説明

唄口を有する楽器用の演奏補助具および演奏補助装置

【課題】 フルートの吹き方の技法を伝授することは大変に難しく、初心者は音を出そうとするあまりに息を吹く口に集中し、肩に力が入ってがちがちになってしまい、正しい音階で美しい音色を出すことが、長期間の練習を経ても出来ないでいる。本発明はこのように困難な問題を解決に導くことを課題とする。
【解決手段】 唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることによって、息を吹く方向が視線の方向に一致し、初心者でも正しい音階で美しい音色が出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルートなどの唄口を有する(リードを用いない)楽器を吹いた時に初心者でも、正しい音名の音で、美しい音色が出せるようにするための、唄口を有する楽器用の演奏補助具および演奏補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルートを吹奏する際に重要なことは、フルートを安定して支持し、唄口に適正に息を吹くこととされている。フルートの支持方法に付いては特開2004−205682で詳しく開示されているが、息の適正な吹き方に関しては特許文献的には実用新案登録3038459の吹奏補助アダプターくらいしか知られていない。
【特許文献1】 特開2004−205682
【特許文献2】 実用新案登録3038459
【特許文献3】 特開2009−003417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フルートの練習を始めた初心者にとって最も難しい点は、第1に音階が表わせないこと、第2に音を出せるようになってからもなかなか美しい音色にはならないことが上げられる。ピアノのようにあるキーを押えさえすれば決まった音が出る楽器とは異なり、唄口に適正に息を吹くことは初心者にとって至難の技であるように思われる。
【0004】
音楽教室などでもその教授方法はただ練習あるのみであり、はっきり言ってしまえば教授方法も何もないのが現状である。これはすなわちフルートの吹き方の技法を伝授することがいかに難しいかを示している。吹奏者は音を出そうとするあまり息を吹く口に集中し、肩に力が入ってがちがちになってしまうのである。従って当然のことながら正しい音名の音を美しい音色で出すことなど出来るわけがないのである。
【0005】
そこで当発明者は上述したような問題点を解決して、フルートの初心者でも、正しい音名の音を、美しい音色で出せて、そのまま本格的な練習に入って行けるようにするべく特開2009−003417の「唄口を有する楽器の教授方法、自習方法、演奏補助具および演奏補助装置」の発明を開示している。これは唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることにより、息を吹く方向が視線の方向に一致し、初心者でも正しい音階で美しい音色が出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来ると言うものである(特許文献3を参照のこと)。
【0006】
この中でより一層の美しい音色を奏でるには、微妙な吹き加減の体得が不可欠であり、それには相当の練習時間が必要とされるが、このような問題に対しては次のような解決手段を開示した。すなわちある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を示してその方向に吹かせるようにする。音階の各音が正しく出せるようになったら、次はこの何れの音に付いてもより一層美しく吹けるようにしなくてはならない。或いは正しい音を出す練習とより一層の美しい音を出す練習とが一時に行えるのであれば言うことはない。そのためには各々の音に付いて上述した音階に対する吹奏方向とは異なる特定の方向があることを体得することが望まれる(この方向はおよそ左右方向となるはずである)。なお各音に付いて吹く方向を特定して見るとこの方向も段階的になることが分かるのは、この方向が音階に対応しているためである。従って正しい音の吹奏方向と、より美しい音の吹奏方向とは、一つの共用される目印で表わすことが出来る。この実施形態として特開2009−003417では第14実施形態および第15実施形態を上げた(図16および図17を参照のこと)。
【0007】
しかしながら当発明者は、その後も継続的に鋭意研究した結果、より一層美しく吹けるようにするための左右方向の位置取りに関して新たな発明を行うことが出来た。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するためのほぼ垂直方向の点と、この音名の美しい音が出る息の方向を段階的に指示するためのほぼ水平方向の点と、を合成した点に目印が設けられている、唄口を有する楽器用の演奏補助具であり、唄口を有する楽器がフルートの場合に、前記水平方向の点に関して、フルートの37音中の第2オクターブの「シ」を中心に配置し、これよりも高い音を前記「シ」の左方に配置し、低い音を前記「シ」の右方に配置することを特徴とする唄口を有する楽器用の演奏補助具である。すなわちこれ等の合成された目印は、前記「シ」を通過する左肩上がりの斜線に添って配置されている。
【0009】
当発明者はフルートの演奏家であり教師であり、多くの生徒をこの演奏補助具を用いて指導しているが、実際に極めて良好な成果を上げている。更に水平方向に関しても、目印を目で追うだけで、息を吹く方向が視線の方向に自然に一致することが分かった。この水平方向の吹き分けはマウスピース上では極めて微妙で高度な技術を要求されるが、本願演奏補助具上では水平方向の点としてはっきり区別出来る程度に段階的に配置されており、この点から点へ目を移すだけで吹く息がその方向に追随し、実際にマウスピース上での水平方向の吹き分けが出来てしまう点が驚異的である。なお第2オクターブの「シ」を中心に配置することを見出した点が重要である。
【0010】
なお低い方の音階を示す目印の方が高い方の音階を示す目印よりも強調されて設けられているものとしても良い。これは吹く息の強弱を示すものであり、低い方の音を出す時には比較的に強く吹かせたいからである。強調の付け方は目印を大小で表わしたり濃い薄いで表わしたり、またカラー表示で色を変えるなど任意である。好適な一例として目印を多重同心円で表わしてどの円までを塗り潰すかで強弱を付けることを上げる。
【0011】
ところでこのような演奏補助具を使い始めるのに先立って目印を吹奏者に合わせることが必要である。上述したようにフルートでは37音中の一番上の「ド」と吹奏者の唇の位置とが水平になる所を目印の基点とすると良く、これは吹奏者の身長によって変わることから、この演奏補助具をスタンドや掛け具や吊り具などの支持手段を有すると共にこの支持手段に高さ位置の調節手段を備えたものとするのである。スタンドであれば演奏補助具を載せる台を立てる支柱を伸縮自在に構成する。掛け具であれば演奏補助具を止めるピンの位置を可変とするのである。また吊り具であれば演奏補助具を吊す吊り紐を繰り出したり巻き戻したりし得る紐の収納具を設けたりする。すなわち支持手段は必要に応じていかようにも設計することが可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印をこの支持手段に設けても良い。
【0012】
また目印が、開いた楽譜が閉じないように止めておくためのクリップに設けられているものとすることが出来る。クリップの吹奏者に向かう面に目印を設けて成るものとするのである。楽譜台に楽譜を載せ、所要のページを開いてクリップで止めれば、このクリップがそのまま本発明の演奏補助具となる。このクリップは単独でも楽譜と一緒でも運搬や収納が容易である。またこのようなクリップをアクセサリーとして構成することが可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印をこのクリップに設けても良い。
【0013】
また目印が、一例アクリル板のような透明な板状体に設けられている演奏補助具とすることが出来る。この板状体をスタンドの頂部に設けておくなどしてこれを立てて使用するようにする。例えば複数の吹奏者が練習を行うような場合に、互いの様子や教授者の仕草などが透明な板状体を通して見られる。なお後述する演奏補助装置にも関連するが、演説の際に用いる原稿を透明な液晶ディスプレイに表示しておき、演説者にはこの原稿が見えるが聴衆からは見えないようにする装置があるが、これと同じように透明な液晶ディスプレイに本発明の演奏補助具すなわち唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示する演奏補助装置を提供することが可能である。これは発表会などの演奏会で使用すると良いであろう。なおこれ等に付いても更に上述したようなより美しい音の吹奏方向を示す目印を設けることが出来る。
【0014】
また演奏補助具が書籍のページとして設けられていものとすることが出来る。紙葉に音階を表わす目印であるメモリを縦方向に並ぶように印刷したものを提供することが出来るが、このような紙葉を書籍のページとして、教則本や雑誌などに綴じ込んでおくのである。あるいは綴じ込み付録として、本体から切り離せるようにミシン目を入れたものも提供可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印を印刷するようにしても良い。
【0015】
次に、これまで説明して来た演奏補助具に、更に前記目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を設けたものとしても良い。この明示手段の一例としては、目印に例えばLED(発光ダイオード)ランプを使用して、個々のLEDランプに対応するスイッチを設け、このスイッチを介して電源からLEDランプへ電力を供給出来るようにして成るものを上げる。前記スイッチはフルートであれば37音に対応している。従ってこの内の何れか一をONにすれば、この音名の音に対応するLEDランプが点燈するので、これを吹くべき目印とするのである。このスイッチを足で操作し得るように設けても良い。また他の例として前記一群のスイッチをシンセサイザーのキーボードに割り当てて成るものを上げる。キーボードの何れかのキーを押せば、これに対応する音名の音のLEDランプが点燈する。これにより教授者や第三者に演奏して貰い、点燈した目印に向かって吹く練習を行なうことが出来るようになる。なお各々の音名の音に付いて、美しい音が出る息の方向を指示するための目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を設けたものとすることが可能である。
【0016】
このような明示手段に、更に運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音階を明示手段による表示に合わせるものとしても良い。運指表示とは、例えばフルートであれば左手の親指、人差し指、中指、薬指、小指、そして右手の人差し指、中指、薬指、小指の9指が押えるキーを指図するための表示のことである。すなわち運指表示に従ってキーを押えれば音の高さを設定することが出来るのである。この運指表示手段の一例としては、フルートのキーの配列をイラストで表示すると共にキーの位置に例えばLEDランプを埋め込んでおき、これに通電して光ったLEDランプが示すキーを押えるように指示するものを上げる。従って吹奏者は、前記演奏補助具の明示手段を見て息を吹く方向を定めると共に、この運指表示を見て指示されたキーを押えるようにすれば良いのである。なお上掲例の場合、イラストや写真でフルートの全体図を表示してこのキー配列にLEDランプを埋め込むような構成も可能である。
【0017】
また上述したような明示手段に、更にデジタル信号を出力し得るピアノなどの楽器からの演奏信号を受け付けて、この演奏信号が示す音名の音に対応する目印を、前記明示手段が目立たせて表示するような構成を設けても良い。上述のスイッチの操作に楽曲のプレーヤの演奏信号を利用するものと考えることが出来る。なお必要なものは演奏信号であって、これをスピーカなどに流すか否かの設定は任意である。
【0018】
さて上述の課題は、調律すべく演奏者が吹いた唄口を有する楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナが、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するためのほぼ垂直方向の点と、この音名の美しい音が出る息の方向を段階的に指示するためのほぼ水平方向の点と、を合成した点に目印を設けて表示するための表示装置を備えている唄口を有する楽器用の演奏補助装置であって、前記唄口を有する楽器がフルートであり、前記水平方向の点に関して、フルートの37音中の第2オクターブの「シ」を中心に配置して表示し、これよりも高い音を前記「シ」の左方に配置して表示し、低い音を前記「シ」の右方に配置して表示することを特徴とする、唄口を有する楽器用の演奏補助装置とすることにより達成される。なお前記誤差を表示すると共に前記音の音名を表示するようにしても良い。
【0019】
楽器調律用チューナには針式メータのアナログ表示タイプのものやLCD画面を備えたデジタル表示タイプのものがあり、楽器が発する音のずれを正確に表示することが出来るものである。従って本発明の思想をこの楽器調律用チューナに実装させて、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示画面に表示させるようにすることが可能である。或いは楽器調律用チューナにプロジェクタを組み込んで、プロジェクタによって前記目印を前方に設置したスクリーンに映像として映し出すようなものにも構成し得る。
【0020】
なお上述した楽器調律用チューナに前記目印を映し出す装置に関して、低い方の音名を示す目印の方を高い方の音名を示す目印よりも強調して表示するようにすることが出来る。これは低い方の音名の音を出す時には比較的強く吹かせる、と言うように吹く息の強弱を示すものである。強調の付け方は目印を大小で表わしたり、濃い薄いで表わしたり、目印を多重同心円で表わしてどの円までを塗り潰すかで強弱を付けたり、カラー表示で色を変えるなど、吹奏者にとって分かり易いものである限りは任意である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることにより、フルートなどの唄口を有する楽器を、初心者でも正しい音名の音で美しい音色が出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来るようになった。また更に、ある特定の音名の音を出すべく唄口を吹いた時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることによって、より一層美しい音が出せるようになり、そのまま中・上級者のための練習が行えるようになった。すなわち本発明の演奏補助具および演奏補助装置によって専門家の技を誰でも体得出来るようにすることに成功したのである。このような演奏補助具や演奏補助装置は世界でも初めてものである。またこれ等が音楽界に及ぼす産業上の利益には計り知れないものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2で表わした本実施形態は、調律すべく演奏者が演奏した楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナ12の一機能として、演奏補助具1の表示機能を備えたものである。これはフルートの唄口を模したものを台板10上に印刷したものであって、その唄口の中に音階を表わすLEDライト11を、左上から右下へ斜めに配設したものである。この際に図1の中で中央に表した縦の鎖線の位置にフルートの37音中の第2オクターブの「シ」を配置し、これより高い音を前記「シ」の左方に配置し、低い音を前記「シ」の右方に配置するようにした。なお台板10上のLEDライト11とチューナ12とはリード線13で電気的に接続されている。
【0023】
このチューナ12は制御部2を中心として、フルートが発した音を図示しないマイクで拾ってサンプリングを行う入力部20と、このデータを展開するための記憶部21と、このデータを元に基本周期を抽出して音名の判別とピッチ誤差の算出との演算を行う制御部2とが設けられている。この制御部2は、音名の表示を行う音名表示部23と、この音名の標準ピッチからの誤差の表示を行う誤差表示部22とを制御し、またこの音名に対応するLEDライト25を点燈させる。
【0024】
従って吹奏者がある音を吹くと、制御部2は音名の判別を行ってそれを音名表示部23に表示すると共にこの音名に対応する台板10上のLEDライト11を点燈させ(図1ではLEDライト11’が点燈している)、誤差表示部22では標準ピッチからの誤差の表示を行う。吹奏者は誤差表示部22でずれの有無や、ずれの程度の確認を行って、点燈しているLEDライト11に向けて正確に吹くように練習する。また次のような使い方が出来るようになっている。例えば生徒である吹奏者を演奏補助具1に向かわせ、指導者役の者が音階に合わせて設置されたスイッチ群24(図1では図示せず)の中から任意のスイッチを選んでON状態にすることによって、このスイッチに対応するLEDライト11’が点燈する。吹奏者は演奏補助具1で点燈しているLEDライト11’を「見て」唄口を吹く。この結果は音名表示部23と誤差表示部22とに表示されるから、生徒にも直ぐに吹奏の適否を分からせることが出来る。
【0025】
このように点燈しているLEDライト11’を「目で追うようにして」唄口を吹くようにするだけで、息の方向が斜め方向への視線の移動に追随して、点燈しているLEDライト11’を目がけて吹くようになるために、正しい音名の美しい音が出せるようになる。なお唄口に吹き掛ける息の横方向の位置取りに付いて見てみると、点燈しているLEDライト11’の、第2オクターブの「シ」からの横方向のずれを見て、右方向に或いは左方向にと言うように、「横方向を吹き分ける」のであるが、これはLEDライト11’を見るだけ(視線を移すだけ)で直ぐに出来ることであり、こうすることによってより一層美しい音色を奏でることが出来るのである。第2オクターブの「シ」の音名の音は横方向の位置取りの中心である。
【0026】
音階の各音が正しく出せるようになったら、次はこの何れの音に付いてもより一層美しく吹けるようにしなくてはならない。或いは正しい音を出す練習とより一層の美しい音を出す練習とが一時に行えるのであれば言うことはない。そのためには各々の音に付いて上述した音階に対する吹奏方向とは異なる特定の方向があることを体得することが望まれる(この方向はおよそ左右方向となるはずである)。なお各音に付いて吹く方向を特定して見るとこの方向も段階的になることが分かるのは、この方向が音階に対応しているためである。従って本実施形態のチューナ12のように、正しい音の吹奏方向と、より美しい音の吹奏方向とは、一つの共用される目印で表わすことが可能なのである。
【0027】
(第2実施形態)
図3は、中級者向けに構成した印刷物としての演奏補助具3を正面図で表わしたものである。これは上述した第1実施形態と同様に、正しい音の吹奏方向(視線を向ける方向である)と、より美しい音の吹奏方向(同様に視線を向ける方向である)とを、一つの共用される目印4や目印40で表わして成るものである。すなわち縦長の紙葉30に3重円の目印4と半音高い(低い)音を表わす黒丸の目印40と、これ等の音階名41とを印刷するが、目印4の詳細に付いては特開2009−003417を参照されたい。
【0028】
本実施形態は吹く方向に関して垂直方向に付いても水平方向に付いても中級者向けには更に微妙な方向があることを特定したため、ここに図を以て明示するものである。それは先ず垂直方向に付いて、音階を一番低い「ド」から3オクターブ上の「ド」までの37音を、1オクターブ上と2オクターブ上の2つの「ド」で区切って、第1オクターブエリア〜第3オクターブエリアまでの3つのエリアに分け、第1オクターブエリアでは「ド」〜「レ」を12とし、「レ」〜「ミ」を12、「ミ」〜「ファ」の半音間を6とし、「ファ」〜「ソ」を12、「ソ」〜「ラ」を12、「ラ」〜「シ」を12、「シ」〜「ド」の半音間を6とした。なお何れも単位はミリメートルである。次の第2オクターブエリアでは「ド」〜「レ」を12とし、「レ」〜「ミ」を12とし、「ミ」〜「ファ」の半音間を6とし、次に「ファ」〜「ソ」を11、「ソ」〜「ラ」を10、「ラ」〜「シ」を10、「シ」〜「ド」の半音間を4とした。そして第3オクターブエリアでは、「ド」〜「レ」を7とし、「レ」〜「ミ」を7とし、「ミ」〜「ファ」の半音間を3.5とし、「ファ」〜「ソ」を7、「ソ」〜「ラ」を7、「ラ」〜「シ」を7、「シ」〜「ド」の半音間を3.5とした。なお図3中で符号42はこれ等の間隔を指す。
【0029】
次に水平方向に付いては、第2オクターブエリアの「シ」を垂直の中心線43上に位置させた場合、他の音名の音は各々特定の数値を以て、当該「シ」よりも上側のものを左(マイナス方向)に配置し、当該「シ」よりも下側のものを右に配置した。すなわち中心線43からのずれを「シ」の上の「ド」を−4、「#ドbレ」を−7、「レ」を−5、「#レbミ」を−3、「ミ」を−6、「ファ」を−8、「#ファbソ」を−4、「ソ」を−6、「#ソbラ」を−4、「ラ」を−7、「#ラbシ」を−7、「シ」を−3、「ド」を−6とした(いずれも単位はミリメートルである)。また中心線43からのずれを「シ」の下の「#ラbシ」では3とし、「ラ」を6.5、「#ソbラ」を9、「ソ」を6、「#ファbソ」を12、「ファ」を11、「ミ」を17、「#レbミ」を24、「レ」を21、「#ドbレ」を12.5、「ド」を21とし、ここから第1オクターブエリアに入って「シ」を29、「#ラbシ」を36.5、「ラ」を41、「#ソbラ」を47、「ソ」を53、「#ファbソ」を60、「ファ」を57、「ミ」を62.5、「#レbミ」を66.5、「レ」を63、「#ドbレ」を68、また「ド」を67とした(いずれも単位はミリメートル)。なお図3中で符号44は中心線43からのずれを指す。
【0030】
このように構成された演奏補助具3を、壁に張り付けたりスタンドに張り付けたりして利用する。この際に一番高い「ド」の音を指す目印4の位置と吹奏者の唇の位置とがおおよそ水平になるように位置を合わせるようにすると良い。そして吹奏者はこの演奏補助具3から1メートルほど離れるようにして立ち位置を決める。これ等は個人個人で微調整されるものである。
【0031】
吹奏者は目印4,40の円や黒丸やメモリを、「目で追うようにして」唄口を吹くようにするだけで、息の方向が視線に追随して、目印4,40などを目がけて吹くようになるために、正しい音名の美しい音が出せるようになる。なお低い方の音を示す目印の方を高い方の音を示す目印よりも、黒丸を大きくすることで強調して設けている。これに従って黒丸が大きい低い方の音ほど強く吹くようにすると良い。
【0032】
このような印刷物としての演奏補助具3をスタンド仕様に構成することが出来る。例えば支持手段であるスタンドを、床に置く台部に立設した長さ調節自在な脚部の頂部に立てて固定し、このスタンドの表面に前記演奏補助具3を貼り付けて成るものとするのである。なお脚部には調節ネジを設け、これを締め付けるようにして長さ調節した脚部を固定し得るように構成すると良い。これは高さ位置の調節手段である。練習する人が変わる時には、必要に応じて高さ位置を再調節するようにすれば良い。この他演奏補助具3の小型版を用いて楽譜クリップ仕様に構成することが出来る。楽譜挟みは開いた楽譜をその側面部の小口で止めて、不本意にはページが捲れないようにするためのものである。前記演奏補助具3とは相似形ではあるが随分と小さいものであり持ち運びや収納に便利である。また市販可能である他に各種音楽関連商品やサービスの付録としても利用することが可能である。或いは演奏補助具3をフルート教則本などの本の巻末ページに印刷されると共に、本から切り離せるように巻末ページにミシン目が設けられているものとしても良い。このものの使用に当っては巻末ページから演奏補助具3だけをミシン目を以て切り離すようにする。これを楽譜台に載せたり拡大コピーして壁に貼るなどして用いれば良い。なお本から切り離すことなく本を見開きにして使用することも可能である。或いは演奏補助具3をTシャツなどに印刷して利用するような可能性がある。上述した楽譜クリップの例からも了解されることであるが、携帯電話機のストラップに取り付けるアクセサリー等として構成することもまた可能である。
【0033】
(第3実施形態)
さて図4は、上級者向けに構成した印刷物としての演奏補助具5を正面図にて表わしたものである。中級者と上級者とをはっきりと線引きすることは現実的ではないが、熟達者ほど無駄な動きが少ないのはどの分野にも共通している事実である。この実施形態の演奏補助具5は目印6,60の位置に特徴を有するため、上級者向けのものであるとする。縦長の紙葉50には、3重円の目印6と、半音高い(低い)音を表わす黒丸の目印60と、これ等の音階名61とが印刷されている。
【0034】
本実施形態は吹く方向に関して垂直方向に付いても水平方向に付いても上級者向けには更に微妙な方向があることを特定したため、ここに図を以て明示するものである。それは先ず垂直方向に付いて、音階を一番低い「ド」から3オクターブ上の「ド」までの37音を、1オクターブ上と2オクターブ上の2つの「ド」で区切って、第1オクターブエリア〜第3オクターブエリアまでの3つのエリアに分け、第1オクターブエリアでは「シ」〜「ド」を7とし、「ド」〜「ミ」を12、「ミ」〜「ファ」の半音間を6とし、「ファ」〜「ソ」を12、「ソ」〜「ラ」を12、「ラ」〜「シ」を12、「シ」〜「ド」の半音間を6とした。なおいずれも単位はミリメートルである。次の第2オクターブエリアでは「ド」〜「レ」を10.5とし、「レ」〜「ミ」を11とし、「ミ」〜「ファ」の半音間を5.5とし、次に「ファ」〜「ソ」を10、「ソ」〜「ラ」を9.5、「ラ」〜「シ」を9、「シ」〜「ド」の半音間を4とした。そして第3オクターブエリアでは、「ド」〜「レ」を7.5とし、「レ」〜「ミ」を7.5とし、「ミ」〜「ファ」の半音間を3.5とし、「ファ」〜「ソ」を7、「ソ」〜「ラ」を7、「ラ」〜「シ」を6.5、「シ」〜「ド」の半音間を3とした。なお図4中符号62はこれ等の間隔を指す。
【0035】
次に水平方向に付いては、第2オクターブエリアの「シ」を垂直の中心線63上に位置させた場合、他の音名の音は各々特定の数値を以て、当該「シ」よりも上側のものを左(マイナス方向)に配置し、当該「シ」よりも下側のものを右に配置した。すなわち、中心線63からのずれを「シ」の上の「ド」を−3.5、「#ドbレ」を−6.5、「レ」を−5、「#レbミ」を−3、「ミ」を−6、「ファ」を−7.5、「#ファbソ」を−4、「ソ」を−5.5、「#ソbラ」を−4、「ラ」を−6.5、「#ラbシ」を−6.5、「シ」を−3、「ド」を−5.5とした(いずれも単位はミリメートルである)。また中心線63からのずれを「シ」の下の「#ラbシ」では3、「ラ」を6、「#ソbラ」を8.5、また「ソ」を5.5、「#ファbソ」を10.5、「ファ」を8.5、「ミ」を12、「#レbミ」を14、「レ」を11、「#ドbレ」を4.5、「ド」を6とし、ここから第1オクターブエリアに入って「シ」を8.5、「#ラbシ」を10、「ラ」を12.5、「#ソbラ」を16、「ソ」を20、「#ファbソ」を25、また「ファ」を20.5、「ミ」を24、「#レbミ」を28、「レ」を25、「#ドbレ」を30、そして「ド」を28とした(いずれも単位はミリメートル)。なお図4中で符号64は中心線63からのずれを指す。
【0036】
本実施形態の演奏補助具5と第2実施形態演奏補助具3とを比較してみると、明かに上級者用の演奏補助具5では、吹奏者の視線の動きをより少なくさせて、正しい音名の美しい音が出せるように構成されていることが分かる。
【0037】
なお上述した実施形態は、当発明者がフルートの演奏家であり教師であることから実地に導き出した好適例であり、本発明の思想を逸脱しない範囲でアレンジを加えることが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
なおこの発明の演奏補助具は、単にフルートの練習用に限られず、ピッコロやたぬ笛などの練習用としても再構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 第1実施形態の正面図である。
【図2】 同実施形態のブロック図である。
【図3】 第2実施形態の正面図である。
【図4】 第3実施形態の正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 演奏補助具
10 台板
11 LEDライト
12 チューナ
13 リード線
2 制御部
20 入力部
21 記憶部
22 誤差表示部
23 音名表示部
24 スイッチ群
25 LEDライト
3 演奏補助具
30 紙葉
4 目印
40 目印
41 音階名
42 目印
43 中心線
44 目印
5 演奏補助具
50 紙葉
6 目印
60 目印
61 音階名
62 目印
63 中心線
63 目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するためのほぼ垂直方向の点と、この音名の美しい音が出る息の方向を段階的に指示するためのほぼ水平方向の点と、を合成した点に目印が設けられている唄口を有する楽器用の演奏補助具であって、唄口を有する楽器がフルートの場合に、前記水平方向の点に関して、フルートの37音中の第2オクターブの「シ」を中心に配置し、これより高い音を前記「シ」の左方に配置し、低い音を前記「シ」の右方に配置することを特徴とする、唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項2】
低い方の音階を示す目印の方が高い方の音階を示す目印よりも強調されて設けられている、請求項1に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項3】
更に前記目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を備えている、請求項1に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項4】
調律すべく演奏者が吹いた唄口を有する楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナが、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するためのほぼ垂直方向の点と、この音名の美しい音が出る息の方向を段階的に指示するためのほぼ水平方向の点と、を合成した点に目印を設けて表示するための表示装置を備えている、唄口を有する楽器用の演奏補助装置であって、前記唄口を有する楽器がフルートであり、前記水平方向の点に関して、フルートの37音中の第2オクターブの「シ」を中心に配置して表示し、これよりも高い音を前記「シ」の左方に配置して表示し、低い音を前記「シ」の右方に配置して表示することを特徴とする、唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項5】
低い方の音階を示す目印の方が高い方の音階を示す目印よりも強調されて設けられている、請求項4に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−28191(P2011−28191A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187886(P2009−187886)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(500186170)日本樹林株式会社 (6)
【Fターム(参考)】