説明

噴霧機構

【課題】 液滴の微細化効果が劇的に向上し、高濃度の液滴を発生させる場合においても、その微細化を十分に達成できる噴霧機構を提供する。
【解決手段】 流路壁部25の内面から突出する形で衝突部材22を設け、また、該流路FP内にて衝突部材22の突出方向先端部と対向するギャップ形成部23を設ける。衝突部材22の外周面と流路壁部25の内面との間に迂回流路部251を形成するとともに、衝突部材22と絞りギャップ形成部23との間には、迂回流路部251よりも低流量かつ高流速となるように流れを絞りつつ通過させる絞りギャップ21Gを形成する。衝突部材22には、流路壁部25とともに該衝突部材22を突出方向に貫通する形にて、一端側が該衝突部材22の先端側にて絞りギャップ21G内に液体噴出口を開口し、他端側が流路壁部25を貫通して壁部外面に液体取入口を開口する吸引孔226を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を霧化する方法は種々存在するが、その一つとして、絞り部を有した霧化ノズルに気体と液体とを混合して供給し、ノズル先端から霧として噴出する方式が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−16846号公報
【特許文献2】特開2006−175358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の霧化ノズルは絞り孔の通過抵抗が大きく、微細な液滴が得にくい欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、液滴の微細化効果が劇的に向上し、高濃度の液滴を発生させる場合においても、その微細化を十分に達成できる噴霧機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の噴霧機構の第一の構成は、
気体又は気液混合流体を導入するための流体入口と噴霧出口とを有し、流体入口から噴霧出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材と、
流路形成部材の流路壁部の内面から突出する衝突部材と、
流路内にて衝突部材の突出方向先端部と対向するギャップ形成部とを有し、
衝突部材の外周面と流路壁部の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように気液混合流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成され、
衝突部材には、流路壁部とともに該衝突部材を突出方向に貫通する形にて、一端側が該衝突部材の先端側にて絞りギャップ内に液体噴出口を開口し、他端側が流路壁部を貫通して壁部外面に液体取入口を開口する吸引孔が形成され、
絞りギャップ内に発生する流体負圧にて液体取入口から吸引孔を介して絞りギャップ内に液体を吸引して液滴化するとともに、衝突部材に衝突し迂回流路部を経て該衝突部材の下流側に回り込む回り込み乱流に巻き込むことにより液滴を粉砕し、噴霧出口より噴霧するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の噴霧機構の第二の構成は、気液混合流体を導入するための流体入口と噴霧出口とを有し、流体入口から噴霧出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材と、
流路形成部材の流路壁部の内面から突出する衝突部材と、
流路内にて衝突部材の突出方向先端部と対向するギャップ形成部とを有し、
衝突部材の外周面と流路壁部の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように気液混合流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成され、絞りギャップを通過する気液混合流体に含まれる液滴を、衝突部材に衝突し迂回流路部を経て該衝突部材の下流側に回り込む回り込み乱流に巻き込むことにより粉砕し、噴霧出口より噴霧するようにしたことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の第一の構成によると、流路形成部材の流路壁部の内面から突出する形で衝突部材を設け、また、該流路内にて衝突部材の突出方向先端部と対向するギャップ形成部を設ける。そして、衝突部材の外周面と流路壁部の内面との間に迂回流路部を形成するとともに、衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように流れを絞りつつ通過させる絞りギャップを形成する。このような構造の噴霧機構に気体又は気液混合流体よりなる流れを供給すると、流れは絞りギャップにて絞られ流速が増加する。その結果、絞りギャップ内に負圧が発生し、該絞りギャップに連通する衝突部材の吸引孔を経て絞りギャップに液体が吸引・供給される。吸引された液体は、流体入口から供給され高速の絞りギャップ流に巻き込まれて粉砕され液滴化する。
【0009】
また、本発明の第二の構成は、衝突部材に吸引孔が形成されず、流体入口から気液混合流体が絞りギャップに供給される。その以外は第一の構成と同じであり、気液混合流体に含まれる液滴は高速の絞りギャップ流に巻き込まれて粉砕される。
【0010】
そして、第一及び第二の構成のいずれにおいても、流体入口から供給される流れの一部は絞りギャップを形成している衝突部材に衝突するが、絞りギャップを形成する衝突部材と流路壁部との間には、衝突部材に衝突した流れを迂回させる迂回流路部が形成されている。これにより、絞りギャップを通過する流体の抵抗が過度に増加せず、結果として該絞りギャップは従来よりもはるかに高速の流れが通過し、その流れに含まれる液滴の微粉砕化が進行しやすくなる。また、絞りギャップの通過流速が高速化することで、その下流側に立体広角的に拡がりながら形成される三次元的な負圧域の全体にわたって微小な渦流が多数形成される。さらに、これとは別に、衝突部材にぶつかって迂回流路部を通過した流れが衝突部材の下流側に回りこみ、より大流量で激しい乱流が上記の負圧域に重畳して流れ込む。液滴を含む絞りギャップの通過流は、これら2系統の乱流により三次元的に激しくランダムに撹拌されるとともに、液滴を取り囲む多数の微小渦流がそれぞれ液滴を自身に引き込もうとする結果、液滴の微粉砕が効率的に進行し、高濃度で粒径の小さい液滴を容易に得ることができる。
【0011】
例えば、円柱状断面の衝突部材を流れ中に配置したとき、衝突部材の外径をD、流速をU及び水の動粘性係数をνとしてレイノルズ数Reは、
Re=UD/ν(無次元数) ‥ (1)
にて表され、該円柱状断面の衝突部材周囲の流れはレイノルズ数Reが1500以上で乱流化することが知られており、特にReが10000以上のとき、回り込み乱流による液滴の微粉砕効果は飛躍的に高められる。
【0012】
以下、本発明の噴霧機構の構成に付加することができる種々の要件について説明する。
まず、迂回流路部は、流路内にて流れ方向から見て衝突部材の突出方向に関しその片側だけに形成することもできるが、流れ方向から見て衝突部材の突出方向に関しその両側に迂回流路部を形成しておけば、絞りギャップ下流側の負圧域に向け、衝突部材の両側から回り込み乱流が合流するので液滴粉砕効果が一層高められ、微細液滴をより効率的に発生することができる。
【0013】
流体入口と噴霧機構との間には、流体入口からの流れを増速して噴霧機構に導く準備絞り機構を設けることができる。このような準備絞り機構を設けることで、絞りギャップ及びその周囲における流速をさらに高めることができ、液滴の更なる微細化及び高濃度化を測ることができる。
【0014】
次に、衝突部材及びギャップ形成部との絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかに減圧空洞を形成することができる。減圧空洞を流れ中で共振させれば、該共振により超音波帯共鳴波が発生し、共鳴振動により液滴粉砕をさらに促進できる。
【0015】
次に、衝突部材及びギャップ形成部の絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかを、流入側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次縮小させる絞り傾斜面として形成することができる。これにより、絞りギャップの対向間隔が絞りギャップ入口からギャップ奥に向かうほど連続的に縮小するので、ギャップ奥に向けて流れをスムーズに絞ることができ、ギャップ通過時の流量損失を低減して流速を高めることができる。また、衝突部材及びギャップ形成部の絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかは、流出側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次拡大させる拡大傾斜面として形成することもできる。
【0016】
本発明の噴霧機構において絞りギャップの間隔を縮小すればギャップ通過流量は減少する一方、迂回流路部の流量は増大する。従って、絞りギャップの通過流速が過度に減少しない範囲内で絞りギャップ間隔を縮小すれば、絞りギャップで発生した微小液滴の回り込み乱流による微細化効果が高められ、より細径の液滴を発生できる。他方、絞りギャップの間隔を拡大すれば、絞りギャップ内の流通抵抗が減少するので、迂回流路部も合わせ流路断面全体で得られる噴射流量を増やすことができる(この場合、ギャップ間隔の設定値によっては、絞りギャップ内の流速がやや不足傾向となる場合もあるが、噴射流量の確保が優先される場合には有利となる)。そこで、本発明の噴霧機構に、絞りギャップの間隔を変更可能に調整する絞りギャップ間隔調整機構を設けておけば、液滴細径化と噴射流量との要求レベルに応じて絞りギャップの間隔を適宜調整できる。
【0017】
次に、ギャップ形成部は、流路の断面中心に関して衝突部材と反対側にて壁部内面から衝突部材に向けて突出する対向衝突部材として形成することができ、絞りギャップを衝突部材の突出方向先端部と対向衝突部材の突出方向先端部との間に形成することができる。例えば、衝突部材の先端面を流路壁部内周面と対向させて絞りギャップを形成してもよく、この場合は流路壁部の衝突部材との対向部分がギャップ形成部を構成することとなる。しかし、この構成では、壁面摩擦による流量損失の大きい流路軸断面の外周縁領域に絞りギャップが位置するので、絞りギャップの通過流速も小さくなりがちである。しかし、対向衝突部材を設けることで絞りギャップの形成位置を流速の大きい断面中心側に近づけることができ、絞りギャップの通過流速が増大するので、微細液滴をより効率的に発生させることができる。
【0018】
また、衝突部材と対向衝突部材との少なくとも一方の絞りギャップに臨む先端部分には、先端に向かうほど径小となるテーパ状の周側面を有した縮径部を形成することができる。このような縮径部を設けることにより、次のような効果が達成される。
・衝突部材ないし対向衝突部材の縮径部の外周面先端付近においては、流れの衝突迂回長が外周面基端付近よりも短くなり流速が増大する。また、縮径部外周面の流れ方向上流側に位置する部分は前述の絞り傾斜面を形成する。これにより、絞りギャップ付近の乱流発生効果がさらに高められ、微細液滴の発生効率がさらに向上する。
・衝突部材と対向衝突部材とに対し、流れの衝突迂回による渦流ないし乱流の発生効果が、それらの対向方向と直交する面内だけでなく、対向方向と平行は面内(つまり、縮径部を絞りギャップ側に乗り越える方向)にも生じ、三次元的な液滴の微粉砕効果が一層高められる。
【0019】
対向衝突部材を設ける場合には、衝突部材及び対向衝突部材の一方又は双方に、絞りギャップに臨む先端面にギャップ形成方向に引っ込む前述の減圧空洞を形成できる。特に衝突部材及び対向衝突部材の一方に減圧空洞を形成し、他方には、その先端が減圧空洞の開口に臨む位置関係にて縮径部を形成する構成を採用すると、絞りギャップ内の流れは該縮径部により大幅に速度を高めることができる。そして、その増速された流れが減圧空洞内の淀み部分と接することで極めて大きな流速差が生じる。また、縮径部を乗り越える際に減圧空洞側に流れが屈曲形態で迂回することで、該流速差の生ずる区間長も増大する(この効果は、縮径部の先端側の一部が減圧空洞の内部に入り込むように位置調整されている場合により顕著となる)。さらに、後述のごとく、この縮径部の形成により減圧空洞の共鳴効果をより顕著にできる可能性がある。いずれも、液滴の更なる微細化に有効に貢献する。
【0020】
具体的には、絞りギャップは、衝突部材の先端面にて減圧空洞の開口周縁部をなす周縁領域と縮径部のテーパ状の周側面とが対向することにより楔状断面を有し、かつ空間外周側が迂回流路部に開放する円環状のギャップ周縁空間と減圧空洞とが、減圧空洞の開口内周縁と縮径部の周側面との対向位置に形成される円環状のくびれギャップ部を介して互いに連通した構造をなすように構成できる。これにより、縮径部外周面の流れ方向に関し絞りギャップの両側に位置する部分も補助的なギャップとして機能し、流速が向上することにより、微細液滴の発生効率向上に寄与する。
【0021】
なお、対向衝突部材を設ける場合、迂回流路部を衝突部材の外周面と対向衝突部材の外周面とにまたがる形で形成するとよい。これにより、衝突部材と対向衝突部材との双方が回り込み乱流の発生に寄与し、析出液滴の微粉砕効果が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の噴霧機構を用いた霧発生装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の噴霧機構の第一の構成を具現した噴霧ノズルの平面図及び横断面図。
【図3】衝突部材を用いて形成する絞りギャップ構造の拡大軸断面図。
【図4】図2の噴霧ノズルの要部を拡大して示す横断面図。
【図5】衝突部材による乱流形成作用を模式的に示す説明図。
【図6】複数の渦流により液滴が引き裂かれて微小化する概念を説明する図。
【図7】絞りギャップの第一の変形例を示す軸断面図。
【図8】同じく第二の変形例を示す軸断面図。
【図9】同じく第三の変形例を示す軸断面図。
【図10】同じく第四の変形例を示す軸断面図。
【図11】同じく第五の変形例を示す軸断面図。
【図12】同じく第六の変形例を示す軸断面図。
【図13】同じく第七の変形例を示す軸断面図及び横断面図。
【図14】同じく第八の変形例を示す軸断面図及び横断面図。
【図15】本発明の噴霧機構の第二の構成を具現した噴霧ノズルの要部を拡大して示す横断面図。
【図16】本発明の噴霧機構の第一の構成を具現した噴霧ノズルと、第二の構成を具現した噴霧ノズルとを併用した霧発生装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の噴霧機構を用いた霧発生装置の概略構成を示すブロック図である。装置の要部をなすのは本発明の噴霧機構の第一にかかる要件を具備する噴霧ノズル21であり、流体入口31(後述)に気流供給管304が接続される一方、衝突部材22に形成される吸引孔(後述)に液体供給管305が接続される。気流供給管304にはコンプレッサー300が接続され、加圧された気体がバルブ303により圧力調整されつつ供給される一方、液体供給管305には液体タンク301から噴霧対象となる液体が供給され、噴霧ノズル21内で気体と混合されつつ液滴となり、噴霧出口106から霧MSTとなって噴霧される。
【0024】
気体は例えば空気であるが、これに特に限定されず、酸素、炭酸ガス、窒素、不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)、水素、オゾン(空気、酸素、炭酸ガス、不活性ガス等により希釈されていてもよい)等の種々の気体を採用できる。また、液体は、例えば水であるが、これに特に限定されず、アルコールのほか、ガソリン、化石燃料(軽油、重油など)を採用してもよい。
【0025】
図2は、噴霧ノズル21の構造の一例を示すものである。また、図3及び図4は、その要部を拡大して示す断面図である。噴霧ノズル21は流体入口31と噴霧出口106を備えた流路形成部材20と、流路形成部材20内にて流路壁部25よりも半径方向内側に配置された衝突部材22と、流路FP内にて衝突部材22の突出方向先端部と対向する絞りギャップ形成部23とを有する。流路壁部25は、金属、セラミックあるいは樹脂にて構成される。図3に示すように、噴霧ノズル21において衝突部材22の外周面と流路壁部25の内面との間には迂回流路部251が形成される。また、衝突部材22と絞りギャップ形成部23との間には、迂回流路部251よりも低流量かつ高流速となるように流れを絞りつつ通過させる絞りギャップ21Gが形成されている。
【0026】
また、衝突部材22には吸引孔226が形成されている。吸引孔226は、流路壁部25とともに該衝突部材22を、その流路内への突出方向に貫通する形で、一端側が該衝突部材22の先端側にて絞りギャップ21G内に液体噴出口226dを開口し、他端側が流路壁部25を貫通して壁部外面に液体取入口226eを開口する形で形成されている(後述の工具係合孔226eと減圧空洞221が吸引孔の一部を構成している)。
【0027】
図4及び図5に示すように、絞りギャップ形成部23は、流路FPの断面中心Oに関して衝突部材22と反対側にて壁部内面から衝突部材22に向けて突出する対向衝突部材(以下、対向衝突部材23ともいう)として形成され、絞りギャップ21Gは衝突部材22の突出方向先端部と対向衝突部材23の突出方向先端部との間に形成されている。
【0028】
図2に示すように、流路形成部材20の上流側端部外周面には、流通経路接続部として接続用雄ねじ部274が形成され、その基端部272の外周にOリング273が嵌着されている。接続用雄ねじ部274にて、流路形成部材20は気流供給管304(図1)に対し螺合により接続される。なお、流通経路接続部はねじ部に限らず、必要な耐圧を確保できるものであれば、例えばワンタッチ継手など、周知の他の配管接続構造を採用してもよい。
【0029】
流路形成部材20には、流体入口31と絞りギャップ21Gとの間に、流体入口31からの流れを増速して絞りギャップ21Gに導く準備絞り機構30が形成されている。該準備絞り機構30は、具体的には流体入口31を形成する円筒状の導入部31Aと、その導入部31Aの下流側にテーパ状に縮径する縮径部32と、該縮径部32の下流側に連通一体化された円筒状の径小部30Sとを有する。また、径小部30Sに続く形で絞りギャップ21G側には、径小部30Sよりも径大の準備拡大部30Aが円筒面状に形成されている。また、絞りギャップ21Gの下流側に開口する噴霧出口106はテーパ状に拡径する形で形成されている。
【0030】
衝突部材22及び対向衝突部材23はいずれも金属製(例えばステンレス鋼製:例えば、SUS316材)のねじ部材として構成され、流路壁部25に対し先端側が流路FP内に突出し、後端側が流路壁部25の外周面に露出するように該流路壁部25を貫通する形態にて配置されている。衝突部材22の外周面には雄ねじ部22tが形成され、流路壁部25に貫通形成された雌ねじ孔22uにねじ込まれている。該雌ねじ孔22u内における該衝突部材22の螺進量に応じて絞りギャップ21Gの間隔が調整可能である。また、対向衝突部材23の外周面にも雄ねじ部23tが形成され、流路壁部25に貫通形成された雌ねじ孔23uにねじ込まれている。該雌ねじ孔23u内における該対向衝突部材23の螺進量に応じて絞りギャップ21Gの間隔が調整可能である。以上、絞りギャップ21Gの間隔を変更可能に調整する絞りギャップ間隔調整機構が実現されていることが明らかである。なお、衝突部材22と対向衝突部材23との双方を同一方向に螺進させれば、絞りギャップ21Gの、流路FPの軸断面半径方向における位置を変更することも可能である。これらの部材の螺進調整を容易にするために、流路壁部25外に突出する衝突部材22と対向衝突部材23との各頭部端面には六角レンチなどの工具を係合させる工具係合孔222,232がそれぞれ形成されている。なお、絞りギャップ21Gの間隔ないし位置を固定として調整を特に行なわない場合には、衝突部材22及び対向衝突部材23を流路壁部25に対し、インサート成型等により螺進不能に固定・一体化する構成も可能である。さらに、衝突部材22及び対向衝突部材23の一方のみを螺進操作可能として、他方を流路壁部25に螺進不能に固定一体化することもできる。
【0031】
次に、図3に示すように、衝突部材22には、絞りギャップ21Gに臨む先端面にギャップ形成方向に引っ込む減圧空洞221が形成されている。また、対向衝突部材23には先端が減圧空洞221の開口に臨む位置関係にて縮径部23kが形成されている(ただし、対向衝突部材23に減圧空洞を形成し、衝突部材22に縮径部を形成してもよい)。対向衝突部材23に形成された縮径部23kは、先端に向かうほど径小となるテーパ状の周側面231(具体的には円錐面)を有している。該テーパ状の周側面231の流入側(流れ上流側)に位置する部分は、該絞りギャップ21Gの間隔を上流側から下流側に向けて漸次縮小させる絞り傾斜面を構成する。また、流出側(流れ下流側)に位置する部分は、絞りギャップ21Gの間隔を上流側から下流側に向けて漸次拡大させる拡大傾斜面を構成する。
【0032】
衝突部材22と対向衝突部材23とは同心的に配置されている。また、減圧空洞221は衝突部材22の外周面と同心的な位置関係にある円筒面状の内周面を有する。縮径部23kは先端側の一部が減圧空洞221の内部に入り込むように軸線方向の位置が調整されている。図3に示すように、絞りギャップ21Gは、衝突部材22の先端面にて減圧空洞221の開口周縁部をなす周縁領域224と縮径部23kのテーパ状の周側面231とが対向することにより楔状断面を有する円環状のギャップ周縁空間251nが形成されている。該ギャップ周縁空間251nの空間外周側は迂回流路部251に開放するとともに、減圧空洞221の開口内周縁と縮径部23kの周側面との対向位置に形成される円環状のくびれギャップ部21nを介して減圧空洞221と互いに連通した構造をなす。迂回流路部251は、流路FP内にて流れ方向から見て衝突部材22の突出方向に関しその両側に、それぞれ衝突部材22の外周面と対向衝突部材23の外周面とにまたがる形で形成されている。
【0033】
本発明では、衝突部材22を用いて絞りギャップ21Gを形成することにより、絞りギャップ21Gにて負圧を発生させるにとどまらず、衝突部材22に高速で気流を衝突させ下流側に回り込ませることで激しい乱流を三次元的に発生させる。それによって、絞りギャップ21Gの直下流域に多数の小渦流を密集して形成することができる。すなわち、図4に示すように、準備絞り機構30の通過により、気流GSは増速された形で絞りギャップ21Gに向けて流れ込む。他方、図3に示すように、絞りギャップ21Gを形成する衝突部材22及び対向衝突部材23は、流路壁部25との間に、ぶつかった流れWFを迂回させる迂回流路部251を形成している。つまり、絞りギャップ21Gの外周縁が迂回流路部251に開放していることで、ギャップ通過時の流体抵抗が過度に増加せず、結果として、絞りギャップ21Gを流れは高速で通過することができ、絞りギャップ21G内及びその下流の広い領域にわたって強い負圧域が発生する。このとき、図4に示すように、吸引孔226の液体取入口226eに液体LQが供給されると、絞りギャップ21G内に発生する流体負圧により、液体LQは該吸引孔226を経て効率よく吸引され、絞りギャップ21G内に噴出しつつ直下流域に形成される小渦流に巻き込まれて液滴に粉砕される。
【0034】
一方、図5に示すように、衝突部材22にぶつかって迂回流路部251を通過した流れWFは衝突部材22の下流側に回りこみ、大流量で激しい乱流CFを形成する。これにより、衝突部材22の下流側では、その全域にわたって微小な渦流SWE(乱流)が極めて高密度に形成される。また、渦流SWEの発生密度が高くなることで、負圧域は、絞りギャップ21G内部のみでなくその下流側にも立体広角的に大きく拡がって形成される。従って、形成された液滴はギャップ下流側でさらに多数の渦流により微粉砕を受けることとなる。また、絞りギャップ21Gの周縁領域は迂回流路部251に開放する円環状のギャップ周縁空間251nを形成し、縮径部23kの外周面の、流れ方向に関し絞りギャップ21Gの両側に位置する部分も補助的なギャップとして機能するので、液滴の粉砕効率がさらに向上する。
【0035】
乱流化により発生する個々の渦流SWEは、渦外周よりも中心のほうが圧力が低いので、渦流SWEの周囲の流れを渦中心に引き込むように作用する。乱流下では上記のごとく、細かい多数の渦流SWEが三次元的に密集して形成されるので、図6の上に示すように、液滴BMは、複数の渦流SWEによる立体的な配位を常に受けた状態となる。各渦流SWEは液滴BMに対し、それぞれ自身の中心に向けて吸引力を作用させるので、図6の下に示すように、液滴BMはそれら周囲の渦流SWEにより四方八方に吸い込まれていわば「八つ裂き」状態となり、微小液滴BFへの粉砕が促進されるとともに液滴径の平均化が進行する。つまり、液滴BM同士を衝突させて粉砕するというよりは、各々吸引力を有した多数の小渦流SWEにより取り囲み、互いに異なる複数方向に引きちぎるイメージである。
【0036】
また、衝突部材22の先端に絞りギャップ21Gに面する形で減圧空洞221が形成されているが、該減圧空洞221の形成により次のような作用・効果が期待できる。
・減圧空洞221内は全域が高負圧域となり、液体吸引効率のさらなる向上に寄与する。
・減圧空洞221が流れ中で共振することにより超音波帯共鳴波が発生し、共鳴振動による液滴粉砕が促進される。
【0037】
以下、本発明にて使用した噴霧ノズルの種々の変形例について説明する(すでに説明済みの部分と共通する要素には同一の符号を付与して詳細な説明は省略する)。図7は、衝突部材22に形成する減圧空洞221内の流れをより滑らかにするために、空洞底部を湾曲面状に形成した例を示す。また、図8は、減圧空洞221の開口内周縁面を、対向衝突部材23の先端部のテーパ状周側面231に対応する座ぐり状のテーパ面224とした例を示す。このテーパ面224の形成により、対向衝突部材23の先端側に流れを導く効果が高められる。
【0038】
図9は、衝突部材22から減圧空洞221を省略し、先端面を平坦に形成した例を示す。対向衝突部材23の先端部にはテーパ状周側面231が形成されているが、衝突部材22と対向する先端面は平坦に形成されている。図10は、対向衝突部材23の先端面に浅い減圧空洞232を形成した例を示す。衝突部材22には減圧空洞が形成されず、その先端部外周縁がテーパ状周側面225とされている。
【0039】
図11は、吸引孔226を形成する場合の減圧空洞221の形成形態に係る変形例を示すものであり、該減圧空洞221の内周面を、対向衝突部材23の先端部のテーパ状周側面231に対応する座ぐり状のテーパ面224とした例を示す。一方、図12は、減圧空洞を省略した構成を示すものである。
【0040】
図13は、対向衝突部材を廃止し、衝突部材22を流路形成部材20の壁部内面を絞りギャップ形成部20cとして、これに対向させる形で絞りギャップ21Gを形成した例である。衝突部材22の先端面は、流路形成部材20の壁部内面に対応する凸湾曲面状とされている。また、図14は、対向衝突部材123を衝突部材22よりも広幅に形成することで、対向衝突部材123の側方に迂回流路部251が生じないように構成した例を示すものである。
【0041】
なお、図15に示すように、衝突部材22に形成されていた吸引孔を廃止すれば、本発明の噴霧機構の第二の構成にかかる噴霧ノズル121を具現することができる。この場合、絞りギャップ21Gへの衝突部材22を経由した液体供給はできなくなるので、周知の気液混合ノズル(図示せず)を用いて気体と液滴とを混合した気液混合流体MFをあらかじめ形成し、流体入口側から絞りギャップ21Gに直接供給することとなる。気液混合流体MFに含まれる液滴は、絞りギャップ21G及びその直下流域にて、図4の第一の構成の噴霧ノズル21と同じ作用により粉砕され、霧MSTとなって噴霧出口106から噴霧される。
【0042】
図1の構成における第一の構成の噴霧ノズル21の下流側に、図16に示すように、中継配管306を介して、さらに上記第二の構成にかかる噴霧ノズル121を接続することも可能である。この場合、第一の構成の噴霧ノズル21の噴霧出口側には、流体入口側と同様に、接続用雄ねじ部などの流通経路接続部を形成することで中継配管306の接続が可能となる。これにより、噴霧ノズル21で形成された霧が気液混合流体として中継配管306を介して第二の構成にかかる噴霧ノズル121に供給され、最終的に噴霧される霧MSTの液滴をさらに細かくすることが可能となる。この構成では、第一の構成の噴霧ノズル21を、第二の構成にかかる噴霧ノズル121に気液混合流体を供給するための気液混合ノズルとして活用している。
【0043】
また、図4の第一の構成の噴霧ノズル21に対して、気流GSの代わりに気液混合流体MFを供給し、さらに、その吸引孔226から新たな液体を供給しつつ噴霧するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 霧発生装置
21 噴霧ノズル(噴霧機構)
21J 絞り部
21G 絞りギャップ
21n くびれギャップ部
22 衝突部材
23 対向衝突部材(絞りギャップ形成部)
23k 縮径部
30 準備縮径部
FP 流路
31 流体入口
106 噴霧出口
221 減圧空洞
226 吸引孔
251 迂回流路部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体又は気液混合流体を導入するための流体入口と噴霧出口とを有し、前記流体入口から前記噴霧出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材と、
前記流路形成部材の流路壁部の内面から突出する衝突部材と、
前記流路内にて前記衝突部材の突出方向先端部と対向するギャップ形成部とを有し、
前記衝突部材の外周面と前記流路壁部の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、前記衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、前記迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように前記気液混合流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成され、
前記衝突部材には、前記流路壁部とともに該衝突部材を突出方向に貫通する形にて、一端側が該衝突部材の先端側にて前記絞りギャップ内に液体噴出口を開口し、他端側が前記流路壁部を貫通して壁部外面に液体取入口を開口する吸引孔が形成され、
前記絞りギャップ内に発生する流体負圧にて前記液体取入口から前記吸引孔を介して前記絞りギャップ内に液体を吸引して液滴化するとともに、前記衝突部材に衝突し前記迂回流路部を経て該衝突部材の下流側に回り込む回り込み乱流に巻き込むことにより前記液滴を粉砕し、前記噴霧出口より噴霧するようにしたことを特徴とする噴霧機構。
【請求項2】
気液混合流体を導入するための流体入口と噴霧出口とを有し、流体入口から前記噴霧出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材と、
前記流路形成部材の流路壁部の内面から突出する衝突部材と、
前記流路内にて前記衝突部材の突出方向先端部と対向するギャップ形成部とを有し、
前記衝突部材の外周面と前記流路壁部の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、前記衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、前記迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように前記気液混合流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成され、前記絞りギャップを通過する前記気液混合流体に含まれる液滴を、前記衝突部材に衝突し前記迂回流路部を経て該衝突部材の下流側に回り込む回り込み乱流に巻き込むことにより粉砕し、前記噴霧出口より噴霧するようにしたことを特徴とする噴霧機構。
【請求項3】
前記迂回流路部は、前記流路内にて流れ方向から見て前記衝突部材の突出方向に関しその両側に形成されている請求項1又は請求項2に記載の噴霧機構。
【請求項4】
前記衝突部材及び前記ギャップ形成部との前記絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかに減圧空洞が形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の噴霧機構。
【請求項5】
前記衝突部材及び前記ギャップ形成部の前記絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかが、流入側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次縮小させる絞り傾斜面として形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の噴霧機構。
【請求項6】
前記衝突部材及び前記ギャップ形成部の前記絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかが、流出側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次拡大させる拡大傾斜面として形成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の噴霧機構。
【請求項7】
前記ギャップ形成部は、前記流路の断面中心に関して前記衝突部材と反対側にて前記壁部内面から前記衝突部材に向けて突出する対向衝突部材として形成され、前記絞りギャップが前記衝突部材の突出方向先端部と前記対向衝突部材の突出方向先端部との間に形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の噴霧機構。
【請求項8】
前記衝突部材と前記対向衝突部材との少なくとも一方の前記絞りギャップに臨む先端部分が、先端に向かうほど径小となるテーパ状の周側面を有した縮径部が形成されてなる請求項7記載の噴霧機構。
【請求項9】
前記衝突部材及び前記対向衝突部材の一方には、前記絞りギャップに臨む先端面にギャップ形成方向に引っ込む減圧空洞が形成され、他方には先端が前記減圧空洞の開口に臨む位置関係にて前記縮径部が形成されている請求項8記載の噴霧機構。
【請求項10】
前記絞りギャップは、前記衝突部材の先端面にて前記減圧空洞の開口周縁部をなす周縁領域と前記縮径部のテーパ状の周側面の外周縁領域とが対向することにより楔状断面を有し、かつ空間外周側が前記迂回流路部に開放する円環状のギャップ周縁空間と前記減圧空洞とが、前記減圧空洞の開口内周縁と前記縮径部の前記周側面との対向位置に形成される円環状のくびれギャップ部を介して互いに連通した構造をなす請求項9記載の噴霧機構。
【請求項11】
前記迂回流路部が、前記衝突部材の外周面と前記対向衝突部材の外周面とにまたがる形で形成されている請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の噴霧機構。



















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−240269(P2011−240269A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115272(P2010−115272)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(709004293)株式会社マインドレイ技術科学研究所 (8)
【Fターム(参考)】