説明

噴霧器

【課題】 噴霧器において、霧状内容液の吐出終了後に、頭部の外気に接している吐出口における内容液の残留、ひいてはその乾燥固化を防止し、吐出口のつまりを生ずることなく、霧状内容液の繰り返し吐出性を確保すること。
【解決手段】 噴霧器10であって、液室Lから気液混合部80への内容液の供給が終了した後も、空気室Aから気液混合部80への空気の供給が行なわれるように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧器として、特許文献1に記載の如く、容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部の押し込みにより、容積可変の液室から液吐出路を経由して内容液が、容積可変の空気室から空気送出路を経由して空気が、それぞれ気液混合部に供給され、この内容液が気液混合部で空気と混合されて霧状にされ、この霧状内容液が頭部に設けた吐出口から吐出されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-196168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の噴霧器では、キャップに対し往復動可能に設けられる頭部に筒状の第1のチップを設けるとともに、第1のチップの内周側に筒状の第2のチップを設ける。頭部の押し込み時に、第1のチップの内周と第2のチップの外周の間に設けた液吐出路を経由し、第1のチップの先端面に形成されている開孔から吐出される内容液は、第2のチップの内周に設けた空気送出路を経て該第2のチップの先端面に形成されている開孔から噴出される空気により引き出されて霧化され、更に第1のチップの外周に設けた空気送出路から第1のチップの先端面の前に噴出される空気により撹拌(乱流の付与)され、微細な噴霧粒子になって頭部の吐出口から吐出される、とするものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の噴霧器は、頭部の押し込みによる、液室から気液混合部への内容液の供給と、空気室から気液混合部への空気の供給を互いに同時に終了し、頭部の吐出口からの霧状内容液の吐出を終了するものとしている。
【0006】
従って、噴霧器による霧状内容液の吐出が終了するまで、内容液は気液混合部で空気と混合されて頭部の吐出口を通過するものになる。このため、噴霧器による霧状内容液の吐出が終了したときには、頭部の外気に接している吐出口に内容液の残留を生じ、この残留内容液が外気の影響で乾燥固化し、吐出口のつまりを引き起こし、再吐出不能になるおそれがある。この不都合は内容液が乾燥固化し易い高分子を含む液体であるときに、特に顕著である。
【0007】
本発明の課題は、噴霧器において、霧状内容液の吐出終了後に、頭部の外気に接している吐出口における内容液の残留、ひいてはその乾燥固化を防止し、吐出口のつまりを生ずることなく、霧状内容液の繰り返し吐出性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部の往復動により、容積可変の液室から液吐出路を経由して内容液が、容積可変の空気室から空気送出路を経由して空気が、それぞれ気液混合部に供給され、この内容液が気液混合部で空気と混合されて霧状にされ、この霧状内容液が頭部に設けた吐出口から吐出可能にされる噴霧器であって、前記液室から気液混合部への内容液の供給が終了した後も、空気室から気液混合部への空気の供給が行なわれるように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、噴霧器において、霧状内容液の吐出終了後に、頭部の外気に接している吐出口における内容液の残留、ひいてはその乾燥固化を防止し、吐出口のつまりを生ずることなく、霧状内容液の繰り返し吐出性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1の噴霧器の初期状態を示す模式図である。
【図2】図2は図1の要部拡大図である。
【図3】図3は噴霧器の霧状内容液の吐出状態を示す模式図である。
【図4】図4は図3の要部拡大図である。
【図5】図5は噴霧器の空気のみ吐出状態を示す模式図である。
【図6】図6は図5の要部拡大図である。
【図7】図7は気液混合板を示す模式図である。
【図8】図8はスピンエレメントを示す模式図である。
【図9】図9は実施例2の噴霧器の初期状態を示す模式図である。
【図10】図10は図9の要部拡大図である。
【図11】図11は噴霧器の霧状内容液の吐出状態を示す模式図である。
【図12】図12は図11の要部拡大図である。
【図13】図13は噴霧器の空気のみ吐出状態を示す模式図である。
【図14】図14は図13の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)(図1〜図8)
噴霧器10は、図1、図2に示す如く、整髪料等の内容液、特に外気に触れて乾燥固化し易い高分子を含む内容液が収容された容器本体1の口部1Aに、キャップ20の取付部20Aを固定する。噴霧器10は、容器本体1の内部にシリンダ30を設置してある。キャップ20の取付部20Aの内側部にシリンダ30の大径部30Aの上端部が突当てられ、大径部30Aの上端部はパッキン31とともに、キャップ20の取付部20Aの内側部と容器本体1の口部1Aとの間に挟圧固定される。シリンダ30は大径部30Aに連なる小径部30Bを有し、小径部30Bにディップチューブ32を嵌合して接続し、このディップチューブ32を容器本体1の内部に挿入している。シリンダ30は、大径部30Aの内部に空気室Aを形成し、小径部30Bの内部に液室Lを形成する。キャップ20の筒部20Bには頭部40のステム41が上下方向に往復動可能に挿入される。噴霧器10は、頭部40を往復動させることにより、容積可変の液室Lから内容液を、容積可変の空気室Aから空気を、それぞれステム41の内部に設けてある後述する気液混合部80に供給し、この内容液が気液混合部80で空気と混合されて霧状にされ、この霧状内容液を頭部40に設けた吐出口43から吐出する。
【0012】
噴霧器10は、頭部40の吐出口43に至る吐出管路42に通ずるステム41の下端中空部に中空ピストンガイド51を嵌合固定し、ピストンガイド51の下端中空部に中空液ピストン52の中空筒部52Aを嵌合固定し、液ピストン52の外周ピストン部52Bをシリンダ30の小径部30Bの内壁に摺動可能に挿入し、小径部30Bの下端側ばね受け部33及び後述するポペット60の下端バルブ62の上端面と液ピストン52との間に圧縮コイルばね53を介装している。即ち、頭部40を往動して押しているときには、圧縮コイルばね53の下端部が小径部30Bの下端側ばね受け部33に支持されるとともに、ポペット60の下端バルブ62の上端面は圧縮コイルばね53の下端部から離れる。頭部40から手を離して復動したときには、圧縮コイルばね53の下端部が小径部30Bの下端側ばね受け部33に支持されるとともに、ポペット60の下端バルブ62の上端面は圧縮コイルばね53の下端部に接する。噴霧器10は、ピストンガイド51と液ピストン52の中空部を液室Lから延在する液吐出路54とし、ピストンガイド51における液吐出路54の上端側中間部には上端側弁座51Aが設けられ、弁座51Aには液吐出路54からの圧力によって開くボール弁55(逆止弁)が密接して載置される。
【0013】
噴霧器10は、シリンダ30の小径部30Bから液ピストン52、ピストンガイド51に沿って延在するポペット60を有し、ポペット60の上端部61をピストンガイド51及び液ピストン52の内周に摩擦嵌合し、ポペット60の下端バルブ62を小径部30Bの下端側弁座34に接離可能に密接して配置し、容器本体1の内部に対して液室Lを開閉する。ポペット60の外周溝と液ピストン52の内周との間、更にはピストンガイド51の内周溝との間が前述の液吐出路54とされる。ポペット60は下端側の一部において圧縮コイルばね53の中心部に延在する。ポペット60の下端バルブ62は液ピストン52により収縮されて加圧される液室Lの液圧及びポペット60の上端部61とピストンガイド51との摩擦抵抗により下端側弁座34(小径部30Bの下端に形成された縮径領域)に押圧されて閉じ状態とされる。液室Lが最大拡張端にある図1の初期状態で、圧縮コイルばね53はポペット60が上方へ移動しない程度に下端バルブ62の上端面に接している。
【0014】
噴霧器10は、頭部40の上下の往復動に連動して液室L内を上下動するピストンガイド51及び液ピストン52を有し、ポペット60の下端バルブ62がピストンガイド51及び液ピストン52の上動に連動して下端側弁座34から離れ、かつ液ピストン52の上動により拡張される液室Lにディップチューブ32を介して容器本体1の内容液を吸入し、ポペット60の下端バルブ62がピストンガイド51及び液ピストン52の下動に連動して下端側弁座34に接し、かつ液ピストン52の下動により収縮される液室Lの内容液を液吐出路54経由で弁座51Aと離れて開かれたボール弁55から後述する気液混合部80に吐出する。
【0015】
即ち、噴霧器10は、頭部40の上下の往復動に連動して液室L内を上下動する液ピストン52を有し、頭部40が上動(復動)する吸入行程で液ピストン52の上動により拡張される液室Lに容器本体1に収容されている内容液を吸入し、頭部40が押込下動(往動)される吐出行程で液ピストン52の下動により収縮される液室Lの内容液を後述する気液混合部80に吐出する。
【0016】
噴霧器10は、頭部40の上下の往復動に連動するエアピストン70の中空筒部70Aがピストンガイド51の外周に対し軸方向に沿う一定長さ範囲だけ相対移動可能に遊挿され、エアピストン70のピストン部70Bの外周リング部70Cをシリンダ30の大径部30Aの内壁に摺動自在に挿入し、シリンダ30の内部のエアピストン70の正面側(頭部40に対する反対側)に該エアピストン70により拡縮される空気室Aを形成する。本実施例では、頭部40のステム41の下端段差状内周孔にエアピストン70の筒部70Aの上端部を挿入し、頭部40を図1の初期状態から僅かに下動させたときに、ステム41の内周孔の段差面がエアピストン70の筒部70Aの上端面に突き当たる一定の時間差の後、頭部40(ピストンガイド51、液ピストン52も一体)の下動によりエアピストン70も下動させる。従って、エアピストン70はピストンガイド51の外周に沿ってピストンガイド51の中間フランジ部51Bに衝合するまで僅かに上下相対移動可能にし、それらの間に後述する空気送出口73Aを形成可能にする(図3、図4)。
【0017】
噴霧器10は、エアピストン70の空気室Aに対する裏側に外気取り込み室71を設け、頭部40のステム41とキャップ20の筒部20Bの間の微小環状間隙を外気取り込み室71への外気取り込み路71Aとしている。噴霧器10は、外気取り込み室71と空気室Aを連通する空気の吸入口72A(図3、図4)をエアピストン70のピストン部70Bに設け、空気の吸入口72Aを開閉して外気取り込み室71から空気室Aへの空気の吸入を許容する吸入チェック弁72をエアピストン70のピストン部70Bにおいて空気室Aに臨む側に設ける。
【0018】
噴霧器10は、ピストンガイド51の外周溝とエアピストン70の筒部70Aの内周との間から、更にピストンガイド51の外周とステム41の内周溝との間に連続する上下に続く空気送出路73を設け、ピストンガイド51の中間フランジ部51Bとエアピストン70の筒部70Aの下端とが空気送出口73Aを開閉する開閉弁74を形成する。開閉弁74は、頭部40の下動時に頭部40とともに下動するピストンガイド51の中間フランジ部51Bをエアピストン70の筒部70Aの下端から離隔させてそれらの間に空気送出口73Aを開き(図3、図4)、頭部40の上動時に該頭部40とともに上動するピストンガイド51の中間フランジ部51Bをエアピストン70の筒部70Aの下端に下から衝合させてそれらの下端間の空気送出口73Aを閉じる(図1、図2)。
【0019】
即ち、噴霧器10は、頭部40の上下の往復動に連動して空気室A内を上下動するエアピストン70を有し、頭部40が上動する吸入行程でエアピストン70の上動により拡張される空気室Aに外部の空気を吸入し、頭部40が押込下動される吐出行程でエアピストン70の下動により収縮される空気室Aの空気を後述する気液混合部80に送出する。
【0020】
噴霧器10は、ピストンガイド51に設けた液吐出路54の最上流部であって、頭部40に設けた吐出管路42と、頭部40のステム41の内周とピストンガイド51の外周の間に設けた空気送出路73の会合領域を気液混合部80としている。液吐出路54から吐出される内容液が気液混合部80で、空気送出路73から送出される空気と混合されて霧化され、前述の霧状内容液になる。
【0021】
このとき、液吐出路54と気液混合部80の間に気液混合板81が設けられる。気液混合板81は、図2に示す如く、頭部40のステム41とピストンガイド51との嵌合部に設けられる。気液混合板81は、図7に示す如く、下端筒部81Aをピストンガイド51の上端開口に嵌入されるとともに、中間フランジ部81Bをピストンガイド51の上端面と頭部40の吐出管路42まわりの段差面とに挟着され、上端外周部81Cを頭部40の吐出管路42の下端開口に嵌入される。
【0022】
気液混合板81は、液吐出路54と気液混合部80を仕切る板面内に複数個(本実施例では4個)の液流通孔82を備える。液吐出路54から吐出される内容液は気液混合板81の液流通孔82を通って気液混合部80に供給される。そして、液流通孔82の合計の孔面積を液吐出路54の流路面積の1/10〜4/10とする。
【0023】
気液混合板81は、中間フランジ部81Bの上面から上端外周部81Cの外周面に渡る板外周に複数個(本実施例では8個)の空気流通溝83を備える。空気送出路73から送出される空気は、気液混合板81の空気流通溝83を通って気液混合板81の板外周から気液混合部80に噴出し、気液混合板81の板面内に位置する液流通孔82に負圧を及ぼし、液吐出路54から吐出される内容液を液流通孔82から気液混合部80に引き出す。
【0024】
気液混合部80は、気液混合板81の液流通孔82から供給される内容液が、空気流通溝83から噴出する空気により引き出されるとともに、その空気と撹拌(乱流の付与)混合されて霧状にされる。気液混合部80における内容液と空気の混合割合は、空気100mlに対して内容液を0.5ml〜2.5mlとし、より好適には空気100mlに対して内容液を0.8ml〜1.5mlとする。
【0025】
尚、噴霧器10は、気液混合部80から頭部40の吐出口43に連なる吐出管路42を、吐出口43に向けて段階的(本実施例では、気液混合部80を形成する大径路42A、大径路42Aに連なる中経路42B、中経路42Bに連なる小径路42C、小径路42Cを吐出口43に連通する細経路42Dの4段階)に縮径する。
【0026】
また、噴霧器10は、頭部40の吐出口43が設けられる先端面に、スピンエレメント44を設けてある。スピンエレメント44は、図8に示す如く、吐出口43を中心部に設け、吐出管路42に臨む端面における吐出口43まわりに複数個(本実施例では3個)の渦巻き溝44Aを設ける。
【0027】
尚、噴霧器10は、エアピストン70の裏側に設けた前述の外気取り込み室71をシリンダ30の大径部30Aの上端側に穿設した空気導入口91を介して容器本体1の内部と連通可能にしている。噴霧器10の初期状態(図1、図2)で、空気導入口91はエアピストン70のピストン部70Bのリング部70Cによりカバーされて外気取り込み室71に対し閉じられ、頭部40の上下の往復動時に、空気導入口91はエアピストン70のピストン部70Bのリング部70Cによるカバーが外れて外気取り込み室71に対し開口され、かつ空気導入口91は、空気室Aとは常時遮断される。
【0028】
しかるに、噴霧器10にあっては、頭部40の吐出口43における内容液の乾燥固化を防止するため、液室Lから気液混合部80への内容液の供給が終了した後も、空気室Aから気液混合部80への空気の供給が行なわれるように構成している。頭部40の吐出口43から霧状内容液の吐出が終了したときに該頭部40の吐出管路42〜吐出口43に残留する内容液を、その後、気液混合部80から噴出されて頭部40の吐出管路42〜吐出口43を通過する空気により外部へと吹飛ばし除去するものである。具体的には以下の通りである。
【0029】
噴霧器10は、図1〜図6に示す如く、ピストンガイド51の内周に設けられる液吐出路54の導通を遮断する液止め部101を備える。本実施例において、液止め部101はポペット60の上端部61の上端面中心部に立設される棒状の上端液止め部101からなる。上端液止め部101は液吐出路54に設けてあるボール弁55により開閉されるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路102に嵌合して該液吐出路54の導通を遮断するものになる。上端液止め部101は流路102の内径と同一の外径を備え、流路102に液密に嵌合する。
【0030】
即ち、図3、図4〜図5、図6に示す如く、頭部40が押し込まれて下動(往動)し、空気室Aの空気が頭部40のステム41の内周とピストンガイド51の外周の間に設けた空気送出路73を経由して気液混合部80に供給され、かつ液室Lの内容液がピストンガイド51に設けた液吐出路54から経由して気液混合部80に供給されている過程で、頭部40が下動端側に達するとき、頭部40とともに下動し続けるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路102に、シリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34に当たって制止されているポペット60の上端液止め部101が嵌合するに至る。これにより、ポペット60の上端液止め部101はピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路102を閉塞し、空気送出路73と液吐出路54の導通のうち、液吐出路54の導通だけを遮断するものになり、液室Lから液吐出路54を経由する気液混合部80への内容液の供給を終了する。この後、空気送出路73の導通はなお維持されているから、空気室Aから空気送出路73を経由する気液混合部80への空気の供給が継続される。
【0031】
噴霧器10は以下の如く動作する。
(動作1)
(1)図1、図2の初期状態から頭部40を押すと最初に頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60が下へ下がる。
【0032】
(2)ポペット60の下端バルブ62がシリンダ30の小径部30Bの下端側に設けられた下端側弁座34に当たり、液室Lを閉じる。
【0033】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が狭くなる)、エアピストン70の筒部70Aの下端とピストンガイド51の中間フランジ部51Bの間に隙間ができ、空気室Aの送出口73Aとなる。
【0034】
(動作2)(図3、図4)
(1)頭部40を更に押すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が下へ下がる。
【0035】
(2)空気室A内の空気は空気送出路73を通り、液室L内の液は液吐出路54を通り、気液混合部80で混合されて霧状になる。霧状内容液は頭部40の吐出管路42を圧送されて吐出口43から吐出される。
【0036】
(3)頭部40を押している途中で、エアピストン70が塞いでいた空気室Aの側面の空気導入口91が開放されるため、空気が容器本体1の内部へ導入される。
【0037】
(動作3)(図5、図6)
(1)頭部40を更に押すと、頭部40と一体になって下へ下がるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路102に、シリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34に当たって制止されているポペット60の上端液止め部101が嵌合し、液吐出路54の導通が遮断される。空気送出路73の導通は遮断されない。
【0038】
(2)液室Lから液吐出路54を経由する気液混合部80への内容液の供給が終了し、空気室Aから空気送出路73を経由する気液混合部80への空気の供給だけが継続される。これにより、気液混合部80における霧状内容液の生成はなくなり、霧状内容液の吐出が終了した後、頭部40の吐出管路42、吐出口43から空気のみが吐出される。頭部40の吐出管路42、吐出口43に残留していた内容液が、空気の流れにより外部へと吹飛ばし除去される。
【0039】
(動作4)
(1)頭部40を押すのをやめて頭部40から手を離すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60が圧縮コイルばね53のばね力で上がる。
【0040】
(2)ポペット60の下端がシリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34から離れ隙間ができ、液室Lを開く。
【0041】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が広くなる)、エアピストン70の筒部70Aの下端とピストンガイド51の中間フランジ部51Bの隙間が閉じ、空気送出口73Aが閉じられる。
【0042】
(動作5)
(1)頭部40が更に上昇すると、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が上昇する。ピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路102が、コイルばね53のばね力で上方への移動を制限されているポペット60の上端液止め部101から抜け出る。
【0043】
(2)空気室A内は負圧となるため、吸入チェック弁72が開き、空気吸入口72Aを通り空気室A内へ空気が吸入される。また、液室L内も負圧となるため、容器本体1内の内容液がディップチューブ32を通って液室Lへ導入される。
【0044】
(3)図1の初期状態に戻る。
【0045】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)噴霧器10による液室Lから気液混合部80への内容液の供給が終了し、霧状内容液の吐出が終了した後も、空気室Aから気液混合部80への空気の供給を行なう。従って、霧状内容液の吐出が終了したときに頭部40の吐出管路42〜吐出口43に残留する内容液は、その後、気液混合部80から送出されて頭部40の吐出管路42〜吐出口43を通過する空気により外部へと吹飛ばし除去される。これにより、霧状内容液の吐出終了後に、頭部40の外気に接している吐出口43における内容液の残留、ひいてはその乾燥固化を防止し、吐出口43のつまりを生ずることなく、霧状内容液の繰り返し吐出性を確保することができる。
【0046】
(b)頭部40の押し込みにより、空気室Aの空気が空気送出路73を経由して気液混合部80に供給され、かつ液室Lの内容液が液吐出路54を経由して気液混合部80に供給されている過程で、液吐出路54の導通だけを液止め部101が遮断し、液室Lから気液混合部80への内容液の供給が終了した後も、空気室Aから気液混合部80への空気の供給が行なわれる。従って、空気室Aから気液混合部80への空気の供給を継続しながら、液止め部101により液吐出路54を遮断し、内容液を気液混合部80の手前で止めることにより、簡易かつ確実に、上述(a)の「液室Lから気液混合部80への内容液の供給が終了し、霧状内容液の吐出が終了した後も、空気室Aから気液混合部80への空気の供給を行なう」を実現できる。
【0047】
(c)上述(b)の液止め部101が、ポペット60の上端液止め部101からなり、液吐出路54に設けてあるボール弁55により開閉される上端側弁座51Aの流路102に該上端液止め部101が嵌合してその導通を遮断するものとすることにより、液止め部101による液吐出路54の遮断の簡易を図ることができる。
【0048】
(d)乾燥固化し易い高分子を含む内容液を取り扱う噴霧器10において、上述(a)〜(c)を実現できる。
【0049】
尚、本実施例によれば以下の作用効果も奏する。
(e)液吐出路54と気液混合部80の間に気液混合板81を設け、この気液混合板81の板面内に複数個の液流通孔82を備え、液流通孔82の合計の孔面積を液吐出路54の流路面積の1/10〜4/10とした。これにより、液吐出路54から気液混合板81の液流通孔82を通って気液混合部80に噴出する内容液に適度な流速を与えることができる。この内容液は気液混合部80で空気とよく混合され、微細な噴霧粒子になって頭部40の吐出口43から吐出される。
【0050】
(f)気液混合部80における内容液と空気の混合割合が、空気100mlに対して内容液を0.5ml〜2.5mlとし、より好適には空気100mlに対して内容液を0.8ml〜1.5mlとすることにより、液吐出路54から気液混合板81の液流通孔82を通って気液混合部80に噴出する内容液に一層適度な流速を与えることができる。
【0051】
(g)気液混合板81の板外周に複数個の空気流通溝83を備える。気液混合板81の板面内の液流通孔82から噴出する内容液が、気液混合板81の板外周の空気流通溝83から噴出する空気により気液混合部80に引き出されて霧化される。
【0052】
気液混合部80から頭部40の吐出口43に連なる吐出管路42の流路面積が吐出口43に向けて徐々に縮径されることにより、気液混合部80で霧化された霧状内容液の流速を吐出管路42で徐々に上げ、頭部40の吐出口43から高圧吐出できる。
【0053】
頭部40にスピンエレメント44を設け、スピンエレメント44の中心部に吐出口43を設け、スピンエレメント44の吐出管路42に臨む端面における吐出口43まわりに複数の渦巻き溝44Aを設けることにより、吐出管路42で高速化された霧状内容液がスピンエレメント44の渦巻き溝44Aで渦巻き状に高速回転され、頭部40の吐出口43から円錐状をなして高圧吐出される。
【0054】
(実施例2)(図9〜図14)
実施例2の噴霧器10が実施例1におけると異なる点は、図9、図10に示す如く、ピストンガイド51の内周に設けた液吐出路54の導通を遮断する手段が、ポペット60の上端部61の上端面中心部に立設される棒状の上端液止め部201と、ボール弁55に付帯させた液止め弁202とにより構成されたことにある。
【0055】
即ち、上端液止め部201は液吐出路54に設けてあるボール弁55により開閉されるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路203に挿入(遊挿でも可)され、ボール弁55を上端側弁座51Aから持ち上げる。そして、液止め弁202はボール弁55の上面に載置され、上下方向に弾性的に圧縮変形可能にされるとともに、上端側弁座51Aから上述の如くに持ち上げられるボール弁55により気液混合板81の側に上動されたとき、気液混合板81の液吐出路54に臨んでいる下端開口(下端筒部81Aの内径)に押圧されてこれを閉塞する。これにより、液止め弁202は液吐出路54の気液混合部80寄りの流路(気液混合板81の液流通孔82)を閉塞してその導通を遮断するものになる。
【0056】
即ち、図11、図12〜図13、図14に示す如く、頭部40が押し込まれて下動(往動)し、空気室Aの空気が頭部40のステム41の内周とピストンガイド51の外周の間に設けた空気送出路73を経由して気液混合部80に供給され、かつ液室Lの内容液がピストンガイド51に設けた液吐出路54から経由して気液混合部80に供給されている過程で、頭部40が下動端側に達するとき、頭部40とともに下動し続けるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路203にシリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34に当たって制止されているポペット60の上端液止め部201が挿入するに至る。これにより、ポペット60の上端液止め部201はボール弁55を上端側弁座51Aから持ち上げ、ボール弁55の上面に載置されている液止め弁202を気液混合板81の側に上動し、液止め弁202により液吐出路54に臨んでいる気液混合板81の下端開口を閉塞する。従って、空気送出路73と液吐出路54の導通のうち、液吐出路54の導通だけを遮断するものになり、液室Lから液吐出路54を経由する気液混合部80への内容液の供給を終了する。この後、空気送出路73の導通はなお維持されているから、空気室Aから空気送出路73を経由する気液混合部80への空気の供給が継続される。
【0057】
噴霧器10は以下の如く動作する。
(動作1)
(1)図9、図10の初期状態から頭部40を押すと最初に頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60が下へ下がる。
【0058】
(2)ポペット60の下端バルブ62がシリンダ30の小径部30Bの下端側に設けられた下端側弁座34に当たり、液室Lを閉じる。
【0059】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が狭くなる)、エアピストン70の筒部70Aの下端とピストンガイド51の中間フランジ部51Bの間に隙間ができ、空気室Aの送出口73Aとなる。
【0060】
(動作2)(図11、図12)
(1)頭部40を更に押すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が下へ下がる。
【0061】
(2)空気室A内の空気は空気送出路73を通り、液室L内の液は液吐出路54を通り、気液混合部80で混合されて霧状になる。霧状内容液は頭部40の吐出管路42を圧送されて吐出口43から吐出される。
【0062】
(3)頭部40を押している途中で、エアピストン70が塞いでいた空気室Aの側面の空気導入口91が開放されるため、空気が容器本体1の内部へ導入される。
【0063】
(動作3)(図13、図14)
(1)頭部40を更に押すと、頭部40と一体になって下へ下がるピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路203に、シリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34に当たって制止されているポペット60の上端液止め部201が挿入され、上端液止め部201により持ち上げられるボール弁55及び液止め弁202が液吐出路54に臨んでいる気液混合板81の下端開口を閉塞し、液吐出路54の導通が遮断される。空気送出路73の導通は遮断されない。
【0064】
(2)液室Lから液吐出路54を経由する気液混合部80への内容液の供給が終了し、空気室Aから空気送出路73を経由する気液混合部80への空気の供給だけが継続される。これにより、気液混合部80における霧状内容液の生成はなくなり、霧状内容液の吐出が終了した後、頭部40の吐出管路42、吐出口43から空気のみが吐出される。頭部40の吐出管路42、吐出口43に残留していた内容液が、空気の流れにより外部へと吹飛ばし除去される。
【0065】
(動作4)
(1)頭部40を押すのをやめて頭部40から手を離すと、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、ポペット60が圧縮コイルばね53のばね力で上がる。
【0066】
(2)ポペット60の下端がシリンダ30の小径部30Bの下端側弁座34から離れ隙間ができ、液室Lを開く。
【0067】
(3)エアピストン70はこの時点では動かないため(頭部40とエアピストン70の上端の隙間が広くなる)、エアピストン70の筒部70Aの下端とピストンガイド51の中間フランジ部51Bの隙間が閉じ、空気送出口73Aが閉じられる。
【0068】
(動作5)
(1)頭部40が更に上昇すると、頭部40と一体となって、ピストンガイド51、ピストン52、エアピストン70が上昇する。ピストンガイド51の上端側弁座51Aの流路203が、コイルばね53のばね力で上方への移動を制限されているポペット60の上端液止め部201から抜け出る。
【0069】
(2)空気室A内は負圧となるため、吸入チェック弁72が開き、空気吸入口72Aを通り空気室A内へ空気が吸入される。また、液室L内も負圧となるため、容器本体1内の内容液がディップチューブ32を通って液室Lへ導入される。
【0070】
(3)図1の初期状態に戻る。
【0071】
本実施例によれば、実施例1におけると実質的に同様の作用効果を奏する。特に、液止め弁202がピストンガイド51の内周に設けられている液吐出路54を、気液混合部80との境界部(気液混合板81)で遮断するものになるから、噴霧器10の待機状態で液吐出路54に残留する内容液の全てを外気の影響から遮断できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、噴霧器において、霧状内容液の吐出終了後に、頭部の外気に接している吐出口における内容液の残留、ひいてはその乾燥固化を防止し、吐出口のつまりを生ずることなく、霧状内容液の繰り返し吐出性を確保することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 容器本体
1A 口部
10 噴霧器
20 キャップ
30 シリンダ
30A 大径部
30B 小径部
32 ディップチューブ
40 頭部
41 ステム
42 吐出管路
43 吐出口
51 ピストンガイド
51A 上端側弁座
52 液ピストン
55 ボール弁(逆止弁)
73 空気送出路
80 気液混合部
101 液止め部
102 流路
201 液止め部
202 液止め弁
203 流路
A 空気室
L 液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部を有し、頭部の往復動により、容積可変の液室から液吐出路を経由して内容液が、容積可変の空気室から空気送出路を経由して空気が、それぞれ気液混合部に供給され、
この内容液が気液混合部で空気と混合されて霧状にされ、この霧状内容液が頭部に設けた吐出口から吐出可能にされる噴霧器であって、
前記液室から気液混合部への内容液の供給が終了した後も、空気室から気液混合部への空気の供給が行なわれるように構成したことを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
容器本体の口部に固定したキャップに対し往復動可能に設けられる頭部と容器本体の内部に設置されるシリンダを有し、頭部の往復動により、シリンダの小径部の内部に形成される容積可変の液室から液吐出路を経由して内容液が、シリンダの大径部の内部に形成される容積可変の空気室から空気送出路を経由して空気が、それぞれ気液混合部に供給され、
この内容液が気液混合部で空気と混合されて霧状にされ、この霧状内容液が頭部に設けた吐出口から吐出可能にされるものであり、
頭部の往復動に連動する液ピストンがシリンダの小径部の内壁に摺動可能に挿入され、該小径部の内部の液ピストンの正面側に該液ピストンにより拡縮される液室が形成され、ピストンの内周に摩擦嵌合するポペットの下端バルブが小径部における容器本体の内部に臨む下端側弁座に接離して液室を容器本体の内部に対し開閉し、該ピストンにより拡張されるとともにポペットの下端バルブにより開かれる液室に、容器本体の内部の内容液が該小径部に接続されているディップチューブを介して吸入され、液ピストンにより収縮されるとともにポペットの下端バルブにより閉じられる液室の内容液が、液吐出路に設けてある逆止弁を開いて気液混合部に供給され、
頭部の往復動に連動するエアピストンがシリンダの大径部の内部に摺動可能に配置され、シリンダの大径部の内部のエアピストンの正面側に該エアピストンにより拡縮される空気室が形成され、エアピストンにより拡張される空気室に外部の空気が吸入され、エアピストンにより収縮される空気室の空気が気液混合部に供給される噴霧器であって、
前記液吐出路の導通を遮断する液止め部を備え、
頭部の往動により、空気室の空気が空気送出路を経由して気液混合部に供給され、かつ液室の内容液が液吐出路を経由して気液混合部に供給されている過程で、液吐出路の導通だけを液止め部が遮断し、液室から気液混合部への内容液の供給が終了した後も、空気室から気液混合部への空気の供給が行なわれるように構成したことを特徴とする噴霧器。
【請求項3】
前記液止め部がポペットの上端液止め部からなり、液吐出路に設けてある逆止弁により開閉される上端側弁座の流路に該上端液止め部が嵌合してその導通を遮断する請求項2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記液止め部がポペットの上端液止め部からなり、液吐出路に設けてある逆止弁により開閉される上端側弁座の流路に該上端液止め部が挿入され、該上端液止め部により該上端側弁座から持ち上げられる逆止弁に付帯する液止め弁により、液吐出路の気液混合部寄りの流路を閉塞してその導通を遮断する請求項2に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記内容液が高分子を含む液体である請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−200766(P2011−200766A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68896(P2010−68896)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】