説明

噴霧装置

【課題】人力で駆動する車輪を有する乗り物に設け、乗員に冷却効果を与える小型化した噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧装置10は、水を加圧して送り出すポンプ20と、ポンプ20に水を供給する水供給手段50と、ポンプ20から送り出された水をミストとして噴霧するノズル60から構成されており、ポンプ20は、空気を圧縮する加圧機構30と、加圧機構30が圧縮した空気と水供給手段50から供給される水を蓄えるタンク31と、加圧機構30とタンク31を連結するチューブ32を備え、加圧機構31に、乗り物の車輪72が回転する動力を直線方向の動力に変換するリンク機構40を設けることで、車輪72を人力又は電力で駆動する乗り物に噴霧装置10を備えることが可能となり乗員に冷却効果を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水をミストとして噴霧することが可能であって、噴霧したミストの気化潜熱を利用して対象とする空間の気温を降下させる噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を霧状に噴霧して対象の空間の温度を降下させる噴霧装置として、例えば、特許文献1に示すミスト噴霧システムが提案されており、公園、イベント会場、各種施設等に設置される。このミスト噴霧システムは、水供給手段からポンプを経由した加圧水を給水管にて所定の噴霧ノズルへと給水し、微粒子化したミスト(非常に小さい粒径の水)として噴霧する構造であって、噴霧されるミストの気化熱を利用して人体に冷却効果を与えている。また、噴霧装置を車両に設けた例として、特許文献2に記載する車両用空調装置が提案されている。この車両用空調装置は、空気通路を形成するケースと、空気通路に配置されて空気を冷却する冷房用熱交換器と、冷房用熱交換器をバイパスするバイパス通路とで構成されており、冷房用交換器を通過した冷風とバイパス通路を流通した高湿風を衝突させることで白霧(微少な水滴)を発生させ、車両室内に吹き出す構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−078264号
【特許文献2】特開2004−314709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に示すミスト噴霧システムは、公園、イベント会場、各種施設等の公共の場所に設置されており、噴霧ノズルとポンプは離れた位置に設けた構造をしている。そのため、噴霧ノズルから水を噴霧するためには、水に高圧力を加える必要があるため大型のポンプを使用しなければならないと考えられる。また、上記に示す車両用空調装置は、車両に備えるバッテリーの電力を大量に消費して冷房用交換機で空気の冷却を行うため、少ない電力で車輪を駆動する乗り物に噴霧装置を設けることは困難であると考える。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、人力で駆動する車輪を有する乗り物に小型化した噴霧装置を設け、乗員に冷却効果を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
人力で駆動する車輪を有する乗り物に備える噴霧装置であって、噴霧装置は、水を加圧して送り出すポンプと、ポンプに水を供給する水供給手段と、ポンプから送り出された水をミストとして噴霧するノズルから構成されており、ポンプは、空気を圧縮する加圧機構と、加圧機構が圧縮した空気と水供給手段から供給される水を蓄えるタンクと、加圧機構とタンクを連結するチューブを備え、加圧機構に、乗り物の車輪が回転する動力を直線方向の動力に変換するリンク機構を設けることを技術的特長とする噴霧装置。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の噴霧装置によれば、ミストを噴霧する圧力を発生するポンプの動力を、乗り物の車輪が回転する動力を利用して必要な圧力を発生させているため、噴霧装置を小型化することができると共に、少ない電力で車輪を駆動する乗り物にも設けることが可能となり、着座する乗員に冷却効果を与えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の噴霧装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例で記載する乗り物の一例としてあげる自転車を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本発明は、水をミスト(非常に小さい粒径の水)として噴霧し対象の空間の温度を低下する噴霧装置10であって、図1に示すように、水を加圧して送り出すポンプ20と、ポンプ20に水を供給する水供給手段50と、ポンプ20から送り出された水をミストとして噴霧するノズル60から構成されており、車輪72を有する乗り物70に設けられる。
【0010】
先ず、乗り物70について説明する。
本実施例では乗り物70として、人力で走行可能な自転車70aを用いて、図2に示すように、車体を構成する車体フレーム71と、この車体フレーム71の前後に回動自在に固定される車輪72と、人力を車輪72へ伝えて回転させる駆動部73と、車体の進行方向を制御する操作手段74を備える。
【0011】
駆動部73は、車輪72に人力を伝達するものであって、乗員が力を加えることで、車輪72が回転駆動し、車体が前方へ進む。この駆動部73は、図2に示すように、車体フレーム71の略中央下部に設けられる。
【0012】
次に、噴霧装置10について説明する。
ポンプ20は、水を加圧して送り出すものであって、図1に示すように、空気を圧縮する加圧機構30と、この加圧機構30が圧縮した空気と水供給手段から供給される水を蓄えるタンク31と、加圧機構30とタンク31を連結するチューブ32を備え、自転車70aの駆動部73付近に設ける。
【0013】
加圧機構30は、自転車70aに有する車輪72の回転する動力を直線方向(図2の車体に対して前後方向)の動力に変換するリンク機構40と、リンク機構40により直線方向に変換された動力を利用して空気の圧縮を行う加圧部41を備える。
【0014】
リンク機構40は、自転車70aに有する車輪72の回転する動力を直線方向の動力に変換する機構であって、駆動リンク40aと回動リンク40bを備える。駆動リンク40aは、一端を車輪72の回転軸72aに固定し他端を回動リンク40bに回動自在に固定した構造をしており、車輪72の回転に伴って同じ方向に回転する。回動リンク40bは、一端を駆動リンク40aに回動自在に固定し、他端を後述する加圧部41の駆動部42に軸支する。ここで、回動リンク40bは車輪72側では駆動リンク40aの回転と同時に回転動作を行うが、加圧部30側では直線方向に動作を行う構造となっている。
【0015】
加圧部41は、空気の圧縮を行う部位であって、リンク機構40の回動リンク40bに連結され駆動リンク40aが回転することで直線方向に動作する駆動部42と、駆動部42が動作することで後述するチューブ32を介してタンク31に空気を送るシリンダー43とで構成されている。駆動部42は、回動リンク40bに連結し直線方向に動作を行うロッド42aと、ロッド42aの端部に設けられシリンダー43を摺動するシリンダーヘッド42bを備える。
【0016】
チューブ32は、加圧部41からタンク31に圧縮した空気を送る経路となるものであって、例えば、ゴムのような弾性のある素材を用いるのが望ましい。このチューブ32は、加圧部41とタンク31の略中央の位置に圧力調整弁32aを設けることで、圧縮した空気がタンク31側から加圧部41側に逆流するのを防ぐと共に、加圧部41がタンク31に圧力を過剰にかけるのを防止する。
【0017】
水供給手段50は、タンク31に水を供給する手段であって、水を蓄える貯水タンク51と、貯水タンク51とタンク31とを連結するチューブ52で構成されており、自転車70aの駆動部73付近でポンプ31の上方に設ける。貯水タンク50は、後述するチューブ52と取り外し可能な構造をしており、内部に蓄えたていた水が少なくなる又は空になると取り外して水を補給することが可能とする。また、貯水タンク50内部に蓄える水の温度は低温が望ましいため、水の温度が上昇しづらい構造の貯水タンク50とする。チューブ52は、貯水タンク51内部の水の量を調節及び圧縮された空気が貯水タンク51に流れ込むのを防止する弁52aを、貯水タンク51とタンク31を連結する略中央位置に設ける。
【0018】
タンク31は、加圧機構30によって圧縮された空気と水供給手段50から供給される水とを蓄えるものであって、タンク31内部に空気を注入する空気注入口31aと、タンク31内部に水を供給する水注入口31bと、タンク31内部から後述するノズル60に水を排出する排出口31cを備え、自転車70aの駆動部73付近で水供給手段50より下方に設ける。本実施例では、タンク31内部は水で満たされているものとするが、本発明はこれに限らず、タンク31内部に水が入って入ればよい。
【0019】
ノズル60は、ポンプ20で加圧された水をミストとして噴霧する部位であって、タンク31の排出口31cから後述するチューブ61を介して備えており、自転車70aの操作手段74に乗員を向く方向で設ける。このノズル60は、無数の微小な孔が形成されており、チューブ61のコック61aをミスト噴霧可能状態にすることで、ポンプ20で蓄える圧力を利用してミストを噴霧する。ここで、ノズル60から噴霧されるミストの粒径は、人体や衣服、周囲の物を殆ど濡らすことが殆どない粒径である。また、ノズル60は、水と空気を混合して吹き出すタイプや水を高圧で噴射する高圧噴射タイプといった様々なタイプがあり、どのタイプを使用しても良く、本実施例では、水を高圧で噴射するタイプのものを使用する。
【0020】
チューブ61は、ポンプ20で加圧された水をノズル60まで送る経路となるものであって、例えば、ゴムのような弾性のある素材を用いるのが望ましい。このチューブ61は、ノズル60側にミスト噴霧可能状態とミスト噴霧不可能状態とを切替えるコック61aと、タンク31側にノズル60から噴霧するミストの圧力を調節する圧力調整弁61bを備え、自転車70の車体フレーム71に沿うように設ける。
【0021】
次に、本発明の噴霧装置10がミストを噴霧して、自転車70aを運転する乗員に冷却効果を与える手順について説明する。ここで、噴霧装置10は、乗員が自転車70aの駆動部73に力を加え車輪72を回転駆動する動力を利用してポンプ20の駆動を開始する。
【0022】
噴霧装置10のポンプ20は、自転車70aに有する車輪72が回転駆動することで、加圧機構30に備えるリンク機構40の駆動リンク40aを車輪72の回転する方向と同じ方向へ回転させ回動リンク40bを回動する。ここで、リンク機構40の回動リンク40bが回動動作を開始すると加圧部41の駆動部42は、シリンダー43内部を車体の前後方向へ摺動することで空気の圧縮を行い、圧縮された空気をタンク31内部に供給する。この時、タンク31内部に供給される空気は、チューブ32に備える圧力調整弁32aによって圧力が調整されているため、加圧部41側に逆流したりやタンク31に圧力を過剰にかけるということはない。ここで、水供給手段50は、貯水タンク51からタンク31内部に水を供給し続けている状態である。
【0023】
噴霧装置10のポンプ20は、乗員がチューブ61に備えるコック61aを噴霧可能状態にすることで、水をノズル60まで送った後、ノズル60からミストを噴霧する。ここで、ノズル60まで送られる水は、チューブ61に備える圧力調整弁61bによってミストを噴霧する圧力に適した圧力に調整された後、コック61aまで送られノズル60からミストとして噴霧される。
【0024】
ノズル60から噴霧されたミストは、自転車70aの駆動部73に力を加える乗員の周囲の空間に浮遊する。ここで、乗員の周囲の空間に浮遊するミストは、気化することで周囲の気温を一時的に降下して乗員に冷却効果を与える。
【0025】
上記の実施例より、噴霧装置10のポンプ20は、自転車70aの車輪72が回転する動力を利用して空気の圧縮を行うことが可能であるため、小型化することが可能である。また、本実施例では、人力で駆動する車輪72を有する乗り物70として自転車70aを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、人力で駆動する車輪72を有する車椅子や、少ない電力で駆動する車輪72を有する電動車椅子に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 噴霧装置
20 ポンプ
30 加圧機構
31 タンク
32 チューブ
32a 圧力調整弁
40 リンク機構
41 加圧部
42 駆動部
43 シリンダー
50 水供給手段
51 貯水タンク
52 チューブ
52a 弁
60 ノズル
61 チューブ
61a コック
61b 圧力調整弁
70a 自転車
71 車体フレーム
72 車輪
73 駆動部
74 操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力で駆動する車輪を有する乗り物に備える噴霧装置であって、
前記噴霧装置は、水を加圧して送り出すポンプと、
該ポンプに水を供給する水供給手段と、
前記ポンプから送り出された水をミストとして噴霧するノズルから構成されており、
前記ポンプは、空気を圧縮する加圧機構と、
該加圧機構が圧縮した空気と前記水供給手段から供給される水を蓄えるタンクと、
前記加圧機構と該タンクを連結するチューブを備え、
前記加圧機構は、前記車輪の回転動力を直線方向の動力に変換するリンク機構の動作により空気の圧縮を行うことを特徴とする噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106709(P2012−106709A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292414(P2010−292414)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【Fターム(参考)】