説明

器具取付枠

【課題】複数列に並設される配線器具間のピッチを合わせつつ、壁材の裏側に簡単に位置決めすることができる器具取付枠を提供すること。
【解決手段】器具取付枠11は壁材Wに四角形状に形成された複数列用壁孔Waを介して壁材Wの裏側に配置されるとともに、螺入孔19を用いて配線器具が壁材Wに設置されることで、壁材Wの裏側に設置される。器具取付枠11は、枠本体12の前面に、壁材Wの裏面における複数列用壁孔Waの周縁に当接する当接面12aを有するとともに、複数列用壁孔Waの四つの内側面Wa1〜Wa4に当接して枠本体12の移動を規制する第1及び第2規制突部181,182を有する。器具取付枠11は、他の器具取付枠11を組み合わせた際、互いに当接する当接部182aを第2規制突部182に有している。そして、当接部182a同士を当接させた際、二組の螺入孔19が、複数の配線器具間のピッチと同じピッチPで配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材に四角形状に形成された壁孔を介して壁材の裏側に配置されるとともに、取着部を用いて配線器具が壁材に設置されることで、壁材の裏側に設置される器具取付枠に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の器具取付枠としては、例えば、特許文献1に開示の壁板用取付押さえ金具が挙げられる。図13(a)に示すように、特許文献1の壁板用取付押さえ金具80は、金属板より略ロ字型の枠状に形成されるとともに、上下で対向する上枠部81aと下枠部81b及び左右で対向する側枠部82a,82bとで主体83が構成されている。
【0003】
上枠部81aと下枠部81bの略中央内側端縁からはそれぞれ取付部84が主体83の内方に向けて突設されている。上枠部81a及び下枠部81bにおいて、各取付部84の左右両側には、主体83の前面側に突出する落下防止用の突起87がそれぞれ突設されている。また、両側枠部82a,82bには、先端部が幅広となった帯状のアーム片85が対向する側枠部82b,82aに向けて突設されている。右側の側枠部82bと上枠部81a及び下枠部81bとの境目付近には、溝86が側枠部82bと並行するように形成されるとともに、この溝86に沿って側枠部82bを折り曲げることによって、側枠部82bを主体83から切り離すことができるようになっている。
【0004】
上記構成の壁板用取付押さえ金具80を用いて、壁材に配線器具を2列(複数列)に並設するには、まず、図13(b)に示すように、壁材88に2列用の複数列用壁孔88aを形成する。次に、二つの壁板用取付押さえ金具80それぞれにおいて、主体83の溝86に沿って側枠部82bを主体83から切り離す。側枠部82bが主体83から切り離されると、主体83には、一方のアーム片85のみが残る。次に、一方のアーム片85が主体83の前面側へ折り曲げられた状態で、二つの壁板用取付押さえ金具80を壁材88の裏側に配置するとともに、折り曲げられた各アーム片85を折り曲げて壁材88の前面に係止させる。さらに、各壁板用取付押さえ金具80に一体の突起87を複数列用壁孔88aの開口縁に係止させる。その結果、突起87及びアーム片85によって、壁板用取付押さえ金具80の壁材88裏側への落下防止、及び壁孔88aに対する壁板用取付押さえ金具80の移動が規制される。
【0005】
その後、図示しないが、配線器具が保持された保持枠を壁材88の表側に配置し、保持枠に挿通されたねじを取付部84に螺合することにより、壁板用取付押さえ金具80と保持枠とで壁材88の開口縁が挟持され、壁板用取付押さえ金具80が壁材88に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−174246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の壁板用取付押さえ金具80においては、アーム片85を壁材88の前面に係止させるとともに、突起87を壁孔88aの開口縁に係止させることで、壁裏側に位置決めされる。しかし、壁板用取付押さえ金具80が位置決めされた状態では、隣り合う取付部84間のピッチは定まらず、取付部84間のピッチが、複数列に並設される配線器具間のピッチに合うように、壁板用取付押さえ金具80の位置合わせが必要であった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数列に並設される配線器具間のピッチを合わせつつ、壁材の裏側に簡単に位置決めすることができる器具取付枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配線器具を取着するために対向配置された一対の取着部を枠本体に少なくとも一組備え、壁材に四角形状に形成された壁孔を介して前記壁材の裏側に配置されるとともに、前記取着部を用いて前記配線器具が前記壁材に設置されることで、前記壁材の裏側に設置される器具取付枠であって、前記枠本体の一側面に、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに、前記一側面から立設され、前記壁孔の四つの内側面に当接して前記枠本体の移動を規制する規制部を有し、さらに、他の器具取付枠を組み合わせた際、互いに当接する当接部を有しており、前記当接部同士を当接させることにより構成される複数組の取着部が、複数の配線器具間のピッチと同じピッチで配置されるとともに、前記複数の配線器具を並設するための複数列用壁孔の四つの内側面に対し前記規制部が当接するように構成されたことを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の器具取付枠において、前記枠本体は、前記配線器具を保持し、かつ前記壁材の表側に配置された器具保持枠と共に該壁材を挟持する一対の挟持片と、該挟持片の長辺方向の一端部を連結する連結片とからなるコ字状に形成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の器具取付枠において、前記規制部は前記挟持片それぞれの長辺方向の両端側に設けられるとともに、前記挟持片の他端側に設けられた規制部が前記当接部として機能することを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の器具取付枠において、前記当接部として機能する規制部は、前記挟持片の他端よりも外方に突出するように形成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の器具取付枠において、前記当接部は、前記規制部における前記挟持片からの突出側に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数列に並設される配線器具間のピッチを合わせつつ、壁材の裏側に簡単に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の器具取付枠、及び器具保持枠を示す斜視図。
【図2】(a)は器具取付枠を示す正面図、(b)は器具取付枠を示す断面図。
【図3】器具取付枠を壁材の裏側に配置した状態を示す正面図。
【図4】器具取付枠を壁材の裏側に配置した状態を示す断面図。
【図5】(a)は器具取付枠を壁材に押し付けた状態を示す正面図、(b)は壁材に表示された突起跡及び罫書線を示す正面図。
【図6】配線器具を壁材に設置した状態を示す正面図。
【図7】配線器具を壁材に設置した状態を示す断面図。
【図8】(a)は別例の器具取付枠を示す正面図、(b)は器具取付枠を組み付けた状態を示す正面図。
【図9】(a)は別例の器具取付枠を示す正面図、(b)は器具取付枠を組み付けた状態を示す正面図。
【図10】別例の器具取付枠を示す正面図。
【図11】(a)は別例の器具取付枠を示す正面図、(b)は実施形態の器具取付枠と別例の器具取付枠を組み付けた状態を示す正面図。
【図12】別例の器具取付枠を組み付けた状態を示す正面図。
【図13】(a)及び(b)は背景技術を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、器具取付枠11は、壁材Wに配線器具Hを設置するために、壁材Wに形成された壁孔Waを介して壁材Wの裏側に配置されて使用されるものである。また、器具取付枠11は、壁材Wに配線器具Hを複数列(本実施形態では2列)並設するために、壁材Wの裏側に複数(本実施形態では二つ)配置されて使用される場合と、配線器具Hを1列だけ設置するために、図2(a)に示すように、壁材Wの裏側に1つ配置されて使用する場合とに、使い分け可能になっている。なお、図1に示すように、配線器具Hを2列並設する場合の複数列用壁孔Waは、横長四角形状をなし、四つの内側面である上側面Wa1、下側面Wa2、右側面Wa3、及び左側面Wa4によって囲み形成されている。一方、図2(a)に示すように、配線器具Hを1列設置する場合の一列用壁孔Wbは、縦長四角形状をなし、四つの内側面である上側面Wb1、下側面Wb2、右側面Wb3、及び左側面Wb4によって囲み形成されている。なお、図2(a)及び図3に示すように、複数列用壁孔Waと、一列用壁孔Wbは、それぞれ上下方向への長さNa1,Nb1は同じであるとともに、左右方向への長さNa2,Nb2が異なっている。
【0017】
まず、器具取付枠11単体について説明する。器具取付枠11の枠本体12は、合成樹脂材料により縦長のコ字状に形成されるとともに、上下に対向する挟持片13と、両挟持片13の長辺方向の両端部のうちの一端部同士を連結する連結片14とからなる。枠本体12は、連結片14の長辺方向が長辺方向となり、挟持片13の長辺方向が枠本体12の短辺方向となる。また、一対の挟持片13と、連結片14とから、枠本体12の内側に、開口部15が囲み形成されている。開口部15は、両挟持片13の他端側が、開放されるとともに、開口部15の長辺方向への長さL1は、複数列用壁孔Wa、及び一列用壁孔Wbそれぞれの上下方向への長さNa1,Nb1より短くなっている。また、開口部15の短辺方向への長さL2も、一列用壁孔Wbの短辺方向への長さNb2より短くなっている。また、枠本体12において、連結片14の長辺方向への長さT1は、複数列用壁孔Wa、及び一列用壁孔Wbの長辺方向への長さNa1,Nb1より長く、枠本体12において、挟持片13の長辺方向への長さT2は、一列用壁孔Wbの開口幅、すなわち短辺方向への長さNb2と同じになっている。
【0018】
枠本体12において、縦長のコ字状をなす前面(一側面)全体のうち、挟持片13の開口部15側の縁部を除いた部位は、壁材Wの裏側から壁材Wの裏面に当接する当接面12aとなっている。この当接面12aは縦長のコ字状をなすとともに、壁材Wの裏面において、壁孔Waの縁部に当接するようになっている。図1、図2(a)及び(b)に示すように、両挟持片13の前面(枠本体12の前面)には、係止部としてそれぞれ薄板状をなす係止突部17が一対ずつ前方へ突設されるとともに、各係止突部17は弾性変形可能になっている。上側の各係止突部17の先端には、爪片17aが上方に向かうに従い尖るように形成されるとともに、下側の各係止突部17の先端には、爪片17aが下方に向かうに従い尖るように形成されている。
【0019】
各挟持片13において、左右に隣り合う一対の係止突部17の間には、螺入孔19が枠本体12を厚み方向に貫通して形成されている。この螺入孔19には、ナット(図示せず)が、枠本体12の厚み方向へ移動不能に嵌入されるとともに、このナットにより螺入孔19の内周面に雌ねじが形成されている。よって、本実施形態では、螺入孔19及びナットにより取着部が形成されるとともに、螺入孔19は上下に対向する位置に配置されて上下一組となっている。
【0020】
両挟持片13の前面(枠本体12の前面)において、枠本体12の短辺方向に沿った各係止突部17の外側であり、各挟持片13の長辺方向の両端側には、それぞれ規制部としての薄板状をなす第1規制突部181と第2規制突部182が前方に向けて突設されている。第1及び第2規制突部181,182は矩形板状をなし、その長辺方向が、枠本体12の短辺方向(左右方向)へ延びるとともに、短辺方向が、枠本体12に対する前後方向へ延びるように形成されている。左右一対の第1規制突部181と第2規制突部182は、それぞれ枠本体12の短辺方向へ延びる同一平面S上に位置している。さらに、第1及び第2規制突部181,182の短辺方向への長さ(当接面12aからの突出長さ)は、壁材Wの厚み(壁孔Waの厚み)より短くなっている。
【0021】
また、図2(a)及び図3に示すように、上側の第1及び第2規制突部181,182の上面と、下側の第1及び第2規制突部181,182の下面との間の距離K1は、複数列用壁孔Wa及び一列用壁孔Wbの上下方向への長さNa1,Nb1より僅かに短くなっている。さらに、左右一対の第1及び第2規制突部181,182において、長辺方向の外側端間の距離K2は、一列用壁孔Wbの短辺方向への長さNb2より僅かに短くなっている。そして、第1及び第2規制突部181,182を一列用壁孔Wb内に挿入したとき、第1及び第2規制突部181,182は、一列用壁孔Wbの各角部の内側に位置するようになっている。
【0022】
両挟持片13の長辺方向一端(左端)側に設けられた第1規制突部181の前面において、長辺方向の外側端(左側端)の上下それぞれには罫書用突起18bが前方に向けて突設されている。各罫書用突起18bは、三角錐状をなし、前方に向かうに従い尖るように形成されている。また、各挟持片13の左右の第1規制突部181と第2規制突部182を、挟持片13の長辺方向へ延びる一纏まりの規制部材と想定とした場合、挟持片13と同じ長さの規制部材が、挟持片13の長辺方向に沿って位置ずれした位置に配置されている。詳細には、規制部材は、挟持片13の長辺方向に沿って連結片14の幅分だけ内側へ位置ずれした位置に配置されている。
【0023】
上下両挟持片13において、左右一対の第1及び第2規制突部181,182のうち、挟持片13の長辺方向の他端側に設けられた第2規制突部182は、その先端側が挟持片13の長辺方向の他端より外方に突出している。そして、第2規制突部182において、挟持片13から突出した部位は、挟持片13上に位置する基端側より薄く形成されている。第2規制突部182の突出側において、基端側と先端側との厚みの差によって形成された段部には、他の器具取付枠11の第2規制突部182が当接する当接部182aが形成されている。
【0024】
そして、図3に示すように、他の器具取付枠11を上下反転させ、第2規制突部182同士を突き合わせるとともに、両第2規制突部182の当接部182a同士を当接させると、第2規制突部182の先端同士が上下に重合するようになっている。第2規制突部182同士を重合させたとき、二つの第2規制突部182の上面及び下面はそれぞれ同じ厚み内で同一面上に位置するようになっている。
【0025】
また、当接部182a同士を当接させ、両器具取付枠11の外側に第1規制突部181が配設された状態において、左右両外側の第1規制突部181の外側端間の距離K2aは、複数列用壁孔Waの開口幅、すなわち左右辺方向への長さNa2より僅かに短くなっている。そして、四つの第1規制突部181は、複数列用壁孔Waの各角部の内側に位置するようになっているとともに、四つの罫書用突起18bは、複数列用壁孔Waの各角部の内側に位置するようになっている。
【0026】
また、当接部182a同士を当接させた状態において、左右の螺入孔19間のピッチPは、JISに規格された配線器具H間のピッチと同じになっている。そして、枠本体12に、係止突部17、第1及び第2規制突部181,182、及び螺入孔19が形成されて器具取付枠11が形成されている。
【0027】
次に、配線器具Hを保持する器具保持枠20について説明する。
図1に示すように、器具保持枠20は、縦長の四角枠状に形成されるとともに、器具保持枠20の内側には、縦長四角形状の保持孔21が形成されている。なお、器具保持枠20の長辺方向への長さM1は、複数列用壁孔Wa及び一列用壁孔Wbの長辺方向への長さNa1,Nb1より長くなっている。一方、器具保持枠20の短辺方向への長さM2は、壁孔Waの短辺方向への長さNa2,Nb2より短くなっている。器具保持枠20の上下両部には、横長の挿通孔22が器具保持枠20を厚み方向に貫通して形成されている。
【0028】
次に、器具取付枠11及び器具保持枠20を二つずつ用いて配線器具Hを複数列に亘って壁材Wに設置する方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、壁材Wの表側で、隣り合う第2規制突部182の当接部182aを当接させつつ、複数列用壁孔Waを形成する位置に、四つの罫書用突起18bが複数列用壁孔Waの四つの角部の内側に位置するように二つの器具取付枠11を配置する。そして、両器具取付枠11を壁材Wの表面に押し付けて四つの罫書用突起18bを壁材Wの表面に食い込ませる。次に、図5(b)に示すように、両器具取付枠11を壁材Wから取り外すと、四つの罫書用突起18bが食い込んだ位置それぞれに突起跡Rが形成される。そして、四つの突起跡Rを直線状の罫書線Qで結ぶと、複数列用壁孔Waの外形線が壁材Wに罫書かれる。その後、罫書線Qに沿って壁材Wを切除することにより壁材Wに複数列用壁孔Waが穿設される。
【0029】
次に、配線器具Hを各器具保持枠20の保持孔21に保持させるとともに、各器具保持枠20の上側の挿通孔22にビス23を挿通する。そして、このビス23を、各器具取付枠11の上側の螺入孔19に挿入するとともに、ナットに螺入し、各器具取付枠11に器具保持枠20を仮固定する。すると、器具取付枠11と器具保持枠20は、それぞれビス23を回動軸として互いに回動自在に連結される。
【0030】
さらに、各配線器具HにケーブルK(図7参照)を接続する。そして、二つの器具取付枠11において、各器具保持枠20を壁材Wの表側に配置しつつ、器具取付枠11のみを複数列用壁孔Waを通過させる。このとき、ビス23を回動中心として器具取付枠11を回動させ、複数列用壁孔Waの開口縁を開口部15内に位置させるようにし、器具取付枠11を複数列用壁孔Waを通過させる。すると、各器具保持枠20は、それぞれ壁材Wの表側に配置されながら、各器具取付枠11のみが壁材Wの裏側に配置されるとともに、ビス23により、器具取付枠11は壁材Wの裏側に支持される。
【0031】
続いて、図3及び図4に示すように、壁材Wの裏側で、各器具取付枠11の当接面12aを壁材Wの裏面に当接させるとともに、隣り合う第2規制突部182の当接部182aを当接させつつ、第1規制突部181を複数列用壁孔Wa内に挿入する。上側の第1規制突部181においては、右側の第1規制突部181は、上面が複数列用壁孔Waの上側面Wa1に当接するとともに、右側端が、上側面Wa1に隣り合う右側面Wa3に当接する。左側の第1規制突部181は、上面が複数列用壁孔Waの上側面Wa1に当接するとともに、左側端が、上側面Wa1に隣り合う左側面Wa4に当接する。
【0032】
下側の第1規制突部181においては、右側の第1規制突部181は、下面が複数列用壁孔Waの下側面Wa2に当接支持されるとともに、右側端が、下側面Wa2に隣り合う右側面Wa3に当接する。左側の第1規制突部181は、下面が複数列用壁孔Waの下側面Wa2に当接支持されるとともに、左側端が、下側面Wa2に隣り合う左側面Wa4に当接する。
【0033】
そして、第1及び第2規制突部181,182が壁孔Waに挿入された状態では、下側の第1及び第2規制突部181,182が、複数列用壁孔Waの下側面Wa2に支持されることにより、二つの器具取付枠11が複数列用壁材Wに位置決めされる。この位置決め状態では、器具取付枠11の開口部15が、複数列用壁孔Waから壁材Wの表側に臨むとともに、螺入孔19も複数列用壁孔Waから壁材Wの表側に臨んでいる。
【0034】
さらに、図4に示すように、上側の係止突部17の各爪片17aを、複数列用壁孔Waの上側面Wa1に食い込ませて係止させるとともに、下側の係止突部17の各爪片17aを、複数列用壁孔Waの下側面Wa2に食い込ませて係止させる。すると、各爪片17aの係止により、両器具取付枠11が壁材Wの裏側へ落下することが規制される。また、図3に示すように、二つの器具取付枠11が位置決めされた状態では、上下一組の螺入孔19が左右に二列に並設されるとともに、左右の螺入孔19間のピッチPは、複数列に配置された配線器具H間のピッチになっている。
【0035】
続いて、各器具取付枠11に対し、上側のナットに螺入されたビス23をさらに螺入する。また、各器具保持枠20の下側の挿通孔22に対し、ビス23を挿通するとともに、そのビス23を各器具取付枠11の下側の螺入孔19のナットに螺入する。そして、両ビス23を増締めすると、ビス23のナットへの螺進に伴い両器具保持枠20が壁材Wに引寄せられるとともに、図6及び図7に示すように、各器具取付枠11の両挟持片13と、器具保持枠20の上下両部との間に壁材Wが挟持される。ビス23のナットへの螺入により、配線器具Hが壁材Wの表側に設置されることで、器具取付枠11が壁材Wの裏側に設置される。このとき、枠本体12の当接面12aが、壁材Wの裏面における複数列用壁孔Waの周縁部に当接する。
【0036】
次に、器具取付枠11の作用について説明する。
図3に示すように、二つの器具取付枠11を突き合わせ、第1及び第2規制突部181,182を複数列用壁孔Wa内に挿入した状態では、四つの第1規制突部181が、複数列用壁孔Waの四つの内側面Wa1〜Wa4に当接する。このため、二つの器具取付枠11に対し、上下左右のいずれかの方向へ移動させる力が作用しても、第1規制突部181が移動方向の先にある内側面Wa1〜Wa4に当接し、二つの枠本体12の上下左右方向への移動が規制される。その結果、器具取付枠11が、開口部15及び螺入孔19が壁材Wの表側に臨む位置で位置決めされる。
【0037】
さらに、四つの第1規制突部181が複数列用壁孔Waの内側面Wa1〜Wa4に当接した状態では、左右の螺入孔19間のピッチPが、配線器具H同士のピッチと同じに位置合わせされている。このため、二つの器具取付枠11のナットに対するビス23の螺入作業を行うと、二列の配線器具Hが所定のピッチで壁材Wに設置される。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)器具取付枠11において、枠本体12の前面に第1及び第2規制突部181,182を突設するとともに、第2規制突部182に当接部182aを形成した。そして、二つの器具取付枠11を壁材Wの裏側に配置し、第1及び第2規制突部181,182を複数列用壁孔Waに挿入しつつ、当接部182a同士を当接させると、二つの器具取付枠11で左右に配置された螺入孔19が、そのピッチPが配線器具H設置用のピッチと同じとなるように配置される。したがって、当接部182aを当接させるだけで、螺入孔19間のピッチPを合わせることができ、器具取付枠11を移動させてピッチPを合わせる場合と比べて、器具取付枠11を簡単に位置合わせすることができる。
【0039】
(2)器具取付枠11において、枠本体12の前面に第1及び第2規制突部181,182を突設した。そして、第1及び第2規制突部181,182を複数列用壁孔Waに挿入すると、第1規制突部181が複数列用壁孔Waの四つの内側面Wa1〜Wa4に当接して、器具取付枠11の開口部15が複数列用壁孔Waに臨む位置に位置決めすることができる。したがって、第1及び第2規制突部181,182を複数列用壁孔Waに挿入し、当接部182aを当接させるだけで、器具取付枠11を位置決めすることができ、器具取付枠11の位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0040】
(3)各器具取付枠11の当接面12aを壁材Wの裏面に当接させた状態では、第1及び第2規制突部181,182は複数列用壁孔Wa内に位置し、壁材Wの表側に突出しないため、複数列用壁孔Wa内で第1及び第2規制突部181,182を曲げたり、折り取る必要がない。よって、当接面12aを壁材Wの裏面に当接させつつ第1及び第2規制突部181,182を複数列用壁孔Waに挿入するだけで、器具取付枠11の位置決め作業が完了し、位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0041】
(4)枠本体12は、一対の挟持片13と、それら挟持片13の長辺方向の一端部を連結する連結片14とからコ字状に形成されている。このため、二つの器具取付枠11の当接部182a同士を当接させても、器具取付枠11の一部が複数列用壁孔Wa内の中央付近を横断することがない。したがって、二つの器具取付枠11を壁材Wの裏側に配置しても、それら器具取付枠11が配線器具H設置の妨げになることがない。
【0042】
(5)一列用壁孔Wbを用いて配線器具Hを設置する場合、第1規制突部181及び第2規制突部182が、一列用壁孔Wbの四つの内側面Wb1〜Wb4に当接し、器具取付枠11を位置決めする。そして、複数列用壁孔Waを用いて複数列の配線器具Hを設置する場合、四つの第1規制突部181によって位置決めされるとともに、第2規制突部182の当接部182a同士の当接によって、螺入孔19のピッチPが決定される。したがって、第2規制突部182は、位置決め機能と、ピッチPの決定機能とを有する。よって、位置決め機能と、ピッチPの決定機能とを別々の部材で発揮させる場合と比べると、器具取付枠11の構成を簡単にすることができる。
【0043】
(6)当接部182aは、第2規制突部182の先端側の厚みを基端側より薄くすることで形成される段部によって形成されている。そして、当接部182a同士を当接させた状態では、器具取付枠11同士を互いに近づける方向への力が作用しても、当接部182a同士の当接により、器具取付枠11同士が移動することを抑制することができる。したがって、当接部182a同士の当接により、螺入孔19間のピッチPが狭くなる方向へ変化することを抑制することができる。
【0044】
(7)第2規制突部182は、各挟持片13の長辺方向の他端から外方に突出するとともに、その突出側に当接部182aが形成されている。このため、当接部182a同士の当接は、挟持片13同士を当接させることなく行うことができ、当接部182aに加え、挟持片13も当接させる場合と比べると、二つの器具取付枠11を組み合わせる作業を簡単に行うことができる。
【0045】
(8)枠本体12には、係止突部17が形成されるとともに、この係止突部17は、複数列用壁孔Waの上側面Wa1及び下側面Wa2に係止する。このため、ビス23を器具取付枠11の螺入孔19に螺入する際、器具取付枠11に壁材Wの裏側へ押す力が作用しても、係止突部17の係止により器具取付枠11の壁材Wの裏側への移動を規制することができる。したがって、ビス23の螺入作業時に、器具取付枠11を手で押さえて壁材Wの裏側へ移動することを規制する必要がなく、ビス23の螺入作業を簡単に行うことができる。
【0046】
(9)器具取付枠11において、枠本体12を、一対の挟持片13と、挟持片13の一端部同士を連結する連結片14とから、コ字状に形成した。このため、器具取付枠11が有底四角箱状に形成される場合と比べると、枠本体12の開口部15を利用することで、複数列用壁孔Wa及び一列用壁孔Wbに対し器具取付枠11を通過させる作業を容易に行うことができ、結果として器具取付枠11を壁材Wの裏側に簡単に配置することができる。
【0047】
(10)器具取付枠11の枠本体12には、第1規制突部181及び第2規制突部182に加え、第1規制突部181には罫書用突起18bが形成されている。このため、第1及び第2規制突部181,182により器具取付枠11を位置決めすることができるとともに、罫書用突起18bにより壁材Wに複数列用壁孔Waを穿設する作業を簡単に行うことができる。そして、罫書用突起18bは、第1及び第2規制突部181,182の前面に形成されており、第1及び第2規制突部181,182が複数列用壁孔Waに挿入されると、壁材Wに食い込むことなく複数列用壁孔Wa内に配置される。したがって、罫書用突起18bが壁材Wの裏側での器具取付枠11の配置の妨げになることがない。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、第1規制突部181に罫書用突起18bを設けたが、罫書用突起18bは無くてもよい。
【0049】
○ 実施形態では、枠本体12に係止突部17を設けたが、係止突部17は無くてもよい。
○ 実施形態では、第2規制突部182の挟持片13からの突出側の厚みを変化させて当接部182aを形成したが、第2規制突部182の突出側における先端を当接部としてもよい。この場合、図8(a)に示すように、上側の第2規制突部182は、下側の第2規制突部182に比べて長辺方向(左右方向)への長さが短くなっている。そして、図8(b)に示すように、他の器具取付枠11を上下反転させ、第2規制突部182の先端同士を当接させてもよい。なお、図8では、係止突部17の図示を省略しているが、係止突部17は枠本体12に突設されていてもよい。
【0050】
○ 実施形態では、第2規制突部182に当接部182aを形成したが、両挟持片13の長辺方向の他端そのものを当接部としてもよい。この場合、図9(a)に示すように、上側の挟持片13には、第2規制突部182は形成されず、下側の挟持片13のみに第2規制突部182が形成されている。また、下側の第2規制突部182は、挟持片13の他端より突出しないように、挟持片13上に形成されている。そして、図9(b)に示すように、他の器具取付枠11を上下反転させ、挟持片13の他端同士を当接させてもよい。なお、図9では、係止突部17の図示を省略しているが、係止突部17は枠本体12に突設されていてもよい。
【0051】
○ 器具取付枠11を一列用壁孔Wbで使用する際、図10に示すように、枠本体12の他端側に、側板30を組み付けて使用してもよい。この側板30には、第2規制突部182の当接部182aに当接する当接片31が突設されている。そして、当接部182aに当接片31を当接させると、第1規制突部181と、第2規制突部182及び当接片31とから、一列用壁孔Wbに対し、器具取付枠11と側板30を位置決めすることができる。なお、図10では、係止突部17の図示を省略しているが、係止突部17は枠本体12に突設されていてもよい。
【0052】
○ 実施形態では、器具取付枠11を、取着部としての螺入孔19及びナットを上下一組備えるタイプに具体化したが、器具取付枠11を、挟持片13の長辺方向に延長し、取着部を上下二組以上備えるタイプに変更してもよい。図11(a)に示すように、器具取付枠41はコ字状に形成されるとともに、枠本体12は上下に対向する挟持片13と、両挟持片13の長辺方向の両端部のうちの一端部同士を連結する連結片14とからなる。なお、図示しないが、器具取付枠41において、開口部15の長辺方向への長さは、複数列用壁孔Waの上下方向への長さNa1より短くなっている。また、開口部15の左右方向への長さも、複数列用壁孔Waの短辺方向への長さNa2より短くなっている。また、枠本体12において、連結片14の長辺方向への長さは、複数列用壁孔Waの長辺方向への長さNa1より長く、枠本体12において、挟持片13の長辺方向への長さは、複数列用壁孔Waの開口幅の長さNa2と同じになっている。
【0053】
両挟持片13の前面(枠本体12の前面)には、係止部としてそれぞれ薄板状をなす係止突部17が前方へ突設されるとともに、各係止突部17は弾性変形可能になっている。各挟持片13には上下一対の螺入孔19が2組形成されている。左右の螺入孔19間のピッチPは、JISに規格された配線器具H間のピッチと同じになっている。各挟持片13の長辺方向の両端側には、それぞれ薄板状をなす規制部としての第1規制突部181と第2規制突部182が前方に向けて突設されている。そして、左右一対の第1及び第2規制突部181,182において、長辺方向の外側端間の距離は、複数列用壁孔Waの長さNa2より僅かに短くなっている。
【0054】
図11(b)に示すように、螺入孔19を2組備えた器具取付枠41と、螺入孔19を1組備えた器具取付枠11とを組み付け、螺入孔19を3組備えるタイプを形成してもよく、この場合は、壁材Wには配線器具Hを3列設置するための複数列用壁孔Wcが穿設される。また、左右方向に隣り合う各螺入孔19間のピッチは、JISに規格された配線器具H間のピッチと同じになる。
【0055】
○ 図12に示すように、螺入孔19を2組備える器具取付枠41同士を組み付け、螺入孔19を4組備えるタイプを形成してもよい。この場合、壁材Wには配線器具Hを4列設置するための複数列用壁孔Wdが穿設される。
【0056】
○ 実施形態では、第1規制突部181を、複数列用壁孔Waの各角部の内側に配置されるように枠本体12に設けたが、二つの器具取付枠11の各第1規制突部181の位置は、複数列用壁孔Waの四つの内側面Wa1〜Wa4に当接するのであれば、任意に変更してもよい。例えば、第1規制突部181が、各内側面Wa1〜Wa4の中央に当接するように変更してもよい。
【0057】
○ 実施形態では、規制部として第1及び第2規制突部181,182に具体化したが、規制部をコ字状をなす突条に具体化してもよい。この突条は、上下両挟持片13及び連結片14に跨って延びるように形成される。そして、突条の上面が複数列用壁孔Waの上側面Wa1に当接するとともに、突条の下面が複数列用壁孔Waの下側面Wa2に当接する。さらに、一方の器具取付枠11の突条の左側面が複数列用壁孔Waの左側面Wa4に当接するとともに、他の器具取付枠11の突条の右側面が、複数列用壁孔Waの右側面Wa3に当接する。
【0058】
○ 実施形態では、規制部として第1及び第2規制突部181,182に具体化したが、上下右側の第1規制突部181のいずれか一つを削除してもよい。このように構成した場合、二つの器具取付枠11において、一方の器具取付枠11における左側の一つの第1規制突部181が、複数列用壁孔Waの左側面Wa4に当接し、他の器具取付枠11における右側の第1規制突部181が、複数列用壁孔Waの右側面Wa3に当接する。また、第2規制突部182がそれぞれ上側面Wa1及び下側面Wa2に当接するため、器具取付枠11の移動が規制される。
【0059】
○ 実施形態では、器具取付枠11を、挟持片13を長辺方向に延長し、取着部を上下三組以上備えるタイプに変更してもよい。
○ 実施形態では、器具取付枠11をコ字状の枠本体12を備えるタイプに具体化したが、枠状の枠本体12を備えるタイプに変更してもよい。この場合、枠本体12の側縁が当接部となる。
【0060】
○ 実施形態では、配線器具Hを壁材Wに設置する際、ビス23によって器具取付枠11と器具保持枠20を組み付けた状態で、器具取付枠11を壁材Wの裏側に配置するようにしたが、これに限らない。すなわち、器具取付枠11と器具保持枠20を組み付けず、器具取付枠11のみを壁材Wの裏側に配置し、その後、ビス23によって器具取付枠11に器具保持枠20を組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
H…配線器具、P…ピッチ、W…壁材、Wa…壁孔としての複数列用壁孔、Wb…壁孔としての一列用壁孔、Wa1〜Wa4,Wb1〜Wb4…壁孔の内側面、11,41…器具取付枠、12…枠本体、12a…当接面、13…挟持片、14…連結片、19…取着部としての螺入孔、20…器具保持枠、181…規制部としての第1規制突部、182…規制部としての第2規制突部、182a…当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線器具を取着するために対向配置された一対の取着部を枠本体に少なくとも一組備え、壁材に四角形状に形成された壁孔を介して前記壁材の裏側に配置されるとともに、前記取着部を用いて前記配線器具が前記壁材に設置されることで、前記壁材の裏側に設置される器具取付枠であって、
前記枠本体の一側面に、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに、
前記一側面から立設され、前記壁孔の四つの内側面に当接して前記枠本体の移動を規制する規制部を有し、
さらに、他の器具取付枠を組み合わせた際、互いに当接する当接部を有しており、
前記当接部同士を当接させることにより構成される複数組の取着部が、複数の配線器具間のピッチと同じピッチで配置されるとともに、前記複数の配線器具を並設するための複数列用壁孔の四つの内側面に対し前記規制部が当接するように構成された器具取付枠。
【請求項2】
前記枠本体は、前記配線器具を保持し、かつ前記壁材の表側に配置された器具保持枠と共に該壁材を挟持する一対の挟持片と、該挟持片の長辺方向の一端部を連結する連結片とからなるコ字状に形成されている請求項1に記載の器具取付枠。
【請求項3】
前記規制部は前記挟持片それぞれの長辺方向の両端側に設けられるとともに、前記挟持片の他端側に設けられた規制部が前記当接部として機能する請求項2に記載の器具取付枠。
【請求項4】
前記当接部として機能する規制部は、前記挟持片の他端よりも外方に突出するように形成されている請求項3に記載の器具取付枠。
【請求項5】
前記当接部は、前記規制部における前記挟持片からの突出側に形成されている請求項3又は請求項4に記載の器具取付枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate