喘息およびアレルギーの処置のための両性イオン免疫調節剤
喘息およびアレルギー状態を処置しそれから防御するための方法および製品を提供する。方法および製品は、ある種の制御性T細胞を誘導し、in vitroおよびin vivoで免疫抑制効果を示す、ある種の天然および合成の両性イオンポリマーに関連する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年3月31日に出願された米国仮出願第60/459,056号の利益を主張し、該仮出願の全体は本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は免疫学の分野に関する。特に、本発明は免疫応答の抑制に有用な方法および組成物に関する。本発明は、制御性T細胞の誘導のための免疫調節性両性イオンポリマーが関与する方法、使用および組成物、並びに喘息およびアレルギーの処置を提供する。
【0003】
発明背景
細菌細胞の表面から精製されたある種の多糖類は、腹腔内膿腫、腹腔内敗血症、および術後癒着の形成などの炎症モデルにおいて試験された場合、in vivoで防御効果を示す(米国特許第5,679,654号および第5,700,787号;公開された国際特許出願WO 96/07427、WO 00/59515、およびWO 02/45708。莢膜全体から精製された場合、Bacteroides fragilis、黄色ブドウ球菌、および肺炎連鎖球菌由来のある種の多糖類は、それらを多くの多糖類抗原から区別させているユニークな特徴を有する。これらの分子は高分子量でらせん状であり、その性質は両性イオン性である。Wang Y et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:13478-81;Brubaker JO et al. (1999) J Immunol 162:2235-42: Tzianabos AO et al. (1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AO et al. (1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WM et al. (2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AO et al. (2000) J Biol Chem 275:6733-40。
【0004】
ほとんどの細菌性多糖類は中性または負に荷電しており、T細胞非依存性抗原と考えられる。Abbas AK et al. (2003) Cellular and Molecular Immunology, Saunders, Philadelphia。しかし、これらの多糖類はその両性イオン性の性質により、CD4+T細胞との相互作用に何らかの形で関与することが示唆されている。Tzianabos AO et al. (1993) Science 262:416-9;Tzianabos AO et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:9365-70。両性イオン多糖類がin vitroでCD4+T細胞を活性化することは、T細胞の増殖ならびにサイトカインIL−2、IFN−γ、およびIL−10の産生を促進するそれらの能力についての報告により支持されている。さらに、多糖類が誘導したT細胞により、防御効果がin vivoで適合的に伝達されることが報告されている。公開された国際特許出願WO 00/59515;Kalka-Moll WM et al. (2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AO et al (2000) J Biol Chem 275:6733-8。しかし、これらの分子が正確にはいかにしてT細胞を活性化するか、またはそれらがいかにして防御効果を示すかについては、まだ明確になっていない。
【0005】
本発明の概要
喘息およびアレルギー状態を処置しそれに対して防御するための方法および製品が提供される。これらの方法および組成物は、ある種の莢膜多糖類および合成ペプチドを含む、ある種の両性イオンポリマーが、CD4+Tリンパ球でICOSを誘導し、制御性Tリンパ球(Treg細胞)の発生を促進することを本発明者らが発見したことに部分的に関連している。本明細書に開示されるように、両性イオンポリマーにより誘導されるTreg細胞は、膿瘍および癒着の形成、炎症性腸疾患、および気道過敏症(喘息)を含む多くの炎症およびアレルギー状態に対して、防御を付与し伝達することができる。
【0006】
本発明により、ある種の両性イオンポリマーがCD4+T細胞でICOSを誘導し、Treg細胞の発生(development)を促進することが偶然発見された。他の前の報告によれば、IL−10分泌Treg細胞は、外部から供給されるIL−10と、未成熟の樹状細胞(DC)、またはある種の免疫抑制剤、特に1,25(OH)2−ビタミンD3およびデキサメタゾンとの存在下で、T細胞を培養することにより生成可能である。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。これらの過去の報告のいずれにも、本発明の両性イオンポリマーが、ICOSの発現を誘導すること、またはTreg細胞の発生を促進することに用いられ得ることは、開示または示唆されていない。
【0007】
両性イオンポリマーがIL−10の分泌を促進することは既に理解されていたが、IL−10の源および重要性は知られていなかった。さらに、IL−10は高度に多面的なサイトカインであることが広く認識されているため、IL−10分泌の状況は非常に重要である。例えば、IL−10のみでは、喘息を悪化させるかまたは処置することの両方が可能であることが報告されている。両性イオンポリマーのICOSを誘導する能力の重要性は、IL−10の存在下でのTreg細胞の発生における、ICOS−ICOSLシグナリングの重要な役割の報告による。Akbari O et al. (2002) Nat Med 8:1024-32。Treg細胞は、IL−10の源であることに加えて、本発明においても重要な役割を果たすと考えられる。
【0008】
本発明により、両性イオン多糖類ポリマーは、ペプチドアレルゲンに対する交差防御効果を誘導できることもまた、偶然発見された。
さらに、本発明により、両性イオンペプチドポリマーは、無関連のように見えるペプチドアレルゲンに対して交差防御効果を誘導できることが偶然発見された。
1つの態様おいて、本発明は、対象における喘息以外のアレルギー状態を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位(repeating unit of charge motif)を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0009】
1つの態様において、モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
1つの態様において、対象には、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない。
本発明のこの側面により、1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。
1つの態様において、この方法は、対象に対し、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬を投与することをさらに含む。種々の態様において、抗アレルギー薬は、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、クロルシクリジン、クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標)、Parke-Davis)、塩酸フェキソフェナジン(ALLEGRA(登録商標)、Aventis)、塩酸ヒドロキシジン(ATARAX(登録商標)、Pfizer)、ロラタジン(CLARITIN(登録商標)、Schering)、塩酸プロメタジン(PHENEGRAN(登録商標)、Wyeth-Ayerst)、ピリラミン、または抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)である。
【0010】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは多糖類である。本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは細菌性莢膜多糖類(bacterial capsular polysaccharide)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSA1である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSA2である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSBである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である。
【0011】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはアミノ化ペクチン(すなわち、アミノ化ポリガラクツロン酸)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは化合物15(公開された国際特許出願WO 03/075953)として知られている、合成ペプチドグルカンである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはペプチドである。1つの態様において、ペプチドは、約1.2kDa〜50kDaの分子量を有する。
【0012】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは(K−D)nであり、ここでKはリジンであり、Dはアスパラギン酸であり、nは10〜100の整数である。本発明のこの側面および他の全ての側面により、1つの態様において、ポリマーは[K−(Xaa)m−D]nであり、ここでKはリジンであり、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、Dはアスパラギン酸であり、そしてnは1〜100の整数である。
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む。
【0013】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による種々の態様において、暴露することは、投与に先立ち、投与の後に、または実質的に投与と同時に行われる。
【0014】
1つの側面において、本発明は、対象における喘息を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息を有する対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
本発明のこの側面による1つの態様において、対象には、ポリマーを用いた処置を必要とする以外の症状は認められない。
【0015】
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法は、対象に対し、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬を投与することをさらに含む。種々の態様において、抗喘息薬は、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(VANCERIL(登録商標)、Schering)、フルニソリド(AEROBID(登録商標)、Forest)、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT(登録商標)、GlaxoSmithKline)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド(AZMACORT(登録商標)、Aventis)、硫酸アルブテロール(VENTOLIN(登録商標)、GlaxoSmithKline;PROVENTIL(登録商標)、Schering)、エピネフリン、塩酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、テルブタリン(BRETHINE(登録商標)、LAMISIL(登録商標)、Novartis)、臭化イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、テオフィリン、クロモリン、ネドクロミル、または抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)である。
【0016】
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む。
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、喘息を処置するための有効量のポリマーを投与すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0017】
本発明のこの側面による種々の態様において、暴露することは、投与に先立ち、投与の後に、または実質的に投与と同時に行われる。
1つの側面において、本発明は、インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞を単離すること、および、制御性T細胞を有効量のポリマーに接触させて、該制御性T細胞によるIL−10の産生を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0018】
1つの側面において、本発明はまた、CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は以下のステップを含む:CD4+細胞を有効量のポリマーに接触させてCD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である;および、CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合は、CD4+細胞でのICOSの発現は増加している。
【0019】
1つの側面における本発明は、制御性T(Treg)細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、ナイーブT細胞集団を単離すること、および、前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を抗原と接触させるステップを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはそれらの組合せと接触させるステップを含む。
【0020】
1つの側面における本発明は、制御性T(Treg)細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞集団を単離すること、および、前記制御性T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を抗原と接触させるステップを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはそれらの組合せと接触させるステップを含む。
【0021】
1つの側面において本発明は、対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法を提供し、ここで該抗原特異的応答とは、アレルギー状態または喘息以外のものである。本発明のこの側面による方法は、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および(b)前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0022】
本発明のこの側面による種々の態様において、抗原の投与は、ポリマーの投与に先立ち、その後に、または実質的に同時に行われる。
1つの態様において、ポリマーを投与することは、ポリマーの複数用量を投与することを含む。
1つの側面において、本発明は、抗原およびポリマーを含む抱合体を含む組成物であって、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記組成物を提供する。
【0023】
1つの側面において、本発明は医薬組成物を提供する。本発明のこの側面による医薬組成物は、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含むポリマーであって、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である前記ポリマーの、エアロゾル製剤を含む。
1つの態様において組成物は、アレルギー状態の処置のための、治療的に有効量のエアロゾル製剤を含む。
1つの態様において組成物は、アレルギー性喘息の処置のための、治療的に有効量のエアロゾル製剤を含む。
【0024】
1つの態様において、医薬組成物はさらに、アレルギー状態の処置に有用な他の剤を含む。種々の態様において、他の剤は、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬である。
1つの態様において、医薬組成物はさらに、喘息の処置に有用な他の剤を含む。種々の態様において、他の剤は、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬である。
【0025】
さらなる側面において、本発明はエアロゾル送達システムを提供し、該エアロゾル送達システムは容器を含み、該容器は、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーを含み、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。エアロゾル送達システムは、単一用量または複数用量を送達するように作製することができる。1つの態様において、容器は、計量吸入器である。1つの態様において、容器は、乾燥粉末吸入器である。他の態様において、容器は、噴霧吸入器である。さらに他の態様において、容器は、鼻の上皮または他の気道の上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである。1つの態様において、エアロゾル送達システムは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、IL−10を産生するCD45RBloTreg細胞を誘導することが、in vivoまたはin vitroにおいて望ましい場合に、一般に常に有用である。より具体的には、本発明は、対象におけるアレルギーまたは喘息状態を、予防を含み処置することが望ましい場合に常に有用である。
本発明者らは前に、全て特定の電荷モチーフによって特徴付けられるある種の天然の両性イオン多糖類、改質多糖類およびペプチドが、T細胞を刺激してIL−2およびIL−10の産生を促進すること、並びに多くの細菌、膿瘍および癒着形成に対する防御を誘導することに用い得ることを見出した。Tzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号、および公開された国際特許出願WO 00/59515を参照のこと;これらの全内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0027】
本発明によれば、これらと同一および関連する両性イオンポリマーは、CD4+T細胞を誘導してICOSを発現させ、IL−10分泌Treg細胞の確立および増殖を促進することが発見された。これらのTreg細胞は、IL−10を産生するものとしてのみでなく、対象における炎症反応もしくは炎症状態、またはアレルギー反応もしくはアレルギー状態を予防し抑制することに関与可能な、免疫抑制細胞としても重要である。本発明の特徴的な1側面として、両性イオンポリマーは、対象のアレルギー状態の処置および予防に有用であることが見出されている。本発明の特徴的な1側面として、両性イオンポリマーは、喘息の処置および予防に有用であることが見出されている。
【0028】
本発明の1つの側面において、アレルギー状態を有する対象を処置する方法が提供される。この側面による方法は、アレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで、該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0029】
本発明のこの側面および他の全ての側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される。簡潔に述べると、それらは、多糖類(PSAを含む)および非多糖類ポリマーの両方を含む両性イオンポリマーである。これらのポリマーは、天然のポリマー、天然ポリマーの改変形態、または天然には見出されない他のポリマーであってよい。
本明細書において「アレルギー状態」すなわち「アレルギー」は、物質(アレルゲン)に対する獲得過敏性を指す。アレルギー状態は、アレルギー性喘息、花粉症(季節性鼻炎)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、じんましん、食物アレルギー、および他のアトピー状態を含むが、これに限定されない。
【0030】
「アレルゲン」は、敏感な対象においてアレルギー反応または喘息反応を誘導することのできる物質を指す。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒、動物の鱗屑、イエダニ、ダスト、真菌胞子、ラテックス(ゴム製品)、および薬物(例えばペニシリン)を含むことができる。天然の動物および植物アレルゲンの例は、以下の属に特異的なタンパク質を含む:イヌ属(カニスファミリアリス);ヒョウダニ属(例えばコナヒョウダニ);ネコ属(Felis domesticus);アンブロシア属(Ambrosia artemiisfolia);ドクムギ属(例えばドクムギまたはLolium multiflorum);スギ属(スギ);アルテルナリア属(Alternaria alternata);ハンノキ属(Alder);ハンノキ属(Alnus)(Alnus gultinosa);カバノキ属(Betula verruscosa);カシ属(Quercus alba);オリーブ属(オリーブ);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);オオバコ属(例えばヘラオオバコ);ヒカゲミズ属(例えばParietaria officinalisまたはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えばチャバネゴキブリ);ミツバチ属(例えばApis multiflorum);イトスギ属(例えばCupressus semipervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus macrocarpa);ビャクシン属(例えばJuniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus Juniperus ashei);クロベ属(例えばThuya orientalis);ヒノキ属(例えばヒノキ);ゴキブリ属(例えばワモンゴキブリ);カモジグサ属(例えばAgropyron repens);ライムギ属(例えばライムギ);コムギ属(例えばコムギ);カモガヤ属(例えばカモガヤ);ウシノケグサ属(例えばFestuca elatior);イチゴツナギ属(例えばPoa pratensisまたはPoa compressa);カラスムギ属(例えばカラスムギ);シラゲガヤ属(例えばシラゲガヤ);ハルガヤ属(例えばハルガヤ);オオカニツリ属(例えばArrhenatherum elatius);Agrostis属(例えばコヌカグサ);オオアワガエリ属(例えばオオアワガエリ);クサヨシ属(例えばクサヨシ);スズメノヒエ属(例えばアメリカスズメノヒエ);モロコシ属(例えばSorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ(例えばコスズメノチャヒキ)。アレルゲンはまた、アレルギーおよび喘息の実験動物モデルに用いられるようなペプチドおよびポリペプチドも含み、これらにはオボアルブミン(OVA)およびマンソン住血吸虫卵抗原を含む。
【0031】
本明細書において、「対象」は、ヒトまたは他の哺乳類を指し、マウス、ラット、ウサギ、および非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されない。
本明細書において「アレルギー状態を有する対象」は、アレルギー状態が存在するか、またはアレルギー状態発生への素因が既知かもしくは疑われる対象を指す。従って、これらの対象は活性化されたアレルギー状態または潜在的なアレルギー状態を有し得る。アレルゲンが既知である必要はない。しかし、ある種のアレルギー状態は季節的または地理的環境因子と関連し、これらは対象には明らかである場合もあるが、その必要性はない。1つの態様において、アレルギー状態は、実験目的のために対象において意図的に誘発される。
【0032】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象は、ポリマーによる処置を必要とする以外の適応病兆は認められない。この態様において、対象は、以下を有さない:感染症、手術、トラウマ、または膿瘍もしくは手術による癒着形成に関連する他の疾患またはリスク因子;Th1細胞応答性疾患(インスイリン依存型糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、炎症性腸疾患、同種移植の拒絶反応);特定抗原に対する不適当なIgG抗体反応を特徴とする疾患(急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、関節リューマチを含む自己免疫性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、およびある種の形態の甲状腺炎)。
【0033】
本発明の特徴として、ポリマーは、アレルギー状態を有する対象に対して、アレルギー状態を処置するために繰り返しおよび/または長期に投与することができる。以下に記載されるように、繰り返しおよび/または長期の投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週、投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0034】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定された抗原に関連するアレルギー状態を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を、このアレルゲンに暴露するステップは、能動的または受動的であってよい。すなわち、能動的暴露は、対象に対して意図的にアレルゲンを投与することを含んでよい;受動的暴露は、対象がアレルゲンに、偶然または環境的接触をすることを含んでよい。特定の態様において、暴露するステップは、ポリマーの投与なしで、対象にアレルギー反応を誘導するのに有効な量の既知のアレルゲンを対象に投与することを特に含む。
【0035】
種々の態様において、対象をアレルゲンに暴露するステップは、この対象に対する、アレルギー状態を処置するために有効な量のポリマーを投与するステップに先立って、その後に、またはそれと同時に、実施することができる。さらに、暴露の経路および投与の経路は、同じでも、または異なっていてもよい。
1つの側面において、本発明は、アレルギー状態の処置に用いるための医薬の製造における、両性イオンポリマーの使用を提供する。両性イオンポリマーは本明細書の他の部分で記載されているものであり、ここでの使用は、対象のアレルギー状態の処置に用いるために、ポリマーまたはそれらの水和物もしくは薬学的に許容し得る塩の有効量を、薬学的に許容し得る担体中に配置することを含む。使用は、アレルギー状態の処置に用いるのに好適なポリマーの単位用量の製造を含んでよい。アレルギー状態は任意のアレルギー状態であって、上に挙げた任意のアレルギー状態またはアトピー状態を含むが、これらに限定されない。
【0036】
1つの側面において本発明は、対象における喘息を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息を有する対象に対して、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
1つの態様において、前記モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0037】
1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーであって、下記に記載のものである。
本明細書において「喘息」は、一過性の呼吸器系の疾患で、気道の炎症および狭窄並びに、吸入した剤に対する気道の反応性の増加を特徴とするものである。喘息は、必ずしもそうではないが、しばしば、アトピー性またはアレルギー性症状と関連する。喘息の症状は、呼吸困難、咳、および喘鳴を含むことが広く認められている;一般にはこれら3症状全てが共存するが、これらの共存は喘息の診断に必要ではない。
本明細書において「喘息を有する対象」は、新しく発症または再発した喘息が、急性に憎悪している対象、または喘息の履歴を有する対象、または喘息発症への素因が既知かもしくは疑われる対象を指す。従って、喘息を有する対象とは、活性化した喘息を有するか、または無症候で急性の憎悪の間であってもよい。1つの態様において、喘息を有する対象は、アレルギー症状に関連する喘息、すなわちアレルギー性喘息を有する対象である。
【0038】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象には、上記のように、ポリマーによる処置を必要とする以外の症状は認められない。
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。この態様における両性イオンポリマーは、対象における喘息状態を処置するために、該対象の気道に投与される。本明細書において、「対象の気道」は、該対象の呼吸器系の任意の好適な誘導またはガス交換表面を指す。かかる気道は、一般的に、気管、気管支、細気管支(blonchioles)、および終末細気管支および呼吸細気管支を含むが、これに限定されない。1つの態様において、気道は、鼻の上皮である。ポリマーのエアロゾルの気道への送達は、一般に、エアロゾルの吸入を含む。吸入は受動的でもよく、または加圧エアロゾル送達システムもしくはデバイスにより支援することもできる。本発明のポリマーを含む治療剤の気道への投与は、エアロゾルまたはスプレーデバイスまたは送達システムを用いることにより、便利に実現可能である。かかるエアロゾルおよびスプレー送達システムおよびデバイスの例は、当分野によく知られており、計量吸入器、乾燥粉末吸入器、超音波噴霧器、他の液体噴霧器、鼻スプレーなどを含む。
【0039】
本発明のポリマーはまた、アレルギーまたは喘息の処置に用いるための、鼻の上皮への投与用の点鼻薬として製剤化することができる。
本発明の特徴として、ポリマーは、繰り返しおよび/または長期に、喘息を有する対象に喘息の処置のために、投与することができる。以下に記述するように、繰り返しまたは長期の投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0040】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、このアレルゲンに暴露するステップは、能動的または受動的であってよい。すなわち、能動的暴露は、対象に対して意図的にアレルゲンを投与することを含んでよい;受動的暴露は、対象がアレルゲンに、偶然または環境的接触をすることを含んでよい。特定の態様において、暴露するステップは、ポリマーの投与なしで、対象に喘息の急性増悪を誘導するのに有効な量の既知のアレルゲンを対象に投与することを特に含む。
【0041】
種々の態様において、対象をアレルゲンに暴露するステップは、この対象に対して喘息を処置するために有効な量のポリマーを投与するステップに先立って、その後に、またはそれと同時に、実施することができる。さらに、暴露の経路および投与の経路は、同じでも、または異なっていてもよい。
1つの側面において、本発明は、喘息の処置に用いるための医薬の製造における、両性イオンポリマーの使用を提供する。両性イオンポリマーは本明細書の他の部分で記載されているものであり、ここでの使用は、対象の喘息の処置に用いるために、ポリマーまたはそれらの水和物もしくは薬学的に許容し得る塩の有効量を、薬学的に許容し得る担体中に配置することを含む。使用は、喘息の処置に用いるのに好適なポリマーの単位用量の製造を含んでよい。1つの態様において、喘息はアレルギー性喘息である。
【0042】
本発明のある側面は、アレルギー状態の処置または喘息の処置のために、有効量のポリマーを対象に投与することを含む。本明細書において「有効量」は、一般に、それのみでまたはさらなる用量と一緒に所望の反応を促進する組成物の量を指す。本発明の組成物については、本明細書において「有効量」は、それのみでまたはさらなる用量と一緒に所望の反応を促進する、本発明の調整物の量を指す。従って、有効量は、単一の投与で提供されることができるが、そうである必要はない。また本明細書において、ある状態の「処置のための有効量」は、対象における状態もしくは状態に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量を指す。処置される状態に関して治療的に有効な量とは、状態を処置するために有効な量を指す。
【0043】
従って、対象のアレルギー状態を処置するための有効量は、対象におけるアレルギー状態もしくはアレルギー状態に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量である。同様に、対象の喘息を処置するための有効量は、対象における喘息もしくは喘息に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量である。当業者は、対象のアレルギー状態または喘息を予防または緩和するために設計された処置の有効性を、承認された臨床技術および検査室測定を用いてどのようにして評価するかを認識している。
例えば、アレルギー状態および喘息はIgEと関連する。従って、アレルギーと喘息のよく知られた臨床的兆候および症状のモニタリングに加えて、臨床医は、本発明の方法によって処置されるべき対象における血清IgEを測定できる。血清IgEの減少は、処置の有効性の客観的な測度を提供することが期待される。血清よりも便利さは劣るが、IgEは気管支肺胞(BAL)洗浄液においても測定可能である。
【0044】
本発明の前述の側面によるある態様において、ポリマーは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤の投与と共に投与される。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は、ポリマーの投与の前に、後に、またはそれと同時に投与することができる。さらに、ポリマーおよび他の剤は、同じ経路または異なる経路で投与できる。従って、本発明は、ポリマーおよび、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤が繰り返しベースで投与される場合に、異なる剤を同一または異なるスケジュールで用いることを包含する。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は、それのみでアレルギー状態または喘息の処置に有効な量で、またはそれより少ない量で、投与することができる。1つの態様において、ポリマーおよびアレルギー状態または喘息の処置に有効な他の剤は、ポリマーと他の剤の両方を含む単一の医薬組成物において提供される。従って、ポリマーおよびアレルギー状態または喘息の処置に有効な1種または2種以上の他の剤を含む「カクテル」が意図される。
【0045】
アレルギー状態の処置に有効な剤は、以下を含むが、これらに限定されない:グルココルチコイド、例えばプレドニゾンおよびメチルプレドニゾロン;抗ヒスタミン薬、特にH1受容体遮断抗ヒスタミン薬、例えばクロルシクリジン、クロルフェニラミン;塩酸ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標)、Parke-Davis)、塩酸フェキソフェナジン(ALLEGRA(登録商標)、Aventis)、塩酸ヒドロキシジン(ATARAX(登録商標)、Pfizer)、ロラタジン(CLARITIN(登録商標)、Schering)、塩酸プロメタジン(PHENERGAN(登録商標)、Wyeth-Ayerst)、およびピリラミン;並びに抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)。
【0046】
喘息の処置に有効な剤は以下を含むが、これらに限定されない:グルココルチコイド、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾン(VANCERIL(登録商標)、Schering)、フルニソリド(AEROBID(登録商標)、Forest)、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT(登録商標)、GlaxoSmithKline)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびトリアムシノロンアセトニド(AZMACORT(登録商標)、Aventis);上記の抗ヒスタミン薬;βアドレナリン作動薬、例えば硫酸アルブテロール(VENTOLIN(登録商標)、GlaxoSmithKline;PROVENTIL(登録商標)、Schering)、エピネフリン、塩酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、およびテルブタリン(BRETHINE(登録商標)、LAMISIL(登録商標)、Novartis);抗コリン作動薬、例えば臭化イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim);メチルキサンチン、例えばテオフィリン;クロモリン;ネドクロミル;および抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)。IL−10それ自体は、喘息を処置する他の剤として有用であることができる。
【0047】
サイトカインなどの他の免疫調節剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーとサイトカインを含む「カクテル」が考えられる。考えられるサイトカインは、本発明によるポリマーの投与から生じる有益な効果を増強するものである。サイトカインは、リンパ球を含む細胞の増殖と成熟を支援する因子である。サイトカインは、T細胞に直接的に、または、他の細胞を介してT細胞に間接的作用することができる。サイトカインの添加は、本発明の方法を実施することによって、in vivoで促進されるサイトカインの活性を増加させると考えられている。かかるサイトカインの1つはIL−10である。これに関して特に興味深い他のサイトカインは、IL−2およびIL−15である。他のサイトカインは、限定はされないがIL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−13、IL−17、IL−18、IL−19、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、TNF−α、TGF−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、およびリンホトキシンを含む。
【0048】
1つの側面において、本発明は、インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞を単離すること、および制御性T細胞を有効量のポリマーと接触させて制御性T細胞によるIL−10産生を誘導することを含み、ここで該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0049】
本明細書において、「制御性T細胞」すなわち「Treg細胞」は、大量のIL−10を分泌するが、IL−4およびIl−13はもしあったとしても少量にしか分泌しない、CD4+Tリンパ球の1つのタイプを指す。Akbari O et al. (2002) Nat Med 8:1024-32。Treg細胞と、Th2およびTh1CD4+T細胞の3種類のT細胞は全てIL−10を分泌することが報告されているが、しかしTreg細胞は後2者の細胞からは区別される。本明細書で開示されるように、Treg細胞は、そのICOSの発現および限定されたCD45RB(CD45RBlo)の発現によりさらに特徴付けられる。Treg細胞は、末梢寛容において重要な役割を果たすと考えられている。これらの細胞は、制御性T細胞またはサプレッサーT細胞とも呼ばれることがあり、抗原特異的T細胞活性化の強力な抑制剤として作用する。
【0050】
1種以上のタイプの制御性T細胞が現在報告されている。最近の概説では、Jonuleit H et al. (2003) J Immunol 171:6323-7およびShevach EM (2002) Nat Immunol 2:389-400を参照のこと。Treg細胞の1つのタイプは、天然のCD4+CD25+Treg細胞であり、これは、CD4+T細胞前駆体から直接、胸腺でのポジティブセレクションの間に胸腺上皮細胞との中反応性相互作用の影響の下で生成される。これらの細胞は全末梢CD4+T細胞の5〜10%を占めると報告されている。誕生の3日後までに胸腺を摘出されたマウスにはこの細胞集団が欠如しており、種々の自己免疫疾患を特徴的に発症する。Suri-Payer E et al. (1998) J Immunol 160:1212-8。新鮮単離されたCD4+CD25+Treg細胞は、in vitroでの同種または多クローン性活性化に低応答性であることが報告されている。しかし、それらは共培養において従来のCD4+CD25−T細胞の増殖を抑制することが報告されており、この抑制は、CD4+CD25+Treg細胞がそのT細胞抗原受容体を通して活性化された場合にのみ起こる。天然のCD4+CD25+Treg細胞は、CD25−T細胞に対するその抑制効果を、少なくともin vitroで、溶解性の抑制サイトカインとは独立した、厳密に細胞接触依存性の様式で示すと報告されており、その機構はまだ完全には解明されていない。Jonuleit H et al. (2003) J Immunol 171:6323-7。
【0051】
Treg細胞の第2のタイプは、誘導されたCD4+Treg細胞である。これらのTreg細胞は、天然のCD4+CD25+Treg細胞とは対照的に、その抑制効果を、IL−10およびTGF−βを含む溶解性抑制サイトカインの分泌が関連する、細胞接触非依存性の様式で示す。これらの細胞は二次サプレッサーT細胞であり、胸腺ではなく末梢において発生する。誘導されたCD4+Treg細胞は少なくとも2種類のサブタイプを含むと考えられている:大量のIL−10を産生するが、僅かな量のTGF−βしか産生しないTr1細胞、およびほぼTGF−βのみを産生するTh3細胞である。Tr1細胞はまた文献において、1型制御性T細胞、およびIL−10産生Treg細胞とも呼ばれる。本発明の一部として、これらのTreg細胞は、CD4+CD25+Treg細胞とは異なって、ICOSを発現することおよびCD45RBloであることが見出された。これらのTreg細胞は、ナイーブT細胞から、抗原への繰り返しの暴露または抗原の刺激により誘導することができる。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42。代替的にIL−10分泌Treg細胞は、in vitroで、外因性の大量のIL−10と、未成熟の樹状細胞(DC)、または1,25(OH)2ビタミンD3とデキサメタゾンとの組合せを含むある種の免疫抑制剤との存在下で、T細胞を培養することにより生成された。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。これらin vitroの方法の各々は、望ましくない副作用および技術的な要請のため、in vivoで用いるには限られた価値しかない可能性がある。活性化されたTr1細胞の上清物は、樹状細胞のアロ抗原特異的増殖を導く能力を大きく減少させる。Groux H (2003) Transplantation 75:8S-12S。さらに、活性化されたヒトTr1細胞の上清物は、IL−10に依存する様式で、in vitroでのナイーブCD4+T細胞のTr1細胞への分化を促進することが報告されている。Roncarolo MG et al. (2001) Immunol Rev 182:68-79。
【0052】
インターロイキン10(IL−10)は、抗原提示およびマクロファージ活性化の反応を抑制する能力を介した抗炎症特性を有する、多面的サイトカインである。これはまた、B細胞活性化と自己抗体産生において役割を果たす。サイトカインのIL−10ファミリーは、IL−19、IL−20、MDA7およびIL−22を含む。初めに記したように、IL−10は、B細胞、ヘルパーT細胞、および単球/マクロファージ系細胞により産生される。Tan JC et al. (1993) J Biol Chem 268:21053-9。Akbari O et al. (2003) Nature Med 8:1024-32には、Th1細胞が分泌するIFN−γはTh2細胞を調整し、Th2による気道の活動亢進および喘息の抑制に関連する可能性があることが示されている。しかし、IFN−γはまた、肺の炎症を悪化させることで疾患の重篤度に寄与する。驚くべきことには、マウスの呼吸器系統をアレルゲンに暴露した後、Treg細胞が発生して、一般にはTh2サイトカインと考えられる高レベルのIL−10を産生した。Treg細胞は、前もって感作されたマウスにおいて、アレルゲンが誘導した気道の活動亢進を抑制した。Akbari O et al. (2003) Nature Med 8:1024-32では、IL−10は当初はTh2応答の極性化(polarization)に関与するかも知れないが、免疫応答の後期には抑制的役割を果たして、Th2が駆動する炎症活性を弱める可能性があることが示唆されている。
【0053】
IL−10の産生は、試料中に存在するIL−10メッセンジャーRNAまたはIL−10ポリペプチドの量を定量化するのに適した任意の方法を用いて測定することができる。IL−10mRNAの量は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、好適なオリゴヌクレオチドプライマーおよび当業者によく知られた技術を用いて測定することができる。1つの態様において、細胞内で発現されたIL−10ポリペプチドの量は、フローサイトメトリー法を用いて測定することができる。フローサイトメトリーは、IL−10に特異的に結合し、随意的に蛍光タグを含む抗体の使用を含む。抗IL−10モノクローナル抗体は、商業的供給業者から入手可能である。他の態様において、細胞により発現されたIL−10ポリペプチドの量は、酵素免疫蛍光測定法(ELISA)を用いて評価することができ、これのための試薬およびキットは商業的供給業者から入手可能である。さらに他の態様において、細胞により発現されたIL−10ポリペプチドの量は、IL−10とその受容体との相互作用に直接的または間接的に基づく生物学的検定法を用いて評価することができる。生物学的検定法はin vivo検定法またはin vitro検定法のどちらでもよい。
【0054】
1つの側面において、本発明はまた、CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)の発現を誘導する方法も提供する。本発明のこの側面による方法は以下を含む:CD4+細胞を有効量の単離ポリマーに接触させて、CD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である;および、CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合は、CD4+細胞でのICOSの発現は増加している。
【0055】
ICOSは、T細胞で発現されるCD28に関連する、最近記述された誘導性副刺激分子である。Hutloff A et al. (1999) Nature 397:263-6。ICOSの同種リガンドであるICOSLは、抗原提示細胞(APC)の表面で発現する。ICOS−ICOSL相互作用は、T細胞によるIL−10分泌を誘導する。Sharpe AH et al. (2002) Nat Rev Immunol 2:116-26。ヒトICOSのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は知られており、GenBankからそれぞれアクセッション番号NM_012092およびAJ277832;NP_036224およびCAC06612により公的に利用可能である。
【0056】
ICOSの発現は、試料中に存在するICOSメッセンジャーRNAまたはICOSポリペプチドの量を定量化するのに適した任意の方法を用いて測定することができる。mRNAの量は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、好適なオリゴヌクレオチドプライマーおよび当業者によく知られた技術を用いて測定することができる。1つの態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、フローサイトメトリー法を用いて測定することができる。他の態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、蛍光顕微鏡法により評価することができる。フローサイトメトリーと蛍光顕微鏡法は共に、ICOSに特異的に結合し、随意的に蛍光タグを含む抗体の使用を含む。抗ICOSモノクローナル抗体は商業的供給業者から入手可能である。他の態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、ICOS−ICOSL相互作用に直接的または間接的に基づく生物学的検定法を用いて評価することができる。生物学的検定法はin vitro検定法またはin vivo検定法のどちらでもよい。かかる検定法の例は以下の例の節に示される。
【0057】
1つの側面において本発明は、制御性T細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、ナイーブT細胞集団を単離すること、および、前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。本明細書において、T細胞集団を単離することは、一般に、全血、脾臓、またはリンパ球の他の任意の源から、単離された細胞集団の少なくとも80%がT細胞であるようにT細胞集団を単離することを指す。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも90%を占める。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも95%を占める。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも98%を占める。血液細胞または脾細胞の混合群からT細胞を単離する方法は当分野に知られており、例えば、ナイロンウール上でのポジティブまたはネガティブセレクションと組み合わせた細胞分類および密度勾配遠心分離法を含む。本発明のこの側面による方法は、随意的に、接触のステップの後に、得られたTreg細胞を他の細胞から分離するステップを含むことができる。本発明の他の側面におけるのと同様に、本発明のこの側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される両性イオンポリマーの任意の1つまたは組合せであってよい。
【0058】
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、例えば細胞を両性イオンポリマーと接触させる際に連続的に、ナイーブT細胞集団を抗原と接触させることを伴う。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、Treg細胞の増殖を支援または促進するのに効果的な外部から供給されるサイトカインと接触させることを伴う。1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるIL−2、IL−15、またはIL−2とIL−15の組合せと接触させることを伴う。これらのサイトカインは、種々の商業的供給業者より、精製された組み換えタンパク質として得ることができる。それらは、Fc融合タンパク質または他の安定化形態、例えば、全て当分野に知られている、PEG化(PEGylated)IL−2またはIL−15として供給されることができる。
【0059】
本発明のこの側面による1つの態様において、ナイーブT細胞集団を単離するステップは、天然のCD4+CD25+Treg細胞を本質的に含まないナイーブT細胞集団を単離することを含む。これは、ポジティブまたはネガティブセレクションを通して、例えば、標準の蛍光活性化細胞分類(FACS)法を用いて、CD4もしくはCD25でのゲーティング、またはCD4およびCD25で被覆した磁気ビーズを用いて、行うことができる。従ってこの態様による方法は、IL−10産生CD4+Treg細胞集団を、CD4+CD25+Treg細胞との接触なしに誘導することを伴う。この態様による方法は、誘導されたCD4+Treg細胞集団を、かかる細胞の誘導のための方法において有用であると前に記載された剤の影響なしに、誘導することを伴うことができ、ここでかかる剤とはすなわち、大量の外因性のIL−10を、未成熟の樹状細胞(DC)と、または1,25(OH)2ビタミンD3およびデキサメタゾンの組合せを含むある種の免疫抑制剤と共に用いるものである。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。
代替的な方法においては、ナイーブT細胞を含む一般の細胞集団を本明細書に記載の有効量の単離ポリマーと接触させて制御性T細胞の増殖を誘導し、次に、増殖した制御性T細胞を一般の細胞集団から単離する。
【0060】
1つの側面において本発明は、制御性T細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞集団を単離すること、および、前記制御性T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。本発明のこの側面による方法は、随意的に、接触のステップの後に、得られたTreg細胞を他の細胞から分離するステップを含むことができる。本発明の他の側面におけるのと同様に、本発明のこの側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される両性イオンポリマーの任意の1つまたは組合せであってよい。
【0061】
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、例えば細胞を両性イオンポリマーと接触させる際に連続的に、制御性T細胞集団を抗原と接触させることを伴う。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、Treg細胞の増殖を支援または促進するのに効果的な、外部から供給されるサイトカインと接触させることを伴う。1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、外部から供給されるIL−2、IL−15、またはIL−2とIL−15の組合せと接触させることを伴う。これらのサイトカインまたはそれらの対応するFc融合タンパク質もしくは他の安定化形態は、上記のようにして製剤化され利用可能である。
【0062】
本発明のこの側面による1つの態様において、制御性T細胞集団を単離するステップは、天然のCD4+CD25+Treg細胞を本質的に含まない制御性T細胞集団を単離することを含む。従ってこの態様による方法は、IL−10産生CD4+Treg細胞集団を、CD4+CD25+Treg細胞との接触なしに誘導することを伴う。この態様による方法はまた、誘導されたCD4+Treg細胞集団を、かかる細胞の誘導のための方法において有用であると前に記載された剤の影響なしに、誘導することを伴うことができ、ここでかかる剤とはすなわち、大量の外因性のIL−10を、未成熟の樹状細胞(DC)と、または1,25(OH)2ビタミンD3およびデキサメタゾンの組合せを含むある種の免疫抑制剤と共に用いるものである。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。
代替的な方法においては、制御性T細胞を含む一般の細胞集団を本明細書に記載の有効量の単離ポリマーと接触させて制御性T細胞の増殖を誘導し、次に、増殖した制御性T細胞を一般の細胞集団から単離する。
【0063】
本発明の方法により誘導された、Treg細胞の拡大された集団は、免疫応答の抑制の必要がある対象に投与することができる。例えば、本発明の方法により誘導された、Treg細胞の拡大された集団(一般には処置すべき対象に由来する)は、本明細書に記載のように、アレルギー状態を有する対象または喘息を有する対象に投与することができ、アレルギー状態または喘息を処置することができる。アレルギー状態またはアレルギー反応を有する対象の場合、Treg細胞の投与は、対象におけるアレルギー状態またはアレルギー反応に関連するアレルゲンに対象を暴露するのに先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行われる。対象をアレルゲンに暴露することは、受動的、例えば、アレルゲンとの偶然の環境的接触であってよく、または能動的、例えばアレルゲンを対象に対して意図的に投与することを介してもよく、これは例えば注入またはエアロゾル投与による。喘息を有する対象の場合、投与は、急性の喘息の憎悪に先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行うことができる。さらに、アレルギー性喘息を有する対象の場合、Treg細胞の投与は、対象を、対象におけるアレルギー性喘息と関連するアレルゲンに暴露するのに先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行うことができる。アレルゲンへの暴露は、上述のように受動的または能動的であってよい。
【0064】
本明細書において、免疫応答の抑制が必要な対象とは、以下から選択された状態または疾患を有する対象を含むが、これに限定されない:膿瘍、術後癒着、敗血症、関節リューマチ、重症筋無力症、炎症性腸疾患、結腸炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、冠動脈疾患、糖尿病、肝線維症、乾癬、湿疹、急性呼吸急迫症候群、急性炎症性膵臓炎、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法誘発膵臓炎、火傷、冠状動脈および大脳動脈および抹消動脈のアテローム発生、虫垂炎、胆嚢炎、憩室炎、内蔵線維症、創傷治癒、皮膚瘢痕形成疾患(skin scarring disorder)、肉芽種性疾患、喘息、壊疽性膿皮症、スイート症候群(Sweet’s syndrome)、ベーチェット症候群、原発性硬化性胆管炎、および細胞、組織または器官の移植。
【0065】
1つの態様において、ナイーブT細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、これで得られる未分類の細胞集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。他の態様において、ナイーブT細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、これで得られるTreg細胞を処置細胞から分離し、そして次に、単離したTreg細胞集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。
【0066】
1つの態様に置いて、Treg細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、そして次に、これで得られるTreg細胞の拡大集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。
1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
一般にT細胞の増殖は、試料中に存在するT細胞の数を定量化するのに好適な任意の方法を用いて測定することができる。必要に応じてT細胞は単離することができ、T細胞の数は、例えば、3[H]チミジン取り込み反応の測定、フローサイトメトリー、および当業者によく知られた任意の技法により測定することができる。これらの方法は、Treg細胞の増殖を測定する目的のために適合可能である。例えば本明細書で開示されているように、Treg細胞はCD4+、ICOS+、CD45RBloであり、細胞内IL−10染色陽性である。
【0067】
1つの側面において本発明は、対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法を提供し、ここで抗原特異的応答は、アレルギー状態または喘息以外のものである。本発明のこの側面による方法は、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および(b)有効量のポリマーを投与して前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0068】
種々の態様において、抗原の投与は、ポリマーの投与の前に、後に、または同時に行うことができる。さらに、抗原投与の部位およびポリマー投与の部位は、同じでも異なっていてもよい。さらにまた、抗原投与の様式およびポリマー投与の様式は、同じでも異なっていてもよい。
本発明の特性として、ポリマーは、この場合は抗原の投与と共に、抗原に対する対象の免疫応答を抑制するために、繰り返しおよび/または長期投与することができる。以下に記載するように、繰り返しまたは長期投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週、投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0069】
1つの態様において、抗原は、ポリマーとの抱合体として存在する。本明細書において、抱合体は、異なる組成物が物理的または化学的に直接または間接に互いに結合している、2種または3種以上の異なる組成物の任意の組合せを指す。1つの態様に置いて、異なる組成物、例えば抗原およびポリマーは、共有結合によって化学的に結合している。結合が間接的である場合は、その間に挿入されたリンカー部分、または2つの異なる組成物を結合する他のものが存在することができる。多糖類とペプチド(またはポリペプチド)の間の共有結合を作る方法は当分野によく知られており、ペプチドとペプチドを共有結合する方法と同様である。
【0070】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象は、ポリマーによる処置を必要とする以外の適応は認められない。この態様において、対象は、以下を有さない:感染症、手術、トラウマ、または膿瘍もしくは手術による癒着形成に関連する他の疾患またはリスク因子;Th1細胞応答性疾患(インスリン依存型糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、炎症性腸疾患、同種移植の拒絶反応);特定抗原に対する不適当なIgG抗体反応を特徴とする疾患(急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、関節リューマチを含む自己免疫性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、およびある種の形態の甲状腺炎)。
【0071】
1つの側面において、本発明は、新規な組成物を提供する。本発明のこの側面による組成物は抗原とポリマーの抱合体を含み、ここで該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。抱合体組成物中の抗原とポリマーは、物理的または化学的に、直接または間接に関連する。1つの態様において、抗原とポリマーは、共有結合を介して化学的に関連する。1つの態様において、抗原とポリマーは、2つを結合するリンカー部分を介して化学的に関連する。1つの態様において、抗原およびポリマーは、リポソームまたは他の類似の送達ビヒクルと一緒にまたはその内部で、物理的に関連している。
一般に抗原は、T細胞抗原受容体、抗体、またはB細胞抗原受容体により特異的に結合できる任意の物質である。抗原性物質は、ペプチド、タンパク質、炭化水素、脂質、リン脂質、核酸、自能性薬物およびホルモンを含むが、これらに限定されない。抗原性物質はさらに特に、アレルゲン、癌抗原、および微生物抗原と分類される抗原を含む。抗原はまた、自己抗原も含む。
【0072】
抗原は、細菌、ウィルス、真菌または寄生虫を含む、感染性微生物剤あるか、これらに由来する抗原であってよい。感染性細菌の例は以下を含む:ヘリコバクターピロリ菌、ライム病ボレリア、レジュネラ・ニューモフィラ菌、マイコバクテリア(例えば、結核菌、鳥型結核菌、M. intracellulare、M. Kansasii、およびM. gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、化膿連鎖球菌(A型連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B型連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、大便連鎖球菌、Streptococcus bovis、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター菌、腸球菌、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム、豚丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、Enterobacter aerogenes、肺炎杆菌、Pasturella multocida、バクテロイデス種、Eusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ、およびイスラエル放線菌。
【0073】
感染性ウィルスの例は以下を含む:レトロウィルス科(ヒト免疫不全ウィルス(HIV)を含むが、これに限定されない);ピコルナウィルス科(例えば、ポリオウィルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウィルス、ヒトコクサッキーウィルス、ライノウィルス、エコーウィルス);Calciviridae(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウィルス科(例えば、ウマ脳炎ウィルス、風疹ウィルス);フラビウィルス科(例えば、デング熱ウィルス、脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス);コロナウィルス科(例えば、コロナウィルス);ラブドウィルス科(例えば、水泡性口内炎ウィルス、狂犬病ウィルス);フィロウィルス科(例えば、エボラウィルス);パラミクソウィルス科(例えば、パラインフルエンザウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、麻疹ウィルス、呼吸器合胞体ウィルス);オルソミクソウィルス科(例えば、インフルエンザウィルス);ブニアウィルス科(例えば、ハンタウィルス、ブニアウィルス、フレボウィルス、およびナイロウィルス);アレナウィルス科(出血熱ウィルス);レオウィルス科(例えば、レオウィルス、オルビウィルスおよびロタウィルス);ビルナウィルス科;ヘパドナウィルス科(B型肝炎ウィルス);パルボウィルス科(パルボウィルス);パポバウィルス科(パピローマウィルス、ポリオーマウィルス);アデノウィルス科(殆どのアデノウィルス);ヘルペスウィルス科(1型単純ヘルペスウィルス(HSV)およびHSV−2、水痘ウィルス、、サイトメガロウィルス(CMV)、ヘルペスウィルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウィルス、ポックスウィルス);およびイリドウィルス科(例えばアフリカブタ熱ウィルス);および未分類のウィルス(例えば、海綿状脳症の病因菌、デルタ肝炎の菌(B型肝炎ウィルスの欠陥付随体と考えられる)、非A非B型肝炎の菌(クラス1=内部的に伝達;クラス2=非経口的に伝達(すなわち、C型肝炎);ノーウォークおよび関連ウィルス、およびアストロウィルス)。
【0074】
感染性真菌の例は、これらに限定されないが以下を含む:クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミティス、ブラストミセス・デルマチチジス、クラミジア・トラコマチス、およびカンジダ・アルビカンス。
抗原は、癌抗原であってよい。本明細書において癌抗原は、腫瘍または癌細胞表面に関連し、抗原提示細胞の表面で発現された場合に、主要な組織適合性複合体(MHC)分子との関連で免疫応答を誘発することができる、ペプチドまたはタンパク質などの化合物である。癌抗原は癌細胞から、癌細胞の粗抽出物を調製することにより、例えばCohen PA et al. (1994) Cancer Res 54:1055-8に記載のようにして、抗原を部分的に精製することにより、組み換え技術により、または既知の抗原のデノボ合成により、調製することができる。癌抗原は、遺伝子組み換え的に発現される抗原、それらの免疫原性部分、または腫瘍全体または癌細胞を含むが、これらに限定はされない。かかる抗原は、組み換えにより、または当分野に知られている任意の他の方法により、単離するかまたは調製することができる。
【0075】
癌抗原は、明らかに腫瘍特異的な免疫応答を潜在的に促進することができる抗原である。これら抗原のいくつかは正常細胞によりコーディングされるが、必ずしも発現されるわけではない。これらの抗原は、正常細胞において通常はサイレント(すなわち発現されない)であり、分化のあるステージにおいてのみ発現されるもの、胚抗原または胎児性抗原などの一時的に発現されるものとして特徴づけられる。他の癌抗原は、オンコ遺伝子(例えば活性化rasオンコ遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば突然変異体p53)、内部欠損または染色体転座による融合タンパク質などの、突然変異細胞遺伝子によってコーディングされる。さらに他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウィルスのウィルス遺伝子によってコーディングされ得る。腫瘍抗原の例は以下を含む:MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシン・デアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、直腸結腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児抗原(CEA)およびその免疫抗原性のエピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫抗原性のエピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE,LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、腺腫様結腸(または大腸)ポリープ症タンパク質(APC)、ホドリン(fodrin)、コネクシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウィルスタンパク質などのウィルス性産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBVコーディング核抗原(EBNA)−1、脳グリコゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、およびc−erbB−2。
【0076】
癌または腫瘍およびかかる腫瘍に関連する腫瘍抗原は(限定するものではないが)以下を含む:急性リンパ球性白血病(etv6;amal1;シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig−イディオタイプ)、神経膠腫(E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、γ−カテニン、p120ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆道癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、子宮頚癌(p53;p21ras)、結腸癌(p21ras;HER2/neu;c−erbB−2;MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733;APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu;c−erbB−2;ga733グリコプロテイン)、肝細胞癌(α−フェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(lmp−1;EBNA−1)、肺癌(CEA;MAGE−3;NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p15タンパク質、gp75、癌胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド)、骨髄腫(MUCファミリー;p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu;c−erbB−2)、鼻咽頭癌(lmp−1;EBNA−1)、卵巣癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、前立腺癌(前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫抗原性エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3;前立腺特異的膜抗原(PSMA);HER2/neu;c−erbB−2)、膵癌(p21ras;MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2;ga733グリコプロテイン)、腎臓癌(HER2/neu;c−erbB−2)、頚部および食道の扁平上皮癌(ヒトパピローマウィルスタンパク質などのウィルス性産物)、睾丸(精巣)癌(NY−ESO−1)、T細胞白血病(HTLV−1エピトープ)、およびメラノーマ(メラン−A/MART−1;cdc27;MAGE−3;p21ras;gp100Pmel117)。
【0077】
1つの側面において、本発明は医薬組成物を提供する。本発明のこの側面による医薬組成物は、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含むポリマーのエアロゾル製剤を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
ある態様においては、医薬組成物は、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤を、エアロゾル製剤におけるポリマーに混合または抱合されてさらに含む。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は上に記載されている。
本明細書において「エアロゾル製剤」は、気道上皮に送達するのに好適な活性成分の液滴または粒子を含む、任意の好適な製剤を指す。液滴または粒子は、一般に直径2〜20μmの範囲である。エアロゾル製剤は一般に、治療的に有効な量のポリマーおよび薬学的に許容し得る担体、および随意的に噴霧剤を、容器またはエアロゾル送達システム内に含有する。この状況における治療量は、標的組織へのエアロゾルの送達に伴う一定の非効率性を考慮する。
【0078】
1つの側面において、本発明はエアロゾル送達システムを提供し、該エアロゾル送達システムは容器を含み、該容器は、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーを含み、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。エアロゾル送達システムは、単一用量または複数用量を送達するように作製することができる。1つの態様において、吸入器は計量吸入器である。1つの態様において、吸入器は、乾燥粉末吸入器である。他の態様において、吸入器は、噴霧吸入器である。さらに他の態様において、吸入器は、鼻の上皮または他の呼吸器系上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである。1つの態様において、エアロゾル送達システムは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む。
【0079】
1つの態様において、エアロゾル送達システムは、規定形状の複数開口を有する開口板を振動させるように構成および配置された振動要素を含み、ここで該開口板の1つの側面または表面は、ポリマーの溶液または懸濁液と流体接続している。例えば、米国特許第5,758,637号、米国特許第5,938,117号、米国特許第6,014,970号、米国特許第6,085,740号、米国特許第6,205,999号を参照のこと:これらの内容全体は参照として組み込まれる。開口板を振動させるための振動要素の起動により、溶液または懸濁液のポリマーを含む液体が複数開口部から引き出されて、規定範囲の液滴(すなわち粒子)サイズを有する低速エアロゾルが生成される。
このタイプのエアロゾル発生器の例は、Aerogen, Inc., Sunnyvale, Californiaから市販されている。
【0080】
他の態様において、エアロゾル送達システムは、溶液または懸濁液中のポリマーを含む加圧容器を含む。加圧容器は一般に絞り弁に接続された作動装置を有し、この作動装置の起動により、容器内の溶液または懸濁液中のポリマーの規定量が、エアロゾルの形態で容器から分配される。このタイプの加圧容器は、当分野では、噴霧剤駆動計量吸入器(pMDIまたは単にMDI)としてよく知られている。MDIは一般に、作動装置、絞り弁、および、微細化された薬剤の懸濁液もしくは溶液、液化噴霧剤および界面活性剤(例えばオレイン酸、三オレイン酸ソルビタン、レシチン)とを保持する加圧容器を含む。歴史的には、これらのMDIは一般に、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびジクロロテトラフルオロメタンを含むクロロフルオロカーボン(CFC)を噴霧剤として用いる。噴霧剤のみでは比較的弱い溶媒である場合には、エタノールなどの共溶媒が存在してもよい。より新しい噴霧剤としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを含むことができる。MDIの起動により、一般に、体積20〜100μLで50μg〜5mgの用量の活性剤が、速い速度(30m/秒)で100〜200ミリ秒間送達される。
【0081】
他の態様において、エアロゾル送達システムは、溶液または懸濁液中のポリマーを含む貯蔵容器と流体接続された、空気ジェット噴霧器または超音波噴霧器を含む。噴霧器(空気ジェットまたは超音波)は、第一に、歩行不能な患者の救急処置並びに幼児および小児において用いられる。噴霧化のための空気ジェット噴霧器は、小型の圧縮空気ポンプが利用可能であるために携行可能であると考えられているが、これは比較的大型で不便なシステムである。超音波噴霧器は、一般に圧縮空気源が不要であるため、携行がより容易であるという利点を有する。噴霧器は非常に小さい液滴および高い質量出力を提供する。噴霧化によって投与される用量は、MDIにおける用量より非常に大きく、液体貯蔵容器のサイズが制限されるために、短い一期間の治療となる。
【0082】
空気ジェット噴霧器からエアロゾルを生成するために、圧縮空気がオリフィスを通り毛管の開口端上に強制的に通されて、低圧力の領域を作り出す。液体製剤が管を通って引き出されて空気ジェットと混合され、液滴を形成する。噴霧器内のバッフルが大きい液滴を除去する。気流中の液滴のサイズは、圧縮空気の圧力に影響される。市場で入手可能な種々の空気ジェット噴霧器は同じようには機能しない。このことは、液滴サイズ、噴霧器からの総出力、および患者の決定因子に依存する、噴霧化されたエアロゾルの臨床的有効性に影響を及ぼす。
【0083】
超音波噴霧器は、刺激を与えられると機械的に振動するセラミック圧電性結晶によって液体チャンバー内に集中される、高周波超音波(すなわち、100kHz以上)を用いてエアロゾルを発生させる。Dennis JH et al. (1992) J Med Eng Tech 16:63-68; O’Doherty MJ et al. (1992) Am Rev Respir Dis 146:383-88。ある場合には、インペラーが噴霧器から粒子を噴出させるか、またはエアロゾルは患者によって直接吸入される。超音波噴霧器は、空気ジェット噴霧器より高い出力能力があり、このためにエアロゾル薬剤療法において頻繁に用いられている。超音波噴霧器を用いて形成される液滴は周波数に依存し、空気ジェット噴霧器により送達されるものより粗い(すなわち、NMADが高い)。液体に導入されるエネルギーは温度の上昇を引き起こすことができ、これは気化を引き起こし、時間と共に濃度の変化をもたらす。この時間による濃度変化はジェット噴霧器でも見られるが、これは蒸発による水分の損失のためである。
【0084】
噴霧器における溶液または懸濁液製剤の選択は、MDIに対するのと同様である。選択された製剤は、総質量出力および粒子サイズに影響する。噴霧器製剤は一般に、水と共溶媒(エタノール、グルセリン、プロピレングリコール)、および溶解性と安定性の改善のために添加される界面活性剤とを含む。通常、浸透物質を添加して、低浸透圧または高浸透圧溶液による気管支収縮を予防する。Witeck TJ et al. (1984) Chest 86:592-94;Desager KN et al. (1990) Agents Actions 31:225-28。
【0085】
さらに他の態様において、エアロゾル送達システムは、粉末形態のポリマーを含む貯蔵容器と流体接続している乾燥粉末吸入器を含む。乾燥粉末吸入デバイスは、MDI製品におけるクロロフルオロカーボン(フロンガス)の国際的な規制への対応として、一定の適用に対しては最終的にMDIの代替となるであろう。とりわけ、このデバイスは、呼吸に適するサイズ範囲のその負荷の一部のみを送達することができる。粉末吸入器は通常、含んでいる薬剤の約10〜20%のみを、呼吸に適する粒子として散布する。代表的な乾燥粉末吸入デバイスは2つの要素からなる:粉末製剤の単位用量を吸い込まれた空気流へと散布する吸入器具、およびこれらの用量を分配するための粉末製剤の貯蔵容器。貯蔵容器は一般に、2種類の異なるタイプを用いることができる。バルク貯蔵容器は、約200用量までの個別の用量の送達に対して、正確な量の粉末を分配することを可能とする。単位用量貯蔵容器は、必要に応じて吸入用の個別用量(例えば、ブリスター・パッケージまたはゼラチンカプセル形態で提供される)を供給する。携帯用デバイスは、カプセル/ブリスター・パッケージを破って開けるか、または原粉末を負荷するように操作され、次に患者の吸気で散布が行われるようにデザインされる。空気流は、粉末を分解しエアロゾル化する。多くの場合、患者の吸気による空気流はデバイスを始動させ、乾燥粉末を分散させ分解するエネルギーを供給し、肺に到達する医薬の量を決定する。
【0086】
乾燥粉末発生器は、粉末の物理的および化学的特性により様々である。これら吸入器は、200μg〜20mgの範囲の用量を計量するよう設計される。これらのデバイスにおける薬剤粉末の調製は非常に重要である。これら吸入器の粉末には、MDIの懸濁液にも要求される効率的なサイズの減少が必要である。微細化された粒子は流動して、粗い粒子よりも不均一に分散される。従って、微細化された薬剤粉末は、不活性担体と混合することができる。この担体は通常α−ラクトース一水和物であり、なぜならばラクトースには、種々の粒子サイズがあり特性化されているからである。Byron PR et al. (1990) Pharm Res 7 (suppl):S81。担体粒子は治療剤より大きな粒子サイズを有しており、賦形剤が気道に入るのを防ぐ。患者がマウスピースから吸入した際に乱気流が生成されると、2つの粒子の分離が起こる。この吸気の乱気流は一定量のエネルギーを供給して、粒子間の結合力および粒子表面の接着力に打ちつ勝って微細化粒子を空中に浮遊させる。空気中での薬剤粒子の高い濃度は乾燥粉末の発生によって容易に実現できるが、出力の安定性および凝集し荷電した粒子の存在は共通の問題である。非常に小さな粒子では、それらの結合のエネルギーを増加させる静電気力、ファンデルワールス力、毛管力、および機械的力のために、散布は困難である。
本発明と共に用いるのに好適な乾燥粉末吸入器エアロゾル発生器の例は、Fisons Corp., Bedford, MassachusettsからのSpinhaler粉末吸入器である。
【0087】
本発明において有用なポリマー
本発明において有用な両性イオンポリマーの一部は、両者ともにTzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号、および公開された国際特許出願WO 00/59515およびWO 03/075953に記載されており、これらの内容の全体は本明細書に参照として組み込まれる。簡単に述べると、これらは、特定の電荷モチーフを包含することを特徴とする多糖類、ペプチドおよび合成ペプチドグリカンを包含する。必要なモチーフは本来、多糖類の繰り返し単位上の正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および負に荷電した部分を含み、例えば、B. fragilisの莢膜多糖類A(PSA)に特有のものであることが確認された。この同じ電荷モチーフは次に、ペプチドポリマーとの関連で作用することが示された。
【0088】
本明細書において「ポリマー」は、リンケージによって共に結合されている個別の単位の直線状の主鎖を有する化合物である。用語「主鎖」は、ポリマー化学の分野における通常の意味を与えられる。ポリマーは、必要な電荷モチーフを有する限り、主鎖の組成において同種または異種であってよい。ある態様においては、ポリマーは当分野で従来知られているポリマーとは異なることができ、これは、本発明のポリマーが、主鎖に組み込まれた非ポリマー化合物を有することができるからである。例えば、本発明のポリマーは、2組のアミノ酸を結合する有機リンカーを含む領域以外は、完全にアミノ酸によって組成されてよい。1つの態様において、ポリマーは主鎖の組成において同種であり、例えば、ペプチド、多糖類、および核酸を含む。本明細書において「ペプチド」は、結合したアミノ酸のポリマーである。本明細書において「オリドペプチド」は、2個〜約50個のアミノ酸のペプチドポリマーである。従ってペプチドは一般に、ポリペプチドおよびオリゴペプチドの両方を指す。本明細書において「多糖類」は、結合した糖類のポリマーである。本明細書において「核酸」は、結合したヌクレオチドのポリマー、例えばデオキシリボ核酸またはリボ核酸である。
【0089】
ポリマーは電荷モチーフの繰り返し単位で構成することができる。例えば、ポリマー全体を電荷モチーフの繰り返しで構成することができる。本明細書で「単位」は、当分野で知られている意味のポリマーの基礎単位を指すものとして、一環一貫して用いられる。各単位は、1つまたは複数(すなわち1組)のサブユニットを含むことができ、ここでサブユニットは個別の部分、例えば糖類、アミノ酸、ヌクレトチド等である。繰り返し単位で構成されるポリマーは、該ポリマー内で少なくとも2回生じているところの単位によって全体が構成されるものである。ポリマーの繰り返し単位は、同一または非同一の繰り返し単位であってよい。本明細書において「同一の繰り返し単位」は、全てのサブユニットが同一の組成を有し、かつ他のサブユニットの組のサブユニットと同一の順序で位置されている、ポリマー内で繰り返されるサブニットの組である。本明細書において「非同一の繰り返し単位」は、全てのサブユニットが同一の組成を有してはいない、および/または他のサブユニットの組のサブユニットと同一の順序で位置されていない、ポリマー内で繰り返されるサブニットの組である。非同一の繰り返し単位のサブユニットの幾つかは、全てのサブユニットが同一でない限りにおいて、他の組のサブユニットと同一の順序および/または同一の位置を有することができる。この発明の文脈において用いられる場合、非同一の繰り返し単位を有するポリマーとは、全てが非同一の繰り返し単位を有することができるもの、または同一と非同一の繰り返し単位の組合せを有することができるものである。
【0090】
ポリマーは、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを含む。本明細書において「繰り返し電荷モチーフ」は、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および、負に荷電したアミノ部分から構成されるモチーフである。モチーフは、二重に荷電した単一のサブユニット、または複数のサブユニットであって、1つのサブユニットが正に荷電した有離アミノ遊離アミノ基を有し、第2のサブユニットが負の電荷を有するものから構成されることができる。異なるサブユニットに電荷が存在する場合、サブユニットは互いに隣接してもよく、または介在サブユニットによって分離されてもよい。1つの態様において、介在サブユニットは中性サブユニットである。中性サブユニットは、正の電荷または負の電荷を有さないサブユニットである。モチーフの荷電されたサブユニットは、任意の数のサブユニットにより分離することができるが、10個未満の中性サブユニットによるのが好ましい。繰り返し電荷モチーフは、ポリマー内で任意の配置で存在することができる。例えば、中性サブユニットにより分離された2個の繰り返し電荷モチーフを有するポリマーにおいて、ポリマーは以下の順序を有することができる:正の電荷、負の電荷、中性サブユニット、負の電荷、そして最後に正の電荷。代替的に、ポリマーは以下の順序でもよい:正の電荷、負の電荷、中性サブユニット、正の電荷、そして最後に負の電荷、等。
【0091】
本明細書において、「正に荷電された遊離のアミノ部分(positively charged free amino moiety)」は1級アミンを指す。本明細書において、「負に荷電された部分」は任意の負に荷電された基を指し、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩を含むが、これらに限定されない。1つの態様において、負に荷電された部分はカルボキシル基である。遊離のアミノ基を有する正に荷電されたアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、アルパラギン(N)、およびヒスチジン(H)を含むが、これに限定されない。負に荷電されたアミノ酸は、アルパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)を含むが、これに限定されない。
ポリマーは少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを有するが、一般には2より多い任意の数を有することができる。ポリマー全体は、例えば、繰り返し電荷モチーフから構成されることができる。代替的に、ポリマーは、2と、ポリマー全体が構成される繰り返し電荷モチーフの数(これは当然、ポリマーのサイズに依存する)の間の任意数の繰り返し電荷モチーフから構成することができる。ポリマーは例えば、少なくとも10、15、20、25、30、35個等の繰り返し電荷モチーフを有することができる。
【0092】
繰り返し電荷モチーフの間の領域は、繰り返し電荷モチーフ、他の単位、またはこれらの混合により構成することができる。この領域は例えば、中性の介在配列であってよい。介在配列は、ポリマーの他の単位と同じタイプの単位であってもよく、または完全に異なっていてもよい。例えば非ポリマーの有機部分であってもよい。
1つの態様において、ポリマーは最大10個の糖類の繰り返し単位から形成される多糖類であることができ、ここで各繰り返し単位は、少なくとも1個の遊離アミノ部分および、カルボキシル、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分を含む。随意的に、ポリマーには、B. fragilis莢膜多糖類複合体の一部としての複合体形成がない。ある態様において、多糖類は最大5個の糖類の繰り返し単位から形成される。かかる多糖類は天然に存在し、単離することができる。かかる多糖類の1つは、B. fragilis莢膜多糖類複合体の莢膜多糖類A(PSA)である。天然のPSAは複合体の形態でのみ存在し、B. fragilis莢膜多糖類B(PSB)に固く結合されている。単離されたPSAまたは単離されたPSBと異なり、A:B莢膜多糖類複合体は、他の細菌による感染に対する交差防御を引き起こさないことが以前に見出された。従って、1つの態様において、本発明は、B. fragilis莢膜多糖類複合体の一部としての複合体形成のない、単離されたPSAの投与を意図する。
【0093】
本発明による有用な多糖類はまた、必要なモチーフを有していない天然の多糖類から合成することもできる。例えば、ある天然に存在する多糖類は、各繰り返し単位に、負に荷電された基および少なくとも1個のN−アセチル部分を有する。かかる多糖類は脱N−アセチル化してN−アセチル部分を遊離アミノ部分に変換でき、それによって、本発明に従って使用するために必要な構造モチーフを作り出すことができる。他の天然に存在する多糖類は、還元によって遊離アミノ部分を形成するイミン基を含み、それにより、負に荷電した基と一緒に、本発明の有用性に必要な構造モチーフを作りだしている。
従って本発明は、各単位が、カルボキシル、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの負に荷電した部分を有している、最大10個の糖類の繰り返し単位を有する多糖類を選択することによる、医薬の製造方法を意図する。各繰り返し単位はまた、遊離アミノ部分を形成するように改変できる部分も含む。かかる改変された多糖類は、次に薬学的に許容し得る担体と混合して、好ましくは、対象をアレルギー状態または喘息から防御するための有効用量を形成する量にする。
【0094】
本発明による有用な多糖類は、必要な荷電された基を含む天然の多糖類を含む。これらの多糖類は、細菌由来であってよい。莢膜多糖類を得るための出発原料として用いられる細菌は、多数の源から市場で入手可能である。例えば、B. fragilis、NCTC9343およびATCC23745は、National Collection of Type Cultures (London, England)およびAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手可能である。多糖類Aおよび多糖類Bは、上記の細菌から、Pantosti A et al. (1991) Infect Immun 59:2075-82のプロトコルに基づき、以下の例の節に記載するように少し修正を加えて精製することができる。
天然の多糖類に加えて、少なくとも1つのN−アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸(負に荷電したカルボキシル基を有する糖)からなる多糖類繰り返し単位は、本発明の免疫応答を生成するように改変することができる。少なくとも1つのN−アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸を含む多糖類繰り返し単位は、脱N−アセチル化して遊離のアミノ基を生成することができ、従って、正しい電荷モチーフの多糖類を生み出す。脱N−アセチル化可能な分子には、チフス菌莢膜多糖類(Vi抗原)、大腸菌K5莢膜多糖類、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖類、B群連鎖球菌III型莢膜多糖類、およびRhizobium melilotiエキソポリサッカライドIIを含む。
【0095】
遊離のカルボキシル基に加えてイミン基を有する細菌性多糖類は、本発明の免疫応答を生成させるために改変して用いることができる。多くの緑膿菌のO特異的側鎖はイミン基を有する。イミン部分を含むこれらの多糖類に対して、遊離アミノ基を、当業者に知られた従来の化学技法により形成することができる。1つの好適な方法は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の使用を含む。イミン基は水素化ホウ素ナトリウムで還元して遊離アミノ基(NH3+)を生成することができる。これは、5mgより多い水素化ホウ素を、室温で2時間攪拌しながら蒸留水中に溶解した多糖類に添加して実施する。混合物は次に水に対して透析し、凍結乾燥させる。水素化ホウ素ナトリウムで還元して遊離アミノ基を生成できる化合物の例は、緑膿菌フィッシャー7(Fischer7)である。
本発明において有用な多糖類は、1種以上の多糖類の混合物として送達することができる。混合物は、数種類の多糖類からなることができる。
【0096】
上記のように、天然の多糖類を改変して本発明で有用な免疫調節剤を生成することができる。チフス菌は、ガラクトサミンウロン酸の繰り返しモノマーから全体が形成されている莢膜多糖類(Vi抗原)を有する。この酸は、カルボキシル部分およびN−アセチル部分を含む。N−アセチル部分は改変して遊離アミノ基を生成させ、各モノマー繰り返し単位が正および負に荷電された基の両方を有するようにすることができる。
複合体である多糖類が存在し、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。大腸菌K5莢膜多糖類は、グルクロン酸とグルコサミンが1−4結合で共に結合している複合体の繰り返し単位から形成される。グルクロン酸はカルボン酸部分を保持し、グルコサミンは遊離アミノ基を形成するよう改変可能なN−アセチル基を保持する。かかる改変が行われた場合、負に荷電した部分(第1糖上)および遊離アミノ基(第2糖上)の両方を有する複合体繰り返し単位が形成される。
【0097】
三量体である多糖類が存在し、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖類は、マンノサミンウロン酸−フコサミン(fucosamine)−フコサミンの三量体の繰り返し単位で形成される。マンノサミンウロン酸はカルボン酸部分を保持し、フコサミンは遊離アミノ基を形成するよう改変可能なN−アセチル部分を保持する。かかる改変が行われた場合、負に荷電した部分(第1糖上)および少なくとも1つの正に荷電した部分(第2糖および第3糖上)を有する三量体繰り返し単位が形成される。同様の様式で、緑膿菌O抗原は、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。例としては、カルボン酸部分および遊離アミノ基を形成するように改変可能なイミン部分を保持する三量体を含む。フィッシャー免疫型7、Lanyi-BerganO2a、O2bおよびLanyi-BerganO2dおよび2fは、第1糖および第2糖にカルボン酸部分を、そして第1糖にイミン部分を有する三量体繰り返し単位から形成される多糖類を有する。(第3糖は荷電部分を有さない;全ての糖はまた、N−アセチル部分も保持する)。例えば、第1糖は、遊離アミノ部分およびカルボン酸部分の両方を保持するよう改変することができる。同様に、N−アセチル基は、本発明に従って有用な異なる配置を生成するように改変可能である。
【0098】
四量体および五量体などの、より長い繰り返し単位を有する多糖類もまた、上記のようにして改変可能である。十量体までの繰り返し単位が、本発明に従って有用であると考えられる。さらに、側鎖糖を含む繰り返し単位もまた有用であり、遊離のアミノ部分および負に荷電した部分のどちらかまたは両方がかかる側鎖に位置するものを含む。さらに、荷電した部分を保持するかかる側鎖は糖である必要はないが、ただし1つの態様においては、繰り返し単位の少なくとも主鎖は糖のみからなっている。
ある態様において、繰り返し単位は3個までの遊離アミノ基を有し、1つの態様においては、2個までのかかる基を有する。1つの態様においては、各遊離アミノ基には少なくとも1つの負に荷電した基が存在する。
出発原料はさらに、細菌由来である必要はない。カルボン酸部分およびN−アセチル基またはイミン基を保持する任意の多糖類が、上記のようにして改変可能である。
【0099】
特定の例が化学名および構造式と共に、Tzianabos et al.に発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号に提供されている。
脱N−アセチル化は、当業者によく知られた従来の化学的技法により実施できる。1つの好適な方法は、水素化ホウ素ナトリウムと共に、またはこれなしで、アルカリを用いる方法を含む。多糖類20mgを、2MのNaOH(3ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(50mg)を添加する。溶液を5時間、100℃で熱する。酸による中和の後に、溶液を蒸留水に対して寒中で透析し、乾燥凍結する。DiFabio JL et al. (1989) Can J Chem 67:877-82。
【0100】
天然の多糖類もまた、改変なしで本発明の方法において、および本発明の医薬製剤の形成に、用いることができる。非限定的な例としては、ゾンネ赤痢菌I相リポ多糖類O抗原;肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖類(CPI);および、肺炎連鎖球菌群抗原C物質を含み、これらはTzianabos et al.に発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号に記載されている。
糖主鎖のみを有さないが、本発明に従って有用であると考えられる多糖類は、クルーズトリパノソーマ・リポペプチドホスホグリカンである。
改変なしで用いることのできる天然の多糖類は改変して、遊離アミノ部分、負に荷電した部分または他の部分を含む種々の部分を選択的に付加、除去、または修飾することができる。例としては、存在するN−アセチル基またはイミン基を改変することにより遊離アミノ部分を加えること、またはアルコール基からヒドロキシメチル基を形成することが含まれる。
【0101】
本発明に従って有用な多糖類は、市場源から入手可能であり、または細菌、真菌、海草などの天然源から単離および抽出することができる。以下は、細菌性多糖類およびかかる多糖類の単離ならびに調製の詳細を記した参考文献のリストである:
前に単にPSAと呼んだBacteroides fragilisPSA1は、1個のカチオン性遊離アミンおよび1個のアニオン性カルボン酸塩を各繰り返し単位に含有する、四糖類繰り返し単位を有する。Tzianabos AO et al. (1992) J Biol Chem 267:18230-5;米国特許第5,679,654号および第5,700,787号。
Bacteroides fragilisPSA2は、マンノヘプトース、N−アセチルマンノサミン、3−アセトアミド−3,6−ジデオキシグルコース、2−アミノ−4−アセトアミド−2,4,6−トリデオキシガラクトース、フコース、および3−ヒドロキシブタン酸を含む四糖類繰り返し単位を有する。Wang Y et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:13478-83;Kalka-Moll WM et al. (2001) Infect Immun 69:2339-44。PSA2は両性イオン性であり、各繰り返し単位に1個のカチオン性遊離アミンおよび1個のアニオン性カルボン酸塩を含有する。
【0102】
Bacteroides fragilisPSBは六糖類繰り返し単位を有し、1個のカチオン性遊離アミンおよび2個の負の電荷を各繰り返し単位に含有する。Tzianabos AO et al. (1992) J Biol Chem 267:18230-5;米国特許第5,679,654号および第5,700,787号。
チフス菌莢膜(Vi抗原)、Szu SC et al. (1991) Infect Immun 59:4555-61。
大腸菌K5莢膜、Vann W et al. (1981) Eur J Biochem 116:359-64。
黄色ブドウ球菌5型莢膜、Fournier J-M et al. (1987) Ann Inst Pasteur Microbiol 138:561-7。
Rhizobium melilotiエキソポリサッカライドII、Glazebrook J et al. (1989) Cell 54:661-72。
B群連鎖球菌III型、Wessels MR et al. (1987) J Biol Chem 262:8262-7。
緑膿菌フィッシャー7O特異的側鎖、Knirel YA et al. (1987) Eur J Biochem 167:549-61。
ゾンネ赤痢菌O特異的側鎖、Kenne L et al. (1980) Carbohydr Res 78:119-26。
肺炎連鎖球菌I型莢膜、Lindberg B et al. (1980) Carbohydr Res 78:111。
肺炎連鎖球菌群抗原、Jennings HJ et al. (1980) Biochemistry 10:4712-9。
【0103】
他の態様において、ポリマーは、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを有するペプチドであってよく、ここで繰り返し電荷モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および負の電荷からなり、ここで、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフの正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分は、少なくとも8個のアミノ酸残基の距離により分離されている。1つの態様において、繰り返し電荷モチーフは、アミノ酸の繰り返しセットとして存在する。1つの特定の態様において、繰り返し電荷モチーフは、リジン(K)−アスパラギン酸(D)の繰り返し、すなわち、(K−D)nの繰り返しセットとして存在する。1つの態様において、繰り返し電荷モチーフは、リジン(K)−(Xaa)m−アスパラギン酸(D)の繰り返し、すなわち、[K−(Xaa)m−D]nの繰り返しセットとして存在し、ここでK、Xaa、D、mおよびnは上記定義の通りである。
本発明の実践において有用なのは、公開された国際特許出願WO 03/075953に記載されている合成ペプチドグリカンポリマー化合物15である。化合物15の調製および検証の方法は、この刊行物の例1に提供されている。
本発明の方法、使用および組成物に従って有用な任意の両性イオンポリマーは、随意的に、ポリマーの水和物として、ポリマーの薬学的に許容し得る塩として、またはこれらの混合物として存在することができる。
【0104】
投与
投与する場合、本発明の製剤は、薬学的に許容し得る溶液で適用される。かかる製剤は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、補助剤、および随意的に他の治療成分をルーチンに含有することができる。
ポリマーは、そのまま(ストレートで)、または薬学的に許容し得る塩の形態で投与できる。医薬に用いる場合、塩は薬学的に許容し得るものでなければならないが、しかし非薬学的に許容し得る塩も、薬学的に許容し得るそれらの塩を製造するために便利に用いることができ、これらも本発明の範囲から除外されない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩は、これに限定はされないが、以下の酸から製造されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、pトルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、スクシン酸、ナフタレン2スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に許容し得る塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として製造することができる。
【0105】
好適な緩衝剤は、酢酸および塩(1〜2%W/V);クエン酸および塩(1〜3%W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%W/V);並びにリン酸および塩(0.8〜2%W/V)を含む。好適な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V);パラベン(0.01〜0.25%W/V);およびチメロサール(0.004〜0.02%W/V)を含む。
本発明のポリマー製剤は、随意的に薬学的に許容し得る担体中に含有された、有効量のポリマーを有する医薬組成物であることができる。本明細書において用語「薬学的に許容し得る担体」は、ヒトまたは他の動物への投与に好適な、1種または2種以上の、適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。
本発明において、用語「担体」は、活性成分がそれに組み合わされて適用を容易にする、天然または合成の有機または無機成分を指す。医薬組成物の要素はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用がない様式において、本発明のポリマーと混合、およびお互いに混合することが可能である。
【0106】
非経口投与に好適な組成物は、受容者の血液と等張性であってよいポリマーの無菌水性製剤を便利に含む。用いることのできる許容し得るビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液を含む。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として便利に用いられる。この目的のために、任意の無刺激性の不揮発性油を用いることができ、合成のモノ−またはジグリセリドを含む。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注入物の製造において使用が見出されている。皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内等の投与に好適な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに見い出せる。
サイトカインなどの他の免疫調節剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーとサイトカインとを含む「カクテル」が意図される。意図されるサイトカインは、本発明のポリマーを投与することによる有益な効果を増強するものである。サイトカインは、リンパ球を含む細胞の増殖および成熟を支援する因子である。ここで本発明に重要なのは、T細胞の発生を調節するものであり、本発明の方法がT細胞介在と見られるからである。サイトカインは、T細胞に直接または他の細胞を介して間接に作用することができる。サイトカインの添加は、本発明の方法を実施することにより、in vivoで促進されるサイトカインの活性を増加させると考えられる。1つの態様において、サイトカインはインターロイキン10である。
【0107】
アレルギー状態および喘息の処置に有用な他の剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーおよび他の剤を含む「カクテル」が意図される。考えられる他の剤は、本発明のポリマーを投与することによる有益な効果を増強するものである。より具体的には,他の剤は、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体から選択することができる。かかる剤の特定の例は上に開示されている。これらの他の剤の多くは、エアロゾル製剤としてすでに利用可能である。
本発明の製剤は有効量を投与される。投与の方法およびポリマーの分子量に依存して、1ng/kg〜100mg/kgの用量のポリマーが有効である。絶対量は、用量の回数ならびに、年令、物理的状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメータを含む、種々の因子に依存する。これらの因子は当業者によく知られているものであり、ルーチンの実験を超えない範囲内で扱うことができる。
【0108】
例えば、喘息の処置用のマウスへのCP1の投与は、皮下投与の場合は約1〜10mg/kg/日の用量が、肺へのエアロゾルによる投与の場合は約10〜50mg/kg/日の用量が効果的であることが見出された。
本発明の医薬組成物の複数用量が意図される。本発明は、例えば、3週間にわたる複数用量のポリマーの投与が有効であることが示された。例えば、マウスにおいて、1日3回の用量により達成された抑制活性は、一般に最後の用量から14日以内に弱まることが見出された。従って、アレルギーや喘息などの慢性状態に対しては、本発明は特に、何日、何週間、何ヶ月または何年もの期間にわたる、単独でまたは補助療法と共に行うポリマーの長期投与の方法を含む。1つの態様において、ポリマーは対象に対して毎日投与される。種々の態様において、ポリマーは対象に対して、1日おきに、2日おきに、3日おきに、4日おきに、5日おきに、週に2回、または週に3回、投与される。1つの態様において、ポリマーは対象に対して毎週投与される。1つの態様において、ポリマーは対象に対して隔週で投与される。ここにリストされていない他のスケジュールもまた、互いに2週間以内に少なくとも2回の用量を含む限りにおいて、本発明で意図される。かかる他のスケジュールは定期的である必要はなく、替わりに、例えば処置される状態の症状に応じて導かれてもよい。
【0109】
一般に種々の投与経路が利用可能である。選択される特定の方法は、もちろん、選択される特定の多糖類、処置される特定の状態、および治療の効力に必要な用量に依存する。本発明の方法は、一般に、医学的に許容し得る任意の投与方法を用いて実施することができ、これは、臨床的に許容し得ない副作用を誘発することなく、免疫応答の有効な調節をもたらす任意の方法を意味する。投与方法は、経腸的および非経口経路を含む。用語「経腸的」は、限定することなく、特に経口を含む。用語「非経口」は、限定することなく、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、および腹腔内注射および注入技法を含む。粘膜、局所的、病変内、および経皮投与もまた、投与の非経口投与に含まれる。
【0110】
上記のように本発明により、限定はしないが特に喘息の処置の方法のために、エアロゾル送達システムが特に意図される。エアロゾル送達は特に、吸入による肺気道送達および、例えば吸入またはガス注入(insufflation)による鼻腔内送達の両方を含む。
組成物は、単位用量形態において便利に提供され、薬学分野でよく知られた任意の方法により調製することができる。全ての方法は、活性ポリマーを1種または2種以上の補助成分を含む担体と関連させるステップを含む。一般に組成物は、液体の担体、細かく分割された固体の担体、またはその両方とポリマーを均一かつ密接に関連させ、次に必要に応じて製品を形作ることにより、製造される。ポリマーは凍結乾燥させて保存し、使用時に再構成することができる。
【0111】
他の送達システムは、徐放性、遅延放出または持続放出送達システムを含むことができる。かかるシステムは、本発明のポリマーの繰り返し投与を避けることができ、対象および医師の利便性を増加させる。多種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらは以下を含む:ポリマーベースのシステム、例えばポリ乳酸およびポリグリコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトン;脂質の非ポリマーシステムであって、例えばコレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロール、またはモノ、ジ、およびトリグリセリドなどの中性脂肪を含むもの;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;従来の結合剤および賦形剤を用いたワックス被覆の圧縮錠剤、部分融合インプラント等。特定の例は以下を含むがこれに限定はされない:(a)ポリマーがマトリクス内の形態で含まれる侵食システムであって、米国特許第4,452,775号(Kent);第4,67,014号(Nestor et al.);および第4,748,034号と第5,239,660号(Leonard)に見出されるもの、並びに(b)活性要素が制御された速度でポリマーに浸透する分散システムであって、米国特許第3,832,253号(Higuchi et al.) および第3,854,480号(Zaffaroni)に見出されるもの。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムを用いることができ、それらの幾つかは移植に適合されている。
【0112】
例
多糖類の細菌の源、単離および改変
B. fragilis NCTC 9343およびATCC 23745は初めに、National Collection of Type Cultures (London, England)またはAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手した。微生物は使用まで、−80℃でペプトンイーストまたは脳心臓注入ブロス(brain heart infusion broth)中で保存し、前に記載のようにして嫌気的に増殖させた。Pantosti et al. Infect Immun 59:2075 (1991)。B. fragilis NCTC 9343またはATCC 23745からのCPCを、熱フェノール/水抽出により単離し、続いてPSAの精製を前に記載のようにして行った。Tzianabos, A et al. J Biol Chem 267:18230 (1992)。
肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖類1(CP1)および他の肺炎球菌多糖類を、ATCCから得た。
多糖類を化学的に改変することによる電荷を変えた分子の生成は、前に記載した。Taylor R et al. (1972) Biochemistry 11:1383(カルボジイミド還元);Baumann H et al. (1992) Biochemistry 31:4081(N−アセチル化および脱アミノ化)。
【0113】
肺炎連鎖球菌1型CP(CP1)による、手術後の外科的癒着の抑制
ラット(1群あたり10匹)に対して、生理食塩水(100μl)、ペクチン(ポリガラクトウロン酸、生理食塩水100μl中に100μg)、または肺炎連鎖球菌1型CP(2個のガラクトウロン酸残基および1つの2−アセトアミド−4−アミノ−2,4,6−トリデオキシガラクトースを有する三糖類繰り返し単位、80kDa、生理食塩水100μl中に100μg)を用いて皮下的に、外科的操作の−24時間、0時間、および+24時間において処置した。癒着は、前述と同様にして、さらに幾らかの修正を加えて誘発した。Kennedy R et al. (1996) Surgery 120:866-70。簡単に述べると、腹腔に3cmの正中切開を行い、盲腸を露出させた。盲腸を点状出血が見られるまで外科用ガーゼで擦過した。盲腸を腹腔内に挿入し、その傍の腹壁を同様に擦過した。この手順に続いて、ラットの殺菌した盲腸内容物(0.5ml)を、前述のように腹腔内に加えた。Onderdonk AB et al. (1982) J Clin Invest 69:9-16。創傷を4.0絹縫合で閉じた。動物を6日後に殺して、癒着形成を調べた。癒着は、前述のように0〜5のスケールで以下のように点数付けした:0、癒着なし;1、薄い膜状の癒着;2、2個以上の薄い癒着;3、中心を有する厚い癒着;4、平面的に付着した厚い癒着;および5、非常に厚い血管新生化癒着(vascularized adhesion)または、2個以上の平面状の癒着。Kennedy R et la. (1996) Surgery 120:866-70。
T細胞移植試験
生理食塩水または多糖類で処置した動物から単離した脾臓T細胞を分画し、計測し、心臓内経路を介して移植した。
【0114】
例1
両性イオン多糖類による術後癒着形成の減少はT細胞およびIL−10に依存する
雄のルイスラット(Lewis rat)に、盲腸擦過手術の−24、0、および+24時間において、生理食塩水またはCP1(50μg/ラット)を皮下注射した。6日後にこれらの動物の癒着形成について調べ、上述のように癒着の重篤度スコアを調べた。結果を図1Aに示す。左図:生理食塩水で処置した動物は、盲腸およびその傍の腹壁を含む、多数の高密度の血管新生化癒着を示した。右図:CP1で処置したラットは、それより数が少なく重篤度も低い癒着を示した。
図1Bは、CP1が、CD4+T細胞に依存する様式で癒着形成を防ぐことを示す。左図:CP1または対照として非両性イオン多糖類であるPGで処置したルイスラットの癒着スコア。各点は1匹の動物を示し、バーはスコアの中央値を示す。CP1で処置した動物は、生理食塩水またはPGで処置した動物より、有意に低い癒着スコアを示した(P<0.001)。中図:C57BL/6マウスを、生理食塩水、CP1またはPGで同様の様式で処置し、盲腸擦過手術を行った。CP1で処置した動物は、生理食塩水またはPGで処置した動物より、有意に低い癒着スコアを示した(*P<0.001)。右図:CP1で処置したマウスからのCD4+T細胞の移植は、生理食塩水で処置した動物からのCD4+T細胞を受領した動物と比べて、防御をもたらした(*P=0.001)。
【0115】
図1Cは、癒着の予防におけるIL−10の役割を示す。左図:CP1は、生理食塩水またはPGの処置に比べ、マウスの腹腔においてIL−10を誘導する。動物(n=5/群)は、3日間連続して50μgのCP1またはPGで処置し、最終投与の後3日間、腹水を採取した。IL−10のレベルをELISAにより評価した。CP1は、生理食塩水またはPGの処置に比べて、高レベルのIL−10を誘発した(*P<0.02)。右図:CP1による防御は、抗IL−10処置によって無効となる。マウスは、上記のように生理食塩水またはCP1により処置し、腹腔内経路を介してIL−10に特異的なモノクローナル抗体(mAb)で処置した(200μg、盲腸擦過手術からt=0、24、48および72時間において)。IL−10特異的モノクローナル抗体による処置により、CP1で処置しアイソタイプ対照抗体を受領した動物と比べて、有意に高い癒着スコアが得られた(*P<0.001)。
図1Dは、CP1で処置したIL−10−l−マウスが、同腹子の野生型(WT)対照マウスと比べて、癒着形成に対して防御されなかったことを示す(*P=0.003)。
【0116】
例2
外科的癒着の予防におけるTreg細胞の役割
マウスをCP1またはPGで処置し(50μg/用量を皮下経路を介して)、脾臓CD4+T細胞を単離し、フローサイトメトリーによりCD45RB表面発現および細胞内IL−10レベルを解析した。結果を図2Aに示す。上段の図:CP1による処置は、Treg細胞の割合を増加させ、一方CD45RBhiT細胞の割合を減少させる。PGによる処置はこの割合に影響を及ぼさない(処置の4日後を示す)。下段の図:CP1による処置はCD45RBlo細胞からのIL−10の産生を増加させ、一方PGは影響を及ぼさない。IL−10産生は処置4日後にピークとなった。
図2Bは、CP1による処置は、Treg細胞からのIL−4またはIFN−γを誘発しないことを示す。CD4+CD45RBloT細胞は、処置後毎日解析した。4日後からの結果を示す。
【0117】
図2Cは、Treg細胞が、IL−10に依存した様式で癒着形成に対する防御を伝達することを示す。左図:マウス群を、上記のように生理食塩水またはCP1により処置し、脾臓のCD4+T細胞を最終処置の1日後に単離した。細胞をCD45RB特異的抗体で染色し、高(hi)または低(lo)発現の集団をFACSにより単離した。各集団を次に、心臓内経路を介して移植し、24時間後に動物に盲腸擦過手術を施した。生理食塩水またはCP1で処置した動物からCD45RBhiT細胞を受領した動物は、癒着を発生した。癒着はまた、生理食塩水で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物でも発生した。CP1で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物は、生理食塩水で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物より、有意に低い癒着スコアを有していた(*P<0.001)。右図:IL−10特異的抗体による処置は、CP1で処置した動物から採取したTreg細胞により伝達された防御を無効にした。CP1で処置した動物からのCD45RBloT細胞は、IL−10に特異的なモノクローナル抗体またはアイソタイプ対照抗体により1日後に処置されたナイーブな受容動物へ移植された。アイソタイプ対照抗体で処置されたTreg細胞を受領したマウスには、ほとんど癒着がなかった。しかし、マウスへTreg細胞の移植により付与された防御は、IL−10特異的抗体による処置によって無効化された(*アイソトープ対照処置と比較して*P=0.0002)。
【0118】
例3
Treg細胞により付与された防御におけるICOS−ICOSL相互作用の役割
図3Aは、CP1がin vivoでCD4+T細胞でのICOSの発現を誘導することを示す。マウスをCP1またはPGで上述のようにして処置し、膵臓T細胞を単離し、ICOSおよびCD4発現について染色した。CP1はCD4+T細胞でのICOSの発現を誘導し、最終投与の4日後に最大となった。PGはこれらの細胞でのICOSの発現を誘発しなかった。
図3Bの左図は、ICOSL抗体がCP1による防御を無効化することを示す。マウスは、癒着を誘導する前に生理食塩水またはCP1で処置した。CP1で処置したマウスには、腹腔内経路を介して手術の0、48および96時間後に、ICOSLに特異的なモノクローナル抗体(400μg/マウス)またはアイソタイプ対照抗体も与えた。CP1およびアイソタイプ対照抗体で処置したマウスは、ICOSLに特異的なモノクローナル抗体で処置したマウスに比べて、有意に少なくまた重篤度の低い癒着を有した(アイソタイプ対照処置に比べてP=0.0003)。
【0119】
図3Bの中央図は、ICOS−l−マウスがCP1の処置によって防御されないことを示す。WTおよびICOS−l−マウスを、癒着を誘導する前に、上述のようにして生理食塩水またはCP1で処置した。CP1で処置したICOS−l−動物は、同様に処置したWT動物より低い癒着スコアを示した(P=0.002)。
図3の右図は、ICOSL抗体は、CP1で処置したマウスからのTreg細胞による防御を無効化することを示す。C57BL/6マウスを上述のようにしてCP1で処置し、1日後にFACSにより脾臓からCD45RBloCD4+T細胞を採取した。Treg細胞を、心臓内経路を介してナイーブC57BL/6マウスの2つの群に移植し、24時間後に動物に盲腸擦過手術を行った。被移植動物には、手術の0、48、および96時間後に、ICOSL特異的抗体またはアイソタイプ対照抗体(400μg/マウス)を腹腔内経路を介して与えた。動物の各群は6日後に癒着を評価した。ICOSL抗体による処置は、アイソタイプ対照抗体による処置と比べて、Treg細胞の移植により付与された防御を無効化した(P=0.0006)。
【0120】
例4
Treg細胞はICOSに依存する様式でCP1に応答しIL−10を産生する
図4Aは、ICOS+Treg細胞によるIL−10産生を示す。C57BL/6マウスを上述のようにしてCP1またはPGで処置し、CD45RBloT細胞を最終投与後の異なる時点において単離した。細胞はICOS表面発現および細胞内IL−10産生について染色し、解析のためにCD4T細胞上でゲーティングした。CP1による処置は、ICOS+Treg細胞からのIL−10産生を誘導した。この応答はPGで処置したマウスからのTreg細胞によるIL−10産生より大幅に高かった。CP1で処置したマウスからのICOS−Treg細胞は、IL−10を産生しなかった。
図4Bは、Treg細胞によるIL−10産生はCP1に特異的であり、ICOSに依存することを示す。WTおよびICOS−l−マウスを、CP1(50μg、皮下経路を介して)により処置し、10日後にCD45RBloT細胞を単離し、照射された自己抗体提示細胞と共にin vitroで培養した。細胞をCP1またはPG(20μg/ml)で刺激し、培養液の上清液を培養の6日または8日後に採取して、ELISAによりIL−10の定量を行った。CP1により刺激されたWTマウスからのTreg細胞は、ICOS−l−マウスからのTreg細胞より高いレベルのIL−10を産生した。この反応はCP1に特異的であり、なぜならば、PGはWTまたはICOS−l−Treg細胞からIL−10を誘発しなかったからである。in vivoでPGで処置され、in vitroでこのポリマーにより刺激された動物からのTreg細胞は、これらの試験においてIL−10を産生しなかった。
【0121】
例5
PSAは喘息を改善できる
両性イオン多糖類の喘息を予防する機能を評価するため、PSAを、確立されたアレルギー性喘息のマウスモデルにおいて試験した。Mojtabavi N et al. (2002) J Immunol 169:4788-96。4群の雌のBALB/cマウス(1群当たり8匹のマウス)を感作し、オバルブミン(OVA)でチャレンジして、実験的に喘息を誘発した。指定されたマウスの実験群は、エアロゾル化または皮下注射によるPSAで処置した。指定の対照マウス群は、無処置か、または生理食塩水の皮下注射で処置した。動物群および実験計画を表1に示す。
全マウスの感作は、0日における生理食塩水4ml中のOVA200μgの腹腔内(i.p.)注入および、21日後における同一のブーストを含む。B群のマウスでのPSAによるエアロゾル処置は、1〜27日の間に、超音波噴霧器によりエアロゾル化した0.01%PSA(0.1mg/ml)500μgを週に3回投与することを含む。C群におけるPSAによる皮下処置は、エアロゾル処置と同じスケジュールで、0.1%PSA(PSAの1mg/ml溶液)を100μl、皮下(s.c.)注射することを含む。
【0122】
表1.喘息モデルプロトコル
【表1】
全マウスについてのチャレンジは、28および29日後に1日2回60分間、超音波噴霧器による1%OVA(1g/100ml)のエアロゾル投与を含む。
【0123】
動物は、最終のエアロゾルチャレンジの48〜96時間後に殺して、肺組織病理、血清OVA特異的IgE、および気管支肺胞洗浄(BAL)液IL−4、IL−5およびIL−10について評価する。
OVA特異的IgEの測定には、ELISAプレートを、10μg/mlの抗マウスIgE(LO-ME-3; Serotec, Oxford, U.K.)で4℃で1晩被覆する。プレートを洗浄し、2%BSA/0.05%Tween 20で37℃にて2時間ブロックする。滴定した血清を室温で2時間インキュベートする。洗浄の後、ビオチン化したOVAを加え、プレートを1時間インキュベートする。プレートを洗浄後、ユウロピウム(Eu3+)−ストレプトアビジン(Delfia; Wallac, Turku, Finland)を各ウェルに加える。増強溶液(enhancement solution)(100μl;Delfia)を加え、蛍光定量法を用いて340nm励起および614nm発光にて、Eu3+放出を測定する。
【0124】
BAL液サイトカインの測定には、致死的に麻酔したマウスにカニューレを挿入し、PBS1mlで1〜3回洗浄する。各マウスからのBAL液をプールし、IL−1、IL−5およびIL−10を製造業者の指示に従ってELISA(Endogen, Woborn, MA)にて定量する。
肺組織病理試験では、BALの後に、気管をPBSおよび続いて4%のホルマリンで還流する。パラフィンに埋め込まれた4μmの肺切片を、形態染色用にH&Eにて、およびムコ多糖体染色用にパス染色で染色する。
気道過敏性(AHR)は、意識のある抑制なしのマウスにおいて、全身プレチスモグラフィ(Buxco Electronics, Sharon, CT)で公開された方法を用いて計測する。Hamelmann E et al. (1997) Am J Respir Crit Care Med 156:766-75。
【0125】
例6
両性イオンペプチドはT細胞活性化を誘導する
両性イオン電荷モチーフのT細胞活性化における役割を示すため、ダイペプチド繰り返し単位を合成して、PSAの繰り返し単位構造を模倣した。この目的のために、リジン(K)およびアスパラギン酸(D)による異なる繰り返し単位サイズ、(K−D)nを合成し、CD4+T細胞を促進するそれらの機能を試験した。
ペプチド(K−D)nは、Rainin Symphonyペプチド合成装置で、4−アルコキシベンジルアルコール(PAC)樹脂(PerSeptive Biosystems, Inc., Framingham, MA)とFmoc化学を用いて合成した。アミノ酸は、カップリングのために2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3テトラメチルウリニウム六フッ化リン酸塩(HBTU)で活性化した。調製したペプチドは、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI−TOF)質量分析法および核磁気共鳴(NMR)分光法により解析した。質量スペクトルはVoyagerMALDI−TOF質量分析計上に得た。プロトンNMRスペクトルは、BruckerAMX500装置でプロトン周波数500MHzにて得た。両方の解析により、ペプチドは予想された構造であることが確認された。
【0126】
T細胞増殖分析は、ヒトleukopac(匿名の血小板ドナーからの廃棄白血球)から得た細胞で行った。単核細胞は、フィコール−ヒパーク(ficall-hypaque)沈降により分離して、赤血球および多形核白血球(polymorphonuclear leukocyte)を除去した。T細胞、B細胞および単核細胞からなる単核層は、ナイロンウールカラムを通過させることによりB細胞および単球を減少させた。これらの細胞の一部は、ナイロンウール上に載せる前に保存して、セシウム源6.4kRad、4.8分間の照射の後に自己支持細胞として用いた。ナイロンを通過した、98%CD3陽性より大(FACS分析により決定)の細胞は、キラー細胞として用いるか、または抗体でさらに減少させ、続いて磁気ビーズによるネガティブセレクションによって、CD4(OKT4)またはCD8(OKT8)とした。Finberg RW et al. (1992) J Immunol 149:2055-60;Haregewoin A et al. (1989) Nature 340:309-12。種々のサイズの(K−D)nペプチド(20μg/ml)を、照射APC(2.5x105/200μg)と共に、12日間U底96穴プレート(Corning-Costar Corp., Cambridge, MA)でRPMI1640および5%胎児性子牛血清(fetal calf serum)を用いて共培養したヒトT細胞(5x104細胞/200μl)に加えた。Nguyen LH et al. (1992) J Virol 66:7067-72。チフス菌1型CP(20μg/ml)を陽性対照として含めた。6日後、細胞を、1mCiの3Hチミジン/ウェルで、採取の6時間前に鼓動させ(pulsed)、細胞増殖を測定した。細胞をよく洗浄し、採取し、放射能取り込み量を液体シンチレーションで計測した。データは、3個のウェルの平均±標準誤差のcpm単位で表した。
【0127】
15、20または25個の繰り返し単位からなる(K−D)nペプチドはそれぞれ、T細胞活性化をin vitroで促進した。反応は、10個の繰り返しのペプチドでより少なかった。10未満の繰り返し単位からなるペプチド(1〜5の繰り返し)はT細胞の増殖を促進しなかった。対照ペプチド、ポリ−L−リジンもまた、T細胞の増殖を促進しなかった。これらのデータは、多糖類以外の両性イオン繰り返し単位のポリマーはT細胞活性化を促進し、この活性化はポリマーの繰り返し単位のサイズに依存することを明白に示す。
【0128】
例7
両性イオンペプチド(K−D)nは喘息を改善することができる
喘息を予防する両性イオンオリゴペプチドの機能を評価するために、例5のプロトコルに従い、PSAを(K−D)nで置き換えて実施する:ここで整数は10〜25の数値である。
【0129】
例8
CP1は喘息を改善することができる
両性イオン多糖類の喘息予防の機能を評価するために、確立されたアレルギー性喘息のマウスモデルにおいてCP1を試験した。Mojtabavi N et al. (2002) J Immunol 169:4788-96。3群の雌のBALB/cマウス(1群あたり8匹)を、オバルブミン(OVA;ミョウバン中に10μg、i.p.)で感作し、21日後に同じ用量でブーストした。ブーストの7日後から、マウスを、エアロゾル化したOVA(1%のOVAを60分間、1日2回で2日間)または生理食塩水(60分間、1日2回で2日間)でチャレンジした。最後のチャレンジの2日後、心穿刺で得た血液から血清を採集し、マウスを殺して肺組織病理、OVA特異的IgEおよび血清IL−13の評価を行った。この実験の間、マウスの個別の群にはCP1(100μl中に100μg、s.c.、週に3回)または生理食塩水(100μl、s.c.、週に3回)を投与した。第4群の8匹のマウスは感作させず、生理食塩水処置および生理食塩水チャレンジを行った。動物の群および実験計画を表2に示す。
【0130】
表2.喘息モデルプロトコル
【表2】
【0131】
OVA特異的IgEの測定のために、ELISAプレートを抗マウスIgE(LO−ME−3;Serotec, Oxford, U.K.)10μg/mlで、4℃にて1晩被覆した。プレートを洗浄し、2%BSA/0.05%Tween 20で、37℃で2時間ブロックした。滴定した血清を室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化したOVAを加えて、プレートを1時間インキュベートした。ユウロピウム(Eu3+)−ストレプトアビジン(Delfia; Wallac, Turku, Finland)を、プレートを洗浄した後に各ウェルに加えた。増強溶液(100μl;Delfia)を加え、蛍光定量法を用いて340nm励起および450nm発光にて、Eu3+の放出を測定した。
IL−13を、IL−13特異的ELISA(RおよびDシステム)を用いて測定した。
肺の組織病理検査では、気管をPBSおよび続いて4%のホルマリンで還流した。パラフィンに埋め込まれた4μmの肺切片を、形態染色用にヘマトキシリンおよびエオジンにて、およびムコ多糖体染色用にパス染色で染色した。
【0132】
代表的な結果を図5〜図8に示す。
図5に示すように、CP1の処置は、気道過敏性のマウスにおいてOVA特異的IgEレベルを低減した。OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスでは、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスに比べて、OVA特異的血清IgEが有意に減少した(p=0.0001、フィッシャーの直接確率検定による)。事実、OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスのOVA特異的血清IgEレベルは、OVAで感作し生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスより、感作なしで生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにより類似していた。
【0133】
図6に示すように、CP1による処置は気道過敏性のマウスにおける血清IL−13レベルを低減させた。OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスは、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスに比べて、有意に低い血清IL−13を有していた(p=0.03、ターキークラマーの多重比較検定による)。事実、OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスの血清IL−13レベルは、感作なしで生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスのそれと本質的に等しかった。
図7に示すように、CP1による処置は、気道過敏性と関連する好酸球の湿潤および杯細胞の湿潤を低減させた。A、BおよびC群各々から2匹のマウスを試験したところ(表2参照)、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにおいて、CP1で処置した対応する群に比べて少なくとも2倍多い好酸球の湿潤の存在を示した(図7A)。同様に、A、BおよびC群各々から同じ2匹のマウスを試験したところ(表2参照)、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにおいて、CP1で処置した対応する群に比べて少なくとも2倍多い杯細胞の湿潤の存在を示した(図7B)。図8は、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウス(左図)およびOVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウス(右図)の代表的なPAS染色切片を示す。CP1で処置したマウスは、生理食塩水で処置したマウスより少ない面積の杯細胞の湿潤を有していた。
【0134】
例9
in vitroでのTreg細胞の拡大
マウスからのナイーブ脾臓CD4+T細胞を得て、自己照射抗原提示細胞(APC)を有する96穴プレートにおいて培養した。T細胞およびAPCはそれぞれ、個々のウェルに2x105細胞/ウェルで加えた。細胞は、20μg/mlの両性イオン多糖類(ZPS)PSA、IL−2(0.5ng/ml)、およびIL−15(それぞれ10ng/ml)と共に、1週間培養した。1週間後、新鮮なAPC、サイトカイン、および多糖類を上記の濃度で加えた。このサイクルを合計3回繰り返した。この過程の後、ZPS刺激に応答してIL−10を産生する、CD45RBloフェノタイプを有するZPS特異的Treg細胞が優勢であることが見出された(ウェルにおいて細胞の50%)。IL−10は、フローサイトメトリーで細胞内サイトカイン染色により計測した。
【0135】
例10
細胞内サイトカイン解析
ラット抗マウスCD16/CD32を用いたプレインキュベーションによりFc受容体をブロックした後、T細胞をFITC、PE−Cy5、またはPEによりラベルされたmAbsによって、CD4、CD45RB、もしくはICOSまたは対応するアイソトタイプ対照抗体について染色した。細胞内サイトカイン解析を上述のようにして行った。Akbari O et al. (2002) Nat Med. 8:1024-32。簡潔に述べると、細胞を洗浄し、固定し、Cytofix/Cytoperm溶液および1’Perm/Wash溶液(BD Pharmingen, San Diego, CA, USA)を用いて透過性とし、次に、IL−4、IFN−γ、もしくはIL−10または対応するアイソタイプ対照に特異的なPE−Cy5またはPE複合モノクローナル抗体を用いて染色した。染色された細胞は、Coulter EPICS XL(登録商標)血球計算器(Beckman Coulter)で、CELL Quest(登録商標)(Becton Dicknson)およびWinMDI2.8解析ソフトウェア(Scripps Research Institute)を用いて解析した。全ての抗原はBD PharMingen (San Diego, CA)から入手した。
【0136】
等価物
上記の書面の明細書は、当業者が本発明を実践するのを可能とするのに十分であると考えられる。本発明は、提供された例によってその範囲を限定されず、これは、これらの例が本発明の1つの側面の単一の例示を意図しており、他の機能的に等価な態様も本発明の範囲であるためである。本明細書に示されたものおよび記載されたものに加えて、本発明の種々の改変が前述の記載から当業者には明白となり、それらも付属のクレームの範囲に包含される。本発明の利点および目的は、必ずしも本発明の各態様により包含されるものではない。
本明細書に引用された全ての参考文献、特許および特許広報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】両性イオン多糖類CP1による術後癒着形成の低減を示す1組の写真である。左および右の図は、それぞれ生理食塩水およびCP1の処置に対応する。
【図1B】生理食塩水、CP1、または非両性イオン対照多糖類PGで処置された動物における癒着スコア(左図、ラット;中図、マウス)、および生理食塩水またはCP1で処置されたマウスから移植されたCD4+T細胞で処置されたマウスにおける癒着スコア(右図)を示すグラフである。*P<0.001。
【図1C】癒着の予防におけるIL−10の役割を示す1組のグラフである。左図、*P<0.02;右図、*P<0.001。
【図1D】生理食塩水またはCP1で処置された野生型(WT)およびIL−10−l−マウスにおける癒着スコアを示すグラフである。*P=0.03。
【図2A】CP1またはPGで処置されたマウスから単離され、表面のCD45RB(上図)および細胞内IL−10(下図)について染色されたCD4+T細胞の、フローサイトメトリーによる解析結果を示すグラフである。
【図2B】CP1のin vivo投与の4日後に測定された、CD4+CD45RBloT細胞におけるIL−4(左)およびIFN−γ(右)のフローサイトメトリーによる解析結果を示す1組のグラフである。
【図2C】生理食塩水またはCP1で処置されたマウスから移植されたCD45RBhiまたはCD45RBlo細胞で処置されたマウスにおける癒着スコア(左図)、および抗IL−10抗体の存在下における、移植されたCD45RBlo細胞の防御効果の無効化(右図)を示す、1組のグラフである。左図、*P<0.001;右図、*P=0.0002。
【図3A】生理食塩水、CP1、またはPGのin vivo投与後の、CD4+T細胞によるICOS発現についてのフローサイトメトリーによる解析結果を示す、一連の3つのグラフである。
【図3B】癒着スコアにおけるICOS−ICOSL相互作用の役割を示す一連の3つのグラフである。*P=0.0006。
【0138】
【図4A】CP1またはPGによる処置の後の、ICOS+Treg細胞によるIL−10産生についてのフローサイトメトリーによる解析結果を示す、一連のグラフである。
【図4B】CP1またはPGによる処置の後の、野生型(WT)およびICOS−l−マウスから得たTreg細胞によるIL−10産生を示すグラフである。
【図5】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスにおける、抗原特異的IgEレベルを示す棒グラフである。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて、抗原特異的IgEが有意に減少した(P=0.0001)。
【図6】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスにおける、血清IL−13レベルを示す棒グラフである。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて、血清IL−13が減少した。
【図7A】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、好酸球浸潤を示す棒グラフである。各棒は1匹のマウスからの結果を示す。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて好酸球浸潤が減少した。
【図7B】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、杯細胞浸潤を示す棒グラフである。各棒は1匹のマウスからの結果を示す。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて杯細胞浸潤が減少した。
【図8】抗原で感作し、CP1(右図)または対照(生理食塩水;左図)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、杯細胞浸潤が並ぶ細気管支を示す1組の顕微鏡写真である。CP1で処置したマウスは、生理食塩水で処置したマウスと比べて杯細胞浸潤の面積が減少した。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年3月31日に出願された米国仮出願第60/459,056号の利益を主張し、該仮出願の全体は本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は免疫学の分野に関する。特に、本発明は免疫応答の抑制に有用な方法および組成物に関する。本発明は、制御性T細胞の誘導のための免疫調節性両性イオンポリマーが関与する方法、使用および組成物、並びに喘息およびアレルギーの処置を提供する。
【0003】
発明背景
細菌細胞の表面から精製されたある種の多糖類は、腹腔内膿腫、腹腔内敗血症、および術後癒着の形成などの炎症モデルにおいて試験された場合、in vivoで防御効果を示す(米国特許第5,679,654号および第5,700,787号;公開された国際特許出願WO 96/07427、WO 00/59515、およびWO 02/45708。莢膜全体から精製された場合、Bacteroides fragilis、黄色ブドウ球菌、および肺炎連鎖球菌由来のある種の多糖類は、それらを多くの多糖類抗原から区別させているユニークな特徴を有する。これらの分子は高分子量でらせん状であり、その性質は両性イオン性である。Wang Y et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:13478-81;Brubaker JO et al. (1999) J Immunol 162:2235-42: Tzianabos AO et al. (1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AO et al. (1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WM et al. (2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AO et al. (2000) J Biol Chem 275:6733-40。
【0004】
ほとんどの細菌性多糖類は中性または負に荷電しており、T細胞非依存性抗原と考えられる。Abbas AK et al. (2003) Cellular and Molecular Immunology, Saunders, Philadelphia。しかし、これらの多糖類はその両性イオン性の性質により、CD4+T細胞との相互作用に何らかの形で関与することが示唆されている。Tzianabos AO et al. (1993) Science 262:416-9;Tzianabos AO et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:9365-70。両性イオン多糖類がin vitroでCD4+T細胞を活性化することは、T細胞の増殖ならびにサイトカインIL−2、IFN−γ、およびIL−10の産生を促進するそれらの能力についての報告により支持されている。さらに、多糖類が誘導したT細胞により、防御効果がin vivoで適合的に伝達されることが報告されている。公開された国際特許出願WO 00/59515;Kalka-Moll WM et al. (2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AO et al (2000) J Biol Chem 275:6733-8。しかし、これらの分子が正確にはいかにしてT細胞を活性化するか、またはそれらがいかにして防御効果を示すかについては、まだ明確になっていない。
【0005】
本発明の概要
喘息およびアレルギー状態を処置しそれに対して防御するための方法および製品が提供される。これらの方法および組成物は、ある種の莢膜多糖類および合成ペプチドを含む、ある種の両性イオンポリマーが、CD4+Tリンパ球でICOSを誘導し、制御性Tリンパ球(Treg細胞)の発生を促進することを本発明者らが発見したことに部分的に関連している。本明細書に開示されるように、両性イオンポリマーにより誘導されるTreg細胞は、膿瘍および癒着の形成、炎症性腸疾患、および気道過敏症(喘息)を含む多くの炎症およびアレルギー状態に対して、防御を付与し伝達することができる。
【0006】
本発明により、ある種の両性イオンポリマーがCD4+T細胞でICOSを誘導し、Treg細胞の発生(development)を促進することが偶然発見された。他の前の報告によれば、IL−10分泌Treg細胞は、外部から供給されるIL−10と、未成熟の樹状細胞(DC)、またはある種の免疫抑制剤、特に1,25(OH)2−ビタミンD3およびデキサメタゾンとの存在下で、T細胞を培養することにより生成可能である。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。これらの過去の報告のいずれにも、本発明の両性イオンポリマーが、ICOSの発現を誘導すること、またはTreg細胞の発生を促進することに用いられ得ることは、開示または示唆されていない。
【0007】
両性イオンポリマーがIL−10の分泌を促進することは既に理解されていたが、IL−10の源および重要性は知られていなかった。さらに、IL−10は高度に多面的なサイトカインであることが広く認識されているため、IL−10分泌の状況は非常に重要である。例えば、IL−10のみでは、喘息を悪化させるかまたは処置することの両方が可能であることが報告されている。両性イオンポリマーのICOSを誘導する能力の重要性は、IL−10の存在下でのTreg細胞の発生における、ICOS−ICOSLシグナリングの重要な役割の報告による。Akbari O et al. (2002) Nat Med 8:1024-32。Treg細胞は、IL−10の源であることに加えて、本発明においても重要な役割を果たすと考えられる。
【0008】
本発明により、両性イオン多糖類ポリマーは、ペプチドアレルゲンに対する交差防御効果を誘導できることもまた、偶然発見された。
さらに、本発明により、両性イオンペプチドポリマーは、無関連のように見えるペプチドアレルゲンに対して交差防御効果を誘導できることが偶然発見された。
1つの態様おいて、本発明は、対象における喘息以外のアレルギー状態を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位(repeating unit of charge motif)を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0009】
1つの態様において、モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
1つの態様において、対象には、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない。
本発明のこの側面により、1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。
1つの態様において、この方法は、対象に対し、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬を投与することをさらに含む。種々の態様において、抗アレルギー薬は、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、クロルシクリジン、クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標)、Parke-Davis)、塩酸フェキソフェナジン(ALLEGRA(登録商標)、Aventis)、塩酸ヒドロキシジン(ATARAX(登録商標)、Pfizer)、ロラタジン(CLARITIN(登録商標)、Schering)、塩酸プロメタジン(PHENEGRAN(登録商標)、Wyeth-Ayerst)、ピリラミン、または抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)である。
【0010】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは多糖類である。本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは細菌性莢膜多糖類(bacterial capsular polysaccharide)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSA1である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSA2である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはPSBである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である。
【0011】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはアミノ化ペクチン(すなわち、アミノ化ポリガラクツロン酸)である。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは化合物15(公開された国際特許出願WO 03/075953)として知られている、合成ペプチドグルカンである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーはペプチドである。1つの態様において、ペプチドは、約1.2kDa〜50kDaの分子量を有する。
【0012】
本発明のこの側面および他の全ての側面による1つの態様において、ポリマーは(K−D)nであり、ここでKはリジンであり、Dはアスパラギン酸であり、nは10〜100の整数である。本発明のこの側面および他の全ての側面により、1つの態様において、ポリマーは[K−(Xaa)m−D]nであり、ここでKはリジンであり、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、Dはアスパラギン酸であり、そしてnは1〜100の整数である。
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む。
【0013】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による種々の態様において、暴露することは、投与に先立ち、投与の後に、または実質的に投与と同時に行われる。
【0014】
1つの側面において、本発明は、対象における喘息を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息を有する対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
本発明のこの側面による1つの態様において、対象には、ポリマーを用いた処置を必要とする以外の症状は認められない。
【0015】
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法は、対象に対し、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬を投与することをさらに含む。種々の態様において、抗喘息薬は、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(VANCERIL(登録商標)、Schering)、フルニソリド(AEROBID(登録商標)、Forest)、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT(登録商標)、GlaxoSmithKline)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド(AZMACORT(登録商標)、Aventis)、硫酸アルブテロール(VENTOLIN(登録商標)、GlaxoSmithKline;PROVENTIL(登録商標)、Schering)、エピネフリン、塩酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、テルブタリン(BRETHINE(登録商標)、LAMISIL(登録商標)、Novartis)、臭化イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、テオフィリン、クロモリン、ネドクロミル、または抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)である。
【0016】
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む。
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、喘息を処置するための有効量のポリマーを投与すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0017】
本発明のこの側面による種々の態様において、暴露することは、投与に先立ち、投与の後に、または実質的に投与と同時に行われる。
1つの側面において、本発明は、インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞を単離すること、および、制御性T細胞を有効量のポリマーに接触させて、該制御性T細胞によるIL−10の産生を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0018】
1つの側面において、本発明はまた、CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は以下のステップを含む:CD4+細胞を有効量のポリマーに接触させてCD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である;および、CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合は、CD4+細胞でのICOSの発現は増加している。
【0019】
1つの側面における本発明は、制御性T(Treg)細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、ナイーブT細胞集団を単離すること、および、前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を抗原と接触させるステップを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはそれらの組合せと接触させるステップを含む。
【0020】
1つの側面における本発明は、制御性T(Treg)細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞集団を単離すること、および、前記制御性T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、のステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を抗原と接触させるステップを含む。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはそれらの組合せと接触させるステップを含む。
【0021】
1つの側面において本発明は、対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法を提供し、ここで該抗原特異的応答とは、アレルギー状態または喘息以外のものである。本発明のこの側面による方法は、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および(b)前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0022】
本発明のこの側面による種々の態様において、抗原の投与は、ポリマーの投与に先立ち、その後に、または実質的に同時に行われる。
1つの態様において、ポリマーを投与することは、ポリマーの複数用量を投与することを含む。
1つの側面において、本発明は、抗原およびポリマーを含む抱合体を含む組成物であって、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記組成物を提供する。
【0023】
1つの側面において、本発明は医薬組成物を提供する。本発明のこの側面による医薬組成物は、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含むポリマーであって、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である前記ポリマーの、エアロゾル製剤を含む。
1つの態様において組成物は、アレルギー状態の処置のための、治療的に有効量のエアロゾル製剤を含む。
1つの態様において組成物は、アレルギー性喘息の処置のための、治療的に有効量のエアロゾル製剤を含む。
【0024】
1つの態様において、医薬組成物はさらに、アレルギー状態の処置に有用な他の剤を含む。種々の態様において、他の剤は、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬である。
1つの態様において、医薬組成物はさらに、喘息の処置に有用な他の剤を含む。種々の態様において、他の剤は、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬である。
【0025】
さらなる側面において、本発明はエアロゾル送達システムを提供し、該エアロゾル送達システムは容器を含み、該容器は、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーを含み、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。エアロゾル送達システムは、単一用量または複数用量を送達するように作製することができる。1つの態様において、容器は、計量吸入器である。1つの態様において、容器は、乾燥粉末吸入器である。他の態様において、容器は、噴霧吸入器である。さらに他の態様において、容器は、鼻の上皮または他の気道の上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである。1つの態様において、エアロゾル送達システムは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、IL−10を産生するCD45RBloTreg細胞を誘導することが、in vivoまたはin vitroにおいて望ましい場合に、一般に常に有用である。より具体的には、本発明は、対象におけるアレルギーまたは喘息状態を、予防を含み処置することが望ましい場合に常に有用である。
本発明者らは前に、全て特定の電荷モチーフによって特徴付けられるある種の天然の両性イオン多糖類、改質多糖類およびペプチドが、T細胞を刺激してIL−2およびIL−10の産生を促進すること、並びに多くの細菌、膿瘍および癒着形成に対する防御を誘導することに用い得ることを見出した。Tzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号、および公開された国際特許出願WO 00/59515を参照のこと;これらの全内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0027】
本発明によれば、これらと同一および関連する両性イオンポリマーは、CD4+T細胞を誘導してICOSを発現させ、IL−10分泌Treg細胞の確立および増殖を促進することが発見された。これらのTreg細胞は、IL−10を産生するものとしてのみでなく、対象における炎症反応もしくは炎症状態、またはアレルギー反応もしくはアレルギー状態を予防し抑制することに関与可能な、免疫抑制細胞としても重要である。本発明の特徴的な1側面として、両性イオンポリマーは、対象のアレルギー状態の処置および予防に有用であることが見出されている。本発明の特徴的な1側面として、両性イオンポリマーは、喘息の処置および予防に有用であることが見出されている。
【0028】
本発明の1つの側面において、アレルギー状態を有する対象を処置する方法が提供される。この側面による方法は、アレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで、該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0029】
本発明のこの側面および他の全ての側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される。簡潔に述べると、それらは、多糖類(PSAを含む)および非多糖類ポリマーの両方を含む両性イオンポリマーである。これらのポリマーは、天然のポリマー、天然ポリマーの改変形態、または天然には見出されない他のポリマーであってよい。
本明細書において「アレルギー状態」すなわち「アレルギー」は、物質(アレルゲン)に対する獲得過敏性を指す。アレルギー状態は、アレルギー性喘息、花粉症(季節性鼻炎)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、じんましん、食物アレルギー、および他のアトピー状態を含むが、これに限定されない。
【0030】
「アレルゲン」は、敏感な対象においてアレルギー反応または喘息反応を誘導することのできる物質を指す。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒、動物の鱗屑、イエダニ、ダスト、真菌胞子、ラテックス(ゴム製品)、および薬物(例えばペニシリン)を含むことができる。天然の動物および植物アレルゲンの例は、以下の属に特異的なタンパク質を含む:イヌ属(カニスファミリアリス);ヒョウダニ属(例えばコナヒョウダニ);ネコ属(Felis domesticus);アンブロシア属(Ambrosia artemiisfolia);ドクムギ属(例えばドクムギまたはLolium multiflorum);スギ属(スギ);アルテルナリア属(Alternaria alternata);ハンノキ属(Alder);ハンノキ属(Alnus)(Alnus gultinosa);カバノキ属(Betula verruscosa);カシ属(Quercus alba);オリーブ属(オリーブ);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);オオバコ属(例えばヘラオオバコ);ヒカゲミズ属(例えばParietaria officinalisまたはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えばチャバネゴキブリ);ミツバチ属(例えばApis multiflorum);イトスギ属(例えばCupressus semipervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus macrocarpa);ビャクシン属(例えばJuniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus Juniperus ashei);クロベ属(例えばThuya orientalis);ヒノキ属(例えばヒノキ);ゴキブリ属(例えばワモンゴキブリ);カモジグサ属(例えばAgropyron repens);ライムギ属(例えばライムギ);コムギ属(例えばコムギ);カモガヤ属(例えばカモガヤ);ウシノケグサ属(例えばFestuca elatior);イチゴツナギ属(例えばPoa pratensisまたはPoa compressa);カラスムギ属(例えばカラスムギ);シラゲガヤ属(例えばシラゲガヤ);ハルガヤ属(例えばハルガヤ);オオカニツリ属(例えばArrhenatherum elatius);Agrostis属(例えばコヌカグサ);オオアワガエリ属(例えばオオアワガエリ);クサヨシ属(例えばクサヨシ);スズメノヒエ属(例えばアメリカスズメノヒエ);モロコシ属(例えばSorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ(例えばコスズメノチャヒキ)。アレルゲンはまた、アレルギーおよび喘息の実験動物モデルに用いられるようなペプチドおよびポリペプチドも含み、これらにはオボアルブミン(OVA)およびマンソン住血吸虫卵抗原を含む。
【0031】
本明細書において、「対象」は、ヒトまたは他の哺乳類を指し、マウス、ラット、ウサギ、および非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されない。
本明細書において「アレルギー状態を有する対象」は、アレルギー状態が存在するか、またはアレルギー状態発生への素因が既知かもしくは疑われる対象を指す。従って、これらの対象は活性化されたアレルギー状態または潜在的なアレルギー状態を有し得る。アレルゲンが既知である必要はない。しかし、ある種のアレルギー状態は季節的または地理的環境因子と関連し、これらは対象には明らかである場合もあるが、その必要性はない。1つの態様において、アレルギー状態は、実験目的のために対象において意図的に誘発される。
【0032】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象は、ポリマーによる処置を必要とする以外の適応病兆は認められない。この態様において、対象は、以下を有さない:感染症、手術、トラウマ、または膿瘍もしくは手術による癒着形成に関連する他の疾患またはリスク因子;Th1細胞応答性疾患(インスイリン依存型糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、炎症性腸疾患、同種移植の拒絶反応);特定抗原に対する不適当なIgG抗体反応を特徴とする疾患(急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、関節リューマチを含む自己免疫性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、およびある種の形態の甲状腺炎)。
【0033】
本発明の特徴として、ポリマーは、アレルギー状態を有する対象に対して、アレルギー状態を処置するために繰り返しおよび/または長期に投与することができる。以下に記載されるように、繰り返しおよび/または長期の投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週、投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0034】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定された抗原に関連するアレルギー状態を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を、このアレルゲンに暴露するステップは、能動的または受動的であってよい。すなわち、能動的暴露は、対象に対して意図的にアレルゲンを投与することを含んでよい;受動的暴露は、対象がアレルゲンに、偶然または環境的接触をすることを含んでよい。特定の態様において、暴露するステップは、ポリマーの投与なしで、対象にアレルギー反応を誘導するのに有効な量の既知のアレルゲンを対象に投与することを特に含む。
【0035】
種々の態様において、対象をアレルゲンに暴露するステップは、この対象に対する、アレルギー状態を処置するために有効な量のポリマーを投与するステップに先立って、その後に、またはそれと同時に、実施することができる。さらに、暴露の経路および投与の経路は、同じでも、または異なっていてもよい。
1つの側面において、本発明は、アレルギー状態の処置に用いるための医薬の製造における、両性イオンポリマーの使用を提供する。両性イオンポリマーは本明細書の他の部分で記載されているものであり、ここでの使用は、対象のアレルギー状態の処置に用いるために、ポリマーまたはそれらの水和物もしくは薬学的に許容し得る塩の有効量を、薬学的に許容し得る担体中に配置することを含む。使用は、アレルギー状態の処置に用いるのに好適なポリマーの単位用量の製造を含んでよい。アレルギー状態は任意のアレルギー状態であって、上に挙げた任意のアレルギー状態またはアトピー状態を含むが、これらに限定されない。
【0036】
1つの側面において本発明は、対象における喘息を処置する方法を提供する。この側面による方法は、喘息を有する対象に対して、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
1つの態様において、前記モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0037】
1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーであって、下記に記載のものである。
本明細書において「喘息」は、一過性の呼吸器系の疾患で、気道の炎症および狭窄並びに、吸入した剤に対する気道の反応性の増加を特徴とするものである。喘息は、必ずしもそうではないが、しばしば、アトピー性またはアレルギー性症状と関連する。喘息の症状は、呼吸困難、咳、および喘鳴を含むことが広く認められている;一般にはこれら3症状全てが共存するが、これらの共存は喘息の診断に必要ではない。
本明細書において「喘息を有する対象」は、新しく発症または再発した喘息が、急性に憎悪している対象、または喘息の履歴を有する対象、または喘息発症への素因が既知かもしくは疑われる対象を指す。従って、喘息を有する対象とは、活性化した喘息を有するか、または無症候で急性の憎悪の間であってもよい。1つの態様において、喘息を有する対象は、アレルギー症状に関連する喘息、すなわちアレルギー性喘息を有する対象である。
【0038】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象には、上記のように、ポリマーによる処置を必要とする以外の症状は認められない。
本発明のこの側面による1つの態様において、投与することは、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む。この態様における両性イオンポリマーは、対象における喘息状態を処置するために、該対象の気道に投与される。本明細書において、「対象の気道」は、該対象の呼吸器系の任意の好適な誘導またはガス交換表面を指す。かかる気道は、一般的に、気管、気管支、細気管支(blonchioles)、および終末細気管支および呼吸細気管支を含むが、これに限定されない。1つの態様において、気道は、鼻の上皮である。ポリマーのエアロゾルの気道への送達は、一般に、エアロゾルの吸入を含む。吸入は受動的でもよく、または加圧エアロゾル送達システムもしくはデバイスにより支援することもできる。本発明のポリマーを含む治療剤の気道への投与は、エアロゾルまたはスプレーデバイスまたは送達システムを用いることにより、便利に実現可能である。かかるエアロゾルおよびスプレー送達システムおよびデバイスの例は、当分野によく知られており、計量吸入器、乾燥粉末吸入器、超音波噴霧器、他の液体噴霧器、鼻スプレーなどを含む。
【0039】
本発明のポリマーはまた、アレルギーまたは喘息の処置に用いるための、鼻の上皮への投与用の点鼻薬として製剤化することができる。
本発明の特徴として、ポリマーは、繰り返しおよび/または長期に、喘息を有する対象に喘息の処置のために、投与することができる。以下に記述するように、繰り返しまたは長期の投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0040】
1つの側面において、本発明は、同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること、および(b)前記対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、このアレルゲンに暴露するステップは、能動的または受動的であってよい。すなわち、能動的暴露は、対象に対して意図的にアレルゲンを投与することを含んでよい;受動的暴露は、対象がアレルゲンに、偶然または環境的接触をすることを含んでよい。特定の態様において、暴露するステップは、ポリマーの投与なしで、対象に喘息の急性増悪を誘導するのに有効な量の既知のアレルゲンを対象に投与することを特に含む。
【0041】
種々の態様において、対象をアレルゲンに暴露するステップは、この対象に対して喘息を処置するために有効な量のポリマーを投与するステップに先立って、その後に、またはそれと同時に、実施することができる。さらに、暴露の経路および投与の経路は、同じでも、または異なっていてもよい。
1つの側面において、本発明は、喘息の処置に用いるための医薬の製造における、両性イオンポリマーの使用を提供する。両性イオンポリマーは本明細書の他の部分で記載されているものであり、ここでの使用は、対象の喘息の処置に用いるために、ポリマーまたはそれらの水和物もしくは薬学的に許容し得る塩の有効量を、薬学的に許容し得る担体中に配置することを含む。使用は、喘息の処置に用いるのに好適なポリマーの単位用量の製造を含んでよい。1つの態様において、喘息はアレルギー性喘息である。
【0042】
本発明のある側面は、アレルギー状態の処置または喘息の処置のために、有効量のポリマーを対象に投与することを含む。本明細書において「有効量」は、一般に、それのみでまたはさらなる用量と一緒に所望の反応を促進する組成物の量を指す。本発明の組成物については、本明細書において「有効量」は、それのみでまたはさらなる用量と一緒に所望の反応を促進する、本発明の調整物の量を指す。従って、有効量は、単一の投与で提供されることができるが、そうである必要はない。また本明細書において、ある状態の「処置のための有効量」は、対象における状態もしくは状態に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量を指す。処置される状態に関して治療的に有効な量とは、状態を処置するために有効な量を指す。
【0043】
従って、対象のアレルギー状態を処置するための有効量は、対象におけるアレルギー状態もしくはアレルギー状態に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量である。同様に、対象の喘息を処置するための有効量は、対象における喘息もしくは喘息に関連する副作用の発生を予防する、進行を遅延させる、改善する、または取り除くのに十分な量である。当業者は、対象のアレルギー状態または喘息を予防または緩和するために設計された処置の有効性を、承認された臨床技術および検査室測定を用いてどのようにして評価するかを認識している。
例えば、アレルギー状態および喘息はIgEと関連する。従って、アレルギーと喘息のよく知られた臨床的兆候および症状のモニタリングに加えて、臨床医は、本発明の方法によって処置されるべき対象における血清IgEを測定できる。血清IgEの減少は、処置の有効性の客観的な測度を提供することが期待される。血清よりも便利さは劣るが、IgEは気管支肺胞(BAL)洗浄液においても測定可能である。
【0044】
本発明の前述の側面によるある態様において、ポリマーは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤の投与と共に投与される。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は、ポリマーの投与の前に、後に、またはそれと同時に投与することができる。さらに、ポリマーおよび他の剤は、同じ経路または異なる経路で投与できる。従って、本発明は、ポリマーおよび、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤が繰り返しベースで投与される場合に、異なる剤を同一または異なるスケジュールで用いることを包含する。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は、それのみでアレルギー状態または喘息の処置に有効な量で、またはそれより少ない量で、投与することができる。1つの態様において、ポリマーおよびアレルギー状態または喘息の処置に有効な他の剤は、ポリマーと他の剤の両方を含む単一の医薬組成物において提供される。従って、ポリマーおよびアレルギー状態または喘息の処置に有効な1種または2種以上の他の剤を含む「カクテル」が意図される。
【0045】
アレルギー状態の処置に有効な剤は、以下を含むが、これらに限定されない:グルココルチコイド、例えばプレドニゾンおよびメチルプレドニゾロン;抗ヒスタミン薬、特にH1受容体遮断抗ヒスタミン薬、例えばクロルシクリジン、クロルフェニラミン;塩酸ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標)、Parke-Davis)、塩酸フェキソフェナジン(ALLEGRA(登録商標)、Aventis)、塩酸ヒドロキシジン(ATARAX(登録商標)、Pfizer)、ロラタジン(CLARITIN(登録商標)、Schering)、塩酸プロメタジン(PHENERGAN(登録商標)、Wyeth-Ayerst)、およびピリラミン;並びに抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)。
【0046】
喘息の処置に有効な剤は以下を含むが、これらに限定されない:グルココルチコイド、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾン(VANCERIL(登録商標)、Schering)、フルニソリド(AEROBID(登録商標)、Forest)、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT(登録商標)、GlaxoSmithKline)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびトリアムシノロンアセトニド(AZMACORT(登録商標)、Aventis);上記の抗ヒスタミン薬;βアドレナリン作動薬、例えば硫酸アルブテロール(VENTOLIN(登録商標)、GlaxoSmithKline;PROVENTIL(登録商標)、Schering)、エピネフリン、塩酸イソプロテレノール、硫酸メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、およびテルブタリン(BRETHINE(登録商標)、LAMISIL(登録商標)、Novartis);抗コリン作動薬、例えば臭化イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標)、Boehringer Ingelheim);メチルキサンチン、例えばテオフィリン;クロモリン;ネドクロミル;および抗IgE抗体(オマリズマブ;XOLAIR(登録商標)、Genentech/Novartis)。IL−10それ自体は、喘息を処置する他の剤として有用であることができる。
【0047】
サイトカインなどの他の免疫調節剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーとサイトカインを含む「カクテル」が考えられる。考えられるサイトカインは、本発明によるポリマーの投与から生じる有益な効果を増強するものである。サイトカインは、リンパ球を含む細胞の増殖と成熟を支援する因子である。サイトカインは、T細胞に直接的に、または、他の細胞を介してT細胞に間接的作用することができる。サイトカインの添加は、本発明の方法を実施することによって、in vivoで促進されるサイトカインの活性を増加させると考えられている。かかるサイトカインの1つはIL−10である。これに関して特に興味深い他のサイトカインは、IL−2およびIL−15である。他のサイトカインは、限定はされないがIL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−13、IL−17、IL−18、IL−19、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、TNF−α、TGF−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、およびリンホトキシンを含む。
【0048】
1つの側面において、本発明は、インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞を単離すること、および制御性T細胞を有効量のポリマーと接触させて制御性T細胞によるIL−10産生を誘導することを含み、ここで該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0049】
本明細書において、「制御性T細胞」すなわち「Treg細胞」は、大量のIL−10を分泌するが、IL−4およびIl−13はもしあったとしても少量にしか分泌しない、CD4+Tリンパ球の1つのタイプを指す。Akbari O et al. (2002) Nat Med 8:1024-32。Treg細胞と、Th2およびTh1CD4+T細胞の3種類のT細胞は全てIL−10を分泌することが報告されているが、しかしTreg細胞は後2者の細胞からは区別される。本明細書で開示されるように、Treg細胞は、そのICOSの発現および限定されたCD45RB(CD45RBlo)の発現によりさらに特徴付けられる。Treg細胞は、末梢寛容において重要な役割を果たすと考えられている。これらの細胞は、制御性T細胞またはサプレッサーT細胞とも呼ばれることがあり、抗原特異的T細胞活性化の強力な抑制剤として作用する。
【0050】
1種以上のタイプの制御性T細胞が現在報告されている。最近の概説では、Jonuleit H et al. (2003) J Immunol 171:6323-7およびShevach EM (2002) Nat Immunol 2:389-400を参照のこと。Treg細胞の1つのタイプは、天然のCD4+CD25+Treg細胞であり、これは、CD4+T細胞前駆体から直接、胸腺でのポジティブセレクションの間に胸腺上皮細胞との中反応性相互作用の影響の下で生成される。これらの細胞は全末梢CD4+T細胞の5〜10%を占めると報告されている。誕生の3日後までに胸腺を摘出されたマウスにはこの細胞集団が欠如しており、種々の自己免疫疾患を特徴的に発症する。Suri-Payer E et al. (1998) J Immunol 160:1212-8。新鮮単離されたCD4+CD25+Treg細胞は、in vitroでの同種または多クローン性活性化に低応答性であることが報告されている。しかし、それらは共培養において従来のCD4+CD25−T細胞の増殖を抑制することが報告されており、この抑制は、CD4+CD25+Treg細胞がそのT細胞抗原受容体を通して活性化された場合にのみ起こる。天然のCD4+CD25+Treg細胞は、CD25−T細胞に対するその抑制効果を、少なくともin vitroで、溶解性の抑制サイトカインとは独立した、厳密に細胞接触依存性の様式で示すと報告されており、その機構はまだ完全には解明されていない。Jonuleit H et al. (2003) J Immunol 171:6323-7。
【0051】
Treg細胞の第2のタイプは、誘導されたCD4+Treg細胞である。これらのTreg細胞は、天然のCD4+CD25+Treg細胞とは対照的に、その抑制効果を、IL−10およびTGF−βを含む溶解性抑制サイトカインの分泌が関連する、細胞接触非依存性の様式で示す。これらの細胞は二次サプレッサーT細胞であり、胸腺ではなく末梢において発生する。誘導されたCD4+Treg細胞は少なくとも2種類のサブタイプを含むと考えられている:大量のIL−10を産生するが、僅かな量のTGF−βしか産生しないTr1細胞、およびほぼTGF−βのみを産生するTh3細胞である。Tr1細胞はまた文献において、1型制御性T細胞、およびIL−10産生Treg細胞とも呼ばれる。本発明の一部として、これらのTreg細胞は、CD4+CD25+Treg細胞とは異なって、ICOSを発現することおよびCD45RBloであることが見出された。これらのTreg細胞は、ナイーブT細胞から、抗原への繰り返しの暴露または抗原の刺激により誘導することができる。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42。代替的にIL−10分泌Treg細胞は、in vitroで、外因性の大量のIL−10と、未成熟の樹状細胞(DC)、または1,25(OH)2ビタミンD3とデキサメタゾンとの組合せを含むある種の免疫抑制剤との存在下で、T細胞を培養することにより生成された。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。これらin vitroの方法の各々は、望ましくない副作用および技術的な要請のため、in vivoで用いるには限られた価値しかない可能性がある。活性化されたTr1細胞の上清物は、樹状細胞のアロ抗原特異的増殖を導く能力を大きく減少させる。Groux H (2003) Transplantation 75:8S-12S。さらに、活性化されたヒトTr1細胞の上清物は、IL−10に依存する様式で、in vitroでのナイーブCD4+T細胞のTr1細胞への分化を促進することが報告されている。Roncarolo MG et al. (2001) Immunol Rev 182:68-79。
【0052】
インターロイキン10(IL−10)は、抗原提示およびマクロファージ活性化の反応を抑制する能力を介した抗炎症特性を有する、多面的サイトカインである。これはまた、B細胞活性化と自己抗体産生において役割を果たす。サイトカインのIL−10ファミリーは、IL−19、IL−20、MDA7およびIL−22を含む。初めに記したように、IL−10は、B細胞、ヘルパーT細胞、および単球/マクロファージ系細胞により産生される。Tan JC et al. (1993) J Biol Chem 268:21053-9。Akbari O et al. (2003) Nature Med 8:1024-32には、Th1細胞が分泌するIFN−γはTh2細胞を調整し、Th2による気道の活動亢進および喘息の抑制に関連する可能性があることが示されている。しかし、IFN−γはまた、肺の炎症を悪化させることで疾患の重篤度に寄与する。驚くべきことには、マウスの呼吸器系統をアレルゲンに暴露した後、Treg細胞が発生して、一般にはTh2サイトカインと考えられる高レベルのIL−10を産生した。Treg細胞は、前もって感作されたマウスにおいて、アレルゲンが誘導した気道の活動亢進を抑制した。Akbari O et al. (2003) Nature Med 8:1024-32では、IL−10は当初はTh2応答の極性化(polarization)に関与するかも知れないが、免疫応答の後期には抑制的役割を果たして、Th2が駆動する炎症活性を弱める可能性があることが示唆されている。
【0053】
IL−10の産生は、試料中に存在するIL−10メッセンジャーRNAまたはIL−10ポリペプチドの量を定量化するのに適した任意の方法を用いて測定することができる。IL−10mRNAの量は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、好適なオリゴヌクレオチドプライマーおよび当業者によく知られた技術を用いて測定することができる。1つの態様において、細胞内で発現されたIL−10ポリペプチドの量は、フローサイトメトリー法を用いて測定することができる。フローサイトメトリーは、IL−10に特異的に結合し、随意的に蛍光タグを含む抗体の使用を含む。抗IL−10モノクローナル抗体は、商業的供給業者から入手可能である。他の態様において、細胞により発現されたIL−10ポリペプチドの量は、酵素免疫蛍光測定法(ELISA)を用いて評価することができ、これのための試薬およびキットは商業的供給業者から入手可能である。さらに他の態様において、細胞により発現されたIL−10ポリペプチドの量は、IL−10とその受容体との相互作用に直接的または間接的に基づく生物学的検定法を用いて評価することができる。生物学的検定法はin vivo検定法またはin vitro検定法のどちらでもよい。
【0054】
1つの側面において、本発明はまた、CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)の発現を誘導する方法も提供する。本発明のこの側面による方法は以下を含む:CD4+細胞を有効量の単離ポリマーに接触させて、CD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である;および、CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合は、CD4+細胞でのICOSの発現は増加している。
【0055】
ICOSは、T細胞で発現されるCD28に関連する、最近記述された誘導性副刺激分子である。Hutloff A et al. (1999) Nature 397:263-6。ICOSの同種リガンドであるICOSLは、抗原提示細胞(APC)の表面で発現する。ICOS−ICOSL相互作用は、T細胞によるIL−10分泌を誘導する。Sharpe AH et al. (2002) Nat Rev Immunol 2:116-26。ヒトICOSのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は知られており、GenBankからそれぞれアクセッション番号NM_012092およびAJ277832;NP_036224およびCAC06612により公的に利用可能である。
【0056】
ICOSの発現は、試料中に存在するICOSメッセンジャーRNAまたはICOSポリペプチドの量を定量化するのに適した任意の方法を用いて測定することができる。mRNAの量は、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、好適なオリゴヌクレオチドプライマーおよび当業者によく知られた技術を用いて測定することができる。1つの態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、フローサイトメトリー法を用いて測定することができる。他の態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、蛍光顕微鏡法により評価することができる。フローサイトメトリーと蛍光顕微鏡法は共に、ICOSに特異的に結合し、随意的に蛍光タグを含む抗体の使用を含む。抗ICOSモノクローナル抗体は商業的供給業者から入手可能である。他の態様において、細胞により発現されたICOSポリペプチドの量は、ICOS−ICOSL相互作用に直接的または間接的に基づく生物学的検定法を用いて評価することができる。生物学的検定法はin vitro検定法またはin vivo検定法のどちらでもよい。かかる検定法の例は以下の例の節に示される。
【0057】
1つの側面において本発明は、制御性T細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、ナイーブT細胞集団を単離すること、および、前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。本明細書において、T細胞集団を単離することは、一般に、全血、脾臓、またはリンパ球の他の任意の源から、単離された細胞集団の少なくとも80%がT細胞であるようにT細胞集団を単離することを指す。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも90%を占める。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも95%を占める。1つの態様において、T細胞は、単離された細胞集団の少なくとも98%を占める。血液細胞または脾細胞の混合群からT細胞を単離する方法は当分野に知られており、例えば、ナイロンウール上でのポジティブまたはネガティブセレクションと組み合わせた細胞分類および密度勾配遠心分離法を含む。本発明のこの側面による方法は、随意的に、接触のステップの後に、得られたTreg細胞を他の細胞から分離するステップを含むことができる。本発明の他の側面におけるのと同様に、本発明のこの側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される両性イオンポリマーの任意の1つまたは組合せであってよい。
【0058】
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、例えば細胞を両性イオンポリマーと接触させる際に連続的に、ナイーブT細胞集団を抗原と接触させることを伴う。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、Treg細胞の増殖を支援または促進するのに効果的な外部から供給されるサイトカインと接触させることを伴う。1つの態様において、方法はさらに、ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるIL−2、IL−15、またはIL−2とIL−15の組合せと接触させることを伴う。これらのサイトカインは、種々の商業的供給業者より、精製された組み換えタンパク質として得ることができる。それらは、Fc融合タンパク質または他の安定化形態、例えば、全て当分野に知られている、PEG化(PEGylated)IL−2またはIL−15として供給されることができる。
【0059】
本発明のこの側面による1つの態様において、ナイーブT細胞集団を単離するステップは、天然のCD4+CD25+Treg細胞を本質的に含まないナイーブT細胞集団を単離することを含む。これは、ポジティブまたはネガティブセレクションを通して、例えば、標準の蛍光活性化細胞分類(FACS)法を用いて、CD4もしくはCD25でのゲーティング、またはCD4およびCD25で被覆した磁気ビーズを用いて、行うことができる。従ってこの態様による方法は、IL−10産生CD4+Treg細胞集団を、CD4+CD25+Treg細胞との接触なしに誘導することを伴う。この態様による方法は、誘導されたCD4+Treg細胞集団を、かかる細胞の誘導のための方法において有用であると前に記載された剤の影響なしに、誘導することを伴うことができ、ここでかかる剤とはすなわち、大量の外因性のIL−10を、未成熟の樹状細胞(DC)と、または1,25(OH)2ビタミンD3およびデキサメタゾンの組合せを含むある種の免疫抑制剤と共に用いるものである。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。
代替的な方法においては、ナイーブT細胞を含む一般の細胞集団を本明細書に記載の有効量の単離ポリマーと接触させて制御性T細胞の増殖を誘導し、次に、増殖した制御性T細胞を一般の細胞集団から単離する。
【0060】
1つの側面において本発明は、制御性T細胞の増殖を誘導する方法を提供する。本発明のこの側面による方法は、制御性T細胞集団を単離すること、および、前記制御性T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。本発明のこの側面による方法は、随意的に、接触のステップの後に、得られたTreg細胞を他の細胞から分離するステップを含むことができる。本発明の他の側面におけるのと同様に、本発明のこの側面により有用なポリマーは、以下にさらに詳細に記述される両性イオンポリマーの任意の1つまたは組合せであってよい。
【0061】
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、例えば細胞を両性イオンポリマーと接触させる際に連続的に、制御性T細胞集団を抗原と接触させることを伴う。
本発明のこの側面による1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、Treg細胞の増殖を支援または促進するのに効果的な、外部から供給されるサイトカインと接触させることを伴う。1つの態様において、方法はさらに、制御性T細胞集団を、外部から供給されるIL−2、IL−15、またはIL−2とIL−15の組合せと接触させることを伴う。これらのサイトカインまたはそれらの対応するFc融合タンパク質もしくは他の安定化形態は、上記のようにして製剤化され利用可能である。
【0062】
本発明のこの側面による1つの態様において、制御性T細胞集団を単離するステップは、天然のCD4+CD25+Treg細胞を本質的に含まない制御性T細胞集団を単離することを含む。従ってこの態様による方法は、IL−10産生CD4+Treg細胞集団を、CD4+CD25+Treg細胞との接触なしに誘導することを伴う。この態様による方法はまた、誘導されたCD4+Treg細胞集団を、かかる細胞の誘導のための方法において有用であると前に記載された剤の影響なしに、誘導することを伴うことができ、ここでかかる剤とはすなわち、大量の外因性のIL−10を、未成熟の樹状細胞(DC)と、または1,25(OH)2ビタミンD3およびデキサメタゾンの組合せを含むある種の免疫抑制剤と共に用いるものである。Groux H et al. (1997) Nature 389:737-42;Jonuleit H et al. (2001) J Exp Med 193:1285-94;Barrat FJ et al. (2002) J Exp Med 195:603-16。
代替的な方法においては、制御性T細胞を含む一般の細胞集団を本明細書に記載の有効量の単離ポリマーと接触させて制御性T細胞の増殖を誘導し、次に、増殖した制御性T細胞を一般の細胞集団から単離する。
【0063】
本発明の方法により誘導された、Treg細胞の拡大された集団は、免疫応答の抑制の必要がある対象に投与することができる。例えば、本発明の方法により誘導された、Treg細胞の拡大された集団(一般には処置すべき対象に由来する)は、本明細書に記載のように、アレルギー状態を有する対象または喘息を有する対象に投与することができ、アレルギー状態または喘息を処置することができる。アレルギー状態またはアレルギー反応を有する対象の場合、Treg細胞の投与は、対象におけるアレルギー状態またはアレルギー反応に関連するアレルゲンに対象を暴露するのに先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行われる。対象をアレルゲンに暴露することは、受動的、例えば、アレルゲンとの偶然の環境的接触であってよく、または能動的、例えばアレルゲンを対象に対して意図的に投与することを介してもよく、これは例えば注入またはエアロゾル投与による。喘息を有する対象の場合、投与は、急性の喘息の憎悪に先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行うことができる。さらに、アレルギー性喘息を有する対象の場合、Treg細胞の投与は、対象を、対象におけるアレルギー性喘息と関連するアレルゲンに暴露するのに先立って、それと本質的に同時に、またはその後に行うことができる。アレルゲンへの暴露は、上述のように受動的または能動的であってよい。
【0064】
本明細書において、免疫応答の抑制が必要な対象とは、以下から選択された状態または疾患を有する対象を含むが、これに限定されない:膿瘍、術後癒着、敗血症、関節リューマチ、重症筋無力症、炎症性腸疾患、結腸炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、冠動脈疾患、糖尿病、肝線維症、乾癬、湿疹、急性呼吸急迫症候群、急性炎症性膵臓炎、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法誘発膵臓炎、火傷、冠状動脈および大脳動脈および抹消動脈のアテローム発生、虫垂炎、胆嚢炎、憩室炎、内蔵線維症、創傷治癒、皮膚瘢痕形成疾患(skin scarring disorder)、肉芽種性疾患、喘息、壊疽性膿皮症、スイート症候群(Sweet’s syndrome)、ベーチェット症候群、原発性硬化性胆管炎、および細胞、組織または器官の移植。
【0065】
1つの態様において、ナイーブT細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、これで得られる未分類の細胞集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。他の態様において、ナイーブT細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、これで得られるTreg細胞を処置細胞から分離し、そして次に、単離したTreg細胞集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。
【0066】
1つの態様に置いて、Treg細胞を免疫応答を抑制することが必要な対象から単離し、本明細書に記載の有効量のポリマーと接触させてTreg細胞の増殖を誘導し、そして次に、これで得られるTreg細胞の拡大集団の有効量を前記対象に投与して、前記対象における免疫応答を抑制する。
1つの態様において、ポリマーは、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである。
一般にT細胞の増殖は、試料中に存在するT細胞の数を定量化するのに好適な任意の方法を用いて測定することができる。必要に応じてT細胞は単離することができ、T細胞の数は、例えば、3[H]チミジン取り込み反応の測定、フローサイトメトリー、および当業者によく知られた任意の技法により測定することができる。これらの方法は、Treg細胞の増殖を測定する目的のために適合可能である。例えば本明細書で開示されているように、Treg細胞はCD4+、ICOS+、CD45RBloであり、細胞内IL−10染色陽性である。
【0067】
1つの側面において本発明は、対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法を提供し、ここで抗原特異的応答は、アレルギー状態または喘息以外のものである。本発明のこの側面による方法は、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および(b)有効量のポリマーを投与して前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するステップを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
【0068】
種々の態様において、抗原の投与は、ポリマーの投与の前に、後に、または同時に行うことができる。さらに、抗原投与の部位およびポリマー投与の部位は、同じでも異なっていてもよい。さらにまた、抗原投与の様式およびポリマー投与の様式は、同じでも異なっていてもよい。
本発明の特性として、ポリマーは、この場合は抗原の投与と共に、抗原に対する対象の免疫応答を抑制するために、繰り返しおよび/または長期投与することができる。以下に記載するように、繰り返しまたは長期投与は、何日も、何週間も、何ヶ月も、または何年間にも渡って実施することができる。1つの態様において、ポリマーは定期的に繰り返して、例えば毎日または毎週、投与される。1つの態様において、ポリマーは、症状に応じて繰り返し投与される。
【0069】
1つの態様において、抗原は、ポリマーとの抱合体として存在する。本明細書において、抱合体は、異なる組成物が物理的または化学的に直接または間接に互いに結合している、2種または3種以上の異なる組成物の任意の組合せを指す。1つの態様に置いて、異なる組成物、例えば抗原およびポリマーは、共有結合によって化学的に結合している。結合が間接的である場合は、その間に挿入されたリンカー部分、または2つの異なる組成物を結合する他のものが存在することができる。多糖類とペプチド(またはポリペプチド)の間の共有結合を作る方法は当分野によく知られており、ペプチドとペプチドを共有結合する方法と同様である。
【0070】
本発明のこの側面による1つの態様において、対象は、ポリマーによる処置を必要とする以外の適応は認められない。この態様において、対象は、以下を有さない:感染症、手術、トラウマ、または膿瘍もしくは手術による癒着形成に関連する他の疾患またはリスク因子;Th1細胞応答性疾患(インスリン依存型糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、炎症性腸疾患、同種移植の拒絶反応);特定抗原に対する不適当なIgG抗体反応を特徴とする疾患(急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、関節リューマチを含む自己免疫性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE;狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、およびある種の形態の甲状腺炎)。
【0071】
1つの側面において、本発明は、新規な組成物を提供する。本発明のこの側面による組成物は抗原とポリマーの抱合体を含み、ここで該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。抱合体組成物中の抗原とポリマーは、物理的または化学的に、直接または間接に関連する。1つの態様において、抗原とポリマーは、共有結合を介して化学的に関連する。1つの態様において、抗原とポリマーは、2つを結合するリンカー部分を介して化学的に関連する。1つの態様において、抗原およびポリマーは、リポソームまたは他の類似の送達ビヒクルと一緒にまたはその内部で、物理的に関連している。
一般に抗原は、T細胞抗原受容体、抗体、またはB細胞抗原受容体により特異的に結合できる任意の物質である。抗原性物質は、ペプチド、タンパク質、炭化水素、脂質、リン脂質、核酸、自能性薬物およびホルモンを含むが、これらに限定されない。抗原性物質はさらに特に、アレルゲン、癌抗原、および微生物抗原と分類される抗原を含む。抗原はまた、自己抗原も含む。
【0072】
抗原は、細菌、ウィルス、真菌または寄生虫を含む、感染性微生物剤あるか、これらに由来する抗原であってよい。感染性細菌の例は以下を含む:ヘリコバクターピロリ菌、ライム病ボレリア、レジュネラ・ニューモフィラ菌、マイコバクテリア(例えば、結核菌、鳥型結核菌、M. intracellulare、M. Kansasii、およびM. gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、化膿連鎖球菌(A型連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B型連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、大便連鎖球菌、Streptococcus bovis、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター菌、腸球菌、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム、豚丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、Enterobacter aerogenes、肺炎杆菌、Pasturella multocida、バクテロイデス種、Eusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ、およびイスラエル放線菌。
【0073】
感染性ウィルスの例は以下を含む:レトロウィルス科(ヒト免疫不全ウィルス(HIV)を含むが、これに限定されない);ピコルナウィルス科(例えば、ポリオウィルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウィルス、ヒトコクサッキーウィルス、ライノウィルス、エコーウィルス);Calciviridae(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウィルス科(例えば、ウマ脳炎ウィルス、風疹ウィルス);フラビウィルス科(例えば、デング熱ウィルス、脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス);コロナウィルス科(例えば、コロナウィルス);ラブドウィルス科(例えば、水泡性口内炎ウィルス、狂犬病ウィルス);フィロウィルス科(例えば、エボラウィルス);パラミクソウィルス科(例えば、パラインフルエンザウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、麻疹ウィルス、呼吸器合胞体ウィルス);オルソミクソウィルス科(例えば、インフルエンザウィルス);ブニアウィルス科(例えば、ハンタウィルス、ブニアウィルス、フレボウィルス、およびナイロウィルス);アレナウィルス科(出血熱ウィルス);レオウィルス科(例えば、レオウィルス、オルビウィルスおよびロタウィルス);ビルナウィルス科;ヘパドナウィルス科(B型肝炎ウィルス);パルボウィルス科(パルボウィルス);パポバウィルス科(パピローマウィルス、ポリオーマウィルス);アデノウィルス科(殆どのアデノウィルス);ヘルペスウィルス科(1型単純ヘルペスウィルス(HSV)およびHSV−2、水痘ウィルス、、サイトメガロウィルス(CMV)、ヘルペスウィルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウィルス、ポックスウィルス);およびイリドウィルス科(例えばアフリカブタ熱ウィルス);および未分類のウィルス(例えば、海綿状脳症の病因菌、デルタ肝炎の菌(B型肝炎ウィルスの欠陥付随体と考えられる)、非A非B型肝炎の菌(クラス1=内部的に伝達;クラス2=非経口的に伝達(すなわち、C型肝炎);ノーウォークおよび関連ウィルス、およびアストロウィルス)。
【0074】
感染性真菌の例は、これらに限定されないが以下を含む:クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミティス、ブラストミセス・デルマチチジス、クラミジア・トラコマチス、およびカンジダ・アルビカンス。
抗原は、癌抗原であってよい。本明細書において癌抗原は、腫瘍または癌細胞表面に関連し、抗原提示細胞の表面で発現された場合に、主要な組織適合性複合体(MHC)分子との関連で免疫応答を誘発することができる、ペプチドまたはタンパク質などの化合物である。癌抗原は癌細胞から、癌細胞の粗抽出物を調製することにより、例えばCohen PA et al. (1994) Cancer Res 54:1055-8に記載のようにして、抗原を部分的に精製することにより、組み換え技術により、または既知の抗原のデノボ合成により、調製することができる。癌抗原は、遺伝子組み換え的に発現される抗原、それらの免疫原性部分、または腫瘍全体または癌細胞を含むが、これらに限定はされない。かかる抗原は、組み換えにより、または当分野に知られている任意の他の方法により、単離するかまたは調製することができる。
【0075】
癌抗原は、明らかに腫瘍特異的な免疫応答を潜在的に促進することができる抗原である。これら抗原のいくつかは正常細胞によりコーディングされるが、必ずしも発現されるわけではない。これらの抗原は、正常細胞において通常はサイレント(すなわち発現されない)であり、分化のあるステージにおいてのみ発現されるもの、胚抗原または胎児性抗原などの一時的に発現されるものとして特徴づけられる。他の癌抗原は、オンコ遺伝子(例えば活性化rasオンコ遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば突然変異体p53)、内部欠損または染色体転座による融合タンパク質などの、突然変異細胞遺伝子によってコーディングされる。さらに他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウィルスのウィルス遺伝子によってコーディングされ得る。腫瘍抗原の例は以下を含む:MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシン・デアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、直腸結腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児抗原(CEA)およびその免疫抗原性のエピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫抗原性のエピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE,LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、腺腫様結腸(または大腸)ポリープ症タンパク質(APC)、ホドリン(fodrin)、コネクシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウィルスタンパク質などのウィルス性産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBVコーディング核抗原(EBNA)−1、脳グリコゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、およびc−erbB−2。
【0076】
癌または腫瘍およびかかる腫瘍に関連する腫瘍抗原は(限定するものではないが)以下を含む:急性リンパ球性白血病(etv6;amal1;シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig−イディオタイプ)、神経膠腫(E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、γ−カテニン、p120ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆道癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、子宮頚癌(p53;p21ras)、結腸癌(p21ras;HER2/neu;c−erbB−2;MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733;APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu;c−erbB−2;ga733グリコプロテイン)、肝細胞癌(α−フェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(lmp−1;EBNA−1)、肺癌(CEA;MAGE−3;NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p15タンパク質、gp75、癌胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド)、骨髄腫(MUCファミリー;p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu;c−erbB−2)、鼻咽頭癌(lmp−1;EBNA−1)、卵巣癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2)、前立腺癌(前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫抗原性エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3;前立腺特異的膜抗原(PSMA);HER2/neu;c−erbB−2)、膵癌(p21ras;MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2;ga733グリコプロテイン)、腎臓癌(HER2/neu;c−erbB−2)、頚部および食道の扁平上皮癌(ヒトパピローマウィルスタンパク質などのウィルス性産物)、睾丸(精巣)癌(NY−ESO−1)、T細胞白血病(HTLV−1エピトープ)、およびメラノーマ(メラン−A/MART−1;cdc27;MAGE−3;p21ras;gp100Pmel117)。
【0077】
1つの側面において、本発明は医薬組成物を提供する。本発明のこの側面による医薬組成物は、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含むポリマーのエアロゾル製剤を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。
ある態様においては、医薬組成物は、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤を、エアロゾル製剤におけるポリマーに混合または抱合されてさらに含む。アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤は上に記載されている。
本明細書において「エアロゾル製剤」は、気道上皮に送達するのに好適な活性成分の液滴または粒子を含む、任意の好適な製剤を指す。液滴または粒子は、一般に直径2〜20μmの範囲である。エアロゾル製剤は一般に、治療的に有効な量のポリマーおよび薬学的に許容し得る担体、および随意的に噴霧剤を、容器またはエアロゾル送達システム内に含有する。この状況における治療量は、標的組織へのエアロゾルの送達に伴う一定の非効率性を考慮する。
【0078】
1つの側面において、本発明はエアロゾル送達システムを提供し、該エアロゾル送達システムは容器を含み、該容器は、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーを含み、ここで該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である。エアロゾル送達システムは、単一用量または複数用量を送達するように作製することができる。1つの態様において、吸入器は計量吸入器である。1つの態様において、吸入器は、乾燥粉末吸入器である。他の態様において、吸入器は、噴霧吸入器である。さらに他の態様において、吸入器は、鼻の上皮または他の呼吸器系上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである。1つの態様において、エアロゾル送達システムは、アレルギー状態または喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む。
【0079】
1つの態様において、エアロゾル送達システムは、規定形状の複数開口を有する開口板を振動させるように構成および配置された振動要素を含み、ここで該開口板の1つの側面または表面は、ポリマーの溶液または懸濁液と流体接続している。例えば、米国特許第5,758,637号、米国特許第5,938,117号、米国特許第6,014,970号、米国特許第6,085,740号、米国特許第6,205,999号を参照のこと:これらの内容全体は参照として組み込まれる。開口板を振動させるための振動要素の起動により、溶液または懸濁液のポリマーを含む液体が複数開口部から引き出されて、規定範囲の液滴(すなわち粒子)サイズを有する低速エアロゾルが生成される。
このタイプのエアロゾル発生器の例は、Aerogen, Inc., Sunnyvale, Californiaから市販されている。
【0080】
他の態様において、エアロゾル送達システムは、溶液または懸濁液中のポリマーを含む加圧容器を含む。加圧容器は一般に絞り弁に接続された作動装置を有し、この作動装置の起動により、容器内の溶液または懸濁液中のポリマーの規定量が、エアロゾルの形態で容器から分配される。このタイプの加圧容器は、当分野では、噴霧剤駆動計量吸入器(pMDIまたは単にMDI)としてよく知られている。MDIは一般に、作動装置、絞り弁、および、微細化された薬剤の懸濁液もしくは溶液、液化噴霧剤および界面活性剤(例えばオレイン酸、三オレイン酸ソルビタン、レシチン)とを保持する加圧容器を含む。歴史的には、これらのMDIは一般に、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびジクロロテトラフルオロメタンを含むクロロフルオロカーボン(CFC)を噴霧剤として用いる。噴霧剤のみでは比較的弱い溶媒である場合には、エタノールなどの共溶媒が存在してもよい。より新しい噴霧剤としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを含むことができる。MDIの起動により、一般に、体積20〜100μLで50μg〜5mgの用量の活性剤が、速い速度(30m/秒)で100〜200ミリ秒間送達される。
【0081】
他の態様において、エアロゾル送達システムは、溶液または懸濁液中のポリマーを含む貯蔵容器と流体接続された、空気ジェット噴霧器または超音波噴霧器を含む。噴霧器(空気ジェットまたは超音波)は、第一に、歩行不能な患者の救急処置並びに幼児および小児において用いられる。噴霧化のための空気ジェット噴霧器は、小型の圧縮空気ポンプが利用可能であるために携行可能であると考えられているが、これは比較的大型で不便なシステムである。超音波噴霧器は、一般に圧縮空気源が不要であるため、携行がより容易であるという利点を有する。噴霧器は非常に小さい液滴および高い質量出力を提供する。噴霧化によって投与される用量は、MDIにおける用量より非常に大きく、液体貯蔵容器のサイズが制限されるために、短い一期間の治療となる。
【0082】
空気ジェット噴霧器からエアロゾルを生成するために、圧縮空気がオリフィスを通り毛管の開口端上に強制的に通されて、低圧力の領域を作り出す。液体製剤が管を通って引き出されて空気ジェットと混合され、液滴を形成する。噴霧器内のバッフルが大きい液滴を除去する。気流中の液滴のサイズは、圧縮空気の圧力に影響される。市場で入手可能な種々の空気ジェット噴霧器は同じようには機能しない。このことは、液滴サイズ、噴霧器からの総出力、および患者の決定因子に依存する、噴霧化されたエアロゾルの臨床的有効性に影響を及ぼす。
【0083】
超音波噴霧器は、刺激を与えられると機械的に振動するセラミック圧電性結晶によって液体チャンバー内に集中される、高周波超音波(すなわち、100kHz以上)を用いてエアロゾルを発生させる。Dennis JH et al. (1992) J Med Eng Tech 16:63-68; O’Doherty MJ et al. (1992) Am Rev Respir Dis 146:383-88。ある場合には、インペラーが噴霧器から粒子を噴出させるか、またはエアロゾルは患者によって直接吸入される。超音波噴霧器は、空気ジェット噴霧器より高い出力能力があり、このためにエアロゾル薬剤療法において頻繁に用いられている。超音波噴霧器を用いて形成される液滴は周波数に依存し、空気ジェット噴霧器により送達されるものより粗い(すなわち、NMADが高い)。液体に導入されるエネルギーは温度の上昇を引き起こすことができ、これは気化を引き起こし、時間と共に濃度の変化をもたらす。この時間による濃度変化はジェット噴霧器でも見られるが、これは蒸発による水分の損失のためである。
【0084】
噴霧器における溶液または懸濁液製剤の選択は、MDIに対するのと同様である。選択された製剤は、総質量出力および粒子サイズに影響する。噴霧器製剤は一般に、水と共溶媒(エタノール、グルセリン、プロピレングリコール)、および溶解性と安定性の改善のために添加される界面活性剤とを含む。通常、浸透物質を添加して、低浸透圧または高浸透圧溶液による気管支収縮を予防する。Witeck TJ et al. (1984) Chest 86:592-94;Desager KN et al. (1990) Agents Actions 31:225-28。
【0085】
さらに他の態様において、エアロゾル送達システムは、粉末形態のポリマーを含む貯蔵容器と流体接続している乾燥粉末吸入器を含む。乾燥粉末吸入デバイスは、MDI製品におけるクロロフルオロカーボン(フロンガス)の国際的な規制への対応として、一定の適用に対しては最終的にMDIの代替となるであろう。とりわけ、このデバイスは、呼吸に適するサイズ範囲のその負荷の一部のみを送達することができる。粉末吸入器は通常、含んでいる薬剤の約10〜20%のみを、呼吸に適する粒子として散布する。代表的な乾燥粉末吸入デバイスは2つの要素からなる:粉末製剤の単位用量を吸い込まれた空気流へと散布する吸入器具、およびこれらの用量を分配するための粉末製剤の貯蔵容器。貯蔵容器は一般に、2種類の異なるタイプを用いることができる。バルク貯蔵容器は、約200用量までの個別の用量の送達に対して、正確な量の粉末を分配することを可能とする。単位用量貯蔵容器は、必要に応じて吸入用の個別用量(例えば、ブリスター・パッケージまたはゼラチンカプセル形態で提供される)を供給する。携帯用デバイスは、カプセル/ブリスター・パッケージを破って開けるか、または原粉末を負荷するように操作され、次に患者の吸気で散布が行われるようにデザインされる。空気流は、粉末を分解しエアロゾル化する。多くの場合、患者の吸気による空気流はデバイスを始動させ、乾燥粉末を分散させ分解するエネルギーを供給し、肺に到達する医薬の量を決定する。
【0086】
乾燥粉末発生器は、粉末の物理的および化学的特性により様々である。これら吸入器は、200μg〜20mgの範囲の用量を計量するよう設計される。これらのデバイスにおける薬剤粉末の調製は非常に重要である。これら吸入器の粉末には、MDIの懸濁液にも要求される効率的なサイズの減少が必要である。微細化された粒子は流動して、粗い粒子よりも不均一に分散される。従って、微細化された薬剤粉末は、不活性担体と混合することができる。この担体は通常α−ラクトース一水和物であり、なぜならばラクトースには、種々の粒子サイズがあり特性化されているからである。Byron PR et al. (1990) Pharm Res 7 (suppl):S81。担体粒子は治療剤より大きな粒子サイズを有しており、賦形剤が気道に入るのを防ぐ。患者がマウスピースから吸入した際に乱気流が生成されると、2つの粒子の分離が起こる。この吸気の乱気流は一定量のエネルギーを供給して、粒子間の結合力および粒子表面の接着力に打ちつ勝って微細化粒子を空中に浮遊させる。空気中での薬剤粒子の高い濃度は乾燥粉末の発生によって容易に実現できるが、出力の安定性および凝集し荷電した粒子の存在は共通の問題である。非常に小さな粒子では、それらの結合のエネルギーを増加させる静電気力、ファンデルワールス力、毛管力、および機械的力のために、散布は困難である。
本発明と共に用いるのに好適な乾燥粉末吸入器エアロゾル発生器の例は、Fisons Corp., Bedford, MassachusettsからのSpinhaler粉末吸入器である。
【0087】
本発明において有用なポリマー
本発明において有用な両性イオンポリマーの一部は、両者ともにTzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号、および公開された国際特許出願WO 00/59515およびWO 03/075953に記載されており、これらの内容の全体は本明細書に参照として組み込まれる。簡単に述べると、これらは、特定の電荷モチーフを包含することを特徴とする多糖類、ペプチドおよび合成ペプチドグリカンを包含する。必要なモチーフは本来、多糖類の繰り返し単位上の正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および負に荷電した部分を含み、例えば、B. fragilisの莢膜多糖類A(PSA)に特有のものであることが確認された。この同じ電荷モチーフは次に、ペプチドポリマーとの関連で作用することが示された。
【0088】
本明細書において「ポリマー」は、リンケージによって共に結合されている個別の単位の直線状の主鎖を有する化合物である。用語「主鎖」は、ポリマー化学の分野における通常の意味を与えられる。ポリマーは、必要な電荷モチーフを有する限り、主鎖の組成において同種または異種であってよい。ある態様においては、ポリマーは当分野で従来知られているポリマーとは異なることができ、これは、本発明のポリマーが、主鎖に組み込まれた非ポリマー化合物を有することができるからである。例えば、本発明のポリマーは、2組のアミノ酸を結合する有機リンカーを含む領域以外は、完全にアミノ酸によって組成されてよい。1つの態様において、ポリマーは主鎖の組成において同種であり、例えば、ペプチド、多糖類、および核酸を含む。本明細書において「ペプチド」は、結合したアミノ酸のポリマーである。本明細書において「オリドペプチド」は、2個〜約50個のアミノ酸のペプチドポリマーである。従ってペプチドは一般に、ポリペプチドおよびオリゴペプチドの両方を指す。本明細書において「多糖類」は、結合した糖類のポリマーである。本明細書において「核酸」は、結合したヌクレオチドのポリマー、例えばデオキシリボ核酸またはリボ核酸である。
【0089】
ポリマーは電荷モチーフの繰り返し単位で構成することができる。例えば、ポリマー全体を電荷モチーフの繰り返しで構成することができる。本明細書で「単位」は、当分野で知られている意味のポリマーの基礎単位を指すものとして、一環一貫して用いられる。各単位は、1つまたは複数(すなわち1組)のサブユニットを含むことができ、ここでサブユニットは個別の部分、例えば糖類、アミノ酸、ヌクレトチド等である。繰り返し単位で構成されるポリマーは、該ポリマー内で少なくとも2回生じているところの単位によって全体が構成されるものである。ポリマーの繰り返し単位は、同一または非同一の繰り返し単位であってよい。本明細書において「同一の繰り返し単位」は、全てのサブユニットが同一の組成を有し、かつ他のサブユニットの組のサブユニットと同一の順序で位置されている、ポリマー内で繰り返されるサブニットの組である。本明細書において「非同一の繰り返し単位」は、全てのサブユニットが同一の組成を有してはいない、および/または他のサブユニットの組のサブユニットと同一の順序で位置されていない、ポリマー内で繰り返されるサブニットの組である。非同一の繰り返し単位のサブユニットの幾つかは、全てのサブユニットが同一でない限りにおいて、他の組のサブユニットと同一の順序および/または同一の位置を有することができる。この発明の文脈において用いられる場合、非同一の繰り返し単位を有するポリマーとは、全てが非同一の繰り返し単位を有することができるもの、または同一と非同一の繰り返し単位の組合せを有することができるものである。
【0090】
ポリマーは、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを含む。本明細書において「繰り返し電荷モチーフ」は、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および、負に荷電したアミノ部分から構成されるモチーフである。モチーフは、二重に荷電した単一のサブユニット、または複数のサブユニットであって、1つのサブユニットが正に荷電した有離アミノ遊離アミノ基を有し、第2のサブユニットが負の電荷を有するものから構成されることができる。異なるサブユニットに電荷が存在する場合、サブユニットは互いに隣接してもよく、または介在サブユニットによって分離されてもよい。1つの態様において、介在サブユニットは中性サブユニットである。中性サブユニットは、正の電荷または負の電荷を有さないサブユニットである。モチーフの荷電されたサブユニットは、任意の数のサブユニットにより分離することができるが、10個未満の中性サブユニットによるのが好ましい。繰り返し電荷モチーフは、ポリマー内で任意の配置で存在することができる。例えば、中性サブユニットにより分離された2個の繰り返し電荷モチーフを有するポリマーにおいて、ポリマーは以下の順序を有することができる:正の電荷、負の電荷、中性サブユニット、負の電荷、そして最後に正の電荷。代替的に、ポリマーは以下の順序でもよい:正の電荷、負の電荷、中性サブユニット、正の電荷、そして最後に負の電荷、等。
【0091】
本明細書において、「正に荷電された遊離のアミノ部分(positively charged free amino moiety)」は1級アミンを指す。本明細書において、「負に荷電された部分」は任意の負に荷電された基を指し、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩を含むが、これらに限定されない。1つの態様において、負に荷電された部分はカルボキシル基である。遊離のアミノ基を有する正に荷電されたアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、アルパラギン(N)、およびヒスチジン(H)を含むが、これに限定されない。負に荷電されたアミノ酸は、アルパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)を含むが、これに限定されない。
ポリマーは少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを有するが、一般には2より多い任意の数を有することができる。ポリマー全体は、例えば、繰り返し電荷モチーフから構成されることができる。代替的に、ポリマーは、2と、ポリマー全体が構成される繰り返し電荷モチーフの数(これは当然、ポリマーのサイズに依存する)の間の任意数の繰り返し電荷モチーフから構成することができる。ポリマーは例えば、少なくとも10、15、20、25、30、35個等の繰り返し電荷モチーフを有することができる。
【0092】
繰り返し電荷モチーフの間の領域は、繰り返し電荷モチーフ、他の単位、またはこれらの混合により構成することができる。この領域は例えば、中性の介在配列であってよい。介在配列は、ポリマーの他の単位と同じタイプの単位であってもよく、または完全に異なっていてもよい。例えば非ポリマーの有機部分であってもよい。
1つの態様において、ポリマーは最大10個の糖類の繰り返し単位から形成される多糖類であることができ、ここで各繰り返し単位は、少なくとも1個の遊離アミノ部分および、カルボキシル、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分を含む。随意的に、ポリマーには、B. fragilis莢膜多糖類複合体の一部としての複合体形成がない。ある態様において、多糖類は最大5個の糖類の繰り返し単位から形成される。かかる多糖類は天然に存在し、単離することができる。かかる多糖類の1つは、B. fragilis莢膜多糖類複合体の莢膜多糖類A(PSA)である。天然のPSAは複合体の形態でのみ存在し、B. fragilis莢膜多糖類B(PSB)に固く結合されている。単離されたPSAまたは単離されたPSBと異なり、A:B莢膜多糖類複合体は、他の細菌による感染に対する交差防御を引き起こさないことが以前に見出された。従って、1つの態様において、本発明は、B. fragilis莢膜多糖類複合体の一部としての複合体形成のない、単離されたPSAの投与を意図する。
【0093】
本発明による有用な多糖類はまた、必要なモチーフを有していない天然の多糖類から合成することもできる。例えば、ある天然に存在する多糖類は、各繰り返し単位に、負に荷電された基および少なくとも1個のN−アセチル部分を有する。かかる多糖類は脱N−アセチル化してN−アセチル部分を遊離アミノ部分に変換でき、それによって、本発明に従って使用するために必要な構造モチーフを作り出すことができる。他の天然に存在する多糖類は、還元によって遊離アミノ部分を形成するイミン基を含み、それにより、負に荷電した基と一緒に、本発明の有用性に必要な構造モチーフを作りだしている。
従って本発明は、各単位が、カルボキシル、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの負に荷電した部分を有している、最大10個の糖類の繰り返し単位を有する多糖類を選択することによる、医薬の製造方法を意図する。各繰り返し単位はまた、遊離アミノ部分を形成するように改変できる部分も含む。かかる改変された多糖類は、次に薬学的に許容し得る担体と混合して、好ましくは、対象をアレルギー状態または喘息から防御するための有効用量を形成する量にする。
【0094】
本発明による有用な多糖類は、必要な荷電された基を含む天然の多糖類を含む。これらの多糖類は、細菌由来であってよい。莢膜多糖類を得るための出発原料として用いられる細菌は、多数の源から市場で入手可能である。例えば、B. fragilis、NCTC9343およびATCC23745は、National Collection of Type Cultures (London, England)およびAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手可能である。多糖類Aおよび多糖類Bは、上記の細菌から、Pantosti A et al. (1991) Infect Immun 59:2075-82のプロトコルに基づき、以下の例の節に記載するように少し修正を加えて精製することができる。
天然の多糖類に加えて、少なくとも1つのN−アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸(負に荷電したカルボキシル基を有する糖)からなる多糖類繰り返し単位は、本発明の免疫応答を生成するように改変することができる。少なくとも1つのN−アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸を含む多糖類繰り返し単位は、脱N−アセチル化して遊離のアミノ基を生成することができ、従って、正しい電荷モチーフの多糖類を生み出す。脱N−アセチル化可能な分子には、チフス菌莢膜多糖類(Vi抗原)、大腸菌K5莢膜多糖類、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖類、B群連鎖球菌III型莢膜多糖類、およびRhizobium melilotiエキソポリサッカライドIIを含む。
【0095】
遊離のカルボキシル基に加えてイミン基を有する細菌性多糖類は、本発明の免疫応答を生成させるために改変して用いることができる。多くの緑膿菌のO特異的側鎖はイミン基を有する。イミン部分を含むこれらの多糖類に対して、遊離アミノ基を、当業者に知られた従来の化学技法により形成することができる。1つの好適な方法は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の使用を含む。イミン基は水素化ホウ素ナトリウムで還元して遊離アミノ基(NH3+)を生成することができる。これは、5mgより多い水素化ホウ素を、室温で2時間攪拌しながら蒸留水中に溶解した多糖類に添加して実施する。混合物は次に水に対して透析し、凍結乾燥させる。水素化ホウ素ナトリウムで還元して遊離アミノ基を生成できる化合物の例は、緑膿菌フィッシャー7(Fischer7)である。
本発明において有用な多糖類は、1種以上の多糖類の混合物として送達することができる。混合物は、数種類の多糖類からなることができる。
【0096】
上記のように、天然の多糖類を改変して本発明で有用な免疫調節剤を生成することができる。チフス菌は、ガラクトサミンウロン酸の繰り返しモノマーから全体が形成されている莢膜多糖類(Vi抗原)を有する。この酸は、カルボキシル部分およびN−アセチル部分を含む。N−アセチル部分は改変して遊離アミノ基を生成させ、各モノマー繰り返し単位が正および負に荷電された基の両方を有するようにすることができる。
複合体である多糖類が存在し、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。大腸菌K5莢膜多糖類は、グルクロン酸とグルコサミンが1−4結合で共に結合している複合体の繰り返し単位から形成される。グルクロン酸はカルボン酸部分を保持し、グルコサミンは遊離アミノ基を形成するよう改変可能なN−アセチル基を保持する。かかる改変が行われた場合、負に荷電した部分(第1糖上)および遊離アミノ基(第2糖上)の両方を有する複合体繰り返し単位が形成される。
【0097】
三量体である多糖類が存在し、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖類は、マンノサミンウロン酸−フコサミン(fucosamine)−フコサミンの三量体の繰り返し単位で形成される。マンノサミンウロン酸はカルボン酸部分を保持し、フコサミンは遊離アミノ基を形成するよう改変可能なN−アセチル部分を保持する。かかる改変が行われた場合、負に荷電した部分(第1糖上)および少なくとも1つの正に荷電した部分(第2糖および第3糖上)を有する三量体繰り返し単位が形成される。同様の様式で、緑膿菌O抗原は、本発明において有用な免疫調節剤を生成するよう改変することができる。例としては、カルボン酸部分および遊離アミノ基を形成するように改変可能なイミン部分を保持する三量体を含む。フィッシャー免疫型7、Lanyi-BerganO2a、O2bおよびLanyi-BerganO2dおよび2fは、第1糖および第2糖にカルボン酸部分を、そして第1糖にイミン部分を有する三量体繰り返し単位から形成される多糖類を有する。(第3糖は荷電部分を有さない;全ての糖はまた、N−アセチル部分も保持する)。例えば、第1糖は、遊離アミノ部分およびカルボン酸部分の両方を保持するよう改変することができる。同様に、N−アセチル基は、本発明に従って有用な異なる配置を生成するように改変可能である。
【0098】
四量体および五量体などの、より長い繰り返し単位を有する多糖類もまた、上記のようにして改変可能である。十量体までの繰り返し単位が、本発明に従って有用であると考えられる。さらに、側鎖糖を含む繰り返し単位もまた有用であり、遊離のアミノ部分および負に荷電した部分のどちらかまたは両方がかかる側鎖に位置するものを含む。さらに、荷電した部分を保持するかかる側鎖は糖である必要はないが、ただし1つの態様においては、繰り返し単位の少なくとも主鎖は糖のみからなっている。
ある態様において、繰り返し単位は3個までの遊離アミノ基を有し、1つの態様においては、2個までのかかる基を有する。1つの態様においては、各遊離アミノ基には少なくとも1つの負に荷電した基が存在する。
出発原料はさらに、細菌由来である必要はない。カルボン酸部分およびN−アセチル基またはイミン基を保持する任意の多糖類が、上記のようにして改変可能である。
【0099】
特定の例が化学名および構造式と共に、Tzianabos et al.に発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号に提供されている。
脱N−アセチル化は、当業者によく知られた従来の化学的技法により実施できる。1つの好適な方法は、水素化ホウ素ナトリウムと共に、またはこれなしで、アルカリを用いる方法を含む。多糖類20mgを、2MのNaOH(3ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(50mg)を添加する。溶液を5時間、100℃で熱する。酸による中和の後に、溶液を蒸留水に対して寒中で透析し、乾燥凍結する。DiFabio JL et al. (1989) Can J Chem 67:877-82。
【0100】
天然の多糖類もまた、改変なしで本発明の方法において、および本発明の医薬製剤の形成に、用いることができる。非限定的な例としては、ゾンネ赤痢菌I相リポ多糖類O抗原;肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖類(CPI);および、肺炎連鎖球菌群抗原C物質を含み、これらはTzianabos et al.に発行された米国特許第5,679,654号および第5,700,787号に記載されている。
糖主鎖のみを有さないが、本発明に従って有用であると考えられる多糖類は、クルーズトリパノソーマ・リポペプチドホスホグリカンである。
改変なしで用いることのできる天然の多糖類は改変して、遊離アミノ部分、負に荷電した部分または他の部分を含む種々の部分を選択的に付加、除去、または修飾することができる。例としては、存在するN−アセチル基またはイミン基を改変することにより遊離アミノ部分を加えること、またはアルコール基からヒドロキシメチル基を形成することが含まれる。
【0101】
本発明に従って有用な多糖類は、市場源から入手可能であり、または細菌、真菌、海草などの天然源から単離および抽出することができる。以下は、細菌性多糖類およびかかる多糖類の単離ならびに調製の詳細を記した参考文献のリストである:
前に単にPSAと呼んだBacteroides fragilisPSA1は、1個のカチオン性遊離アミンおよび1個のアニオン性カルボン酸塩を各繰り返し単位に含有する、四糖類繰り返し単位を有する。Tzianabos AO et al. (1992) J Biol Chem 267:18230-5;米国特許第5,679,654号および第5,700,787号。
Bacteroides fragilisPSA2は、マンノヘプトース、N−アセチルマンノサミン、3−アセトアミド−3,6−ジデオキシグルコース、2−アミノ−4−アセトアミド−2,4,6−トリデオキシガラクトース、フコース、および3−ヒドロキシブタン酸を含む四糖類繰り返し単位を有する。Wang Y et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:13478-83;Kalka-Moll WM et al. (2001) Infect Immun 69:2339-44。PSA2は両性イオン性であり、各繰り返し単位に1個のカチオン性遊離アミンおよび1個のアニオン性カルボン酸塩を含有する。
【0102】
Bacteroides fragilisPSBは六糖類繰り返し単位を有し、1個のカチオン性遊離アミンおよび2個の負の電荷を各繰り返し単位に含有する。Tzianabos AO et al. (1992) J Biol Chem 267:18230-5;米国特許第5,679,654号および第5,700,787号。
チフス菌莢膜(Vi抗原)、Szu SC et al. (1991) Infect Immun 59:4555-61。
大腸菌K5莢膜、Vann W et al. (1981) Eur J Biochem 116:359-64。
黄色ブドウ球菌5型莢膜、Fournier J-M et al. (1987) Ann Inst Pasteur Microbiol 138:561-7。
Rhizobium melilotiエキソポリサッカライドII、Glazebrook J et al. (1989) Cell 54:661-72。
B群連鎖球菌III型、Wessels MR et al. (1987) J Biol Chem 262:8262-7。
緑膿菌フィッシャー7O特異的側鎖、Knirel YA et al. (1987) Eur J Biochem 167:549-61。
ゾンネ赤痢菌O特異的側鎖、Kenne L et al. (1980) Carbohydr Res 78:119-26。
肺炎連鎖球菌I型莢膜、Lindberg B et al. (1980) Carbohydr Res 78:111。
肺炎連鎖球菌群抗原、Jennings HJ et al. (1980) Biochemistry 10:4712-9。
【0103】
他の態様において、ポリマーは、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフを有するペプチドであってよく、ここで繰り返し電荷モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分および負の電荷からなり、ここで、少なくとも2個の繰り返し電荷モチーフの正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分は、少なくとも8個のアミノ酸残基の距離により分離されている。1つの態様において、繰り返し電荷モチーフは、アミノ酸の繰り返しセットとして存在する。1つの特定の態様において、繰り返し電荷モチーフは、リジン(K)−アスパラギン酸(D)の繰り返し、すなわち、(K−D)nの繰り返しセットとして存在する。1つの態様において、繰り返し電荷モチーフは、リジン(K)−(Xaa)m−アスパラギン酸(D)の繰り返し、すなわち、[K−(Xaa)m−D]nの繰り返しセットとして存在し、ここでK、Xaa、D、mおよびnは上記定義の通りである。
本発明の実践において有用なのは、公開された国際特許出願WO 03/075953に記載されている合成ペプチドグリカンポリマー化合物15である。化合物15の調製および検証の方法は、この刊行物の例1に提供されている。
本発明の方法、使用および組成物に従って有用な任意の両性イオンポリマーは、随意的に、ポリマーの水和物として、ポリマーの薬学的に許容し得る塩として、またはこれらの混合物として存在することができる。
【0104】
投与
投与する場合、本発明の製剤は、薬学的に許容し得る溶液で適用される。かかる製剤は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、補助剤、および随意的に他の治療成分をルーチンに含有することができる。
ポリマーは、そのまま(ストレートで)、または薬学的に許容し得る塩の形態で投与できる。医薬に用いる場合、塩は薬学的に許容し得るものでなければならないが、しかし非薬学的に許容し得る塩も、薬学的に許容し得るそれらの塩を製造するために便利に用いることができ、これらも本発明の範囲から除外されない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩は、これに限定はされないが、以下の酸から製造されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、pトルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、スクシン酸、ナフタレン2スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に許容し得る塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として製造することができる。
【0105】
好適な緩衝剤は、酢酸および塩(1〜2%W/V);クエン酸および塩(1〜3%W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%W/V);並びにリン酸および塩(0.8〜2%W/V)を含む。好適な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V);パラベン(0.01〜0.25%W/V);およびチメロサール(0.004〜0.02%W/V)を含む。
本発明のポリマー製剤は、随意的に薬学的に許容し得る担体中に含有された、有効量のポリマーを有する医薬組成物であることができる。本明細書において用語「薬学的に許容し得る担体」は、ヒトまたは他の動物への投与に好適な、1種または2種以上の、適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。
本発明において、用語「担体」は、活性成分がそれに組み合わされて適用を容易にする、天然または合成の有機または無機成分を指す。医薬組成物の要素はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用がない様式において、本発明のポリマーと混合、およびお互いに混合することが可能である。
【0106】
非経口投与に好適な組成物は、受容者の血液と等張性であってよいポリマーの無菌水性製剤を便利に含む。用いることのできる許容し得るビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液を含む。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として便利に用いられる。この目的のために、任意の無刺激性の不揮発性油を用いることができ、合成のモノ−またはジグリセリドを含む。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注入物の製造において使用が見出されている。皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内等の投与に好適な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに見い出せる。
サイトカインなどの他の免疫調節剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーとサイトカインとを含む「カクテル」が意図される。意図されるサイトカインは、本発明のポリマーを投与することによる有益な効果を増強するものである。サイトカインは、リンパ球を含む細胞の増殖および成熟を支援する因子である。ここで本発明に重要なのは、T細胞の発生を調節するものであり、本発明の方法がT細胞介在と見られるからである。サイトカインは、T細胞に直接または他の細胞を介して間接に作用することができる。サイトカインの添加は、本発明の方法を実施することにより、in vivoで促進されるサイトカインの活性を増加させると考えられる。1つの態様において、サイトカインはインターロイキン10である。
【0107】
アレルギー状態および喘息の処置に有用な他の剤は、本発明のポリマーと共に送達することができ、ポリマーおよび他の剤を含む「カクテル」が意図される。考えられる他の剤は、本発明のポリマーを投与することによる有益な効果を増強するものである。より具体的には,他の剤は、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体から選択することができる。かかる剤の特定の例は上に開示されている。これらの他の剤の多くは、エアロゾル製剤としてすでに利用可能である。
本発明の製剤は有効量を投与される。投与の方法およびポリマーの分子量に依存して、1ng/kg〜100mg/kgの用量のポリマーが有効である。絶対量は、用量の回数ならびに、年令、物理的状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメータを含む、種々の因子に依存する。これらの因子は当業者によく知られているものであり、ルーチンの実験を超えない範囲内で扱うことができる。
【0108】
例えば、喘息の処置用のマウスへのCP1の投与は、皮下投与の場合は約1〜10mg/kg/日の用量が、肺へのエアロゾルによる投与の場合は約10〜50mg/kg/日の用量が効果的であることが見出された。
本発明の医薬組成物の複数用量が意図される。本発明は、例えば、3週間にわたる複数用量のポリマーの投与が有効であることが示された。例えば、マウスにおいて、1日3回の用量により達成された抑制活性は、一般に最後の用量から14日以内に弱まることが見出された。従って、アレルギーや喘息などの慢性状態に対しては、本発明は特に、何日、何週間、何ヶ月または何年もの期間にわたる、単独でまたは補助療法と共に行うポリマーの長期投与の方法を含む。1つの態様において、ポリマーは対象に対して毎日投与される。種々の態様において、ポリマーは対象に対して、1日おきに、2日おきに、3日おきに、4日おきに、5日おきに、週に2回、または週に3回、投与される。1つの態様において、ポリマーは対象に対して毎週投与される。1つの態様において、ポリマーは対象に対して隔週で投与される。ここにリストされていない他のスケジュールもまた、互いに2週間以内に少なくとも2回の用量を含む限りにおいて、本発明で意図される。かかる他のスケジュールは定期的である必要はなく、替わりに、例えば処置される状態の症状に応じて導かれてもよい。
【0109】
一般に種々の投与経路が利用可能である。選択される特定の方法は、もちろん、選択される特定の多糖類、処置される特定の状態、および治療の効力に必要な用量に依存する。本発明の方法は、一般に、医学的に許容し得る任意の投与方法を用いて実施することができ、これは、臨床的に許容し得ない副作用を誘発することなく、免疫応答の有効な調節をもたらす任意の方法を意味する。投与方法は、経腸的および非経口経路を含む。用語「経腸的」は、限定することなく、特に経口を含む。用語「非経口」は、限定することなく、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、および腹腔内注射および注入技法を含む。粘膜、局所的、病変内、および経皮投与もまた、投与の非経口投与に含まれる。
【0110】
上記のように本発明により、限定はしないが特に喘息の処置の方法のために、エアロゾル送達システムが特に意図される。エアロゾル送達は特に、吸入による肺気道送達および、例えば吸入またはガス注入(insufflation)による鼻腔内送達の両方を含む。
組成物は、単位用量形態において便利に提供され、薬学分野でよく知られた任意の方法により調製することができる。全ての方法は、活性ポリマーを1種または2種以上の補助成分を含む担体と関連させるステップを含む。一般に組成物は、液体の担体、細かく分割された固体の担体、またはその両方とポリマーを均一かつ密接に関連させ、次に必要に応じて製品を形作ることにより、製造される。ポリマーは凍結乾燥させて保存し、使用時に再構成することができる。
【0111】
他の送達システムは、徐放性、遅延放出または持続放出送達システムを含むことができる。かかるシステムは、本発明のポリマーの繰り返し投与を避けることができ、対象および医師の利便性を増加させる。多種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらは以下を含む:ポリマーベースのシステム、例えばポリ乳酸およびポリグリコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトン;脂質の非ポリマーシステムであって、例えばコレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロール、またはモノ、ジ、およびトリグリセリドなどの中性脂肪を含むもの;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;従来の結合剤および賦形剤を用いたワックス被覆の圧縮錠剤、部分融合インプラント等。特定の例は以下を含むがこれに限定はされない:(a)ポリマーがマトリクス内の形態で含まれる侵食システムであって、米国特許第4,452,775号(Kent);第4,67,014号(Nestor et al.);および第4,748,034号と第5,239,660号(Leonard)に見出されるもの、並びに(b)活性要素が制御された速度でポリマーに浸透する分散システムであって、米国特許第3,832,253号(Higuchi et al.) および第3,854,480号(Zaffaroni)に見出されるもの。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムを用いることができ、それらの幾つかは移植に適合されている。
【0112】
例
多糖類の細菌の源、単離および改変
B. fragilis NCTC 9343およびATCC 23745は初めに、National Collection of Type Cultures (London, England)またはAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手した。微生物は使用まで、−80℃でペプトンイーストまたは脳心臓注入ブロス(brain heart infusion broth)中で保存し、前に記載のようにして嫌気的に増殖させた。Pantosti et al. Infect Immun 59:2075 (1991)。B. fragilis NCTC 9343またはATCC 23745からのCPCを、熱フェノール/水抽出により単離し、続いてPSAの精製を前に記載のようにして行った。Tzianabos, A et al. J Biol Chem 267:18230 (1992)。
肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖類1(CP1)および他の肺炎球菌多糖類を、ATCCから得た。
多糖類を化学的に改変することによる電荷を変えた分子の生成は、前に記載した。Taylor R et al. (1972) Biochemistry 11:1383(カルボジイミド還元);Baumann H et al. (1992) Biochemistry 31:4081(N−アセチル化および脱アミノ化)。
【0113】
肺炎連鎖球菌1型CP(CP1)による、手術後の外科的癒着の抑制
ラット(1群あたり10匹)に対して、生理食塩水(100μl)、ペクチン(ポリガラクトウロン酸、生理食塩水100μl中に100μg)、または肺炎連鎖球菌1型CP(2個のガラクトウロン酸残基および1つの2−アセトアミド−4−アミノ−2,4,6−トリデオキシガラクトースを有する三糖類繰り返し単位、80kDa、生理食塩水100μl中に100μg)を用いて皮下的に、外科的操作の−24時間、0時間、および+24時間において処置した。癒着は、前述と同様にして、さらに幾らかの修正を加えて誘発した。Kennedy R et al. (1996) Surgery 120:866-70。簡単に述べると、腹腔に3cmの正中切開を行い、盲腸を露出させた。盲腸を点状出血が見られるまで外科用ガーゼで擦過した。盲腸を腹腔内に挿入し、その傍の腹壁を同様に擦過した。この手順に続いて、ラットの殺菌した盲腸内容物(0.5ml)を、前述のように腹腔内に加えた。Onderdonk AB et al. (1982) J Clin Invest 69:9-16。創傷を4.0絹縫合で閉じた。動物を6日後に殺して、癒着形成を調べた。癒着は、前述のように0〜5のスケールで以下のように点数付けした:0、癒着なし;1、薄い膜状の癒着;2、2個以上の薄い癒着;3、中心を有する厚い癒着;4、平面的に付着した厚い癒着;および5、非常に厚い血管新生化癒着(vascularized adhesion)または、2個以上の平面状の癒着。Kennedy R et la. (1996) Surgery 120:866-70。
T細胞移植試験
生理食塩水または多糖類で処置した動物から単離した脾臓T細胞を分画し、計測し、心臓内経路を介して移植した。
【0114】
例1
両性イオン多糖類による術後癒着形成の減少はT細胞およびIL−10に依存する
雄のルイスラット(Lewis rat)に、盲腸擦過手術の−24、0、および+24時間において、生理食塩水またはCP1(50μg/ラット)を皮下注射した。6日後にこれらの動物の癒着形成について調べ、上述のように癒着の重篤度スコアを調べた。結果を図1Aに示す。左図:生理食塩水で処置した動物は、盲腸およびその傍の腹壁を含む、多数の高密度の血管新生化癒着を示した。右図:CP1で処置したラットは、それより数が少なく重篤度も低い癒着を示した。
図1Bは、CP1が、CD4+T細胞に依存する様式で癒着形成を防ぐことを示す。左図:CP1または対照として非両性イオン多糖類であるPGで処置したルイスラットの癒着スコア。各点は1匹の動物を示し、バーはスコアの中央値を示す。CP1で処置した動物は、生理食塩水またはPGで処置した動物より、有意に低い癒着スコアを示した(P<0.001)。中図:C57BL/6マウスを、生理食塩水、CP1またはPGで同様の様式で処置し、盲腸擦過手術を行った。CP1で処置した動物は、生理食塩水またはPGで処置した動物より、有意に低い癒着スコアを示した(*P<0.001)。右図:CP1で処置したマウスからのCD4+T細胞の移植は、生理食塩水で処置した動物からのCD4+T細胞を受領した動物と比べて、防御をもたらした(*P=0.001)。
【0115】
図1Cは、癒着の予防におけるIL−10の役割を示す。左図:CP1は、生理食塩水またはPGの処置に比べ、マウスの腹腔においてIL−10を誘導する。動物(n=5/群)は、3日間連続して50μgのCP1またはPGで処置し、最終投与の後3日間、腹水を採取した。IL−10のレベルをELISAにより評価した。CP1は、生理食塩水またはPGの処置に比べて、高レベルのIL−10を誘発した(*P<0.02)。右図:CP1による防御は、抗IL−10処置によって無効となる。マウスは、上記のように生理食塩水またはCP1により処置し、腹腔内経路を介してIL−10に特異的なモノクローナル抗体(mAb)で処置した(200μg、盲腸擦過手術からt=0、24、48および72時間において)。IL−10特異的モノクローナル抗体による処置により、CP1で処置しアイソタイプ対照抗体を受領した動物と比べて、有意に高い癒着スコアが得られた(*P<0.001)。
図1Dは、CP1で処置したIL−10−l−マウスが、同腹子の野生型(WT)対照マウスと比べて、癒着形成に対して防御されなかったことを示す(*P=0.003)。
【0116】
例2
外科的癒着の予防におけるTreg細胞の役割
マウスをCP1またはPGで処置し(50μg/用量を皮下経路を介して)、脾臓CD4+T細胞を単離し、フローサイトメトリーによりCD45RB表面発現および細胞内IL−10レベルを解析した。結果を図2Aに示す。上段の図:CP1による処置は、Treg細胞の割合を増加させ、一方CD45RBhiT細胞の割合を減少させる。PGによる処置はこの割合に影響を及ぼさない(処置の4日後を示す)。下段の図:CP1による処置はCD45RBlo細胞からのIL−10の産生を増加させ、一方PGは影響を及ぼさない。IL−10産生は処置4日後にピークとなった。
図2Bは、CP1による処置は、Treg細胞からのIL−4またはIFN−γを誘発しないことを示す。CD4+CD45RBloT細胞は、処置後毎日解析した。4日後からの結果を示す。
【0117】
図2Cは、Treg細胞が、IL−10に依存した様式で癒着形成に対する防御を伝達することを示す。左図:マウス群を、上記のように生理食塩水またはCP1により処置し、脾臓のCD4+T細胞を最終処置の1日後に単離した。細胞をCD45RB特異的抗体で染色し、高(hi)または低(lo)発現の集団をFACSにより単離した。各集団を次に、心臓内経路を介して移植し、24時間後に動物に盲腸擦過手術を施した。生理食塩水またはCP1で処置した動物からCD45RBhiT細胞を受領した動物は、癒着を発生した。癒着はまた、生理食塩水で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物でも発生した。CP1で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物は、生理食塩水で処置した動物からCD45RBloT細胞を受領した動物より、有意に低い癒着スコアを有していた(*P<0.001)。右図:IL−10特異的抗体による処置は、CP1で処置した動物から採取したTreg細胞により伝達された防御を無効にした。CP1で処置した動物からのCD45RBloT細胞は、IL−10に特異的なモノクローナル抗体またはアイソタイプ対照抗体により1日後に処置されたナイーブな受容動物へ移植された。アイソタイプ対照抗体で処置されたTreg細胞を受領したマウスには、ほとんど癒着がなかった。しかし、マウスへTreg細胞の移植により付与された防御は、IL−10特異的抗体による処置によって無効化された(*アイソトープ対照処置と比較して*P=0.0002)。
【0118】
例3
Treg細胞により付与された防御におけるICOS−ICOSL相互作用の役割
図3Aは、CP1がin vivoでCD4+T細胞でのICOSの発現を誘導することを示す。マウスをCP1またはPGで上述のようにして処置し、膵臓T細胞を単離し、ICOSおよびCD4発現について染色した。CP1はCD4+T細胞でのICOSの発現を誘導し、最終投与の4日後に最大となった。PGはこれらの細胞でのICOSの発現を誘発しなかった。
図3Bの左図は、ICOSL抗体がCP1による防御を無効化することを示す。マウスは、癒着を誘導する前に生理食塩水またはCP1で処置した。CP1で処置したマウスには、腹腔内経路を介して手術の0、48および96時間後に、ICOSLに特異的なモノクローナル抗体(400μg/マウス)またはアイソタイプ対照抗体も与えた。CP1およびアイソタイプ対照抗体で処置したマウスは、ICOSLに特異的なモノクローナル抗体で処置したマウスに比べて、有意に少なくまた重篤度の低い癒着を有した(アイソタイプ対照処置に比べてP=0.0003)。
【0119】
図3Bの中央図は、ICOS−l−マウスがCP1の処置によって防御されないことを示す。WTおよびICOS−l−マウスを、癒着を誘導する前に、上述のようにして生理食塩水またはCP1で処置した。CP1で処置したICOS−l−動物は、同様に処置したWT動物より低い癒着スコアを示した(P=0.002)。
図3の右図は、ICOSL抗体は、CP1で処置したマウスからのTreg細胞による防御を無効化することを示す。C57BL/6マウスを上述のようにしてCP1で処置し、1日後にFACSにより脾臓からCD45RBloCD4+T細胞を採取した。Treg細胞を、心臓内経路を介してナイーブC57BL/6マウスの2つの群に移植し、24時間後に動物に盲腸擦過手術を行った。被移植動物には、手術の0、48、および96時間後に、ICOSL特異的抗体またはアイソタイプ対照抗体(400μg/マウス)を腹腔内経路を介して与えた。動物の各群は6日後に癒着を評価した。ICOSL抗体による処置は、アイソタイプ対照抗体による処置と比べて、Treg細胞の移植により付与された防御を無効化した(P=0.0006)。
【0120】
例4
Treg細胞はICOSに依存する様式でCP1に応答しIL−10を産生する
図4Aは、ICOS+Treg細胞によるIL−10産生を示す。C57BL/6マウスを上述のようにしてCP1またはPGで処置し、CD45RBloT細胞を最終投与後の異なる時点において単離した。細胞はICOS表面発現および細胞内IL−10産生について染色し、解析のためにCD4T細胞上でゲーティングした。CP1による処置は、ICOS+Treg細胞からのIL−10産生を誘導した。この応答はPGで処置したマウスからのTreg細胞によるIL−10産生より大幅に高かった。CP1で処置したマウスからのICOS−Treg細胞は、IL−10を産生しなかった。
図4Bは、Treg細胞によるIL−10産生はCP1に特異的であり、ICOSに依存することを示す。WTおよびICOS−l−マウスを、CP1(50μg、皮下経路を介して)により処置し、10日後にCD45RBloT細胞を単離し、照射された自己抗体提示細胞と共にin vitroで培養した。細胞をCP1またはPG(20μg/ml)で刺激し、培養液の上清液を培養の6日または8日後に採取して、ELISAによりIL−10の定量を行った。CP1により刺激されたWTマウスからのTreg細胞は、ICOS−l−マウスからのTreg細胞より高いレベルのIL−10を産生した。この反応はCP1に特異的であり、なぜならば、PGはWTまたはICOS−l−Treg細胞からIL−10を誘発しなかったからである。in vivoでPGで処置され、in vitroでこのポリマーにより刺激された動物からのTreg細胞は、これらの試験においてIL−10を産生しなかった。
【0121】
例5
PSAは喘息を改善できる
両性イオン多糖類の喘息を予防する機能を評価するため、PSAを、確立されたアレルギー性喘息のマウスモデルにおいて試験した。Mojtabavi N et al. (2002) J Immunol 169:4788-96。4群の雌のBALB/cマウス(1群当たり8匹のマウス)を感作し、オバルブミン(OVA)でチャレンジして、実験的に喘息を誘発した。指定されたマウスの実験群は、エアロゾル化または皮下注射によるPSAで処置した。指定の対照マウス群は、無処置か、または生理食塩水の皮下注射で処置した。動物群および実験計画を表1に示す。
全マウスの感作は、0日における生理食塩水4ml中のOVA200μgの腹腔内(i.p.)注入および、21日後における同一のブーストを含む。B群のマウスでのPSAによるエアロゾル処置は、1〜27日の間に、超音波噴霧器によりエアロゾル化した0.01%PSA(0.1mg/ml)500μgを週に3回投与することを含む。C群におけるPSAによる皮下処置は、エアロゾル処置と同じスケジュールで、0.1%PSA(PSAの1mg/ml溶液)を100μl、皮下(s.c.)注射することを含む。
【0122】
表1.喘息モデルプロトコル
【表1】
全マウスについてのチャレンジは、28および29日後に1日2回60分間、超音波噴霧器による1%OVA(1g/100ml)のエアロゾル投与を含む。
【0123】
動物は、最終のエアロゾルチャレンジの48〜96時間後に殺して、肺組織病理、血清OVA特異的IgE、および気管支肺胞洗浄(BAL)液IL−4、IL−5およびIL−10について評価する。
OVA特異的IgEの測定には、ELISAプレートを、10μg/mlの抗マウスIgE(LO-ME-3; Serotec, Oxford, U.K.)で4℃で1晩被覆する。プレートを洗浄し、2%BSA/0.05%Tween 20で37℃にて2時間ブロックする。滴定した血清を室温で2時間インキュベートする。洗浄の後、ビオチン化したOVAを加え、プレートを1時間インキュベートする。プレートを洗浄後、ユウロピウム(Eu3+)−ストレプトアビジン(Delfia; Wallac, Turku, Finland)を各ウェルに加える。増強溶液(enhancement solution)(100μl;Delfia)を加え、蛍光定量法を用いて340nm励起および614nm発光にて、Eu3+放出を測定する。
【0124】
BAL液サイトカインの測定には、致死的に麻酔したマウスにカニューレを挿入し、PBS1mlで1〜3回洗浄する。各マウスからのBAL液をプールし、IL−1、IL−5およびIL−10を製造業者の指示に従ってELISA(Endogen, Woborn, MA)にて定量する。
肺組織病理試験では、BALの後に、気管をPBSおよび続いて4%のホルマリンで還流する。パラフィンに埋め込まれた4μmの肺切片を、形態染色用にH&Eにて、およびムコ多糖体染色用にパス染色で染色する。
気道過敏性(AHR)は、意識のある抑制なしのマウスにおいて、全身プレチスモグラフィ(Buxco Electronics, Sharon, CT)で公開された方法を用いて計測する。Hamelmann E et al. (1997) Am J Respir Crit Care Med 156:766-75。
【0125】
例6
両性イオンペプチドはT細胞活性化を誘導する
両性イオン電荷モチーフのT細胞活性化における役割を示すため、ダイペプチド繰り返し単位を合成して、PSAの繰り返し単位構造を模倣した。この目的のために、リジン(K)およびアスパラギン酸(D)による異なる繰り返し単位サイズ、(K−D)nを合成し、CD4+T細胞を促進するそれらの機能を試験した。
ペプチド(K−D)nは、Rainin Symphonyペプチド合成装置で、4−アルコキシベンジルアルコール(PAC)樹脂(PerSeptive Biosystems, Inc., Framingham, MA)とFmoc化学を用いて合成した。アミノ酸は、カップリングのために2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3テトラメチルウリニウム六フッ化リン酸塩(HBTU)で活性化した。調製したペプチドは、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI−TOF)質量分析法および核磁気共鳴(NMR)分光法により解析した。質量スペクトルはVoyagerMALDI−TOF質量分析計上に得た。プロトンNMRスペクトルは、BruckerAMX500装置でプロトン周波数500MHzにて得た。両方の解析により、ペプチドは予想された構造であることが確認された。
【0126】
T細胞増殖分析は、ヒトleukopac(匿名の血小板ドナーからの廃棄白血球)から得た細胞で行った。単核細胞は、フィコール−ヒパーク(ficall-hypaque)沈降により分離して、赤血球および多形核白血球(polymorphonuclear leukocyte)を除去した。T細胞、B細胞および単核細胞からなる単核層は、ナイロンウールカラムを通過させることによりB細胞および単球を減少させた。これらの細胞の一部は、ナイロンウール上に載せる前に保存して、セシウム源6.4kRad、4.8分間の照射の後に自己支持細胞として用いた。ナイロンを通過した、98%CD3陽性より大(FACS分析により決定)の細胞は、キラー細胞として用いるか、または抗体でさらに減少させ、続いて磁気ビーズによるネガティブセレクションによって、CD4(OKT4)またはCD8(OKT8)とした。Finberg RW et al. (1992) J Immunol 149:2055-60;Haregewoin A et al. (1989) Nature 340:309-12。種々のサイズの(K−D)nペプチド(20μg/ml)を、照射APC(2.5x105/200μg)と共に、12日間U底96穴プレート(Corning-Costar Corp., Cambridge, MA)でRPMI1640および5%胎児性子牛血清(fetal calf serum)を用いて共培養したヒトT細胞(5x104細胞/200μl)に加えた。Nguyen LH et al. (1992) J Virol 66:7067-72。チフス菌1型CP(20μg/ml)を陽性対照として含めた。6日後、細胞を、1mCiの3Hチミジン/ウェルで、採取の6時間前に鼓動させ(pulsed)、細胞増殖を測定した。細胞をよく洗浄し、採取し、放射能取り込み量を液体シンチレーションで計測した。データは、3個のウェルの平均±標準誤差のcpm単位で表した。
【0127】
15、20または25個の繰り返し単位からなる(K−D)nペプチドはそれぞれ、T細胞活性化をin vitroで促進した。反応は、10個の繰り返しのペプチドでより少なかった。10未満の繰り返し単位からなるペプチド(1〜5の繰り返し)はT細胞の増殖を促進しなかった。対照ペプチド、ポリ−L−リジンもまた、T細胞の増殖を促進しなかった。これらのデータは、多糖類以外の両性イオン繰り返し単位のポリマーはT細胞活性化を促進し、この活性化はポリマーの繰り返し単位のサイズに依存することを明白に示す。
【0128】
例7
両性イオンペプチド(K−D)nは喘息を改善することができる
喘息を予防する両性イオンオリゴペプチドの機能を評価するために、例5のプロトコルに従い、PSAを(K−D)nで置き換えて実施する:ここで整数は10〜25の数値である。
【0129】
例8
CP1は喘息を改善することができる
両性イオン多糖類の喘息予防の機能を評価するために、確立されたアレルギー性喘息のマウスモデルにおいてCP1を試験した。Mojtabavi N et al. (2002) J Immunol 169:4788-96。3群の雌のBALB/cマウス(1群あたり8匹)を、オバルブミン(OVA;ミョウバン中に10μg、i.p.)で感作し、21日後に同じ用量でブーストした。ブーストの7日後から、マウスを、エアロゾル化したOVA(1%のOVAを60分間、1日2回で2日間)または生理食塩水(60分間、1日2回で2日間)でチャレンジした。最後のチャレンジの2日後、心穿刺で得た血液から血清を採集し、マウスを殺して肺組織病理、OVA特異的IgEおよび血清IL−13の評価を行った。この実験の間、マウスの個別の群にはCP1(100μl中に100μg、s.c.、週に3回)または生理食塩水(100μl、s.c.、週に3回)を投与した。第4群の8匹のマウスは感作させず、生理食塩水処置および生理食塩水チャレンジを行った。動物の群および実験計画を表2に示す。
【0130】
表2.喘息モデルプロトコル
【表2】
【0131】
OVA特異的IgEの測定のために、ELISAプレートを抗マウスIgE(LO−ME−3;Serotec, Oxford, U.K.)10μg/mlで、4℃にて1晩被覆した。プレートを洗浄し、2%BSA/0.05%Tween 20で、37℃で2時間ブロックした。滴定した血清を室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化したOVAを加えて、プレートを1時間インキュベートした。ユウロピウム(Eu3+)−ストレプトアビジン(Delfia; Wallac, Turku, Finland)を、プレートを洗浄した後に各ウェルに加えた。増強溶液(100μl;Delfia)を加え、蛍光定量法を用いて340nm励起および450nm発光にて、Eu3+の放出を測定した。
IL−13を、IL−13特異的ELISA(RおよびDシステム)を用いて測定した。
肺の組織病理検査では、気管をPBSおよび続いて4%のホルマリンで還流した。パラフィンに埋め込まれた4μmの肺切片を、形態染色用にヘマトキシリンおよびエオジンにて、およびムコ多糖体染色用にパス染色で染色した。
【0132】
代表的な結果を図5〜図8に示す。
図5に示すように、CP1の処置は、気道過敏性のマウスにおいてOVA特異的IgEレベルを低減した。OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスでは、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスに比べて、OVA特異的血清IgEが有意に減少した(p=0.0001、フィッシャーの直接確率検定による)。事実、OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスのOVA特異的血清IgEレベルは、OVAで感作し生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスより、感作なしで生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにより類似していた。
【0133】
図6に示すように、CP1による処置は気道過敏性のマウスにおける血清IL−13レベルを低減させた。OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスは、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスに比べて、有意に低い血清IL−13を有していた(p=0.03、ターキークラマーの多重比較検定による)。事実、OVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウスの血清IL−13レベルは、感作なしで生理食塩水でチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスのそれと本質的に等しかった。
図7に示すように、CP1による処置は、気道過敏性と関連する好酸球の湿潤および杯細胞の湿潤を低減させた。A、BおよびC群各々から2匹のマウスを試験したところ(表2参照)、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにおいて、CP1で処置した対応する群に比べて少なくとも2倍多い好酸球の湿潤の存在を示した(図7A)。同様に、A、BおよびC群各々から同じ2匹のマウスを試験したところ(表2参照)、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウスにおいて、CP1で処置した対応する群に比べて少なくとも2倍多い杯細胞の湿潤の存在を示した(図7B)。図8は、OVAで感作しOVAでチャレンジし、生理食塩水で処置したマウス(左図)およびOVAで感作しOVAでチャレンジし、CP1で処置したマウス(右図)の代表的なPAS染色切片を示す。CP1で処置したマウスは、生理食塩水で処置したマウスより少ない面積の杯細胞の湿潤を有していた。
【0134】
例9
in vitroでのTreg細胞の拡大
マウスからのナイーブ脾臓CD4+T細胞を得て、自己照射抗原提示細胞(APC)を有する96穴プレートにおいて培養した。T細胞およびAPCはそれぞれ、個々のウェルに2x105細胞/ウェルで加えた。細胞は、20μg/mlの両性イオン多糖類(ZPS)PSA、IL−2(0.5ng/ml)、およびIL−15(それぞれ10ng/ml)と共に、1週間培養した。1週間後、新鮮なAPC、サイトカイン、および多糖類を上記の濃度で加えた。このサイクルを合計3回繰り返した。この過程の後、ZPS刺激に応答してIL−10を産生する、CD45RBloフェノタイプを有するZPS特異的Treg細胞が優勢であることが見出された(ウェルにおいて細胞の50%)。IL−10は、フローサイトメトリーで細胞内サイトカイン染色により計測した。
【0135】
例10
細胞内サイトカイン解析
ラット抗マウスCD16/CD32を用いたプレインキュベーションによりFc受容体をブロックした後、T細胞をFITC、PE−Cy5、またはPEによりラベルされたmAbsによって、CD4、CD45RB、もしくはICOSまたは対応するアイソトタイプ対照抗体について染色した。細胞内サイトカイン解析を上述のようにして行った。Akbari O et al. (2002) Nat Med. 8:1024-32。簡潔に述べると、細胞を洗浄し、固定し、Cytofix/Cytoperm溶液および1’Perm/Wash溶液(BD Pharmingen, San Diego, CA, USA)を用いて透過性とし、次に、IL−4、IFN−γ、もしくはIL−10または対応するアイソタイプ対照に特異的なPE−Cy5またはPE複合モノクローナル抗体を用いて染色した。染色された細胞は、Coulter EPICS XL(登録商標)血球計算器(Beckman Coulter)で、CELL Quest(登録商標)(Becton Dicknson)およびWinMDI2.8解析ソフトウェア(Scripps Research Institute)を用いて解析した。全ての抗原はBD PharMingen (San Diego, CA)から入手した。
【0136】
等価物
上記の書面の明細書は、当業者が本発明を実践するのを可能とするのに十分であると考えられる。本発明は、提供された例によってその範囲を限定されず、これは、これらの例が本発明の1つの側面の単一の例示を意図しており、他の機能的に等価な態様も本発明の範囲であるためである。本明細書に示されたものおよび記載されたものに加えて、本発明の種々の改変が前述の記載から当業者には明白となり、それらも付属のクレームの範囲に包含される。本発明の利点および目的は、必ずしも本発明の各態様により包含されるものではない。
本明細書に引用された全ての参考文献、特許および特許広報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】両性イオン多糖類CP1による術後癒着形成の低減を示す1組の写真である。左および右の図は、それぞれ生理食塩水およびCP1の処置に対応する。
【図1B】生理食塩水、CP1、または非両性イオン対照多糖類PGで処置された動物における癒着スコア(左図、ラット;中図、マウス)、および生理食塩水またはCP1で処置されたマウスから移植されたCD4+T細胞で処置されたマウスにおける癒着スコア(右図)を示すグラフである。*P<0.001。
【図1C】癒着の予防におけるIL−10の役割を示す1組のグラフである。左図、*P<0.02;右図、*P<0.001。
【図1D】生理食塩水またはCP1で処置された野生型(WT)およびIL−10−l−マウスにおける癒着スコアを示すグラフである。*P=0.03。
【図2A】CP1またはPGで処置されたマウスから単離され、表面のCD45RB(上図)および細胞内IL−10(下図)について染色されたCD4+T細胞の、フローサイトメトリーによる解析結果を示すグラフである。
【図2B】CP1のin vivo投与の4日後に測定された、CD4+CD45RBloT細胞におけるIL−4(左)およびIFN−γ(右)のフローサイトメトリーによる解析結果を示す1組のグラフである。
【図2C】生理食塩水またはCP1で処置されたマウスから移植されたCD45RBhiまたはCD45RBlo細胞で処置されたマウスにおける癒着スコア(左図)、および抗IL−10抗体の存在下における、移植されたCD45RBlo細胞の防御効果の無効化(右図)を示す、1組のグラフである。左図、*P<0.001;右図、*P=0.0002。
【図3A】生理食塩水、CP1、またはPGのin vivo投与後の、CD4+T細胞によるICOS発現についてのフローサイトメトリーによる解析結果を示す、一連の3つのグラフである。
【図3B】癒着スコアにおけるICOS−ICOSL相互作用の役割を示す一連の3つのグラフである。*P=0.0006。
【0138】
【図4A】CP1またはPGによる処置の後の、ICOS+Treg細胞によるIL−10産生についてのフローサイトメトリーによる解析結果を示す、一連のグラフである。
【図4B】CP1またはPGによる処置の後の、野生型(WT)およびICOS−l−マウスから得たTreg細胞によるIL−10産生を示すグラフである。
【図5】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスにおける、抗原特異的IgEレベルを示す棒グラフである。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて、抗原特異的IgEが有意に減少した(P=0.0001)。
【図6】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスにおける、血清IL−13レベルを示す棒グラフである。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて、血清IL−13が減少した。
【図7A】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、好酸球浸潤を示す棒グラフである。各棒は1匹のマウスからの結果を示す。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて好酸球浸潤が減少した。
【図7B】抗原で感作し、CP1または対照(生理食塩水)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、杯細胞浸潤を示す棒グラフである。各棒は1匹のマウスからの結果を示す。CP1で処置したマウス(1群当たりN=8)は、生理食塩水で処置したマウスと比べて杯細胞浸潤が減少した。
【図8】抗原で感作し、CP1(右図)または対照(生理食塩水;左図)による処置後に、エアロゾル化した抗原でチャレンジしたマウスから得た肺切片における、杯細胞浸潤が並ぶ細気管支を示す1組の顕微鏡写真である。CP1で処置したマウスは、生理食塩水で処置したマウスと比べて杯細胞浸潤の面積が減少した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における喘息以外のアレルギー状態を処置する方法であって、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで、該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記方法。
【請求項2】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与することが、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象に、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが多糖類である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーがPSA1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーがPSA2である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーがPSBである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーがペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
方法が、対象に対し、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
投与することが、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法であって、
(a)同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を前記アレルゲンに暴露すること;および
(b)前記対象に対して、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項20】
暴露が、投与に先立って行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
暴露が、投与の後に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
暴露および投与が実質的に同時に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
対象における喘息を処置する方法であって、
喘息を有する対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項24】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーが、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
対象に、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
投与することが、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
ポリマーが多糖類である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ポリマーがペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
方法が、対象に対し、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬を投与することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
投与することが、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法であって、
(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること;および
(b)前記対象に対して、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項38】
暴露が、投与に先立って行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
暴露が、投与の後に行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
暴露および投与が実質的に同時に行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法であって、
制御性T細胞を単離すること;および
制御性T細胞を有効量の単離ポリマーに接触させて、該制御性T細胞によるIL−10の産生を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項42】
ポリマーが多糖類である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)の発現を誘導する方法であって、
CD4+細胞を有効量の単離ポリマーに接触させてCD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分であり;および
CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合はCD4+細胞でのICOSの発現は増加している、
を含む、前記方法。
【請求項47】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーが多糖類である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
ポリマーがPSA1である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
ポリマーがPSA2である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
ポリマーがPSBである、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
制御性T細胞の増殖を誘導する方法であって、
ナイーブT細胞集団を単離すること;および
前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項58】
ナイーブT細胞集団を抗原と接触させることをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはIL−2およびIL−15の組合せと接触させることをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
制御性T細胞の増殖を誘導する方法であって、
T細胞集団を単離すること;および
前記T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項61】
ポリマーが多糖類である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
T細胞集団を抗原と接触させることをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
T細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはIL−2およびIL−15の組合せと接触させることをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
対象における、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的免疫応答を抑制する方法であって、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および、(b)前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記方法。
【請求項68】
抗原の投与が、ポリマーの投与に先立って行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
抗原の投与が、ポリマーの投与の後に行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
抗原の投与およびポリマーの投与が実質的に同時に行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
ポリマーの投与が、複数用量のポリマーの投与を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
抗原およびポリマーを含む抱合体を含む組成物であって、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記組成物。
【請求項73】
B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーのエアロゾル製剤を含む、医薬組成物であって、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記医薬組成物。
【請求項74】
ポリマーが多糖類である、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項73に記載の組成物。
【請求項76】
ポリマーがPSA1である、請求項73に記載の組成物。
【請求項77】
ポリマーがPSA2である、請求項73に記載の組成物。
【請求項78】
ポリマーがPSBである、請求項73に記載の組成物。
【請求項79】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項73に記載の組成物。
【請求項80】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項73に記載の組成物。
【請求項81】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項73に記載の組成物。
【請求項82】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項73に記載の組成物。
【請求項83】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項73に記載の組成物。
【請求項84】
ポリマーがペプチドである、請求項73に記載の組成物。
【請求項85】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項73に記載の組成物。
【請求項86】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項73に記載の組成物。
【請求項87】
アレルギー状態を処置するためのエアロゾル製剤を治療的に有効な量含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項88】
アレルギー性喘息を処置するためのエアロゾル製剤を治療的に有効な量含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項89】
アレルギー状態の処置に有用な他の剤をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項90】
他の剤が、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬である、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項92】
他の剤が、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬である、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
容器を含むエアロゾル送達システムであって、該容器が、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された請求項73に記載の医薬組成物を有する、前記エアロゾル送達システム。
【請求項94】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための計量吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項95】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための乾燥粉末吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項96】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための噴霧吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項97】
エアロゾル送達システムが、ポリマーを上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項1】
対象における喘息以外のアレルギー状態を処置する方法であって、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで、該ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記方法。
【請求項2】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与することが、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象に、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーが多糖類である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーがPSA1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーがPSA2である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーがPSBである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーがペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
方法が、対象に対し、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
投与することが、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を処置する方法であって、
(a)同定されたアレルゲンに関連するアレルギー状態を有する対象を前記アレルゲンに暴露すること;および
(b)前記対象に対して、前記アレルギー状態を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項20】
暴露が、投与に先立って行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
暴露が、投与の後に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
暴露および投与が実質的に同時に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
対象における喘息を処置する方法であって、
喘息を有する対象に、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項24】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーが、CP1または合成ペプチドグルカン化合物15以外のポリマーである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
対象に、ポリマーを用いる処置を必要とする以外の症状は認められない、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
投与することが、対象の気道にポリマーのエアロゾルを送達することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
ポリマーが多糖類である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ポリマーがペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
方法が、対象に対し、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬を投与することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
投与することが、喘息以外のアレルギー状態を有する対象に、該アレルギー状態を処置するための複数用量の単離されたポリマーを投与することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を処置する方法であって、
(a)同定されたアレルゲンに関連する喘息を有する対象を、前記アレルゲンに暴露すること;および
(b)前記対象に対して、喘息を処置するための有効量の単離されたポリマーを投与すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項38】
暴露が、投与に先立って行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
暴露が、投与の後に行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
暴露および投与が実質的に同時に行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
インターロイキン10(IL−10)産生を誘導する方法であって、
制御性T細胞を単離すること;および
制御性T細胞を有効量の単離ポリマーに接触させて、該制御性T細胞によるIL−10の産生を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項42】
ポリマーが多糖類である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
CD4+細胞での誘導性副刺激分子(ICOS)の発現を誘導する方法であって、
CD4+細胞を有効量の単離ポリマーに接触させてCD4+細胞でのICOSの発現を誘導すること、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分であり;および
CD4+細胞でのICOSの発現の増加を測定すること、ここで、接触後のICOSの発現が接触前のICOSの発現を上回っている場合はCD4+細胞でのICOSの発現は増加している、
を含む、前記方法。
【請求項47】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーが多糖類である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
ポリマーがPSA1である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
ポリマーがPSA2である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
ポリマーがPSBである、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
制御性T細胞の増殖を誘導する方法であって、
ナイーブT細胞集団を単離すること;および
前記ナイーブT細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項58】
ナイーブT細胞集団を抗原と接触させることをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ナイーブT細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはIL−2およびIL−15の組合せと接触させることをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
制御性T細胞の増殖を誘導する方法であって、
T細胞集団を単離すること;および
前記T細胞集団を有効量の単離ポリマーに接触させて制御性T細胞の増殖を誘導すること、を含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、
前記方法。
【請求項61】
ポリマーが多糖類である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
T細胞集団を抗原と接触させることをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
T細胞集団を、外部から供給されるインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン15(IL−15)、またはIL−2およびIL−15の組合せと接触させることをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
対象における、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的免疫応答を抑制する方法であって、アレルギー状態または喘息以外の抗原特異的応答の抑制が必要な対象に対して、(a)抗原および、(b)前記対象における前記抗原に対する免疫応答を抑制するための有効量の単離されたポリマーを投与することを含み、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記方法。
【請求項68】
抗原の投与が、ポリマーの投与に先立って行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
抗原の投与が、ポリマーの投与の後に行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
抗原の投与およびポリマーの投与が実質的に同時に行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
ポリマーの投与が、複数用量のポリマーの投与を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
抗原およびポリマーを含む抱合体を含む組成物であって、ここで前記ポリマーは、B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位を含み、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記組成物。
【請求項73】
B. fragilis多糖類A(PSA)に特有の電荷モチーフの繰り返し単位のポリマーのエアロゾル製剤を含む、医薬組成物であって、該モチーフは、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、カルボキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、前記医薬組成物。
【請求項74】
ポリマーが多糖類である、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
ポリマーが細菌性莢膜多糖類である、請求項73に記載の組成物。
【請求項76】
ポリマーがPSA1である、請求項73に記載の組成物。
【請求項77】
ポリマーがPSA2である、請求項73に記載の組成物。
【請求項78】
ポリマーがPSBである、請求項73に記載の組成物。
【請求項79】
ポリマーが肺炎連鎖球菌莢膜多糖類1(CP1)である、請求項73に記載の組成物。
【請求項80】
ポリマーが脱N−アセチル化チフス菌Vi抗原である、請求項73に記載の組成物。
【請求項81】
ポリマーがアミノ化ペクチンである、請求項73に記載の組成物。
【請求項82】
ポリマーが合成ペプチドグリカン化合物15である、請求項73に記載の組成物。
【請求項83】
モチーフが、正に荷電した有離アミノ遊離アミノ部分並びに、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される負に荷電した部分である、請求項73に記載の組成物。
【請求項84】
ポリマーがペプチドである、請求項73に記載の組成物。
【請求項85】
ポリマーが(K−D)nであって、式中nは10〜100の整数である、請求項73に記載の組成物。
【請求項86】
ポリマーが[K−(Xaa)m−D]nであって、式中、各Xaaは独立して任意の中性アミノ酸であり、mは0〜8の整数であり、そしてnは1〜100の整数である、請求項73に記載の組成物。
【請求項87】
アレルギー状態を処置するためのエアロゾル製剤を治療的に有効な量含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項88】
アレルギー性喘息を処置するためのエアロゾル製剤を治療的に有効な量含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項89】
アレルギー状態の処置に有用な他の剤をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項90】
他の剤が、グルココルチコイド、抗ヒスタミン薬および抗IgE抗体からなる群から選択される抗アレルギー薬である、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
喘息の処置に有用な他の剤をさらに含む、請求項73に記載の組成物。
【請求項92】
他の剤が、グルココルチコイド、βアドレナリン作動薬、メチルキサンチン、抗コリン作動薬、クロモリン、ネドクロミル、抗ヒスタミン薬、IL−10、および抗IgE抗体からなる群から選択される抗喘息薬である、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
容器を含むエアロゾル送達システムであって、該容器が、内部、該容器内部と流体接続しているエアロゾル発生器、および該容器内部内に配置された請求項73に記載の医薬組成物を有する、前記エアロゾル送達システム。
【請求項94】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための計量吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項95】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための乾燥粉末吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項96】
エアロゾル送達システムが、ポリマーの送達のための噴霧吸入器である、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項97】
エアロゾル送達システムが、ポリマーを上皮へ局所的に送達するためのスプレーディスペンサーである、請求項93に記載のエアロゾル送達システム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公表番号】特表2006−522135(P2006−522135A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509515(P2006−509515)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009838
【国際公開番号】WO2004/089407
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502143504)ザ ブライアム アンド ウィミンズ ホスピタル インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009838
【国際公開番号】WO2004/089407
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502143504)ザ ブライアム アンド ウィミンズ ホスピタル インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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