回動機構
【課題】 任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンクに付勢力を与えることで、作動リンクがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢となる回動機構を提供する。
【解決手段】 回動機構1は、鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、鉛直支持部材3に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する弾性部14を含む連結部10と、を有することを特徴とする。
【解決手段】 回動機構1は、鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、鉛直支持部材3に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する弾性部14を含む連結部10と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マニピュレータ、荷役機械、建設機械、ロボットアーム、ヒューマノイド等に用いる回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
物資運搬作業、土木作業、組み付け作業等では、垂直平面内で回動する作動リンクを備えた機器が広く利用されている。これらの機器の作動リンクは、水平ないし斜め上方に向けられて使用されることが多い。しかしながら、作動リンクは重力によって常に鉛直下向きの姿勢へと付勢されているので、動力を切断した場合には作動リンクが鉛直下向きの安定姿勢を目指して落下する。このため、作動リンクには常に重力にさからった駆動力を加える必要がある。駆動力を発生させる方法としては、目標の作業姿勢にサーボ機構を用いて安定化させるのが一般的であるが、作業姿勢によって作業精度や駆動効率が低下することがある。そこで、ばねやリンク機構を用いて機構的に任意の作業姿勢に安定化させて、作業精度や駆動効率を向上する技術が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4144021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作動リンクの安定姿勢を機構的に生成する従来技術では、ばね、特殊なリンク配置、ストッパ等の機構を利用しており、安定姿勢への付勢力の程度を運用中に変更することは容易ではない。また、この付勢力は作動リンクの姿勢変化にともなう重力項の変化とは異なる変化をする非線形な力である。このため作業姿勢によっては、作動リンクの運動の複雑化による作業精度の低下、及び不必要な付勢力の抵抗による駆動効率の悪化、という2つの問題が生じていた.
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンクに付勢力を与えることで、作動リンクがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢となる回動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明の回動機構は、鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材と、前記鉛直支持部材に回動可能に支持されると共に、前記鉛直支持部材に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材と、前記鉛直支持部材に回動可能に支持される作動リンクと、前記傾斜支持部材と前記作動リンクとを連結する弾性部を含む連結部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、以下の式(1)、式(2)及び式(3)を満足することを特徴とする。
【数1】
ただし、
kは、前記弾性部の弾性率、
mは、重心位置にかかる質量、
gは、重力加速度、
lは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記重心位置までの距離、
pは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記作動リンクと前記連結部とを連結する作用点までの距離、
hは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記傾斜支持部材が前記連結部を支持する基点までの距離、
θ1は、前記傾斜支持部材の前記鉛直支持部材に対する角度、
αは、補償倍率、
βは、水平面に対する前記作動リンクの安定姿勢の角度、
γは、仮想重力の大きさ
である。
【0008】
また、前記弾性部は、バネを含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記連結部は、一方を前記基点に支持され、他方を前記バネの一方に連結されるワイヤと、前記バネの他方を前記作動リンクに取り付ける取付部と、前記作動リンクに支持され、前記作用点を含む前記ワイヤの引張方向を変換する方向変換部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記連結部は、一方を前記作動リンクに回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、前記バネの他方と連結され、前記基点で前記傾斜支持部材に回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持する基部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、 前記連結部は、一方を前記傾斜支持部材に回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、前記バネの他方と連結され、前記作用点で前記作動リンクに回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持する基部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記弾性部は、流体を含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記連結部は、前記傾斜支持部材に回動可能に支持される作動シリンダと、一方に前記作動シリンダ内を摺動するピストンを有し、他方で前記作動リンクに回動可能に支持される作動ロッドと、一方で流体で満たされた前記作動シリンダの一方の作動シリンダ室と連結される作動用管路と、前記作動シリンダ室とは断面積が異なり前記作動用管路の他方と連結される流体で満たされた一方の補償シリンダ室を有する補償シリンダと、一方に前記補償シリンダ内を摺動するピストンを有する補償ロッドと、前記補償ロッドの他方を支持すると共に、前記バネの一方を支持する可動部と、前記補償シリンダを支持すると共に、前記バネの他方を支持する固定部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記連結部は、一方で前記他方の作動シリンダ室と連結される第1駆動用管路と、一方で前記他方の補償シリンダ室と連結される第2駆動用管路と、前記第1駆動用管路の他方と前記第2駆動用管路の他方と接続される駆動用流体回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の回動機構では,任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンクに付勢力を与えることで、作動リンクがいかなる作業姿勢であっても、作動後、所定の安定姿勢にすることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンクが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の回動機構を示す図である。
【図2】第1実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の回動機構の幾何学関係を示す図である。
【図4】第2実施形態の回動機構を示す図である。
【図5】仮想重力ベクトルと重力ベクトルの関係を示す図である。
【図6】Φ傾斜した平面を示す図である。
【図7】Θ傾斜した平面を示す図である。
【図8】第3実施形態の回動機構を示す図である。
【図9】第4実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図10】第5実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図11】第6実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図12】第7実施形態の回動機構を示す図である。
【図13】第8実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図14】第9実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図15】回動機構の直交3軸を中心とした回転運動を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は第1実施形態の回動機構を示す図、図2は第1実施形態の回動機構を示す側面図である。
【0019】
第1実施形態の回動機構1は、鉛直方向のxy平面内で回動する1リンクで形成した作動リンクに対して、任意の方向に任意の大きさの重力が作用するような仮想重力ベクトル(γ,β)を生成するものである。
【0020】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた中心Oを含む軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部10と、を有し、連結部10は、弾性部としてのバネ14を含む。
【0021】
第1実施形態では、連結部10は、傾斜支持部材5に設けられる基点Aを含む基部11と、作動リンク6に設けられる取付部12と、一方を基部11に支持される連結部材としてのワイヤ13と、一方でワイヤ13の他方と連結され、他方で取付部12に取り付けられるバネ14と、ワイヤ13の引張方向を変換する作用点Bを含む方向変換部材15と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0022】
図3は第1実施形態の回動機構の幾何学関係を示す図である。第1実施形態の回動機構は、図1及び図2の基部11に含まれる基点Aを鉛直方向から角度θ1だけ傾斜可能とし、重心位置Gの配置や図1及び図2の軸部材4に含まれる中心Oから図1及び図2の方向変換部材15に含まれる作用点Bまでの距離pと中心Oから基点Aまでの距離hの積を調整して、図1及び図2に示した作動リンク6に対して、水平方向からの傾き角度βの方向に、補償倍率αを任意に設定可能な大きさγの仮想重力を生成することができる。
【0023】
簡単のため、垂直平面での回動のみを考える。図1のパラメータと、構成したい大きさγの仮想重力と水平方向からの傾き角度βにより決定される補償倍率αを用いて、図1及び図2に示す回動機構1に用いるバネ14のバネ定数kを求めると、
【数2】
となる。また、
【数3】
と表せる。さらに、基点Aの傾き角度、すなわち鉛直支持部材3に対する傾斜支持部材5の角度θ1を
【数4】
と設定すれば、
【数5】
と仮想重力ベクトル(γ,β)が生成される。
【0024】
途中で仮想重力の設定値を変更したい場合、基点Aの傾き角度θ1は直接変更し、補償倍率αは間接的に調整する。例えば、補償倍率をα1からα2に変更したい場合、以下の3通りの方法がある。
【0025】
(1)p,hを調整して、phの積をα2/α1倍する。
(2)回転中心Oから重心への距離lをα1/α2倍する。
(3)上記(1)と(2)の2つの方法を組み合わせる。
【0026】
このように設定することで、図1及び図2に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0027】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても所定の安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0028】
次に、第2実施形態について説明する。
【0029】
図4は、第2実施形態の回動機構を示す図、図5は仮想重力ベクトルと重力ベクトルの関係を示す図、図6はΦ傾斜した平面を示す図、図7はΘ傾斜した平面を示す図である。
【0030】
第2実施形態の回動機構1は、作用点Bを含む作動リンク6が、xy平面よりx軸を軸にΘ傾いた平面内を回動し、基点Aを含む傾斜支持部材5がxy平面よりx軸を軸にΦ傾いているものである。
【0031】
単位ベクトルの大きさを重力の大きさと同じにした座標をとると、図5に示すように、
【数6】
という関係となる。式(6)をパラメータ表示すると、
【数7】
の関係が成り立つ。
【0032】
図4に示すような、作動リンク6がxy平面よりx軸を軸にΘ傾いた平面内を回動し、基点Aがxy平面よりx軸を軸にΦ傾いている場合を考える。ただし、紙面手前回りを正とする。Θ傾いた平面をXY平面と新たに定義する。
【0033】
この平面内を回動する作動リンク6の釣り合いを考える。Θ傾いたXY平面内での重力ベクトルgの影gΘ、図6に示すようにΦ傾いた平面内にある基部Aから伝達されるΘ傾いたXY平面内でのバネ力によるベクトルgΦNと、図7に示すようにΘ傾いた平面内での仮想重力ベクトルをgΘH(γ’,β')とおくと、
【数8】
の関係がなりたつ。
【0034】
このとき、
【数9】
として、仮想重力ベクトルgΘH(γ’,β')が設定可能となる。
【0035】
このように設定することで、図4に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、設定された3次元空間内の任意の位置に自然に戻ることになる。
【0036】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても所定の安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0037】
次に、第3実施形態について説明する。
【0038】
図8は、第3実施形態の回動機構を示す図である。第3実施形態の回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた第1中心O1を含む第1軸部材41と、第1軸部材41に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な第1傾斜支持部材51と、一方で第1軸部材41に回動可能に支持される第1作動リンク61と、第1傾斜支持部材51に対して回動可能に支持されて第1作動リンク61と平行なリンクを形成する平行リンク部材7と、第1作動リンク61の他方に設けた第2中心O2を含む第2軸部材42と、一方で第1作動リンク61に対して回動可能に第2軸部材42に支持され、他方で平行リンク部材7に回動可能に支持され、第1傾斜支持部材51と平行に回動する第2傾斜支持部材52と、第2軸部材42に回動可能に支持される第2作動リンク62と、第1傾斜支持部材51と第1作動リンク61とを連結する第1連結部101と、第2傾斜支持部材52と第2作動リンク62とを連結する第2連結部102と、を有する。なお、G1は第1重心位置、G2は第2重心位置である。
【0039】
第1連結部101は、第1傾斜支持部材51に設けられる第1基点A1を含む第1基部111と、第1作動リンク61に設けられる第1取付部121と、一方を第1基部111に支持される第1連結部材としての第1ワイヤ131と、一方で第1ワイヤ131の他方と連結され、他方で第1取付部121に支持される第1弾性部としての第1バネ141と、第1ワイヤ131の引張方向を変換する第1作用点B1を含む第1方向変換部材151と、を有する。
【0040】
また、第2連結部102は、第2傾斜支持部材52に設けられる第2基点A2を含む第2基部112と、第2作動リンク62に設けられる第2取付部122と、一方を第2基部112に支持される第2連結部材としての第2ワイヤ132と、一方で第2ワイヤ132の他方と連結され、他方で第2取付部122に支持される第2弾性部としての第2バネ142と、第2ワイヤ132の引張方向を変換する第2作用点B2を含む第2方向変換部材152と、を有する。
【0041】
第3実施形態では、2つの作動リンク61,62を連結したが、図示しない3つ以上の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを連結してもよい。このように複数の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを用いて回動機構1を構成することで、垂直平面内で回動し,先端の作動リンク6n以外が平行リンク機構で直列に複数個連結された作動リンク61,62,・・・6n-1,6nに対して、任意の方向と任意の大きさの重力が働いているかのような仮想重力のベクトルを、最も基台2に近い基部A1の鉛直方向を基準とした傾き角度θ1と、それぞれの作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nのそれぞれの基部A1,A2,・・・A(n-1),Anに対する傾きに比例するように発揮されるバネ力のバネ定数の倍率と、を調整する簡単な設定により自由に生成できる。
【0042】
つまり、図8に示したような複数の作動リンク61,62,・・・6n-1,6nは、作動後、それぞれの補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向から所定の傾き角度の位置に自然に戻ることになる。
【0043】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nに付勢力を与えることで、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0044】
また、それぞれ個々の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nの仮想重力の生成ができることにより、例えば、垂直平面内で複数連結された作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを自由な形で平衡させることが可能となり、設計の自由度を増やすことが可能となる。
【0045】
次に、第4実施形態について説明する。
【0046】
図9は、第4実施形態の回動機構を示す図である。第4実施形態の回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた第1中心O1を含む第1軸部材41と、第1軸部材41に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な第1傾斜支持部材51と、一方で第1軸部材41に回動可能に支持される第1作動リンク61と、第1傾斜支持部材51に対して回動可能に支持されて第1作動リンク61と平行なリンクを形成する平行リンク部材7と、第1作動リンク61の他方に設けた第2中心O2を含む第2軸部材42と、一方で第1作動リンク61に対して回動可能に第2軸部材42に支持され、他方で平行リンク部材7に回動可能に支持され、第1傾斜支持部材51と平行に回動するリンク支持部材としての第1リンク支持部材81と、第2軸部材42に回動可能に支持されると共に、第1リンク支持部材81に対して所定の角度に設定可能な第2傾斜支持部材52と、第2軸部材42に回動可能に支持される第2作動リンク62と、第1傾斜支持部材51と第1作動リンク61とを連結する第1連結部101と、第2傾斜支持部材52と第2作動リンク62とを連結する第2連結部102と、を有する。なお、G1は第1重心位置、G2は第2重心位置である。
【0047】
第1連結部101は、第1傾斜支持部材51に設けられる第1基点A1を含む第1基部111と、第1作動リンク61に設けられる第1取付部121と、一方を第1基部111に支持される第1連結部材としての第1ワイヤ131と、一方で第1ワイヤ131の他方と連結され、他方で第1取付部121に支持される第1弾性部としての第1バネ141と、第1ワイヤ131の引張方向を変換する第1作用点B1を含む第1方向変換部材151と、を有する。
【0048】
第2連結部102は、第2傾斜支持部材52に設けられる第2基点A2を含む第2基部112と、第2作動リンク62に設けられる第2取付部122と、一方を第2基部112に支持される第2連結部材としての第2ワイヤ132と、一方で第2ワイヤ132の他方と連結され、他方で第2取付部122に支持される第2弾性部としての第2バネ142と、第2ワイヤ132の引張方向を変換する第2作用点B2を含む第2方向変換部材152と、を有する。
【0049】
第4実施形態では、2つの作動リンク61,62を連結したが、図示しない3つ以上の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを連結してもよい。このように複数の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを用いて回動機構1を構成することで、垂直平面内で回動し,先端の作動リンク6n以外が平行リンク機構で直列に複数個連結された作動リンク61,62,・・・6n-1,6nに対して、任意の方向と任意の大きさの重力が働いているかのような仮想重力のベクトルを、それぞれの基部A1,A2,・・・An-1,Anの鉛直方向を基準とした傾き角度と、それぞれの作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nのそれぞれの基部A1,A2,・・・A(n-1),Anに対する傾きに比例するように発揮されるバネ力のバネ定数の倍率と、を調整する簡単な設定により自由に生成できる。
【0050】
つまり、図9に示したような複数の作動リンク61,62,・・・6n-1,6nは、作動後、それぞれの補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向から所定の傾き角度の位置に自然に戻ることになる。
【0051】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nに付勢力を与えることで、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0052】
また、それぞれ個々の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nの仮想重力の生成ができることにより、例えば、垂直平面内で複数連結された作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを自由な形で平衡させることが可能となり、設計の自由度を増やすことが可能となる。
【0053】
次に、第5実施形態及び第6実施形態について説明する。第5実施形態及び第6実施形態の回動機構1は、連結部10の弾性部として、バネ24を用いたものである。
【0054】
図10は、第5実施形態の回動機構を示す図である。
【0055】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部20と、を有し、連結部20は、弾性部としてのバネ25を含む。
【0056】
連結部20は、傾斜支持部材5に支持される基点Aを含む基部21と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部22と、基部21に回動可能に支持されるスライダ23と、一方を取付部22に回動可能に支持され、スライダ23に摺動可能に支持される連結部材としての連結アーム24と、一方でスライダ23に支持されるバネ25と、連結アーム24の他方に取り付けられ、バネ25の他方を支持するバネ受け部材26と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0057】
第5実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図10に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0058】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0059】
図11は、第6実施形態の回動機構を示す図である。
【0060】
第6実施形態の回動機構1は、第5実施形態と同様に、連結部10の弾性部として、バネ35を用いたものであるが、前述した図10に示す第5実施形態の回動機構1とは、連結アーム34の取り付ける向きを逆にして、バネ35を作動リンク6の下方に配置した点が異なっている。
【0061】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部30と、を有し、連結部30は、弾性部としてのバネ35を含む。
【0062】
連結部30は、傾斜支持部材5に回動可能に支持される基点Aを含む基部31と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部32と、取付部32に回動可能に支持されるスライダ33と、一方を基部31に回動可能に支持され、スライダ33に摺動可能に支持される連結部材としての連結アーム34と、一方でスライダ33に支持されるバネ35と、連結アーム34の他方に取り付けられ、バネ35の他方を支持するバネ受け部材36と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0063】
第6実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図11に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0064】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0065】
次に、第7実施形態〜第9実施形態について説明する。第7実施形態〜第9実施形態の回動機構1は、連結部40に流体を用いたものである。
【0066】
図12は、第7実施形態の回動機構を示す図である。
【0067】
回動機構1は、固定部としての基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部40と、を有する。
【0068】
連結部40は、傾斜支持部材5に支持される基点Aを含む基部41と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部42と、基部41に回動可能に支持される連結部材としての作動シリンダ43と、取付部42に回動可能に支持され、作動シリンダ43の作動シリンダ室43a内にスライド自在に嵌挿されるピストン44aを有する連結部材としての作動ロッド44と、作動シリンダ43に連結される弾性部45と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0069】
図12に示すように、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aには、作動ロッド44の一端に設けられた作動ピストン44aがスライド自在に嵌挿されている。また、作動シリンダ室43a周壁の作動ロッド44側の端部付近と反対側の端部付近にはそれぞれ、シリンダ室43a内を外部と流通するためのポートP1、P2が設けられている。
【0070】
また、基台2には、補償シリンダ45aが設置されている。補償シリンダ45aには、一端にピストン45b1を有する補償ロッド部45bが上方に突出する向きで取り付けられている。ピストン45b1は補償シリンダ45a内の補償シリンダ室45a1にスライド自在に嵌挿されている。
【0071】
補償ロッド45bの他端は、可動部45cに連結されている。この可動部45cは、補償ロッド45bと一体となって上下変位できるように、図示していないガイド手段を介して基台2に保持されている。また、基台2と可動部45cの間には、補償シリンダ45aと並列にバネとしての圧縮コイルばね45dが後述するように、あらかじめ自然長より所定長さ圧縮された状態で組み込まれている。
【0072】
補償シリンダ45aは、前述した作動シリンダ43と同様に、補償シリンダ室45a1の補償ロッド側の端部近傍と反対側の端部近傍にそれぞれ、外部と流通するための2つのポートP1、P2を有していて、補償シリンダ45aのポートP1と作動シリンダ43aのポートP1は作動用管路としての管路45eによって連結されている。
【0073】
作動シリンダ43のシリンダ室43aの作動ロッド側内部と、補償シリンダ部45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド側内部、ならびに管路15内には作動流体が満たされている。この作動流体としては、例えば、油のような非圧縮性流体が用いられている。
【0074】
また、作動シリンダ43と補償シリンダ45aにそれぞれ設けられているポートP2は、何れも大気中に開放されている。
【0075】
回動機構1において、作動リンク6を軸部材4回りに上下に回動させると、これに伴って作動シリンダ43に対して作動ロッド44が移動する。そうすると、この作動ロッド44の伸縮変位は管路15を移動する作動流体を介して、補償シリンダ45aの補償ロッド45bに伝達される。
【0076】
ここで、作動シリンダ43がL1だけ伸長(収縮)としたとき、補償シリンダ45aと補償ロッド45bの全長は、これに連動してL2だけ収縮(伸長)する。作動ピストン44aの受圧面積をS1、補償ピストン45b1の受圧面積をS2とすると、作動流体が非圧縮性流体とした場合、作動シリンダ43側で流出(または流入)する作動流体の容積は、補償シリンダに流入(流出)する容積に等しいから、
L1S1=L2S2 (12)
【0077】
また、圧縮コイルばね45dのばね定数をKとすると、これが自然長からL2だけ圧縮された時に補償ロッド45bに作用する力Fは、
F=KL2 (13)
となる。
【0078】
また、補償シリンダ45a側から作動流体を介して作動ロッド44に伝達される力をfとすると、パスカルの原理により、
f=(S1/S2)F (14)
となる。
【0079】
(3)式に(1)式と(2)式を適用すると、
f=(S1/S2)KL2=(S1/S2)2 KL1 (15)
ここで、k=(S1/S2)2 Kとおくと、f=kL1と表せるから、作動シリンダ43は見かけ上、ばね定数kのばねと等価な機能を有すると考えられる。
【0080】
途中で仮想重力の設定値を変更したい場合、基点Aの傾き角度θ1は直接変更し、補償倍率αは間接的に調整する。例えば、補償倍率をα1からα2に変更したい場合、シリンダの面積比S2/S1を(α2/α1)0.5倍する方法がある。
【0081】
なお、第7実施形態の回動機構1においては、補償シリンダ45aと圧縮コイルばね45dとを基台2上に並列に配置し、可動部45cを介して補償シリンダ45aの補償ロッド45bと圧縮コイルばね45dとを連結しているが、これに限定するものではなく、例えば、補償ロッド45bと圧縮コイルばね45dとは同軸上に直列配置したり、圧縮コイルばね45dを補償シリンダ45aのヘッド側に内蔵させてピストンを直接付勢するようにしてもよい。
【0082】
また、第7実施形態の回動機構1においては、圧縮コイルばね45dも弾性部として用いているが、これに限定するものではなく、例えば、補償ロッド45bを引っ張りコイルばねに連結して、圧縮コイルばね45dと同等の付勢力を得るようにしてもよい。
【0083】
なお、作動シリンダ43と補償シリンダ45a間を連結する管路15の途中に開閉弁やアキュムレータ等を組み込むことで、作動アーム4のロックやインピーダンス調整の機能を簡単に付加することができる。
【0084】
第7実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図12に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0085】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0086】
図13は、第8実施形態の回動機構を示す図である。
【0087】
第8実施形態の回動機構1は、補償シリンダ45aのヘッド側ポートP2と、作動シリンダ43のヘッド側ポートP2に、それぞれ駆動用作動流体を供給し、又は、排出するための一対の駆動用管路45f1,45f2を追加したものである。この場合、駆動用管路45f1,45f2は、図示していない駆動用流体回路に接続されている。この駆動用流体回路としては、例えば、油圧ポンプや方向切換弁等からなる周知の油圧回路等が用いられる。
【0088】
第8実施形態のものにおいては、圧縮コイルばね45dの反発力によって、作動リンク6に軸部材43回りに作用している負荷トルクが補償されている状態において、一方の駆動用管路45f1から補償シリンダ部45aへ作動流体を供給すると、ピストン45b1は押し上げられる。
【0089】
その結果、補償シリンダ室45a1のロッド側の流体は押し出され、管路45eを通って作動シリンダ43のポートP1に流入し、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長が収縮して作動リンク6は上方に回動する。
【0090】
作動シリンダ43は、作動ロッドと反対側の作動シリンダ室内にも作動流体が満たされており、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長の収縮によって、この作動流体は駆動用管路45f2を通して駆動用流体源側に還流される。
【0091】
一方、駆動用管路45f2を通して作動シリンダ43へ作動流体を供給した場合には、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長が伸長して作動リンク6は、下方へ回動する。その際、作動シリンダ43の作動ロッド側の作動シリンダ室内の流体はポートP1から管路45eへ押し出され、補償シリンダ45aのポートP1から補償シリンダ室45a1に流入する。
【0092】
その結果、ピストン45b1が下方に押されて,これとともに、補償ロッド部45b及び可動部45cが一体となって降下し、圧縮コイルばね45dが圧縮されて、その高まった反発力によって、作動リンク6の下方への回動で増加した負荷トルク分を補償する。
【0093】
第8実施形態のものにおいては、作動リンク6の荷重補償に用いている作動シリンダ43や補償シリンダ45aで作動リンク6の駆動機構を兼ねているため、別途駆動シリンダ装置等を設ける必要がない。
【0094】
なお、第8実施形態の回動機構においては、駆動用管路45f1,45f2の両方を図示していない駆動用流体回路に接続しているが、何れか一方を省略してもよい。その場合には、管路が接続されていない作動シリンダ43または補償シリンダ45aのポートP2は大気中に開放しておく。
【0095】
そして、補償シリンダ45aと作動シリンダ43の何れかのポートP2に接続されている駆動用管路を介して、駆動用流体回路から流体を供給、あるいは負圧にして吸引すれは、作動リンク6を上方または下方に回動させることができる。
【0096】
第8実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図13に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0097】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0098】
図14は、第9実施形態の回動機構を示す図である。
【0099】
第9実施形態の回動機構1は、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aの作動ロッドとは反対側と補償シリンダ45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド45bとは反対側に作動流体が満たされており、作動シリンダ43の作動ロッド44とは反対側のポートP2と、補償シリンダ45aの補償ロッド45bとは反対側のポートP2間を作動用管路としての管路45gで連結し、それぞれのロッド側のポートP1は大気中に開放してある点を除いて、前述した図12に示した第7実施形態の回動機構1と同一構成となっている。
【0100】
第9実施形態の回動機構1においては、作動ロッド44に作用する引っ張り荷重によって、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aの作動ロッド44とは反対側に生じる負圧を、管路45gを通して補償シリンダ45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド45bとは反対側へ伝達し、ピストン45b1を下方へ吸引して圧縮コイルばね45dを収縮させるもので、作動ロッド44と補償ロッド44bの連係動作においては、先に説明した図12に示した第7実施形態の回動機構1と同様である。
【0101】
なお、第9実施形態の回動機構1においては、作動シリンダ43と補償シリンダ45aの何れか一方のポートP1を、駆動用管路を介して駆動用流体回路に連結し、他方のポートP1を大気中に開放するか、あるいは両方のポートP1を、駆動用管路を介して駆動用流体回路に連結することにより、前述した図13に示す回動機構1と同様に、作動リンク6を駆動することが可能である。
【0102】
第9実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図14に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0103】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0104】
なお、図12〜図14に示した第7実施形態〜第9実施形態の基台2は、鉛直支持部材3、補償シリンダ45a及び圧縮コイルばね45dを一つの基台2に固定しているが、それぞれ別々の基台であってもよい。
【0105】
また、図10〜図14に示した第5実施形態〜第9実施形態の回動機構1も図8及び図9に示したように複数のリンクを連結して用いることが可能である。
【0106】
図15は、回動機構の直交3軸を中心とした回転運動を示す図である。
【0107】
前述した第1実施形態〜第9実施形態に示した回動機構1は、図15に示すように、第1モータ51、第2モータ52、及び/又は第3モータ53を有してもよい。第1モータ51は、x軸(ロール軸)周りに回転し、傾斜支持部材5、作動リンク6及び連結部10等を回動させることが可能である。
第2モータ52は、y軸(ヨー軸)周りに回転し、鉛直支持部材3、傾斜支持部材5、作動リンク6及び連結部10等を回動させることが可能である。第3モータ53は、z軸(ピッチ軸)周りに回転し、作動リンク6を回動させることが可能である。なお、傾斜支持部材5は、所定の角度θ1に設定することが可能であるが、設定は他のモータを用いてもよいし、手動でもよい。
【0108】
このように、モータを用いた回動機構1であっても、第1実施形態と同様に設定することで、図15に示した作動リンク6は、作動後、モータの接続を切断すれば、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、設定された3次元空間内の任意の位置に自然に戻ることになる。
【0109】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。なお、補償倍率を大きく設定することにより、第3モータ53によって回生エネルギーを発生させることも可能である。
【0110】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0111】
1…回動機構
2…基台
3…鉛直支持部材
4…軸部材
5…傾斜支持部材
6…作動リンク
7…平行リンク
8…リンク支持部材
10,20,30,40…連結部
11,21,31,41…基部
12,22,32,42…取付部
13…ワイヤ(連結部材)
14,24,34…バネ(弾性部)
15…方向変更部材
23,33…連結アーム(連結部材)
25,35…バネ受け部材
43…作動シリンダ(連結部材)
44…作動ロッド(連結部材)
45…弾性部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マニピュレータ、荷役機械、建設機械、ロボットアーム、ヒューマノイド等に用いる回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
物資運搬作業、土木作業、組み付け作業等では、垂直平面内で回動する作動リンクを備えた機器が広く利用されている。これらの機器の作動リンクは、水平ないし斜め上方に向けられて使用されることが多い。しかしながら、作動リンクは重力によって常に鉛直下向きの姿勢へと付勢されているので、動力を切断した場合には作動リンクが鉛直下向きの安定姿勢を目指して落下する。このため、作動リンクには常に重力にさからった駆動力を加える必要がある。駆動力を発生させる方法としては、目標の作業姿勢にサーボ機構を用いて安定化させるのが一般的であるが、作業姿勢によって作業精度や駆動効率が低下することがある。そこで、ばねやリンク機構を用いて機構的に任意の作業姿勢に安定化させて、作業精度や駆動効率を向上する技術が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4144021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作動リンクの安定姿勢を機構的に生成する従来技術では、ばね、特殊なリンク配置、ストッパ等の機構を利用しており、安定姿勢への付勢力の程度を運用中に変更することは容易ではない。また、この付勢力は作動リンクの姿勢変化にともなう重力項の変化とは異なる変化をする非線形な力である。このため作業姿勢によっては、作動リンクの運動の複雑化による作業精度の低下、及び不必要な付勢力の抵抗による駆動効率の悪化、という2つの問題が生じていた.
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンクに付勢力を与えることで、作動リンクがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢となる回動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明の回動機構は、鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材と、前記鉛直支持部材に回動可能に支持されると共に、前記鉛直支持部材に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材と、前記鉛直支持部材に回動可能に支持される作動リンクと、前記傾斜支持部材と前記作動リンクとを連結する弾性部を含む連結部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、以下の式(1)、式(2)及び式(3)を満足することを特徴とする。
【数1】
ただし、
kは、前記弾性部の弾性率、
mは、重心位置にかかる質量、
gは、重力加速度、
lは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記重心位置までの距離、
pは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記作動リンクと前記連結部とを連結する作用点までの距離、
hは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記傾斜支持部材が前記連結部を支持する基点までの距離、
θ1は、前記傾斜支持部材の前記鉛直支持部材に対する角度、
αは、補償倍率、
βは、水平面に対する前記作動リンクの安定姿勢の角度、
γは、仮想重力の大きさ
である。
【0008】
また、前記弾性部は、バネを含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記連結部は、一方を前記基点に支持され、他方を前記バネの一方に連結されるワイヤと、前記バネの他方を前記作動リンクに取り付ける取付部と、前記作動リンクに支持され、前記作用点を含む前記ワイヤの引張方向を変換する方向変換部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記連結部は、一方を前記作動リンクに回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、前記バネの他方と連結され、前記基点で前記傾斜支持部材に回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持する基部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、 前記連結部は、一方を前記傾斜支持部材に回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、前記バネの他方と連結され、前記作用点で前記作動リンクに回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持する基部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記弾性部は、流体を含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記連結部は、前記傾斜支持部材に回動可能に支持される作動シリンダと、一方に前記作動シリンダ内を摺動するピストンを有し、他方で前記作動リンクに回動可能に支持される作動ロッドと、一方で流体で満たされた前記作動シリンダの一方の作動シリンダ室と連結される作動用管路と、前記作動シリンダ室とは断面積が異なり前記作動用管路の他方と連結される流体で満たされた一方の補償シリンダ室を有する補償シリンダと、一方に前記補償シリンダ内を摺動するピストンを有する補償ロッドと、前記補償ロッドの他方を支持すると共に、前記バネの一方を支持する可動部と、前記補償シリンダを支持すると共に、前記バネの他方を支持する固定部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記連結部は、一方で前記他方の作動シリンダ室と連結される第1駆動用管路と、一方で前記他方の補償シリンダ室と連結される第2駆動用管路と、前記第1駆動用管路の他方と前記第2駆動用管路の他方と接続される駆動用流体回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の回動機構では,任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンクに付勢力を与えることで、作動リンクがいかなる作業姿勢であっても、作動後、所定の安定姿勢にすることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンクが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の回動機構を示す図である。
【図2】第1実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の回動機構の幾何学関係を示す図である。
【図4】第2実施形態の回動機構を示す図である。
【図5】仮想重力ベクトルと重力ベクトルの関係を示す図である。
【図6】Φ傾斜した平面を示す図である。
【図7】Θ傾斜した平面を示す図である。
【図8】第3実施形態の回動機構を示す図である。
【図9】第4実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図10】第5実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図11】第6実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図12】第7実施形態の回動機構を示す図である。
【図13】第8実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図14】第9実施形態の回動機構を示す側面図である。
【図15】回動機構の直交3軸を中心とした回転運動を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は第1実施形態の回動機構を示す図、図2は第1実施形態の回動機構を示す側面図である。
【0019】
第1実施形態の回動機構1は、鉛直方向のxy平面内で回動する1リンクで形成した作動リンクに対して、任意の方向に任意の大きさの重力が作用するような仮想重力ベクトル(γ,β)を生成するものである。
【0020】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた中心Oを含む軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部10と、を有し、連結部10は、弾性部としてのバネ14を含む。
【0021】
第1実施形態では、連結部10は、傾斜支持部材5に設けられる基点Aを含む基部11と、作動リンク6に設けられる取付部12と、一方を基部11に支持される連結部材としてのワイヤ13と、一方でワイヤ13の他方と連結され、他方で取付部12に取り付けられるバネ14と、ワイヤ13の引張方向を変換する作用点Bを含む方向変換部材15と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0022】
図3は第1実施形態の回動機構の幾何学関係を示す図である。第1実施形態の回動機構は、図1及び図2の基部11に含まれる基点Aを鉛直方向から角度θ1だけ傾斜可能とし、重心位置Gの配置や図1及び図2の軸部材4に含まれる中心Oから図1及び図2の方向変換部材15に含まれる作用点Bまでの距離pと中心Oから基点Aまでの距離hの積を調整して、図1及び図2に示した作動リンク6に対して、水平方向からの傾き角度βの方向に、補償倍率αを任意に設定可能な大きさγの仮想重力を生成することができる。
【0023】
簡単のため、垂直平面での回動のみを考える。図1のパラメータと、構成したい大きさγの仮想重力と水平方向からの傾き角度βにより決定される補償倍率αを用いて、図1及び図2に示す回動機構1に用いるバネ14のバネ定数kを求めると、
【数2】
となる。また、
【数3】
と表せる。さらに、基点Aの傾き角度、すなわち鉛直支持部材3に対する傾斜支持部材5の角度θ1を
【数4】
と設定すれば、
【数5】
と仮想重力ベクトル(γ,β)が生成される。
【0024】
途中で仮想重力の設定値を変更したい場合、基点Aの傾き角度θ1は直接変更し、補償倍率αは間接的に調整する。例えば、補償倍率をα1からα2に変更したい場合、以下の3通りの方法がある。
【0025】
(1)p,hを調整して、phの積をα2/α1倍する。
(2)回転中心Oから重心への距離lをα1/α2倍する。
(3)上記(1)と(2)の2つの方法を組み合わせる。
【0026】
このように設定することで、図1及び図2に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0027】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても所定の安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0028】
次に、第2実施形態について説明する。
【0029】
図4は、第2実施形態の回動機構を示す図、図5は仮想重力ベクトルと重力ベクトルの関係を示す図、図6はΦ傾斜した平面を示す図、図7はΘ傾斜した平面を示す図である。
【0030】
第2実施形態の回動機構1は、作用点Bを含む作動リンク6が、xy平面よりx軸を軸にΘ傾いた平面内を回動し、基点Aを含む傾斜支持部材5がxy平面よりx軸を軸にΦ傾いているものである。
【0031】
単位ベクトルの大きさを重力の大きさと同じにした座標をとると、図5に示すように、
【数6】
という関係となる。式(6)をパラメータ表示すると、
【数7】
の関係が成り立つ。
【0032】
図4に示すような、作動リンク6がxy平面よりx軸を軸にΘ傾いた平面内を回動し、基点Aがxy平面よりx軸を軸にΦ傾いている場合を考える。ただし、紙面手前回りを正とする。Θ傾いた平面をXY平面と新たに定義する。
【0033】
この平面内を回動する作動リンク6の釣り合いを考える。Θ傾いたXY平面内での重力ベクトルgの影gΘ、図6に示すようにΦ傾いた平面内にある基部Aから伝達されるΘ傾いたXY平面内でのバネ力によるベクトルgΦNと、図7に示すようにΘ傾いた平面内での仮想重力ベクトルをgΘH(γ’,β')とおくと、
【数8】
の関係がなりたつ。
【0034】
このとき、
【数9】
として、仮想重力ベクトルgΘH(γ’,β')が設定可能となる。
【0035】
このように設定することで、図4に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、設定された3次元空間内の任意の位置に自然に戻ることになる。
【0036】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても所定の安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0037】
次に、第3実施形態について説明する。
【0038】
図8は、第3実施形態の回動機構を示す図である。第3実施形態の回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた第1中心O1を含む第1軸部材41と、第1軸部材41に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な第1傾斜支持部材51と、一方で第1軸部材41に回動可能に支持される第1作動リンク61と、第1傾斜支持部材51に対して回動可能に支持されて第1作動リンク61と平行なリンクを形成する平行リンク部材7と、第1作動リンク61の他方に設けた第2中心O2を含む第2軸部材42と、一方で第1作動リンク61に対して回動可能に第2軸部材42に支持され、他方で平行リンク部材7に回動可能に支持され、第1傾斜支持部材51と平行に回動する第2傾斜支持部材52と、第2軸部材42に回動可能に支持される第2作動リンク62と、第1傾斜支持部材51と第1作動リンク61とを連結する第1連結部101と、第2傾斜支持部材52と第2作動リンク62とを連結する第2連結部102と、を有する。なお、G1は第1重心位置、G2は第2重心位置である。
【0039】
第1連結部101は、第1傾斜支持部材51に設けられる第1基点A1を含む第1基部111と、第1作動リンク61に設けられる第1取付部121と、一方を第1基部111に支持される第1連結部材としての第1ワイヤ131と、一方で第1ワイヤ131の他方と連結され、他方で第1取付部121に支持される第1弾性部としての第1バネ141と、第1ワイヤ131の引張方向を変換する第1作用点B1を含む第1方向変換部材151と、を有する。
【0040】
また、第2連結部102は、第2傾斜支持部材52に設けられる第2基点A2を含む第2基部112と、第2作動リンク62に設けられる第2取付部122と、一方を第2基部112に支持される第2連結部材としての第2ワイヤ132と、一方で第2ワイヤ132の他方と連結され、他方で第2取付部122に支持される第2弾性部としての第2バネ142と、第2ワイヤ132の引張方向を変換する第2作用点B2を含む第2方向変換部材152と、を有する。
【0041】
第3実施形態では、2つの作動リンク61,62を連結したが、図示しない3つ以上の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを連結してもよい。このように複数の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを用いて回動機構1を構成することで、垂直平面内で回動し,先端の作動リンク6n以外が平行リンク機構で直列に複数個連結された作動リンク61,62,・・・6n-1,6nに対して、任意の方向と任意の大きさの重力が働いているかのような仮想重力のベクトルを、最も基台2に近い基部A1の鉛直方向を基準とした傾き角度θ1と、それぞれの作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nのそれぞれの基部A1,A2,・・・A(n-1),Anに対する傾きに比例するように発揮されるバネ力のバネ定数の倍率と、を調整する簡単な設定により自由に生成できる。
【0042】
つまり、図8に示したような複数の作動リンク61,62,・・・6n-1,6nは、作動後、それぞれの補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向から所定の傾き角度の位置に自然に戻ることになる。
【0043】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nに付勢力を与えることで、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0044】
また、それぞれ個々の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nの仮想重力の生成ができることにより、例えば、垂直平面内で複数連結された作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを自由な形で平衡させることが可能となり、設計の自由度を増やすことが可能となる。
【0045】
次に、第4実施形態について説明する。
【0046】
図9は、第4実施形態の回動機構を示す図である。第4実施形態の回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた第1中心O1を含む第1軸部材41と、第1軸部材41に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な第1傾斜支持部材51と、一方で第1軸部材41に回動可能に支持される第1作動リンク61と、第1傾斜支持部材51に対して回動可能に支持されて第1作動リンク61と平行なリンクを形成する平行リンク部材7と、第1作動リンク61の他方に設けた第2中心O2を含む第2軸部材42と、一方で第1作動リンク61に対して回動可能に第2軸部材42に支持され、他方で平行リンク部材7に回動可能に支持され、第1傾斜支持部材51と平行に回動するリンク支持部材としての第1リンク支持部材81と、第2軸部材42に回動可能に支持されると共に、第1リンク支持部材81に対して所定の角度に設定可能な第2傾斜支持部材52と、第2軸部材42に回動可能に支持される第2作動リンク62と、第1傾斜支持部材51と第1作動リンク61とを連結する第1連結部101と、第2傾斜支持部材52と第2作動リンク62とを連結する第2連結部102と、を有する。なお、G1は第1重心位置、G2は第2重心位置である。
【0047】
第1連結部101は、第1傾斜支持部材51に設けられる第1基点A1を含む第1基部111と、第1作動リンク61に設けられる第1取付部121と、一方を第1基部111に支持される第1連結部材としての第1ワイヤ131と、一方で第1ワイヤ131の他方と連結され、他方で第1取付部121に支持される第1弾性部としての第1バネ141と、第1ワイヤ131の引張方向を変換する第1作用点B1を含む第1方向変換部材151と、を有する。
【0048】
第2連結部102は、第2傾斜支持部材52に設けられる第2基点A2を含む第2基部112と、第2作動リンク62に設けられる第2取付部122と、一方を第2基部112に支持される第2連結部材としての第2ワイヤ132と、一方で第2ワイヤ132の他方と連結され、他方で第2取付部122に支持される第2弾性部としての第2バネ142と、第2ワイヤ132の引張方向を変換する第2作用点B2を含む第2方向変換部材152と、を有する。
【0049】
第4実施形態では、2つの作動リンク61,62を連結したが、図示しない3つ以上の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを連結してもよい。このように複数の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを用いて回動機構1を構成することで、垂直平面内で回動し,先端の作動リンク6n以外が平行リンク機構で直列に複数個連結された作動リンク61,62,・・・6n-1,6nに対して、任意の方向と任意の大きさの重力が働いているかのような仮想重力のベクトルを、それぞれの基部A1,A2,・・・An-1,Anの鉛直方向を基準とした傾き角度と、それぞれの作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nのそれぞれの基部A1,A2,・・・A(n-1),Anに対する傾きに比例するように発揮されるバネ力のバネ定数の倍率と、を調整する簡単な設定により自由に生成できる。
【0050】
つまり、図9に示したような複数の作動リンク61,62,・・・6n-1,6nは、作動後、それぞれの補償倍率と傾斜角度により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向から所定の傾き角度の位置に自然に戻ることになる。
【0051】
したがって、任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nに付勢力を与えることで、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nがいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nが鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0052】
また、それぞれ個々の作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nの仮想重力の生成ができることにより、例えば、垂直平面内で複数連結された作動リンク61,62,・・・6(n-1),6nを自由な形で平衡させることが可能となり、設計の自由度を増やすことが可能となる。
【0053】
次に、第5実施形態及び第6実施形態について説明する。第5実施形態及び第6実施形態の回動機構1は、連結部10の弾性部として、バネ24を用いたものである。
【0054】
図10は、第5実施形態の回動機構を示す図である。
【0055】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部20と、を有し、連結部20は、弾性部としてのバネ25を含む。
【0056】
連結部20は、傾斜支持部材5に支持される基点Aを含む基部21と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部22と、基部21に回動可能に支持されるスライダ23と、一方を取付部22に回動可能に支持され、スライダ23に摺動可能に支持される連結部材としての連結アーム24と、一方でスライダ23に支持されるバネ25と、連結アーム24の他方に取り付けられ、バネ25の他方を支持するバネ受け部材26と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0057】
第5実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図10に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0058】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0059】
図11は、第6実施形態の回動機構を示す図である。
【0060】
第6実施形態の回動機構1は、第5実施形態と同様に、連結部10の弾性部として、バネ35を用いたものであるが、前述した図10に示す第5実施形態の回動機構1とは、連結アーム34の取り付ける向きを逆にして、バネ35を作動リンク6の下方に配置した点が異なっている。
【0061】
回動機構1は、基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部30と、を有し、連結部30は、弾性部としてのバネ35を含む。
【0062】
連結部30は、傾斜支持部材5に回動可能に支持される基点Aを含む基部31と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部32と、取付部32に回動可能に支持されるスライダ33と、一方を基部31に回動可能に支持され、スライダ33に摺動可能に支持される連結部材としての連結アーム34と、一方でスライダ33に支持されるバネ35と、連結アーム34の他方に取り付けられ、バネ35の他方を支持するバネ受け部材36と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0063】
第6実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図11に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0064】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0065】
次に、第7実施形態〜第9実施形態について説明する。第7実施形態〜第9実施形態の回動機構1は、連結部40に流体を用いたものである。
【0066】
図12は、第7実施形態の回動機構を示す図である。
【0067】
回動機構1は、固定部としての基台2と、基台2から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材3と、鉛直支持部材3に設けた軸部材4と、軸部材4に回動可能に支持されると共に、鉛直支持部材3に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材5と、軸部材4に回動可能に支持される作動リンク6と、傾斜支持部材5と作動リンク6とを連結する連結部40と、を有する。
【0068】
連結部40は、傾斜支持部材5に支持される基点Aを含む基部41と、作動リンク6に支持される作用点Bを含む取付部42と、基部41に回動可能に支持される連結部材としての作動シリンダ43と、取付部42に回動可能に支持され、作動シリンダ43の作動シリンダ室43a内にスライド自在に嵌挿されるピストン44aを有する連結部材としての作動ロッド44と、作動シリンダ43に連結される弾性部45と、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0069】
図12に示すように、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aには、作動ロッド44の一端に設けられた作動ピストン44aがスライド自在に嵌挿されている。また、作動シリンダ室43a周壁の作動ロッド44側の端部付近と反対側の端部付近にはそれぞれ、シリンダ室43a内を外部と流通するためのポートP1、P2が設けられている。
【0070】
また、基台2には、補償シリンダ45aが設置されている。補償シリンダ45aには、一端にピストン45b1を有する補償ロッド部45bが上方に突出する向きで取り付けられている。ピストン45b1は補償シリンダ45a内の補償シリンダ室45a1にスライド自在に嵌挿されている。
【0071】
補償ロッド45bの他端は、可動部45cに連結されている。この可動部45cは、補償ロッド45bと一体となって上下変位できるように、図示していないガイド手段を介して基台2に保持されている。また、基台2と可動部45cの間には、補償シリンダ45aと並列にバネとしての圧縮コイルばね45dが後述するように、あらかじめ自然長より所定長さ圧縮された状態で組み込まれている。
【0072】
補償シリンダ45aは、前述した作動シリンダ43と同様に、補償シリンダ室45a1の補償ロッド側の端部近傍と反対側の端部近傍にそれぞれ、外部と流通するための2つのポートP1、P2を有していて、補償シリンダ45aのポートP1と作動シリンダ43aのポートP1は作動用管路としての管路45eによって連結されている。
【0073】
作動シリンダ43のシリンダ室43aの作動ロッド側内部と、補償シリンダ部45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド側内部、ならびに管路15内には作動流体が満たされている。この作動流体としては、例えば、油のような非圧縮性流体が用いられている。
【0074】
また、作動シリンダ43と補償シリンダ45aにそれぞれ設けられているポートP2は、何れも大気中に開放されている。
【0075】
回動機構1において、作動リンク6を軸部材4回りに上下に回動させると、これに伴って作動シリンダ43に対して作動ロッド44が移動する。そうすると、この作動ロッド44の伸縮変位は管路15を移動する作動流体を介して、補償シリンダ45aの補償ロッド45bに伝達される。
【0076】
ここで、作動シリンダ43がL1だけ伸長(収縮)としたとき、補償シリンダ45aと補償ロッド45bの全長は、これに連動してL2だけ収縮(伸長)する。作動ピストン44aの受圧面積をS1、補償ピストン45b1の受圧面積をS2とすると、作動流体が非圧縮性流体とした場合、作動シリンダ43側で流出(または流入)する作動流体の容積は、補償シリンダに流入(流出)する容積に等しいから、
L1S1=L2S2 (12)
【0077】
また、圧縮コイルばね45dのばね定数をKとすると、これが自然長からL2だけ圧縮された時に補償ロッド45bに作用する力Fは、
F=KL2 (13)
となる。
【0078】
また、補償シリンダ45a側から作動流体を介して作動ロッド44に伝達される力をfとすると、パスカルの原理により、
f=(S1/S2)F (14)
となる。
【0079】
(3)式に(1)式と(2)式を適用すると、
f=(S1/S2)KL2=(S1/S2)2 KL1 (15)
ここで、k=(S1/S2)2 Kとおくと、f=kL1と表せるから、作動シリンダ43は見かけ上、ばね定数kのばねと等価な機能を有すると考えられる。
【0080】
途中で仮想重力の設定値を変更したい場合、基点Aの傾き角度θ1は直接変更し、補償倍率αは間接的に調整する。例えば、補償倍率をα1からα2に変更したい場合、シリンダの面積比S2/S1を(α2/α1)0.5倍する方法がある。
【0081】
なお、第7実施形態の回動機構1においては、補償シリンダ45aと圧縮コイルばね45dとを基台2上に並列に配置し、可動部45cを介して補償シリンダ45aの補償ロッド45bと圧縮コイルばね45dとを連結しているが、これに限定するものではなく、例えば、補償ロッド45bと圧縮コイルばね45dとは同軸上に直列配置したり、圧縮コイルばね45dを補償シリンダ45aのヘッド側に内蔵させてピストンを直接付勢するようにしてもよい。
【0082】
また、第7実施形態の回動機構1においては、圧縮コイルばね45dも弾性部として用いているが、これに限定するものではなく、例えば、補償ロッド45bを引っ張りコイルばねに連結して、圧縮コイルばね45dと同等の付勢力を得るようにしてもよい。
【0083】
なお、作動シリンダ43と補償シリンダ45a間を連結する管路15の途中に開閉弁やアキュムレータ等を組み込むことで、作動アーム4のロックやインピーダンス調整の機能を簡単に付加することができる。
【0084】
第7実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図12に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0085】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0086】
図13は、第8実施形態の回動機構を示す図である。
【0087】
第8実施形態の回動機構1は、補償シリンダ45aのヘッド側ポートP2と、作動シリンダ43のヘッド側ポートP2に、それぞれ駆動用作動流体を供給し、又は、排出するための一対の駆動用管路45f1,45f2を追加したものである。この場合、駆動用管路45f1,45f2は、図示していない駆動用流体回路に接続されている。この駆動用流体回路としては、例えば、油圧ポンプや方向切換弁等からなる周知の油圧回路等が用いられる。
【0088】
第8実施形態のものにおいては、圧縮コイルばね45dの反発力によって、作動リンク6に軸部材43回りに作用している負荷トルクが補償されている状態において、一方の駆動用管路45f1から補償シリンダ部45aへ作動流体を供給すると、ピストン45b1は押し上げられる。
【0089】
その結果、補償シリンダ室45a1のロッド側の流体は押し出され、管路45eを通って作動シリンダ43のポートP1に流入し、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長が収縮して作動リンク6は上方に回動する。
【0090】
作動シリンダ43は、作動ロッドと反対側の作動シリンダ室内にも作動流体が満たされており、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長の収縮によって、この作動流体は駆動用管路45f2を通して駆動用流体源側に還流される。
【0091】
一方、駆動用管路45f2を通して作動シリンダ43へ作動流体を供給した場合には、作動シリンダ43と作動ロッド44の全長が伸長して作動リンク6は、下方へ回動する。その際、作動シリンダ43の作動ロッド側の作動シリンダ室内の流体はポートP1から管路45eへ押し出され、補償シリンダ45aのポートP1から補償シリンダ室45a1に流入する。
【0092】
その結果、ピストン45b1が下方に押されて,これとともに、補償ロッド部45b及び可動部45cが一体となって降下し、圧縮コイルばね45dが圧縮されて、その高まった反発力によって、作動リンク6の下方への回動で増加した負荷トルク分を補償する。
【0093】
第8実施形態のものにおいては、作動リンク6の荷重補償に用いている作動シリンダ43や補償シリンダ45aで作動リンク6の駆動機構を兼ねているため、別途駆動シリンダ装置等を設ける必要がない。
【0094】
なお、第8実施形態の回動機構においては、駆動用管路45f1,45f2の両方を図示していない駆動用流体回路に接続しているが、何れか一方を省略してもよい。その場合には、管路が接続されていない作動シリンダ43または補償シリンダ45aのポートP2は大気中に開放しておく。
【0095】
そして、補償シリンダ45aと作動シリンダ43の何れかのポートP2に接続されている駆動用管路を介して、駆動用流体回路から流体を供給、あるいは負圧にして吸引すれは、作動リンク6を上方または下方に回動させることができる。
【0096】
第8実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図13に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0097】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0098】
図14は、第9実施形態の回動機構を示す図である。
【0099】
第9実施形態の回動機構1は、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aの作動ロッドとは反対側と補償シリンダ45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド45bとは反対側に作動流体が満たされており、作動シリンダ43の作動ロッド44とは反対側のポートP2と、補償シリンダ45aの補償ロッド45bとは反対側のポートP2間を作動用管路としての管路45gで連結し、それぞれのロッド側のポートP1は大気中に開放してある点を除いて、前述した図12に示した第7実施形態の回動機構1と同一構成となっている。
【0100】
第9実施形態の回動機構1においては、作動ロッド44に作用する引っ張り荷重によって、作動シリンダ43の作動シリンダ室43aの作動ロッド44とは反対側に生じる負圧を、管路45gを通して補償シリンダ45aの補償シリンダ室45a1の補償ロッド45bとは反対側へ伝達し、ピストン45b1を下方へ吸引して圧縮コイルばね45dを収縮させるもので、作動ロッド44と補償ロッド44bの連係動作においては、先に説明した図12に示した第7実施形態の回動機構1と同様である。
【0101】
なお、第9実施形態の回動機構1においては、作動シリンダ43と補償シリンダ45aの何れか一方のポートP1を、駆動用管路を介して駆動用流体回路に連結し、他方のポートP1を大気中に開放するか、あるいは両方のポートP1を、駆動用管路を介して駆動用流体回路に連結することにより、前述した図13に示す回動機構1と同様に、作動リンク6を駆動することが可能である。
【0102】
第9実施形態の回動機構1も第1実施形態と同様に設定することで、図14に示した作動リンク6は、作動後、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、水平方向からの傾き角度βの位置に自然に戻ることになる。
【0103】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。
【0104】
なお、図12〜図14に示した第7実施形態〜第9実施形態の基台2は、鉛直支持部材3、補償シリンダ45a及び圧縮コイルばね45dを一つの基台2に固定しているが、それぞれ別々の基台であってもよい。
【0105】
また、図10〜図14に示した第5実施形態〜第9実施形態の回動機構1も図8及び図9に示したように複数のリンクを連結して用いることが可能である。
【0106】
図15は、回動機構の直交3軸を中心とした回転運動を示す図である。
【0107】
前述した第1実施形態〜第9実施形態に示した回動機構1は、図15に示すように、第1モータ51、第2モータ52、及び/又は第3モータ53を有してもよい。第1モータ51は、x軸(ロール軸)周りに回転し、傾斜支持部材5、作動リンク6及び連結部10等を回動させることが可能である。
第2モータ52は、y軸(ヨー軸)周りに回転し、鉛直支持部材3、傾斜支持部材5、作動リンク6及び連結部10等を回動させることが可能である。第3モータ53は、z軸(ピッチ軸)周りに回転し、作動リンク6を回動させることが可能である。なお、傾斜支持部材5は、所定の角度θ1に設定することが可能であるが、設定は他のモータを用いてもよいし、手動でもよい。
【0108】
このように、モータを用いた回動機構1であっても、第1実施形態と同様に設定することで、図15に示した作動リンク6は、作動後、モータの接続を切断すれば、補償倍率αと傾斜角度θ1により決まる大きさγの仮想重力により、設定された3次元空間内の任意の位置に自然に戻ることになる。
【0109】
したがって、3次元空間内で任意の方向に任意の大きさの重力を加えることと同等になるように、作動リンク6に付勢力を与えることで、作動リンク6がいかなる作業姿勢であっても安定姿勢に戻ることができる。また、安定姿勢近傍では、制御系が高精度になるうえに駆動効率も向上するため、結果的に機器が飛躍的に省エネになるという効果が期待できる。さらに、脱力状態においても、作動リンク6が鉛直方向に落下しないという安全上の利点も生じる。なお、補償倍率を大きく設定することにより、第3モータ53によって回生エネルギーを発生させることも可能である。
【0110】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0111】
1…回動機構
2…基台
3…鉛直支持部材
4…軸部材
5…傾斜支持部材
6…作動リンク
7…平行リンク
8…リンク支持部材
10,20,30,40…連結部
11,21,31,41…基部
12,22,32,42…取付部
13…ワイヤ(連結部材)
14,24,34…バネ(弾性部)
15…方向変更部材
23,33…連結アーム(連結部材)
25,35…バネ受け部材
43…作動シリンダ(連結部材)
44…作動ロッド(連結部材)
45…弾性部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材と、
前記鉛直支持部材に回動可能に支持されると共に、前記鉛直支持部材に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材と、
前記鉛直支持部材に回動可能に支持される作動リンクと、
前記傾斜支持部材と前記作動リンクとを連結する弾性部を含む連結部と、
を有することを特徴とする回動機構。
【請求項2】
以下の式(1)、式(2)及び式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の回動機構。
【数10】
ただし、
kは、前記弾性部の弾性率、
mは、重心位置にかかる質量、
gは、重力加速度、
lは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記重心位置までの距離、
pは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記作動リンクと前記連結部とを連結する作用点までの距離、
hは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記傾斜支持部材が前記連結部を支持する基点までの距離、
θ1は、前記傾斜支持部材の前記鉛直支持部材に対する角度、
αは、補償倍率、
βは、水平面に対する前記作動リンクの角度、
γは、仮想重力
である。
【請求項3】
前記弾性部は、バネを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回動機構。
【請求項4】
前記連結部は、
一方を前記基点に支持され、他方を前記バネの一方に連結されるワイヤと、
前記バネの他方を前記作動リンクに取り付ける取付部と、
前記作動リンクに支持され、前記作用点を含む前記ワイヤの引張方向を変換する方向変換部材と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項5】
前記連結部は、
一方を前記作動リンクに回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、
前記バネの他方と連結され、前記基点で前記傾斜支持部材に回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持するスライダと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項6】
前記連結部は、
一方を前記傾斜支持部材に回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、
前記バネの他方と連結され、前記作用点で前記作動リンクに回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持するスライダと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項7】
前記弾性部は、流体を含むことを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項8】
前記連結部は、
前記傾斜支持部材に回動可能に支持される作動シリンダと、
一方に前記作動シリンダ内を摺動する作動ピストンを有し、他方で前記作動リンクに回動可能に支持される作動ロッドと、
一方で流体で満たされた前記作動シリンダの一方の作動シリンダ室と連結される作動用管路と、
前記作動シリンダ室とは断面積が異なり前記作動用管路の他方と連結される流体で満たされた一方の補償シリンダ室を有する補償シリンダと、
一方に前記補償シリンダ内を摺動する補償ピストンを有する補償ロッドと、
前記補償ロッドの他方を支持すると共に、前記バネの一方を支持する可動部と、
前記補償シリンダを支持すると共に、前記バネの他方を支持する固定部と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の回動機構。
【請求項9】
前記連結部は、
一方で前記他方の作動シリンダ室と連結される第1駆動用管路と、
一方で前記他方の補償シリンダ室と連結される第2駆動用管路と、
前記第1駆動用管路の他方と前記第2駆動用管路の他方と接続される駆動用流体回路と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の回動機構。
【請求項1】
鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材と、
前記鉛直支持部材に回動可能に支持されると共に、前記鉛直支持部材に対して所定の角度に設定可能な傾斜支持部材と、
前記鉛直支持部材に回動可能に支持される作動リンクと、
前記傾斜支持部材と前記作動リンクとを連結する弾性部を含む連結部と、
を有することを特徴とする回動機構。
【請求項2】
以下の式(1)、式(2)及び式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の回動機構。
【数10】
ただし、
kは、前記弾性部の弾性率、
mは、重心位置にかかる質量、
gは、重力加速度、
lは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記重心位置までの距離、
pは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記作動リンクと前記連結部とを連結する作用点までの距離、
hは、前記傾斜支持部材が前記鉛直支持部材に支持される点を中心とし、前記中心から前記傾斜支持部材が前記連結部を支持する基点までの距離、
θ1は、前記傾斜支持部材の前記鉛直支持部材に対する角度、
αは、補償倍率、
βは、水平面に対する前記作動リンクの角度、
γは、仮想重力
である。
【請求項3】
前記弾性部は、バネを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回動機構。
【請求項4】
前記連結部は、
一方を前記基点に支持され、他方を前記バネの一方に連結されるワイヤと、
前記バネの他方を前記作動リンクに取り付ける取付部と、
前記作動リンクに支持され、前記作用点を含む前記ワイヤの引張方向を変換する方向変換部材と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項5】
前記連結部は、
一方を前記作動リンクに回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、
前記バネの他方と連結され、前記基点で前記傾斜支持部材に回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持するスライダと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項6】
前記連結部は、
一方を前記傾斜支持部材に回動可能に支持され、他方を前記バネの一方と連結される連結アームと、
前記バネの他方と連結され、前記作用点で前記作動リンクに回動可能に支持されると共に前記連結アームを摺動可能に支持するスライダと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項7】
前記弾性部は、流体を含むことを特徴とする請求項3に記載の回動機構。
【請求項8】
前記連結部は、
前記傾斜支持部材に回動可能に支持される作動シリンダと、
一方に前記作動シリンダ内を摺動する作動ピストンを有し、他方で前記作動リンクに回動可能に支持される作動ロッドと、
一方で流体で満たされた前記作動シリンダの一方の作動シリンダ室と連結される作動用管路と、
前記作動シリンダ室とは断面積が異なり前記作動用管路の他方と連結される流体で満たされた一方の補償シリンダ室を有する補償シリンダと、
一方に前記補償シリンダ内を摺動する補償ピストンを有する補償ロッドと、
前記補償ロッドの他方を支持すると共に、前記バネの一方を支持する可動部と、
前記補償シリンダを支持すると共に、前記バネの他方を支持する固定部と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の回動機構。
【請求項9】
前記連結部は、
一方で前記他方の作動シリンダ室と連結される第1駆動用管路と、
一方で前記他方の補償シリンダ室と連結される第2駆動用管路と、
前記第1駆動用管路の他方と前記第2駆動用管路の他方と接続される駆動用流体回路と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の回動機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−161846(P2012−161846A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21474(P2011−21474)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
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