説明

噴出器

【課題】容器内に残った内容物を完全に使い切ることができるとともに、簡単な構成で安価にかつ安定した作動で、倒立状態でも使用することができる噴出器を提供する。
【解決手段】使用時に、押下釦30が押し下げられてステム21が押し込まれることにより、容器10内の化粧液等の内容物が吸上げ管13で吸い上げられてステム21を通して押下釦の噴口34から外部に向けて噴射される。そのような噴出器において、容器内の底部に、容器内の内容物が浸透保持される内容物保持部材40が配置され、その内容物保持部材で保持する内容物を吸上げ可能に内容物保持部材に吸上げ管13の先端が挿入される。内容物保持部材としては、スポンジ等の多孔質材料や、バフ等のその他の吸水性材料などが用いられる。一材料に限らず、複数材料を用いて形成されるものであってもよい。ネット状の部材で被ったり、ケース内に収納したりして設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用時に、押下釦やトリガーレバーなどの操作部材が操作されてステムが押し込まれることにより、容器内の化粧液・薬液等の内容物が吸上げ管で吸い上げられてステムを通して例えば押下釦の噴口から外部に向けて噴射される、化粧用・薬用等の特にポンプ式の噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の噴出器では、化粧液等の内容物が収容される容器の口部にポンプ式やエアゾール式の噴出装置が取り付けられる。そして、その噴出装置の、押下釦やトリガーレバーなどの操作部材が操作されることにより、ステムが押し込まれて容器の内容物が吸い上げられ、ステムを通して例えば押下釦の噴口から外部に向けて噴射されるようになっている。
【0003】
このような噴出器にあっては、容器の内容物を最後まできれいに噴射することができるように、噴出装置から吸上げ管をのばして先端が容器の底部にまで達するようにし、容器の内容物が吸上げ管を通して最後まで吸い上げられるようにされていた。
【0004】
また、この種の噴出器の中には、例えば特許文献1に記載されるように、可撓性を有する吸上げ管の先端に重りが付けられ、容器を倒立して使用する場合には吸上げ管がたわんで重りが重力にしたがい噴出装置側に移動し、正立状態だけでなく容器を逆さにして使用することができるようにされたものがある。
【0005】
他方、ポンプ式の噴出器の場合、例えば特許文献2に記載されるように、正立使用時には吸上げ管から下方の第1開口を通して、倒立使用時には逆に下方となる第2開口を通して容器から内容物を吸い上げ、その内容物をシリンダ内に流入してステムを通して例えば押下釦の噴口から外部に向けて噴射されるようになっており、正立使用時には、第2開口を通してシリンダ内に空気が流入することを第2逆止弁で防止し、倒立使用時には、吸上げ管から第1開口を通してシリンダ内に空気が流入することを第1逆止弁で防止するようにされていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−135456号公報
【特許文献2】特開2005−288210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述したような従来の噴出器では、吸上げ管の先端が位置する近辺では、内容物を残らず吸い上げることができるが、先端から離れた位置では内容物を完全に最後まで吸い上げることができない課題があった。また、特許文献1に記載されるような噴出器では、吸上げ管の全部または一部を蛇腹で構成したり、重りを設けてその抜け止めをしたりしなければならず、構成が複雑となってコスト高となるとともに、作動の確実性に欠ける課題があった。他方、特許文献2に記載されるような噴出器でも、それぞれ逆止弁を有する開口を2つずつ設けなければならないから、同様に構成が複雑となってコスト高となる課題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、容器内に最後まで残った内容物を完全に使い切ることができるとともに、簡単な構成で安価にかつ安定した作動で、倒立状態でも使用することができる噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、この発明は、使用時に、押下釦やトリガーレバーなどの操作部材が操作されてステムが押し込まれることにより、容器内の化粧液等の内容物が吸上げ管で吸い上げられてステムを通して例えば押下釦の噴口から外部に向けて噴射される、化粧用・薬用等の噴出器において、
容器内の底部に、容器内の内容物が浸透保持される内容物保持部材が配置され、その内容物保持部材で保持する内容物を吸上げ可能に内容物保持部材に吸上げ管の先端が挿入されるなどして接触されていることを特徴とする。内容物保持部材としては、スポンジ等の多孔質材料や、バフ等のその他の吸水性材料などが用いられる。一材料に限らず、複数材料を用いて形成されるものであってもよく、ネット状の部材で被ったり、ケース内に収納したりして設けてもよい。
【0010】
内容物保持部材は、容器内の底部に残った内容物を吸引することができるように底部いっぱいの大きさとされて、底部に貼り付けて設けられたり、吸上げ管の先端で支持して設けられたりするとよい。
【0011】
そして、容器の内容物が内容物保持部材に浸透保持されるようにし、正立使用時には、押下釦やトリガーレバーなどの操作部材が操作されてステムが押し込まれることにより、内容物保持部材に浸透保持されている容器内の化粧液等の内容物が吸上げ管で吸い上げられ、ステムを通して例えば押下釦の噴口から外部に向けて噴射されるようにする。倒立使用時には、内容物保持部材で保持した状態で残った内容物が吸上げ管で吸い上げられ、ステムを通して外部に向けて噴射される。内容物保持部材で保持する内容物がなくなったときには、正立状態に戻して内容物を内容物保持部材に浸透して後、再び倒立状態として内容物保持部材内の内容物が吸上げ管で吸い上げられて噴射されるようにする。
【発明の効果】
【0012】
したがって、この発明によれば、最後まで残った内容物が内容物保持部材に浸透保持されるので、容器内における吸上げ管の先端位置に関係なく、その内容物保持部材で保持する内容物を吸上げ管で吸い上げて残りの内容物を完全に使い切ることができる。また、倒立状態としたときには、内容物保持部材内に残った内容物が吸上げ管で吸い上げられ、ステムを通して外部に向けて噴射されるので、容器内の底部に内容物保持部材が配置されてその内容物保持部材内の内容物を吸上げ可能に吸上げ管を設けるだけのきわめて簡単な構成で安価に、かつ動く部分がないので安定した作動で、倒立状態でも使用可能とすることができる。もちろん、正立状態や倒立状態に限らず、噴出器を斜めや真横に保持した状態でも、内容物保持部材内に残った内容物が吸上げ管で吸い上げられ、ステムを通して外部に向けて噴射されるので、同様に使用可能とすることができる。
【0013】
内容物保持部材が、容器内の底部いっぱいの大きさとされると、内容物を底部周囲に残すことなく、完全に使い切ることができる。また、内容物保持部材が容器の底部に接着等で貼り付けて設けられたり、吸上げ管の先端で支持して設けられたりすると、内容物保持部材が容器の底部に確実に保持されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明による往復ポンプ式噴出器を、左半分を縦断面にして示す。
【0015】
図中符号10は、容器である。容器10は、プラスチック材料でボトル形状につくられており、その口部10a外周に雄ネジが設けられて、図示省略するが、この例では、内部に、内容物として化粧液を収納されている。
その容器10の口部10aには、ポンプ式噴出装置Pが、後述するごとく取り付けられている。
【0016】
図2には、口部10aに取り付けられたポンプ式噴出装置Pの部分を拡大して示す。
図示するように、ポンプ式噴出装置Pには、シリンダ12が備えられている。シリンダ12は、下部の小径部12aと、真ん中の中径部12bと、上部の大径部12cとからなる。
【0017】
小径部12a内には、パイプ状の吸上げ管13の基端部が圧入されている。小径部12a内と中径部12b内とは、開口14で連通されている。そして、中径部12b内には、圧縮コイルスプリング15が挿入されて後、その圧縮コイルスプリング15上に載せてピストン16の下部が挿入される。ここで、ピストン16と中径部12b内周面との間は、液密に保持されている。
【0018】
ピストン16には、下方から途中まで軸穴17が形成されており、その軸穴の奥から径方向に1または複数の連通孔18があけられている。そして、ピストン16の外周には、連通孔18を塞ぐように弾性材料よりなる開閉弁20が開閉自在に取り付けられている。そのようなピストン16の上部は、ステム21の中心孔19に挿入される。ステム21は、下部がシリンダ12の大径部12c内に液密に挿入されている。
【0019】
そして、ステム21の先端がねじキャップ22の頂部中心孔23に挿入され、シリンダ12の大径部12cにねじキャップ22が被せられて、シリンダ12の中径部12bと大径部12cとの間の外周に形成されるフランジ12d上にそれに抱きつくように載せられる。すると、ピストン16の外周傾斜面25にステム21の内周段部26が押し当てられて圧縮コイルスプリング15がたわんで、ピストン16およびステム21がシリンダ12内に押し込まれ、頂部中心孔23の孔縁とステム21の外周段部24との間でパッキン27が挟持されて、それらの間が密閉される。
【0020】
そして、頂部中心孔23から突出するステム21の先端部が押下釦30の中心穴31に圧入されてステム21の先端部に押下釦30が取り付けられ、ポンプ式噴出装置Pが形成されている。押下釦30には、中心穴31と連通して径方向に噴出路32が形成されており、外周から噴射キャップ33が取り付けられている。噴射キャップ33には、噴口34が形成されている。
【0021】
上述のようにして形成したポンプ式噴出装置Pは、吸上げ管13を容器10内に入れて先端を容器10の底部に向けてのばし、ねじキャップ22が口部10aに被せられてその内周面に形成する雌ねじが口部10aの外周に形成されている雄ねじにねじ付けられることにより、シリンダ12のフランジ12dと口部10aとの間でパッキン35を圧縮して口部10aに取り付けられている。
【0022】
ところで、図1に示すように、容器10の底部には、容器10内の化粧液が浸透保持される内容物保持部材40が配置される。例えば、内容物保持部材40は、圧縮して口部10aから挿入したり、二体で構成する容器10を分割して挿入したりして、容器10内に配置可能とされる。そして、その容器10の底部に配置される内容物保持部材40に挿入するなどして吸上げ管13の先端が接触されることにより、その内容物保持部材40内の化粧液が吸上げ管13で吸上げ可能とされている。
【0023】
内容物保持部材40としては、化粧液を浸透して保持することができるスポンジ等の多孔質材料や、バフ等のその他の吸水性材料などが用いられる。一材料で形成されるものであってもよいが、複数材料を用いて形成されるものであってもよい。化粧液の浸透を妨げなければ、まわりをネット状の部材で被ったり、またケース内に収納したりして設けてもよい。
【0024】
そして、容器10の化粧液が内容物保持部材40に浸透保持されるようにし、正立使用時には、図3に示すように、押下釦30に手を掛けて押下釦30が押し下げ操作されると、ステム21が押し込まれることにより、圧縮コイルスプリング15に抗してピストン16もともにシリンダ12内に押し込まれ、次第に圧力室Aの圧力が上昇し、やがてその圧力の上昇によりピストン16が押し込まれて外周傾斜面25がステム21の内周段部26から引き離され、圧力室A内の化粧液がステム21の中心孔19から押下釦30の中心穴31を通して噴出路32に導かれ、噴射キャップ33の噴口34から外部に向けて噴射される。
【0025】
噴射後、押下釦30から手を離すと、圧縮コイルスプリング15の付勢力でピストン16が押し上げられ、外周傾斜面25がステム21の内周段部26に押し当てられてステム21もともに押し上げられる。すると、圧力室A内の圧力が低下して開閉弁20が弾性変形して開き、内容物保持部材40に浸透保持されている容器10内の化粧液が吸上げ管13で吸い上げられ、開口14からシリンダ12の中径部12bの内に入り、ピストン16の軸穴17から連通孔18を通して圧力室Aに導かれ、圧力室Aが化粧液で満たされたところで連通孔18が開閉弁20により塞がれる。
【0026】
そして、次の押下釦30の押し下げ操作により、圧力室Aの化粧液が再びステム21を通して押下釦30の噴口34から噴射される。
【0027】
倒立使用時には、化粧液が容器10内で噴出装置P側に移動するものの、内容物保持部材40で保持した状態で残った化粧液が吸上げ管13で吸い上げられ、ステム21を通して外部に向けて噴射される。内容物保持部材40で保持する化粧液がなくなったときには、正立状態に戻して化粧液を内容物保持部材40に浸透して後、再び倒立状態として内容物保持部材40に残った化粧液が吸上げ管13で吸い上げられて噴射される。
【0028】
最後まで残った化粧液が内容物保持部材40に浸透して保持されるので、容器内における吸上げ管13の先端位置に関係なく、その内容物保持部材40で保持する化粧液を吸上げ管13で吸い上げて化粧液を残すことなく完全に最後まで使い切ることができる。また、倒立状態としたときには、内容物保持部材40内に残った化粧液が吸上げ管13で吸い上げられ、ステム21を通して外部に向けて噴射されるので、容器10内の底部に内容物保持部材40が配置されてその内容物保持部材40内の化粧液を吸上げ可能に吸上げ管13を設けるだけのきわめて簡単な構成で安価に、しかも動く部分がないから安定した作動で、倒立状態でも使用可能とすることができる。もちろん、正立状態や倒立状態に限らず、噴出器を斜めや真横に保持した状態でも、内容物保持部材40内に残った化粧液が吸上げ管13で吸い上げられ、ステム21を通して外部に向けて噴射されるので、同様に使用可能とすることができる。すなわち、噴出器の保持姿勢に気を使うことなく、正立・倒立・斜め・真横などのいかなる姿勢においても、噴出器からの噴射を可能とすることができる。
【0029】
内容物保持部材40は、容器10内の底部いっぱいの大きさとされると、化粧液を底部周囲に残すことなく、完全に使い切ることができる。また、内容物保持部材40が容器10の底部に接着などにより貼り付けて設けられたり、吸上げ管13の先端で支持して設けられたりすると、内容物保持部材40が容器10の底部に動くことなく確実に保持されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】左半分を縦断面にして示す、この発明による往復ポンプ式噴出器の正面図である。
【図2】図1に示す噴出器のポンプ式噴出装置部分の拡大図である。
【図3】そのポンプ式噴出装置の押下釦を押し込んだ状態の同拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
10 容器
10a 口部
13 吸上げ管
21 ステム
30 押下釦(操作部材)
34 噴口
40 内容物保持部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に、操作部材が操作されてステムが押し込まれることにより、その容器内の内容物が吸上げ管で吸い上げられて前記ステムを通して噴口から外部に向けて噴射される噴出器において、
前記容器内の底部に、その容器内の内容物が浸透保持される内容物保持部材が配置され、その内容物保持部材で保持する内容物を吸上げ可能に前記内容物保持部材に前記吸上げ管の先端が接触されていることを特徴とする、噴出器。
【請求項2】
前記内容物保持部材が、前記容器内の底部いっぱいの大きさとされていることを特徴とする、請求項1に記載の噴出器。
【請求項3】
前記内容物保持部材が、前記容器内の底部に貼り付けて設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の噴出器。
【請求項4】
前記内容物保持部材が、前記吸上げ管の先端で支持して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184199(P2008−184199A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20686(P2007−20686)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】