説明

噴霧器用ポンプ

【課題】 複雑な工程を必要としないプラスチック成形で構成が可能であって、分解が容易な噴霧器用ポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】 シリンダ101と、このシリンダ101に併設されシリンダ101内で加圧された薬液を貯留し外部へ放出する吐出口106を有する蓄圧室102と、シリンダ101の下部においてシリンダ101の径方向に延出して設けられた弁室103と、この弁室103から蓄圧室102への加圧された薬液の流路となる通孔104と、薬液タンク内の薬液をシリンダ101内に吸入する吸入弁105と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに装着し、タンク内の液体を散布する手押式噴霧器用ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の噴霧器用ポンプとして、薬液タンクに装着されるシリンダ内のピストンによって、薬液タンク内の薬液を密閉された蓄圧室に加圧して送出し、噴霧ノズルから噴出させるタイプのものがある。このような噴霧器用ポンプは、耐圧性と薬液に対する耐腐食性が要求されるため、金属を素材として構成されている。
【0003】
しかし、このような噴霧器用ポンプは、シリンダや蓄圧室等の部材が金属で構成されているため、このような部材の接合箇所の全てを半田付けする工程が必要となり、そのための製造工程が煩雑で、それに伴い時間とコストがかかるという問題がある。また、接合箇所の全てを半田付けすることにより、分解不能な構成となってしまい、ポンプ内の清掃や内部に装着されている弁の取替え作業といったメンテナンスが困難となる。
【0004】
このため、近年、特許文献1に開示されるような噴霧器用ポンプが提案されている。この噴霧器用ポンプは、シリンダを蓄圧室が外包する構成となっている二重管構造であって、二重管構造の下部に閉塞部材を脱着可能に嵌着する構造であり、シリンダや蓄圧室等の部材としては、プラスチックを用いて射出成形されているものである。この噴霧器用ポンプによれば、シリンダや蓄圧室等の部材にプラスチックを用いているため、半田付けの工程を必要とせず安価に製造することができる。
【特許文献1】実開平2−121160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている噴霧器用ポンプによれば、以下のような問題がある。
まず、二重管構造は複雑な構成であるために、製造工程において複数の工程を必要とし、その結果、コスト高となってしまうという問題がある。また、蓄圧室がシリンダを外包する構成となっているため、機構内部での損壊を一見して認識することが困難であるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、複雑な製造工程を必要とせず、機構内部での損壊を容易に発見することが可能な噴霧器用ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、薬液を貯留した薬液タンクに装着され、前記薬液を吸入し、外部へ放出する噴霧器用ポンプにおいて、薬液を加圧するピストンロッドを収納したシリンダと、前記シリンダに隣接し、該シリンダ内で加圧された薬液を貯留し、該貯留された薬液を外部へ放出する吐出口を有する蓄圧室と、前記シリンダ内に吸入された薬液を前記蓄圧室へ導く薬液導管と、を備えたことを特徴とする噴霧器用ポンプを提供するものである。
【0008】
以上の構成において、前記シリンダの下端には、外管と内管とからなる二重管構造の吸入弁が着脱可能に嵌入され、前記吸入弁の内管の内部には、前記薬液を吸入する吸入孔と、該吸入孔の直径よりも大きい球弁と、該球弁の脱出を防止する弁押さえリングが収納されていることが望ましい。
【0009】
また、前記薬液導管は、前記シリンダの直径方向に延出し、前記シリンダ側に設けられている通孔と、前記蓄圧室の下端側に設けられている流路とで、前記シリンダと前記蓄圧室とを連通させていることが望ましい。
【0010】
また、前記薬液導管は、前記通孔と対向する位置に、該薬液導管に螺合して装着されるキャップが設けられており、前記キャップには、前記通孔に向かって突出する突出部と、該突出部に係止されるバネと、該バネの他端に取り付けられる弁体とを有することが望ましい。
【0011】
また、前記キャップは、前記蓄圧室の圧力が一定の圧力より上がった場合に圧縮された空気を外部に吐出させるための貫通孔を有する第1のキャップと、該空気とともに外部に吐出しようとする前記薬液の外部への吐出を防ぐ第2のキャップと、該第1のキャップと第2のキャップ間に間挿入され該圧力の調整を行うバネと、から構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、噴霧器用ポンプの本体をプラスチック一体成形で形成することができるため、コストを抑え、複雑な工程を必要としないため、容易に作製することができ、短時間で大量生産することができる。また、破損した場合においても破損箇所を一見して認識することができる構成となっている。さらに、薬液に曝露されて劣化しやすい部品の取り外しが簡単な構成であるために、メンテナンスが簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る噴霧器用ポンプを詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る噴霧器用ポンプの全体構造を示す図である。
図に示すように、噴霧器用ポンプ100は、概ね、把手200が設けられたピストンロッド201の往復動によって薬液タンク(図示せず)内の薬液を吸引して加圧するシリンダ101と、このシリンダ101に併設されシリンダ101内で加圧された薬液を貯留し外部へ放出する吐出口106を有する蓄圧室102と、シリンダ101の下部においてシリンダ101の径方向に延出して設けられた弁室103と、この弁室103から蓄圧室102への加圧された薬液の流路となる通孔104と、薬液タンク内の薬液をシリンダ101内に吸入する吸入弁105と、から構成されている。
【0014】
以上の構成において、シリンダ101と蓄圧室102とは、弁室103と通孔104とによって連通されている。また、シリンダ101と蓄圧室102とは、複数箇所(図では4箇所)で固定部材110によって固着されている。また、シリンダ101には、前述したように、ピストンロッド201が挿入されており、このピストンロッド201を上下に摺動させることにより薬液を薬液タンク内からシリンダ101内に吸入し加圧する。また、ピストンロッド201の挿入口には、シリンダ101内に注挿された薬液が外部に漏出するのを防ぐためのキャップ109が取り付けられている。
【0015】
また、蓄圧室102上部の吐出口106にも、シリンダ101から蓄圧室102内に送出された薬液がそのまま外部に漏出するのを防ぐためのキャップ108が設けられている。また、弁室103の端部にも、キャップ107が設けられている。これは、弁室103内の弁機構の修理・保守等のメンテナンス用に設けられたものである。
【0016】
なお、この噴霧器用ポンプ100本体を構成するシリンダ101,蓄圧室102,弁室,通孔104および固定部材110は、プラスチックを用いて一体成形によって形成されている。
【0017】
図2は、図1に示す噴霧器用ポンプの主要部分の切欠図である。
図に示すように、シリンダ101の上端には、キャップ109と螺合させるためのねじ109Aが設けられており、蓄圧室102の上端には、キャップ108と螺合させるためのねじ108Aが設けられている。また、この蓄圧室102の上端の内周には、吐出口106が嵌合されている。
なお、この吐出口102の下端には、蓄圧室102の下端近傍に延長されたチューブ400が接続されている。
【0018】
一方、シリンダ101の下端には、吸入弁105が装着されており、その近傍には、弁体301をシリンダ101方向に付勢するコイルバネ300を装着した弁室103が設けられている。この弁室103の他端には、前述したように、メンテナンス用のキャップ107と螺合させるためのねじ107Aが設けられている。この弁室103は、前述したように、通孔104によって蓄圧室102の下端と連通している。そして、蓄圧室102内に圧送された薬液は、上記したチューブ400を通じて吐出口106から外部に放出される。
【0019】
図3は、このシリンダ101の下端と蓄圧室102の下端近傍の拡大切欠図である。
図に示すように、シリンダ101と弁室103間には孔112が形成されており、この孔112に弁体301の先端が挿通されている。弁体301は、一端をキャップ107の突起107Bに係止されるコイルバネ300によってシリンダ101方向に付勢され、この付勢力によってシリンダ101と蓄圧室102の間の弁機能を果している。なお、この弁体301には、弁体301とシリンダ101間の気密性を向上させるためのOリング302と、このOリング302がコイルバネ300方向にずれることを防ぐための係止部材303と、コイルバネ300の他端を係止するための突起304が設けられている。この弁体301は、シリンダ101から蓄圧室102への一方向に薬液を送出し、蓄圧室102から薬液がシリンダ101への漏出を防止する。
【0020】
図4は、シリンダ101の下端の構造を示す図である。
図に示すように、シリンダ101の下端近傍には、後述する吸入弁105の係合溝105fに係合させるための突起111が設けられており、更に、その先端には、この下端を吸入弁105に嵌合させたときにシリンダ101の下端と吸入弁105間の気密性を向上させるためのOリング112が嵌合されている。
【0021】
図5は、このシリンダ101の下端に嵌合される吸入弁105の構造を示す図であり、(a)はその正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A断面図である。
図に示すように、この吸入弁105は、外管105aと、内管105bと、吸入孔105cと、球弁105dと、弁押えリング105eと、係合溝105fと、から構成され、シリンダ101に対して着脱自在な構造となっている。
【0022】
吸入弁105は、シリンダ101の内外側から嵌合可能な外管105aと内管105bとが共通の底板によって一体化し、且つ、底板の中央に、内管105b中に通じるように吸入孔105cが設けられている。また、内管105bには、金属球から成る球弁105dが収納されている。この球弁105dは、吸入孔105cの直径よりも大きく、内管105cでの球105dの動きによって、吸入孔105cの開閉が可能となる。弁押えリング105eは、この球弁105dの垂直上方向への移動を制限するためのものである。
【0023】
吸入弁105をシリンダ101の下端に着脱する際は、シリンダ101の下端付近の周面に設けられた突起111を、吸入弁105の外管105aに設けた係合溝105fが係合させることにより行う。この係合溝105fは、外管105aの上面に設けられた突起111の軸方向の幅にほぼ等しい開口と、この開口から吸入弁105の周方向に曲折したL字状の溝からなる。そして、シリンダ101の下端に設けられた突起101aを、吸入弁105係合溝105fに嵌入し、周方向に回動し係合させることで吸入弁105をシリンダ101下端に着脱自在に固定する。
【0024】
以下、本実施の形態に係る噴霧器用ポンプ100の動作について説明する。
まず、噴霧器用ポンプ100は、農薬等の薬液を貯留した薬液タンクに装着する。次に、ピストンロッド201を上下に揺動すると、シリンダ101内に薬液が吸入される。この時、ピストンロッド201を引き上げるとシリンダ101内の気圧が変化し、吸入弁105の吸入孔105cから薬液が吸入される。
【0025】
次に、ピストンロッド101を押し戻すと、シリンダ101内の薬液が圧縮され、吸入弁105内の球弁105dが吸入孔105cを塞ぎ、薬液の圧縮により、弁室103内の弁体301と一体化したコイルバネ301の自身の弾性により、シリンダ101の直径方向に縮み、それにより、シリンダ101と弁室103とを連通する通孔が開口し、薬液が弁室301と通孔104を通って、蓄圧室102内へ送出される。
【0026】
蓄圧室102内には、シリンダ101内で圧縮された空気と薬液とが蓄えられている。そこで、吐出口106に取り付けられているスプレーノズル(図示せず)のツマミを開放すると、蓄圧室102内部まで延出した吐出口106に繋がれているチューブ400から圧縮された空気と薬液とが吸い上げられ、スプレーノズルへ送出される。
【0027】
このように、本実施の形態に係る噴霧器用ポンプ100は、プラスチックで一体成形してなるものであるため、低コストで作成することができる。また、シリンダ101と蓄圧室102とを別体としたため、いずれかが破損したときに一見して破損箇所を認識することができる構成となっている。
【0028】
また、キャップ107〜109の着脱が容易なことから、薬液に曝露される弁体301やコイルバネ300、吐出口106の交換が容易となる。また、キャップ107〜109を装着する部位には、雄ネジが形成されている。雄ネジは、外ネジであって、プラスチック一体成形で容易に形成することができる。
【0029】
なお、キャップ107の構成については、例えば、図6に示すように、貫通孔118およびOリング119を有する第1のキャップ117と、貫通孔123を有する第2のキャップ120の2層構成とし、第1のキャップ117と第2のキャップ120を螺合可能とするとともに、第1のキャップ117と第2のキャップ120間にコイルバネ122を設け、かつ、このコイルばね122を第1のキャップ117側で係止するとともに安全装置バルブとしても機能する係止突起121を設けるようにしても良い。
【0030】
このように構成することにより、蓄圧室102内の圧力が極端に上がった場合、その圧力を減圧すことが可能となる。即ち、蓄圧室102内の圧力が一定の圧力より上がった場合あるいは極端に上がった場合、その圧力の逃げ場がないため、構成部品への負荷が膨大になり損傷の原因にもなってしまう。このため、貫通孔118およびOリング119を有する第1のキャップ117と、貫通孔123を有する第2のキャップ120の2層構成とし、第1のキャップの貫通孔118を通じて係止突起121を押し上げて、圧縮された空気を吐出させその圧力を逃がすようにする。なお、この係止突起121が押し上げられると、蓄圧室102内にある薬液もあわせてその部位から吐出するおそれがあるので、第2のキャップ120とコイルバネ122による付勢力によって押さえ、薬液の外部への吐出を防止する。また、コイルバネ122による押さえの強弱により、圧力の調整を行う。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る噴霧器用ポンプの構成を示した図である。
【図2】図1に示す噴霧器用ポンプの断面を示した図である。
【図3】シリンダの下端と蓄圧室の下端近傍の拡大切欠図である。
【図4】シリンダの下端の構造を示す図である。
【図5】シリンダの下端に嵌合される吸入弁の構造を示す図であり、(a)はその正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A断面図である。
【図6】弁室に設けられたキャップの構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
100 噴霧器用ポンプ
101 シリンダ
101a 突起
102 蓄圧室
103 弁室
104 通孔
105 吸入弁
105a 外管
105b 内管
105c 吸入孔
105d 球弁
105e 弁押えリング
105f 係合溝
106 吐出口
107、108、109 キャップ
107a バネ嵌入部
110 固定部材
200 把手
201 ピストンロッド
300 コイルバネ
301 弁体
400 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留した薬液タンクに装着され、前記薬液を吸入し、外部へ放出する噴霧器用ポンプにおいて、
薬液を加圧するピストンロッドを収納したシリンダと、
前記シリンダに隣接し、該シリンダ内で加圧された薬液を貯留し、該貯留された薬液を外部へ放出する吐出口を有する蓄圧室と、
前記シリンダ内に吸入された薬液を前記蓄圧室へ導く薬液導管と、
を備えたことを特徴とする噴霧器用ポンプ。
【請求項2】
前記シリンダの下端には、外管と内管とからなる二重管構造の吸入弁が着脱可能に嵌入され、前記吸入弁の内管の内部には、前記薬液を吸入する吸入孔と、該吸入孔の直径よりも大きい球弁と、該球弁の脱出を防止する弁押さえリングが収納されていることを特徴とする請求項1記載の噴霧器用ポンプ。
【請求項3】
前記薬液導管は、前記シリンダの直径方向に延出し、前記シリンダ側に設けられている通孔と、前記蓄圧室の下端側に設けられている流路とで、前記シリンダと前記蓄圧室とを連通させていることを特徴とする請求項1記載の噴霧器用ポンプ。
【請求項4】
前記薬液導管は、前記通孔と対向する位置に、該薬液導管に螺合して装着されるキャップが設けられており、前記キャップには、前記通孔に向かって突出する突出部と、該突出部に係止されるバネと、該バネの他端に取り付けられる弁体とを有することを特徴とする請求項5記載の噴霧器用ポンプ。
【請求項5】
前記キャップは、前記蓄圧室の圧力が一定の圧力より上がった場合に圧縮された空気を外部に吐出させるための貫通孔を有する第1のキャップと、該空気とともに外部に吐出しようとする前記薬液の外部への吐出を防ぐ第2のキャップと、該第1のキャップと第2のキャップ間に間挿入され該圧力の調整を行うバネと、から構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の噴霧器用ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168217(P2008−168217A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4569(P2007−4569)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(396004660)株式会社大和 (1)
【Fターム(参考)】