説明

噴流風呂用ノズル装置

【課題】噴流孔が設けられた回転ノズル本体を備え、該回転ノズル本体の背面側から供給される湯水が噴流孔を介して浴槽内に噴射される噴流風呂用ノズル装置において、回転ノズル本体を支持するシャフトを不要として、装置構成の簡素化、耐久性の向上、メンテナンス性の向上を図る。
【解決手段】回転ノズル本体の正面側に、その回転中心点に当接する支点部を設け、回転ノズル本体の背面側に供給され噴流孔を介して噴射される湯水の水圧によって、回転ノズル本体を支点部に押し付けるとともに調心させつつ回転させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水と空気とを混合してなる気泡噴流や気泡を含まない湯水噴流を浴槽内の湯水内に回転させつつ噴射するための噴流風呂用ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来の噴流風呂用ノズル装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3314161号公報
【0004】
上記特許文献1に記載のノズル装置は、外形形状が略円形でその軸芯位置にシャフトが配置されると共に内部に噴流孔を有し該噴流孔の噴流口が前記軸芯位置より偏心した回転ノズル本体と、該回転ノズル本体の後方に配置されバスタブ内の湯を所定圧力で前記回転ノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスと、前記回転ノズル本体の噴流口の前方に配置された噴流口カバーとを備え、前記回転ノズル本体のシャフトを前記オリフィスと噴流口カバーの少なくとも一方で保持し、オリフィスから噴射される噴流で該回転ノズル本体をシャフトを中心に回転させることによって、前記噴流口から噴射される噴流の噴射方向を変化させるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のノズル装置では、オリフィスや噴流口カバーに支持させたシャフトによって回転ノズル本体を一定の軸芯位置で回転自在に支持しているが、回転軸芯を固定してしまうと、噴流の噴射に伴う各部の圧力変動に伴いシャフトの支持部にこじれ力が生じ、円滑な回転ノズル本体の回転を阻害してしまうことがあるとともに、シャフト支持部の耐久性を悪化する要因にもなる。さらに、シャフトやその支持部などの構造部材が必要であり、装置構成が複雑化し、部品点数の増大やコスト増を招く。
【0006】
そこで、本発明は、回転ノズル本体を支持するシャフトを不要としつつも、回転ノズル本体の背面側に供給される湯水の圧力によって回転ノズル本体を円滑に回転させることを可能とし、構造の簡素化によるコスト低減をも図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、噴流孔が設けられた回転ノズル本体を備え、該回転ノズル本体の背面側から供給される湯水が噴流孔を介して浴槽内に噴射される噴流風呂用ノズル装置において、前記回転ノズル本体はその軸芯位置にシャフトが設けられておらず、前記回転ノズル本体の正面側に、前記回転ノズル本体の回転中心点に当接する支点部を設け、前記回転ノズル本体の背面側に供給され噴流孔を介して噴射される湯水の水圧によって、前記回転ノズル本体を前記支点部に押し付けるとともに調心させつつ回転させるように構成したことを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
かかる本発明によれば、回転ノズル本体はその軸芯位置にシャフトが設けられていないので、シャフトを回転自在に支持する支持部も不要となり、部品点数の削減、ひいてはコスト低減が図られる。また、回転ノズル本体の背面側に供給され噴流孔を介して噴射される湯水の水圧によって、前記回転ノズル本体を前記支点部に押し付けるとともに調心させつつ回転させるように構成したので、シャフトがなくとも、回転ノズル本体を円滑に回転駆動することが可能となる。さらに、固定的なシャフトが存在しないので、回転ノズル本体が回転する際に無理なこじれ力が生じることがなく、回転動作の円滑性向上と各部の耐久性向上とが図られる。
【0009】
上記本発明の噴流風呂用ノズル装置において、前記回転ノズル本体の外周を覆うノズルカバーと、前記回転ノズル本体の正面側で前記ノズルカバーに着脱自体に取り付けられるノズル保持部材とをさらに備え、前記支点部は前記ノズル保持部材に設けられており、ノズル保持部材を取り外した状態で正面側からノズルカバー内の回転ノズル本体を着脱交換可能に構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0010】
これによれば、ノズル保持部材がノズルカバーに取り付けられている状態では、回転ノズル本体の正面側への移動をノズル保持部材の支点部によって阻止し、ノズルカバー内に回転ノズル本体を回転自在に収容しておくことが可能である。一方、ノズル保持部材をノズルカバーから取り外すことにより、ノズルカバーの正面側から回転ノズル本体を着脱交換可能であるので、回転ノズル本体の取り付けや取外しの作業が容易化し、メンテナンス性が向上する。したがって、利用者の好みに合わせた噴流孔の構造を有する複数の回転ノズル本体を交換部品として提供することで、利用者が容易に回転ノズル本体を交換して自分の好みに合わせた噴流水流によるマッサージ性を得ることが可能である。
【0011】
さらに、ノズルカバーに、回転ノズル本体の背面側側面を支持する受け部を設けることができる(請求項3)。
【0012】
これによれば、噴流の停止時に、回転ノズル本体の背面側側面を受け部によって支持して、回転ノズル本体が支点部から大きく離脱することを防止でき、噴流の再開時に噴流水圧によって迅速に回転ノズル本体を支点部に押し付けることができる。
【0013】
また、前記受け部は、回転ノズル本体の背面部に相対回転自在に嵌合するものとすることができる(請求項4)。
【0014】
これによれば、回転ノズル本体をより安定的にノズルカバー内の正常位置に保持しておくことができる。
【0015】
また、前記支点部は、回転ノズル本体に向けて突出する凸部からなり、回転ノズル本体の正面側側面の回転中心部には前記凸部に対応する凹部が形成されているものとすることができる(請求項5)。
【0016】
これによれば、回転ノズル本体から正面側に突出する軸部が無いので、浴槽側壁から内方への張り出し部位を無くすことができ、利用者が入浴時に違和感なく快適に利用することが可能になる。
【0017】
また、ノズル保持部材は、前記回転ノズル本体の正面側から指を回転ノズル本体まで差し入れることを防止する格子状の指詰め防止部を備えることができる(請求項6)。
【0018】
これによれば、指詰め防止部によって入浴者の指が回転動作中の回転ノズル本体に触れてしまうことが防止され、それにより回転ノズル本体の回転が停止してしまうことがなく、また、回転ノズル本体によって指を傷付けてしまうことも防止できる。特に、格子の隙間の大きさを、比較的小さな手をした若年齢の乳幼児や子供の指よりも小さくしておくことで、乳幼児や子供の指が不意に若しくは意図的に触れてしまうことを防止でき、回転ノズル本体に指を挟んだり、それが原因で転倒してしまうという危険性を回避できる。
【0019】
さらに、指詰め防止部の格子を構成する各線材の直径を0.6mm〜1.0mmとすることができる(請求項7)。
【0020】
これによれば、回転ノズル本体の正面側に格子状の指詰め防止部を設けつつも、この指詰め防止部による圧力損失を低減し、ノズルの回転力と噴出流量とを維持することができる。さらに、指詰め防止部の中央部を背面側から前記支点部で支持することにより、細径の線材により格子状に構成される指詰め防止部の強度を増すことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、回転ノズル本体はその軸芯位置にシャフトが設けられていないので、シャフトを回転自在に支持する支持部も不要となり、部品点数の削減、ひいてはコスト低減を図ることができる。また、回転ノズル本体の背面側に供給され噴流孔を介して噴射される湯水の水圧によって、前記回転ノズル本体を前記支点部に押し付けるとともに調心させつつ回転させるように構成したので、シャフトがなくとも、回転ノズル本体を円滑に回転駆動することができる。さらに、固定的なシャフトが存在しないので、回転ノズル本体が回転する際に無理なこじれ力が生じることがなく、回転動作の円滑性向上と各部の耐久性向上とを図ることができる。
【0022】
また、本発明の請求項2に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、ノズル保持部材がノズルカバーに取り付けられている状態では、回転ノズル本体の正面側への移動をノズル保持部材の支点部によって阻止し、ノズルカバー内に回転ノズル本体を回転自在に収容しておくことができる。一方、ノズル保持部材をノズルカバーから取り外すことにより、ノズルカバーの正面側から回転ノズル本体を着脱交換可能であるので、回転ノズル本体の取り付けや取外しの作業が容易化し、メンテナンス性を向上できる。したがって、利用者の好みに合わせた噴流孔の構造を有する複数の回転ノズル本体を交換部品として提供することで、利用者が容易に回転ノズル本体を交換して自分の好みに合わせた噴流水流によるマッサージ性を得ることができる。
【0023】
また、本発明の請求項3に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、噴流の停止時に、回転ノズル本体の背面側側面を受け部によって支持して、回転ノズル本体が支点部から大きく離脱することを防止でき、噴流の再開時に噴流水圧によって迅速に回転ノズル本体を支点部に押し付けることができる。
【0024】
また、本発明の請求項4に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、回転ノズル本体をより安定的にノズルカバー内の正常位置に保持しておくことができる。
【0025】
また、本発明の請求項5に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、回転ノズル本体から正面側に突出する軸部が無いので、浴槽側壁から内方への張り出し部位を無くすことができ、利用者が入浴時に違和感なく快適に利用することができる。
【0026】
また、本発明の請求項6に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、指詰め防止部によって入浴者の指が回転動作中の回転ノズル本体に触れてしまうことが防止され、それにより回転ノズル本体の回転が停止してしまうことがなく、また、回転ノズル本体によって指を傷付けてしまうことも防止できる。特に、格子の隙間の大きさを、比較的小さな手をした若年齢の乳幼児や子供の指よりも小さくしておくことで、乳幼児や子供の指が不意に若しくは意図的に触れてしまうことを防止でき、回転ノズル本体に指を挟んだり、それが原因で転倒してしまうという危険性を回避できる。
【0027】
また、本発明の請求項7に係る噴流風呂用ノズル装置によれば、回転ノズル本体の正面側に格子状の指詰め防止部を設けつつも、この指詰め防止部による圧力損失を低減し、ノズルの回転力と噴出流量とを維持することができる。さらに、指詰め防止部の中央部を背面側から前記支点部で支持することにより、細径の線材により格子状に構成される指詰め防止部の強度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置の全体斜視図である。
【図2】同ノズル装置の縦断面図である。
【図3】同ノズル装置の回転ノズル本体の交換作業工程を示す縦断面図である。
【図4】同ノズル装置の回転ノズル本体の拡大正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置の縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置の全体斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置の全体斜視図である。
【図8】噴流風呂装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
<第1の実施形態>
図1〜図4は、本発明の第1の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置1を示しており、該ノズル装置1は浴槽の側壁2に取り付けられ、適宜のポンプ装置により浴槽内の湯水を循環しつつ浴槽内に噴流を発生させるものである。なお、本実施例において、側壁2の内方を「正面側」といい、側壁2の後方を「背面側」という。
【0031】
本実施形態のノズル装置1は、浴槽の側壁2の背面側に配置されるオリフィス3を内部に設けた吐出配管4と、該吐出配管4の正面側に取り付け固定されるノズルカバー5と、該ノズルカバー5内に収容される回転ノズル本体6と、回転ノズル本体6をノズルカバー5内に保持しておくノズル保持部材7とを備えている。
【0032】
吐出配管4は、正面側が開口しかつ背面側が閉鎖された円筒状の外筒部8と、該外筒部8に同心状に配置されかつ外筒部8よりも小径の内筒部9と、内筒部9に連通する湯水供給口部10と、外筒部8と内筒部9との間の空間に連通するように外筒部8に設けられた空気供給口部11とを備えて樹脂材料により一体成形されている。湯水供給口部10と内筒部9とはほぼ直角に接続されたエルボ管を呈している。上記オリフィス3は内筒部9に着脱可能に内嵌されており、該オリフィス3の正面側端部よりも外筒部8の正面側端部は正面側に延設されている。
【0033】
ノズルカバー5は、回転ノズル本体6の外周側を覆う円筒状の収容筒部12を備えており、該収容筒部12は浴槽側壁2に設けられた取付孔13に側壁2正面側から挿入され吐出配管4の外筒部8に螺着されている。また、ノズルカバー5は、収容筒部12の正面側端部に設けられたフランジ部12aを備えており、一方、外筒部8の正面側端部にも同様にフランジ部8aが設けられ、これらフランジ部8a,12aによって側壁2をパッキン14を介して挟持することによって、ノズル装置1が側壁2に取付固定されている。収容筒部12の背面側端部には、中央部にオリフィス3よりも大径でかつオリフィス3に対して同心状の流通孔を有する受け部15が設けられている。該受け部15と前記オリフィス3との間には空気導入用の隙間が形成されており、オリフィス3からノズルカバー5内に噴射される湯水噴流の負圧によって、空気供給口部11から供給される空気を外筒部8と内筒部9との間の空間を介して引き込み、空気が混合された混合噴流として噴射し得るように構成されている。
【0034】
回転ノズル本体6は、全体として円錐台形状を呈し、ノズルカバー5の収容筒部12内に回転自在に収容されているとともに、オリフィス3に対して同心状に設けられている。回転ノズル本体6の背面には、オリフィス3から噴射される噴流が導入される円錐状の凹部6aが形成されている。また、回転ノズル本体6には、背面側から正面側に連通する噴流孔16が設けられている。該噴流孔16は複数、特に本実施例では2つ設けられており、各噴流孔16は背面側では前記凹部6aに開口形成されている。この2つの噴流孔16は、図1及び図4に示すように、回転ノズル本体6の軸中央に対して対称位置に設けられるとともに、各噴流孔16は、背面側から正面側に至るにしたがって軸方向外方に向きかつ回転ノズル本体の回転方向とは逆方向に向くように形成されている。回転ノズル本体6の背面はノズルカバー5の受け部15によって背面側から当接支持されているとともに、受け部15の内周縁は正面側に突設されていて該突設部15aが前記凹部6aに内嵌されている。また、回転ノズル本体6の正面の軸芯部には凹部6bが形成されている。
【0035】
ノズル保持部材7は、ノズルカバー5の収容筒部12の正面側端部に螺着される円環状の取付リング部18と、該リング部18に直径方向に架設された棒状の支持部19とを備えて樹脂材料により一体成形されており、リング部18と支持部19との間の開口部が、噴流の噴出口となる。支持部19の中央部の背面側には、前記凹部6b内に当接する支点部20が設けられている。該支点部20は、支持部19の背面側から突出させた凸部によって構成している。これら支点部20と凹部6bとは、軸中心が僅かに湾曲して突出乃至窪むように成形されている。なお、ノズル保持部材7を螺着する際の締付け回転方向と、装置作動時の回転ノズル本体6の回転方向とは一致させており、これにより作動中にノズル保持部材7が緩んで脱落することを防止している。
【0036】
次に、本実施形態の噴流風呂用ノズル装置1の動作について説明する。ポンプ装置を作動させることで吐出配管4の湯水供給口部10に供給された所定流量の湯水は、オリフィス3で所定圧力となって回転ノズル本体6の背面側凹部6a内に吐出される。このとき、空気供給口部11から外筒部8と内筒部9との間の空間に供給される空気と混合されて混合噴流となり、この混合噴流がさらに回転ノズル本体6の噴流孔16を通って浴槽内に噴射される。
【0037】
この時、噴流孔16は、背面側の開口と正面側の開口の開口位置を周方向にずらし、回転ノズル本体6表面に対してひねりを設けているので、噴流孔16を湯水が通過して浴槽内に噴射されると、その噴射の反力によって回転ノズル本体を回転させるモーメントが作用する。さらに、回転ノズル本体6の背面側に作用するオリフィス3からの噴流の圧力によって、支点部20に回転ノズル本体6の正面の中心部を押し付け、このように回転ノズル本体6を正面から点支持させた状態で背面に噴流の圧力を作用させ、上記したモーメントにより回転ノズル本体6を回転させることで回転ノズル本体6が調心されるようになるため、回転ノズル本体6を固定された軸芯位置で保持するシャフトを設けずとも、噴流の圧力バランス等によって回転ノズル本体6を一定軸芯で円滑に回転させることができ、むしろ回転時の接触部位が少なくなるためより円滑に回転ノズル本体6を回転させることが可能になる。
【0038】
また、オリフィス3側にシャフトの支持構造が不要となるため、オリフィス3の構造を簡素化でき、オリフィス3から噴射される噴流を均一なものとすることも可能である。
【0039】
また、大きな負荷が作用する支点部20と回転ノズル本体6表面の回転中心部とは、軸中心が僅かに湾曲して突出乃至窪む形状によって点で回転支持する構造としたので、回転動作時の摩擦抵抗が少なく、円滑な回転動作を行わせることが可能になる。
【0040】
また、利用者の好みに応じて異なるマッサージ性の噴流に変更したい場合には、図3に示すようにノズル保持部材7を取り外すことによって異なる構造の回転ノズル本体6に容易かつ迅速に変更することができ、利用者にとって最適なマッサージ感が得られるようにするためのメンテナンス性が非常に良好である。
【0041】
<第2の実施形態>
図5は本発明の第2の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置1を示しており、上記第1実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態では、支点部20を構成するノズル保持部材7の凸部と、回転ノズル本体6正面の回転中心部の凹部6bとが、軸中心が僅かに湾曲して突出乃至窪む金属プレート21,22によって形成されている。このように、本発明のノズル装置は回転ノズル本体6を軸で支持するものではなく、背面側からの噴流の水圧を受けて回転ノズル本体6を正面側の一点で当接支持するものであれば良い。金属プレートは凹部か凸部かどちらか一方へのインサートでも良い。
【0043】
また、ノズルカバー5の受け部15には回転ノズル本体6の背面側凹部6aに嵌合する支持筒部15aが設けられていない。これにより装置の停止中に仮に回転ノズル本体6が動作時の正常な軸芯位置からずれた場合でも、動作を再開して噴流による圧力が作用して回転ノズル本体6が回転すると支点部20に回転ノズル本体6を押し付ける力と回転モーメント力とにより回転ノズル本体6が調心され、円滑に回転させることができる。
【0044】
〈第3の実施形態〉
図6は本発明の第3の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置1を示しており、上記第1実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態では、ノズル保持部材7が、回転ノズル本体6の正面側から指を回転ノズル本体7まで差し入れることを防止する格子状の指詰め防止部23を備えて、適宜の硬質プラスチック樹脂材料により一体成形されている。上記支点部20は、指詰め防止部23の中央部に一体に設けられていて、この指詰め防止部23が支点部20の支持部19としても機能する。指詰め防止部23の格子の各空洞部の大きさは、乳幼児の平均的な指の大きさよりも小さくなされており、乳幼児の指でも指詰め防止部23を超えて回転ノズル本体6まで差し入れることができないようにしている。
【0046】
〈第4の実施形態〉
図7は本発明の第4の実施形態に係る噴流風呂用ノズル装置1を示しており、上記第3実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0047】
本実施形態では、格子状の指詰め防止部23は、直径が0.6mm〜1.0mmの細径の金属線材によって構成され、硬質プラスチック製のノズル保持部材7に適宜の手段によって一体的に取付けられている。ノズル保持部材7の支持部19は、支点部20から放射状に延設された複数本(図示例では5本)のスポークにより構成されており、各スポークの間には比較的広い開口が形成されている。
【0048】
また、指詰め防止部23は、その中央部が背面側から支点部20で当接支持されているとともに、放射状に構成された支持部19によっても背面側から当接支持されており、これにより金網からなる指詰め防止部23が正面側から指などで押されても変形することを防止している。
【0049】
本実施形態によれば、支持部19の各スポーク間の間隔を広くしつつも、その正面側に配設した格子状の指詰め防止部23の線径を細径にすることによって、圧力損失を低減し、回転ノズル本体6の回転力と、噴出流量とを大きく維持しつつ、比較的小さな手をした乳幼児や子供の指が回転ノズル本体6にまで差し入れられることを阻止できる。
【0050】
〈その他の実施形態〉
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。例えば、上記実施形態では支点部を凸部とし、回転ノズル本体に凸部に対応する凹部を設けたが、支点部を凹部としてこれに対応する凸部を回転ノズル本体に設けても良い。また、上記実施形態では空気との混合噴流を噴射するノズル装置を例示したが、空気を混合しない湯水のみの噴流を噴射するノズル装置であってもよい。また、支点部が凸部である場合、回転ノズル本体には凹部を設けなくても良い。
【0051】
また、上記第3及び第4実施形態に係る格子構造のノズル保持部材7は、水流により回転体を回転させる噴流風呂用ノズル装置だけでなく、モーターを使用して回転ノズル本体を回転させるようなノズル装置や、回転ノズル本体が設けられていない直進噴流のノズル装置に応用できる。
【0052】
<噴流風呂装置の開示>
図8は、上記した噴流風呂用ノズル装置1を備えた噴流風呂装置30(ジェットバス)の全体構成を示している。この噴流風呂装置30は、平面視長方形状の浴槽31と、浴槽31内の湯を循環ポンプPにより循環させる循環流路32とを備えている。循環流路32の上流端には、浴槽31の左右いずれかの側壁に取付けられた取水口アダプタ33が設けられており、該取水口アダプタ33から循環ポンプPにより浴槽31内の湯を吸水するようになっている。循環ポンプPは電源装置35からの給電線36を介した電源供給により駆動される。また、浴槽31の上部には空気取り込み口を備える操作部37が設けられ、操作部37及び循環ポンプPは信号線38a,38bによってそれぞれ電源装置35に電気的に接続されており、操作部37によって循環ポンプPのオンオフ操作ができるようになっている。後述する信号線38cとともに上記信号線38a,38bは電源装置35からの引出し口では束ねられており、配線の途中でそれぞれ分岐されて所定の部位に配線接続されている。操作部37の空気取り込み口から取り込まれた空気はノズル装置1の空気供給口部11に配管43を介して供給される。電源装置35は天井裏に配設することが好ましい。なお、電源装置35は配電盤39に電源線40及びアース線41で接続されている。
【0053】
循環流路32は、循環ポンプPの下流側で左右2つに分岐されており、各分岐路の終端部に上記噴流風呂用ノズル装置1が設けられている。なお、噴流風呂用ノズル装置1は上下に配設してもよく、また、3つ以上配設しても良いし、一つのみ配設しても良い。
【0054】
浴室の室外には追い焚き機能付き給湯器42が設置されており、該給湯器42も信号線38cによって電源装置35に電気的に接続されている。また、給湯器42の運転操作を行うための室内リモコン44が浴槽31近くの壁面に取付けられ、該リモコン44と給湯器42とは配線45により電気的に接続されている。
【0055】
ところで、この種のジェットバスは、ポンプPがエアを吸い込んで一定時間空運転したり、取水口アダプタ33の吸込み口が閉塞されるという問題に対しては、運転を停止するように制御されており、正常時においては操作部37を操作することにより作動開始するよう電源装置35を制御しているが、かかる制御だけでは以下のような問題が生じる。
【0056】
すなわち、小さな子供だけでの入浴中の低い水位でジェットバスを運転させると、強い噴流が子供に直接当たり、それによって子供が浴槽内で転倒してしまうおそれがある。また、水面が噴出口に近い低い水位でジェットバスを作動させると、噴流が水面上に飛び散り、目に入るおそれもある。
【0057】
また、ジェットバスの噴流は、例えば、水位が低いと抵抗となる水圧が小さくなるために勢いが強くなる一方、水位が高いと勢いが弱くなるため、水位が上下したときに噴流の勢いが安定せず、入浴者の求める一定の噴流が出ないことで入浴中の快適性を欠いている。
【0058】
さらに、吸込み口に水位が達しないことによりポンプPが一定時間空運転した場合、運転を停止するというジェットバスのポンプのエア噛み防止制御を行っているが、一定時間の空運転が繰り返されるとポンプPの故障の原因となる。
【0059】
そこで、これらの問題を解消するために、ジェットバスの電源装置35と給湯器42とを信号線38cで繋いで連動させることで、浴槽31内の水位に応じてポンプPの運転を停止させたり、ポンプPの運転操作がなされたときに給湯器42を運転して水位調整したりすることができる。
【0060】
より具体的には、例えば、ジェットバスの操作部37の操作により運転開始が指示されたとき、まず給湯器42の水位検知機能によって浴槽31内の水位を検知し、一定以上の水位があればポンプPの作動を開始するように制御する一方、一定の水位がなければ給湯器42を給湯運転させて浴槽31に足し湯をし、一定水位に達した後にポンプPの作動を開始するように制御できる。
【0061】
また、小さな子供が一人で入浴するときにはジェットバスを使うことができないようにするために、入浴者が入浴する前後の水位の変位量を給湯器42の水位検知機能により検知し、変位量が一定以上なければ操作部37を操作してもポンプPが作動しないように制御することができる。
【0062】
さらに、入浴者の求める強さの噴流とするために、操作部37の操作による運転開始指示がなされたと同時に給湯器42の水位検知機能によって浴槽31内の水位を検知し、その検知水位が高いほどポンプPの回転数を上げ、検知水位が低くなるほどポンプPの回転数を下げるなど、検知水位に応じてポンプPの回転数を上げたり下げたりすることで、水位変動による噴流の強さのばらつきを抑え、快適な噴流を生じさせることができる。
【0063】
別の問題が、この種のジェットバスには内在している。この種のジェットバスはポンプPで浴槽壁に設置した吸込口から浴槽31内の湯水を吸い込み、この湯水を浴室内または浴室外から取り込んだ空気と混合させ、浴槽31内に設置した噴流風呂用ノズル装置1から噴流を吐出する構造となっているため、ジェットバスを運転させた際には浴槽31内の湯水が浴槽内外の空気に触れる面積が多くなり、湯温が急速に低下し、入浴の快適性を悪化させる要因となっていた。
【0064】
この問題を解決するために、上記の噴流風呂装置30において、電源装置35と給湯器42とを信号線38cで繋いで連動させ、操作部37の操作によりジェットバスの運転開始が指示されたときなどに給湯器42が湯温検知・追い焚きなどの動作を行うように制御することで、ジェットバスの作動によって生じる浴槽内の湯温の温度低下を防止することができる。
【0065】
具体的には例えば、操作部37の操作によりジェットバスの運転開始が指示されたと同時に浴槽31内の湯温を検知して記憶しておき、操作部37の操作によりジェットバスの停止が指示されたときや所定の設定時間が経過することによりジェットバスの運転が停止したときに給湯器42の追い焚き運転を開始して、ジェットバス運転開始時点の温度若しくは設定温度まで浴槽31内の湯を追い焚きすることができる。
【0066】
または、操作部37の操作によりジェットバスの運転開始が指示されたと同時に浴槽31内の湯温の監視を開始し、ジェットバス作動中に浴槽内湯温の温度低下を検知すると給湯器42の追い焚き運転を開始して、ジェットバス運転開始時点の温度若しくは設定温度まで浴槽31内の湯を追い焚きすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 噴流風呂用ノズル装置
2 浴槽側壁
5 ノズルカバー
6 回転ノズル本体
6b 凹部
7 ノズル保持部材
15 受け部
16 噴流孔
20 支点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴流孔が設けられた回転ノズル本体を備え、該回転ノズル本体の背面側から供給される湯水が噴流孔を介して浴槽内に噴射される噴流風呂用ノズル装置において、
前記回転ノズル本体はその軸芯位置にシャフトが設けられておらず、前記回転ノズル本体の正面側に、前記回転ノズル本体の回転中心点に当接する支点部を設け、前記回転ノズル本体の背面側に供給され噴流孔を介して噴射される湯水の水圧によって、前記回転ノズル本体を前記支点部に押し付けるとともに調心させつつ回転させるように構成したことを特徴とする噴流風呂用ノズル装置。
【請求項2】
前記回転ノズル本体の外周を覆うノズルカバーと、前記回転ノズル本体の正面側で前記ノズルカバーに着脱自体に取り付けられるノズル保持部材とをさらに備え、前記支点部は前記ノズル保持部材に設けられており、ノズル保持部材を取り外した状態で正面側からノズルカバー内の回転ノズル本体を着脱交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴流風呂用ノズル装置。
【請求項3】
ノズルカバーに、回転ノズル本体の背面側側面を支持する受け部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の噴流風呂用ノズル装置。
【請求項4】
前記受け部は、回転ノズル本体の背面部に相対回転自在に嵌合することを特徴とする請求項3に記載の噴流風呂用ノズル装置。
【請求項5】
前記支点部は、回転ノズル本体に向けて突出する凸部からなり、回転ノズル本体の正面側側面の回転中心部には前記凸部に対応する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の噴流風呂用ノズル装置。
【請求項6】
ノズル保持部材は、前記回転ノズル本体の正面側から指を回転ノズル本体まで差し入れることを防止する格子状の指詰め防止部を備えることを特徴とする請求項2,3又は4に記載の噴流風呂用ノズル装置。
【請求項7】
指詰め防止部の格子を構成する各線材の直径が0.6mm〜1.0mmであることを特徴とする請求項6に記載の噴流風呂用ノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187392(P2012−187392A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16159(P2012−16159)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】