説明

噴霧用消臭・芳香剤及びその製造方法ならびに噴霧式消臭・芳香器

【課題】
空間や対象物に噴霧した場合でも、周囲がべとつかず、安全性の高い噴霧用消臭・芳香剤組成物の提供すること。
【解決手段】
固形担持体に、次の成分(a)
(a)沸点300℃未満の低沸点香料成分を80質量%以上含有する芳香成分
を担持せしめた薬剤担持体と、これを浸漬させるための次の成分(b)
(b)沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液
を組み合わせてなる噴霧用消臭・芳香剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用消臭・芳香剤及びその製造方法ならびにスプレー式消臭・芳香器に関し、更に詳細には、ハンドスプレー等により、空間及び薬剤付与対象物に対して芳香成分等の薬剤を噴霧し、薬効を発揮させる噴霧用消臭・芳香剤及びその製造方法ならびにスプレー式消臭・芳香器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部屋、トイレ、玄関等の生活空間や衣類、ソファ、カーテン等の繊維製品等の固体表面の悪臭を消臭し、周囲に芳香を付与するために噴霧タイプの消臭芳香器が広く利用されている。特に洗濯しにくい繊維製品に対しては、スプレータイプの芳香消臭器が好適に用いられている。
【0003】
このような芳香消臭器に用いられる消臭液が種々提案されており、例えば、フラボノイド等の消臭基材、アルキルグリコシド、水と共沸混合物を形成し得る沸点が100℃以下の溶剤及び水を含有するスプレー用消臭剤が提案されている(特許文献1)。また、水分量が80〜99重量%で25℃でのpHが7.5〜9.5の液体消臭剤であって、分子中に少なくとも1つの陽イオン性基と1つの炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物とカルシウムキレート定数が4以上のキレート剤とを含有する液体消臭剤が提案されている(特許文献2)。さらに、消臭基材と重量平均分子量2,000〜6,000,000の水溶性高分子0.001〜0.5重量%と水とを含有する液体消臭剤をスプレー容器に充填してなる消臭物品が提案されている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、これらの消臭液はいずれも、消臭基材や香料等の薬剤を分散ないしは可溶化させるために、不揮発成分である界面活性剤を比較的多量に配合する必要があり、スプレー器を使用して噴霧した場合には、少なからず床や噴霧対象物である繊維製品の表面がべたついてしまったり、固体表面を劣化させてしまうといった問題点を有していた。
【0005】
一方、スプレー式の芳香消臭器として、近年では、超音波振動子を用いて芳香効果を空気中に付与する超音波タイプの噴霧器も提案されており、例えば、メッシュタイプの超音波噴霧装置(特許文献4および5)や、ホーンタイプの超音波噴霧装置(特許文献6)が開示されている。
【0006】
しかしながら、このような超音波タイプの噴霧器により消臭液を噴霧した場合は、上記問題点に加え、長期間の使用により不揮発成分がメッシュ穴を塞いだり、ホーンに蓄積したりして消臭液が噴霧されなくなってしまうという問題があった。また微粒子化された不揮発成分を吸い込んでしまうことにより、不揮発成分が肺に蓄積し健康被害が生じる危険性も懸念されていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−95906号公報
【特許文献2】特開2001−40581号公報
【特許文献3】特開2001−37861号公報
【特許文献4】特開平4−371247号公報
【特許文献5】特表2003−535692号公報
【特許文献6】特開平5−212330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、対象物に噴霧しても、べとつきが少なく、対象物の劣化を防止できるとともに、超音波タイプの噴霧器により噴霧しても長期間安定して噴霧させることができる安全性の高い消臭・芳香剤組成物の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような噴霧用消臭・脱臭剤組成物を得るべく鋭意検討を行った結果、芳香成分として沸点の低い香料を担持させた固形担持体と、これを浸漬させるための特定沸点の水溶性溶剤及び/または水を含有する溶液とを組み合わせることによって、界面活性剤の配合量を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
固形担持体に、次の成分(a)
(a)沸点300℃未満の低沸点香料成分を80質量%以上含有する芳香成分
を担持せしめた薬剤担持体と、これを浸漬させるための次の成分(b)
(b)沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液
を組み合わせてなる噴霧用消臭・芳香剤である。
【0011】
また本発明は上記噴霧用消臭・芳香剤を、スプレー容器に収納したことを特徴とするスプレー式消臭・芳香器である。
【0012】
さらに本発明は、次の工程(1)ないし(3)
(1)固形担持体に成分(a)の芳香成分を担持させ薬剤担持体を得る工程
(2)成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液を
作成する工程
(3)前記工程(2)で作成した溶液中に前記工程(1)で作成した薬剤担持体を浸
漬させる工程
を含むことを特徴とする噴霧用消臭・芳香剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の噴霧用消臭・芳香剤組成物は、不揮発成分である界面活性剤の含有量が低いものであるため、噴霧された対象物のべたつきやその表面の劣化を抑制し得るものである。また、不揮発成分を吸い込むことによる健康被害の心配がなく安全性の高いものである。
【0014】
また、本発明の噴霧用消臭・芳香剤組成物は、空間へミスト化されて噴霧されたり、非常に表面積の広い対象物に噴霧されそこから揮散されるため、少量の芳香成分でも十分な芳香消臭効果を発揮することができる。
【0015】
さらに、メッシュタイプやホーンタイプの超音波タイプの噴霧器に用いた場合であっても、メッシュ穴を塞いでしまったり、ホーンに蓄積してしまうことがないため、長期間の使用であっても安定して消臭液を噴霧することができるとともに、不揮発成分を吸い込むことによる健康被害が生じる危険性もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で使用される成分(a)の芳香成分は、沸点300℃未満の低沸点香料を芳香成分中80質量%以上配合するものである。沸点300℃未満の低沸点香料は従来公知の香料成分を用いることができ、これに限定されるものではないが、例えば、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アセトフェノン、イソオイゲノール、イソアミルアセテート、イソメチルヨノン、エチルアセテート、エチルバニリン、オイゲノール、オクタノール、オクタナール、オクタン、オシメン、カンファー、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、サイメン、シクロヘキサン、シトロネロール、シネオール、ジヒドロミルセノール、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、ターピネオール、デカラクトン、デカン、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、トリデカン、ネロール、ノナン、ピネン、ブチルアセテート、フェネチルアルコール、ヘキサナール、ヘキサノール、ヘキサデカン、ヘキサラクトン、ヘキセノール、ヘプタデカン、プレゴン、ヘリオトロピン、 ベンジルアセテート ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、ボルネオール、ボルニルアセテート、ミルセノール、ミルセン、メチルサリシレート、メントール メントン、ヨノン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン等を挙げることができる。また、これらの1種若しくは2種以上を混合して用いることもできる。
【0017】
なお、沸点300℃以上の高沸点香料を含有しないことは、噴霧対象物に成分が残留することによる風合いの劣化や、超音波振動子の機能劣化の防止という本発明の効果の点で有利ではあるが、高沸点香料を少量含有することは、香りの嗜好性及び強さの点からこのましい場合があるため、成分(a)の芳香成分中0〜20質量%の範囲であれば配合することができる。このような沸点300℃以上の高沸点香料としては、パチュリアルコール、サンタロール、ネロリドール、フェルギノール、スクラレオール等が例示できる。
【0018】
また、本発明の成分(a)の芳香成分として用いられる香料成分は上記条件に加え、水/オクタノール分配係数が1〜4.5の条件を満たす香料成分を用いることが好ましい。この、水/オクタノール分配係数とは、一定量の被験物質を1−オクタノールに溶解し、1−オクタノールと水の2つの溶媒相中に加えて十分に混合した後、2相に分離し、各相中の被験物質濃度を測定することで求めることができるものであるが、この係数が1〜4.5の条件を満たす香料成分を用いることにより、噴霧用消臭・芳香剤組成物中の芳香成分の含有率を増加させることができる。
【0019】
このような沸点が300℃未満でかつ水/オクタノール分配係数が1〜4.5である香料成分としては、これに限定されるものではないが、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アセトフェノン、イソオイゲノール、イソアミルアセテート、イソメチルヨノン、エチルバニリン、オイゲノール、オクタノール、オクタナール、オシメン、カンファー、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、サイメン、シトロネロール、シネオール、ジヒドロミルセノール、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、ターピネオール、デカラクトン、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ネロール、ピネン、ブチルアセテート、フェネチルアルコール、ヘキサナール、ヘキサノール、ヘキセノール、プレゴン、ヘリオトロピン、 ベンジルアセテート ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、ボルネオール、ボルニルアセテート、ミルセノール、ミルセン、メチルサリシレート、メントール メントン、ヨノン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン等が挙げられる。また、これらの1種若しくは2種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
上記成分(a)の芳香成分は、固形担持体に担持させた薬剤担持体として用いられる。固形担持体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のペレットや、セルロース成型物などの有機担体や、シリカゲル、ゼオライト、フロリジル、フローライト等の無機担体のいずれも用いることができるが、香料成分の担持性やハンドリングから、ポリプロピレン、ポリエチレン、EVA等の有機担体を用いることが好ましい。また固形担持体の形状は特に限定されることなく、粒状、粉状、フイルム状等任意の形状の固形担持体を用いることができる。
【0021】
また本発明の噴霧用消臭・噴霧剤には、成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液を用いる。この成分(b)に含まれる沸点200℃未満の水溶性溶剤は、水と任意に混合することができるものであれば特に限定されない。具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
これらの水溶性溶剤のうち、対物安全性、対人安全性、引火点、容器劣化影響、原材料コスト等を考慮して、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることが好ましい。
【0023】
成分(b)中の沸点200℃未満の水溶性溶剤の配合量は、芳香成分の種類、水溶性溶剤の種類によって適宜設定できるが、0〜30質量%であり、好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは8〜12質量%である。水溶性溶剤の配合量が30質量%を越えると、対物安全性、対人安全性、引火点、容器劣化影響等が低下し、原材料コストが増加するため好ましくない場合がある。
【0024】
上記成分(b)の溶液には、さらに界面活性剤を含有することができるが、その成分(b)中の配合量は、0〜0.1質量%が好ましく、より好ましくは0〜0.05質量%である。0.1質量%より多く含有すると噴霧対象物のべとつきや劣化が生じるため本発明の効果が得られない場合がある。本発明に使用される界面活性剤としては、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、石けん(高級脂肪酸石けん)、石けん用素地、金属石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイド等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18好ましくは7から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8〜22好ましくは12〜14である。
【0029】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルはポリオキシエチレン鎖が3から18好ましくは5から12であり、アルキル鎖は直鎖または分岐のどちらでも良く、アルキル鎖長は8〜22好ましくは12〜14である。
【0030】
上記脂肪酸アルカノールアミドは、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸、のモノエタノールアミド、ジエタノールアミド等が挙げられ、第3級アミンオキサイドとしては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
上記両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
さらに、成分(b)の溶液には防腐剤を配合することが好ましい。香料には防カビ性能を有する香料があり、これらを一定濃度以上含有する処方ではカビ発生リスクは小さくなり、実質上防腐剤を配合しなくとも製品品質を維持できる場合はある。しかし、本発明の噴霧用消臭・芳香剤は従来の消臭剤等に比べ香料の含有量が少ないため、特にカビの発生に対して考慮する必要がある。本発明に用いることができる防腐剤は従来公知のものを用いることができるが、本発明の微量の配合で防カビ効果が維持できるという点、また、噴霧用消臭・芳香剤を収容する汎用なプラスチック容器等への吸着性が少ないことからカチオン系防腐剤が好ましく、これらの内でも4級アンモニウム塩が好ましい。さらに好ましくは4級アンモニウム塩の内でも特に塩化ベンザルコニウムが好ましい。これらの成分(b)中の配合量は、上記効果を損なわない範囲で任意に設定できるが、0.01〜0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.08質量%が適切である。0.01質量%よりも少ない場合は防腐性能が不足するため流通過程でカビ発生等が懸念されてしまう。また、0.1質量%よりも多い場合では噴霧した際の残渣の蓄積、皮膚刺激性等が懸念される状況となる。
【0033】
塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウム塩は界面活性剤としての効果も持ち合わせているため、上記界面活性剤としても使用することができる。4級アンモニウム塩を界面活性剤の配合量の範囲内において単独で又は他の界面活性剤と混合して用いることによって、不揮発成分の配合量を低減することができるために好ましい。
【0034】
さらにまた、本発明の噴霧用消臭・芳香剤には、本発明の効果に影響を与えない範囲内において、必要に応じて、可溶化助剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素等を配合することも可能である。
【0035】
本発明の噴霧用消臭・芳香剤は、上記成分(a)の芳香成分を担持した薬剤担持体と、成分(b)の溶液とを組み合わせ、薬剤担持体を成分(b)の溶液中に浸漬させたものである。このように薬剤担持体を成分(b)の溶液中に浸漬させることによって、成分(a)の芳香成分が成分(b)の溶液中に除放される。この除放された成分(a)の芳香成分を含む成分(b)の溶液(以下、「噴霧用消臭・芳香剤組成物」という)中の、成分(a)の芳香成分の含有量は、0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0036】
このような噴霧用消臭・芳香剤の製造は、例えば、次の工程(1)ないし(3)
(1)固形担持体に成分(a)の芳香成分を担持させ薬剤担持体を得る工程
(2)成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液を
作成する工程
(3)前記工程(2)で作成した溶液中に前記工程1で作成した薬剤担持体を浸漬さ
せる工程
を含む方法によって行われる。
【0037】
上記工程(1)では、従来公知の方法を用いることができ、例えば、担持させる成分(a)の芳香成分と固形担持体を常法により混合し攪拌する方法等により、芳香成分を固形担持体に担持させた薬剤担持体とすることができる。また、その際の成分(a)の芳香成分の添加量は、工程(3)による浸漬後の噴霧用消臭・芳香剤組成物中の芳香成分の含有量が上記した0.1〜0.5質量%の範囲内になるように固形担持体や芳香成分の種類により適宜設定できる。
【0038】
また、工程(2)においても、成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/または水と、必要に応じ界面活性剤や防腐剤を常法によって混合すればよい。
【0039】
さらに工程(3)では、上記工程(1)で得られた薬剤担持体を工程(2)で得られた溶液中に、室温で1〜5日間程度浸漬させればよい。このような条件で浸漬させることによって、成分(a)の芳香成分が薬剤担持体から溶液中に除放されるため、成分(b)の溶液中の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下と少なくても、噴霧用消臭・芳香剤組成物中に0.1〜0.5質量%の芳香成分を分散ないし溶解させることができる。
【0040】
このようにして製造された本発明の噴霧用消臭・芳香剤は、従来から使用されているスプレー用器、例えば、ポンプ式や蓄圧式のトリガー式のスプレー装置や、エアゾール容器、メッシュタイプやホーンタイプの超音波噴霧器等に充填してスプレー式消臭・芳香器とすることができる。
【0041】
薬剤担持体を含む噴霧用消臭・芳香剤をスプレー装置等に収容することにより、噴霧用消臭・芳香剤の温度変化等により一度溶液内に溶解した成分(a)の芳香成分等が分離した場合でも、薬剤担持体に再度担持されるため、溶液表面に芳香成分の層が形成されてしまうことがなく、また、芳香成分等が、収容容器を透過したり、収容容器に吸着され、芳香成分等が損失した場合でも、薬剤担持体から損失分が供給されるため、溶液中の芳香成分の含有量を常に一定にできるという効果を有する。
【0042】
また、薬剤担持体の比重は、成分(b)の溶液の比重より小さいことが好ましい。そうすることにより、薬剤担持体が成分(b)の溶液の表面に浮く(図1参照)。分離した成分(a)の芳香成分等は一般的には水より比重が小さいため、薬剤担持体が効率よく再吸着を行うことができるとともに、薬剤担持体によりスプレーチューブの吸液口を塞いでしまう虞もない。
【0043】
さらに、上記成分(a)の芳香成分を担持した薬剤担持体と、成分(b)の溶液とを組み合わせることによって生成する、成分(a)の芳香成分が成分(b)の溶液中に除放された噴霧用消臭・芳香剤組成物は、界面活性剤の含有量が少なくても、組成物中に0.1〜0.5質量%の成分(a)の芳香成分を溶解ないし分散できるものであるため、この噴霧用消臭・芳香剤組成物のみを上述したスプレー容器に収納してスプレー式消臭・芳香器とすることもできる。
【0044】
以上のようにして得られた本発明のスプレー式消臭・芳香器は、部屋、トイレ、居間、寝室、介護室、ペット飼育場所等の室内空間や、カーテン、ソファ、寝具、衣類、布製靴、布製帽子、マフラー、くつしたなどの繊維製品、ペット飼育容器、ペット飼育マット、猫砂、等のペット周囲対象物、オムツ、簡易便器、生ゴミ、ゴミ箱、灰皿、吸殻集積場所などの排泄・廃棄物周囲対象物に噴霧器により噴霧して使用することができる。
【実施例】
【0045】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら製造例、実施例等に何ら限定されるものではない。
【0046】
製 造 例 1
噴霧用消臭・芳香剤の製造(1):
均一に混合した下記の組成の香料成分(A)25質量部とEVAペレット(エチレン−酢酸ビニル共重合体 酢酸ビニル含有率:28% 商品名:ウルトラセン 東ソー社製)75質量部とを混合し、攪拌してEVAペレットに香料成分を担持させた。この香料成分を担持させたEVAペレット2.5gを下記組成の水溶液(B)50g中に混合し、室温で72時間放置し、本発明の噴霧用消臭・芳香剤を得た。
【0047】
香料成分(A)
成分 沸点 配合量
ベンジルアルコール 205℃ 19.5%
エチルバニリン 285℃ 16.5%
ジエチルマロネート 230℃ 16.0%
ヘリオトロピン 263℃ 10.1%
エチルブチレート 121℃ 7.9%
シンナミックアルデヒド 130℃ 6.3%
ベンジルアセテート 212℃ 5.5%
オイゲノール 255℃ 4.0%
エチルイソバレレート 135℃ 3.7%
メントール 212℃ 3.7%
リナロール 199℃ 2.0%
オクタナール 172℃ 1.0%
デカナール 208℃ 1.0%
【0048】
水溶液(B)
エチルアルコール 78℃ 10.0%
水 100℃ 89.95%
塩化ベンザルコニウム 0.05%
【0049】
製 造 例 2
噴霧用消臭・芳香剤の製造(2):
上記製造例1の香料成分(a)25質量部とEVAペレット(エチレン−酢酸ビニル共重合体 酢酸ビニル含有率:28% 商品名:ウルトラセン 東ソー社製)75質量部とを混合し、攪拌してEVAペレットに香料成分を担持させた。この香料成分を担持させたEVAペレット2.5gをエチルアルコール10%水溶液50g中に混合し、室温で72時間放置し、本発明の噴霧用消臭・芳香剤を得た。
【0050】
比 較 製 造 例 1
噴霧用消臭・芳香剤の製造(3):
上記製造例1の香料成分(a)0.25gと界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル(アクチノールF9:松本油脂製薬社製)0.25gと水2.5gを混合し充分攪拌したのち水47gを追加し噴霧用消臭・芳香剤50gを得た。
【0051】
実 施 例 1
上記製造例1および2で得られた噴霧用消臭・芳香剤80mlをそれぞれポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ本発明のスプレー式芳香消臭器を得た(本発明品1および2)。
【0052】
比 較 例 1
上記比較製造例1で得られた噴霧用消臭・芳香剤を実施例1と同じポンプスプレー容器に入れスプレー式芳香消臭器(比較品1)を得た。
【0053】
試 験 例 1
噴霧面の質感評価(1):
本発明品1〜2および比較品1を布製ソファーに10ストローク噴霧した後、10分放置した。これを1サイクルとして10回繰り返した後、噴霧したソファー面の質感を評価した。評価は10名のパネラーにより下記基準により評価しその平均値を求めた。結果を表1に示す。
(評 点) (基 準)
0・・・・散布後は風合いが損なわれた。
1・・・・散布前に比べやや風合いが損なわれた。
2・・・・散布前と風合いの変化はほとんどない。
3・・・・散布前と風合いの変化はない。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明品1〜2は成分残渣が確認できずソファーの散布前の風合いを維持していたが、比較品1においては、スプレー後の湿った状態ではべとつきが発生し、乾燥時ではゴワゴワ感が残り風合いが損なわれていた。
【0056】
試 験 例 2
噴霧面の質感評価(2):
本発明品1〜2および比較品1を学生服に5ストローク噴霧した後、10分放置した。これを1サイクルとして10回繰り返した後、噴霧した学生服の質感を試験例1と同様の評価基準により評価した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
本発明品1〜2は成分残渣が確認できず学生服の風合いを維持していたが、比較品1においては、スプレー後の湿った状態ではべとつきが発生し、乾燥時ではゴワゴワ感が残り風合いが損なわれていた。また、濡らすと泡が発生し、使用することが困難だった。
【0059】
試 験 例 3
噴霧面の質感評価(3):
本発明品1〜2及び比較品1を塩化ビニル製床張りの室内で1mの高さから空間に5ストローク噴霧した。噴霧後の床の状態について噴霧30分後に評価した。評価は10名のパネラーにより下記基準により評価しその平均値を求めた。結果を表3に示す。
(評 点) (基 準)
0・・・・濡れている。
1・・・・べとつきあり。
2・・・・ややべとつきあり。
3・・・・乾燥している。
【0060】
【表3】

【0061】
本発明品1〜2は乾燥後は成分残渣が確認できずもとの状態に復元したが、比較品1においては、スプレー後の湿った状態では泡が発生し、乾燥とともにべとつきが発生し、乾燥に時間を要した。再度濡らすと泡が発生してしまうため、拭き取りが必要であった。
【0062】
試 験 例 4
プラスチックの対薬剤試験:
本発明品1及び比較品1をそれぞれ1cm×7cm、厚み1mmのアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂の試験片に1ストローク噴霧し、10分乾燥する行程を10回繰り返したのち、図2のような試験器(D=5.5cm)にかけ、24時間放置し、樹脂の様子について観察した。
【0063】
その結果、本発明品1では割れ等は生じなかったが、比較品1では試験片に細かいヒビが確認された。
【0064】
試 験 例 5
消臭試験(1):
直径5cmのろ紙に犬の糞アルコール抽出液(糞1g相当分)を含浸させ試験片とした。この試験片を200mlビーカーに入れ、本発明品1〜2及び比較品1を3回スプレーし、糞臭の認知程度を10名のモニターにより下記の基準で評価し、平均値を求めた。結果を表4に示す。
(評 点) (基 準)
0・・・・糞尿臭が強く認知される。
1・・・・やや糞尿臭が認知される。
2・・・・ほとんど糞尿集は認知できない。
3・・・・糞尿集は認知できない。
【0065】
【表4】

【0066】
本発明品1、2及び比較品1ともに糞臭の認知度は減少していた。
【0067】
試 験 例 6
消臭試験(2):
容積2mのブース内(たて1m×横1m×高さ2m)に、直径10cmのろ紙に犬の糞アルコール抽出液(糞5g相当分)を含浸させた試験片を30分放置した。同ブース内に、実施例1〜2及び比較品1を噴霧器で10回スプレーし、5分放置後に糞臭の認知程度を試験例5と同様の方法により評価した。結果を表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
本発明品1〜2及び比較品1ともに糞臭の認知度は減少していた。
【0070】
試 験 例 7
防腐試験:
本発明品1〜2及び比較品1を25℃で保存した。6ヵ月後に薬液の状況を確認したところ、本発明品1では異常が無かったものの、塩化ベンザルコニウムを配合しなかった本発明品2及び比較品1においては水カビ様の微生物が確認できた。微生物発生の原因となる栄養源混入については由来を明確にできなかったが、塩化ベンザルコニウムを配合しない処方においては、何らかの栄養源混入により微生物汚染が発生する可能性があることが判明した。
【0071】
試 験 例 8
メッシュタイプ超音波式噴霧器による耐久性試験:
上記製造例1〜2で得られた噴霧用消臭・芳香剤80mlをメッシュタイプの超音波式噴霧器(株式会社ミクニ製;商品名:ミストくん)に入れ本発明の超音波式芳香消臭器を得た(本発明品3〜4)。また上記製造比較例1で得られた噴霧用消臭・芳香剤80mlを同じメッシュタイプの超音波噴霧器に入れ比較品の超音波式芳香消臭器を得た(比較品2)。本発明品3〜4及び比較品2を連続して噴霧を続け(芳香消臭剤が終了したときは継ぎ足した。)たところ、本発明品3〜4はいずれも1ヶ月後も噴霧を続けていたが、比較品2は1ヵ月後にはほとんど噴霧しない状態になっていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の噴霧用消臭・芳香剤は噴霧対象物に対して噴霧しても、べとついたり劣化させることがなく十分な消臭効果を有するとともに、不揮発成分が少なく安全性が高いものであるため、種々の噴霧形式の消臭・芳香器に有利に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のスプレー式消臭・芳香器の一例を示す図である。
【図2】試験例4における試験器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 スプレー式消臭・芳香器
2 薬剤担持体
3 噴霧用消臭・芳香剤組成物
4 スプレーチューブ
11 試験片
12 試験器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形担持体に、次の成分(a)
(a)沸点300℃未満の低沸点香料成分を80質量%以上含有する芳香成分
を担持せしめた薬剤担持体と、これを浸漬させるための次の成分(b)
(b)沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液
を組み合わせてなる噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項2】
固形担持体がポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のペレットである請求項第1項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項3】
成分(b)の、沸点200℃未満の水溶性溶剤の含有量が30質量%以下である請求項第1項又は第2項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項4】
さらに成分(b)中に0.01〜0.1質量%の界面活性剤を含有する請求項第1項ないし第3項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項5】
成分(a)の芳香成分を構成する香料成分が、水/オクタノール分配係数が1〜4.5のものである請求項1項ないし第4項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項6】
薬剤担持体の比重が、成分(b)の溶液の比重より小さいものである請求項第1項ないし第5項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項7】
さらに成分(b)中に、0.01〜0.1質量%のカチオン系防腐剤を含有する請求項第1項ないし第6項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項8】
成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤がエチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はプロピルアルコールである請求項第1項ないし第7項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤。
【請求項9】
請求項第1項から請求項第8項のいずれかの項に記載の噴霧用消臭・芳香剤を、スプレー容器に収納したことを特徴とする噴霧式消臭・芳香器。
【請求項10】
スプレー容器が、メッシュタイプ又はホーンタイプの超音波式噴霧器である請求項9項に記載の噴霧式消臭・芳香器。
【請求項11】
次の工程(1)ないし(3)
(1)固形担持体に成分(a)の芳香成分を担持させ薬剤担持体を得る工程
(2)成分(b)の沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液を
作成する工程
(3)前記工程(2)で作成した溶液中に前記工程(1)で作成した薬剤担持体を
浸漬させる工程
を含むことを特徴とする噴霧用消臭・芳香剤の製造方法。
【請求項12】
固形担持体に、次の成分(a)
(a)沸点300℃未満の低沸点香料成分を80質量%以上含有する芳香成分
を担持せしめた薬剤担持体と、これを浸漬させるための次の成分(b)
(b)沸点200℃未満の水溶性溶剤及び/又は水を含有する溶液
を組み合わせることにより生成する、
沸点300℃未満の低沸点香料成分を80質量%以上含有する芳香成分を0.1〜0.5質量%、沸点200℃未満の水溶性溶剤を0〜30質量%含む噴霧用消臭・芳香剤組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−194446(P2008−194446A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272041(P2007−272041)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】