説明

回動装置

【課題】小型で、かつ容易に移設が可能な回動装置を提供する。
【解決手段】回動装置1は、回転軸812に回動力を伝達する回動手段10と、回動手段10を昇降させる昇降手段2と、回動手段10を進退させる進退手段3と、床面上を走行可能に構成された台車部7とを有している。昇降手段2は、支点Pを中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアーム22を有している。またアーム22は、その一端を回動手段10に連結すると共に、他端をカウンターウェイト24に連結して、カウンターウェイト24によって回動手段10を昇降させる際の操作力を低減してあり、かつアーム22は、回転軸812に直交する方向に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の製造過程において、エンジンに組付けられている回転軸を回動させるための回動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造過程において、エンジンとオートマチックトランスミッション(以下A/Tと記す)とを固定する際には、エンジンが有するドライブプレートと、A/Tが有するトルクコンバータとの固定が行われる。ドライブプレートには、同一円周上に等間隔で配された複数のボルト挿通穴が形成されており、トルクコンバータには、ドライブプレートのボルト挿通穴と対応した位置にボルト穴が形成されている。ドライブプレートとトルクコンバータとは、ボルト挿通穴にボルトを挿通すると共に、ボルト穴に締結することによって互いに固定される。
【0003】
このドライブプレート及びトルクコンバータを固定する作業は、エンジンとA/Tとの対向部において、周方向の特定の位置に設けられた空間である作業口に作業者が工具を挿入して行われる。この作業を行うには、ドライブプレートを回動させて、ボルト穴及びボルト挿通穴を順次、作業口へと移動させる必要がある。このドライブプレートの回動は、ドライブプレートに固定された回転軸であるクランクシャフトを回動させることにより行うことができる。
【0004】
クランクシャフト951を回動する回動装置9としては、特許文献1に示されたものがある。特許文献1に示された回動装置9は、図14に示すごとく、エンジン95の上方に配された走行レール94から垂下して配される。回動装置9は、走行レール94上を移動可能に配された進退シリンダー93と、上下方向に移動可能に配された昇降シリンダー92とを備えている。また、昇降シリンダー92には、クランクシャフト951と係合可能に構成された回動手段91が配されている。進退シリンダー93と昇降シリンダー92とによって、回動手段91をクランクシャフト951の係合位置へと移動し、回動手段91によってクランクシャフト951を回動させることにより、クランクシャフト951に固定されたドライブプレート952の回動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−62650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した回動装置9においては以下の問題点がある。
回動装置9は、上方に配された走行レール94から吊り下げて配してある。そのため、回動装置9を移設する際には、回動装置9を走行レール94から取り外す必要があり、吊り下げられた回動装置を移設するためには、多くの移設作業工数及び移設費用が発生する。これにより、生産ラインの工程編成の変更を容易に行うことができない。また、回動装置9の移設と同時に、走行レール94を移設することもあり、この場合には移設作業工数及び移設費用がさらに増大する。
【0007】
また、走行レール94は作業スペース及び安全性確保のため、高い位置に取り付けられる場合が多く、走行レール94からエンジン95のクランクシャフト951の間における距離が大きくなりやすい。そのため、回動装置9の大きさが大きくなりやすい。
さらに上述したごとく、回動装置9の大きさが大きくなることにより重量も増大するため、回動装置9を移動するための進退シリンダー93及び昇降シリンダー92においても出力の大きいものが必要となる。そのため、回動装置9の大きさが大きくなり、回動装置9の設備費が増大することとなる。また、回動装置9が大きくなることにより、移設作業の作業性悪化につながる。
【0008】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、小型で、かつ容易に移設が可能な回動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、自動車の製造過程において、エンジンに組み付けられている回転軸を回動させるための回動装置であって、
上記回転軸との連結部を有すると共に該連結部を介して上記回転軸に回動力を伝達する回動手段と、
該回動手段を昇降させる昇降手段と、
上記回動手段を上記軸方向に進退させる進退手段と、
上記回動手段、上記昇降手段及び上記進退手段を搭載すると共に床面上を走行可能に構成された台車部とを有しており、
上記昇降手段は、支点を中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアームを有し、該アームの一端を上記回動手段に連結すると共に、他端をカウンターウェイトに連結して、該カウンターウェイトによって上記回動手段を昇降させる際の操作力を低減してあり、
かつ、上記アームは、上記回転軸に直交する方向に配置されていることを特徴とする回動装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記回動装置において、上記昇降手段は、支点を中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアームを有し、該アームの一端を上記回動手段に連結すると共に、他端をカウンターウェイトに連結して、該カウンターウェイトによって上記回動手段を昇降させる際の操作力を低減してある。
【0011】
すなわち、上記カウンターウェイトの自重によって、上記アームにおける上記カウンターウェイトを配した側の端部にかかる下向きの力は、上記アームを介することによって、上記回動手段を配した側の端部においては上向きの力に変換される。この上向きの力によって、上記回動手段の昇降を補助することにより、上記回動手段を昇降させる操作力を低減することができる。したがって、上記回動手段を小さな操作力で容易に昇降させることができる。
【0012】
また、上記のごとく、上記回動手段を小さな操作力で容易に昇降させられるため、昇降シリンダー等の装置を用いることなく、作業者の人力によって上記回動手段を昇降させることもできる。これにより、上記回動装置を小型化すると共に、簡単な構造によって構成することができる。したがって、上記回動装置にかかる設備費用を低減し、上記回動装置を安価にすることができる。
【0013】
また、上記アームは、上記回転軸に直交する方向に配置されている。そのため、上記アームの揺動範囲と上記回動手段の進退範囲とは、互いに影響を受けにくい。それゆえ、上記アーム及び上記回動装置をそれぞれスペース的に無駄のない理想的な位置に配置することができ、上記回動装置の大きさを小さくすることができる。仮に上記アームが軸方向に配された場合、上記アームの揺動範囲と上記回動手段の進退範囲とが重なるおそれがある。この場合、上記アームの揺動範囲と上記回動手段の進退範囲とが影響を受けないように、上記アームと上記回動手段を離れた位置に配置する必要があり、上記回動装置の大きさが大きくなる。
【0014】
また、上記回動装置は、床面上を走行可能に構成された上記台車部を有している。上述のごとく上記回動装置は小型化が可能であるため、上記回動装置を上記台車部によって容易に移動することができる。これにより、上記回動装置の移設作業性を向上することができる。また、従来の上方から吊り下げて配された回動装置に比べて、構造を簡略化すると共に、移設作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0015】
以上のごとく、上記回動装置によれば、小型で、かつ容易に移設が可能な回動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、エンジンの回転軸と連結状態の回動装置を示す説明図。
【図2】実施例1における、非連結状態の回動装置を示す正面視説明図。
【図3】実施例1における、非連結状態の回動装置を示す側面視説明図(図2のA矢視図)。
【図4】実施例1における、非連結状態の回動装置を示す正面視部分拡大説明図。
【図5】実施例1における、非連結状態の回動装置を示す側面視部分拡大説明図。
【図6】実施例1における、係合状態の固定部を示す部分拡大図(図5のB−B線矢視図)。
【図7】実施例1における、係合解除状態の固定部を示す部分拡大図(図5のB−B線矢視図)
【図8】実施例1における、同期手段の動作を示す説明図(図3のC−C線矢視図)。
【図9】実施例1における、回動手段を上昇させた回動装置を示す部分拡大説明図。
【図10】実施例1における、回動手段を下降させた回動装置を示す部分拡大説明図。
【図11】実施例1における、回動手段を回転軸側に移動させた回動装置を示す部分拡大説明図。
【図12】実施例1における、ドライブプレートを示す説明図。
【図13】実施例1における、トルクコンバータを示す説明図。
【図14】背景技術における、回動装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記回動装置において、上記回動手段は、回動力を発生させる駆動部と、該駆動部と上記連結部との間に配されたセルフロック減速機とを有しており、該セルフロック減速機は、上記駆動部からの入力のみによって回動可能であると共に上記連結部側からの入力に対しては回動しないよう構成されていてもよい(請求項2)。この場合には、上記回転軸を回動させた際に、上記エンジンから上記回転軸に反力又は回転力が伝達されても、上記駆動部によって、上記回転軸を正しく回動させることができる。
【0018】
すなわち、上記回転軸を回動させると、上記回転軸と連結されたピストンが上記エンジン内で移動する。ピストンの位置が、エンジン駆動時のサイクルにおける圧縮域にある場合、上記回転軸の回動方向と反対に作用する反力が加わる。また、ピストンの位置が、エンジン駆動時のサイクルにおける膨張域にある場合、上記回転軸の回動方向に向かって作用する回転力が加わる。上記セルフロック減速機は、上記連結部側からの入力に対しては回動しないように構成されているため、上記回転軸に反力及び回転力が伝達されたとしても上記駆動部へと伝達されない。
【0019】
さらに、上記駆動部を駆動した際に発生するトルクは、上記セルフロック減速機を介することにより、上記セルフロック減速機の減速比に比例して増大する。そのため、上記セルフロック減速機を所望の減速比に設定することにより、上記回転軸に反力や回転力が生じた際にも、上記回転軸を正しく回転させることができる。
また、上記のごとく、上記セルフロック減速機によって、上記駆動部が発生するトルクを増大させることができる。そのため、上記駆動部の出力を低減し小型化することができる。
【0020】
また、上記回動手段の上記駆動部は、所定回転数又は所定回転角度を回動して停止するよう回動制御可能に構成されていてもよい(請求項3)。この場合には、上記回転軸を所望の回動角度ずつ回動させることができる。したがって、上記回転軸の回動方向における位置出しを容易に行うことができ、上記回転軸の回動作業を効率よく行うことができる。
【0021】
また、上記進退手段は、軸方向において上記回動手段の位置を固定する固定手段を備えていてもよい(請求項4)。この場合には、上記回動手段を上記進退手段の進路上における所望の位置に固定することができる。したがって、上記連結部と上記回転軸とを連結させた状態で上記回動手段の位置を固定することにより、上記連結部と上記回転軸との連結状態を維持することができる。これにより、上記回転軸を回動させる際に、上記連結部と上記回転軸とを確実に連結させておくことができる。また、上記連結部と上記回転軸とを連結させるために、上記回動手段を上記回転軸に向かって押圧するためにシリンダー等の装置を配する必要がない。それゆえ、上記回動装置を小型化すると共に簡単な構造とすることができる。
【0022】
また、上記固定手段は、上記進退手段において上記回動手段と一体に移動する第1ラックギアと、上記進退手段において上記台車部と一体に移動する第2ラックギアとを備えており、上記第1ラックギアと上記第2ラックギアとは係合状態と非係合状態とに切換え可能に構成されていてもよい(請求項5)。この場合には、上記第1ラックギアと上記第2ラックギアとを、係合状態と非係合状態とに切り換えることで、容易に上記進退手段を移動可能な状態と固定状態とに切り換えることができる。
【0023】
また、上記回動装置は、上記エンジンが順次移動してくる製造ラインに配設されており、上記台車部は上記エンジンの移動に同期する同期手段を備えていてもよい(請求項6)。この場合には、上記同期手段によって、上記製造ライン上を移動する上記エンジンと共に上記回動装置を移動させることができる。これにより、上記エンジンと上記回動装置の移動を同期させながら、上記回動装置によって上記回転軸を容易に回動することができる。
【0024】
また、上記同期手段を介して、上記エンジンを移動させる推進力を上記回動装置に伝達することができる。したがって、上記回動装置を移動させるための駆動源を、上記回動装置に設ける必要がなくなり、上記回動装置を小型化すると共に、その構造をより簡単とすることができる。
【0025】
また、上記回動装置は、上記エンジンの上記回転軸に設けられたドライブプレートと、上記エンジンと固定されるオートマチックトランスミッションが備えるトルクコンバータとを固定する際に用いることができる(請求項7)。上記ドライブプレートと上記トルクコンバータとは、ボルトを締結することによって互いに固定される。このボルトの締結作業は、上記ドライブプレートを所望の角度ずつ回動して行うため、このドライブプレートと連動する上記エンジンの上記回転軸(クランクシャフト)を、上記回動装置を用いて回動させることにより、上記ドライブプレートを容易に回動させることができる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
回動装置1にかかる実施例について、図1〜図13を参照して説明する。
回動装置1は、図1に示すごとく、自動車の製造過程において、エンジン81に組み付けられている回転軸812を回動させるためのものである。回動装置1は、回転軸812との連結部13を有すると共に連結部13を介して回転軸812に回動力を伝達する回動手段10と、回動手段10を昇降させる昇降手段2とを有している。また、回動装置1は、回動手段10を軸方向Xに進退させる進退手段3と、回動手段10、昇降手段2及び進退手段3を搭載すると共に床面上を走行可能に構成された台車部7とを有している。
【0027】
昇降手段2は、図3に示すごとく、支点Pを中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアーム22を有している。またアーム22は、その一端を回動手段10に連結すると共に、他端をカウンターウェイト24に連結してある。カウンターウェイト24によって回動手段10を昇降させる際の操作力を低減してあり、かつアーム22は、回転軸812に直交する方向に配置されている。
【0028】
回動装置1について、さらに詳細に説明する。
本例においては、回転軸812が配された方向を軸方向Xとし、後述の製造ライン上においてエンジン81が移動する方向を前後方向Yとする。また、軸方向Xと前後方向Yとに直交する方向を上下方向Zとする。
また、軸方向Xにおいて、回動装置1の連結部13が配された側を先端側とし、その反対側を基端側とする。また、前後方向Yにおいて、エンジン81が移動する方向を前方とし、その反対側を後方とする。また、上下方向Zにおいて、床面が配された側を下方とし、その反対側を上方とする。
【0029】
本例の回動装置1は、図1に示すごとく、エンジン81のドライブプレート813とオートマチックトランスミッション(A/T)82(以下トランスミッション82と記す)のトルクコンバータ821とを固定する製造ライン上においてエンジン81に組付けられた回転軸812を回動させるためのものである。エンジン81とトランスミッション82とは、互いに固定された状態でエンジン載置台84上に載置され、搬送コンベアによって順次搬送されている。エンジン81に組付けられた回転軸812であるクランクシャフトのトランスミッション82側に配される端部には、ドライブプレート813が固定されており、このドライブプレート813は、トランスミッション82が有するトルクコンバータ821に固定される。
【0030】
図12に示すごとく、ドライブプレート813には、同一円周上において60°間隔で6つのボルト挿通穴814が形成されている。また、図13に示すごとく、トルクコンバータ821には、ドライブプレート813のボルト挿通穴814に対応した位置に6つのボルト穴822が形成されている。
【0031】
ドライブプレート813とトルクコンバータ821とは、ドライブプレート813のボルト挿通穴814に挿通したボルトを、トルクコンバータ821のボルト穴822に締結することにより固定される。ドライブプレート813とトルクコンバータ821とを固定するためのボルト締結作業は、エンジン81とトランスミッション82との対向部に形成された周方向の特定の位置に設けられた空間である作業口83に作業者が工具を挿入して行われる。この作業を行うには、ドライブプレート813を60°ずつ回動させて、ボルト挿通穴814及びボルト穴822を作業口83へと順次移動させながら行う必要がある。ドライブプレート813の回動は、ドライブプレート813に固定された回転軸812を回動させることにより行われる。
【0032】
回動装置1は、図2及び図3に示すごとく、回転軸812に回動力を伝達する回動手段10と、回動手段10を上下方向Zに昇降させる昇降手段2と、回動手段10を軸方向Xに進退させる進退手段3と、回動手段10、昇降手段2及び進退手段3を搭載する台車部7とを有している。
【0033】
図2及び図4に示すごとく、回動手段10は、回転軸812と連結する連結部13を有すると共に連結部13を介して回転軸812に回動力を伝達するよう構成されている。回動手段10は、回動力を発生させる駆動部11と、駆動部11と連結部13との間に配されたセルフロック減速機12とを有している。本例において駆動部11には、市販のナットランナーを用いた。ナットランナーは、台車部7に配したコントローラ部111によって、所定回転数(回転角度)を回動して停止するように回動制御可能に構成されている。本例においては、12回転(4320°)して停止するように設定した。
【0034】
セルフロック減速機12は、図2及び図4に示すごとく、駆動部11の軸線と同軸上で、かつ駆動部11と連結部13との間に配されている。セルフロック減速機12は、駆動部11からの入力のみによって回動可能であると共に連結部13側からの入力に対しては回動しないよう構成されている。本例において、セルフロック減速機12の減速比は、1/72に設定してある。したがって、駆動部11によってセルフロックナットの入力軸を12回転(4320°)させると、セルフロック減速機12の出力軸に配された連結部13には、1/6周(60°)の回動が出力される。また、セルフロック減速機12の出力軸に出力されるトルクは、セルフロック減速機12に入力されたトルクの72倍となる。
【0035】
回動手段10は、図4に示すごとく、上方から見たとき略矩形形状をなす第1プレート61上に固定ブラケットを介して固定されており、その回転中心軸線と、エンジン81の回転軸812における中心軸線とが略平行となるように配されている。
【0036】
第1プレート61の下方には、図4及び図5に示すごとく、回動手段10を昇降させるための昇降手段2を配してある。
昇降手段2は、上下方向Zにスライド可能に構成された昇降スライド部21と、回動手段10を昇降させる際の操作力を低減するためのカウンターウェイト24を有している。
【0037】
昇降スライド部21は、第1プレート61に配された4本の昇降スライドバー211と、各昇降スライドバー211をそれぞれスライド可能に挿通する4つの昇降ガイド部212とからなる。昇降スライドバー211は、第1プレート61における4つの角部の下面からそれぞれ垂下するように配されている。
【0038】
昇降ガイド部212は、第1プレート61の下方において第1プレート61と対向して配された略矩形形状をなす第2プレート62の上面に配設してある。昇降ガイド部212は、略円筒状をなしており、第2プレート62の上面において昇降スライドバー211に対応した位置に配されている。また、第2プレート62には、昇降ガイド部212の内周部と連通した4つの貫通孔が形成されており、昇降スライドバー211を挿通可能に構成されている。昇降ガイド部212に対して、昇降スライドバー211をスライドさせることにより、第1プレート61上に搭載された回動手段10を上下方向Zに昇降させることができる。
【0039】
昇降部2は、図5に示すごとく、支点Pを中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアーム22を有している。アーム22は、第2プレート62の上面に配された支点ブラケット623において、支点Pを中心に揺動可能で、軸方向Xに直交して配されている。
【0040】
アーム22において第1プレート61の下方に配された端部には、回転可能に配されたローラ23を備えており、このローラ23は、第1プレート61の下面に垂下して配された当接板611の下面に当接している。また、アーム22のもう一方の端部にはカウンターウェイト24を連結してある。
【0041】
また、図5に示すごとく、第1プレート61において前後方向Yの後方側端部の下面には、後方に向かって延設された第1延長プレート612を配してある。図6及び図7に示すごとく、第1延長プレート612には、後述するギア操作レバー411を挿通する第1挿通穴613が形成されている。第1挿通穴613は、長手方向が前後方向Yとなる長穴形状を有している。また、第1挿通穴613の後方側の位置には、回動手段10を移動させる際に用いるグリップ部614を配してある。
【0042】
第2プレート62の下方には、回動手段10を軸方向Xに進退させる進退手段3を備えている。
進退手段3は、図4及び図5に示すごとく、軸方向Xにスライド可能に配された進退スライド部31と、回動手段10の位置を固定する固定手段4とを備えている。
【0043】
進退スライド部31は、図4に示すごとく、2本の進退ガイドバー311と、進退ガイドバー311上を移動可能に配された進退スライダー312とからなる。
2本の進退ガイドバー311は、第2プレート62の下方に配された第3プレート63の上面に配してある。2本の進退ガイドバー311は、前後方向Yにおいて並列に配されており、各進退ガイドバー311は軸方向Xと平行となるように配されている。
【0044】
第2プレート62の下面には、図4に示すごとく、進退ガイドバー311上を移動可能に構成された4つの進退スライダー312を配設してある。進退スライダー312は、1本の進退ガイドバー311に2つずつ配してある。進退スライド部31は、進退ガイドバー311上において進退スライダー312をスライドさせることにより、第2プレート62上に搭載された回動手段10、第1プレート61及び昇降手段2を軸方向Xに移動することができる。尚、第3プレート63は、軸方向Xへの移動手段は有しておらず、軸方向Xにおいては台車部7と一体に配される。
【0045】
固定手段4は、図5〜図7に示すごとく、軸方向Xへの移動において、第2プレート62と一体に配された第1ラックギア41と、第3プレート63と一体に配された第2ラックギア42とを備えている。
第1ラックギア41は、第2プレート62の上面に配された第2延長プレート621の下面に配された2つのギアスライド部412によってスライド可能に配されている。
第2延長プレート621は、第2プレート62において前後方向Yの後方に配された端部から、後方に向かって延設されている。第2延長プレート621には、後述するギア操作レバー411を挿通する第2挿通穴622が形成されている。第2挿通穴622は、長手方向が前後方向Yとなる長穴形状を有している。
【0046】
2つのギアスライド部412は、図6及び図7に示すごとく、軸方向Xにおいて並列に配されると共に、前後方向Yにスライド可能に構成されている。ギアスライド部412は、第2プレート62の下面に配されたギアガイド部413と、ギアガイド部413にスライド可能に配されるギアスライドバー414とからなる。2つのギアスライド部412がそれぞれ有するギアスライドバー414の先端部を繋ぐように第1ラックギア41が配されている。ギアガイド部413には、ギアスライドバー414を挿通したコイルスプリングを配してあり、第1ラックギア41を前方側に向かって付勢している。第1ラックギア41は、その歯面が前後方向Yの前方側に位置するように配してある。また、第1ラックギア41の上部には、第1ラックギア41を前後方向Yの後方側に移動するためのギア操作レバー411を配してある。
【0047】
ギア操作レバー411は、図5に示すごとく、上述した第1延長プレート612及び第2延長プレート621にそれぞれ形成した第1挿通穴613及び第2挿通穴622に挿通して配される。通常時において、第1延長プレート612の挿通穴と並んで配されたグリップ部614とギア操作レバー411との間には間隙が形成されている。グリップ部614とギア操作レバー411とを一緒に握り、ギア操作レバー411をグリップ部614側に移動させることにより、コイルスプリングの反力に抗して、第1ラックギア41を後方側に移動することができる。
【0048】
第2ラックギア42は、図5に示すごとく、第3プレート63の上面において前後方向Yの後方端部から立設されたラックギア保持部631の上端部に配されている。図6及び図7に示すごとく、第2ラックギア42は、その歯面を第1ラックギア41の歯面に対向させると共に、第1ラックギア41の進退可能範囲全域に連続して配されている。上記のごとく、第1ラックギア41は、コイルスプリングにより前後方向Yの前方側に向かって付勢されているため、通常時において、第1ラックギア41と第2ラックギア42とは、互いに係合した係合状態(図6)にある。
【0049】
図2及び図3に示すごとく、第3プレート63の下方には、回動手段10の前後方向Yにおける位置を調整するための前後位置調整部5を配してある。前後位置調整部5は、第3プレート63の下面と台車部7が有する上板部との間に配されており、前後方向Yにスライド可能なスライド構造を有している。前後位置調整部5は台車部7の上面において、前後方向Yと平行に配された2本の前後方向ガイドバー51と第3プレート63の下面に配された4つの前後方向スライダー52とからなる。前後方向スライダー52は、1本の前後方向ガイドバー51に対して2つずつ、前後方向Yに直列に配されている。
【0050】
前後位置調整部5には、図3に示すごとく、前後方向ガイドバー51を挿通したコイルスプリングを配してある。コイルスプリングは、1つの前後方向ガイドバー51に2つずつ、直列に配された2つの前後方向スライダー52の前方側及び後方側の位置に配してある。2つのコイルスプリングにより付勢された第3プレート63は、通常時において、前後方向ガイドバー51の略中央位置に配される。
【0051】
図2及び図3に示すごとく、台車部7は、骨格をなすフレーム部71と、台車部7の移動をエンジン81の移動に同期させる同期手段72を備えている。
フレーム部71の内側には、駆動部11であるナットランナーの回転を制御するコントローラ部111を配してある。コントローラ部111は、図示しない作動ボタンを備えており、作動ボタンを一回押すごとにナットランナーが所定回転数ずつ回動するよう設定してある。
フレーム部71の上部には、上述した前後位置調整部5をなす前後方向ガイドバー51を配した上板部を備えている。
【0052】
また、フレーム部71の下部には、前後方向Yのみに移動可能に構成された車輪部76をそれぞれ配してある。4つの車輪部76のうち、軸方向Xの基端側に配された2つの車輪部76の車輪の外周面には、円周方向に配された凹溝部761を形成してあり、床面上に製造ラインに沿って配された円柱状のレール85と嵌合可能に構成されている。尚、台車部7は、車輪部76を用いることでレール85を配していない床面上においても走行可能に構成されている。
【0053】
図2に示すごとく、同期手段72は、エンジン81を搬送するエンジン載置台84と係合する係合部73と、係合部73を伸張させる伸張機構部74とからなる。
係合部73は、係合スライド部731をなす係合スライドバー732の先端に配されており、係合スライドバー732は係合ガイド部733にスライド可能に挿通保持されている。係合ガイド部733は、軸方向Xの先端側でかつ前後方向Yの前方側の位置に上下方向Zに配されたフレームの前面に配してある。また、係合スライド部731は、軸方向Xにスライド可能に構成されている
【0054】
図2及び図8に示すごとく、伸張機構部74は、係合部操作レバー741と、屈曲バー742と、揺動バー746とにより構成されている。
屈曲バー742は、図2に示すごとく、前後方向Yと垂直な平面上に配されており、互いに鋭角に形成された短尺部743と長尺部744とからなる。通常時において、屈曲バー742は短尺部743が軸方向Xと平行となると共に、長尺部744が下方に位置するように配されている。また、屈曲バー742は、短尺部743と長尺部744との接続部に配された軸部745を回転中心として、揺動可能に配されている。短尺部743の端部には係合部操作レバー741が連結されており、長尺部744の端部には揺動バー746が連結されている。
【0055】
揺動バー746は、図8に示すごとく、ストレート状をなしており、上下方向Zと垂直な平面上に配されている。揺動バー746と屈曲バー742とは、伸張スライド部748の伸張スライダー749を介して、連結されている。伸張スライド部748は、軸方向Xに平行に配された伸張スライドバー750と、伸張スライドバー750上を移動可能に構成された伸張スライダー749とからなる。また、揺動バー746は、下方に配されたフレーム部71に形成された揺動軸747を中心に揺動可能に配されている。屈曲バー742と連結した端部と反対の端部は、係合スライド部731の係合スライドバー732に回転可能に連結されている。
【0056】
上記のごとく構成された回動装置1を用いて、エンジン81の回転軸812を回動させる。
まず、台車部7に備えた同期手段72によってエンジン81の移動と回動装置1の移動とを同期させる。同期手段72は、図1に示すごとく、係合部操作レバー741を押し下げ、係合部73をエンジン載置台84と係合する。係合部操作レバー741を押し下げることにより、屈曲バー742の長尺部744の端部と、屈曲バー742の長尺部744の端部に連結された揺動バー746の端部とが軸方向Xにおける基端側へと移動する。このとき、図8に破線で示すごとく、揺動バー746は揺動軸747を中心として揺動するため、係合スライド部731の係合スライドバー732と連結された揺動バー746の端部は軸方向Xにおける先端側へと移動し、係合スライドバー732をエンジン載置台84に向かって伸張させる。これにより、係合スライドバー732の先端に配された係合部73をエンジン載置台84と係合し、エンジン81と回動装置1の移動を同期させることができる。
【0057】
次いで、回動手段10の連結部13をエンジン81の回転軸812と連結する。
回動手段10の上下方向Zへの昇降移動は、第1プレート61のグリップ部614を上下方向Zに移動させることにより行う。図9に示すごとく、グリップ部614を上方へ移動することにより、回動手段10を上方へ移動することができる。また、図10に示すごとく、グリップ部614を下方へ移動することにより、回動手段10を下方へ移動することができる。このとき、アーム22に配されたカウンターウェイト24の自重による下側に向かう力は、支点Pを中心にして揺動可能に配されたアーム22を介して、回動手段10を上側に持ち上げようとする力へと変換され、回動手段10を昇降させる際の操作力が低減される。
【0058】
また、回動手段10を上昇させるとアーム22に配されたカウンターウェイト24の上下方向Zにおける位置は下降し、回動手段10を上昇させるとアーム22に配されたカウンターウェイト24の上下方向Zにおける位置は上昇する。これにより、アーム22のローラ23を当接板611に当接させ続けることができる。したがって、カウンターウェイト24による、回動手段10を昇降させる際の操作力低減効果は継続して作用する。
【0059】
回動手段10の前後方向Yにおける位置調整は、グリップ部614を前後方向Yへ移動させることにより行う。グリップ部614を前後方向Yへと移動させ、前後スライド部が備えるコイルスプリングの付勢力に抗して、前後スライド部をスライドさせることにより回動手段10を前後方向Yへと移動させることができる。
【0060】
回動手段10の軸方向Xへの移動は、第1プレート61のグリップ部614を軸方向Xに移動させることにより行う。図6に示すごとく、通常時、進退スライド部31は、固定手段4によって固定されているため、固定手段4をなす第1ラックギア41と第2ラックギア42との係合を解除する。第1ラックギア41と第2ラックギア42との係合解除は、図7に示すごとく、グリップ部614と並んで配されたギア操作レバー411を操作して行う。グリップ部614とギア操作レバー411を一緒に握ることにより、ギア操作レバー411をグリップ部614側(後方側)へと移動させる。このとき、ギア操作レバー411と連結された第1ラックギア41は、コイルスプリングの反力に抗して、後方側に移動する。これにより、第1ラックギア41と第2ラックギア42との係合が解除され、進退スライド部31によって回動手段10を移動させることができる。
【0061】
図11に示すごとく、グリップ部614を軸方向Xの先端側に移動させることにより、進退スライド部31によって回動手段10を軸方向の先端側に移動させ、連結部13とエンジン81の回転軸812とを連結させる。その後、ギア操作レバー411を離すことで、コイルスプリングの付勢力によって第1ラックギア41が前方に移動すると共に第2ラックギア42と係合する。これにより連結部13と回転軸812とを連結した状態で維持することができる。
尚、回動手段10における軸方向Xへの移動、前後方向Yへの移動及び上下方向Zへの移動は、同時に行うことができる。この場合には、回動手段10の連結部13と上記回転軸812との位置合わせを容易かつ効率よく行うことができる。
【0062】
回動手段10の連結部13とエンジン81の回転軸812とを連結した後、駆動部11によって回転軸812を回動させる。コントローラ部111が有する作動ボタンを押すことで、ナットランナーは12回転する。ナットランナーによって入力軸を12回転されたセルフロック減速機12は、出力軸において60°の回動力を出力する。これにより、連結部13と連結した回転軸812を介してドライブプレート813を60°回動することができる。
【0063】
作業口83においてドライブプレート813とトルクコンバータ821とをボルトによって締結した後、再度ドライブプレート813を回動させる。このようにボルトの締結作業と、ドライブプレート813の回動とを交互に行い、6箇所のボルト穴822にボルトを締結する。ボルトの締結作業が完了した後、上述した手順と逆の手順によって、回動手段10の連結部13とエンジン81の回転軸812との連結を解除する。ついで、台車部7とエンジン載置台84との係合を解除し、回動装置1を初期位置へと移動させる。
【0064】
次に本例の作用効果について説明する。
回動装置1において、昇降手段2は、支点Pを中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアーム22を有し、該アーム22の一端を回動手段10に連結すると共に、他端をカウンターウェイト24に連結して、該カウンターウェイト24によって回動手段10を昇降させる際の操作力を低減してある。
【0065】
すなわち、カウンターウェイト24の自重によって、アーム22におけるカウンターウェイト24を配した側の端部にかかる下向きの力は、アーム22を介することによって、回動手段10を配した側の端部においては上向きの力に変換される。この上向きの力によって、回動手段10の昇降を補助することにより、回動手段10を昇降させる操作力を低減することができる。したがって、回動手段10を小さな操作力で容易に昇降させることができる。
【0066】
また、上記のごとく、回動手段10を小さな操作力で容易に昇降させられるため、昇降シリンダー等の装置を用いることなく、作業者の人力によって回動手段10を昇降させることもできる。これにより、回動装置1を小型化すると共に、簡単な構造によって構成することができる。したがって、回動装置1にかかる設備費用を低減し、回動装置1を安価にすることができる。
【0067】
また、アーム22は、回転軸812に直交する方向に配置されている。そのため、アーム22の揺動範囲と回動手段10の進退範囲とは、互いに影響を受けにくい。それゆえ、アーム22及び回動装置1をそれぞれスペース的に無駄のない理想的な位置に配置することができ、回動装置1の大きさを小さくすることができる。仮にアーム22が軸方向Xに配された場合、アーム22の揺動範囲と回動手段10の進退範囲とが重なるおそれがある。この場合、アーム22の揺動範囲と回動手段10の進退範囲とが影響を受けないように、アーム22と回動手段10を離れた位置に配置する必要があり、回動装置1の大きさが大きくなる。
【0068】
また、回動装置1は、床面上を走行可能に構成された台車部7を有している。上述のごとく回動装置1は小型化が可能であるため、回動装置1を台車部7によって容易に移動することができる。これにより、回動装置1の移設作業性を向上することができる。また、従来の上方から吊り下げて配された回動装置に比べて、構造を簡略化すると共に、移設作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0069】
また、回動手段10は、回動力を発生させる駆動部11と、該駆動部11と連結部13との間に配されたセルフロック減速機12とを有しており、該セルフロック減速機12は、駆動部11からの入力のみによって回動可能であると共に連結部13側からの入力に対しては回動しないよう構成されている。そのため、回転軸812を回動させた際に、エンジン81から回転軸812に反力又は回転力が伝達されても、駆動部11によって、回転軸812を正しく回動させることができる。
【0070】
すなわち、回転軸812を回動させると、回転軸812と連結されたピストンがエンジン81内で移動する。ピストンの位置が、エンジン81駆動時のサイクルにおける圧縮域にある場合、回転軸812の回動方向と反対に作用する反力が加わる。また、ピストンの位置が、エンジン81駆動時のサイクルにおける膨張域にある場合、回転軸812の回動方向に向かって作用する回転力が加わる。セルフロック減速機12は、連結部13側からの入力に対しては回動しないように構成されているため、回転軸812に反力及び回転力が伝達されたとしても駆動部11へと伝達されない。
【0071】
さらに、駆動部11を駆動した際に発生するトルクは、セルフロック減速機12を介することにより、セルフロック減速機12の減速比に比例して増大する。そのため、セルフロック減速機12を所望の減速比に設定することにより、回転軸812に反力や回転力が生じた際にも、回転軸812を正しく回動させることができる。
また、上記のごとく、セルフロック減速機12によって、駆動部11が発生するトルクを増大させることができる。そのため、駆動部11の出力を低減し小型化することができる。
【0072】
また、回動手段10の駆動部11は、所定回転数又は所定回転角度を回動して停止するよう回動制御可能に構成してある。そのため、回転軸812を所望の回動角度ずつ回転させることができる。したがって、回転軸812の回転方向における位置出しを容易に行うことができ、回転軸812の回動作業を効率よく行うことができる。
【0073】
また、進退手段3は、軸方向Xにおいて回動手段10の位置を固定する固定手段4を備えている。そのため、回動手段10を進退手段3の進路上における所望の位置に固定することができる。したがって、連結部13と回転軸812とを連結させた状態で回動手段10の位置を固定することにより、連結部13と回転軸812との連結状態を維持することができる。これにより、回転軸812を回動させる際に、連結部13と回転軸812とを確実に連結させておくことができる。また、連結部13と回転軸812とを連結させるために、回動手段10を回転軸812に向かって押圧するためにシリンダー等の装置を配する必要がない。それゆえ、回動装置1を小型化すると共に簡単な構造とすることができる。
【0074】
また、固定手段4は、進退手段3において回動手段10と一体に移動する第1ラックギア41と、進退手段3において台車部7と一体に移動する第2ラックギア42とを備えており、第1ラックギア41と第2ラックギア42とは係合状態と非係合状態とに切換え可能に構成されている。そのため、第1ラックギア41と第2ラックギア42とを、係合状態と非係合状態とに切り換えることで、容易に進退手段3を移動可能な状態と固定状態とに切り換えることができる。
【0075】
また、回動装置1は、エンジン81が順次移動してくる製造ラインに配設されており、台車部7はエンジン81の移動に同期する同期手段72を備えている。そのため、同期手段72によって、上記製造ライン上を移動するエンジン81と共に回動装置1を移動させることができる。これにより、エンジン81と回動装置1の移動を同期させながら、回動装置1によって回転軸812を容易に回動することができる。
【0076】
また、同期手段72を介して、エンジン81を移動させる推進力を回動装置1に伝達することができる。したがって、回動装置1を移動させるための駆動源を、回動装置1に設ける必要がなくなり、回動装置1を小型化すると共に、その構造をより簡単とすることができる。
【0077】
また、回動装置1は、エンジン81の回転軸812に設けられたドライブプレート813と、エンジン81と固定されるオートマチックトランスミッション82が備えるトルクコンバータ821とを固定する際に用いることができる。ドライブプレート813とトルクコンバータ821とは、ボルトを締結することによって互いに固定される。このボルトの締結作業は、ドライブプレート813を所望の角度ずつ回動して行うため、ドライブプレート813と連動するエンジン81の回転軸812を、回動装置1を用いて回動させることにより、ドライブプレート813を容易に回動させることができる。
【0078】
以上のごとく、本例によれば、小型で、かつ容易に移設が可能な回動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 回動装置
10 回動手段
13 連結部
2 昇降手段
22 アーム
24 カウンターウェイト
3 進退手段
7 台車部
81 エンジン
812 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の製造過程において、エンジンに組み付けられている回転軸を回動させるための回動装置であって、
上記回転軸との連結部を有すると共に該連結部を介して上記回転軸に回動力を伝達する回動手段と、
該回動手段を昇降させる昇降手段と、
上記回動手段を上記軸方向に進退させる進退手段と、
上記回動手段、上記昇降手段及び上記進退手段を搭載すると共に床面上を走行可能に構成された台車部とを有しており、
上記昇降手段は、支点を中心にしてその両端が揺動可能なように配設されたアームを有し、該アームの一端を上記回動手段に連結すると共に、他端をカウンターウェイトに連結して、該カウンターウェイトによって上記回動手段を昇降させる際の操作力を低減してあり、
かつ、上記アームは、上記回転軸に直交する方向に配置されていることを特徴とする回動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回動装置において、上記回動手段は、回動力を発生させる駆動部と、該駆動部と上記連結部との間に配されたセルフロック減速機とを有しており、該セルフロック減速機は、上記駆動部からの入力のみによって回動可能であると共に上記連結部側からの入力に対しては回動しないよう構成されていることを特徴とする回動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回動装置において、上記回動手段の上記駆動部は、所定回転数又は所定回転角度を回動して停止するよう回動制御可能に構成されていることを特徴とする回動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回動装置において、上記進退手段は、軸方向において上記回動手段の位置を固定する固定手段を備えていることを特徴とする回動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回動装置において、上記固定手段は、上記進退手段において上記回動手段と一体に移動する第1ラックギアと、上記進退手段において上記台車部と一体に移動する第2ラックギアとを備えており、上記第1ラックギアと上記第2ラックギアとは係合状態と非係合状態とを切換え可能に構成されていることを特徴とする回動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の回動装置において、該回動装置は、上記エンジンが順次移動してくる製造ラインに配設されており、上記台車部は上記エンジンの移動に同期する同期手段を備えていることを特徴とする回動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の回動装置において、上記エンジンの上記回転軸に設けられたドライブプレートと、上記エンジンと固定されるオートマチックトランスミッションが備えるトルクコンバータとを固定する際に用いられることを特徴とする回動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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