説明

噴射ノズル

【課題】スワールチップに供給される液体に偏流が生じにくく、液体の噴射精度を向上できる噴射ノズルを提供すること。
【解決手段】液体を噴射する噴射ノズル1であって、中空部11を有する筒状に形成されたノズルボディ10と、複数の旋回溝24が形成されたスワールチップ20と、中空部11に挿入されてスワールチップ20を押圧するスワールチップトップ30と、ノズルボディ10に着脱可能に接続されスワールチップトップ30を位置決めするセパレートパイプ40と、ノズルボディ10の周面に形成されノズルボディ10の周面の外側と中空部11とを連通させる開口部50と、スワールチップトップ30の外周面とノズルボディ10の内周面との間に形成され開口部50から中空部11に流入した液体をスワールチップ20の周面に流通可能な整流空間60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料等の液体を噴射する噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重油や軽油等の液体の燃料を燃焼室の内部で燃焼させて水を加熱し、蒸気又は温水を生成するボイラ装置においては、燃焼させる燃料を燃焼室に噴射して供給する噴射ノズルが用いられている。この噴射ノズルは、中空部を有する円筒状のノズルボディと、このノズルボディの先端部に配置され、複数の旋回溝及び噴射口を有するスワールチップと、を備える(例えば、特許文献1参照)。
このような噴射ノズルでは、ノズルボディの基端側から中空部に供給された燃料が、スワールチップに供給される。そして、スワールチップに供給された燃料は、旋回溝を通過することで旋回流となり、噴射口から噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−18135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、以上の噴射ノズルにおいては、ノズルボディの中空部を流通する燃料の流れに偏りが生じてしまうと(偏流が生じてしまうと)、スワールチップに形成された複数の旋回溝に均一に燃料が供給されない。そして、複数の旋回溝に均一に燃料が供給されないと、旋回流が適切に形成されず、噴射口から安定的に燃料が噴射されない。その結果、噴射ノズルから噴射される燃料の噴射量が不安定となり、燃料の噴射精度(流量精度)が低下してしまう場合があった。
【0005】
従って、本発明は、スワールチップに供給される液体に偏流が生じにくく、液体の噴射精度を向上できる噴射ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を噴射する噴射ノズルであって、中空部を有する筒状に形成されると共に先端部及び基端部が開放されたノズルボディと、前記中空部に挿入されて前記ノズルボディの先端部に配置され、柱状に形成されると共に周面から中心部に向かって延びる複数の旋回溝が形成されたスワールチップと、前記スワールチップが配置された状態で前記中空部に挿入されて該スワールチップに当接し、該スワールチップを前記ノズルボディの先端側に押圧する筒状のスワールチップ押圧部材と、前記ノズルボディの基端部に着脱可能に接続され、前記スワールチップ押圧部材を位置決めする位置決め部材と、前記ノズルボディの基端側の周面に形成され該ノズルボディの周面の外側と前記中空部とを連通させる開口部と、前記スワールチップ押圧部材の外周面と前記ノズルボディの内周面との間に形成され前記開口部から前記中空部に流入した液体を前記スワールチップの周面に流通可能な整流空間と、を備える噴射ノズルに関する。
【0007】
また、前記開口部は、前記ノズルボディの周方向に一定の間隔をあけて形成された複数の貫通穴により構成されることが好ましい。
【0008】
また、前記貫通穴の数は、前記旋回溝の数以上であることが好ましい。
【0009】
また、前記スワールチップ押圧部材は、前記スワールチップ押圧部材の軸方向に延びるリターン中空部と、前記スワールチップ押圧部材における前記スワールチップとの当接面に形成され該当接面側と前記リターン中空部とを連通させるリターン穴部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記整流空間における前記開口部よりも基端側は、閉鎖されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の噴射ノズルによれば、スワールチップに供給される液体に偏流が生じにくく、液体の噴射精度を向上できる噴射ノズルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の噴射ノズル1を一部断面で示した側面図である。
【図2A】図1のA−A断面図である。
【図2B】図1のB−B断面図である。
【図2C】図1のC−C断面図である。
【図2D】図1のD−D断面図である。
【図2E】図1のE−E断面図である。
【図2F】図1のF−F断面図である。
【図3】図1に示した噴射ノズル1を基端側の斜め上方から視た分解斜視図である。
【図4】図1に示した噴射ノズル1を先端側の斜め上方から視た分解斜視図である。
【図5A】本発明の噴射ノズル1におけるノズルボディ10の正面図である。
【図5B】本発明の噴射ノズル1におけるノズルボディ10を一部断面で示した側面図である。
【図6A】本発明の噴射ノズル1におけるスワールチップ20を一部断面で示した側面図である。
【図6B】本発明の噴射ノズル1におけるスワールチップ20の後面図である。
【図7A】本発明の噴射ノズル1におけるスワールチップトップ30の前面図である。
【図7B】本発明の噴射ノズル1におけるスワールチップトップ30を一部断面で示した側面図である。
【図8】本発明の噴射ノズル1におけるセパレートパイプ40を一部断面で示した側面図である。
【図9】本発明の噴射ノズル1における燃料の流れを示す縦断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の噴射ノズル1Aを一部断面で示した側面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】図10に示した噴射ノズル1Aを先端側の斜め上方から視た分解斜視図である。
【図13A】本発明の第2実施形態の噴射ノズル1Aにおけるスワールチップトップ30Aの前面図である。
【図13B】本発明の第2実施形態の噴射ノズル1Aにおけるスワールチップトップ30Aを一部断面で示した側面図である。
【図14】本発明の第2実施形態の噴射ノズル1Aにおける燃料の流れを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の噴射ノズルの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、第1実施形態の噴射ノズル1につき、図1〜図8を参照しながら説明する。
第1実施形態の噴射ノズル1は、液体の燃料を燃焼させる燃焼室を備えるボイラ装置に用いられ、燃料を燃焼室に噴射して供給する。この噴射ノズル1は、図1〜図4に示すように、ノズルボディ10と、スワールチップ20と、スワールチップ押圧部材としてのスワールチップトップ30と、ノズルボディ10とスワールチップトップ30との間に形成される整流空間60と、位置決め部材としてのセパレートパイプ40と、を備える。
【0014】
ノズルボディ10は、図1、図3及び図4に示すように、中空部11を有する略円筒状に形成されている。このノズルボディ10の先端部10aには、図5A及び図5Bに示すように、中空部11を外部に連通させる先端開口12が形成されている。また、ノズルボディ10の基端部10bには、中空部11を外部に連通させる基端開口13が形成されている。即ち、ノズルボディ10の先端部10aに先端開口12が形成され、基端部10bに基端開口13が形成されることにより、中空部11は、外部に開放されている。
【0015】
先端開口12は、図1に示すように、中空部11よりも小径に構成されている。先端開口12の外周部となる環状部分12aは、後述するスワールチップ20を突き当てる位置決め部となる。
【0016】
ノズルボディ10は、図5Bに示すように、基端部10b側に位置するホルダ挿入部位14と、このホルダ挿入部位14に形成される雄ねじ部16、雌ねじ部17及び開口部50と、ホルダ挿入部位14よりも先端側に位置するホルダ突出部位15と、を備える。
【0017】
ホルダ挿入部位14は、噴射ノズル1が挿入可能に構成されると共に噴射ノズル1を支持するノズルホルダ100(図1参照)に挿入される部位で、外径がホルダ突出部位15よりも小径に設定されている。
雄ねじ部16は、ホルダ挿入部位14の先端寄りの位置における外面に設けられる。この雄ねじ部16は、ノズルホルダ100の内周面に螺合される。雄ねじ部16の外径は、図5Bに示すように、雄ねじ部16の前後に位置するホルダ挿入部位14a,14bよりも大きく、かつ、ホルダ突出部位15よりも小さく構成されている。
【0018】
雌ねじ部17は、図5Bに示すように、ノズルボディ10の基端部10bの内周面に形成されている。この雌ねじ部17には、後述するセパレートパイプ40が螺合される。
【0019】
開口部50は、図5Bに示すように、ホルダ挿入部位14において、雄ねじ部16よりも基端側に形成されている。開口部50は、ノズルボディ10の周面(周壁)の外側と中空部11とを連通させる。噴射ノズル1に供給される燃料は、ノズルボディ10の外部(後述の第1流路92、図9参照)から、この開口部50を通って中空部11に導入される。
本実施形態では、開口部50は、図2Dに示すように、ノズルボディ10の周方向に一定の間隔をあけて形成された複数の貫通穴51により構成される。本実施形態では、貫通穴51は、図2Dに示すように、ホルダ挿入部位14bの周方向に等間隔で、8個配置されている。
【0020】
ホルダ突出部位15は、噴射ノズル1がノズルホルダ100に挿入されて取り付けられた状態で、ノズルホルダ100から突出する部位である。このホルダ突出部位15は、図5A及び図5Bに示すように、螺合操作部15aと、ボディ先端部15bと、を備える。
螺合操作部15aは、雄ねじ部16をノズルホルダ100の内周面に螺合させる際に把持する部位であり、図5Aに示すように、外周が六角形になっている。
ボディ先端部15bは、螺合操作部15aよりも先端側の部位で、外周が先端に向かって徐々に縮径するテーパ状になっている。
【0021】
スワールチップ20は、図1に示すように、ノズルボディ10の基端部10bの基端開口13から中空部11に挿入されて、ノズルボディ10の先端部10aに配置される。
スワールチップ20は、図1及び図6Aに示すように、ノズルボディ10の先端部10aの先端開口12を挿通する噴射径設定筒部21と、この噴射径設定筒部21の基端に連なる渦流生成筒部22と、を備える。スワールチップ20は、噴射径設定筒部21と渦流生成筒部22とによって、全体的な外観は短尺の柱状に形成されている。
【0022】
噴射径設定筒部21は、図6A及び図6Bに示すように、燃料を噴射する流路となる内周部に形成され、噴射される燃料を所定の噴射径に整流するためのオリフィス23を備える。
渦流生成筒部22は、外径がノズルボディ10の先端開口12よりも大きく構成されている(図1参照)。
渦流生成筒部22は、図6A及び図6Bに示すように、複数の旋回溝24を備える。複数の旋回溝24は、渦流生成筒部22の外周面22bから中心部に向かって延びて形成され、渦流生成筒部22の外部と内部とを連通させる。本実施形態では、旋回溝24は、8本形成されており、これら8本の旋回溝24は、それぞれ、噴射径設定筒部21側とは逆側の端面22aから噴射径設定筒部21側に延びて形成される切れ込みにより構成される。即ち、本実施形態では、複数の旋回溝24は、端面22a側に開放されている。
【0023】
複数の旋回溝24は、後述の整流空間60を流通して渦流生成筒部22の外周に到達した燃料を当該渦流生成筒部22の内周面の接線方向に流入させる。そして、渦流生成筒部22の外周側から噴射径設定筒部21のオリフィス23に送られる燃料流は、複数の旋回溝24による流れ方向の規制により、渦流になる。
【0024】
以上のスワールチップ20は、図1に示すように、渦流生成筒部22と噴射径設定筒部21との間の段差20aがノズルボディ10の先端部10aの環状部分12aに突き当たることで、ノズルボディ10の先端部10aに位置決めされる。
【0025】
スワールチップトップ30は、図1に示すように、ノズルボディ10の先端部10aにスワールチップ20が配置された状態で、ノズルボディ10の基端開口13から中空部11に挿入されてスワールチップ20に当接する。そして、スワールチップ20をノズルボディ10の先端側に押圧する。
【0026】
スワールチップトップ30は、図7A及び図7Bに示すように、中空部33を有する筒状に構成され、先端がスワールチップ20に当接する筒状本体部31と、この筒状本体部31の基端部の外周に鍔状に張り出して形成されたシール用鍔部32と、を備える。
【0027】
筒状本体部31は、図7Bに示すように、先端側が閉鎖されると共に基端が開放された有底筒状に形成されている。筒状本体部31の先端面31aは、図7A及び図7Bに示すように、スワールチップ20の渦流生成筒部22の端面22aに面接触する平坦面に形成されている。そして、筒状本体部31の先端面31aは、渦流生成筒部22に形成されている旋回溝24のスワールチップトップ30側の開放端を閉鎖する。
【0028】
筒状本体部31の外径は、図1に示すように、ノズルボディ10の中空部11の径よりも小さく構成されている。これにより、筒状本体部31の外周面31bと、ノズルボディ10の内周面11bとの間には、後述する整流空間60が形成される。また、筒状本体部31の先端側の外周には、図1及び図7Bに示すように、外径が先端に向かって徐々に増大するテーパ面35が設けられている。
【0029】
シール用鍔部32は、図1に示すように、スワールチップトップ30をノズルボディ10の中空部11に挿入した状態で、開口部50よりもノズルボディ10の基端部10b側に配置される。このシール用鍔部32の外周面32aは、図2Eに示すように、ノズルボディ10の内周面11bに液密に面接触するように、外径が仕上げられている。
【0030】
整流空間60は、図1に示すように、スワールチップトップ30の外周面31bと、ノズルボディ10の内周面11bとの間に形成される。この整流空間60は、開口部50から中空部11の内部に流入した液体(燃料)をスワールチップ20における渦流生成筒部22の外周に導く。この整流空間60は、開口部50から中空部11に流入した燃料が渦流生成筒部22の外周へ到達するまでに、中空部11の周方向における燃料流速の偏りがなくなるように、燃料流を整流する。整流空間60を形成する筒状本体部31の外周面31b、及びノズルボディ10の内周面11bは、流路の途中に燃料流の流れを乱す凹凸が形成されないように、凹凸のない円周面に形成されている。
【0031】
整流空間60の渦流生成筒部22側は、筒状本体部31の先端側に設けられたテーパ面35によって、流路断面が減少する。これにより、整流空間60を流れる燃料流は、渦流生成筒部22側で縮流となり、流れがより安定した状態になる。
また、開口部50よりもノズルボディ10の基端部10b側となる整流空間60の基端側は、シール用鍔部32の外周面32aと内周面11bとの面接触により、封止(閉鎖)される。
【0032】
セパレートパイプ40は、図8に示すように、筒状に構成され、先端部40aの外面に形成された雄ねじ部42と、基端部40bの外面に形成されたリング装着溝43と、を備える。
雄ねじ部42は、ノズルボディ10の基端部10bに形成された雌ねじ部17に螺合される(図1及び図2F参照)。リング装着溝43には、シールリング71が装着される。シールリング71は、噴射ノズル1がノズルホルダ100に取り付けられた状態で、ノズルホルダ100の内壁に当接する(図示せず)。
【0033】
セパレートパイプ40は、雄ねじ部42をノズルボディ10の雌ねじ部17に螺合させることで、ノズルボディ10に着脱可能に接続される。セパレートパイプ40の先端部40aは、ノズルボディ10の基端部10bに接続された状態で、スワールチップトップ30の後端(基端)に当接する。
【0034】
より詳細には、セパレートパイプ40の先端部40aがスワールチップトップ30の後端に当接するまで、雄ねじ部42を雌ねじ部17に締め付けることで、先端部40aがスワールチップトップ30をノズルボディ10の先端側に押圧して、スワールチップトップ30を位置決めする。
【0035】
次に、第1実施形態の噴射ノズル1における燃料の流れについて、図9を参照しながら説明する。
第1実施形態の噴射ノズル1は、図9に示すように、ノズルホルダ100に取り付けられて用いられる。そして、この状態で、ノズルホルダ100の内周面91とノズルボディ10のホルダ挿入部位14の外周面との間には、燃料を外部から噴射ノズル1に供給する流路である第1流路92が形成される。
【0036】
噴射ノズル1に供給される燃料は、まず、第1流路92をノズルボディ10の軸方向に沿って、噴射ノズル1の先端側に向かって(図9の矢印F1方向に)流通する。第1流路92をノズルボディ10の軸方向に沿って流通した燃料は、開口部50を構成する複数の貫通穴51を通って中空部11に形成された整流空間60に流入される。ここで、燃料が開口部50を通って整流空間60に流入することで、燃料の流れ方向は、ノズルボディ10の軸方向(F1方向)からノズルボディ10の径方向(図9の矢印F2方向)に略90度変更される。
【0037】
次いで、整流空間60に流入した燃料は、再び流れ方向が略90度変更されて、ノズルボディ10の軸方向に沿って、スワールチップ20側に向かって(図9の矢印F3方向に)整流空間60を流通する。
整流空間60を、ノズルボディ10の軸方向に沿って流通した燃料は、渦流生成筒部22の外周面から、複数の旋回溝24を介して、スワールチップ20の内周に導かれ、渦流となってオリフィス23から噴射される(図9の矢印F4参照)。
【0038】
以上の噴射ノズル1によれば、第1流路92をF1方向に流れる燃料は、一度、F2方向に流れが変更された後、再度、F3方向に流れが変更されて整流空間60を流通する。これにより、第1流路92から整流空間60に流入する燃料は、整流空間60の入り口において、流れ方向が変更されることで、複数の貫通穴51が設けられた部分と、貫通穴51が設けられていない部分とにおいて、流速の差が低減された状態で、整流空間60を流通する。また、整流空間60に供給された燃料は、整流空間60の内部をスワールチップトップ30の先端に配置されている渦流生成筒部22の外周に向かって流れる間に、周方向に拡散して、流速がより均質化された燃料流に整流される。
【0039】
以上説明した第1実施形態の噴射ノズル1によれば、以下のような効果を奏する。
【0040】
(1)噴射ノズル1を、ノズルボディ10の基端側の周面に形成した開口部50と、この開口部50から中空部11に流入した燃料をスワールチップ20側に流通させる整流空間60と、を含んで構成した。これにより、ノズルボディ10の外周面から中空部11に向かって噴射ノズル1の径方向(F2方向)に流入した燃料を、スワールチップトップ30の外周面に当てて噴射ノズル1の軸方向(F3方向)に変化させた後、整流空間60に沿って流通させられる。よって、開口部50を通過することで乱れた燃料の流れを、スワールチップトップ30の外周面に当てた後に整流空間60を流通させることで整流できるので、燃料の流れが均一になった状態で燃料をスワールチップ20に到達させられる。その結果、スワールチップ20に流入する燃料の偏流の発生を防げるので、燃料を安定的に噴射できる。
【0041】
(2)開口部50を、ノズルボディ10の周方向に一定の間隔をあけて形成された複数の貫通穴51により構成した。これにより、整流空間60に、複数箇所(貫通穴51の装備箇所)から同時に、かつ略均等に燃料を流入させられるので、整流空間60に流入される燃料の流速の偏りを低減できる。よって、流速の偏りを低減した状態で燃料を整流空間60に供給できるので、より偏流の発生を低減した状態で燃料をスワールチップ20に供給できる。
【0042】
(3)貫通穴51の数を、旋回溝24の数以上とした。これにより、整流空間60の入り口において、スワールチップ20に形成された旋回溝24の配列ピッチ以下で、周方向に均等に燃料を供給できるので、整流空間60の軸方向の長さに依存する整流性能を低めて噴射ノズル1の小型化を図ったとしても、スワールチップ20には偏流のない燃料流を供給できる。よって、噴射ノズル1の小型化を図れる。
【0043】
(4)整流空間60における開口部50よりも基端側を、ノズルボディ10の基端部10bの内周に面接触するスワールチップトップ30のシール用鍔部32によって、閉鎖して構成した。これにより、整流空間60に供給された燃料がノズルボディ10の基端側から漏出しないので、整流空間60の内部においてスワールチップ20に向かう燃料流の整流性能が低下しない。よって、整流空間60の安定した整流性能を確保できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る噴射ノズル1Aについて、図10〜図13を参照しながら説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る噴射ノズル1Aを一部断面で示した側面図である。図11は、図10のA−A断面図である。図12は、図10に示した噴射ノズル1Aを先端側の斜め上方から視た分解斜視図である。図13Aは、第2実施形態に係る噴射ノズル1Aにおけるスワールチップトップ30Aの前面図である。図13Bは、第2実施形態の噴射ノズル1Aにおけるスワールチップトップ30Aを一部断面で示した側面図である。
【0045】
第2実施形態の噴射ノズル1Aは、第1実施形態の噴射ノズル1におけるスワールチップトップ30を、スワールチップトップ30Aに置き換えたもので、それ以外の構成は、第1実施形態と同一である。
尚、第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0046】
第2実施形態のスワールチップトップ30Aは、図13A及び図13Bに示すように、先端がスワールチップ20に当接する筒状本体部31と、この筒状本体部31の基端部の外周に鍔状に張り出して形成されたシール用鍔部32と、を備える。
【0047】
筒状本体部31の先端面31aは、図13Bに示すように、スワールチップ20の渦流生成筒部22の後端面に面接触する平坦面に形成されている。そして、先端面31aを構成する筒状本体部31の先端壁31cには、筒状本体部31内に形成されたリターン中空部33Aを渦流生成筒部22の旋回溝24の一部に連通させるリターン穴部37が、貫通形成されている。
【0048】
リターン中空部33Aは、第1実施形態のスワールチップトップ30の筒状本体部31に形成された中空部33と同一構造で、筒状本体部31の基端側に開放している。
【0049】
即ち、第2実施形態におけるスワールチップトップ30Aは、スワールチップトップ30Aの軸方向に延びるリターン中空部33Aと、スワールチップトップ30Aにおけるスワールチップ20との当接面である先端面31aに形成され該先端面31a側とリターン中空部33Aとを連通させるリターン穴部37と、を備えている。
【0050】
リターン穴部37は、渦流生成筒部22の旋回溝24と位置が整合するように、所定半径の円周状の8箇所に装備されている。周方向に隣接するリターン穴部37相互間の間隔は、略一定に構成されている。
【0051】
スワールチップトップ30Aにおけるリターン中空部33Aの基端側の開放部は、図14に示すように、セパレートパイプ40の中空部45に連通する。そして、中空部45は、当該噴射ノズル1Aが収容保持されるノズルホルダ100側に装備された燃料戻し装置(不図示)に接続される。
【0052】
不図示の燃料戻し装置は、中空部45及びリターン中空部33A、リターン穴部37を介して、リターン穴部37が連通している旋回溝24の一部に吸引力を作用させ、旋回溝24に流入する燃料の一部を燃料戻し装置側に回収して、オリフィス23に供給される燃料の流量を調整する。
【0053】
以上説明した噴射ノズル1Aでは、燃料は、図14に示すように、矢印F1,F2,F3、及びF4の流れで流通して、オリフィス23から噴射される。また、整流空間60から旋回溝24に供給される燃料のうちの一部は、図14に示す破線の矢印F5、F6で示すように、リターン穴部37、リターン中空部33A、中空部45を介して、中空部45に接続されている不図示の燃料戻し装置に戻される。
【0054】
以上説明した第2実施形態の噴射ノズル1Aによれば、上記(1)〜(4)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0055】
(5)スワールチップトップ30Aを、リターン中空部33Aと、スワールチップトップ30Aにおけるスワールチップ20との当接面である先端面31aに形成され該先端面31a側とリターン中空部33Aとを連通させるリターン穴部37と、を含んで構成した。これにより、整流空間60からスワールチップ20に供給する燃料の一部を、リターン穴部37及びリターン中空部33Aを介して噴射ノズル1Aの外部に戻せる。よって、スワールチップ20には、偏りがなく、かつ適正な流量の燃料を供給できるので、噴射ノズル1Aにおける燃料の噴射精度を更に向上させられる。
【0056】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、スワールチップトップ30とセパレートパイプ40とを別部材により構成したが、これに限らない。即ち、スワールチップトップ30とセパレートパイプ40とを一部材により一体的に形成してもよい。
【0057】
また、第1実施形態では、スワールチップ20を、噴射径設定筒部21及び渦流生成筒部22を含んで構成したが、これに限らない。即ち、スワールチップ20を、渦流生成筒部22のみを含んで構成し、このスワールチップ20の先端側に、スワールチップ20とは別部材からなるオリフィスを配置してもよい。
【0058】
また、本発明の噴射ノズルが噴射する流体は、上記実施形態において示した燃料に限らない。本発明の噴射ノズルは、塗装装置に装備されて塗料等を噴射するノズルに応用することができ、また噴射する流体も液体に限らない。
【符号の説明】
【0059】
1、1A 噴射ノズル
10 ノズルボディ
10a 先端部
10b 基端部
11 中空部
11b 内周面
17 雌ねじ
20 スワールチップ
21 噴射径設定筒部
22 渦流生成筒部
23 オリフィス
24 旋回溝
30、30A スワールチップトップ(スワールチップ押圧部材)
31a 先端面(当接面)
31b 先端壁
32 シール用鍔部
40 セパレートパイプ(位置決めパイプ)
42 雄ねじ部
50 開口部
51 貫通穴
60 整流空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する噴射ノズルであって、
中空部を有する筒状に形成されると共に先端部及び基端部が開放されたノズルボディと、
前記中空部に挿入されて前記ノズルボディの先端部に配置され、柱状に形成されると共に周面から中心部に向かって延びる複数の旋回溝が形成されたスワールチップと、
前記スワールチップが配置された状態で前記中空部に挿入されて該スワールチップに当接し、該スワールチップを前記ノズルボディの先端側に押圧する筒状のスワールチップ押圧部材と、
前記ノズルボディの基端部に着脱可能に接続され、前記スワールチップ押圧部材を位置決めする位置決め部材と、
前記ノズルボディの基端側の周面に形成され該ノズルボディの周面の外側と前記中空部とを連通させる開口部と、
前記スワールチップ押圧部材の外周面と前記ノズルボディの内周面との間に形成され前記開口部から前記中空部に流入した液体を前記スワールチップの周面に流通可能な整流空間と、を備える噴射ノズル。
【請求項2】
前記開口部は、前記ノズルボディの周方向に一定の間隔をあけて形成された複数の貫通穴により構成される請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
前記貫通穴の数は、前記旋回溝の数以上である請求項2に記載の噴射ノズル。
【請求項4】
前記スワールチップ押圧部材は、
前記スワールチップ押圧部材の軸方向に延びるリターン中空部と、
前記スワールチップ押圧部材における前記スワールチップとの当接面に形成され該当接面側と前記リターン中空部とを連通させるリターン穴部と、を備える請求項1〜3のいずれかに記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記整流空間における前記開口部よりも基端側は、閉鎖されている請求項1〜4のいずれかに記載の噴射ノズル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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