造する場合、細胞膜タンパク質のトポロジーが変わったマイクロベシクルも一部存在する。
【0153】
実施例4:シクロデキストリンを含むマイクロベシクルの製造
実施例1の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを用意した。1μMの濃度でシクロデキストリンを仕込み、室温で1時間保管した。サンプルを5μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。マイクロベシクル入りのPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図5に示す。
【0154】
図5に示すように、シクロデキストリンのないマイクロベシクルの大きさは約100nmであり、シクロデキストリンの含まれたマイクロベシクルの大きさは約200nmであると確認された。前記結果より、シクロデキストリンを入れる場合、マイクロベシクルの膜周囲にシクロデキストリンが添加されて大きさが大きくなったことを予測することができる。
【0155】
実施例5:ポリエチレングリコールを含むマイクロベシクルの製造
実施例1の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを用意した。1μMの濃度でコレステロール−ポリエチレングリコールを入れ、室温で1時間保管した。サンプルを5μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。マイクロベシクル入りのPBS1mLをキュベットに入れて動的光散乱粒度分析器で分析し、その結果を図6に示す。
【0156】
図6に示すように、ポリエチレングリコールのないマイクロベシクルの大きさは約100nmであり、ポリエチレングリコール含有マイクロベシクルの大きさは約90nmであった。前記結果より、ポリエチレングリコールを入れる場合、マイクロベシクルの膜脂質の間にポリエチレングリコールが添加されて大きさが小さくなったことを確認した。
【0157】
実施例6:細胞由来miRNAを負荷したマイクロベシクルの製造及びmiRNAの細胞内伝達
マイクロRNA(miRNA)の一種であるmiR125を発現しているヒト神経膠芽腫(human glioblastoma)細胞としてのA172細胞と、発現しないA172細胞を用意した。各細胞から実施例1と同様の方法でマイクロベシクルを製造した。miR125を発現する細胞に由来するマイクロベシクルはmiR125を負荷しているものと予想した。
【0158】
miR125の負荷を確認するために、次の実験を行った。miR125のターゲットmRNAのいずれか一つがEGF受容体としてのERBB2であると知られている[J.Biol.Chem.282; 1479-1486 (2007)]。したがって、EGF信号伝達の阻害程度を確認した。
【0159】
ヒト非小細胞肺癌株としてのA549細胞を6ウェルプレートに1×10cells/wellとなるように接種した後、12時間培養した。12時間の後、それぞれmiR125が負荷されたマイクロベシクルと、miR125が負荷されていないマイクロベシクル10μg/mLの濃度で1時間処理し、培養液を取り替えた後、24時間培養した。24時間の後、培養液を血清(serum)のない培地で取り替え、12時間培養した。12時間の後、各細胞にEGFを100ng/mLの濃度で10分間処理した。10分の後、A549細胞をM−PER(pierce)溶液で溶解して細胞全体タンパク質(whole cell lysate)を得た。
【0160】
得た細胞全体タンパク質をSDS−PAGEで分離した後、それぞれp−Erk(phosphor-Erk)とErk抗体で確認した。ウェスタンブロット(Western blotting)結果を図7に示す。図7に示すように、EGFを処理する場合、p−Erkの発現が増加した。しかし、miR125が負荷されたマイクロベシクルを処理した場合、p−Erkが観察されなかった。
【0161】
前記結果より、miR125が負荷されたマイクロベシクルを処理する場合、細胞においてmiR125が作用してEGF受容体としてのERBB2の発現が減少し、それによりEGF信号伝達が阻害されたと類推することができる。
【0162】
前記結果は、細胞由来物質をマイクロベシクルに負荷することができ、負荷された物質を伝達することができることを意味する。
【0163】
実施例7:VEGF受容体が負荷された細胞由来マイクロベシクルを用いたVEGFの結合
実施例1と同様の方法によって血管内皮細胞HUVECからマイクロベシクルを製造した。血管内皮細胞HUVECはVEGF受容体を表面に発現しているので、HUVECに由来するマイクロベシクルもVEGF受容体を有するものと予想した。
【0164】
VEGF受容体を形質転換した細胞からマイクロベシクルを得るために、VEGF受容体cDNAが入っているpCEP4ベクターをマウス細胞のPT67細胞(ATCC No.CRL−12284)にリポフェクタミン(Lipofectamin)を用いて形質転換した。細胞は250μg/mLのハイグロマイシンB(Invitrogen No.10687010)抗生剤条件で培養した。実施例1と同様の方法によってVEGF受容体を負荷した細胞からマイクロベシクルを製造した。
【0165】
96ウェルプレートを用意し、ウェルプレートにそれぞれ0、12.5、25ngとなるようにそれぞれのマイクロベシクルを仕込み、4℃で12時間以上保管してコートした。1%BSA/PBSを100μL入れて1時間固定した。1時間の後、ビオチンが付いているVEGFを100ng/mLとなるように入れ、2時間培養した。1%BSA/PBSで洗浄した後、ストレプトアビジン−PODで20分間培養し、BM−POD基質を入れて発色を誘導した。
【0166】
図8及び図9は発色の後にRLU値を表示したものである。図8は血管内皮細胞由来マイクロベシクルの結果であり、図9はVEGF受容体が形質転換されて負荷された細胞由来マイクロベシクルの結果である。RLU値はマイクロベシクルに付いているVEGFの相対的な値を示す。図8に示すように、血管内皮細胞に由来するマイクロベシクルは、VEGFと結合(binding)して高いRLU値を示すことを確認した。また、図9に示すように、VEGF受容体を形質転換して負荷した細胞由来マイクロベシクルもVEGFと結合して高いRLU値を示すことを確認した。
【0167】
前記結果より分かるように、VEGF受容体はマイクロベシクルの表面に負荷されて水溶液に存在するVEGFと結合することができ、VEGF受容体が負荷されたマイクロベシクルをVEGF機能阻害剤として使用することができる。
【0168】
実施例8:ICAM−1を負荷した細胞由来マイクロベシクルを用いた免疫細胞結合阻害
センスICAM−1 cDNAとアンチセンスICAM−1cDNAを得るために、ヒト前立腺癌細胞株としてのPC3細胞(ATCC No.CRL−1435)の全体RNAを使用した。センスプライマー(primer)としての5’−GATCGGATCCTCAGCCTCGCTAT−GGCTCCCAGCA−3’とアンチセンスプライマーとしての5’−GCTAGGATCCCGGGATA−GGTTCAGGGAGGCG−3’を用いて逆転写PCR(reverse transcription PCR)を介してそれぞれICAM−1センス、アンチセンスcDNAを得た。1.6kbの大きさを有するICAM−1 cDNAはアガロスゲル(agarose)泳動によって分離した。分離したcDNAは制限酵素(restriction enzyme)Bam HIで切断し、プラスミドpCEP4(Invitrogen No.V04450)もBamHIで切断した後、接合酵素(ligase)を処理してpCEP4とICAM−1 cDNAとが接合されるようにした。それぞれセンスICAM−1とアンチセンスICAM−1 cDNAが入っているpCEP4ベクターをヒト線維芽細胞腫としてのHT1080(ATCC No.CCL−12)にFuGENE6トランスフェクション試薬(transfection reagent)Roche No.1815091)を用いて形質転換した。これらの細胞は250μg/mLのハイグロマイシン(hygromycin)B抗生剤条件で培養した。
【0169】
センスICAM−1 cDNAで形質転換してICAM−1を負荷したHT1080細胞、及びアンチセンスICAM−1を形質転換してICAM−1の負荷を減少させたHT1080から実施例1の方法によってマイクロベシクルを製造した。
【0170】
ヒト血管内皮細胞HUVECを臍帯(umbilical cord)から得た[J. Clin. Invest.52; 2745-2756 (1973)]。96ウェルプレートに0.1%ゼラチンをコートした後、HUVECを1×10cells/wellの量だけ接種した後、12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF(Tumor Necrosis Factor)−α(R&D systems,No.210TA)を入れたものと入れていないHUVECを16時間培養した。HUVECにTNF−αを処理すると、細胞が活性化(activation)されて細胞膜にICAM−1、VCAM−1、E−selectinなどの細胞接合分子の発現が増加して、単核球及びマクロファージに存在するLFA−1、Mac−1などの細胞接合分子と結合して単核球及びマクロファージと血管内皮細胞が結合することができるようにする。
【0171】
単核球細胞としてのU937細胞に5μMのセルトラッカーを入れ、30分間緑色蛍光で染色し、緑色を帯びる単核球を用意した。96ウェルプレートをPBSで洗浄した後、5×10個の緑色蛍光で染色された単核球と共に、それぞれ0、1、5、25μg/mLとなるようにICAM−1を負荷したマイクロベシクル又はICAM−1を除去したマイクロベシクルを入れ、1時間培養した。1時間の後、培養液を捨て、PBSで洗浄した。蛍光顕微鏡で、血管内皮細胞HUVECに結合した緑色蛍光の単核球を観察し、単核球の数を測定して図10に示す。
【0172】
図10の白色バーはICAM−1のセンス形質転換細胞に由来し、ICAM−1を負荷したマイクロベシクルを処理した実験群で緑色の単核球を測定して示すグラフであり、図10の黒色バーはICAM−1のアンチセンス形質転換細胞に由来し、ICAM−1を除去したマイクロベシクルを処理した実験群で緑色の単核球を測定して示すグラフである。図10の横軸はTNF−αを処理したHUVEC細胞に結合した単核球の数を100%とし、これと比較して百分率で示したものである。TNF−αを処理する場合、HUVECで多様な細胞接合分子が発現し、免疫細胞としての単核球の結合を促進する。TNF−αを処理していないHUVECには結合した単核球が殆どないが、TNF−αを処理する場合、結合した単核球が増加することを確認することができる。
【0173】
図10から確認できるように、ICAM−1を負荷したマイクロベシクルの濃度が高くなるにつれて、血管内皮細胞に結合する単核球が減少することが分かる。しかし、ICAM−1のないマイクロベシクルは単核球の結合を阻害しなかった。
【0174】
前記結果より分かるように、ICAM−1を負荷したマイクロベシクルは単核球が細胞接合分子との相互作用によって血管内皮細胞に結合することを阻害する。
【0175】
実施例9:抗癌薬物が負荷されたマイクロベシクルの製造
図1に示した模式図に従い、単核球又はマクロファージからマイクロベシクルを製造した。図1において押出法と密度勾配の方法を使用し、押出段階で抗癌薬物を投与して薬物を負荷した。
【0176】
単核球又はマクロファージを5×10cells/mLの濃度でPBS溶液3mLに懸濁した。前記懸濁溶液に抗癌薬物としてのドキソルビシン(Sigma、No.D1515)をそれぞれ0、100、200、400μg/mLの濃度で添加し、よく混ぜた。前記溶液を孔径10μmのメンブレインフィルターに3回通過させた後、孔径5μmのメンブレインフィルターに3回通過させ、次いで孔径1μmのメンブレインフィルターに3回通過させた。容量5mLの超遠心分離チューブにそれぞれ50%オプティトレップ1mL、5%オプティトレップ1mL、メンブレインフィルターを通過した細胞懸濁液3mLを順次入れた。その後、100,000×gで2時間超遠心分離を行った。50%オプティプレップと5%オプティトレップとの間の層で、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを得た。
【0177】
PBSを用いてそれぞれ0、5、10、20、40μg/mLの濃度で希釈したドキソルビシン溶液300μLを用意し、それぞれ異なる濃度のドキソルビシンを用いて押出法によって製造されたドキソルビシン負荷マイクロベシクルを、100μg/mLの濃度でそれぞれ300μL用意した。96ウェルプレートに各サンプルを100μLずつ3個のウェルに入れた。Wallac 1420 VICTOR plate−reader(Perkin−Elmer Life Sciences)機械でexcitation波長488nm、emission波長530nmにおける値を得た。ドキソルビシン溶液の値を用いてスタンダードカーブ(standard curve)を描いた後、マイクロベシクルに入ったドキソルビシンの量を定量して図11に示す。
【0178】
図11はタンパク質量1μgのマイクロベシクルに負荷されたドキソルビシンの量を示すグラフである。100、200、400μg/mLのドキソルビシンを使用する場合、それぞれ約50ng、200ng、300ngのドキソルビシンがマイクロベシクルに負荷されることを確認した。
【0179】
下記の全実施例において、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルは400μg/mLのドキソルビシンを用いて製造した。
【0180】
実施例10:抗癌薬物が負荷されたマイクロベシクルの特性分析
実施例9と同様の方法で単核球から製造したマイクロベシクルをグロー放電炭素コート銅グリッドで3分間吸着させた。前記グリッドを蒸留水で洗浄した後、2%酢酸ウラニルで1分間染色した。JEM101電子顕微鏡で観察し、その結果を図12に示す。
【0181】
図12の透過電子顕微鏡のイメージに示すように、単核球から押出法で製造したマイクロベシクルは、脂質二重層からなっており、100〜200nmの大きさを有し、大略球状をしている。
【0182】
実施例9と同様の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを5μg/mLの濃度でPBS1mLに希釈した。マイクロベシクル入りのPBS1mLをキュベットに入れ、動的光散乱粒度分析器で分析した結果、マイクロベシクルは100〜300nmの大きさ及び259nmの平均粒径を有すると確認された。前記結果より、抗癌薬物が負荷されていないマイクロベシクルと大きさが同一であることが分かる。
【0183】
実施例1及び9から得られた、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル、及びドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルをそれぞれ5μMのDiO(Invitrogen、No.V22886)と30分間培養した。DiOは、脂質に付着することができ、緑色蛍光を示す物質である、DiOで標識したマイクロベシクルを20μg/mLとなるようにした後、カバーガラス(cover glass)に50μLを点滴した。4℃で12時間保管し、マイクロベシクルがカバーガラスにコートされるようにした。カバーガラスをスライドガラス(slide glass)に付けた後、蛍光顕微鏡で観察した。マイクロベシクルはDiOの緑色蛍光で観察し、ドキソルビシンは自体の赤色蛍光で観察し、その結果を図13に示す。
【0184】
図13はドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクル及びドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルの蛍光イメージである。図13に示すように、ドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルは、DiOで標識されて緑色蛍光を示すが、ドキソルビシンの赤色蛍光は見えないことが分かる。これに対し、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルは緑色蛍光だけでなく、ドキソルビシンの赤色蛍光まで現れることを確認し、緑色蛍光と赤色蛍光とが同じ位置にあることにより、ドキソルビシンがマイクロベシクルに負荷されたことを確認した。
【0185】
実施例11:酸化鉄が負荷されたマイクロベシクルの製造
図1に示した模式図に従い、単核球又はマクロファージからマイクロベシクルを製造した。図1において押出法と密度勾配の方法を使用し、細胞水準で物質を負荷した。
【0186】
マクロファージを細胞培養プレートに80%程度満ちるように培養し、酸化鉄ナノ粒子(iron oxide nanoparticle)を50μg/mLとなるように入れた後、24時間培養した。24時間の後、マクロファージをスクラッパー(scrapper)で分離し、PBSに懸濁した。実施例1と同様の方法で押出法とオプティプレップを実施し、酸化鉄が負荷されたマイクロベシクルを得た。
【0187】
図14は酸化鉄が負荷されたマイクロベシクルのTEMイメージである。図14において、マイクロベシクルの内部は黒色で示される。これは黒色の酸化鉄が負荷された結果である。図14に示すように、マイクロベシクルの内部に電子密度の高い酸化鉄が負荷されていることを確認した。
【0188】
前記結果より、マイクロベシクルに酸化鉄を負荷することができることが明らかである。
【0189】
実施例12:単核球由来マイクロベシクルを用いた遺伝子の伝達
実施例9の方法においてドキソルビシン溶液を添加する段階を省略し、電気穿孔法で緑色蛍光タンパク質プラスミド(Green Fluorescence Protein、GFP、Clontech No.6085−1)又は赤色蛍光タンパク質プラスミド(Red Fluorescence Protein、RFP、Clontech No.632465)を注入した単核球を用いて、GFP又はRFPが負荷されたマイクロベシクルを製造して使用した。
【0190】
ICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞を24ウェルプレートに1×104cells/wellとなるように接種した後、12時間培養した。GFP又はRFPが負荷されたマイクロベシクルを20μg/mLとなるように細胞に24時間処理した。24時間の後、PBSで洗浄した後に、培地500μLを仕込み、48時間培養した後、細胞を共焦点顕微鏡で観察して図15及び図16のイメージを得た。DIC(differential interference contrast)イメージは、共焦点顕微鏡上で光の干渉現象を用いて観察した。ホスト染料(Hoechst dye)はDAPI(4’,6’-diamidino-2-phenylindole hydrochloride)波長で、GFPはFITC(fluorescein isothiocyanate)波長で、RFPはRhodamine波長で観察した。
【0191】
図15はGFPを伝達した細胞を示し、図16はRFPを伝達した細胞を示す。図15及び図16に示すように、GFPの緑色蛍光とRFPの赤色蛍光が細胞の細胞質(cytosol)部分で発現したことが確認された。
【0192】
前記結果は、マイクロベシクルが遺伝子を効果的に細胞へ伝達することを意味する。
【0193】
実施例13:単核球由来マイクロベシクルを用いたナノ粒子の伝達
単核球を5×10cells/wellとなるようにPBSに入れ、5μMとなるようにDiI(1,1'-dioctadecyl-3,3,3'3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate、Invitrogen、No.V22885)染色剤を入れた。30分間37℃で培養した後、500×gで単核球を遠心分離し、Qdot 705を電気穿孔法で注入した。ドキソルビシン溶液を添加する段階を省略した実施例9の方法で、前記単核球からマイクロベシクルを製造して使用した。これと同時に、前記Qdot 705のないマイクロベシクルも実施例1と同様の方法によって製造した。
【0194】
24ウェルプレートに、0.1%ゼラチンがコートされたカバーガラスを入れ、ICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞を1×10接種し、12時間培養した。前記Qdot 705が負荷されたマイクロベシクル、又はQdot 705が負荷されていないマイクロベシクルを20μg/mLとなるように細胞に24時間処理した。24時間の後、PBSで洗浄し、カバーガラスを4%パラホルムアルデヒドに10分間固定した。カバーガラスをスライドガラスに付けた後、共焦点顕微鏡上で細胞を観察して図17及び図18のイメージを得た。Qdot 705は、excitation波長600nm、emission波長705nmを持っており、Cy7波長で蛍光を観察した後、青色の人為的な色相(pseudo color)で表示した。マイクロベシクルは、DiIで標識されており、Rhodamine波長で赤色蛍光を観察した。DICイメージは共焦点顕微鏡上で光の干渉現象を用いて観察した。
【0195】
図17はQdot 705が負荷されたマイクロベシクルを処理した結果であり、図18はQdot 705が負荷されていないマイクロベシクルを処理した結果である。
【0196】
図17において、細胞の内部に存在する赤色蛍光はマイクロベシクルを示し、青色はQdot 705を示す。これにより、マイクロベシクルとこれに負荷されたQdot 705が効果的に細胞へ伝達されたことが分かる。図17のDICイメージにおいて、矢印で表示した部分は細胞が死滅して溶解しているものであり、図18のQdot 705が負荷されていないマイクロベシクルを処理したイメージと比較すれば、伝達されたQdot 705によってアポトーシスが誘導されたことが分かる。
【0197】
実施例14:単核球由来マイクロベシクルを用いたタンパク質の伝達
実施例9の方法においてドキソルビシン溶液を添加する段階を省略し、電気穿孔法でRNA分解酵素A(RNase A、Sigma、No.R4875)を注入した単核球を用いて、RNase Aが負荷されたマイクロベシクルを製造して使用した。
【0198】
24ウェルプレートに、ICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞を1×104cells/wellとなるように接種し、12時間培養した。前記RNase Aが負荷されたマイクロベシクルを0、20、50μg/mLの濃度でそれぞれ処理した後、30分間37℃で培養した。PBSで洗浄した後、30分間37℃で培養した。PBSで洗浄した後、10% FBS/MEM培地に入れた後に、24時間培養した。24時間の後、PBSで洗浄し、しかる後に、1μMのカルセインAM染色剤(calcein AM dye、Invitrogen、No.C3099)と2μMのエチジウムホモダイマー−1染色剤(ethideium hjomodimer-1 dye、Invitrogen No.E1169)を入れた後、30分間培養した。細胞の内部に存在するエステラーゼ(esterase)という酵素によって、カルセインAMは緑色蛍光を示すカルセインに(calcein)変換される。カルセインは、生きている細胞の細胞膜を通過することができないので、生きている細胞の内部で濃縮されて緑色蛍光信号を発生する。ところが、死んだ細胞の場合は、カルセインが細胞膜を容易に通過するので、カルセインの蛍光信号から細胞を観察することができない。核酸と結合して赤色蛍光を示すエチジウムホモダイマー−1は、生きている細胞の細胞膜を通過することができないが、死んだ細胞の細胞膜は容易に通過することができる。よって、生きている細胞はエチジウムホモダイマー−1で染色することができないが、死んだ細胞は容易に染色して観察することができる。蛍光色の異なる前記2つの染色剤を用いて、生きている細胞と死んだ細胞を容易に区分することができる。前記方法によって蛍光顕微鏡を用いて、生きている細胞と死んだ細胞を観察した結果を図19に示す。
【0199】
図19に示すように、RNase Aの負荷されたマイクロベシクルが高い濃度でアポトーシスをさらに多く誘導することが確認した。その結果は、マイクロベシクルを介してRNase Aが細胞に伝達されたことを意味する。
【0200】
実施例15:マクロファージ細胞由来マイクロベシクルを用いた抗炎症薬物伝達及び炎症反応の抑制
マクロファージを5×10cells/mLの濃度でPBS溶液に懸濁し、ドキソルビシン溶液の代わりに抗炎症薬物としてのデキサメタゾン(Sigma、No.D2915)400μg/mL溶液を用いて、実施例9と同様の方法によって、デキサメタゾンが負荷されたマイクロベシクルを得た。
【0201】
炎症抑制効果を調べるために、免疫反応を誘発したマクロファージを、デキサメタゾンが負荷されたマイクロベシクルで処理し、マクロファージが分泌する炎症関連サイトカインとしてのTNF−αとIL−6の量をそれぞれELISA方法で測定した。
【0202】
マクロファージにLPS(lipopolysaccharide)を10ng/mLで6時間処理して炎症反応を誘導した。対照群ではLPSのみを処理し、実験群ではLPS処理と同時にマイクロベシクルを10μg/mLとなるように処理した。6時間の後、細胞の条件培地を得、500×gで5分間遠心分離した。TNF−αとIL−6抗体がコートされた96ウェルプレートを用意し、ウェルプレートに1%BSA/PBSを100μL入れて1時間固定(blocking)した。得た条件培地をそれぞれ1/10希釈、1/2希釈にして仕込み、室温で2時間培養した後、それぞれビオチン(biotin)が付いているTNF−α、IL−6に対する捕捉抗体(capturing antibody)で2時間培養した。1% BSA/PBSで洗浄した後、ストレプトアビジン−POD(streptavidin-POD)で20分間培養し、BM−POD基質を入れて発色を誘導した。
【0203】
図20は発色の後にRLU(relative light units)値を表示したものである。RLU値はTNF−αとIL−6サイトカインの相対的な量を示す。グラフにおいて、黒色バーはTNF−αの値を示し、白色バーはIL−6の値を示す。グラフにおいて、「−」はLPSを処理していないものであり、「+」はLPSを10ng/mLの濃度で処理して炎症反応を誘導したものである。
【0204】
図20に示すように、LPSを処理しない場合には炎症反応がなくてTNF−αとIL−6の分泌が殆どないが、LPSを処理する場合には炎症反応が現れてTNF−αとIL−6の分泌が増加するものと確認された。また、LPSとデキサメタゾンが負荷されたマイクロベシクルを同時に処理した場合には、サイトカインの分泌を示すRLU値が著しく低かった。前記結果より、デキサメタゾンが負荷されたマイクロベシクルはLPSによる炎症性サイトカインの増加を効果的に抑制したことが分かる。
【0205】
実施例16:単核球由来マイクロベシクルを用いたin vitro薬物伝達及び細胞特異的伝達
【0206】
24ウェルプレートに、0.1%ゼラチンがコートされたカバーガラスを入れ、カバーグラス上にHUVECを1×10の量だけ接種した後、24ウェルプレートで12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF−αを入れたものと、TNF−αを入れていないHUVECを16時間培養した。前述したように、HUVECにTNF−αを処理すると、細胞が活性化されて細胞膜にICAM−1、VCAM−1、E−selectinなどの細胞接合分子の発現が増加し、単核球及びマクロファージに存在するLFA−1、Mac−1などの細胞接合分子と結合して単核球及びマクロファージと血管内皮細胞とが結合できるようにする。
【0207】
PBSで洗浄した後、培地500μLを入れ、5μg/mLの濃度で実施例9の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルとして、抗癌物質のドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを添加して処理した後、1時間培養した。PBSで洗浄した後、血清のない培地500μLを入れ、セルトラッカー(CellTracker、Invitrogen、No.C2925)溶液を5μMとなるように入れた後、30分間培養した。
【0208】
PBSで洗浄した後、血清のある培地を500μL入れ、さらに30分間培養した。カバーガラスを4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)500μLに入れ、室温で10分間固定した後、共焦点顕微鏡(confocal microscope)上で観察し、その結果を図21に示す。
【0209】
図21に示すように、TNF−αを処理したHUVECでドキソルビシンの赤色蛍光信号が、細胞を染色した緑色蛍光信号と同じ位置に存在していることを確認した。前記結果より、前記マイクロベシクルに負荷された抗癌物質としてのドキソルビシンが前記HUVEC細胞の核に伝達されたことが分かる。これとは異なり、TNF−αを処理していないHUVECではドキソルビシンが観察されなかった。
【0210】
顕微鏡では少数の細胞のみを観察することができるため、FACS(fluorescence activated cell sorting)方法で、多数の細胞に含まれたドキソルビシンの量を測定した。
【0211】
実施例9の方法によって、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを単核球から製造した。また、実施例1の方法によって、ドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルを単核球から製造した。
【0212】
ヒト血管細胞HUVECを、0.1%ゼラチンがコートされた24ウェルプレートに1×10となるように接種した後、12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF−αを入れ、16時間培養した。PBSで洗浄した後、培地500μLを入れ、5μg/mLの濃度で、用意したドキソルビシンの負荷されたマイクロベシクルとドキソルビシンの負荷されていないマイクロベシクルをそれぞれ処理した後、1時間培養した。PBS溶液で洗浄した後、1×TE(trypsin-EDTA)バッファを100μL仕込み、37℃で5分間培養して細胞を取り外した。PBSを200μL添加した後、FACS方法で分析し、その結果を図22に示す。
【0213】
図22において、横軸の「red」はドキソルビシンの蛍光信号強度(fluorescent intensity)を示す相対的な値であり、縦軸の「counts」は細胞の数を示す。また、紫色のグラフはドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルを細胞に処理して培養した後、細胞で発生する赤色蛍光信号強度による細胞数を表示したものであり、青色のグラフはドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを細胞に処理した後、細胞で発生する赤色蛍光信号強度による細胞数を表示したものである。
【0214】
図22に示すように、ドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルのみを処理したものの赤色蛍光信号値は1.1×10程度であり、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを処理したものの赤色蛍光信号値は1.2×10程度である。前記結果より、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを処理する場合、細胞においてドキソルビシンの蛍光値がマイクロベシクルのみを処理したときより10倍以上増加したことが分かり、結論的にマイクロベシクルの負荷されたドキソルビシンが細胞へ伝達されたことが明らかである。
【0215】
24ウェルプレートに0.1%ゼラチンをコートし、ヒト血管細胞HUVECを3×10 となるように接種した後、96ウェルプレートで12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF−αを入れたグループとTNF−αを入れていないグループを用意し、16時間培養した。PBSで洗浄した後、培地100μLを仕込み、それぞれ0、1、2、5μg/mL濃度で実施例6の方法によって単核球から製造したドキソルビシン−マイクロベシクルを処理した後、20分間培養した。PBSで洗浄した後、培地500μLを入れ、24時間培養した。24時間の後、PBSで洗浄した後、1μMのカルセインAM染色剤を入れ、生きている細胞を染色した。蛍光顕微鏡を用いて写真を撮り、生きている細胞の個数を測定した。
【0216】
図23はこの写真において染色された細胞の個数を測定した結果を示すものである。図23において、縦軸の「cell count」は生きている細胞の個数を示す。
【0217】
図23に示すように、TNF−αを処理したHUVECはマイクロベシクル濃度依存的にアポトーシスが起こり、TNF−αを処理していない細胞はアポトーシスが殆ど誘導されないことが分かる。
【0218】
前記結果より、マイクロベシクルに負荷されたドキソルビシンによってアポトーシスが誘導され、このようなアポトーシス効果はTNF−αを処理した細胞、すなわち活性化された細胞でさらに高く現れたことを確認した。
【0219】
24ウェルプレートに0.1%ゼラインをコートし、ヒト血管細胞HUVECを3×10cells/wellとなるように接種した後、96ウェルプレートで12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF−αを入れたグループとTNF−αを入れていないグループを用意し、16時間培養した。PBSで洗浄した後、培地100μLを入れ、それぞれ0、1、2、5μg/mLの濃度で実施例9の方法によってドキソルビシンの代わりにそれぞれ5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、カルボプラチン(carboplatin)を用いて単核球から製造したマイクロベシクルを処理した後、20分間培養した。PBSで洗浄した後、培地500μLを仕込み、24時間培養した。24時間の後、PBSで洗浄した後、1μMのカルセインAM染色剤を入れ、生きている細胞を染色した。蛍光顕微鏡を用いて写真を撮り、生きている細胞の個数を測定した。
【0220】
図24は写真において染色された細胞の個数を測定した結果を示すものであり、縦軸の「cell count」は生きている細胞の個数を示す。
【0221】
図24に示すように、多様な薬物を負荷した単核球由来マイクロベシクルも、TNF−αを処理したHUVECでマイクロベシクル濃度依存的にアポトーシスが起こり、TNF−αを処理していない細胞はアポトーシスが殆ど誘導されないことが分かる。
【0222】
細胞接合分子が単核球由来マイクロベシクルの活性に重要であることを確認するために、細胞接合分子のうち、ICAM−1を過発現しているICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞と、ICAM−1を発現しないICAM−1アンチセンス形質転換されたHT1080細胞を用意した。
【0223】
実施例9の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを0.1、0.5、1μg/mLの濃度でそれぞれ処理した後、30分間37℃で培養した。PBSで洗浄した後、培地を入れ、24時間培養した。24時間の後、PBSで洗浄した後、1μMのカルセインAM染色剤を入れ、生きている細胞を染色した。蛍光顕微鏡を用いて写真を撮り、生きている細胞の個数を測定した。
【0224】
図25は写真において染色された細胞の個数を測定した結果を示す。
【0225】
図25に示すように、ICAM−1が発現していないHT1080に比べて、ICAM−1が多く発現しているHT1080細胞でアポトーシスが一層さらに多く誘導されることが分かる。前記結果は、単核球に由来するマイクロベシクルの表面には単核球細胞と同様にLFA−1タンパク質が露出されており、LFA−1はICAM−1と特異的に結合することができるため、単核球由来マイクロベシクルがこのような特異的結合を介してICAM−1の過発現したHT1080細胞にさらに多く伝達されたことを意味する。
【0226】
結論的に、単核球に由来し且つ抗癌薬物が負荷されたマイクロベシクルに存在するLFA−1などの細胞接合分子は、ICAM−1などの細胞接合分子を表面に発現している細胞と特異的に結合することができ、負荷された抗癌薬物を細胞に伝達してアポトーシスを起こすおそれがあることが明白である。
【0227】
実施例17:単核球由来マイクロベシクルを用いた分裂細胞毒性の誘導
直径35mmの細胞培養プレートに0.1%ゼラチンをコートし、ヒト血管細胞HUVECを1×10となるように接種した後、12時間培養して細胞が満ちるように(confluent)した。細胞が満ちた後、200p tipを用いてスクラッチ(scratch)を与え、10ng/mLとなるようにTNF−αを入れ、6時間培養して細胞を成長させた。
【0228】
PBSで洗浄した後、培地1mLを入れ、5μg/mLの濃度で実施例9の方法によって単核球から製造したマイクロベシクルを処理した後、20分間培養した。PBSで洗浄した後、培地1mLを入れて24時間培養した。24時間の後、PBSで洗浄した後、1μMのカルセインAM染色剤を入れ、生きている細胞を染色した。蛍光顕微鏡を用いて写真を撮り、その結果を図26に示した。
【0229】
図26において、緑色は生きている細胞を示し、赤色線はスクラッチが生じた部分を示す。HUVECはコンフルエント(confluent)になれば、接触阻止(contact inhibition)によってそれ以上細胞が分裂しない。ところが、スクラッチを与えて空間が生ずると、空の空間に細胞が分裂及び移動する。
【0230】
図26に示すように、何にも処理していないグループではスクラッチが生じた部位に細胞が分裂及び移動をして緑色で満ちていることを確認した。しかし、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを処理する場合、スクラッチが生じた部位に細胞がないことを確認した。また、スクラッチがなく、コンフルエント(confluent)な部位ではマイクロベシクルを処理しても何らの影響もなかった。前記結果より、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルは分裂する細胞にのみ特異的に作用することが分かる。
【0231】
実施例18:マイクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌死滅誘導
マウス大腸癌26細胞株(mouse colon 26 cell line)1×10細胞[Cancer Res. 57; 1625-1629 (1997)]をマウスの皮膚下に注射し、5日間培養した。
【0232】
実施例1の方法によって押出法でマクロファージから、ドキソルビシンが負荷されていないマイクロベシクルを製造した。実施例9の方法によって押出法で、ドキソルビシン400μg/mL溶液に懸濁されたマクロファージから、3μgのドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル(ドキソルビシン−マイクロベシクル)を製造した。
【0233】
5日後、PBS、10μgのマイクロベシクルを含むPBS溶液(マイクロベシクル)、0.6μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルを2μg含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル(2))、3μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルを10μg含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル(10))100μLを各実験群別に10匹ずつのマウスに一日に1回ずつ尾静脈を介して注射し、二日に1回ずつ癌組織の大きさを測定した。癌組織の体積は最も長い長さlとこれに垂直な長さsを測定してv=ls/2の式で計算した。
【0234】
前記大腸癌細胞を皮下接種した後、癌組織の大きさを測定した結果を図27に示す。
【0235】
図27に示すように、ドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルを毎日10μgずつ注射した場合、癌組織の成長が最も遅かった。しかし、ドキソルビシンのないマイクロベシクルは癌組織の成長に何らの影響もなかった。
【0236】
前記結果は、マイクロベシクルによって抗癌薬物のドキソルビシンが癌組織へ伝達され、ドキソルビシンによって抗癌効果が示されたことを意味する。
【0237】
実施例19:マクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌死滅メカニズム
実施例18で実験したマウスから採取した癌組織のうち、PBS、ドキソルビシンを負荷したマイクロベシクルを処理した癌組織を4%パラホルムアルデヒドに浸して24時間固定した。固定した癌組織を70%エタノール(ethanol)に1時間ずつ1回、95%エタノールに1時間ずつ4回、100%エタノールに1時間ずつ3回、100%キシレン(xylen)に1時間ずつ3回浸して脱水反応(dehydration)をさせた。その後、パラフィン(paraffin)に入れて固定した。パラフィンで固定された癌組織を4μmの厚さに切断し、スライドガラスに付着させた。付着した組織を60℃で1時間保管してパラフィンを溶かした。溶かした組織を100%キシレンに1分ずつ3回、100%エタノールに1分ずつ4回、95%エタノールに1分ずつ3回、最後に流れる水に5分間保管して水和反応(hydration)を行った。
【0238】
水和反応済みの組織に免疫組織化学法(immunohistochemistry)を行った。免疫組織化学法のために、組織を10mMクエン酸ナトリウム(sodium citrate、Sigma、No.S4641)バッファに入れ、5分ずつ3回電子レンジを用いて抗原賦活化(antigen retrieval)を行った。組織を流れる水に入れて冷やした後、5%ウマ血清と0.02%Triton X−100を入れたTBS(tris buffered saline)を仕込み、2時間ブロッキングした。5%ウマ血清(horse serum)と0.02%Triton X−100を入れたTBSに、血管マーカーCD31を認知する抗体(SantaCruz、No.SC1506)を1:200の比率で入れ、4℃で12時間保管した。0.02%Triton X−100を入れたTBSで3回洗浄した後、緑色蛍光を帯びるAlexa488が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.02%Triton X−100を入れたTBSで3回洗浄した後、ホスト染色剤を5μMとなるように仕込み、さらに10分間染色した。TBSで5回洗浄した後、カバーガラスをスライドガラスに付け、共焦点顕微鏡上で観察し、写真における緑色染色部分の領域を測定した。
【0239】
図28は写真における血管部位を定量化したグラフである。図28において、縦軸は写真における緑色部分(CD31 positive area)の領域を示し、緑色領域は血管を示す。総10枚の写真で血管を定量し、図28に示すように、マイクロベシクル濃度依存的に血管が減少することを確認した。
【0240】
血管破壊による癌細胞の分裂減少を確認するために、水和反応済みの組織に対して免疫組織化学法を行った。免疫組織化学法のために、組織を10mMクエン酸ナトリウムバッファに入れ、5分ずつ3回電子レンジを用いて抗原賦活化を行った。組織を流れる水に入れて冷やした後、5%ウマ血清と0.02%Triton X−100を入れたTBSを仕込み、2時間ブロッキングした。5%ウマ血清と0.02%Triton X−100を入れたTBSに細胞分裂マーカーとしてのリン酸−ヒストン−3(phosphor-histone 3、PH−3)を認知する抗体(Upstate、No.06−570)を1:200の比率で仕込み、4℃で12時間保管した。0.02%Triton X−100を入れたTBSで3回洗浄した後、緑色蛍光を帯びるAlexa488が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.02% Triton X−100を入れたTBSで3回洗浄した後、ホスト染色剤を5μMとなるように仕込み、さらに10分間染色した。TBSで5回洗浄した後、カバーガラスをスライドガラスに付け、共焦点顕微鏡上で観察した。
【0241】
図29は写真において分裂する細胞を測定したグラフである。図29において、縦軸は写真において緑色を帯びる、分裂する細胞(PH3 positive cell)の個数を示す。総10枚の写真で細胞を数えた。図29に示すように、マイクロベシクル濃度依存的に分裂する細胞が減少することを確認した。
【0242】
前記結果をまとめると、ドキソルビシン負荷マイクロベシクルは、癌組織の血管細胞の破壊を誘導し、それにより癌細胞の分裂が減少したことが明白である。
【0243】
実施例20:マクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌組織血管へのドキソルビシン伝達の確認
前記実施例18で使用したマウス大腸癌26細胞株1×10細胞をマウスの皮膚下に注射し、5日間培養した。
【0244】
実施例9の方法によって押出法で、ドキソルビシン400μg/mL溶液に懸濁されたマクロファージから、3μgのドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル(ドキソルビシン−マイクロベシクル)を製造した。
【0245】
10日の後、PBS、100μgの押出法マイクロベシクルを含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル)、30μgのドキソルビシンを含むPBS溶液100μLを各1匹のマウスの尾静脈に注射した。
【0246】
6時間の後、マウスから癌組織、脾臓(spleen)、心臓(heart)を摘出し、4%パラホルムアルデヒドに浸して24時間固定した。固定した組織を70%エタノールに1時間ずつ1回、95%エタノールに1時間ずつ4回、100%エタノールに1時間ずつ3回、100%キシレンに1時間ずつ3回浸して脱水反応させた。その後、パラフィンに入れて固定した。パラフィンで固定された組織を4μmの厚さに切断し、スライドガラスに付着させた。付着した組織を60℃で1時間保管してパラフィンを溶かした。溶かした組織を100%キシレンに1分ずつ3回、100%エタノールに1分ずつ4回、95%エタノールに1分ずつ3回、最後に流れる水に5分間保管して水和反応を行った。
【0247】
各組織に伝達されたドキソルビシンを確認するために、水和反応済みの組織に対して免疫組織化学法を行った。免疫組織化学法のために、組織を10mMクエン酸ナトリウムバッファに入れ、5分ずつ3回電子レンジを用いて抗原賦活化を行った。組織を流れる水に入れて冷やした後、5%ウマ血清と0.02%Triton X−100を入れたTBSを仕込み、2時間ブロッキングした。5%ウマ血清と0.02%Triton X−100を入れたTBSに、血管マーカーCD31を認知する抗体(SantaCruz、No.SC1506)を1:200の比率で入れ、4℃で12時間保管した。0.02% Triton X−100を入れたTBSで3回洗浄した後、緑色蛍光を帯びるAlexa488が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。TBSで5回洗浄した後、カバーガラスをスライドガラスに付け、共焦点顕微鏡上で観察した。
【0248】
図30は癌組織で観察した写真であり、図31は脾臓と心臓で観察した写真である。図30及び図31において、緑色は血管を示し、赤色はドキソルビシンを示す。
【0249】
図30に示すように、ドキソルビシンがマイクロベシクルに負荷されているときにのみ癌血管へ伝達され、ドキソルビシン自体では癌血管へ伝達されないことが分かる。
【0250】
前記結果より、マクロファージマイクロベシクルに負荷されたドキソルビシンは癌組織の血管細胞へ伝達されることが明らかである。
【0251】
図31に示すように、ドキソルビシン自体を処理する場合、マウスの心臓へ多量のドキソルビシンが伝達されるが、マイクロベシクルに負荷される場合、心臓へ伝達されるドキソルビシンが減少することを確認した。
【0252】
前記結果は、ドキソルビシンによって現れる心臓毒性がマイクロベシクルを介して解決できることを意味する。
【0253】
実施例21:マクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌死滅誘導及びドキソルビシンとの比較
前記実施例18で使用したマウス大腸癌26細胞株1×10細胞をマウスの皮膚下に注射し、5日間培養した。
【0254】
実施例9の方法によって押出法で、ドキソルビシン400μg/mL溶液に懸濁されたマクロファージから、3μgのドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル(ドキソルビシン−マイクロベシクル)を製造した。
【0255】
5日の後、PBS、3μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクル10μgを含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル)、各3μg、15μg、60μgのドキソルビシンを含むPBS溶液100μLを各実験群別に5匹ずつのマウスの 尾静脈に一日に1回ずつ注射し、二日に1回ずつ癌組織の大きさを測定した。癌組織の体積は最も長い長さlとこれに垂直な長さsを測定し、v=ls/2の式で計算した。
【0256】
前記大腸癌細胞を皮下接種した後、癌組織の大きさを測定した結果を図32に示す。ドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルを毎日10μgずつ注射した場合、癌組織の成長が最も遅かった。ドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルと類似な効果を示すドキソルビシンは60μgであった。この量はマイクロベシクルに負荷されたドキソルビシンより20倍高い濃度である。
【0257】
図33は各条件当たり5匹のマウスの体重を測定して示すグラフである。
【0258】
図33に示すように、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを毎日10μgずつ注射したマウスの体重はPBS対照群のそれと比較して有意な変化がなかった。しかし、60μgのドキソルビシンを注射したマウスの体重は有意に減少した。
【0259】
ケタミン:ランプン:PBSを1:3:6の比率で混ぜた麻酔剤150μLをマウスの腹腔に投与して麻酔させた後、心臓から血液を採取し、凝固防止用チューブに入れた。血液10μLと1%HCl90μLとを混ぜた後、室温で7分間保管した。血球計算機に10μL仕込み、白く光る細胞の個数を数えた。
【0260】
図34は血液に存在する白血球の数をこの方法で測定した結果を示す。
【0261】
図34に示すように、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを毎日10μgずつ注射したマウスの白血球の数が減少しなかったが、60μgのドキソルビシンを注射したマウスの白血球は対照群より50%以上減少した。
【0262】
前記結果は、マイクロベシクルを介してドキソルビシンの副作用を減らすことができることを意味する。
【0263】
実施例22:マクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌死滅誘導及び膜タンパク質の重要性の確認
前記実施例18で使用したマウス大腸癌26細胞株1×10細胞をマウスの皮膚下に注射し、5日間培養した。
【0264】
実施例9の方法によって押出法で、ドキソルビシン400μg/mL溶液に懸濁されたマクロファージから、3μgのドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル(ドキソルビシン−押出法マイクロベシクル)を製造した。ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルにトリプシンを処理して膜タンパク質を除去したマイクロベシクル(ドキソルビシン−押出法マイクロベシクル(T))を用意し、また、ドキソルビシンが負荷された超音波分解マイクロベシクル(ドキソルビシン−超音波分解マイクロベシクル)を用意した。
【0265】
5日の後、PBS、3μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクル10μgを含むPBS溶液、トリプシンを処理した後に得たドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクル10μgを含むPBS溶液、3.6μgのドキソルビシンが負荷された超音波分解マイクロベシクル10μgを含むPBS溶液100μLを各実験群別に5匹ずつのマウスに一日に1回ずつ尾静脈を介して注射し、二日に1回ずつ癌組織の大きさを測定した。癌組織の体積は最も長い長さlとこれに垂直な長さsを測定し、v=ls/2の式で計算した。
【0266】
前記大腸癌細胞を皮下接種した後、癌組織の大きさを測定した結果を図35に示す。
【0267】
図35に示すように、ドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクルを毎日10μgずつ注射した場合、癌組織の成長が最も遅かった。しかし、膜タンパク質が除去したトリプシン処理マイクロベシクル、及び膜タンパク質のトポロジーが変わった超音波分解マイクロベシクルは癌組織の成長に大きい影響がなかった。
【0268】
前記結果は、マイクロベシクルが作用するにあたり、膜タンパク質と膜タンパク質のトポロジーが重要であることを意味する。
【0269】
実施例23:マクロファージ由来抗癌薬物負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌死滅誘導
実施例9の方法でドキソルビシン溶液の代わりに5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、カルボプラチン、EGCG(Epigallocatechin gallate)溶液を用いてマクロファージから、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、カルボプラチン、EGCGが負荷されたマイクロベシクルを製造して使用した。
【0270】
前記実施例18で使用したマウス大腸癌26細胞株1×10細胞をマウスの皮膚下に注射し、5日間培養した。5日後、5−フルオロウラシルが負荷されたマイクロベシクル15μgを含むPBS溶液、それぞれゲムシタビン、カルボプラチン、EGCGが負荷されたマイクロベシクル10μgを含むPBS溶液100μLを一日に1回ずつマウスの尾静脈に注射し、二日に1回ずつ癌組織の大きさを測定した。癌組織の体積は最も長い長さlとこれに垂直な長さsを測定し、v=ls/2の式で計算した。
【0271】
前記大腸癌細胞を皮下接種した後、癌組織の大きさを測定した結果を図36に示す。図36に示すように、各薬物が負荷されたマイクロベシクルを毎日注射した場合、癌組織の成長が遅いものと確認された。
【0272】
前記結果より、マイクロベシクルに多様な薬物を負荷することができ、各薬物の抗癌効果があることを確認した。
【0273】
実施例24:マクロファージ由来抗癌薬物負荷マイクロベシクルを用いたin vivo異種移植(xenograft)肺癌死滅の誘導
ヒト肺癌細胞株A549細胞2×10個をマトリゲル(matrigel)と混ぜてヌード(NUDE)マウスの皮膚下に注射し、25日間培養した。
【0274】
実施例9の方法によってドキソルビシンの代わりにゲムシタビンとカルボプラチンを用いて、マクロファージから、ゲムシタビンとカルボプラチンが同時に負荷されたマイクロベシクルを製造した。
【0275】
25日後、PBS、薬物が負荷された押出法マイクロベシクル5μgを含むPBS溶液、薬物が負荷された押出法マイクロベシクル20μgを含むPBS溶液100μLを各実験群別に5匹ずつのマウス二日に1回ずつ尾静脈を介して注射し、二日に1回ずつ癌組織の大きさを測定した。癌組織の体積は最も長い長さlとこれに垂直な長さsを測定し、v=ls/2の式で計算した。
【0276】
前記肺癌細胞を皮下接種した後、癌組織の大きさを測定した結果を図37に示す。図37に示すように、薬物が負荷された押出法マイクロベシクルを二日に1回20μgずつ注射した場合、癌組織の成長が最も遅いものと確認された。
【0277】
前記結果より、抗癌薬物負荷マイクロベシクルを用いて、ヒト癌細胞株異種移植癌組織に対しても抗癌効果があることを確認した。
【0278】
実施例25:マクロファージ由来ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを用いたin vivo癌転移抑制
マウス黒色腫細胞株B16BL6細胞2×10細胞をBNXマウスに尾静脈を介して注射し、3日間培養した。
【0279】
実施例9の方法によって押出法で、ドキソルビシン400μg/mL溶液に懸濁されたマクロファージから、3μgのドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを製造した。
【0280】
3日後、PBS、0.6μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクル2μgを含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル(2))、3μgのドキソルビシンが負荷された押出法マイクロベシクル10μgを含むPBS溶液(ドキソルビシン−マイクロベシクル(10))100μLを各実験群別に5匹ずつのマウスに一日に1回ずつ尾静脈を介して注射した。
【0281】
図38は各条件当たり5匹のマウスから、肺へ転移された黒色腫の個数を測定して示すグラフである。図38に示すように、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを毎日10μgずつ注射したマウスから、肺へ転移された黒色腫が最も小さいものと確認された。本実験は2回行った。
【0282】
10匹のマウスを用いて黒色腫を投与し、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを入れてマウスの生存率を確認した。
【0283】
図39はマウスの生存率を示すグラフである。図39に示すように、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクル10μgを投与する場合、マウスの生存率がPBS対照群に比べて増加することを確認した。
【0284】
前記結果より、ドキソルビシン負荷マイクロベシクルを投与する場合、転移癌の成長を阻害することができることが明らかである。
【0285】
実施例26:骨髄組織由来マイクロベシクルの製造及び薬物の伝達
マウスの骨髄(bone marrow)を得るために、マウスから後足の骨を取り出した後、骨に付いている筋肉塊を除去し、純粋に骨のみを分離した。1mLの注射器を用いて、骨の中に入っている骨髄組織細胞を取り出した。500×gで遠心分離して骨髄組織細胞を得た。赤血球を除去するために、RBC lysisバッファ(0.15M NHCl、10mM、KHCO、0.1mM NaEDTA、pH7.2)に細胞を入れ、室温で10分間保管した。500×gで遠心分離した後、PBSに細胞を懸濁した。前記懸濁液から実施例1の方法でマイクロベシクルを製造した。
【0286】
骨髄から得たマイクロベシクルが骨髄にターゲッティングされることを示すために、次の実験を行った。マイクロベシクルを5μMのDiIと30分間培養した。DiIは赤い蛍光を示す染色物質である。DiI標識されたマイクロベシクルをマウスの尾静脈に注射した。6時間後、マウスから骨髄細胞を採取した。採取した骨髄細胞から赤血球を除去し、残った細胞をFACSで分析した。
【0287】
図40はFACSの分析結果を示す。マイクロベシクルを注射していないマウスを対照群とした。図40に示すように、マイクロベシクルを注射しない場合、DiI信号が2×10以上の細胞は1.01%であるが、マイクロベシクルを注射したマウスは2.47%であって約2.5倍増加することを確認した。
【0288】
前記結果は、骨髄に由来するマイクロベシクルは、骨髄にターゲッティングされることを意味する。
【0289】
骨髄由来マイクロベシクルを用いてドキソルビシンを骨髄へ伝達できることを示すために、骨髄由来細胞を用いて実施例9の方法で、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを製造した。
【0290】
マウスにそれぞれ、PBS、80μgのマイクロベシクル、24μgのドキソルビシン、24μgのドキソルビシンが負荷された80μgのドキソルビシン−マイクロベシクルを含むPBS溶液100μLをマウスの尾静脈に注射した。6時間後、各マウスから骨髄細胞を得、骨髄にあるドキソルビシンの量を計算した。ドキソルビシンの量は、蛍光を用いて実施例10の方法で測定し、各マウスから得た骨髄のタンパク質を測定して正規化(normalize)した。
【0291】
図41は各グループ当たり3匹のマウスから得た骨髄における1μgのタンパク質の量に対するドキソルビシンの量を示す。図41に示すように、PBS対照群では1μgのタンパク質の量に約20μgのドキソルビシンがあるものと測定された。これとは異なり、ドキソルビシン−マイクロベシクルを投与したマウスの骨髄では約28μgのドキソルビシンが測定された。
【0292】
前記結果は、骨髄由来マイクロベシクルを用いて骨髄へドキソルビシンを伝達することができることを意味する。ドキソルビシン−マイクロベシクルに負荷された同量のドキソルビシンは骨髄へ伝達される量がマイクロベシクルに比べて著しく少なかった。
【0293】
実施例27:形質転換細胞を用いた細胞特異的伝達
ICAM−1アンチセンス形質転換されたHT1080細胞とICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞から、ドキソルビシンが負荷されたマイクロベシクルを実施例9の方法で製造した。ICAM−1アンチセンス形質転換されたHT1080細胞由来マイクロベシクルはICAM−1が負荷されないが、ICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞由来マイクロベシクルはICAM−1が負荷されている。
【0294】
単核球としてのU937細胞の1×10cellを24ウェルプレートに500μLの培地に接種した後、HT2とHT3細胞から得たマイクロベシクルを0、0.2、0.5、1μg/mLの濃度でそれぞれ処理し、24時間培養した。24時間後、細胞溶液50μLを96ウェルプレートに仕込み、トリパンブルー(trypan blue)溶液50μLを入れた。生きている細胞ではトリパンブルーがさらに細胞外に分泌されるため、生きている細胞はトリパンブルーで染色されない。混合された溶液10μLを血球計算機(hemocytometer)に入れ、光学顕微鏡でトリパンブルーのない細胞の個数を数えた。
【0295】
図42は各実験群の細胞数を測定して示すグラフである。図42に示すように、ICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞由来マイクロベシクルと、ICAM−1アンチセンス形質転換されたHT1080細胞由来マイクロベシクルとを比較したとき、単核球のLFA−1と結合することが可能なICAM−1が発現したICAM−1センス形質転換されたHT1080細胞由来マイクロベシクルが単核球としてのU937細胞のアポトーシスを一層さらに多く誘導することが分かる。
【0296】
前記結果より、形質転換を介してターゲッティング物質を負荷した細胞由来マイクロベシクルを用いて細胞特異的伝達が可能であることが明らかである。
【0297】
実施例28:単核球由来シェディングマイクロベシクルの分離精製及び薬物負荷
単核球細胞を1×10cells/mLの濃度で10mL用意し、10μMのサイトカラシンD(Sigma、No.C8273)を処理した細胞と、前記サイトカラシンDを処理していない細胞を24時間培養した。条件培地(conditioned medium)を500×gで10分間遠心分離し、得られた上層培養液を800×gで10分間2回遠心分離した。この過程で得られた上層培養液を100,000×gで2時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁してマイクロベシクルを得た。
【0298】
図43はサイトカラシンDを処理した細胞から得たシェディングマイクロベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【0299】
図43に示すように、得られたシェディングマイクロベシクルは約50〜100nmの大きさを有することを確認することができる。
【0300】
サイトカラシンDを処理せずに得たシェディングマイクロベシクルと、サイトカラシンDを処理した後に得たシェディングマイクロベシクルにそれぞれ400μg/mLの濃度でドキソルビシンを入れた後、4℃で12時間培養した。12時間の後、培養液を100,000×gで2時間超遠心分離した。沈殿物をPBSで懸濁してドキソルビシン負荷シェディングマイクロベシクルを得た。
【0301】
実施例29:ナノ粒子が負荷されたシェディングマイクロベシクルの分離及び精製
ヒト子宮頚部癌細胞株としてのHeLa細胞(ATCC No.CCL−2)を1×10cellsとなるように150mmのプレートに接種し、プレート内で癌細胞が80%まで満ちるように用意した。カルボキシル基(−COOH)が接合されたQdot 705(Invitrogen、No.Q21361MP)を5nMの濃度で無血清培地20mLに混ぜた後、癌細胞と共に24時間培養した。前記Qdotを処理する前に、PBSを用いて、既存の培地で培養していた細胞をよく洗浄した後、Qdotを含む培地を処理した。24時間後、条件培地を回収した後、細胞残屑(cell debris)を除去するために、800×gで10分間遠心分離を行い、連続的に3000×gで10分間遠心分離を行った。細胞残屑の除去された細胞上層液20mLを、10kDa以上の大きさのみを集める遠心分離フィルター装備を用いて3000×gで3mLとなるまで遠心分離を行った。容量5mLの超遠心分離チューブに下方からそれぞれ50%オプティプレップ1mL、5%オプティプレップ1mL、及び濃縮された3mLの条件培地を順次入れた。その後、100,000×gで2時間超遠心分離した。50%オプティプレップと5%オプティプレップとの間の層で、Qdotが負荷されたシェディングマイクロベシクルを得た。
【0302】
図44はQdotが負荷されたシェディングマイクロベシクルのTEMイメージである。Qdotは電子密度が高いため、TEMイメージ上で黒色の点として示される。図44に示すように、Qdotは大部分マイクロベシクルと同一の位置に位置していることを確認することができ、これによりシェディングマイクロベシクルに量子ドットなどのナノ粒子を負荷することができることを確認した。
【0303】
実施例30:単核球由来ドキソルビシン負荷シェディングマイクロベシクルを用いた薬物の細胞特異的伝達
24ウェルプレートに0.1%ゼラチンのコートされたカバーガラスを入れ、カバーガラス上にヒト血管細胞としてのHUVEC細胞を3×10の量だけ接種した後、24ウェルプレートで12時間培養した。10ng/mLとなるようにTNF−αを入れ、16時間培養した。PBSで洗浄した後、培地500μLを入れ、5μg/mLの濃度で、実施例27の方法によって分離した、 単核球由来ドキソルビシンが負荷されたシェディングマイクロベシクルを処理した後、20分間培養した。PBSで洗浄した後、無血清培地500μLを入れ、セルトラッカー溶液を5μMとなるように入れた後、30分間培養した。PBSで洗浄した後、血清のある培地を500μL仕込み、さらに30分間培養した。カバーガラスを4%パラホルムアルデヒド500μLに仕込み、室温を10分間保管した。カバーガラスをスライドガラスに付けた後、蛍光顕微鏡上で観察した。
【0304】
図45は生きている細胞を測定して示すグラフである。図45に示すように、ドキソルビシンが負荷された、サイトカラシンDを処理せずに得たシェディングマイクロベシクル、及びサイトカラシンDを処理した後に得たシェディングマイクロベシクルの両方ともはアポトーシスを誘導したことが分かる。
【0305】
前記結果より、TNF−αを処理したHUVEC細胞におけるアポトーシス効果がさらに高いため、ドキソルビシン負荷シェディングマイクロベシクルが正常細胞より癌細胞のアポトーシスを選択的にさらに多く誘導することを予想することができる。
【0306】
前述した本発明の説明は例示のためのものである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想又は必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形可能であることを理解することができるであろう。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明に係る前記治療用及び/又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルを使用することにより、目標の細胞又は組織にのみ前記薬物を効果的に伝達することができ、これにより治療用物質の副作用を減らして疾病の治療過程における患者の苦痛及び不便を減らすことができる。また、目標の細胞又は組織にのみ診断用物質が伝達されるようにすることにより、疾病に関連した細胞又は組織を容易に診断することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む組成物。
【請求項2】
前記哺乳類の有核細胞は単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記哺乳類の有核細胞は特異的細胞又は組織へ誘導される細胞であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳類の有核細胞は疾病の治療用又は診断用物質を発現する細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記哺乳類の有核細胞は形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記哺乳類の有核細胞は特異的細胞又は組織へ誘導されるように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記哺乳類の有核細胞は疾病の治療用又は診断用物質を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記哺乳類の有核細胞は、特異的細胞又は組織へ誘導され、疾病の治療用又は診断用物質を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記哺乳類の有核細胞は細胞接合分子、抗体、標的誘導タンパク質、細胞膜融合タンパク質自体及びこれらの融合タンパク質よりなる群から選ばれる一つ以上を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記哺乳類の有核細胞は成長因子、サイトカイン、受容体、蛍光タンパク質、ペプチド及びこれらの融合タンパク質よりなる群から選ばれる一つ以上を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記マイクロベシクルは、哺乳類の有核細胞を含む懸濁液を、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いて製造することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記マイクロベシクルは由来した哺乳類の有核細胞の細胞膜とトポロジーが同じ膜を有するマイクロベシクルであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記マイクロベシクルの膜は前記哺乳類の有核細胞の細胞膜以外の成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞膜以外の成分がシクロデキストリン又はポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記マイクロベシクルの膜成分が化学的に変形されたことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞よりその大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを含む、薬学的組成物。
【請求項17】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞よりその大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディング(shedding)マイクロベシクルを含む、薬学的組成物。
【請求項18】
前記治療用及び/又は診断用物質は前記有核細胞に由来するものであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記哺乳類の有核細胞は前記治療用又は診断用物質が発現するように形質転換された有核細胞であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記治療用又は診断用物質は前記有核細胞以外の外部から注入されたものであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記治療用又は診断用物質は抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ペプチド、タンパク質、毒素、核酸、ビーズ、マイクロ粒子、及びナノ粒子よりなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記核酸はDNA、RNA、アプタマー(aptamer)、LNA(locked nucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)及びモルホリノ(morpholino)よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記ナノ粒子は酸化鉄、金、炭素ナノチューブ、及び磁気ビーズよりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記治療用又は診断用物質は蛍光を放出する物質であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記蛍光を放出する物質が蛍光タンパク質又は量子ドットであることを特徴とする、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記治療用又は診断用物質は一つ以上の抗癌剤であり、100nm以上の大きさを有することを特徴とする、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達用組成物。
【請求項28】
哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいシェディングマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達用組成物。
【請求項29】
前記治療用又は診断用物質を組織又は細胞特異的に伝達することを特徴とする、請求項27又は28に記載の疾病の治療用又は診断用物質伝達用組成物。
【請求項30】
哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達システム。
【請求項31】
哺乳類の有核細胞に由来し且つ前記細胞より小さいシェディングマイクロベシクルを含む、疾病の治療用又は診断用物質伝達システム。
【請求項32】
疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階;
(b)前記懸濁液から製造されたマイクロベシクルを分離する段階;及び
(c)前記分離されたマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【請求項33】
疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階;及び
(b)前記治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞を含む懸濁液から押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解、及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階。
【請求項34】
疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来マイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して前記哺乳類の有核細胞と治療用又は診断用物質を含む混合懸濁液を得る段階;及び
(b)前記混合懸濁液から押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍−解凍、電気穿孔、機械的分解、及び化学物質処理よりなる群から選ばれた方法を用いてマイクロベシクルを製造する段階。
【請求項35】
疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来シェディングマイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)哺乳類の有核細胞を含む懸濁液からシェディングマイクロベシクルを分離する段階;及び
(b)前記分離されたシェディングマイクロベシクルを含む懸濁液に治療用又は診断用物質を添加して培養する段階。
【請求項36】
疾病の治療用又は診断用物質が負荷された哺乳類の有核細胞由来シェディングマイクロベシクルの製造方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)哺乳類の有核細胞を含む懸濁液に疾病の治療用又は診断用物質を添加して培養させ、前記哺乳類の有核細胞に前記治療用又は診断用物質を負荷させる段階;及び
(b)前記培養液から前記治療用又は診断用物質の負荷されたシェディングマイクロベシクルを分離する段階。
【請求項37】
前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルが含まれた懸濁液から、前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを分離する段階をさらに含む、請求項32〜35のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項38】
前記分離段階は密度勾配、超遠心分離、濾過、透析及び自由流動電気移動法よりなる群から選ばれた方法を用いて行われることを特徴とする、請求項37に記載の製造方法。
【請求項39】
前記哺乳類の有核細胞は単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項40】
前記哺乳類の有核細胞は形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項41】
前記哺乳類の有核細胞は遺伝子導入によって形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項40項に記載の製造方法。
【請求項42】
前記哺乳類の有核細胞は、細胞接合分子、抗体、標的誘導タンパク質、細胞膜融合タンパク質自体及びこれらの融合タンパク質よりなる群から選ばれる一つ以上を発現するように形質転換されたものであることを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項43】
前記治療用又は診断用物質は、抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ペプチド、タンパク質、毒素、核酸、ビーズ、マイクロ粒子及びナノ粒子よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項44】
前記哺乳類の有核細胞の細胞膜と比較してトポロジーが変形された膜を有するマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを除去する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項45】
前記マイクロベシクルの膜に前記原形質体の細胞膜以外の成分を追加する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項46】
前記細胞膜以外の成分がシクロデキストリン又はポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項45に記載の製造方法。
【請求項47】
前記マイクロベシクルの膜成分を化学的に変形する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項32〜36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項48】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを使用することを含む、疾病の治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法。
【請求項49】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より 大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを使用することを含む、治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達する方法。
【請求項50】
2種以上の前記治療用又は診断用物質を伝達することを特徴とする、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
2種以上の前記治療用又は診断用物質が前記マイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルに共に負荷されていることを特徴とする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記治療用又は診断用物質が負荷された2つ以上のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを使用することを特徴とする、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項53】
前記2つ以上のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを同時に投与することを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
1種の前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクル、2種以上の前記治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクル、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれた2つ以上のマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを順次投与することを特徴とする、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項55】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法。
【請求項56】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の治療用又は診断用物質が負荷されたシェディングマイクロベシクルを用いて、前記治療用又は診断用物質を特異的細胞又は組織に伝達することを含む、疾病の治療又は診断方法。
【請求項57】
前記哺乳類の有核細胞は単核球、マクロファージ、樹枝状細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳類の有核細胞は形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項59】
前記哺乳類の有核細胞は特異的細胞又は組織に誘導されるように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項60】
前記哺乳類の有核細胞は疾病の治療用又は診断用物質を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項61】
前記哺乳類の有核細胞は、特異的細胞又は組織に誘導され、疾病の治療用又は診断用物質を発現するように形質転換された細胞であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項62】
前記治療用又は診断用物質は前記有核細胞に由来するものであることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項63】
前記治療用又は診断用物質は前記有核細胞以外の外部から注入されたものであることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項64】
前記治療用又は診断用物質は抗癌剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ペプチド、タンパク質、毒素、核酸、ビーズ、マイクロ粒子及びナノ粒子よりなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項65】
前記治療用又は診断用物質は蛍光を放出する物質であることを特徴とする、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項66】
哺乳類の有核細胞に由来し、前記細胞より大きさが小さく、疾病の診断に必要なプライマー、プローブ、アンチセンス核酸又は抗体が負荷されたマイクロベシクル又はシェディングマイクロベシクルを含む、疾病診断用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公表番号】特表2012−532124(P2012−532124A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518496(P2012−518496)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004277
【国際公開番号】WO2011/002239
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】