回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術
【課題】回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術の提供。
【解決手段】本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。一態様では、本発明は、入射光の回折限界未満の距離で隔てられた2つ以上の物体からの光を決定することおよび/または画像化することに関する。例えば、これらの物体は、約1000nm未満の距離で隔てられていてもよく、可視光の場合には、約300nm未満の距離で隔てられていてもよい。ある一連の実施形態では、これらの物体を選択的に活性化してもよい。すなわち、他の物体を活性化させることなく、1つの物体を活性化して光を発生させることができる。第1の物体を活性化し、決定し(例えば、その物体から放射される光を決定することによって)、第2の物体を活性化し、決定してもよい。これらの物体は、お互いに固定されていてもよく、および/または共通の物体に固定されていてもよい。
【解決手段】本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。一態様では、本発明は、入射光の回折限界未満の距離で隔てられた2つ以上の物体からの光を決定することおよび/または画像化することに関する。例えば、これらの物体は、約1000nm未満の距離で隔てられていてもよく、可視光の場合には、約300nm未満の距離で隔てられていてもよい。ある一連の実施形態では、これらの物体を選択的に活性化してもよい。すなわち、他の物体を活性化させることなく、1つの物体を活性化して光を発生させることができる。第1の物体を活性化し、決定し(例えば、その物体から放射される光を決定することによって)、第2の物体を活性化し、決定してもよい。これらの物体は、お互いに固定されていてもよく、および/または共通の物体に固定されていてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明の様々な局面へ導く研究は、少なくとも一部を、高等研究計画局および国立衛生研究所によって後援された。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、優先権関連の以下の列挙のすべてに対する優先権を主張する。本出願は、2006年11月29日に出願された米国仮特許出願第11/605,842号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution and other Imaging Techniques」)に対する優先権を主張し、この米国仮特許特許出願第11/605,842号は、2006年8月7日に出願された米国仮特許特許出願第60/836,167号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution」)の優先権、および2006年8月8日に出願された米国仮特許特許出願第60/836,170号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution」)の利益を主張する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
蛍光顕微鏡法は、分子生物学および細胞生物学、およびその他の非侵襲性の時間分解画像化用途において広く使用されている。これらの利点にもかかわらず、標準的な蛍光顕微鏡法は、光の回折によって解像度に限界があるため、超微細構造の画像化には有用ではない。この回折限界を超えるために、近接場光学顕微鏡法(NSOM)、多光子蛍光、誘導放出抑制(STED)、可逆的飽和性光学蛍光遷移(reversible saturable optical linear fluorescence transition)(RESOLFT)および飽和構造化照射顕微鏡法(saturated structured−illumination microscopy)(SSIM)を含むいくつかのアプローチが用いられているが、どれも不満の残る限界を有している。電子顕微鏡法は、生体サンプルの高解像度画像化のために使用されることが多いが、電子顕微鏡法は、光ではなく電子を使用し、電子を調製する必要があるため、生体サンプルに用いるのは困難である。したがって、蛍光顕微鏡法の利点を、生体サンプルおよび他のサンプルの超高解像度画像化法に活用する、新しい技術が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目2)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが異なる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが実質的に同じである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の物体および前記第2の物体が、異なる波長によって活性化される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の物体および前記第2の物体が、実質的に同じ波長によって活性化される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記第1の物体を活性化させ、前記第1の物体から放射される光を発生することを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が活性化する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第1の物体から放射される光を発生させないように、前記第1の物体を不活性化することを含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記第2の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記第2の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記第1の物体を不活性化することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1の物体を不活性化させる工程の後に、前記第2の物体を活性化し、光を発生させる工程が行われる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1の物体が、前記第2の物体とは化学的に異なっている、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記第1の物体が、前記第2の物体と化学的に実質的に同じである、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記第1の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブであり、前記第2の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記第1の物体が、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記第1の物体が、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記第2の物体が、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記第2の物体が、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記第1の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目22に記載の方法。
(項目31)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目22に記載の方法。
(項目32)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目22に記載の方法。
(項目33)
前記第2の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目22に記載の方法。
(項目34)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目33に記載の方法。
(項目39)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目33に記載の方法。
(項目40)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目33に記載の方法。
(項目41)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目33に記載の方法。
(項目42)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目33に記載の方法。
(項目43)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目33に記載の方法。
(項目44)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目33に記載の方法。
(項目45)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目33に記載の方法。
(項目46)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目33に記載の方法。
(項目47)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目33に記載の方法。
(項目48)
前記第1の物体および前記第2の物体がスイッチング可能である、項目1に記載の方法。
(項目49)
前記第1の物体から放射される光が可視光である、項目1に記載の方法。
(項目50)
前記第1の物体および前記第2の物体が、共通の物体に固定される、項目1に記載の方法。
(項目51)
前記共通の物体が生体分子複合体を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記共通の物体が生体分子を含む、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記生体分子が核酸である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記第1の物体と前記第2の物体とを隔てている塩基の数を決定することをさらに含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記生体分子がDNAである、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記生体分子がRNAである、項目53に記載の方法。
(項目57)
前記生体分子がPNAである、項目53に記載の方法。
(項目58)
前記生体分子がタンパク質である、項目52に記載の方法。
(項目59)
前記共通の物体が細胞である、項目50に記載の方法。
(項目60)
前記共通の物体が組織である、項目50に記載の方法。
(項目61)
前記共通の物体が生体物質ではない、項目50に記載の方法。
(項目62)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程とを繰り返す、項目1に記載の方法。
(項目63)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程が、前記第1の物体から放射される光の画像を得ることを含む、項目1に記載の方法。
(項目64)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目65)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目65に記載の方法。
(項目68)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目69)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約100nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目70)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約50nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目71)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約20nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目72)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、前記第1の物体および/または前記第2の物体から放射される光の波長未満の精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目73)
前記第1の物体と前記第2の物体とが、約700nm未満の距離によって隔てられている、項目1に記載の方法。
(項目74)
前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記第1の物体から放射される光の波長または前記第2の物体から放射される光の波長未満の距離によって隔てられている、項目1に記載の方法。
(項目75)
第1の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、項目1に記載の方法。
(項目76)
2つ以上の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目77)
前記工程が、列挙した順に行われる、項目1に記載の方法。
(項目78)
約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体を活性化し、前記第2の物体を活性化しないことと;
前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体を活性化することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目79)
ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目80)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが異なる、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目82)
前記第1の物体を活性化するのに使用する光の波長と、前記第2の物体を活性化するのに使用する光の波長とが異なる、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記第1の物体を活性化するのに使用する光の波長と、前記第2の物体を活性化するのに使用する光の波長とが実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目84)
前記第1の物体を活性化させ、前記第1の物体から放射される光を発生することを含む、項目79に記載の方法。
(項目85)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が活性化する、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記第1の物体から放射される光を発生させないように、前記第1の物体を不活性化することを含む、項目84に記載の方法。
(項目87)
前記第2の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目86に記載の方法。
(項目89)
前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目79に記載の方法。
(項目90)
前記第2の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記第1の物体を不活性化することをさらに含む、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記第1の物体を不活性化させる工程の後に、前記第2の物体を活性化し、光を発生させる工程が行われる、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記第1の物体が、前記第2の物体とは化学的に異なっている、項目79に記載の方法。
(項目94)
前記第1の物体が、前記第2の物体と化学的に実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目95)
前記第1の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブであり、前記第2の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目79に記載の方法。
(項目96)
前記第1の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目79に記載の方法。
(項目97)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目96に記載の方法。
(項目99)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目96に記載の方法。
(項目100)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目96に記載の方法。
(項目101)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目96に記載の方法。
(項目102)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目96に記載の方法。
(項目103)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目96に記載の方法。
(項目104)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目96に記載の方法。
(項目105)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目96に記載の方法。
(項目106)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目96に記載の方法。
(項目107)
前記第2の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目79に記載の方法。
(項目108)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目107に記載の方法。
(項目110)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目107に記載の方法。
(項目111)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目107に記載の方法。
(項目112)
前記第1の物体から放射される光が可視光である、項目79に記載の方法。
(項目113)
前記第1の物体および前記第2の物体が、共通の物体に固定される、項目79に記載の方法。
(項目114)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程とを繰り返す、項目79に記載の方法。
(項目115)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程が、前記第1の物体から放射される光の画像を得ることを含む、項目79に記載の方法。
(項目116)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目117)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目116に記載の方法。
(項目118)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目117に記載の方法。
(項目120)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目79に記載の方法。
(項目121)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、前記第1の物体または前記第2の物体から放射される光の波長よりもおおきな精度で決定される、項目79に記載の方法。
(項目122)
第1の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、項目79に記載の方法。
(項目123)
2つ以上の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目124)
ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体を活性化し、前記第2の物体を活性化しないことと;
前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体を活性化することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目125)
光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、放射される光の波長未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供することと;
前記複数の物体の一部分を活性化し、光を放射させることと;
前記放射される光を決定することと;
前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化することと;
前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返して、前記複数の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目126)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長で光を放射する、項目125に記載の方法。
(項目127)
前記複数の物体が、各々実質的に同じ波長で光を放射する、項目125に記載の方法。
(項目128)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長の光によって活性化される、項目125に記載の方法。
(項目129)
前記複数の物体が、実質的に同じ波長の光によって活性化される、項目125に記載の方法。
(項目130)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体に照射することによって、前記複数の物体の一部分が活性化する、項目125に記載の方法。
(項目131)
第2の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目125に記載の方法。
(項目132)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目125に記載の方法。
(項目133)
前記複数の物体の少なくともいくつかが化学的に異なっている、項目125に記載の方法。
(項目134)
前記複数の物体が化学的に実質的に同じである、項目125に記載の方法。
(項目135)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目125に記載の方法。
(項目136)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目125に記載の方法。
(項目137)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目136に記載の方法。
(項目138)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目136に記載の方法。
(項目139)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目136に記載の方法。
(項目140)
前記複数の物体の第1部分が化学的に実質的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目136に記載の方法。
(項目141)
前記放射光が可視光である、項目125に記載の方法。
(項目142)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、共通の物体に固定される、項目125に記載の方法。
(項目143)
前記放射光を決定する工程が、前記放射光の画像を得ることを含む、項目125に記載の方法。
(項目144)
前記複数の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目125に記載の方法。
(項目145)
前記複数の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目144に記載の方法。
(項目146)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目145に記載の方法。
(項目147)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目145に記載の方法。
(項目148)
前記複数の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目125に記載の方法。
(項目149)
前記複数の物体の位置が、前記複数の物体から放射される光の波長よりも大きな精度で決定される、項目125に記載の方法。
(項目150)
第1の時間点で前記複数の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記複数の物体の位置を決定することとを含む、項目125に記載の方法。
(項目151)
2つ以上の時間点で前記複数の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目125に記載の方法。
(項目152)
前記工程が、列挙した順に行われる、項目125に記載の方法。
(項目153)
光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、約1000nm未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供することと;
前記複数の物体の一部分を活性化し、光を放射させることと;
前記放射される光を決定することと;
前記複数の物体の前記活性化した部分を不活性化することと;
前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目154)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長で光を放射する、項目153に記載の方法。
(項目155)
前記複数の物体が、各々実質的に同じ波長で光を放射する、項目153に記載の方法。
(項目156)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長の光によって活性化される、項目153に記載の方法。
(項目157)
前記複数の物体が、実質的に同じ波長の光によって活性化される、項目153に記載の方法。
(項目158)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を活性化する、項目153に記載の方法。
(項目159)
第2の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目153に記載の方法。
(項目160)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目153に記載の方法。
(項目161)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目153に記載の方法。
(項目162)
前記プローブの少なくともいくつかが、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目161に記載の方法。
(項目163)
前記プローブの少なくともいくつかが、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目161に記載の方法。
(項目164)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目153に記載の方法。
(項目165)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目164に記載の方法。
(項目166)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目164に記載の方法。
(項目167)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目164に記載の方法。
(項目168)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、共通の物体に固定される、項目153に記載の方法。
(項目169)
前記放射光を決定する工程が、前記放射光の画像を得ることを含む、項目153に記載の方法。
(項目170)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目153に記載の方法。
(項目171)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目170に記載の方法。
(項目172)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目171に記載の方法。
(項目173)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目171に記載の方法。
(項目174)
前記複数の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目153に記載の方法。
(項目175)
前記複数の物体の位置が、前記第1の物体から放射される光の波長未満の精度で決定される、項目153に記載の方法。
(項目176)
第1の時間点で前記複数の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記複数の物体の位置を決定することとを含む、項目153に記載の方法。
(項目177)
約1000nm未満の距離で隔てられ、各々共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供することと;
第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動を決定することとを含む、方法。
(項目178)
ある距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記隔てられたある距離より大きな波長を有する前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動を決定することとを含む、方法。
(項目179)
時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定することと;
各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定することと;
各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築することとを含む、方法。
(項目180)
前記光放射領域の中心を同定する工程が、Gaussian関数に対する最少二乗法を用いることを含む、項目179に記載の方法。
(項目181)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目179に記載の方法。
(項目182)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目181に記載の方法。
(項目183)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目181に記載の方法。
(項目184)
前記1つの物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目179に記載の方法。
(項目185)
前記1つの物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目179に記載の方法。
(項目186)
前記1つ以上の光放射領域の位置を再構築したものを用いて、画像を作成することをさらに含む、項目179に記載の方法。
(項目187)
時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と;
各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と;
各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む方法を機械に実行させるために、媒体に組み込まれたプログラムを備える機械可読媒体を含む、物品。
(項目188)
約100nm/分未満のドリフトを有する顕微鏡用の移動ステージを備える、物品。
(項目189)
前記移動ステージが、約10nm/分未満のドリフトを有する、項目188に記載の物品。
(項目190)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を、プログラムされた様式で作動させ、停止させることが可能である、項目188に記載の物品。
(項目191)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を、周期的な様式で作動させ、停止させることが可能である、項目188に記載の物品。
(項目192)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源をシャッターを用いて調節することが可能である、項目189に記載の物品。
(項目193)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を音響光学変調器を用いて調節することが可能である、項目189に記載の物品。
(項目194)
前記移動ステージに光学的に連結した位置に光検出器をさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目195)
前記光検出器が、フォトダイオード、光電子増倍器またはCCDカメラを備える、項目194に記載の物品。
(項目196)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された2つ以上の光源をさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目197)
前記2つ以上の光源のうち少なくとも2つは、異なる波長で光を放射する、項目196に記載の物品。
(項目198)
光源から前記移動ステージに直接光があたるように配置された二色性ミラーまたは多色性ミラーを備える、項目189に記載の物品。
(項目199)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源と、前記移動ステージに照射する前に、前記光源から放射される光の少なくとも一部分を変えるように配置されたカラーフィルタとをさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目200)
第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とにスイッチング可能な、光を放射する物体を含む、画像化組成物。
(項目201)
前記光を放射する物体と区別可能であり、第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とにスイッチング可能な、第2の光を放射する物体をさらに含む、項目200に記載の画像化組成物。
(項目202)
前記光を放射する物体が、
前記第1の波長で光を放射可能な第1部分と;
外的刺激にさらされると、前記第1の部分を活性化させ、前記第1の波長で前記第1部分から光を放射させる第2部分とを含む、項目200に記載の画像化組成物。
(項目203)
励起波長を有する光にさらされると、前記第2部分が前記第1部分を活性化させる、項目202に記載の画像化組成物。
(項目204)
前記第1部分が前記第2部分と共有結合している、項目202に記載の画像化組成物。
(項目205)
前記第1部分および前記第2部分が、各々共通の物体に結合している、項目202に記載の画像化組成物。
(項目206)
前記第1部分が、前記第2部分から切り離されると蛍光性である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目207)
前記第2部分が、前記第1部分から切り離されると蛍光性である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目208)
前記第1部分が、Cy5、Cy5.5、Cy7またはAlexa Fluor 647である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目209)
前記第2部分が、Alexa Fluor 405、Cy2、Alexa Fluor
488、Cy3またはCy3.5である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目210)
前記第1部分および前記第2部分が、約50nm以下の距離で隔てられている、項目202に記載の画像化組成物。
(項目211)
前記光を放射する物体と区別可能な第2の光を放射する物体をさらに含み、この第2の光を放射する物体が、第1の波長で光を放射可能な第1部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分とを含み、それにより前記第1部分が前記第1の波長で光を放射する、項目202に記載の画像化組成物。
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。本発明の主題は、いくつかの場合には、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的な解決法、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる用途に関する。
【0006】
一態様では、本発明は、方法である。ある一連の実施形態では、この方法は、約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。別の一連の実施形態では、この方法は、約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化する工程と、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体を活性化する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0007】
本方法は、さらに別の一連の実施形態によれば、光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、約1000nm未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供する工程と、前記複数の物体の一部分を活性化して光を放射させる工程と、前記放射される光を決定する工程と、前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化する工程と、前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0008】
別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。さらに別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化する工程と、前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体を活性化する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0009】
ある一連の実施形態では、本方法は、光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、放射される光の波長未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供する工程と、前記複数の物体の一部分を活性化して光を放射させる工程と、前記放射される光を決定する工程と、前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化する工程と、前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0010】
別の一連の実施形態では、本方法は、約1000nm未満の距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動および/または構造の変化を決定する工程とを含む。いくつかの場合には、この物体は、時間内に解像されても画像化されてもよい。これらの物体の片方または両方は、いくつかの場合には、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。2つの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。さらに別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記隔てられたある距離より大きな波長を有する前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動および/または構造の変化を決定する工程とを含む。いくつかの場合にはこの物体は、時間内に解像されても画像化されてもよい。これらの物体の片方または両方は、いくつかの場合には、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。2つの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。
【0011】
さらに別の一連の実施形態では、本方法は、時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と、各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と、各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む。これらの物体のいくつかまたはすべては、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。これらの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。
【0012】
別の態様では、本発明は、約100nm/分未満のドリフトを有する顕微鏡用の移動ステージを備える物品、および/または周期的な様式および/またはプログラムされた様式でオンオフを切り替えることが可能な時間によって調節される光源を備える物品、および/または蛍光放射を検出するための検出器を備える物品に関する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、画像化組成物に関する。この組成物は、ある一連の実施形態によれば、第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とに可逆的または不可逆的にスイッチング可能な光を放射する物体を含む。一実施形態では、光を放射する物体は、前記第1の波長で光を放射可能な第1部分と、外的刺激にさらされると、前記第1の物体を活性化させ、前記第1の波長で前記第1部分から光を放射させる第2部分とを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行するシステムに関する。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムおよび技術に関する。たとえば、本発明の一実施形態は、時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と、各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と、各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む方法を機械に実行させるために、媒体に組み込まれたプログラムを備える機械可読媒体に関する。
【0015】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と組み合わせて考えると、本発明の非限定的な種々の実施形態に関する以下の詳細な記載から明らかになる。本明細書および参考として組み込まれた文献の開示内容が矛盾点および/または不一致点を含んでいる場合、本明細書の内容が優先する。参考として組み込まれた2つ以上の文献の開示内容が矛盾点および/または不一致点を含んでいる場合、最近の有効日付を有する文献の内容が優先する。
【0016】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照し、一例として記載する。図面は模式的なものであり、縮尺どおりに描画することを意図していない。図面では、同じ要素またはほぼ同じ要素は、典型的には同じ数字であらわしている。明確にするために、すべての要素に数字を付してはおらず、当業者が本発明を理解するのに、その要素の説明が必要ではない場合、本発明の各実施形態のすべての要素を示してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態による、回折限界以下の解像画像化の原理を示す。
【図1B】図1Bは、光スイッチング可能なCy3−Cy5部分を示す。
【図2】図2Aは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Bは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Cは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Dは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。
【図3A】図3Aは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3B】図3Bは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3C】図3Cは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3D】図3Dは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、Cy3−Cy5で標識された抗体のスイッチングの繰り返しを示す。
【図5】図5aは、本発明の別の実施形態におけるドリフト補正を示す。図5bは、本発明の別の実施形態におけるドリフト補正を示す。
【図6】図6は、本発明のさらに別の実施形態における、2分子のスイッチングの繰り返しを示す。
【図7A】図7Aは、Cy3の構造を示す。
【図7B】図7Bは、Cy5の構造を示す。
【図7C】図7Cは、Cy5.5の構造を示す。
【図7D】図7Dは、Cy7の構造を示す。
【図7E】図7Eは、結合したCy3−Cy5部分の一例を示す。
【図8】図8Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な種々の物体を示す。図8Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な種々の物体を示す。
【図9】図9Aは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。図9Bは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。図9Cは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。
【図10】図10Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Cは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Dは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Eは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Fは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。
【図11】図11Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。図11Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。図11Cは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。
【図12−1】図12Aは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。図12Bは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。図12Cは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。
【図12−2】図12Dは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。1つの態様では、本発明は、入射光の回折限界未満の距離で隔てられた2つ以上の物体からの光を決定することおよび/または画像化することに関する。例えば、これらの物体は、約1000nm未満の距離で隔てられていてもよく、または、可視光の場合には、約300nm未満の距離で隔てられていてもよい。ある一連の実施形態では、これらの物体を選択的に活性化してもよい。すなわち、他の物体を活性化させることなく、1つの物体を活性化して光を発生させることができる。第1の物体を活性化し、決定し(例えば、その物体から放射される光を決定することによって)、次いで、第2の物体を活性化し、決定してもよい。これらの物体は、お互いに固定されていてもよく、および/または共通の物体に固定されていてもよい。放射光を用い、例えば、Gaussianフィッティングまたは他の数学的技術を用い、いくつかの場合には、回折限界以下の解像によって、第1の物体の位置および第2の物体の位置を決定してもよい。したがって、本方法を使用し、例えば、共通の物体(例えば、表面または生物学的物体、例えば、DNA、タンパク質、細胞、組織、生体分子複合体など)に固定された(直接的または間接的に、例えばリンカーを介して)2つ以上の物体の位置を決定してもよい。これらの物体は、例えば時間によって変動する反応を決定するために、時間に対して決定されてもよい。本発明の他の態様は、回折限界以下の画像解像のためのシステム、回折限界以下の画像解像のためのコンピュータプログラムおよび技術、回折限界以下の画像解像を促進する方法、光スイッチング可能な物体を製造する方法などに関する。
【0019】
本発明の種々の態様では、光を放射可能な任意の物体を使用してもよい。物体は、いくつかの場合、1つの分子であってもよい。放射性物体の非限定例としては、蛍光物体(フルオロフォア)またはリン光発光物体、例えば、シアニン染料(例えば、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5,5、Cy7など)、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子または「量子ドット」または蛍光タンパク質、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)が挙げられる。他の光放射性物体は、当業者には容易に知られている。本明細書で使用される場合、用語「光」は、一般的に、任意の適切な波長(または同等の意味で、周波数)を有する電磁放射を指す。例えば、いくつかの実施形態では、上述の光は、光領域または可視光領域(例えば、約400nm〜約700nmの波長、すなわち「可視光」)、赤外波長(例えば、約300μm〜700nmの波長)、紫外波長(例えば、約400nm〜約10nmの波長)などの波長を含んでもよい。特定の場合には、以下に詳細に記載するように、2つ以上の物体を使用してもよい。すなわち、化学的に異なるかまたは別個の(例えば構造的に別個の)物体を使用してもよい。しかし、他の場合には、上述の物体は、化学的に同じであるか、または少なくとも実質的に化学的に同じであってもよい。
【0020】
ある一連の実施形態では、上述の物体は、「スイッチング可能」である。すなわち、上述の物体は、2つ以上の状態をスイッチング可能であり、この状態の少なくとも1つは、所望の波長を有する光を放射する。他の状態では、この物体は光を放射しなくてもよく、または異なる波長の光を放射してもよい。例えば、ある物体を「活性化」し、所望の波長を有する光を発生可能な第1の状態にし、「不活性化」して第2の状態にしてもよい。ある物体は、適切な波長の入射光によって活性化可能である場合、「光活性化可能」である。非限定例として、Cy5は、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式で、蛍光状態と暗状態とをスイッチング可能である。すなわち、633nmの赤色の光は、Cy5をスイッチングまたは不活性化して安定な暗状態にすることができ、532nmの緑色の光は、Cy5をスイッチングまたは活性化して蛍光状態に戻すことができる。いくつかの場合には、上述の物体は、例えば、適切な刺激にさらされると、2つ以上の状態を可逆的にスイッチング可能である。例えば、第1の刺激(例えば、第1の波長の光)を使用し、このスイッチング可能な物体を活性化してもよく、一方、第2の刺激(例えば、第2の波長の光)を使用し、このスイッチング可能な物体を不活性化し、例えば放射しない状態にしてもよい。任意の適切な方法を使用し、上述の物体を活性化してもよい。例えば、一実施形態では、適切な波長の入射光を使用し、上述の物体を活性化し、光を放射させてもよい。すなわち、上述の物体は、「光スイッチング可能」である。したがって、光スイッチング可能な物体は、例えば、異なる波長を有する入射光によって、異なる光を放射する状態または光を放射しない状態にスイッチングさせることができる。上述の光は、単色(例えば、レーザを用いて作成)または多色であってもよい。別の実施形態では、上述の物体を、電場および/または磁場によって刺激し、活性化してもよい。他の実施形態では、上述の物体は、例えば、pHを調整することによって、または物体が関与する可逆性化学反応を誘発することなどによって、適切な化学環境に置くことによって活性化してもよい。同様に、上述の物体を不活性化するために任意の適切な方法を使用してもよく、上述の物体を活性化し、不活性化する方法は同じである必要はない。例えば、上述の物体は、適切な波長の入射光を照射すると不活性化してもよく、または上述の物体は、十分な時間が経過することによって不活性化してもよい。
【0021】
典型的には、「スイッチング可能な」物体は、第1の状態で励起波長を照射すると、物体が光を放射し、例えば、スイッチングする波長を有する光を照射すると、第1の状態から第2の状態に物体がスイッチングし、第2の状態で励起波長を照射すると、物体が光を放射しない(または光を放射するが強度が非常に小さい)条件を決定することによって、当業者によって同定することができる。
【0022】
ある一連の実施形態では、記載したように、スイッチング可能な物体は、光を照射するとスイッチングしてもよい。いくつかの場合には、このスイッチング可能な物体を活性化するのに使用する光は、外的供給源由来のものであってもよい(例えば、蛍光源のような光源、このスイッチング可能な物体の近くにある、別の光を放射する物体など)。第2部分である光を放射する光を放射する物体は、いくつかの場合には、蛍光物体であってもよく、特定の実施形態では、第2部分である光を放射する光を放射する物体は、それ自身がスイッチング可能な物体であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、スイッチング可能な物体は、第1部分である光放射部分(例えば、フルオロフォア)と、第1部分を活性化させるか、または「スイッチング」させる第2部分とを備えている。例えば、光を照射すると、スイッチング可能な物体の第2部分は、第1部分を活性化させ、第1部分が光を放射してもよい。活性化部分の例としては、限定されないが、Alexa Fluor 405(Invitrogen)、Alexa 488(Invitrogen)、Cy2(GE Healthcare)、Cy3(GE Healthcare)、Cy3.5(GE Healthcare)またはCy5(GE Healthcare)または他の適切な染料が挙げられる。光放射部分の例としては、限定されないが、Cy5、Cy5.5(GE Healthcare)またはCy7(GE Healthcare)、Alexa Fluor 647(Invitrogen)または他の適切な染料が挙げられる。これらの部分は、例えば、直接的またはリンカーを介して、例えば共有結合によって結合し、例えば、限定されないが、Cy5−Alexa Fluor 405、Cy5−Alexa Fluor 488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor 405、Cy5.5−Alexa Fluor 488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor 405、Cy7−Alexa Fluor 488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5またはCy7−Cy5のような化合物を形成してもよい。Cy3、Cy5、Cy5,5およびCy7の構造を図7に示し、Cy3−Cy5の結合態様の非限定例を図7eに示す。当業者は、これらの化合物および他の化合物の構造を認識しており、これらの化合物の多くは市販されている。上述の部分は、例えば以下に詳細に記載するように、共有結合を介して、またはリンカーによって結合していてもよい。
【0024】
特定の場合では、光放射部分および活性化部分は、互いに切り離されると、それぞれフルオロフォア(すなわち、励起波長のような刺激にさらされると、特定の放射波長の光を放射する物体)になってもよい。しかし、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアとを含むスイッチング可能な物体を形成する場合、第1のフルオロフォアは、第1部分である光放射部分を形成し、第2のフルオロフォアは、刺激に応答して第1部分を活性化させるか、または「スイッチング」させる活性化部分を形成する。例えば、スイッチング可能な物体は、第2のフルオロフォアに直接結合した第1のフルオロフォアを含んでいてもよく、または第1の物体および第2の物体が、リンカーを介して、または共通の物体に結合していてもよい。光放射部分と活性化部分の対が適切なスイッチング可能な物体を生成するか否かは、当業者に既知の方法によって試験することができる。例えば、種々の波長を有する光を使用して、この対を刺激し、光放射部分から放射される光を測定し、この対が適切なスイッチとなるかどうかを決定することができる。
【0025】
非限定例としては、Cy3とCy5とを結合し、このような物体を形成してもよい。このような手順は、以下の実施例にさらに詳細に記載している。この例では、Cy3は、光放射部分Cy5を活性化可能な活性化部分である。したがって、活性化部分または上述の物体の第2部分の吸収極大の光または吸収極大付近の光(例えば、Cy3では532nm付近の光)は、第1部分である光放射部分を活性化する部分となり、第1部分が光を放射する(例えば、Cy5では633nm付近)。すでに述べたように、第1部分である光放射部分は、その後に、任意の適切な技術によって(例えば、この分子のCy5部分に633nmの赤色の光を照射することによって)不活性化することができる。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態では、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分とを備える、光を放射するスイッチング可能な物体が提供される。上述の物体は、第1部分である光放射部分によって決定される最大放射波長と、第2部分である活性化部分によって決定される最大活性化波長とを有する。特に、この2つの波長は、同じ分子物体によって制御されず、有効に分けられている。いくつかの場合には、放射部分を活性化して蛍光状態にする場合、この状態から励起して放射させる場合、放射部分を不活性化する場合に、同じ波長の光を使用することができる。さらに、あるサンプル内にある多種類のスイッチング可能な物体を独立して決定してもよい。例えば、同じ活性化部分を有するが、光放射部分が異なる2つのスイッチング可能な物体を、サンプルに適用するのと同じ波長の光によって活性化するが、異なる光放射部分のため異なる波長で放射させ、これらが回折限界による解像度未満の距離で隔てられている場合であっても、容易に識別することができる。このことにより、2色の画像を有効に得ることができる。同様に、同じ光放射部分を有するが、活性化部分が異なる2つのスイッチング可能な物体を、異なる活性化部分のためにサンプルに適用するのとは異なる波長の光によって活性化し、光放射部分は同じ波長で放射させ、これらが回折限界による解像度未満の距離で隔てられている場合であっても、識別することができる。これによっても、2色の画像を有効に得ることができる。これらの方法を組み合わせると、4色(またはそれ以上)の色画像を容易に作成することができる。この原理を用い、スイッチング可能な物体および/または活性化物体によっては、多色画像化を6色、9色などにまで広げることができる。この多色画像化の原理を、本明細書に記載の画像化方法とともに使用し、回折限界以下の解像度を得ることもでき、および/またはこの原理を回折限界以下の解像度に制限されない他の画像化方法とともに使用し、多色画像を得てもよい。
【0027】
対照的に、当業者が一般的に使用する蛍光染料(例えば、単離されたCy5)は、固有の最大励起波長と、最大放射波長を有し、これらはそれぞれ、その蛍光染料の性質および構造によって決定され、独立して制御することができない。したがって、本発明は、別の一連の実施形態では、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分をそれぞれ独立して選択することができるさまざまなスイッチング可能な物体を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、例えば、従来の画像化法と比べて、多くの色のセットが提供する。
【0028】
第1部分である光放射部分と第2部分である活性化部分とを結合するのに、任意の適切な方法を使用してもよい。いくつかの場合には、リンカーは、例えば、光放射部分がどんな態様で不活性化される場合であっても、活性化部分が光放射部分を所望な程度に活性化するように、第1部分と第2部分との距離が十分に近い位置になるように選択される。典型的には、上述の部分は、500nm以下、例えば、約300nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約2nm未満、約1nm未満などの距離で隔てられている。リンカーの例としては、限定されないが、炭素鎖(例えば、アルカンまたはアルケン)、ポリマー単位などが挙げられる。
【0029】
本発明のある一連の実施形態では、光を放射するスイッチング可能な物体は、上述の2つの部分を必ずしも含まない他のスイッチング可能な蛍光プローブ、例えば、限定されないが、光活性化可能な染料分子または光スイッチング可能な染料分子、光活性化可能であるかまたは光スイッチング可能な天然または加工した蛍光タンパク質、光活性化可能な無機粒子または光スイッチング可能な無機粒子などを含んでいてもよい。いくつかの場合には、スイッチング可能な物体は、本明細書に記載するように、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分とを含んでいてもよい。
【0030】
ある一連の実施形態では、スイッチング可能な物体は、結合対(すなわち、特定の検体と結合可能な分子)に対して、例えば共有結合によって固定することができる。結合対としては、当業者に既知の特異的な結合対、半特異的な結合対および非特異的な結合対が挙げられる。用語「特異的に結合する」は、結合対(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)を指している場合、異なる分子の混合物(例えば、タンパク質および他の生体物質)中の結合対の1つまたは他の対の存在および/または正体を決定する要因となる反応を指す。したがって、例えば、レセプター/リガンド結合対の場合、リガンドは、分子の複雑な混合物から特異的および/または優先的にそのレセプターを選択し、逆に、レセプターは、分子の複雑な混合物から特異的および/または優先的にリガンドを選択する。他の例としては、限定されないが、酵素は、その基質と特異的に結合し、核酸は、その相補体と特異的に結合し、抗体は、その抗原と特異的に結合する。このような結合は、1つ以上の種々の機構(限定されないが、イオン性相互作用および/または共有結合性相互作用および/または疎水性相互作用および/またはファンデルワールス力による相互作用などが挙げられる)によって行われる。標的分子または標的構造(例えば、細胞内のDNAまたはタンパク質)の結合対にスイッチング可能な物体を固定することによって、スイッチング可能な物体を、種々の決定または画像化に使用することができる。例えば、アミン反応性基を有するスイッチング可能な物体は、アミンを含む結合対(例えば、抗体、タンパク質または酵素)と反応してもよい。スイッチング可能な物体を抗体に固定化する非限定例を、以下の実施例に記載する。
【0031】
いくつかの実施形態では、2つ以上のスイッチング可能な物体を使用してもよく、この物体は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの場合には、第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とは同じである。上述の物体を異なる時間点で活性化し、各物体からの光を別個に決定してもよい。これにより、2つの物体の位置を別個に決定することができ、いくつかの場合には、以下に詳細に記載するように、物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、2つの物体を空間的に解像してもよい(すなわち、「回折限界以下」の解像)。特定の場合、第1の物体から放射される光の波長と、第2の物体から放射される光の波長とは、異なっている(例えば、第1の物体および第2の物体が化学的に異なっており、および/または異なる環境に配置されている場合)。物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、上述の物体を空間的に解像してもよい。特定の場合、第1の物体から放射される光の波長と、第2の物体から放射される光の波長とは、実質的に同じであるが、2つの物体を異なる波長の光で活性化し、各物体からの光を別個に決定してもよい。物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、上述の物体を空間的に解像してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1部分である光放射部分および第2部分である活性化部分は、上述のように、直接的に共有結合していなくてもよいし、リンカーを介して結合していなくてもよいが、それぞれ共通の物体に固定される。他の実施形態では、2つ以上のスイッチング可能な物体(そのうちいくつかは、特定の場合、第1部分である光放射部分と第2部分である活性化部分を含んでおり、それらが直接またはリンカーを介して結合していてもよい)を、本発明のいくつかの態様において、共通の物体に固定してもよい。共通の物体は、これらの実施形態のいずれかでは、任意の非生物学的物体または生物学的物体であってもよく、例えば、細胞、組織、基質、表面、ポリマー、生体分子、例えば、核酸(DNA、RNA、PNA、LNAなど)、脂質分子、タンパク質またはポリペプチドなど、生体分子複合体または生体構造、例えば、オルガネラ、微小管、クラスリン被覆ピットなどであってもよい。したがって、共通の物体は、いくつかの様式で決定されてもよい(例えば画像化)。別の例として、2つ以上の物体を、DNA鎖または他の核酸鎖に固定し(例えば、抗体、1つ以上の物体で標識された実質的に相補性のオリゴヌクレオチド、化学反応または当業者に既知の他の技術によって)、その位置を鎖に沿って検出してもよい。いくつかの場合には、核酸鎖に沿って物体を隔てている塩基の数(bp)を決定してもよい。
【0033】
いくつかの場合には、上述の物体は、独立してスイッチング可能であってもよい。すなわち、第2の物体を活性化させることなく、第1の物体を活性化し、光を放射させてもよい。例えば、上述の物体が異なっている場合、第1の物体および第2の物体をそれぞれ活性化する方法は、異なっていてもよい(例えば、異なる波長の入射光を用いて、それぞれの物体を活性化してもよい)。別の非限定例として、十分に強度の弱い入射光を第1の物体および第2の物体に照射し、その入射光の範囲内の物体の部分的な集合または物体の一部分のみを活性化してもよい(すなわち、確率的またはランダムに)。活性化する特定の強度は、当業者であれば、通常の範囲内の技術を用いて決定することができる。入射光の強度を適切に選択することによって、第2の物体を活性化させることなく、第1の物体を活性化させてもよい。
【0034】
第2の物体を活性化して光を放射させ、任意に、第2の物体を活性化させる前に、第1の物体を活性化させてもよい。第2の物体は、すでに記載したように任意の適切な技術によって活性化させてもよく、例えば、適切な入射光を照射することによって活性化させてもよい。
【0035】
いくつかの場合には、十分に強度が弱い入射光を複数の物体に照射し、その入射光の範囲内の物体の部分的な集合または物体の一部分のみを活性化してもよい(例えば、確率的またはランダムに)。活性化する量は、任意の適切な一部分であってもよく、例えば、その用途によって、物体の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%を活性化させてもよい。例えば、入射光の強度を適切に選択することによって、物体の少なくともいくつかが他の物体と光学的に解像可能で、位置が決定可能であるように、物体を部分的にまばらに活性化させてもよい。繰り返しの活性化サイクルにより、すべての物体の位置または物体のかなりの部分を決定することができる。いくつかの場合には、この情報を用いて、回折限界以下の解像度を有する画像を構築することができる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、物体から放射される光の波長未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、2つ以上の物体を解像してもよい。物体の解像度は、本明細書に記載されるように、例えば、1μm(1000nm)以下であってもよい。例えば、放射光が可視光である場合、解像度は、約700nm未満であってもよい。いくつかの場合には、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約60nm未満、約50nm未満、または約40nm未満の距離で隔てられている場合であっても、2つ(またはそれ以上)の物体を解像してもよい。いくつかの場合には、少なくとも約20nmまたは約10nm未満の距離で隔てられている2つ以上の物体を、本発明の実施形態を用いて解像することができる。
【0037】
各スイッチング可能な物体から放射される光は、例えば、画像またはマトリックスとして決定してもよい。例えば、第1の物体を活性化し、第1の物体から放射される光を決定してもよく、第2の物体を活性化し(第1の物体を不活性化しても不活性化しなくてもよい)、第2の物体から放射される光を決定してもよい。複数の物体それぞれから放射される光の波長は、同じであっても異なっていてもよい。任意の適切な方法を使用し、放射光を決定してもよい。例えば、CCDカメラのようなカメラ、フォトダイオード、光電子増倍器を使用するか、または分光計を使用してもよく、当業者は、他の適切な技術を知っているであろう。物体から発生した光を決定する適切な技術のさらなる非限定例を以下の実施例に記載する。いくつかの場合には、例えば、解像度を高め、および/またはノイズを減らすために、複数の画像(または他の決定因子)を使用してもよい。例えば、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100などの画像を、用途に応じて決定してもよい。
【0038】
いくつかの態様では、2つ以上の物体の空間配置を決定するために、光を加工してもよい。いくつかの場合には、画像内に分布する1つ以上の物体の位置を、個々に決定してもよい。ある一連の実施形態では、放射光をGaussianフィッティングまたは他の適切な技術を用いて加工し、放射性物体それぞれの位置を特定してもよい。適切なGaussianフィッティング技術の詳細を以下の実施例に示す。当業者は、本開示内容の利点を有する他の適切な画像加工技術を特定することができるであろう。
【0039】
本発明の別の実施形態によって、画像加工技術の別の例を記載する。一連の画像サンプル(例えば動画)から出発し、それぞれの光放射ピーク(例えば、蛍光、リン光などにより)を特定し、ピークの存在する時間を決定する。例えば、時間点に対し、一連の画像でほぼ同じ強度のピークが存在してもよい。ピークを、いくつかの場合、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および/または楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。散発性のピーク、移動しているピーク、不連続に存在するピークなども破棄してもよい。例えば、最小二乗によって、ピーク強度を2次元Gaussian関数にフィッティングし、ピークの中心位置を決定することによって、ピークの供給源(例えば、本明細書に記載されるように、光を放射可能な任意の1つ以上の物体)の位置を決定することができる。サンプル内の任意のピークまたはすべてのピークについて、このプロセスを必要なだけ繰り返してもよい。
【0040】
本発明の適切な画像加工技術の別の非限定例では、一連の画像サンプル(例えば動画)は、活性化フレーム(例えば、中に活性化光あり)および画像化フレーム(例えば、中に画像化光あり)の繰り返しを備えていてもよい。1つ以上の画像化フレームで、蛍光ピークを特定し、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および/または楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。いくつかの場合には、散発性のピーク、移動しているピーク、不連続に存在するピークなども破棄してもよい。例えば、最小二乗によって、ピーク強度を2次元Gaussian関数にフィッティングし、ピークの中心位置を決定することによって、ピークの供給源(例えば、本明細書に記載されるように、光を放射可能な任意の1つ以上の物体)の位置を決定することができる。活性化フレームの直後に画像化フレームで現れるピークは、制御された活性化事象であると認識することができ、いくつかの実施形態では、活性化レーザの色によって色分けされていてもよい。サンプル内の任意のピークまたはすべてのピークについて、このプロセスを必要なだけ繰り返してもよい。
【0041】
物体の決定を容易にするために他の画像加工技術を使用してもよく、例えば、ドリフト補正またはノイズフィルタを使用してもよい。一般的に、ドリフト補正では、例えば、固定点を特定し(例えば、基準マーカーとして、例えば、蛍光粒子を基質に固定してもよい)、固定点の移動度(すなわち、機械的なドリフトによるもの)を使用し、決定済のスイッチング可能な物体の位置を補正する。ドリフト補正の別の方法例では、異なる画像化フレームまたは活性化フレームから得た画像の相関関数を算出し、ドリフト補正に使用する。いくつかの実施形態では、ドリフトは、約1000nm/分未満、約500nm/分未満、約300nm/分未満、約100nm/分未満、約50nm/分未満、約30nm/分未満、約20nm/分未満、約10nm/分未満または約5nm/分未満であってもよい。このようなドリフトは、例えば、顕微鏡対物に対し、サンプルスライドのx−y位置決めのために取り付けられた移動ステージを有する顕微鏡で起こることがある。スライドは、適切な制限機構(例えば、ばね仕掛けのクリップ)を用いて移動ステージに固定されていてもよい。それに加えて、ステージと顕微鏡スライドとの間に緩衝層を取り付けてもよい。緩衝層は、例えば、スライドがいくつかの様式で滑るのを防ぐことによって、移動ステージに対し、スライドのドリフトをさらに制限してもよい。緩衝層は、一実施形態では、ゴム膜またはポリマー膜、例えば、シリコーンゴム膜である。したがって、本発明の一実施形態は、移動ステージと、移動ステージに接続してスライドを固定する制限機構(例えば、ばね仕掛けのクリップ)とを備え、任意に、緩衝層(例えば、シリコーンゴム膜)を、制限機構が緩衝層と接触することにより、スライドの動きが制限されるように配置して備えるデバイスに関する。
【0042】
サンプルの複数の位置を、その位置にある物体を決定するために、それぞれ分析してもよい。例えば、サンプルは、種々の複数の物体を含有していてもよく、そのいくつかは、物体から放射される光の波長未満の距離で隔てられているか、または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている。サンプル内の異なる位置を決定してもよく(例えば、画像内でピクセルの違いとして)、これらの位置をそれぞれ独立して分析し、その位置にある1つ以上の物体を決定してもよい。いくつかの場合には、それぞれの位置にある物体を、すでに記載したように、物体から放射される光の波長未満の解像度または放射光の回折限界未満の解像度で決定してもよい。
【0043】
上述のように、いくつかの実施形態では、2種類以上のスイッチング可能な物体を1サンプル中で使用し、各物体の位置を、いくつかの場合には、回折限界以下の解像度で独立して決定し、例えば、回折限界以下の解像度を有する多色画像を作成してもよい。例えば、あるサンプル中で特定のスイッチング可能な物体を活性化し、不活性化することを繰り返すことによって、複数のスイッチング可能な物体の位置を決定し、いくつかの場合には、物体から放射される光の波長未満の解像度または放射光の回折限界未満の解像度で決定してもよい。
【0044】
非限定例として、サンプルは、2種類の光放射部分(例えば、Cy5およびCy5.5)と、2種類の活性化部分(例えば、Cy3およびCy2)を含有してもよく、合計で4種類(2×2)のスイッチング可能な部分:Cy5−Cy3、Cy5−Cy2、Cy5.5−Cy3およびCy5.5−Cy2を含有する。Cy2を含有する物体を活性化させることなく、適切な波長の光を照射することによって、Cy3を含有する物体を活性化することができ(異なる活性化波長が必要なため)、Cy5を含有する分子から放射される光は、Cy5.5を含有する分子から放射される光と区別することができる(異なる波長で光を放射する)。したがって、Cy5−Cy3物体のみが決定され、他の物体は活性化しないか、または活性化はするものの、物体から放射される光を使用しない。上述の技術を用いることによって、サンプル内のCy5−Cy3物体の位置を、Cy5から放射される光の波長未満の解像度まで決定することができる。さらに、適切な活性化波長および放射波長を用いて上述の手順を繰り返すことによって、他の物体の位置も、例えば、回折限界以下の解像度まで決定してもよい。別の例では、サンプルは、3種類(またはそれ以上)の光放射部分(例えば、Cy5、Cy5.5およびCy7)および/または3種類(またはそれ以上)の活性化部分(例えば、Alexa Fluor 405、Cy2およびCy3)を含んでいてもよい。したがって、回折限界以下の解像度を有する多色画像化(例えば、4色、6色、8色、9色、10色、12色など)が実現し得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、物体は、時間の関数として解像されてもよい。例えば、2つ以上の物体を種々の時間点で観察し、時間で変動するプロセス(例えば、化学反応、細胞の挙動、タンパク質または酵素の結合など)を決定してもよい。したがって、一実施形態では、2つ以上の物体の位置を、第1の時間点で決定し(例えば、本明細書に記載されるように)、その後の何回かの時間点で決定してもよい。特定の例として、2つ以上の物体が共通の物体に固定されている場合、共通の物体を、時間の関数、例えば、時間で変動するプロセス(例えば、共通の物体の移動、共通の物体の構造変化および/または形状変化、共通の物体が関与する反応など)として決定してもよい。時間分解による画像化は、スイッチング可能な物体が複数のサイクルでスイッチング可能であり、各サイクルが物体の位置について1個のデータ点を与えるため、いくつかの場合には容易である。
【0046】
本発明の別の態様は、コンピュータで実行される方法に関する。例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を自動的および/または繰り返し実行可能なコンピュータおよび/または自動化システムが提供されてもよい。本明細書で使用される場合、「自動化」デバイスは、ヒトが命令することなく実行可能なデバイスを指す。すなわち、自動化デバイスは、任意のヒトが、ある機能を促進するための任意の操作を終了した後も、例えば、コンピュータに指示を与えることによって、一定期間、その機能を実行することができる。典型的には、自動化装置は、その時間点の後に、繰り返してその機能を実行することができる。処理工程は、いくつかの場合には、機械可読媒体に記録されてもよい。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、一般的に、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行可能なシステムに関する。例えば、このシステムは、顕微鏡と、物体を活性化および/またはスイッチングさせ、所望の波長の光を発生させるデバイス(例えば、レーザ源および/または他の光源)、物体から放射される光を決定するデバイス(例えば、カメラ、例えば光学フィルタのような色フィルタデバイスを備えていてもよい)と、2つ以上の物体の空間配置を決定するためのコンピュータとを備えていてもよい。いくつかの場合には、鏡(例えば、二色性ミラーまたは多色性ミラー)、プリズム、レンズ、回折格子なども、光源からの光の向きを変えるために配置されていてもよい。いくつかの場合には、光源は、時間によって調節可能な光源(例えば、シャッター、音響光学変調器などによる)であってもよい。したがって、光源は、プログラムされた様式または周期的な様式で活性化し、不活性化することが可能なものであってもよい。一実施形態では、2つ以上の光源を使用してもよく、例えば、異なる波長または色でサンプルを照射するために使用してもよい。例えば、光源は、異なる周波数の光を発してもよく、および/または光学フィルタなどのような色フィルタデバイスを使用し、異なる波長または色の光をサンプルに照射するように、光源からの光を調節してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、顕微鏡は、他の蛍光源からの光(例えば、「バックグラウンドノイズ」)を最小限にしつつ、スイッチング可能な物体から放射される光を集めるような構成になっていてもよい。特定の場合、撮像幾何(例えば、限定されないが、全反射の幾何、回転円板の共焦点の幾何、走査共焦点の幾何、落射蛍光の幾何などが挙げられる)を、サンプルを励起させるために使用してもよい。いくつかの実施形態では、サンプルの薄層または平面を励起光にさらし、サンプル平面外側への蛍光の励起を減らしてもよい。非常に多くの開口レンズを使用し、サンプルから放射される光を集めてもよい。この光を、例えば、励起光を除去するためのフィルタを用いて加工して、サンプルからの放射光の集合を得てもよい。いくつかの場合には、画像を集める拡大因子は、例えば、画像の各ピクセルの縁の長さが、画像の回折限界点の標準偏差の長さに対応する場合、最適化することができる。
【0049】
いくつかの場合には、スイッチング可能な物体の励起およびスイッチング可能な物体の画像の獲得を制御するためにコンピュータを使用してもよい。ある一連の実施形態では、種々の波長および/または強度を有する光を用いてサンプルを励起させてもよく、サンプルを励起させるのに使用する一連の光の波長と、スイッチング可能な物体を含有するサンプルから得た画像とをコンピュータを用いて相互に関連づけてもよい。例えば、コンピュータは、目的の各領域中の活性化されたスイッチング可能な要素の異なる平均値(例えば、場所あたり1個の活性化された物体、場所あたり2個の活性化された物体など)を得るために、種々の波長および/または強度を有する光をサンプルに適用してもよい。いくつかの場合には、この情報を用いて、いくつかの場合には、上述のように、回折限界以下の解像度でスイッチング可能な物体の画像を構築してもよい。
【0050】
本発明の他の態様では、本明細書に記載のシステムおよび方法を、当業者に既知の他の画像化技術、例えば、高解像度蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)または免疫蛍光画像化法、ライブセルイメージング、共焦点画像化法、落射蛍光画像化法、全反射蛍光画像化法などと組み合わせてもよい。
【0051】
以下の文献は、本明細書に参考として組み込まれる。米国特許仮出願番号第60/836,167号(2006年8月7日出願、発明の名称「Sub−Diffraction
Image Resolution」および米国特許仮出願番号第60/836,170号(2006年8月8日出願、発明の名称「Sub−Diffraction Image Resolution」。
【0052】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、本発明の範囲全体を例示するものではない。
【実施例】
【0053】
本実施例は、解像度の高い光学顕微鏡法である確率的な光学再構成による顕微鏡法(「STORM」)を示す。この方法では、本発明の一実施形態によれば、異なる色の光を用いてオンオフが切り替わる個々の蛍光物体(「フルオロフォア」)を高精度に位置特定することにより、蛍光画像が構築される。STORM画像化プロセスは、本実施例では、一連の画像化サイクルを含む(図1a)。各サイクルで、視野内のフルオロフォアの一部分が、オンに切り替わるかまたは活性化し、その結果、活性なフルオロフォアは、それぞれ、残りの部分と光学的に解像することが可能であり、すなわち、それぞれの画像は重なりあっていない。これにより、これらのフルオロフォアの位置を高い精度で決定することができる。このプロセスを複数回のサイクルで繰り返し、それぞれのサイクルで、確率的に異なるフルオロフォア群がオンに切り替わるかまたは活性化し、多くのフルオロフォアの位置を決定することができ、全体的な画像を再構築することができる。これらの実施例では、解像度は約20nmであることが示されており、この値は、単純な全反射照明蛍光顕微鏡、低出力の連続波長を有するレーザおよび光スイッチング可能なシアニン染料を用いる従来の蛍光顕微鏡法の10倍を超える改良された値である。
【0054】
図1aは、フルオロフォアで標識された仮想の六量体を用い、緑色レーザおよび赤色レーザによって、それぞれ蛍光状態および暗状態をスイッチング可能な、STORM画像化シーケンスを示す。この非限定的な図では、最初は、すべてのフルオロフォアが、強い赤色レーザパルスによって「オフ」に切り替わり、暗状態になった(「不活性化」)。各画像化サイクルで、緑色レーザパルスを用い、フルオロフォアの一部分のみを「オン」に切り替え(「活性化し」)、光学的に解像可能な活性フルオロフォア群を得た。次いで、赤色を照射(「画像化」)すると、これらの分子は、オフに切り替わるまで蛍光を放射し、これらの分子の位置(白い十字で示す)を比較的高い精度で決定することができた。次いで、複数の画像化サイクルから得たフルオロフォアの位置から、全体的な画像を再構築した。
【0055】
シアニン染料(Cy5)は、蛍光状態と暗状態とを、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式でスイッチング可能である。Cy5から蛍光を放射させる赤色レーザ光は、この染料を安定な暗状態に切り替えることもできる。緑色レーザ光を照射すると、Cy5は再び蛍光状態に戻るが、戻る速度は、いくつかの場合では、第2の染料であるCy3との近さに依存する場合がある。Cy3−Cy5染料対は、スイッチとも呼ばれ得る。1個の分子を検出可能な照射条件では、このようなスイッチは、核酸またはタンパク質に結合または固定されている場合、永久的な光退色が起こるまでに数百回、オンオフサイクルを繰り返すことが可能なことがわかった(図1bおよび図4)。図1bでは、Cy5から蛍光(黒色の線)を励起させるのに赤色レーザ(633nm、30W/cm2)を使用し、Cy5は暗状態にスイッチングする。Cy5を蛍光状態に戻すのに緑色レーザ(532nm、1W/cm2)を使用した。交互の赤色の線および緑色の線は、レーザの励起パターンを示す。いくつかの場合には、Cy5が戻る速度は、Cy3との近さに依存すると考えられる。
【0056】
図4は、シアニンスイッチで標識したヤギ抗マウス二次抗体が、スイッチで標識されたDNAとよく似た光スイッチング挙動を示すことを示している。この抗体を、Cy3およびCy5で標識し(以下参照)、標識していないマウス抗−トランスフェリン一次抗体でコーティングした石英スライドに結合させた。出力結果は、約230秒後に永久的な光退色が起こるまで、オンオフのスイッチングに応じて1個の標識された抗体から検出されたCy5の蛍光強度を示す。緑色レーザパルスおよび赤色レーザパルスで、サンプルを交互に励起させた(緑色レーザパルス0.5秒、次いで赤色レーザパルス2秒)。
【0057】
他の光スイッチング可能な染料対も、同様の原理で構築することができる。例えば、Cy5に加え、Cy5.5、Cy7およびAlexa Fluor 647も、蛍光状態と暗状態とを、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式でスイッチング可能である。Cy3と対にした場合、赤色レーザ(633nmまたは657nm)を照射すると、これらの4種の染料(Cy5、Cy5.5、Cy7およびAlexa Fluor 647)はそれぞれ最初に蛍光を発し、非蛍光の暗状態にすぐにスイッチングした。緑色レーザパルス(532nm)を短期間照射すると、これらの染料は再活性して蛍光状態へと戻った(図8aおよび図9)。さらに、いくつかの場合で、同じ発光部分を活性化するのに、異なる活性化部分を使用することができる。例えば、発光部分の一例としてCy5を用い、Cy3、Cy2およびAlexa Fluor 405とCy5とを対にした。赤色レーザ(633nmまたは657nm)を照射すると、Cy5が暗状態へと迅速にスイッチングすることが観察された。この実施例では、Cy5を再活性させるには、活性化剤の吸収波長に対応する、異なる色のレーザが必要であった。(図8bおよび図9)。Alexa 405−Cy5対は、紫色レーザ(405nm)によって効率よく活性化されるが、青色レーザ(457nm)および緑色レーザ(532nm)に対する感度は低いようであった。同様に、Cy2−Cy5対は、紫色または緑色の光よりも、青色の光に対して感度が高く、Cy3−Cy5対は、緑色レーザに対する感度が高いようであった。
【0058】
活性化部分の例としては、限定されないが、Alexa Fluor 405、Alexa 488、Cy2、Cy3、Cy3.5またはCy5が挙げられる。光放射部分の例としては、限定されないが、Cy5、Cy5.5、Cy7またはAlexa Fluor
647が挙げられる。これらの物質は、結合して光スイッチング可能な物体、例えば、限定されないが、Cy5−Alexa Fluor 405、Cy5−Alexa Fluor 488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor 405、Cy5.5−Alexa Fluor 488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor 405、Cy7−Alexa Fluor 488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5またはCy7−Cy5を形成してもよい。
【0059】
この実施例では、STORMの概念は、Cy5−C53スイッチを用いて示されているが、任意の適した光によってスイッチングするフルオロフォアを使用することもできる。STORMの解像度は、いくつかの場合では、スイッチングサイクル中に個々のスイッチを位置特定可能な精度によって制限を受けることがある。位置特定の精度を決定する一例として、スイッチを、短い二本鎖DNAに結合または固定し、1個のスイッチを解像可能な低い密度で表面に固定した。緑色レーザ光および赤色レーザ光によって、周期的にこれらのスイッチのオンオフを切り替え、赤色レーザは、Cy5から蛍光を励起させる役割もあった。Cy3からの蛍光はこのプロセスでは記録されなかった。各スイッチングサイクル中の個々のスイッチの位置特定精度は、STORMの固有の解像度を規定するものであり、この値を図2に示す。1個のスイッチからの蛍光画像を、図2aに点広がり関数で示す。1回のスイッチングサイクル中の、DNA上の1個のスイッチからの放射の点広がり関数(PSF)。この画像に対するGaussianフィッティング(図示せず)を使用し、PSFの重心位置を特定し、この重心は、スイッチの位置を示すものである。複数回のスイッチングサイクルから決定した位置は、かなりの広がりがあり(図2b)、一連の実験にわたってサンプルをドリフト補正することによって、この広がりは顕著に減少した(図2c、以下のさらなる詳細を参照)。図2bおよび図2cは、20回の連続した画像化サイクルで決定した個々のスイッチの重心位置について、サンプルをドリフト補正する前(図2b)および補正した後(図2B)を示す。スケールを示す線は20nmである。20回の画像化サイクルから得た位置をドリフト補正すると、標準偏差は、個々のスイッチについて平均8nmであった(図2d)。図2dは、重心位置の標準偏差のヒストグラムを示す。標準偏差は、各スイッチについて、20回の画像化サイクルを用いて(σx+σy)/2((シグマ−x+シグマ−y)/2)で決定され、ここで、σx(シグマ−x)およびσy(シグマ−y)は、x次元およびy次元の重心位置の標準偏差である。29
個のスイッチからこのヒストグラムを構築した。この値は、1回の画像化サイクルあたり、1個のスイッチの位置決定における不確実な測定値を与えた。これに対応して、実験的に測定されたスイッチの位置の広がりは、標準偏差8nmから予想されるように、FWHM 18nmでGaussian分布に従っている(図5)。したがって、これらの画像化条件下で、20nm離れた2個のスイッチを解像することができた。
【0060】
図5は、ステージのドリフトを補正する前(図5a)および補正後(図5b)の、29個の個々のスイッチの位置分布を重ね合わせたものを示す。スケールを示す線は20nmである。これらの分布を得るために、各スイッチの画像を、所与の画像化サイクル中に、二次元Gaussian関数にフィッティングさせ、そのサイクル中の各スイッチの重心位置を得た。画像化サイクルを20回行い、スイッチあたり20個の測定位置を得た。各スイッチの位置データを、各スイッチの平均位置が原点になるように再調整し、異なるスイッチの測定値を重ね合わせ、全体的な位置分布をはめ込み図に示した。主要なプロットは、これらの重心位置のヒストグラムである。補正していない分布はかなり広範囲にわたっており、非対象であった。基準マーカーを用いてステージのドリフトを補正した後(以下を参照)、分布はかなり狭くなっている。ドリフトを補正したヒストグラムのGaussianフィッティングにより、最大値の半値での合計幅は18±2nmであった。
【0061】
STORMが、非常に近い位置にある蛍光分子を解像する可能性を示すために、標識された線形の二本鎖DNAの標準サンプルを、十分に規定された数の塩基対で隔てられている複数のスイッチを用いて構築した(詳細については、以下の方法を参照)。DNA鎖は、複数のビオチンで標識されており、高密度ストレプトアビジン層に結合しており(以下を参照)、DNAとその表面との間の複数の結合の可能性が高くなり、その結果、DNAがその平面に固定された。135塩基対で隔てられた2つのスイッチを含有するDNA鎖を、最初に試験した(図3aおよび図6)。135塩基対の長さは、DNAの輪郭に沿って46nmに対応する。上述の画像化手順(詳細については以下を参照)を用いて得たSTORM画像は、測定したスイッチの位置に2つのクラスターを示しており、このことは、2個のスイッチが十分に解像されていることを示す(図3a)。この画像は、測定したスイッチ位置の2個の分離したクラスターを示し(十字)、それぞれが1個のスイッチに対応している。各クラスターの質量中心を点で示す。スイッチ間の距離は、これらの3つの例で、46nm、44nmおよび34nmである。スケールを示す線は20nmである。2個の雲の中心間の距離は、平均値が41nmであり(図3b)、DNAサンプルの既知の輪郭および持続長を用いて決定した理論的な平均値(40nm)と量的に一致した(以下を参照)。図3bは、STORMを用いて測定したスイッチ間距離(灰色の棒グラフ)と、DNAの可とう性を考慮して予想される距離分布(点線)との比較を示す。図3cは、二本鎖DNAに結合した4個のスイッチのSTORM画像を示し、1対は輪郭長さ46nmで隔てられている。測定したスイッチの位置を自動化アルゴリズムでクラスターにして(詳細は以下を参照)、異なるクラスターは異なる記号で示している。スケールを示す線は20nmである。
【0062】
図6は、dsDNA上にある輪郭長さ46nmで隔てられたCy3−Cy5スイッチの繰り返しを示す、蛍光トレーサ(黒色の線)の抜粋である(図3aも参照)。各スイッチングサイクルは5秒間続き、このサイクルは、1個または2個のスイッチを活性化させるための短期間の緑色パルス(下側にある目盛)の後、Cy5の蛍光を励起させ、スイッチをオフ状態に戻す長時間の赤色光照射(下にある横長の四角)を含む。1個のスイッチが活性化するサイクル(例えば、225〜230秒)では、暗状態に戻る前に、1個の強度レベルが現れた。2個のスイッチが活性化するサイクル(例えば、245〜250秒)では、「階段状」の強度レベルがあらわれ、それぞれの染料が、順にオフにスイッチングすることに対応して2回のレベル低下が観測された。1個のスイッチがオンになり、すべてのピーク質基準が満足される領域(以下を参照)を、1個のスイッチの位置特定に使用した。
【0063】
輪郭に沿って46nmで均一に隔てられた4個のスイッチで標識された、さらに長いDNAサンプルも画像化した。STORM画像から、スイッチ位置の4個所のクラスターがあることがわかり、曲った輪郭は、DNAの持続長と一致しており、スイッチ間の加工した距離と一致していた。これらの結果は、STORMが、生体サンプルを回折限界以下の解像度で画像化することができ、40nm隔てられた物質は、十分に解像できる範囲にあることを示す。
【0064】
STORMの利点の1つは、制御された様式でスイッチを繰り返しオンオフし、回折限界内の多数のスイッチを位置特定できることであり、これは一般的な生物学的画像化技術として用いることができる。この可能性を示すために、環状DNAプラスミドを調製し、RecAタンパク質でコーティングし、スイッチで標識された二次抗体を用いた間接的な免疫蛍光を用いて画像化する(図3d、詳細は以下の方法を参照)。ここで、フォトスイッチは、Cy3とCy5とを備えている。Cy3は活性化部分の役割を果たし、Cy5は光放射部分の役割を果たす。RecA繊維のSTORM画像は、従来の広範囲画像と比較して、この環状構造をきわめて高い解像度で明らかにした。この繊維の一部分は、標識されていないか、またはねじれているようであり、この部分は、RecAでコーティングされていないプラスミドの領域に対応している。図3dの上側の図は、スイッチで標識された二次抗体を用い、全反射顕微鏡法によって作成された、間接的な免疫蛍光画像を示す。下側の図は、同じ繊維の再構築されたSTORM画像である。スケールを示す線は300nmである。
【0065】
複数の種類の光スイッチング可能な、光放射部分および活性化部分の対の存在により、例えば、本明細書に記載するように、多色STORM画像化が可能になる。この例は、多色STORM画像化の初期の実施として、選択的な活性化スキームを使用する。Alexa 405−Cy5、Cy2−Cy5またはCy3−Cy5で標識した3つの異なるDNA構築物を混合し、従来の蛍光画像では個々のDNA分子が解像できないほど表面密度が高くなるように、顕微鏡スライドに固定した。STORM画像を作成するために、まず、サンプルに赤色レーザ(633nm)を照射して、視野にあるほぼすべてのCy5染料をオフに切り換えた。次いで、このサンプルを、一連の紫色レーザパルス(405nm)、青色レーザパルス(457nm)および緑色レーザパルス(532nm)で周期的に励起し、それぞれのレーザパルスは、フルオロフォアの一部分をまばらに、光学的に解像可能に活性化した。活性化パルスの間に、サンプルを赤色レーザで画像化した。それぞれの活性化した蛍光スポットの画像を分析し、重心位置を決定し(位置特定と称する)、その前に照射した活性化パルスによって色を割り当てた。同様に、画像化レーザおよび検出チャネルを3種類すべての染料対に使用したので、色収差を補正する必要はなかった。数千回の活性化サイクルの後、着色したすべての位置をプロットすることによって、STORM画像を構築した(図12a〜12c)。STORM画像は、分離したクラスターの位置を示した。各クラスターは、個々のDNA分子に対応しており、複数のスイッチングサイクルでの1個のCy5分子の位置特定を繰り返すことによって得た。各クラスター内の大部分の位置は同じ色で示されており、DNA上に存在する活性化染料の種類を特定している。同定された色には、2種類から由来するクロストーク、間違った色のレーザパルスによる間違った活性化、および赤色画像化レーザによる非特異的な活性化が存在するが、これらの影響は量的には小さかった。各クラスター内の位置特定は、ほぼGaussian分布に従い、3色のチャネルの半値全幅(FWHM)は、26±1nm、25±1nmおよび24±1nmであり(図12d〜12f)、このことは画像解像度が約25nmであることを示唆していた。この解像度は、検出された光子の数から予想される理論限界よりも小さい。
【0066】
細胞サンプルについて、STORM画像化を行うこともできる。この可能性を示すために、この例では、微小管の単色免疫蛍光画像化法を行った。微小管は、多くの細胞機能にとって重要な繊維状細胞骨格構造である。BS−C−1細胞を固定し、微小管に対する一次抗体で免疫染色し、スイッチで標識した二次抗体で免疫染色した。ここで、使用したフォトスイッチは、Cy3とAlexa Fluor 647とを備えており、Cy3は活性化部分の役割を果たし、Alexa Fluor 647は光放射部分の役割を果たす。STORM画像は、従来の蛍光画像と比較して、微小管の網状組織の解像度が顕著に向上していた(図10)。図10a、10cおよび10eは、細胞内のある領域での微小管を異なる倍率で示した従来の画像であり、図10b、10dおよび10fは、同じ領域のSTORM画像である。微小管が密に含まれ、従来の画像では不明確な領域において、個々の微小管繊維がSTORMによって解像された(図10C〜F)。全細胞STORM画像(約106の単分子の位置特定を含む)は、2〜30分で得られた。超解像微小管構造は、STORM画像化から約10〜20秒後に現れ始めるが、まだ最適化はされていなかった。有効な画像化解像度は、固有の染料の位置特定の精度および抗体標識の大きさによって影響を受けた。有効解像度の向上は、染料で標識された一次抗体またはFabフラグメントを用いた直接的な免疫蛍光染色によって達成可能である。
【0067】
異なる光スイッチング可能な対を用い、細胞サンプルについて多色STORM画像化を行うことができる。この可能性を示すために、微小管およびクラスリン被覆ピット(CCP)(レセプターによって媒介されるエンドサイトーシスで使用する細胞構造)を同時に画像化した。微小管およびクラスリンを、一次抗体で免疫染色し、次いでスイッチで標識した二次抗体で免疫染色した。ここで、フォトスイッチは、微小管の画像化の場合、Cy2とAlexa Fluor 647とを備えており、クラスリン画像化の場合、Cy3とAlexa Fluor 647とを備えており、Cy2またはCy3は活性化部分の役割を果たし、Alexa Fluor 647は光放射部分の役割を果たす。457nmおよび532nmのレーザを用い、2つの対を選択的に活性化した。間違った活性化および非特異的な活性化による2色のチャネル間のクロストークは、統計分析後に画像から差し引いた。図11は、微小管およびクラスリン被覆ピットの2色の超解像度STORM画像を示す。図11は、異なる倍率で表した2色STORM画像を示す。緑色チャネル(457nmでの活性化)により、微小管の繊維状構造(これらの画像では長くて薄い構造)が明らかになった。赤色チャネルでは、これらの画像では主に球構造が明らかになり、これはクラスリン被覆ピットおよび小胞であった。
【0068】
まとめると、本実施例は、STORMによって回折限界以下の解像度で生体構造を画像化することができることを示す。この技術の解像度は、光の波長によって制限されない。Cy3−Cy5スイッチの場合、1回のスイッチングサイクルあたり約3,000個の光子が検出され、これは赤色レーザの強度とは無関係であり(データは示していない)、理論的な位置特定精度は4nmであると予測される。この理論的な予測値と測定した精度8nmとの差は比較的小さく、この不一致は、ステージのドリフト補正が不完全であることと、測定における焦点ドリフトによる収差とによるものである。この測定位置の精度は、約20nm(半値全幅、FWHM)の画像化解像度に対応する。実際に、約40nm隔てられた蛍光スイッチは、容易に解像できた(図3)。
【0069】
シアニンスイッチは、光退色の前に、数百回の信頼性の高いオンオフの切り替えサイクルが可能であり、これにより、潜在的に時間分解様式で、多くのフルオロフォアを用いて構造を解像するのに、STORMを使用することができる。10〜20個のスイッチを含有するRecA繊維の環状構造および細胞内の微小管構造およびクラスリン被覆ピット構造は、数分間またはそれ以下の時間で解像可能であった。画像化速度は、例えば、より強い励起によるスイッチング速度を高めることによって、またはより速いスイッチング速度を有するフルオロフォアを用いてスイッチング速度を高めることによって、より速いフレーム速度を有するカメラを用いることによって、より速いカメラ読み取りスキーム(例えば、ピクセルのビニングまたはピクセルの一部分のみの読み出し)を用いることによって、または他の技術によって、向上する場合がある。したがって、STORMは、生体サンプルまたは非生体サンプルの高解像度画像化に価値のあるツールである。STORMの概念は、他の光スイッチング可能なフルオロフォアおよび蛍光タンパク質にも応用することができ、内因性標識を用いて、生きた細胞の高解像度画像化も潜在的に可能であり、回折限界以下の画像解像が望ましい他の画像化への応用も潜在的に可能である。
【0070】
さらなる詳細および例は、W.M.Batesら、「Multicolor Super−resolution Imaging with Photo−switchable Fluorescent Probes」Science(近刊)またはM.J.Rustら、「Sub−diffraction−limit imaging by stochastic reconstruction optical microscopy (STORM)」Nature Methods 3、793−795(2006)を参照。
【0071】
上の記載に有用な方法を以下に示す。
【0072】
(スイッチで標識されたDNA構築物の調製)
ビオチン化DNAオリゴヌクレオチドおよび/またはアミン修飾されたDNAオリゴヌクレオチド(「オリゴ類」)をOperonから購入し、PAGEによって精製した。アミン修飾されたオリゴ類を、合成後にアミン反応性シアニン染料(Amersham Bioscience)またはAlexa染料(Invitrogen)を用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従って標識した。染料によって標識されたオリゴ類を逆相HPLCで精製した。DNAの相補鎖をアニーリングし、10mM Tris−Cl(pH7.5)、50mM NaCl中で等モル量の2個の相補鎖を混合し、90℃まで2分間加熱し、混合物を加熱ブロックで1時間かけて室温まで冷却することによって、ビオチン化した二本鎖DNA(dsDNA)を得た。
【0073】
上述のように相補性オリゴ類をアニーリングし、A、BおよびCと称される3種の異なる45bpのdsDNAセグメントを作成し、連結反応させることによって、スイッチ間距離が135bpで種々の長さのビオチン化dsDNAを構築した。このオリゴ類は、5’→3’方向に読むと、AがBのみに連結し、BがCのみに連結し、CがAのみに連結するような、特異的な付着末端を用いて設計された。あるオリゴ類(A)は、アニーリング前にCy3およびCy5で特異的に標識された反対側の鎖とは離れた位置にアミン反応性部位である3塩基対を含有しており、光学スイッチを形成している。オリゴ類BおよびCは、鎖あたり2個の内部ビオチン修飾部を含有しており、ストレプトアビジン表面に多価結合を促進する。アニーリング後、オリゴ類を等しい濃度で混合し、T4リガーゼ(New England Biolabs)を用いて一晩連結させた。得られた連結産物を1.5%寒天ゲルで精製し、所望のコンカテマー化したdsDNA長を含有するバンドを選択した。
【0074】
(スイッチで標識された抗体の調製)
ヤギ抗マウスIgG二次抗体(AbcamまたはInvitrogen)およびヤギ抗ウサギ抗体(Abcam)を、アミン反応性Cy2またはCy3で非特異的に標識し(活性化部位の役割を果たす)、Cy5またはAlexa 647で非特異的に標識した(光放射部分の役割を果たす)。染料:抗体の平均比率は、RecA画像化の場合、Cy3では約2:1であり、Cy5では約0.1:1であった。微小管およびクラスリン画像化の場合、染料:抗体の比率は、Cy3またはCy2では約2:1であり、Alexa Fluor 647では約0.4:1であった。STORM画像化のために、種々のCy5:抗体の比率またはAlexa 647:抗体の比率を用いてもよく、例えば、0.8まで、または0.8を超える比率を用いてもよい。種々のCy3:抗体の比率およびCy2:抗体の比率も、有効なSTORM画像化のために用いることができる。上述の画像化の質は、Cy3(またはCy2):抗体の比率に対し、それほど高感度ではない。これらの標識化比率は、複数のCy5で標識された抗体では、スイッチングが非効率になるため、2個以上のCy5分子で標識される抗体の一部を最小限にするように選択した。1個の抗体に2個以上のCy3分子が存在しても、スイッチングを妨害しなかった。この標識化率で、かなりの割合の二次抗体がCy5を有しておらず、観察されなかった。標識の密度がこのように低いことは、典型的には、間接的な免疫蛍光画像化では問題とはならず、特に、RecA−プラスミド繊維または微小管の環状構造の解像を妨げなかった。
【0075】
(RecA繊維の調製)
0.1M炭酸バッファ(pH8.3)中で精製した組み換えRecA(New England Biolabs)とアミン反応性ビオチン−XX(Invitrogen)とを反応させることによって、ビオチン化RecAを調製した。得られたビオチン化タンパク質をNAP−5サイズ排除カラム(Amersham)で精製した。10mM Trisバッファ(pH7.0)、100mM NaCl、7mM MgCl2および0.8mg/mL ATP−γ−S(ATP−ガンマ−S)中で、RecA(ビオチン化物25%:非ビオチン化物75%、濃度80μg/mL)をプラスミドDNA(2μg/mL)とともに37℃で1時間インキュベーションすることによって、RecA繊維をΦXRF−II(Phi−XRF)プラスミドDNA(New England Biolabs)上に形成させた。得られたRecA−DNA繊維を4℃で保存し、その日のうちに画像化に使用した。
【0076】
(顕微鏡スライドの調製)
石英顕微鏡スライド(G.Finkenbeiner)をAlconox洗浄剤で洗浄し、次いでアセトン、1M KOH水溶液、エタノール、1M KOH水溶液中で、順に15分間超音波処理した。脂質二層用に調製するスライドは、2番目のKOH工程の後に、5%HF溶液に2時間浸した。最後に、スライドを脱イオン水で洗浄し、フレームドライした。両面接着テープ(3M)2片を用いてフローチャネルを調製し、1.5番のガラスカバースリップ(VWR)で覆った。
【0077】
(酸素捕捉系)
すべての画像化バッファに、酸素捕捉系を追加した。酸素捕捉系は、10%(w/v)グルコース(Sigma)、0.1%(v/v)β−メルカプトエタノール(Sigma)、500μg/mL グルコースオキシダーゼ(Sigma)および10μg/mL カタラーゼ(Roche)を含んでいた。酸素捕捉系は、フルオロフォアのフォトスイッチングの信頼性を高めるのに重要であった。いくつかの場合には、シアニン染料を効率よくフォトスイッチングさせるために、0.01%の低濃度のβ−メルカプトエタノールを使用することができる。他の実施形態では、β−メルカプトエタノールを、他の還元試薬(例えばグルタチオンおよびシステイン)と交換することもできる。
【0078】
(DNAおよび抗体の表面固定化)
標識されたdsDNAを表面に固定化するために、石英顕微鏡スライド(G.Finkenbeiner)をAlconox洗浄剤で洗浄し、1M KOH水溶液、エタノールおよび1M KOH水溶液中で、順に超音波処理した後、MilliQ水で洗浄し、フレームドライした。個々の分子が十分に分割され、光学的に解像可能なようにDNA分子の表面密度が低くなるように、最初にビオチン化ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)溶液(1.0mg/mL)をスライドに加え、次いで0.25mg/mL ストレプトアビジン(Invitrogen)を加え、最後にDNAサンプルを低濃度(約30pM)で加えた。スライドを洗浄した後、各試薬を加えた。
【0079】
3色STORM画像化用にDNA構築物を固定するために、3種の異なるDNA構築物(それぞれ、Alexa 405−Cy5対、Cy2−Cy5対またはCy3−Cy5対で標識)を溶液中で混合し、上述のように石英スライドに一緒に固定した。固定された分子の表面密度が高くなるように、濃度500pMのDNAを用いた。
【0080】
複数のスイッチで標識されたDNAサンプルを石英スライドに固定化するために、最初に、卵PCのリポソームおよび5%ビオチン−PE(Avanti)中に流すことによって、脂質二層をスライド上に形成させた。製造業者の指示にしたがってリポソームを形成させ、脂質の濃度5mg/脱イオン水(mL)で0.05μmフィルタ膜を押し出して通し、使用直前に、10mM Tris(pH8.0)、100mM NaClを含有するバッファと1:1の比率で混合した。2時間インキュベーションした後、この二層を50mM Tris(pH8.0)、10mM NaClで十分に洗浄し、二層をストレプトアビジン(0.25mg/mL、Invitrogen)とともに30分間インキュベーションした。十分に洗浄した後、ストレプトアビジン表面を4%(v/v)ホルムアルデヒドPBS液中で1時間架橋させ、Trisバッファで洗浄した後にビオチン化し、スイッチで標識されたDNAを結合させた。DNAを、上述の酸素捕捉系を含むTrisバッファ(50mM Tris−Cl(pH7.5)、10mM NaCl)中で画像化した。
【0081】
スイッチで標識された抗体を表面に固定化するために、石英スライドを上述のように洗浄し、マウス抗トランスフェリンIgG(Abcam)とともに5分間インキュベーションし、非特異的に結合させた。次いで、スライドを、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSバッファ中で、標識された二次抗体とともに10分間インキュベーションした。画像化用に、バッファを、酸素捕捉系を含有する50mM Tris、10mM
NaCl(pH7.5)と交換した。
【0082】
(RecA−dsDNA繊維の免疫蛍光画像化)
ビオチン化RecA−dsDNA繊維を、ビオチン化BSAで非特異的にコーティングした石英スライドにストレプトアビジン結合で接続した。次いで、この表面を50mM Tris(pH7.0)、100mM NaCl、7mM MgCl2、3%(w/v)BSA(ブロックバッファ)で洗浄し、30分間インキュベーションし、この表面に対する非特異的な抗体の結合を阻止した。次いで、RecAに対するモノクローナルマウス抗体(Stressgen)を2μg/mL含有する上述のブロックバッファ中でスライドを1時間インキュベーションした。ブロックバッファで十分に洗浄した後、スイッチで標識された二次抗体を0.3μg/mL含有する上述のブロックバッファ中でスライドを1時間インキュベーションした。最後に、サンプルを洗浄し、上述のような酸素捕捉系を追加した50mM Tris(pH7.5)、100mM NaCl、7mM MgCl2に画像化した。
【0083】
(細胞中の微小管およびクラスリン被覆ピットの免疫蛍光画像化)
ミドリザル腎臓BS−C−1細胞をLabTek II 8ウェルチャンバーのカバーガラス(Nunc)に密度30K/ウェルで置いた。16〜24時間後、これらをリン酸緩衝化食塩水(PBS)バッファで洗浄し、PBS中の3%ホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒドで室温で10分間固定し、PBS中の0.1%ホウ化水素ナトリウムで7分間クエンチし、未反応のアルデヒド基と、固定中に生成した蛍光産物を還元した。加水分解を防ぐために、ホウ化水素ナトリウム溶液は使用直前に調製した。固定したサンプルをブロッキングバッファ(3% BSA、0.5% Triton X−100、PBS中)で10分間浸透させ、チューブリンおよびクラスリンに対する一次抗体(2.5μg/mLマウス抗ベータ(β)チューブリン、Cytoskelton製ATN01および/またはウサギ抗クラスリン重鎖の場合2μg/mL、Abcam製ab21679)の片方または両方で、ブロッキングバッファ中で30分間染色した。次いで、サンプルを洗浄バッファ(0.2% BSA、0.1% Triton X−100、PBS中)で3回洗浄した。光スイッチング可能なプローブで標識された対応する二次抗体(2.5μg/mL)をブロッキングバッファ中でサンプルに加え、30分後に十分に洗浄した。50mM Tris(pH7.5)、10mM NaCl、0.5mg/mL グルコースオキシダーゼ(Sigma、G2133)、40μg/mL カタラーゼ(Roche Applied Science、106810)、10%(w/v)グルコースおよび1%(v/v)β−メルカプトエタノールを含有する標準的な画像化バッファ中で細胞画像化を行った。β−メルカプトエタノールは、Cy5、Cy5.5およびCy7のフォトスイッチングの挙動を観察することによって重要であることがわかっているが、低濃度のβ−メルカプトエタノール(0.02%(v/v)または潜在的にはこれより低い)でさえ、フォトスイッチングに役立った。β−メルカプトエタノールは、低濃度(0.1%)で、生きている細胞の画像化が可能であった。β−メルカプトエタノールをシステイン(100mM)と交換してもフォトスイッチングが観察され、この条件で生きている細胞の画像化も可能であった。グルコースオキシダーゼを酸素捕捉系として使用し、シアニン染料の光安定性を高め、細胞は、報告されたグルコースオキシダーゼ濃度で少なくとも30分間生存可能であった。
【0084】
ヤギ抗マウス抗体(Invitrogen)およびヤギ抗ウサギ抗体(Abcam)を、それぞれアミン反応性活性化剤およびレポーターの混合物で標識した。Alexa 405、Cy2およびCy3をフォトスイッチの活性化部分として使用した。Alexa 647(Invitrogen)は、Cy5と非常によく似た構造および光学特性を有しているが、これをフォトスイッチの光放射部分として使用した。それぞれの抗体が、平均で、2個の活性化染料と、0.3〜0.4の光放射染料とを有するように、反応性染料の濃度を制御した。画像化手順。Olympus IX71顕微鏡を用いて、フォトスイッチの特性決定、DNAコンカテマー画像化およびRecA−dsDNA画像化を行った。プリズム型全反射蛍光(TIRF)撮像幾何を用いて、単分子画像化を行った。サンプルを657nmのレーザで励起させ、532nm、457nmまたは405nmのレーザで活性化した。染料の蛍光放射を、N.A.1.25 60倍浸水対物で集め、665nmロングパスフィルタ(Chroma)を通した後、電子増倍型CCDカメラ(Andor
Ixon DV897)で画像化した。サンプルのステージの移動を追跡するために、200nmの赤色蛍光ポリスチレンビーズ(Invitrogen、F−8810)を、10mM MgCl2を含有するTrisバッファ中でスライドに加え、表面に結合させた。Labviewで書き込まれたカスタムデータ獲得ソフトウェアでデータを得て、サンプルに交互に照射される赤色レーザ励起パルスおよび緑色レーザ励起パルスの連続シーケンスが可能になり、染料がオンオフにスイッチングされる。レーザ励起は、1msの精度でカメラの露光と同期化された。
【0085】
DNAコンカテマーの画像化実験は、典型的には、スイッチを活性化させ、不活性化させるために、60回のレーザパルスサイクルを含んでおり、各サイクルは5秒間続き、最終的な画像を得るのに5分間かかった。重心位置の分布を示す複数のクラスター形状は、典型的には2分以内に現れた。抗体で標識されたRecA−dsDNA繊維に関する実験は、70回のスイッチングサイクルを含んでおり、各サイクルは10秒間続いた。RecA−dsDNA繊維の環状の形状は、典型的には、2分以内に明らかになったが、サンプル中の各スイッチの存在位置は、この時点ではまだ特定されていなかった。スイッチング速度は、励起強度、サイクル時間に線形に依存するため、赤色レーザの強度を上げることによって、位置特定の精度に実質的に影響を与えることなく、最終的な画像化時間を短くすることができた。緑色レーザの強度は、典型的には、緑色パルス照射中に1〜3個のスイッチがオンにスイッチングするように選択し、ほとんどの場合では、すべての活性化したスイッチが、そのサイクルの赤色照射中にオフに切り替わった。
【0086】
STORMで再構築した画像と比較するために、それぞれのスイッチが、蛍光状態または暗状態の維持時間にかかわらず、等しくあらわされるように、画像化シーケンス全体で最大蛍光値を各ピクセルで記録することによって、RecA−dsDNAの生画像を作成した。
【0087】
Olympus IX71倒立顕微鏡を用いて、プリズム型TIRF構成で、DNAサンプルの3色STORM画像化を行った。633nmのHeNeレーザを画像化レーザとして使用し、紫色レーザ(405nm)、青色レーザ(457nm)および緑色レーザ(532nm)を活性化光源として使用した。最初に、サンプルに赤色画像化光を照射し、視野にあるほぼすべてのCy5染料をオフにスイッチングさせた。次いで、一連の紫色、青色および緑色のレーザパルスでサンプルを周期的に活性化し、それぞれのレーザパルスは、フルオロフォアの一部分をまばらに、光学的に解像可能に活性化し、次いで、これを赤色レーザで画像化した。これらのプローブからの蛍光をロングパス放射フィルタ(Chroma、HQ645LP)に通した後、CCDカメラで検出した。STORMデータを得ている間、カメラは、一定のフレーム速度19Hzで蛍光シグナルを記録した。それぞれのスイッチングサイクルで、活性化レーザの1種類が1フレームで照射された後、赤色画像化レーザが9フレームで照射された。
【0088】
対物型TIRF画像化構成を有するOlympus IX71顕微鏡で、細胞のSTORM画像化を行った。カスタム多色ビームスプリッタ(z458/514/647rpc、Chroma)は、対物(100倍の油、NA 1.4、UPlanSApo、Olympus)を通ってサンプルに励起レーザ光を反射し、サンプルからの蛍光放射を同じ対物によって集めた。放射光を2個の組み合わせたデュアルバンド放射フィルタ(51007m、Chromaおよび595−700DBEM、Omega Optical)にかけた後、EMCCDカメラで画像化した。デュアルバンドエミッタを使用することにより、レポーター染料の蛍光に加え、Cy3からの蛍光を集めることができる。緑色活性化レーザを照射するフレーム中に集めたCy3蛍光をドリフト補正のために使用し、従来の蛍光画像を作成するのに使用した。Alexa 647をフォトスイッチの光放射部分として用い、Cy3を活性化部分として用いた単色STORM画像化のために、赤色レーザ(657nm)を画像化に使用し、緑色レーザパルス(532nm)を活性化のために使用した。Cy2およびCy3を活性化部分として使用する2色STORM画像化の場合、青色および緑色のレーザパルス(457nmおよび532nm)を活性化のために交互に使用した。フレーム速度19Hzで画像を得た。それぞれのスイッチングサイクルで、活性化レーザの1種類が1フレームで照射された後、赤色画像化レーザが9フレームで照射された。STORM画像化で使用する典型的なレーザ出力は、赤色レーザの場合40mWであり、それぞれの活性化レーザの場合2μWであった。画像分析。画像分析の一例では、最初に、データ分析のために、平均化した画像の蛍光構造を13×13ピクセル平方のフィッティングウィンドウで切り取った。所与のウィンドウで、合計蛍光強度を各フレームで積算し、蛍光時間結果を得た(図6を参照)。いくつかの基準を使用し、1個のスイッチの高精度位置特定を行った。
【0089】
(1)各スイッチングサイクルで、少なくとも3個のフレーム(0.3秒)で1個のスイッチのみがオンである領域のみを位置特定分析で使用した(図6を参照)。
【0090】
(2)これらの領域にある蛍光画像を、非線形最少二乗回帰で連続的な楕円Gaussian:
【0091】
【数1】
式中、
【0092】
【数2】
にフィッティングさせた。
【0093】
ここで、Aは、バックグラウンド蛍光レベルであり、I0は、ピークの振幅であり、aおよびbは、x方向およびy方向に沿ったGaussian分布の幅を反映しており、x0およびy0は、ピークの中心座標を記述するものであり、θ(シータ)は、ピクセル縁に対する楕円の傾斜角である。このフィッティングに基づき、
【0094】
【数3】
であると定義されるピーク楕円率を算出した。この楕円率が15%を超える場合、画質が悪いか、または複数の活性スイッチが存在する可能性を示し、この領域は分析から除外した。
【0095】
(3)そのピークで集めたカウントの合計数を2πabI0(2パイabI0)として算出し、光電子に変換し、電子の増倍および画像化中に使用するADCゲイン設定のために、カメラ製造業者の較正曲線を用いて光子の数を検出した。そのピークの光電子の合計数が2,000未満であった場合、高い位置特定精度を達成するのに統計的に十分ではないため、その領域は除外した。
【0096】
上述の試験に合格した蛍光トレースの領域を、最終的な位置特定分析で使用した。これらの領域に対応する蛍光画像を、ピクセルにしたGaussian関数を用いて最終的にフィッティングさせ、重心位置を決定した。CCDチップが有限サイズの平方ピクセルを含んでいるため、精度を最適化するために、画像を以下にフィッティングさせた:
【0097】
【数4】
これを、評価を簡単にするために、誤差関数の観点から以下のように表しなおすことができる:
【0098】
【数5】
式中、A、I0、a、b、x0およびy0は上に定義したとおりであり、δ(デルタ)は、目的平面のピクセルの固定した半幅である。このフィッティングで得た最終的な重心の座標(x0,y0)を、最終的なSTORM画像の1個のデータ点として使用した。
【0099】
画像分析の別の例では、活性化フレーム(例えば、中に活性化レーザあり)および画像化フレーム(例えば、中に画像化レーザあり)の繰り返しを備えた動画を調製した。それぞれの画像化フレームで、蛍光スポットを特定し、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。連続した画像化フレームで1カメラピクセルよりも小さな変位であらわれるピークは、同じ蛍光分子由来のものであると考えられ、これらのピークの重心位置をフレーム全体でつなげ、データ構造にまとめる。このことを「ストリング(string)」と称する。各ストリングは、1個の蛍光レポーター分子の1個のスイッチングサイクルをあらわし、ストリングの出発点は、分子がオンにスイッチングするフレームであり、終点は、その分子がオフにスイッチングするフレームである。分子の最終的な位置は、ストリング全体にわたる重心位置の重量平均として決定され、各フレームのピーク強度によって重量測定された。各スイッチングサイクルで検出された光子の合計数をさらなるフィルタとして使用し、精度の低い位置特定をさらに排除した。活性化フレームの直後に画像化フレームから出発するストリングは、制御された活性化事象であると認識することができ、活性化レーザの色によって色分けされていてもよい。他のストリングは、非特異的な活性化であると特定され、ほとんどは、赤色画像化レーザによって誘発されたものであると考えられる。
【0100】
画像化中の顕微鏡の機械的なドリフトを補正するために、同じフィッティングアルゴリズムを使用し、視野にあるいくつかの蛍光ビーズの動きを自動で調べた。ビーズは基準マークの役割を果たし、各画像化サイクル中に、ビーズの位置をサンプリングした。ビーズの平均化した動きを、各1個のスイッチの位置から得た座標から引き、ドリフト補正して再構築した画像を得た。
【0101】
別のドリフト補正法として、活性化フレームで活性化剤フルオロフォアを画像化し、第1の活性化フレームとその後のすべての活性化フレームとの相関関数を算出した。上述の相関関数の重心を調べることにより、画像のドリフトを決定し、STORM画像を補正した。基準マーカーの画像から得た相関関数をドリフト補正に使用してもよい。いくつかの場合には、STORM画像の相関関数自体を時間の関数として分析することによって、いくつかのさらなるドリフト補正が可能であることもわかった。
【0102】
dsDNA上に等間隔にあるスイッチを用いて、画像の定量分析をする場合、再構築した画像の座標をk平均クラスタリングアルゴリズムを用いて分類し、スイッチ間の距離をクラスターの重心間の距離として算出した。上述のアルゴリズムへのクラスターの入力数は、最初の赤色光照射中に観測される光退色工程の数によって選択した。
【0103】
(DNA形状の予測)
表面に結合したdsDNAの135bp片の可能な形状は、DNAのMonte Carloシミュレーションによって、平面に虫様形状の鎖であると算出された。dsDNAのWatson−Crick構造によれば、Cy5分子をヌクレオチドに接続するC6リンカーの長さを説明することができ、隣にあるCy5分子との輪郭長さの予想値は46±1nmであると算出された。平面内にある一連の1Å(オングストローム)接続部としてDNAを処理し、それぞれ、持続長50nmを与えるように選択されたGaussian分布から選択されるランダムな角度で曲っている。スイッチ間の距離の測定値を、この状況でのポリマーの末端から末端までの距離の分布と比較した。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載し、図示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施し、および/または本明細書に記載の結果および/または1つ以上の利点を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想像でき、このような変形例および/または改変例はそれぞれ、本発明の範囲内にあると考えられる。さらに一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、物質および構成は例示を意図しており、実際のパラメータ、寸法、物質および/または構成は、本発明の教示内容が使用される特定の1つ以上の適用例に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、通常の実験を超えない範囲で、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解するか、または解明することができるであろう。したがって、上述の実施形態が単に一例をあらわすものであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、特定的に記載され、特許請求の範囲に記載されたもの以外のやり方で実施してもよいことを理解するべきである。本発明は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。それに加え、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾していない場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【0105】
すべての定義は、本明細書で定義され、使用される場合、辞書の定義、参考として組み込まれる文書に記載の定義、および/または定義された用語の一般的な意味よりも優先すると理解されるべきである。
【0106】
不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、矛盾する意味が明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0107】
句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、その接続された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合には接続的に存在する要素、他の場合には非接続的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素は、同じ様式で解釈されるべきである。すなわち、接続された要素の「1つ以上」であると解釈されるべきである。「および/または」の節で特定的に特定された要素以外の他の要素が任意に存在してもよく、他の要素は、特定的に特定された要素と関係ある要素でもよいし、無関係な要素であってもよい。したがって、非限定例として、「Aおよび/またはB」とは、例えば「〜を含む」のような非限定な語句と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(B以外の要素を任意に含む)を指し、別の実施形態では、Bのみ(A以外の要素を任意に含む)を指し、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(他の要素を任意に含む)などを指す。
【0108】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上に定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストで項目に分けられている場合、「または」または「および/または」は、包括的に解釈されるべきであり、すなわち、多くの要素または要素のリストのうち、少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意に、列挙されていない項目をさらに含むと解釈されるべきである。それとは反対に、示されているもののみを示す用語、例えば、「〜のうち1つのみ」または「〜のうち実際に1つ」または請求項で使用される場合、「〜からなる」は、多くの要素または要素のリストのうち、実際に1つの要素を含むことを指す。一般的に、用語「または」は、本明細書で使用される場合、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「〜のうち1つ」、「〜のうち1つのみ」または「実際に〜のうち1つ」)が前にある場合、排他的な代替物のみを示すと解釈される(すなわち、「片方または他方であり、両方ではない」)。「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で通常使用される意味を有する。
【0109】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素のリストを参照している場合、その要素のリストにある任意の1つ以上の要素から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、その要素のリストに特定的に列挙された各要素およびすべての要素のうち少なくとも1つを必ず含むわけではなく、その要素のリストにある要素の任意の組み合わせを排除するものではないと理解されるべきである。この定義では、要素が、任意に、句「少なくとも1つ」が指す要素のリストに特定的に特定された要素以外の要素(特定的に特定された要素と関係のある要素であってもよいし、無関係の要素であってもよい)が存在してもよい。したがって、非限定例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ」(または、同じ意味で、「AまたはBのうち少なくとも1つ」、または同じ意味で、「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のAを含み、Bが存在しないこと(B以外の要素を任意に含む)を指し、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のBを含み、Aが存在しないこと(A以外の要素を任意に含む)を指し、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意に2つ以上のBを含むこと(他の要素を任意に含む)などを指す。
【0110】
矛盾する意味が明確に示されていない限り、2つ以上のステップまたは工程を含む本明細書で請求される任意の方法では、その方法のステップまたは工程の順序は、本方法のステップまたは工程操作が列挙されている順序に必ずしも限定されるものではないことも理解されるべきである。
【0111】
特許請求の範囲および上の記載では、すべての移行句(例えば、「〜を含む(comprising)」、「〜を含む(including)」、「〜を有する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を含有する(containing)」、「〜を含む(involving)」、「〜を保持する(holding)」、「〜から構成される(composed of)」などは、非限定的であると理解されるべきである。すなわち、含むことを意味するが限定するものではないと理解されるべきである。移行句の中で、「〜からなる」および「〜から本質的になる」は、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03に記載されるように、それぞれ、限定的な移行句または半限定的な移行句である。
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明の様々な局面へ導く研究は、少なくとも一部を、高等研究計画局および国立衛生研究所によって後援された。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、優先権関連の以下の列挙のすべてに対する優先権を主張する。本出願は、2006年11月29日に出願された米国仮特許出願第11/605,842号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution and other Imaging Techniques」)に対する優先権を主張し、この米国仮特許特許出願第11/605,842号は、2006年8月7日に出願された米国仮特許特許出願第60/836,167号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution」)の優先権、および2006年8月8日に出願された米国仮特許特許出願第60/836,170号(発明の名称:「Sub−Diffraction Image Resolution」)の利益を主張する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
蛍光顕微鏡法は、分子生物学および細胞生物学、およびその他の非侵襲性の時間分解画像化用途において広く使用されている。これらの利点にもかかわらず、標準的な蛍光顕微鏡法は、光の回折によって解像度に限界があるため、超微細構造の画像化には有用ではない。この回折限界を超えるために、近接場光学顕微鏡法(NSOM)、多光子蛍光、誘導放出抑制(STED)、可逆的飽和性光学蛍光遷移(reversible saturable optical linear fluorescence transition)(RESOLFT)および飽和構造化照射顕微鏡法(saturated structured−illumination microscopy)(SSIM)を含むいくつかのアプローチが用いられているが、どれも不満の残る限界を有している。電子顕微鏡法は、生体サンプルの高解像度画像化のために使用されることが多いが、電子顕微鏡法は、光ではなく電子を使用し、電子を調製する必要があるため、生体サンプルに用いるのは困難である。したがって、蛍光顕微鏡法の利点を、生体サンプルおよび他のサンプルの超高解像度画像化法に活用する、新しい技術が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目2)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが異なる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが実質的に同じである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の物体および前記第2の物体が、異なる波長によって活性化される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の物体および前記第2の物体が、実質的に同じ波長によって活性化される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記第1の物体を活性化させ、前記第1の物体から放射される光を発生することを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が活性化する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第1の物体から放射される光を発生させないように、前記第1の物体を不活性化することを含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記第2の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記第2の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記第1の物体を不活性化することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1の物体を不活性化させる工程の後に、前記第2の物体を活性化し、光を発生させる工程が行われる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1の物体が、前記第2の物体とは化学的に異なっている、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記第1の物体が、前記第2の物体と化学的に実質的に同じである、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記第1の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブであり、前記第2の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記第1の物体が、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記第1の物体が、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記第2の物体が、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記第2の物体が、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記第1の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目22に記載の方法。
(項目31)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目22に記載の方法。
(項目32)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目22に記載の方法。
(項目33)
前記第2の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目22に記載の方法。
(項目34)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目33に記載の方法。
(項目39)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目33に記載の方法。
(項目40)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目33に記載の方法。
(項目41)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目33に記載の方法。
(項目42)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目33に記載の方法。
(項目43)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目33に記載の方法。
(項目44)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目33に記載の方法。
(項目45)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目33に記載の方法。
(項目46)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目33に記載の方法。
(項目47)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目33に記載の方法。
(項目48)
前記第1の物体および前記第2の物体がスイッチング可能である、項目1に記載の方法。
(項目49)
前記第1の物体から放射される光が可視光である、項目1に記載の方法。
(項目50)
前記第1の物体および前記第2の物体が、共通の物体に固定される、項目1に記載の方法。
(項目51)
前記共通の物体が生体分子複合体を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記共通の物体が生体分子を含む、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記生体分子が核酸である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記第1の物体と前記第2の物体とを隔てている塩基の数を決定することをさらに含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記生体分子がDNAである、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記生体分子がRNAである、項目53に記載の方法。
(項目57)
前記生体分子がPNAである、項目53に記載の方法。
(項目58)
前記生体分子がタンパク質である、項目52に記載の方法。
(項目59)
前記共通の物体が細胞である、項目50に記載の方法。
(項目60)
前記共通の物体が組織である、項目50に記載の方法。
(項目61)
前記共通の物体が生体物質ではない、項目50に記載の方法。
(項目62)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程とを繰り返す、項目1に記載の方法。
(項目63)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程が、前記第1の物体から放射される光の画像を得ることを含む、項目1に記載の方法。
(項目64)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目65)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目65に記載の方法。
(項目68)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目69)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約100nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目70)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約50nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目71)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約20nmの精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目72)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、前記第1の物体および/または前記第2の物体から放射される光の波長未満の精度で決定される、項目1に記載の方法。
(項目73)
前記第1の物体と前記第2の物体とが、約700nm未満の距離によって隔てられている、項目1に記載の方法。
(項目74)
前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記第1の物体から放射される光の波長または前記第2の物体から放射される光の波長未満の距離によって隔てられている、項目1に記載の方法。
(項目75)
第1の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、項目1に記載の方法。
(項目76)
2つ以上の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目77)
前記工程が、列挙した順に行われる、項目1に記載の方法。
(項目78)
約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体を活性化し、前記第2の物体を活性化しないことと;
前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体を活性化することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目79)
ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目80)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが異なる、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とが実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目82)
前記第1の物体を活性化するのに使用する光の波長と、前記第2の物体を活性化するのに使用する光の波長とが異なる、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記第1の物体を活性化するのに使用する光の波長と、前記第2の物体を活性化するのに使用する光の波長とが実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目84)
前記第1の物体を活性化させ、前記第1の物体から放射される光を発生することを含む、項目79に記載の方法。
(項目85)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が活性化する、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記第1の物体から放射される光を発生させないように、前記第1の物体を不活性化することを含む、項目84に記載の方法。
(項目87)
前記第2の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記第1の物体を第1の波長を有する入射光にさらすことによって、前記第1の物体が不活性化する、項目86に記載の方法。
(項目89)
前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目79に記載の方法。
(項目90)
前記第2の物体を活性化し、光を発生させることをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記第1の物体を不活性化することをさらに含む、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記第1の物体を不活性化させる工程の後に、前記第2の物体を活性化し、光を発生させる工程が行われる、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記第1の物体が、前記第2の物体とは化学的に異なっている、項目79に記載の方法。
(項目94)
前記第1の物体が、前記第2の物体と化学的に実質的に同じである、項目79に記載の方法。
(項目95)
前記第1の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブであり、前記第2の物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目79に記載の方法。
(項目96)
前記第1の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目79に記載の方法。
(項目97)
前記第1部分である光放射部分がCy5である、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記第1部分である光放射部分がCy5.5である、項目96に記載の方法。
(項目99)
前記第1部分である光放射部分がCy7である、項目96に記載の方法。
(項目100)
前記第1部分である光放射部分がAlexa Fluor 647である、項目96に記載の方法。
(項目101)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 405である、項目96に記載の方法。
(項目102)
前記第2部分である活性化部分がAlexa Fluor 488である、項目96に記載の方法。
(項目103)
前記第2部分である活性化部分がCy2である、項目96に記載の方法。
(項目104)
前記第2部分である活性化部分がCy3である、項目96に記載の方法。
(項目105)
前記第2部分である活性化部分がCy3.5である、項目96に記載の方法。
(項目106)
前記第2部分である活性化部分がCy5である、項目96に記載の方法。
(項目107)
前記第2の物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目79に記載の方法。
(項目108)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目107に記載の方法。
(項目110)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に同じではなく、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に同じではない、項目107に記載の方法。
(項目111)
前記第1の物体の第1部分と、前記第2の物体の第1部分とが、化学的に実質的に同じであり、前記第1の物体の第2部分と、前記第2の物体の第2部分とが、化学的に実質的に同じである、項目107に記載の方法。
(項目112)
前記第1の物体から放射される光が可視光である、項目79に記載の方法。
(項目113)
前記第1の物体および前記第2の物体が、共通の物体に固定される、項目79に記載の方法。
(項目114)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程とを繰り返す、項目79に記載の方法。
(項目115)
前記第1の物体から放射される光を決定する工程が、前記第1の物体から放射される光の画像を得ることを含む、項目79に記載の方法。
(項目116)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目117)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目116に記載の方法。
(項目118)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目117に記載の方法。
(項目120)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目79に記載の方法。
(項目121)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置が、前記第1の物体または前記第2の物体から放射される光の波長よりもおおきな精度で決定される、項目79に記載の方法。
(項目122)
第1の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、項目79に記載の方法。
(項目123)
2つ以上の時間点で前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目79に記載の方法。
(項目124)
ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記第1の物体を活性化し、前記第2の物体を活性化しないことと;
前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定することと;
前記第2の物体を活性化することと;
前記第2の物体から放射される光を決定することと;
前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目125)
光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、放射される光の波長未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供することと;
前記複数の物体の一部分を活性化し、光を放射させることと;
前記放射される光を決定することと;
前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化することと;
前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返して、前記複数の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目126)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長で光を放射する、項目125に記載の方法。
(項目127)
前記複数の物体が、各々実質的に同じ波長で光を放射する、項目125に記載の方法。
(項目128)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長の光によって活性化される、項目125に記載の方法。
(項目129)
前記複数の物体が、実質的に同じ波長の光によって活性化される、項目125に記載の方法。
(項目130)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体に照射することによって、前記複数の物体の一部分が活性化する、項目125に記載の方法。
(項目131)
第2の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目125に記載の方法。
(項目132)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目125に記載の方法。
(項目133)
前記複数の物体の少なくともいくつかが化学的に異なっている、項目125に記載の方法。
(項目134)
前記複数の物体が化学的に実質的に同じである、項目125に記載の方法。
(項目135)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目125に記載の方法。
(項目136)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目125に記載の方法。
(項目137)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目136に記載の方法。
(項目138)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目136に記載の方法。
(項目139)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目136に記載の方法。
(項目140)
前記複数の物体の第1部分が化学的に実質的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目136に記載の方法。
(項目141)
前記放射光が可視光である、項目125に記載の方法。
(項目142)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、共通の物体に固定される、項目125に記載の方法。
(項目143)
前記放射光を決定する工程が、前記放射光の画像を得ることを含む、項目125に記載の方法。
(項目144)
前記複数の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目125に記載の方法。
(項目145)
前記複数の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目144に記載の方法。
(項目146)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目145に記載の方法。
(項目147)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目145に記載の方法。
(項目148)
前記複数の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目125に記載の方法。
(項目149)
前記複数の物体の位置が、前記複数の物体から放射される光の波長よりも大きな精度で決定される、項目125に記載の方法。
(項目150)
第1の時間点で前記複数の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記複数の物体の位置を決定することとを含む、項目125に記載の方法。
(項目151)
2つ以上の時間点で前記複数の物体の位置を決定することおよび/または時間の関数として前記複数の物体の位置を決定することを含む、項目125に記載の方法。
(項目152)
前記工程が、列挙した順に行われる、項目125に記載の方法。
(項目153)
光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、約1000nm未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供することと;
前記複数の物体の一部分を活性化し、光を放射させることと;
前記放射される光を決定することと;
前記複数の物体の前記活性化した部分を不活性化することと;
前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定することとを含む、方法。
(項目154)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長で光を放射する、項目153に記載の方法。
(項目155)
前記複数の物体が、各々実質的に同じ波長で光を放射する、項目153に記載の方法。
(項目156)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、異なる波長の光によって活性化される、項目153に記載の方法。
(項目157)
前記複数の物体が、実質的に同じ波長の光によって活性化される、項目153に記載の方法。
(項目158)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を活性化する、項目153に記載の方法。
(項目159)
第2の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目153に記載の方法。
(項目160)
第1の波長を有する入射光を前記複数の物体の一部分に照射することによって、前記複数の物体の一部分を不活性化する、項目153に記載の方法。
(項目161)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目153に記載の方法。
(項目162)
前記プローブの少なくともいくつかが、光活性化可能な染料または光スイッチング可能な染料である、項目161に記載の方法。
(項目163)
前記プローブの少なくともいくつかが、光活性化可能な蛍光タンパク質または光スイッチング可能な蛍光タンパク質である、項目161に記載の方法。
(項目164)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目153に記載の方法。
(項目165)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じであり、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目164に記載の方法。
(項目166)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に実質的に同じである、項目164に記載の方法。
(項目167)
前記複数の物体の第1部分が化学的に同じではなく、前記複数の物体の第2部分が化学的に同じではない、項目164に記載の方法。
(項目168)
前記複数の物体の少なくともいくつかが、共通の物体に固定される、項目153に記載の方法。
(項目169)
前記放射光を決定する工程が、前記放射光の画像を得ることを含む、項目153に記載の方法。
(項目170)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、前記放射光のGaussianフィッティングを用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することを含む、項目153に記載の方法。
(項目171)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目170に記載の方法。
(項目172)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目171に記載の方法。
(項目173)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目171に記載の方法。
(項目174)
前記複数の物体の位置が、少なくとも約300nmの精度で決定される、項目153に記載の方法。
(項目175)
前記複数の物体の位置が、前記第1の物体から放射される光の波長未満の精度で決定される、項目153に記載の方法。
(項目176)
第1の時間点で前記複数の物体の位置を決定することと、第2の時間点で前記複数の物体の位置を決定することとを含む、項目153に記載の方法。
(項目177)
約1000nm未満の距離で隔てられ、各々共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供することと;
第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動を決定することとを含む、方法。
(項目178)
ある距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供することと;
前記隔てられたある距離より大きな波長を有する前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定することと;
前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動を決定することとを含む、方法。
(項目179)
時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定することと;
各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定することと;
各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築することとを含む、方法。
(項目180)
前記光放射領域の中心を同定する工程が、Gaussian関数に対する最少二乗法を用いることを含む、項目179に記載の方法。
(項目181)
前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程が、ドリフト補正を用いて、前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定することをさらに含む、項目179に記載の方法。
(項目182)
前記ドリフト補正が、基準マーカーを用いて行われる、項目181に記載の方法。
(項目183)
前記ドリフト補正が、画像相関を用いて行われる、項目181に記載の方法。
(項目184)
前記1つの物体が、光活性化可能なプローブまたは光スイッチング可能なプローブである、項目179に記載の方法。
(項目185)
前記1つの物体が、第1部分である光放射部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分である活性化部分とを含む、項目179に記載の方法。
(項目186)
前記1つ以上の光放射領域の位置を再構築したものを用いて、画像を作成することをさらに含む、項目179に記載の方法。
(項目187)
時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と;
各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と;
各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む方法を機械に実行させるために、媒体に組み込まれたプログラムを備える機械可読媒体を含む、物品。
(項目188)
約100nm/分未満のドリフトを有する顕微鏡用の移動ステージを備える、物品。
(項目189)
前記移動ステージが、約10nm/分未満のドリフトを有する、項目188に記載の物品。
(項目190)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を、プログラムされた様式で作動させ、停止させることが可能である、項目188に記載の物品。
(項目191)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を、周期的な様式で作動させ、停止させることが可能である、項目188に記載の物品。
(項目192)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源をシャッターを用いて調節することが可能である、項目189に記載の物品。
(項目193)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源をさらに備え、この光源を音響光学変調器を用いて調節することが可能である、項目189に記載の物品。
(項目194)
前記移動ステージに光学的に連結した位置に光検出器をさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目195)
前記光検出器が、フォトダイオード、光電子増倍器またはCCDカメラを備える、項目194に記載の物品。
(項目196)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された2つ以上の光源をさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目197)
前記2つ以上の光源のうち少なくとも2つは、異なる波長で光を放射する、項目196に記載の物品。
(項目198)
光源から前記移動ステージに直接光があたるように配置された二色性ミラーまたは多色性ミラーを備える、項目189に記載の物品。
(項目199)
前記移動ステージの少なくとも一部分に照射するように配置された光源と、前記移動ステージに照射する前に、前記光源から放射される光の少なくとも一部分を変えるように配置されたカラーフィルタとをさらに備える、項目189に記載の物品。
(項目200)
第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とにスイッチング可能な、光を放射する物体を含む、画像化組成物。
(項目201)
前記光を放射する物体と区別可能であり、第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とにスイッチング可能な、第2の光を放射する物体をさらに含む、項目200に記載の画像化組成物。
(項目202)
前記光を放射する物体が、
前記第1の波長で光を放射可能な第1部分と;
外的刺激にさらされると、前記第1の部分を活性化させ、前記第1の波長で前記第1部分から光を放射させる第2部分とを含む、項目200に記載の画像化組成物。
(項目203)
励起波長を有する光にさらされると、前記第2部分が前記第1部分を活性化させる、項目202に記載の画像化組成物。
(項目204)
前記第1部分が前記第2部分と共有結合している、項目202に記載の画像化組成物。
(項目205)
前記第1部分および前記第2部分が、各々共通の物体に結合している、項目202に記載の画像化組成物。
(項目206)
前記第1部分が、前記第2部分から切り離されると蛍光性である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目207)
前記第2部分が、前記第1部分から切り離されると蛍光性である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目208)
前記第1部分が、Cy5、Cy5.5、Cy7またはAlexa Fluor 647である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目209)
前記第2部分が、Alexa Fluor 405、Cy2、Alexa Fluor
488、Cy3またはCy3.5である、項目202に記載の画像化組成物。
(項目210)
前記第1部分および前記第2部分が、約50nm以下の距離で隔てられている、項目202に記載の画像化組成物。
(項目211)
前記光を放射する物体と区別可能な第2の光を放射する物体をさらに含み、この第2の光を放射する物体が、第1の波長で光を放射可能な第1部分と、外的刺激にさらされると前記第1部分を活性化する第2部分とを含み、それにより前記第1部分が前記第1の波長で光を放射する、項目202に記載の画像化組成物。
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。本発明の主題は、いくつかの場合には、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的な解決法、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる用途に関する。
【0006】
一態様では、本発明は、方法である。ある一連の実施形態では、この方法は、約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。別の一連の実施形態では、この方法は、約1000nm未満の距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化する工程と、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体を活性化する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0007】
本方法は、さらに別の一連の実施形態によれば、光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、約1000nm未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供する工程と、前記複数の物体の一部分を活性化して光を放射させる工程と、前記放射される光を決定する工程と、前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化する工程と、前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0008】
別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。さらに別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられた第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記第2の物体を活性化させずに、前記第1の物体を活性化する工程と、前記隔てられた距離よりも大きな波長を有する、前記第1の物体から放射される光を決定する工程と、前記第2の物体を活性化する工程と、前記第2の物体から放射される光を決定する工程と、前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて前記第1の物体の位置および前記第2の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0009】
ある一連の実施形態では、本方法は、光を放射することが可能で、そのうちのいくつかは、放射される光の波長未満の距離で隔てられている、複数の物体を提供する工程と、前記複数の物体の一部分を活性化して光を放射させる工程と、前記放射される光を決定する工程と、前記複数の物体のうち、前記活性化した部分を不活性化する工程と、前記複数の物体を活性化し、不活性化する工程を繰り返し、前記複数の物体の位置を決定する工程とを含む。
【0010】
別の一連の実施形態では、本方法は、約1000nm未満の距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動および/または構造の変化を決定する工程とを含む。いくつかの場合には、この物体は、時間内に解像されても画像化されてもよい。これらの物体の片方または両方は、いくつかの場合には、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。2つの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。さらに別の一連の実施形態では、本方法は、ある距離で隔てられ、共通の物体に固定されている第1の物体と第2の物体とを提供する工程と、前記隔てられたある距離より大きな波長を有する前記第1の物体から放射される光と、前記第2の物体から放射される光とを用いて、第1の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、第2の時間点で前記第1の物体および前記第2の物体の位置を決定する工程と、前記第1の時間点および前記第2の時間点での前記第1の物体および前記第2の物体の位置を用いて、前記共通の物体の移動および/または構造の変化を決定する工程とを含む。いくつかの場合にはこの物体は、時間内に解像されても画像化されてもよい。これらの物体の片方または両方は、いくつかの場合には、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。2つの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。
【0011】
さらに別の一連の実施形態では、本方法は、時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と、各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と、各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む。これらの物体のいくつかまたはすべては、光活性化可能であっても光スイッチング可能であってもよい。これらの物体は、化学的に同じであっても別のものであってもよく、例えば、多色画像化可能なものであってもよい。
【0012】
別の態様では、本発明は、約100nm/分未満のドリフトを有する顕微鏡用の移動ステージを備える物品、および/または周期的な様式および/またはプログラムされた様式でオンオフを切り替えることが可能な時間によって調節される光源を備える物品、および/または蛍光放射を検出するための検出器を備える物品に関する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、画像化組成物に関する。この組成物は、ある一連の実施形態によれば、第1の放射波長で光を放射可能な第1状態と、第1の放射波長では実質的に光を放射しない第2状態とに可逆的または不可逆的にスイッチング可能な光を放射する物体を含む。一実施形態では、光を放射する物体は、前記第1の波長で光を放射可能な第1部分と、外的刺激にさらされると、前記第1の物体を活性化させ、前記第1の波長で前記第1部分から光を放射させる第2部分とを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行するシステムに関する。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムおよび技術に関する。たとえば、本発明の一実施形態は、時間内の一連の画像の中で、1つの物体によって各々作成される1つ以上の光放射領域を同定する工程と、各光放射領域について、その光放射領域の中心を同定する工程と、各光放射領域について、前記光放射領域を作成する前記1つの物体の位置を、前記1つの物体から放射される光の波長よりも大きな解像度で再構築する工程とを含む方法を機械に実行させるために、媒体に組み込まれたプログラムを備える機械可読媒体に関する。
【0015】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と組み合わせて考えると、本発明の非限定的な種々の実施形態に関する以下の詳細な記載から明らかになる。本明細書および参考として組み込まれた文献の開示内容が矛盾点および/または不一致点を含んでいる場合、本明細書の内容が優先する。参考として組み込まれた2つ以上の文献の開示内容が矛盾点および/または不一致点を含んでいる場合、最近の有効日付を有する文献の内容が優先する。
【0016】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照し、一例として記載する。図面は模式的なものであり、縮尺どおりに描画することを意図していない。図面では、同じ要素またはほぼ同じ要素は、典型的には同じ数字であらわしている。明確にするために、すべての要素に数字を付してはおらず、当業者が本発明を理解するのに、その要素の説明が必要ではない場合、本発明の各実施形態のすべての要素を示してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態による、回折限界以下の解像画像化の原理を示す。
【図1B】図1Bは、光スイッチング可能なCy3−Cy5部分を示す。
【図2】図2Aは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Bは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Cは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。図2Dは、本発明の別の実施形態による、分子物体の位置特定を示す。
【図3A】図3Aは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3B】図3Bは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3C】図3Cは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図3D】図3Dは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な分子物体の回折限界以下の位置特定を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、Cy3−Cy5で標識された抗体のスイッチングの繰り返しを示す。
【図5】図5aは、本発明の別の実施形態におけるドリフト補正を示す。図5bは、本発明の別の実施形態におけるドリフト補正を示す。
【図6】図6は、本発明のさらに別の実施形態における、2分子のスイッチングの繰り返しを示す。
【図7A】図7Aは、Cy3の構造を示す。
【図7B】図7Bは、Cy5の構造を示す。
【図7C】図7Cは、Cy5.5の構造を示す。
【図7D】図7Dは、Cy7の構造を示す。
【図7E】図7Eは、結合したCy3−Cy5部分の一例を示す。
【図8】図8Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な種々の物体を示す。図8Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な種々の物体を示す。
【図9】図9Aは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。図9Bは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。図9Cは、本発明の特定の実施形態による、種々の部分の吸収スペクトルおよび放射スペクトルを示す。
【図10】図10Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Cは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Dは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Eは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。図10Fは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の回折限界以下の画像化を示す。
【図11】図11Aは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。図11Bは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。図11Cは、本発明の特定の実施形態による、光スイッチング可能な物体を有する細胞の、回折限界以下の多色画像化を示す。
【図12−1】図12Aは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。図12Bは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。図12Cは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。
【図12−2】図12Dは、本発明のさらに別の実施形態による、光スイッチング可能な多種類の分子物体の、回折限界以下の多色位置特定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、一般的に、回折限界以下の画像解像技術および他の画像化技術に関する。1つの態様では、本発明は、入射光の回折限界未満の距離で隔てられた2つ以上の物体からの光を決定することおよび/または画像化することに関する。例えば、これらの物体は、約1000nm未満の距離で隔てられていてもよく、または、可視光の場合には、約300nm未満の距離で隔てられていてもよい。ある一連の実施形態では、これらの物体を選択的に活性化してもよい。すなわち、他の物体を活性化させることなく、1つの物体を活性化して光を発生させることができる。第1の物体を活性化し、決定し(例えば、その物体から放射される光を決定することによって)、次いで、第2の物体を活性化し、決定してもよい。これらの物体は、お互いに固定されていてもよく、および/または共通の物体に固定されていてもよい。放射光を用い、例えば、Gaussianフィッティングまたは他の数学的技術を用い、いくつかの場合には、回折限界以下の解像によって、第1の物体の位置および第2の物体の位置を決定してもよい。したがって、本方法を使用し、例えば、共通の物体(例えば、表面または生物学的物体、例えば、DNA、タンパク質、細胞、組織、生体分子複合体など)に固定された(直接的または間接的に、例えばリンカーを介して)2つ以上の物体の位置を決定してもよい。これらの物体は、例えば時間によって変動する反応を決定するために、時間に対して決定されてもよい。本発明の他の態様は、回折限界以下の画像解像のためのシステム、回折限界以下の画像解像のためのコンピュータプログラムおよび技術、回折限界以下の画像解像を促進する方法、光スイッチング可能な物体を製造する方法などに関する。
【0019】
本発明の種々の態様では、光を放射可能な任意の物体を使用してもよい。物体は、いくつかの場合、1つの分子であってもよい。放射性物体の非限定例としては、蛍光物体(フルオロフォア)またはリン光発光物体、例えば、シアニン染料(例えば、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5,5、Cy7など)、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子または「量子ドット」または蛍光タンパク質、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)が挙げられる。他の光放射性物体は、当業者には容易に知られている。本明細書で使用される場合、用語「光」は、一般的に、任意の適切な波長(または同等の意味で、周波数)を有する電磁放射を指す。例えば、いくつかの実施形態では、上述の光は、光領域または可視光領域(例えば、約400nm〜約700nmの波長、すなわち「可視光」)、赤外波長(例えば、約300μm〜700nmの波長)、紫外波長(例えば、約400nm〜約10nmの波長)などの波長を含んでもよい。特定の場合には、以下に詳細に記載するように、2つ以上の物体を使用してもよい。すなわち、化学的に異なるかまたは別個の(例えば構造的に別個の)物体を使用してもよい。しかし、他の場合には、上述の物体は、化学的に同じであるか、または少なくとも実質的に化学的に同じであってもよい。
【0020】
ある一連の実施形態では、上述の物体は、「スイッチング可能」である。すなわち、上述の物体は、2つ以上の状態をスイッチング可能であり、この状態の少なくとも1つは、所望の波長を有する光を放射する。他の状態では、この物体は光を放射しなくてもよく、または異なる波長の光を放射してもよい。例えば、ある物体を「活性化」し、所望の波長を有する光を発生可能な第1の状態にし、「不活性化」して第2の状態にしてもよい。ある物体は、適切な波長の入射光によって活性化可能である場合、「光活性化可能」である。非限定例として、Cy5は、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式で、蛍光状態と暗状態とをスイッチング可能である。すなわち、633nmの赤色の光は、Cy5をスイッチングまたは不活性化して安定な暗状態にすることができ、532nmの緑色の光は、Cy5をスイッチングまたは活性化して蛍光状態に戻すことができる。いくつかの場合には、上述の物体は、例えば、適切な刺激にさらされると、2つ以上の状態を可逆的にスイッチング可能である。例えば、第1の刺激(例えば、第1の波長の光)を使用し、このスイッチング可能な物体を活性化してもよく、一方、第2の刺激(例えば、第2の波長の光)を使用し、このスイッチング可能な物体を不活性化し、例えば放射しない状態にしてもよい。任意の適切な方法を使用し、上述の物体を活性化してもよい。例えば、一実施形態では、適切な波長の入射光を使用し、上述の物体を活性化し、光を放射させてもよい。すなわち、上述の物体は、「光スイッチング可能」である。したがって、光スイッチング可能な物体は、例えば、異なる波長を有する入射光によって、異なる光を放射する状態または光を放射しない状態にスイッチングさせることができる。上述の光は、単色(例えば、レーザを用いて作成)または多色であってもよい。別の実施形態では、上述の物体を、電場および/または磁場によって刺激し、活性化してもよい。他の実施形態では、上述の物体は、例えば、pHを調整することによって、または物体が関与する可逆性化学反応を誘発することなどによって、適切な化学環境に置くことによって活性化してもよい。同様に、上述の物体を不活性化するために任意の適切な方法を使用してもよく、上述の物体を活性化し、不活性化する方法は同じである必要はない。例えば、上述の物体は、適切な波長の入射光を照射すると不活性化してもよく、または上述の物体は、十分な時間が経過することによって不活性化してもよい。
【0021】
典型的には、「スイッチング可能な」物体は、第1の状態で励起波長を照射すると、物体が光を放射し、例えば、スイッチングする波長を有する光を照射すると、第1の状態から第2の状態に物体がスイッチングし、第2の状態で励起波長を照射すると、物体が光を放射しない(または光を放射するが強度が非常に小さい)条件を決定することによって、当業者によって同定することができる。
【0022】
ある一連の実施形態では、記載したように、スイッチング可能な物体は、光を照射するとスイッチングしてもよい。いくつかの場合には、このスイッチング可能な物体を活性化するのに使用する光は、外的供給源由来のものであってもよい(例えば、蛍光源のような光源、このスイッチング可能な物体の近くにある、別の光を放射する物体など)。第2部分である光を放射する光を放射する物体は、いくつかの場合には、蛍光物体であってもよく、特定の実施形態では、第2部分である光を放射する光を放射する物体は、それ自身がスイッチング可能な物体であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、スイッチング可能な物体は、第1部分である光放射部分(例えば、フルオロフォア)と、第1部分を活性化させるか、または「スイッチング」させる第2部分とを備えている。例えば、光を照射すると、スイッチング可能な物体の第2部分は、第1部分を活性化させ、第1部分が光を放射してもよい。活性化部分の例としては、限定されないが、Alexa Fluor 405(Invitrogen)、Alexa 488(Invitrogen)、Cy2(GE Healthcare)、Cy3(GE Healthcare)、Cy3.5(GE Healthcare)またはCy5(GE Healthcare)または他の適切な染料が挙げられる。光放射部分の例としては、限定されないが、Cy5、Cy5.5(GE Healthcare)またはCy7(GE Healthcare)、Alexa Fluor 647(Invitrogen)または他の適切な染料が挙げられる。これらの部分は、例えば、直接的またはリンカーを介して、例えば共有結合によって結合し、例えば、限定されないが、Cy5−Alexa Fluor 405、Cy5−Alexa Fluor 488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor 405、Cy5.5−Alexa Fluor 488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor 405、Cy7−Alexa Fluor 488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5またはCy7−Cy5のような化合物を形成してもよい。Cy3、Cy5、Cy5,5およびCy7の構造を図7に示し、Cy3−Cy5の結合態様の非限定例を図7eに示す。当業者は、これらの化合物および他の化合物の構造を認識しており、これらの化合物の多くは市販されている。上述の部分は、例えば以下に詳細に記載するように、共有結合を介して、またはリンカーによって結合していてもよい。
【0024】
特定の場合では、光放射部分および活性化部分は、互いに切り離されると、それぞれフルオロフォア(すなわち、励起波長のような刺激にさらされると、特定の放射波長の光を放射する物体)になってもよい。しかし、第1のフルオロフォアと第2のフルオロフォアとを含むスイッチング可能な物体を形成する場合、第1のフルオロフォアは、第1部分である光放射部分を形成し、第2のフルオロフォアは、刺激に応答して第1部分を活性化させるか、または「スイッチング」させる活性化部分を形成する。例えば、スイッチング可能な物体は、第2のフルオロフォアに直接結合した第1のフルオロフォアを含んでいてもよく、または第1の物体および第2の物体が、リンカーを介して、または共通の物体に結合していてもよい。光放射部分と活性化部分の対が適切なスイッチング可能な物体を生成するか否かは、当業者に既知の方法によって試験することができる。例えば、種々の波長を有する光を使用して、この対を刺激し、光放射部分から放射される光を測定し、この対が適切なスイッチとなるかどうかを決定することができる。
【0025】
非限定例としては、Cy3とCy5とを結合し、このような物体を形成してもよい。このような手順は、以下の実施例にさらに詳細に記載している。この例では、Cy3は、光放射部分Cy5を活性化可能な活性化部分である。したがって、活性化部分または上述の物体の第2部分の吸収極大の光または吸収極大付近の光(例えば、Cy3では532nm付近の光)は、第1部分である光放射部分を活性化する部分となり、第1部分が光を放射する(例えば、Cy5では633nm付近)。すでに述べたように、第1部分である光放射部分は、その後に、任意の適切な技術によって(例えば、この分子のCy5部分に633nmの赤色の光を照射することによって)不活性化することができる。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態では、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分とを備える、光を放射するスイッチング可能な物体が提供される。上述の物体は、第1部分である光放射部分によって決定される最大放射波長と、第2部分である活性化部分によって決定される最大活性化波長とを有する。特に、この2つの波長は、同じ分子物体によって制御されず、有効に分けられている。いくつかの場合には、放射部分を活性化して蛍光状態にする場合、この状態から励起して放射させる場合、放射部分を不活性化する場合に、同じ波長の光を使用することができる。さらに、あるサンプル内にある多種類のスイッチング可能な物体を独立して決定してもよい。例えば、同じ活性化部分を有するが、光放射部分が異なる2つのスイッチング可能な物体を、サンプルに適用するのと同じ波長の光によって活性化するが、異なる光放射部分のため異なる波長で放射させ、これらが回折限界による解像度未満の距離で隔てられている場合であっても、容易に識別することができる。このことにより、2色の画像を有効に得ることができる。同様に、同じ光放射部分を有するが、活性化部分が異なる2つのスイッチング可能な物体を、異なる活性化部分のためにサンプルに適用するのとは異なる波長の光によって活性化し、光放射部分は同じ波長で放射させ、これらが回折限界による解像度未満の距離で隔てられている場合であっても、識別することができる。これによっても、2色の画像を有効に得ることができる。これらの方法を組み合わせると、4色(またはそれ以上)の色画像を容易に作成することができる。この原理を用い、スイッチング可能な物体および/または活性化物体によっては、多色画像化を6色、9色などにまで広げることができる。この多色画像化の原理を、本明細書に記載の画像化方法とともに使用し、回折限界以下の解像度を得ることもでき、および/またはこの原理を回折限界以下の解像度に制限されない他の画像化方法とともに使用し、多色画像を得てもよい。
【0027】
対照的に、当業者が一般的に使用する蛍光染料(例えば、単離されたCy5)は、固有の最大励起波長と、最大放射波長を有し、これらはそれぞれ、その蛍光染料の性質および構造によって決定され、独立して制御することができない。したがって、本発明は、別の一連の実施形態では、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分をそれぞれ独立して選択することができるさまざまなスイッチング可能な物体を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、例えば、従来の画像化法と比べて、多くの色のセットが提供する。
【0028】
第1部分である光放射部分と第2部分である活性化部分とを結合するのに、任意の適切な方法を使用してもよい。いくつかの場合には、リンカーは、例えば、光放射部分がどんな態様で不活性化される場合であっても、活性化部分が光放射部分を所望な程度に活性化するように、第1部分と第2部分との距離が十分に近い位置になるように選択される。典型的には、上述の部分は、500nm以下、例えば、約300nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約2nm未満、約1nm未満などの距離で隔てられている。リンカーの例としては、限定されないが、炭素鎖(例えば、アルカンまたはアルケン)、ポリマー単位などが挙げられる。
【0029】
本発明のある一連の実施形態では、光を放射するスイッチング可能な物体は、上述の2つの部分を必ずしも含まない他のスイッチング可能な蛍光プローブ、例えば、限定されないが、光活性化可能な染料分子または光スイッチング可能な染料分子、光活性化可能であるかまたは光スイッチング可能な天然または加工した蛍光タンパク質、光活性化可能な無機粒子または光スイッチング可能な無機粒子などを含んでいてもよい。いくつかの場合には、スイッチング可能な物体は、本明細書に記載するように、第1部分である光放射部分と、第2部分である活性化部分とを含んでいてもよい。
【0030】
ある一連の実施形態では、スイッチング可能な物体は、結合対(すなわち、特定の検体と結合可能な分子)に対して、例えば共有結合によって固定することができる。結合対としては、当業者に既知の特異的な結合対、半特異的な結合対および非特異的な結合対が挙げられる。用語「特異的に結合する」は、結合対(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)を指している場合、異なる分子の混合物(例えば、タンパク質および他の生体物質)中の結合対の1つまたは他の対の存在および/または正体を決定する要因となる反応を指す。したがって、例えば、レセプター/リガンド結合対の場合、リガンドは、分子の複雑な混合物から特異的および/または優先的にそのレセプターを選択し、逆に、レセプターは、分子の複雑な混合物から特異的および/または優先的にリガンドを選択する。他の例としては、限定されないが、酵素は、その基質と特異的に結合し、核酸は、その相補体と特異的に結合し、抗体は、その抗原と特異的に結合する。このような結合は、1つ以上の種々の機構(限定されないが、イオン性相互作用および/または共有結合性相互作用および/または疎水性相互作用および/またはファンデルワールス力による相互作用などが挙げられる)によって行われる。標的分子または標的構造(例えば、細胞内のDNAまたはタンパク質)の結合対にスイッチング可能な物体を固定することによって、スイッチング可能な物体を、種々の決定または画像化に使用することができる。例えば、アミン反応性基を有するスイッチング可能な物体は、アミンを含む結合対(例えば、抗体、タンパク質または酵素)と反応してもよい。スイッチング可能な物体を抗体に固定化する非限定例を、以下の実施例に記載する。
【0031】
いくつかの実施形態では、2つ以上のスイッチング可能な物体を使用してもよく、この物体は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの場合には、第1の物体から放射される光の波長と、前記第2の物体から放射される光の波長とは同じである。上述の物体を異なる時間点で活性化し、各物体からの光を別個に決定してもよい。これにより、2つの物体の位置を別個に決定することができ、いくつかの場合には、以下に詳細に記載するように、物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、2つの物体を空間的に解像してもよい(すなわち、「回折限界以下」の解像)。特定の場合、第1の物体から放射される光の波長と、第2の物体から放射される光の波長とは、異なっている(例えば、第1の物体および第2の物体が化学的に異なっており、および/または異なる環境に配置されている場合)。物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、上述の物体を空間的に解像してもよい。特定の場合、第1の物体から放射される光の波長と、第2の物体から放射される光の波長とは、実質的に同じであるが、2つの物体を異なる波長の光で活性化し、各物体からの光を別個に決定してもよい。物体から放射される光未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、上述の物体を空間的に解像してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1部分である光放射部分および第2部分である活性化部分は、上述のように、直接的に共有結合していなくてもよいし、リンカーを介して結合していなくてもよいが、それぞれ共通の物体に固定される。他の実施形態では、2つ以上のスイッチング可能な物体(そのうちいくつかは、特定の場合、第1部分である光放射部分と第2部分である活性化部分を含んでおり、それらが直接またはリンカーを介して結合していてもよい)を、本発明のいくつかの態様において、共通の物体に固定してもよい。共通の物体は、これらの実施形態のいずれかでは、任意の非生物学的物体または生物学的物体であってもよく、例えば、細胞、組織、基質、表面、ポリマー、生体分子、例えば、核酸(DNA、RNA、PNA、LNAなど)、脂質分子、タンパク質またはポリペプチドなど、生体分子複合体または生体構造、例えば、オルガネラ、微小管、クラスリン被覆ピットなどであってもよい。したがって、共通の物体は、いくつかの様式で決定されてもよい(例えば画像化)。別の例として、2つ以上の物体を、DNA鎖または他の核酸鎖に固定し(例えば、抗体、1つ以上の物体で標識された実質的に相補性のオリゴヌクレオチド、化学反応または当業者に既知の他の技術によって)、その位置を鎖に沿って検出してもよい。いくつかの場合には、核酸鎖に沿って物体を隔てている塩基の数(bp)を決定してもよい。
【0033】
いくつかの場合には、上述の物体は、独立してスイッチング可能であってもよい。すなわち、第2の物体を活性化させることなく、第1の物体を活性化し、光を放射させてもよい。例えば、上述の物体が異なっている場合、第1の物体および第2の物体をそれぞれ活性化する方法は、異なっていてもよい(例えば、異なる波長の入射光を用いて、それぞれの物体を活性化してもよい)。別の非限定例として、十分に強度の弱い入射光を第1の物体および第2の物体に照射し、その入射光の範囲内の物体の部分的な集合または物体の一部分のみを活性化してもよい(すなわち、確率的またはランダムに)。活性化する特定の強度は、当業者であれば、通常の範囲内の技術を用いて決定することができる。入射光の強度を適切に選択することによって、第2の物体を活性化させることなく、第1の物体を活性化させてもよい。
【0034】
第2の物体を活性化して光を放射させ、任意に、第2の物体を活性化させる前に、第1の物体を活性化させてもよい。第2の物体は、すでに記載したように任意の適切な技術によって活性化させてもよく、例えば、適切な入射光を照射することによって活性化させてもよい。
【0035】
いくつかの場合には、十分に強度が弱い入射光を複数の物体に照射し、その入射光の範囲内の物体の部分的な集合または物体の一部分のみを活性化してもよい(例えば、確率的またはランダムに)。活性化する量は、任意の適切な一部分であってもよく、例えば、その用途によって、物体の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%を活性化させてもよい。例えば、入射光の強度を適切に選択することによって、物体の少なくともいくつかが他の物体と光学的に解像可能で、位置が決定可能であるように、物体を部分的にまばらに活性化させてもよい。繰り返しの活性化サイクルにより、すべての物体の位置または物体のかなりの部分を決定することができる。いくつかの場合には、この情報を用いて、回折限界以下の解像度を有する画像を構築することができる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、物体から放射される光の波長未満の距離で隔てられている場合または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている場合であっても、2つ以上の物体を解像してもよい。物体の解像度は、本明細書に記載されるように、例えば、1μm(1000nm)以下であってもよい。例えば、放射光が可視光である場合、解像度は、約700nm未満であってもよい。いくつかの場合には、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約60nm未満、約50nm未満、または約40nm未満の距離で隔てられている場合であっても、2つ(またはそれ以上)の物体を解像してもよい。いくつかの場合には、少なくとも約20nmまたは約10nm未満の距離で隔てられている2つ以上の物体を、本発明の実施形態を用いて解像することができる。
【0037】
各スイッチング可能な物体から放射される光は、例えば、画像またはマトリックスとして決定してもよい。例えば、第1の物体を活性化し、第1の物体から放射される光を決定してもよく、第2の物体を活性化し(第1の物体を不活性化しても不活性化しなくてもよい)、第2の物体から放射される光を決定してもよい。複数の物体それぞれから放射される光の波長は、同じであっても異なっていてもよい。任意の適切な方法を使用し、放射光を決定してもよい。例えば、CCDカメラのようなカメラ、フォトダイオード、光電子増倍器を使用するか、または分光計を使用してもよく、当業者は、他の適切な技術を知っているであろう。物体から発生した光を決定する適切な技術のさらなる非限定例を以下の実施例に記載する。いくつかの場合には、例えば、解像度を高め、および/またはノイズを減らすために、複数の画像(または他の決定因子)を使用してもよい。例えば、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100などの画像を、用途に応じて決定してもよい。
【0038】
いくつかの態様では、2つ以上の物体の空間配置を決定するために、光を加工してもよい。いくつかの場合には、画像内に分布する1つ以上の物体の位置を、個々に決定してもよい。ある一連の実施形態では、放射光をGaussianフィッティングまたは他の適切な技術を用いて加工し、放射性物体それぞれの位置を特定してもよい。適切なGaussianフィッティング技術の詳細を以下の実施例に示す。当業者は、本開示内容の利点を有する他の適切な画像加工技術を特定することができるであろう。
【0039】
本発明の別の実施形態によって、画像加工技術の別の例を記載する。一連の画像サンプル(例えば動画)から出発し、それぞれの光放射ピーク(例えば、蛍光、リン光などにより)を特定し、ピークの存在する時間を決定する。例えば、時間点に対し、一連の画像でほぼ同じ強度のピークが存在してもよい。ピークを、いくつかの場合、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および/または楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。散発性のピーク、移動しているピーク、不連続に存在するピークなども破棄してもよい。例えば、最小二乗によって、ピーク強度を2次元Gaussian関数にフィッティングし、ピークの中心位置を決定することによって、ピークの供給源(例えば、本明細書に記載されるように、光を放射可能な任意の1つ以上の物体)の位置を決定することができる。サンプル内の任意のピークまたはすべてのピークについて、このプロセスを必要なだけ繰り返してもよい。
【0040】
本発明の適切な画像加工技術の別の非限定例では、一連の画像サンプル(例えば動画)は、活性化フレーム(例えば、中に活性化光あり)および画像化フレーム(例えば、中に画像化光あり)の繰り返しを備えていてもよい。1つ以上の画像化フレームで、蛍光ピークを特定し、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および/または楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。いくつかの場合には、散発性のピーク、移動しているピーク、不連続に存在するピークなども破棄してもよい。例えば、最小二乗によって、ピーク強度を2次元Gaussian関数にフィッティングし、ピークの中心位置を決定することによって、ピークの供給源(例えば、本明細書に記載されるように、光を放射可能な任意の1つ以上の物体)の位置を決定することができる。活性化フレームの直後に画像化フレームで現れるピークは、制御された活性化事象であると認識することができ、いくつかの実施形態では、活性化レーザの色によって色分けされていてもよい。サンプル内の任意のピークまたはすべてのピークについて、このプロセスを必要なだけ繰り返してもよい。
【0041】
物体の決定を容易にするために他の画像加工技術を使用してもよく、例えば、ドリフト補正またはノイズフィルタを使用してもよい。一般的に、ドリフト補正では、例えば、固定点を特定し(例えば、基準マーカーとして、例えば、蛍光粒子を基質に固定してもよい)、固定点の移動度(すなわち、機械的なドリフトによるもの)を使用し、決定済のスイッチング可能な物体の位置を補正する。ドリフト補正の別の方法例では、異なる画像化フレームまたは活性化フレームから得た画像の相関関数を算出し、ドリフト補正に使用する。いくつかの実施形態では、ドリフトは、約1000nm/分未満、約500nm/分未満、約300nm/分未満、約100nm/分未満、約50nm/分未満、約30nm/分未満、約20nm/分未満、約10nm/分未満または約5nm/分未満であってもよい。このようなドリフトは、例えば、顕微鏡対物に対し、サンプルスライドのx−y位置決めのために取り付けられた移動ステージを有する顕微鏡で起こることがある。スライドは、適切な制限機構(例えば、ばね仕掛けのクリップ)を用いて移動ステージに固定されていてもよい。それに加えて、ステージと顕微鏡スライドとの間に緩衝層を取り付けてもよい。緩衝層は、例えば、スライドがいくつかの様式で滑るのを防ぐことによって、移動ステージに対し、スライドのドリフトをさらに制限してもよい。緩衝層は、一実施形態では、ゴム膜またはポリマー膜、例えば、シリコーンゴム膜である。したがって、本発明の一実施形態は、移動ステージと、移動ステージに接続してスライドを固定する制限機構(例えば、ばね仕掛けのクリップ)とを備え、任意に、緩衝層(例えば、シリコーンゴム膜)を、制限機構が緩衝層と接触することにより、スライドの動きが制限されるように配置して備えるデバイスに関する。
【0042】
サンプルの複数の位置を、その位置にある物体を決定するために、それぞれ分析してもよい。例えば、サンプルは、種々の複数の物体を含有していてもよく、そのいくつかは、物体から放射される光の波長未満の距離で隔てられているか、または放射光の回折限界未満の距離で隔てられている。サンプル内の異なる位置を決定してもよく(例えば、画像内でピクセルの違いとして)、これらの位置をそれぞれ独立して分析し、その位置にある1つ以上の物体を決定してもよい。いくつかの場合には、それぞれの位置にある物体を、すでに記載したように、物体から放射される光の波長未満の解像度または放射光の回折限界未満の解像度で決定してもよい。
【0043】
上述のように、いくつかの実施形態では、2種類以上のスイッチング可能な物体を1サンプル中で使用し、各物体の位置を、いくつかの場合には、回折限界以下の解像度で独立して決定し、例えば、回折限界以下の解像度を有する多色画像を作成してもよい。例えば、あるサンプル中で特定のスイッチング可能な物体を活性化し、不活性化することを繰り返すことによって、複数のスイッチング可能な物体の位置を決定し、いくつかの場合には、物体から放射される光の波長未満の解像度または放射光の回折限界未満の解像度で決定してもよい。
【0044】
非限定例として、サンプルは、2種類の光放射部分(例えば、Cy5およびCy5.5)と、2種類の活性化部分(例えば、Cy3およびCy2)を含有してもよく、合計で4種類(2×2)のスイッチング可能な部分:Cy5−Cy3、Cy5−Cy2、Cy5.5−Cy3およびCy5.5−Cy2を含有する。Cy2を含有する物体を活性化させることなく、適切な波長の光を照射することによって、Cy3を含有する物体を活性化することができ(異なる活性化波長が必要なため)、Cy5を含有する分子から放射される光は、Cy5.5を含有する分子から放射される光と区別することができる(異なる波長で光を放射する)。したがって、Cy5−Cy3物体のみが決定され、他の物体は活性化しないか、または活性化はするものの、物体から放射される光を使用しない。上述の技術を用いることによって、サンプル内のCy5−Cy3物体の位置を、Cy5から放射される光の波長未満の解像度まで決定することができる。さらに、適切な活性化波長および放射波長を用いて上述の手順を繰り返すことによって、他の物体の位置も、例えば、回折限界以下の解像度まで決定してもよい。別の例では、サンプルは、3種類(またはそれ以上)の光放射部分(例えば、Cy5、Cy5.5およびCy7)および/または3種類(またはそれ以上)の活性化部分(例えば、Alexa Fluor 405、Cy2およびCy3)を含んでいてもよい。したがって、回折限界以下の解像度を有する多色画像化(例えば、4色、6色、8色、9色、10色、12色など)が実現し得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、物体は、時間の関数として解像されてもよい。例えば、2つ以上の物体を種々の時間点で観察し、時間で変動するプロセス(例えば、化学反応、細胞の挙動、タンパク質または酵素の結合など)を決定してもよい。したがって、一実施形態では、2つ以上の物体の位置を、第1の時間点で決定し(例えば、本明細書に記載されるように)、その後の何回かの時間点で決定してもよい。特定の例として、2つ以上の物体が共通の物体に固定されている場合、共通の物体を、時間の関数、例えば、時間で変動するプロセス(例えば、共通の物体の移動、共通の物体の構造変化および/または形状変化、共通の物体が関与する反応など)として決定してもよい。時間分解による画像化は、スイッチング可能な物体が複数のサイクルでスイッチング可能であり、各サイクルが物体の位置について1個のデータ点を与えるため、いくつかの場合には容易である。
【0046】
本発明の別の態様は、コンピュータで実行される方法に関する。例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を自動的および/または繰り返し実行可能なコンピュータおよび/または自動化システムが提供されてもよい。本明細書で使用される場合、「自動化」デバイスは、ヒトが命令することなく実行可能なデバイスを指す。すなわち、自動化デバイスは、任意のヒトが、ある機能を促進するための任意の操作を終了した後も、例えば、コンピュータに指示を与えることによって、一定期間、その機能を実行することができる。典型的には、自動化装置は、その時間点の後に、繰り返してその機能を実行することができる。処理工程は、いくつかの場合には、機械可読媒体に記録されてもよい。
【0047】
本発明のさらに別の態様は、一般的に、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実行可能なシステムに関する。例えば、このシステムは、顕微鏡と、物体を活性化および/またはスイッチングさせ、所望の波長の光を発生させるデバイス(例えば、レーザ源および/または他の光源)、物体から放射される光を決定するデバイス(例えば、カメラ、例えば光学フィルタのような色フィルタデバイスを備えていてもよい)と、2つ以上の物体の空間配置を決定するためのコンピュータとを備えていてもよい。いくつかの場合には、鏡(例えば、二色性ミラーまたは多色性ミラー)、プリズム、レンズ、回折格子なども、光源からの光の向きを変えるために配置されていてもよい。いくつかの場合には、光源は、時間によって調節可能な光源(例えば、シャッター、音響光学変調器などによる)であってもよい。したがって、光源は、プログラムされた様式または周期的な様式で活性化し、不活性化することが可能なものであってもよい。一実施形態では、2つ以上の光源を使用してもよく、例えば、異なる波長または色でサンプルを照射するために使用してもよい。例えば、光源は、異なる周波数の光を発してもよく、および/または光学フィルタなどのような色フィルタデバイスを使用し、異なる波長または色の光をサンプルに照射するように、光源からの光を調節してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、顕微鏡は、他の蛍光源からの光(例えば、「バックグラウンドノイズ」)を最小限にしつつ、スイッチング可能な物体から放射される光を集めるような構成になっていてもよい。特定の場合、撮像幾何(例えば、限定されないが、全反射の幾何、回転円板の共焦点の幾何、走査共焦点の幾何、落射蛍光の幾何などが挙げられる)を、サンプルを励起させるために使用してもよい。いくつかの実施形態では、サンプルの薄層または平面を励起光にさらし、サンプル平面外側への蛍光の励起を減らしてもよい。非常に多くの開口レンズを使用し、サンプルから放射される光を集めてもよい。この光を、例えば、励起光を除去するためのフィルタを用いて加工して、サンプルからの放射光の集合を得てもよい。いくつかの場合には、画像を集める拡大因子は、例えば、画像の各ピクセルの縁の長さが、画像の回折限界点の標準偏差の長さに対応する場合、最適化することができる。
【0049】
いくつかの場合には、スイッチング可能な物体の励起およびスイッチング可能な物体の画像の獲得を制御するためにコンピュータを使用してもよい。ある一連の実施形態では、種々の波長および/または強度を有する光を用いてサンプルを励起させてもよく、サンプルを励起させるのに使用する一連の光の波長と、スイッチング可能な物体を含有するサンプルから得た画像とをコンピュータを用いて相互に関連づけてもよい。例えば、コンピュータは、目的の各領域中の活性化されたスイッチング可能な要素の異なる平均値(例えば、場所あたり1個の活性化された物体、場所あたり2個の活性化された物体など)を得るために、種々の波長および/または強度を有する光をサンプルに適用してもよい。いくつかの場合には、この情報を用いて、いくつかの場合には、上述のように、回折限界以下の解像度でスイッチング可能な物体の画像を構築してもよい。
【0050】
本発明の他の態様では、本明細書に記載のシステムおよび方法を、当業者に既知の他の画像化技術、例えば、高解像度蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)または免疫蛍光画像化法、ライブセルイメージング、共焦点画像化法、落射蛍光画像化法、全反射蛍光画像化法などと組み合わせてもよい。
【0051】
以下の文献は、本明細書に参考として組み込まれる。米国特許仮出願番号第60/836,167号(2006年8月7日出願、発明の名称「Sub−Diffraction
Image Resolution」および米国特許仮出願番号第60/836,170号(2006年8月8日出願、発明の名称「Sub−Diffraction Image Resolution」。
【0052】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、本発明の範囲全体を例示するものではない。
【実施例】
【0053】
本実施例は、解像度の高い光学顕微鏡法である確率的な光学再構成による顕微鏡法(「STORM」)を示す。この方法では、本発明の一実施形態によれば、異なる色の光を用いてオンオフが切り替わる個々の蛍光物体(「フルオロフォア」)を高精度に位置特定することにより、蛍光画像が構築される。STORM画像化プロセスは、本実施例では、一連の画像化サイクルを含む(図1a)。各サイクルで、視野内のフルオロフォアの一部分が、オンに切り替わるかまたは活性化し、その結果、活性なフルオロフォアは、それぞれ、残りの部分と光学的に解像することが可能であり、すなわち、それぞれの画像は重なりあっていない。これにより、これらのフルオロフォアの位置を高い精度で決定することができる。このプロセスを複数回のサイクルで繰り返し、それぞれのサイクルで、確率的に異なるフルオロフォア群がオンに切り替わるかまたは活性化し、多くのフルオロフォアの位置を決定することができ、全体的な画像を再構築することができる。これらの実施例では、解像度は約20nmであることが示されており、この値は、単純な全反射照明蛍光顕微鏡、低出力の連続波長を有するレーザおよび光スイッチング可能なシアニン染料を用いる従来の蛍光顕微鏡法の10倍を超える改良された値である。
【0054】
図1aは、フルオロフォアで標識された仮想の六量体を用い、緑色レーザおよび赤色レーザによって、それぞれ蛍光状態および暗状態をスイッチング可能な、STORM画像化シーケンスを示す。この非限定的な図では、最初は、すべてのフルオロフォアが、強い赤色レーザパルスによって「オフ」に切り替わり、暗状態になった(「不活性化」)。各画像化サイクルで、緑色レーザパルスを用い、フルオロフォアの一部分のみを「オン」に切り替え(「活性化し」)、光学的に解像可能な活性フルオロフォア群を得た。次いで、赤色を照射(「画像化」)すると、これらの分子は、オフに切り替わるまで蛍光を放射し、これらの分子の位置(白い十字で示す)を比較的高い精度で決定することができた。次いで、複数の画像化サイクルから得たフルオロフォアの位置から、全体的な画像を再構築した。
【0055】
シアニン染料(Cy5)は、蛍光状態と暗状態とを、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式でスイッチング可能である。Cy5から蛍光を放射させる赤色レーザ光は、この染料を安定な暗状態に切り替えることもできる。緑色レーザ光を照射すると、Cy5は再び蛍光状態に戻るが、戻る速度は、いくつかの場合では、第2の染料であるCy3との近さに依存する場合がある。Cy3−Cy5染料対は、スイッチとも呼ばれ得る。1個の分子を検出可能な照射条件では、このようなスイッチは、核酸またはタンパク質に結合または固定されている場合、永久的な光退色が起こるまでに数百回、オンオフサイクルを繰り返すことが可能なことがわかった(図1bおよび図4)。図1bでは、Cy5から蛍光(黒色の線)を励起させるのに赤色レーザ(633nm、30W/cm2)を使用し、Cy5は暗状態にスイッチングする。Cy5を蛍光状態に戻すのに緑色レーザ(532nm、1W/cm2)を使用した。交互の赤色の線および緑色の線は、レーザの励起パターンを示す。いくつかの場合には、Cy5が戻る速度は、Cy3との近さに依存すると考えられる。
【0056】
図4は、シアニンスイッチで標識したヤギ抗マウス二次抗体が、スイッチで標識されたDNAとよく似た光スイッチング挙動を示すことを示している。この抗体を、Cy3およびCy5で標識し(以下参照)、標識していないマウス抗−トランスフェリン一次抗体でコーティングした石英スライドに結合させた。出力結果は、約230秒後に永久的な光退色が起こるまで、オンオフのスイッチングに応じて1個の標識された抗体から検出されたCy5の蛍光強度を示す。緑色レーザパルスおよび赤色レーザパルスで、サンプルを交互に励起させた(緑色レーザパルス0.5秒、次いで赤色レーザパルス2秒)。
【0057】
他の光スイッチング可能な染料対も、同様の原理で構築することができる。例えば、Cy5に加え、Cy5.5、Cy7およびAlexa Fluor 647も、蛍光状態と暗状態とを、異なる波長の光によって制御された様式および可逆的な様式でスイッチング可能である。Cy3と対にした場合、赤色レーザ(633nmまたは657nm)を照射すると、これらの4種の染料(Cy5、Cy5.5、Cy7およびAlexa Fluor 647)はそれぞれ最初に蛍光を発し、非蛍光の暗状態にすぐにスイッチングした。緑色レーザパルス(532nm)を短期間照射すると、これらの染料は再活性して蛍光状態へと戻った(図8aおよび図9)。さらに、いくつかの場合で、同じ発光部分を活性化するのに、異なる活性化部分を使用することができる。例えば、発光部分の一例としてCy5を用い、Cy3、Cy2およびAlexa Fluor 405とCy5とを対にした。赤色レーザ(633nmまたは657nm)を照射すると、Cy5が暗状態へと迅速にスイッチングすることが観察された。この実施例では、Cy5を再活性させるには、活性化剤の吸収波長に対応する、異なる色のレーザが必要であった。(図8bおよび図9)。Alexa 405−Cy5対は、紫色レーザ(405nm)によって効率よく活性化されるが、青色レーザ(457nm)および緑色レーザ(532nm)に対する感度は低いようであった。同様に、Cy2−Cy5対は、紫色または緑色の光よりも、青色の光に対して感度が高く、Cy3−Cy5対は、緑色レーザに対する感度が高いようであった。
【0058】
活性化部分の例としては、限定されないが、Alexa Fluor 405、Alexa 488、Cy2、Cy3、Cy3.5またはCy5が挙げられる。光放射部分の例としては、限定されないが、Cy5、Cy5.5、Cy7またはAlexa Fluor
647が挙げられる。これらの物質は、結合して光スイッチング可能な物体、例えば、限定されないが、Cy5−Alexa Fluor 405、Cy5−Alexa Fluor 488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor 405、Cy5.5−Alexa Fluor 488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor 405、Cy7−Alexa Fluor 488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5またはCy7−Cy5を形成してもよい。
【0059】
この実施例では、STORMの概念は、Cy5−C53スイッチを用いて示されているが、任意の適した光によってスイッチングするフルオロフォアを使用することもできる。STORMの解像度は、いくつかの場合では、スイッチングサイクル中に個々のスイッチを位置特定可能な精度によって制限を受けることがある。位置特定の精度を決定する一例として、スイッチを、短い二本鎖DNAに結合または固定し、1個のスイッチを解像可能な低い密度で表面に固定した。緑色レーザ光および赤色レーザ光によって、周期的にこれらのスイッチのオンオフを切り替え、赤色レーザは、Cy5から蛍光を励起させる役割もあった。Cy3からの蛍光はこのプロセスでは記録されなかった。各スイッチングサイクル中の個々のスイッチの位置特定精度は、STORMの固有の解像度を規定するものであり、この値を図2に示す。1個のスイッチからの蛍光画像を、図2aに点広がり関数で示す。1回のスイッチングサイクル中の、DNA上の1個のスイッチからの放射の点広がり関数(PSF)。この画像に対するGaussianフィッティング(図示せず)を使用し、PSFの重心位置を特定し、この重心は、スイッチの位置を示すものである。複数回のスイッチングサイクルから決定した位置は、かなりの広がりがあり(図2b)、一連の実験にわたってサンプルをドリフト補正することによって、この広がりは顕著に減少した(図2c、以下のさらなる詳細を参照)。図2bおよび図2cは、20回の連続した画像化サイクルで決定した個々のスイッチの重心位置について、サンプルをドリフト補正する前(図2b)および補正した後(図2B)を示す。スケールを示す線は20nmである。20回の画像化サイクルから得た位置をドリフト補正すると、標準偏差は、個々のスイッチについて平均8nmであった(図2d)。図2dは、重心位置の標準偏差のヒストグラムを示す。標準偏差は、各スイッチについて、20回の画像化サイクルを用いて(σx+σy)/2((シグマ−x+シグマ−y)/2)で決定され、ここで、σx(シグマ−x)およびσy(シグマ−y)は、x次元およびy次元の重心位置の標準偏差である。29
個のスイッチからこのヒストグラムを構築した。この値は、1回の画像化サイクルあたり、1個のスイッチの位置決定における不確実な測定値を与えた。これに対応して、実験的に測定されたスイッチの位置の広がりは、標準偏差8nmから予想されるように、FWHM 18nmでGaussian分布に従っている(図5)。したがって、これらの画像化条件下で、20nm離れた2個のスイッチを解像することができた。
【0060】
図5は、ステージのドリフトを補正する前(図5a)および補正後(図5b)の、29個の個々のスイッチの位置分布を重ね合わせたものを示す。スケールを示す線は20nmである。これらの分布を得るために、各スイッチの画像を、所与の画像化サイクル中に、二次元Gaussian関数にフィッティングさせ、そのサイクル中の各スイッチの重心位置を得た。画像化サイクルを20回行い、スイッチあたり20個の測定位置を得た。各スイッチの位置データを、各スイッチの平均位置が原点になるように再調整し、異なるスイッチの測定値を重ね合わせ、全体的な位置分布をはめ込み図に示した。主要なプロットは、これらの重心位置のヒストグラムである。補正していない分布はかなり広範囲にわたっており、非対象であった。基準マーカーを用いてステージのドリフトを補正した後(以下を参照)、分布はかなり狭くなっている。ドリフトを補正したヒストグラムのGaussianフィッティングにより、最大値の半値での合計幅は18±2nmであった。
【0061】
STORMが、非常に近い位置にある蛍光分子を解像する可能性を示すために、標識された線形の二本鎖DNAの標準サンプルを、十分に規定された数の塩基対で隔てられている複数のスイッチを用いて構築した(詳細については、以下の方法を参照)。DNA鎖は、複数のビオチンで標識されており、高密度ストレプトアビジン層に結合しており(以下を参照)、DNAとその表面との間の複数の結合の可能性が高くなり、その結果、DNAがその平面に固定された。135塩基対で隔てられた2つのスイッチを含有するDNA鎖を、最初に試験した(図3aおよび図6)。135塩基対の長さは、DNAの輪郭に沿って46nmに対応する。上述の画像化手順(詳細については以下を参照)を用いて得たSTORM画像は、測定したスイッチの位置に2つのクラスターを示しており、このことは、2個のスイッチが十分に解像されていることを示す(図3a)。この画像は、測定したスイッチ位置の2個の分離したクラスターを示し(十字)、それぞれが1個のスイッチに対応している。各クラスターの質量中心を点で示す。スイッチ間の距離は、これらの3つの例で、46nm、44nmおよび34nmである。スケールを示す線は20nmである。2個の雲の中心間の距離は、平均値が41nmであり(図3b)、DNAサンプルの既知の輪郭および持続長を用いて決定した理論的な平均値(40nm)と量的に一致した(以下を参照)。図3bは、STORMを用いて測定したスイッチ間距離(灰色の棒グラフ)と、DNAの可とう性を考慮して予想される距離分布(点線)との比較を示す。図3cは、二本鎖DNAに結合した4個のスイッチのSTORM画像を示し、1対は輪郭長さ46nmで隔てられている。測定したスイッチの位置を自動化アルゴリズムでクラスターにして(詳細は以下を参照)、異なるクラスターは異なる記号で示している。スケールを示す線は20nmである。
【0062】
図6は、dsDNA上にある輪郭長さ46nmで隔てられたCy3−Cy5スイッチの繰り返しを示す、蛍光トレーサ(黒色の線)の抜粋である(図3aも参照)。各スイッチングサイクルは5秒間続き、このサイクルは、1個または2個のスイッチを活性化させるための短期間の緑色パルス(下側にある目盛)の後、Cy5の蛍光を励起させ、スイッチをオフ状態に戻す長時間の赤色光照射(下にある横長の四角)を含む。1個のスイッチが活性化するサイクル(例えば、225〜230秒)では、暗状態に戻る前に、1個の強度レベルが現れた。2個のスイッチが活性化するサイクル(例えば、245〜250秒)では、「階段状」の強度レベルがあらわれ、それぞれの染料が、順にオフにスイッチングすることに対応して2回のレベル低下が観測された。1個のスイッチがオンになり、すべてのピーク質基準が満足される領域(以下を参照)を、1個のスイッチの位置特定に使用した。
【0063】
輪郭に沿って46nmで均一に隔てられた4個のスイッチで標識された、さらに長いDNAサンプルも画像化した。STORM画像から、スイッチ位置の4個所のクラスターがあることがわかり、曲った輪郭は、DNAの持続長と一致しており、スイッチ間の加工した距離と一致していた。これらの結果は、STORMが、生体サンプルを回折限界以下の解像度で画像化することができ、40nm隔てられた物質は、十分に解像できる範囲にあることを示す。
【0064】
STORMの利点の1つは、制御された様式でスイッチを繰り返しオンオフし、回折限界内の多数のスイッチを位置特定できることであり、これは一般的な生物学的画像化技術として用いることができる。この可能性を示すために、環状DNAプラスミドを調製し、RecAタンパク質でコーティングし、スイッチで標識された二次抗体を用いた間接的な免疫蛍光を用いて画像化する(図3d、詳細は以下の方法を参照)。ここで、フォトスイッチは、Cy3とCy5とを備えている。Cy3は活性化部分の役割を果たし、Cy5は光放射部分の役割を果たす。RecA繊維のSTORM画像は、従来の広範囲画像と比較して、この環状構造をきわめて高い解像度で明らかにした。この繊維の一部分は、標識されていないか、またはねじれているようであり、この部分は、RecAでコーティングされていないプラスミドの領域に対応している。図3dの上側の図は、スイッチで標識された二次抗体を用い、全反射顕微鏡法によって作成された、間接的な免疫蛍光画像を示す。下側の図は、同じ繊維の再構築されたSTORM画像である。スケールを示す線は300nmである。
【0065】
複数の種類の光スイッチング可能な、光放射部分および活性化部分の対の存在により、例えば、本明細書に記載するように、多色STORM画像化が可能になる。この例は、多色STORM画像化の初期の実施として、選択的な活性化スキームを使用する。Alexa 405−Cy5、Cy2−Cy5またはCy3−Cy5で標識した3つの異なるDNA構築物を混合し、従来の蛍光画像では個々のDNA分子が解像できないほど表面密度が高くなるように、顕微鏡スライドに固定した。STORM画像を作成するために、まず、サンプルに赤色レーザ(633nm)を照射して、視野にあるほぼすべてのCy5染料をオフに切り換えた。次いで、このサンプルを、一連の紫色レーザパルス(405nm)、青色レーザパルス(457nm)および緑色レーザパルス(532nm)で周期的に励起し、それぞれのレーザパルスは、フルオロフォアの一部分をまばらに、光学的に解像可能に活性化した。活性化パルスの間に、サンプルを赤色レーザで画像化した。それぞれの活性化した蛍光スポットの画像を分析し、重心位置を決定し(位置特定と称する)、その前に照射した活性化パルスによって色を割り当てた。同様に、画像化レーザおよび検出チャネルを3種類すべての染料対に使用したので、色収差を補正する必要はなかった。数千回の活性化サイクルの後、着色したすべての位置をプロットすることによって、STORM画像を構築した(図12a〜12c)。STORM画像は、分離したクラスターの位置を示した。各クラスターは、個々のDNA分子に対応しており、複数のスイッチングサイクルでの1個のCy5分子の位置特定を繰り返すことによって得た。各クラスター内の大部分の位置は同じ色で示されており、DNA上に存在する活性化染料の種類を特定している。同定された色には、2種類から由来するクロストーク、間違った色のレーザパルスによる間違った活性化、および赤色画像化レーザによる非特異的な活性化が存在するが、これらの影響は量的には小さかった。各クラスター内の位置特定は、ほぼGaussian分布に従い、3色のチャネルの半値全幅(FWHM)は、26±1nm、25±1nmおよび24±1nmであり(図12d〜12f)、このことは画像解像度が約25nmであることを示唆していた。この解像度は、検出された光子の数から予想される理論限界よりも小さい。
【0066】
細胞サンプルについて、STORM画像化を行うこともできる。この可能性を示すために、この例では、微小管の単色免疫蛍光画像化法を行った。微小管は、多くの細胞機能にとって重要な繊維状細胞骨格構造である。BS−C−1細胞を固定し、微小管に対する一次抗体で免疫染色し、スイッチで標識した二次抗体で免疫染色した。ここで、使用したフォトスイッチは、Cy3とAlexa Fluor 647とを備えており、Cy3は活性化部分の役割を果たし、Alexa Fluor 647は光放射部分の役割を果たす。STORM画像は、従来の蛍光画像と比較して、微小管の網状組織の解像度が顕著に向上していた(図10)。図10a、10cおよび10eは、細胞内のある領域での微小管を異なる倍率で示した従来の画像であり、図10b、10dおよび10fは、同じ領域のSTORM画像である。微小管が密に含まれ、従来の画像では不明確な領域において、個々の微小管繊維がSTORMによって解像された(図10C〜F)。全細胞STORM画像(約106の単分子の位置特定を含む)は、2〜30分で得られた。超解像微小管構造は、STORM画像化から約10〜20秒後に現れ始めるが、まだ最適化はされていなかった。有効な画像化解像度は、固有の染料の位置特定の精度および抗体標識の大きさによって影響を受けた。有効解像度の向上は、染料で標識された一次抗体またはFabフラグメントを用いた直接的な免疫蛍光染色によって達成可能である。
【0067】
異なる光スイッチング可能な対を用い、細胞サンプルについて多色STORM画像化を行うことができる。この可能性を示すために、微小管およびクラスリン被覆ピット(CCP)(レセプターによって媒介されるエンドサイトーシスで使用する細胞構造)を同時に画像化した。微小管およびクラスリンを、一次抗体で免疫染色し、次いでスイッチで標識した二次抗体で免疫染色した。ここで、フォトスイッチは、微小管の画像化の場合、Cy2とAlexa Fluor 647とを備えており、クラスリン画像化の場合、Cy3とAlexa Fluor 647とを備えており、Cy2またはCy3は活性化部分の役割を果たし、Alexa Fluor 647は光放射部分の役割を果たす。457nmおよび532nmのレーザを用い、2つの対を選択的に活性化した。間違った活性化および非特異的な活性化による2色のチャネル間のクロストークは、統計分析後に画像から差し引いた。図11は、微小管およびクラスリン被覆ピットの2色の超解像度STORM画像を示す。図11は、異なる倍率で表した2色STORM画像を示す。緑色チャネル(457nmでの活性化)により、微小管の繊維状構造(これらの画像では長くて薄い構造)が明らかになった。赤色チャネルでは、これらの画像では主に球構造が明らかになり、これはクラスリン被覆ピットおよび小胞であった。
【0068】
まとめると、本実施例は、STORMによって回折限界以下の解像度で生体構造を画像化することができることを示す。この技術の解像度は、光の波長によって制限されない。Cy3−Cy5スイッチの場合、1回のスイッチングサイクルあたり約3,000個の光子が検出され、これは赤色レーザの強度とは無関係であり(データは示していない)、理論的な位置特定精度は4nmであると予測される。この理論的な予測値と測定した精度8nmとの差は比較的小さく、この不一致は、ステージのドリフト補正が不完全であることと、測定における焦点ドリフトによる収差とによるものである。この測定位置の精度は、約20nm(半値全幅、FWHM)の画像化解像度に対応する。実際に、約40nm隔てられた蛍光スイッチは、容易に解像できた(図3)。
【0069】
シアニンスイッチは、光退色の前に、数百回の信頼性の高いオンオフの切り替えサイクルが可能であり、これにより、潜在的に時間分解様式で、多くのフルオロフォアを用いて構造を解像するのに、STORMを使用することができる。10〜20個のスイッチを含有するRecA繊維の環状構造および細胞内の微小管構造およびクラスリン被覆ピット構造は、数分間またはそれ以下の時間で解像可能であった。画像化速度は、例えば、より強い励起によるスイッチング速度を高めることによって、またはより速いスイッチング速度を有するフルオロフォアを用いてスイッチング速度を高めることによって、より速いフレーム速度を有するカメラを用いることによって、より速いカメラ読み取りスキーム(例えば、ピクセルのビニングまたはピクセルの一部分のみの読み出し)を用いることによって、または他の技術によって、向上する場合がある。したがって、STORMは、生体サンプルまたは非生体サンプルの高解像度画像化に価値のあるツールである。STORMの概念は、他の光スイッチング可能なフルオロフォアおよび蛍光タンパク質にも応用することができ、内因性標識を用いて、生きた細胞の高解像度画像化も潜在的に可能であり、回折限界以下の画像解像が望ましい他の画像化への応用も潜在的に可能である。
【0070】
さらなる詳細および例は、W.M.Batesら、「Multicolor Super−resolution Imaging with Photo−switchable Fluorescent Probes」Science(近刊)またはM.J.Rustら、「Sub−diffraction−limit imaging by stochastic reconstruction optical microscopy (STORM)」Nature Methods 3、793−795(2006)を参照。
【0071】
上の記載に有用な方法を以下に示す。
【0072】
(スイッチで標識されたDNA構築物の調製)
ビオチン化DNAオリゴヌクレオチドおよび/またはアミン修飾されたDNAオリゴヌクレオチド(「オリゴ類」)をOperonから購入し、PAGEによって精製した。アミン修飾されたオリゴ類を、合成後にアミン反応性シアニン染料(Amersham Bioscience)またはAlexa染料(Invitrogen)を用い、製造業者によって提供されるプロトコルに従って標識した。染料によって標識されたオリゴ類を逆相HPLCで精製した。DNAの相補鎖をアニーリングし、10mM Tris−Cl(pH7.5)、50mM NaCl中で等モル量の2個の相補鎖を混合し、90℃まで2分間加熱し、混合物を加熱ブロックで1時間かけて室温まで冷却することによって、ビオチン化した二本鎖DNA(dsDNA)を得た。
【0073】
上述のように相補性オリゴ類をアニーリングし、A、BおよびCと称される3種の異なる45bpのdsDNAセグメントを作成し、連結反応させることによって、スイッチ間距離が135bpで種々の長さのビオチン化dsDNAを構築した。このオリゴ類は、5’→3’方向に読むと、AがBのみに連結し、BがCのみに連結し、CがAのみに連結するような、特異的な付着末端を用いて設計された。あるオリゴ類(A)は、アニーリング前にCy3およびCy5で特異的に標識された反対側の鎖とは離れた位置にアミン反応性部位である3塩基対を含有しており、光学スイッチを形成している。オリゴ類BおよびCは、鎖あたり2個の内部ビオチン修飾部を含有しており、ストレプトアビジン表面に多価結合を促進する。アニーリング後、オリゴ類を等しい濃度で混合し、T4リガーゼ(New England Biolabs)を用いて一晩連結させた。得られた連結産物を1.5%寒天ゲルで精製し、所望のコンカテマー化したdsDNA長を含有するバンドを選択した。
【0074】
(スイッチで標識された抗体の調製)
ヤギ抗マウスIgG二次抗体(AbcamまたはInvitrogen)およびヤギ抗ウサギ抗体(Abcam)を、アミン反応性Cy2またはCy3で非特異的に標識し(活性化部位の役割を果たす)、Cy5またはAlexa 647で非特異的に標識した(光放射部分の役割を果たす)。染料:抗体の平均比率は、RecA画像化の場合、Cy3では約2:1であり、Cy5では約0.1:1であった。微小管およびクラスリン画像化の場合、染料:抗体の比率は、Cy3またはCy2では約2:1であり、Alexa Fluor 647では約0.4:1であった。STORM画像化のために、種々のCy5:抗体の比率またはAlexa 647:抗体の比率を用いてもよく、例えば、0.8まで、または0.8を超える比率を用いてもよい。種々のCy3:抗体の比率およびCy2:抗体の比率も、有効なSTORM画像化のために用いることができる。上述の画像化の質は、Cy3(またはCy2):抗体の比率に対し、それほど高感度ではない。これらの標識化比率は、複数のCy5で標識された抗体では、スイッチングが非効率になるため、2個以上のCy5分子で標識される抗体の一部を最小限にするように選択した。1個の抗体に2個以上のCy3分子が存在しても、スイッチングを妨害しなかった。この標識化率で、かなりの割合の二次抗体がCy5を有しておらず、観察されなかった。標識の密度がこのように低いことは、典型的には、間接的な免疫蛍光画像化では問題とはならず、特に、RecA−プラスミド繊維または微小管の環状構造の解像を妨げなかった。
【0075】
(RecA繊維の調製)
0.1M炭酸バッファ(pH8.3)中で精製した組み換えRecA(New England Biolabs)とアミン反応性ビオチン−XX(Invitrogen)とを反応させることによって、ビオチン化RecAを調製した。得られたビオチン化タンパク質をNAP−5サイズ排除カラム(Amersham)で精製した。10mM Trisバッファ(pH7.0)、100mM NaCl、7mM MgCl2および0.8mg/mL ATP−γ−S(ATP−ガンマ−S)中で、RecA(ビオチン化物25%:非ビオチン化物75%、濃度80μg/mL)をプラスミドDNA(2μg/mL)とともに37℃で1時間インキュベーションすることによって、RecA繊維をΦXRF−II(Phi−XRF)プラスミドDNA(New England Biolabs)上に形成させた。得られたRecA−DNA繊維を4℃で保存し、その日のうちに画像化に使用した。
【0076】
(顕微鏡スライドの調製)
石英顕微鏡スライド(G.Finkenbeiner)をAlconox洗浄剤で洗浄し、次いでアセトン、1M KOH水溶液、エタノール、1M KOH水溶液中で、順に15分間超音波処理した。脂質二層用に調製するスライドは、2番目のKOH工程の後に、5%HF溶液に2時間浸した。最後に、スライドを脱イオン水で洗浄し、フレームドライした。両面接着テープ(3M)2片を用いてフローチャネルを調製し、1.5番のガラスカバースリップ(VWR)で覆った。
【0077】
(酸素捕捉系)
すべての画像化バッファに、酸素捕捉系を追加した。酸素捕捉系は、10%(w/v)グルコース(Sigma)、0.1%(v/v)β−メルカプトエタノール(Sigma)、500μg/mL グルコースオキシダーゼ(Sigma)および10μg/mL カタラーゼ(Roche)を含んでいた。酸素捕捉系は、フルオロフォアのフォトスイッチングの信頼性を高めるのに重要であった。いくつかの場合には、シアニン染料を効率よくフォトスイッチングさせるために、0.01%の低濃度のβ−メルカプトエタノールを使用することができる。他の実施形態では、β−メルカプトエタノールを、他の還元試薬(例えばグルタチオンおよびシステイン)と交換することもできる。
【0078】
(DNAおよび抗体の表面固定化)
標識されたdsDNAを表面に固定化するために、石英顕微鏡スライド(G.Finkenbeiner)をAlconox洗浄剤で洗浄し、1M KOH水溶液、エタノールおよび1M KOH水溶液中で、順に超音波処理した後、MilliQ水で洗浄し、フレームドライした。個々の分子が十分に分割され、光学的に解像可能なようにDNA分子の表面密度が低くなるように、最初にビオチン化ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)溶液(1.0mg/mL)をスライドに加え、次いで0.25mg/mL ストレプトアビジン(Invitrogen)を加え、最後にDNAサンプルを低濃度(約30pM)で加えた。スライドを洗浄した後、各試薬を加えた。
【0079】
3色STORM画像化用にDNA構築物を固定するために、3種の異なるDNA構築物(それぞれ、Alexa 405−Cy5対、Cy2−Cy5対またはCy3−Cy5対で標識)を溶液中で混合し、上述のように石英スライドに一緒に固定した。固定された分子の表面密度が高くなるように、濃度500pMのDNAを用いた。
【0080】
複数のスイッチで標識されたDNAサンプルを石英スライドに固定化するために、最初に、卵PCのリポソームおよび5%ビオチン−PE(Avanti)中に流すことによって、脂質二層をスライド上に形成させた。製造業者の指示にしたがってリポソームを形成させ、脂質の濃度5mg/脱イオン水(mL)で0.05μmフィルタ膜を押し出して通し、使用直前に、10mM Tris(pH8.0)、100mM NaClを含有するバッファと1:1の比率で混合した。2時間インキュベーションした後、この二層を50mM Tris(pH8.0)、10mM NaClで十分に洗浄し、二層をストレプトアビジン(0.25mg/mL、Invitrogen)とともに30分間インキュベーションした。十分に洗浄した後、ストレプトアビジン表面を4%(v/v)ホルムアルデヒドPBS液中で1時間架橋させ、Trisバッファで洗浄した後にビオチン化し、スイッチで標識されたDNAを結合させた。DNAを、上述の酸素捕捉系を含むTrisバッファ(50mM Tris−Cl(pH7.5)、10mM NaCl)中で画像化した。
【0081】
スイッチで標識された抗体を表面に固定化するために、石英スライドを上述のように洗浄し、マウス抗トランスフェリンIgG(Abcam)とともに5分間インキュベーションし、非特異的に結合させた。次いで、スライドを、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSバッファ中で、標識された二次抗体とともに10分間インキュベーションした。画像化用に、バッファを、酸素捕捉系を含有する50mM Tris、10mM
NaCl(pH7.5)と交換した。
【0082】
(RecA−dsDNA繊維の免疫蛍光画像化)
ビオチン化RecA−dsDNA繊維を、ビオチン化BSAで非特異的にコーティングした石英スライドにストレプトアビジン結合で接続した。次いで、この表面を50mM Tris(pH7.0)、100mM NaCl、7mM MgCl2、3%(w/v)BSA(ブロックバッファ)で洗浄し、30分間インキュベーションし、この表面に対する非特異的な抗体の結合を阻止した。次いで、RecAに対するモノクローナルマウス抗体(Stressgen)を2μg/mL含有する上述のブロックバッファ中でスライドを1時間インキュベーションした。ブロックバッファで十分に洗浄した後、スイッチで標識された二次抗体を0.3μg/mL含有する上述のブロックバッファ中でスライドを1時間インキュベーションした。最後に、サンプルを洗浄し、上述のような酸素捕捉系を追加した50mM Tris(pH7.5)、100mM NaCl、7mM MgCl2に画像化した。
【0083】
(細胞中の微小管およびクラスリン被覆ピットの免疫蛍光画像化)
ミドリザル腎臓BS−C−1細胞をLabTek II 8ウェルチャンバーのカバーガラス(Nunc)に密度30K/ウェルで置いた。16〜24時間後、これらをリン酸緩衝化食塩水(PBS)バッファで洗浄し、PBS中の3%ホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒドで室温で10分間固定し、PBS中の0.1%ホウ化水素ナトリウムで7分間クエンチし、未反応のアルデヒド基と、固定中に生成した蛍光産物を還元した。加水分解を防ぐために、ホウ化水素ナトリウム溶液は使用直前に調製した。固定したサンプルをブロッキングバッファ(3% BSA、0.5% Triton X−100、PBS中)で10分間浸透させ、チューブリンおよびクラスリンに対する一次抗体(2.5μg/mLマウス抗ベータ(β)チューブリン、Cytoskelton製ATN01および/またはウサギ抗クラスリン重鎖の場合2μg/mL、Abcam製ab21679)の片方または両方で、ブロッキングバッファ中で30分間染色した。次いで、サンプルを洗浄バッファ(0.2% BSA、0.1% Triton X−100、PBS中)で3回洗浄した。光スイッチング可能なプローブで標識された対応する二次抗体(2.5μg/mL)をブロッキングバッファ中でサンプルに加え、30分後に十分に洗浄した。50mM Tris(pH7.5)、10mM NaCl、0.5mg/mL グルコースオキシダーゼ(Sigma、G2133)、40μg/mL カタラーゼ(Roche Applied Science、106810)、10%(w/v)グルコースおよび1%(v/v)β−メルカプトエタノールを含有する標準的な画像化バッファ中で細胞画像化を行った。β−メルカプトエタノールは、Cy5、Cy5.5およびCy7のフォトスイッチングの挙動を観察することによって重要であることがわかっているが、低濃度のβ−メルカプトエタノール(0.02%(v/v)または潜在的にはこれより低い)でさえ、フォトスイッチングに役立った。β−メルカプトエタノールは、低濃度(0.1%)で、生きている細胞の画像化が可能であった。β−メルカプトエタノールをシステイン(100mM)と交換してもフォトスイッチングが観察され、この条件で生きている細胞の画像化も可能であった。グルコースオキシダーゼを酸素捕捉系として使用し、シアニン染料の光安定性を高め、細胞は、報告されたグルコースオキシダーゼ濃度で少なくとも30分間生存可能であった。
【0084】
ヤギ抗マウス抗体(Invitrogen)およびヤギ抗ウサギ抗体(Abcam)を、それぞれアミン反応性活性化剤およびレポーターの混合物で標識した。Alexa 405、Cy2およびCy3をフォトスイッチの活性化部分として使用した。Alexa 647(Invitrogen)は、Cy5と非常によく似た構造および光学特性を有しているが、これをフォトスイッチの光放射部分として使用した。それぞれの抗体が、平均で、2個の活性化染料と、0.3〜0.4の光放射染料とを有するように、反応性染料の濃度を制御した。画像化手順。Olympus IX71顕微鏡を用いて、フォトスイッチの特性決定、DNAコンカテマー画像化およびRecA−dsDNA画像化を行った。プリズム型全反射蛍光(TIRF)撮像幾何を用いて、単分子画像化を行った。サンプルを657nmのレーザで励起させ、532nm、457nmまたは405nmのレーザで活性化した。染料の蛍光放射を、N.A.1.25 60倍浸水対物で集め、665nmロングパスフィルタ(Chroma)を通した後、電子増倍型CCDカメラ(Andor
Ixon DV897)で画像化した。サンプルのステージの移動を追跡するために、200nmの赤色蛍光ポリスチレンビーズ(Invitrogen、F−8810)を、10mM MgCl2を含有するTrisバッファ中でスライドに加え、表面に結合させた。Labviewで書き込まれたカスタムデータ獲得ソフトウェアでデータを得て、サンプルに交互に照射される赤色レーザ励起パルスおよび緑色レーザ励起パルスの連続シーケンスが可能になり、染料がオンオフにスイッチングされる。レーザ励起は、1msの精度でカメラの露光と同期化された。
【0085】
DNAコンカテマーの画像化実験は、典型的には、スイッチを活性化させ、不活性化させるために、60回のレーザパルスサイクルを含んでおり、各サイクルは5秒間続き、最終的な画像を得るのに5分間かかった。重心位置の分布を示す複数のクラスター形状は、典型的には2分以内に現れた。抗体で標識されたRecA−dsDNA繊維に関する実験は、70回のスイッチングサイクルを含んでおり、各サイクルは10秒間続いた。RecA−dsDNA繊維の環状の形状は、典型的には、2分以内に明らかになったが、サンプル中の各スイッチの存在位置は、この時点ではまだ特定されていなかった。スイッチング速度は、励起強度、サイクル時間に線形に依存するため、赤色レーザの強度を上げることによって、位置特定の精度に実質的に影響を与えることなく、最終的な画像化時間を短くすることができた。緑色レーザの強度は、典型的には、緑色パルス照射中に1〜3個のスイッチがオンにスイッチングするように選択し、ほとんどの場合では、すべての活性化したスイッチが、そのサイクルの赤色照射中にオフに切り替わった。
【0086】
STORMで再構築した画像と比較するために、それぞれのスイッチが、蛍光状態または暗状態の維持時間にかかわらず、等しくあらわされるように、画像化シーケンス全体で最大蛍光値を各ピクセルで記録することによって、RecA−dsDNAの生画像を作成した。
【0087】
Olympus IX71倒立顕微鏡を用いて、プリズム型TIRF構成で、DNAサンプルの3色STORM画像化を行った。633nmのHeNeレーザを画像化レーザとして使用し、紫色レーザ(405nm)、青色レーザ(457nm)および緑色レーザ(532nm)を活性化光源として使用した。最初に、サンプルに赤色画像化光を照射し、視野にあるほぼすべてのCy5染料をオフにスイッチングさせた。次いで、一連の紫色、青色および緑色のレーザパルスでサンプルを周期的に活性化し、それぞれのレーザパルスは、フルオロフォアの一部分をまばらに、光学的に解像可能に活性化し、次いで、これを赤色レーザで画像化した。これらのプローブからの蛍光をロングパス放射フィルタ(Chroma、HQ645LP)に通した後、CCDカメラで検出した。STORMデータを得ている間、カメラは、一定のフレーム速度19Hzで蛍光シグナルを記録した。それぞれのスイッチングサイクルで、活性化レーザの1種類が1フレームで照射された後、赤色画像化レーザが9フレームで照射された。
【0088】
対物型TIRF画像化構成を有するOlympus IX71顕微鏡で、細胞のSTORM画像化を行った。カスタム多色ビームスプリッタ(z458/514/647rpc、Chroma)は、対物(100倍の油、NA 1.4、UPlanSApo、Olympus)を通ってサンプルに励起レーザ光を反射し、サンプルからの蛍光放射を同じ対物によって集めた。放射光を2個の組み合わせたデュアルバンド放射フィルタ(51007m、Chromaおよび595−700DBEM、Omega Optical)にかけた後、EMCCDカメラで画像化した。デュアルバンドエミッタを使用することにより、レポーター染料の蛍光に加え、Cy3からの蛍光を集めることができる。緑色活性化レーザを照射するフレーム中に集めたCy3蛍光をドリフト補正のために使用し、従来の蛍光画像を作成するのに使用した。Alexa 647をフォトスイッチの光放射部分として用い、Cy3を活性化部分として用いた単色STORM画像化のために、赤色レーザ(657nm)を画像化に使用し、緑色レーザパルス(532nm)を活性化のために使用した。Cy2およびCy3を活性化部分として使用する2色STORM画像化の場合、青色および緑色のレーザパルス(457nmおよび532nm)を活性化のために交互に使用した。フレーム速度19Hzで画像を得た。それぞれのスイッチングサイクルで、活性化レーザの1種類が1フレームで照射された後、赤色画像化レーザが9フレームで照射された。STORM画像化で使用する典型的なレーザ出力は、赤色レーザの場合40mWであり、それぞれの活性化レーザの場合2μWであった。画像分析。画像分析の一例では、最初に、データ分析のために、平均化した画像の蛍光構造を13×13ピクセル平方のフィッティングウィンドウで切り取った。所与のウィンドウで、合計蛍光強度を各フレームで積算し、蛍光時間結果を得た(図6を参照)。いくつかの基準を使用し、1個のスイッチの高精度位置特定を行った。
【0089】
(1)各スイッチングサイクルで、少なくとも3個のフレーム(0.3秒)で1個のスイッチのみがオンである領域のみを位置特定分析で使用した(図6を参照)。
【0090】
(2)これらの領域にある蛍光画像を、非線形最少二乗回帰で連続的な楕円Gaussian:
【0091】
【数1】
式中、
【0092】
【数2】
にフィッティングさせた。
【0093】
ここで、Aは、バックグラウンド蛍光レベルであり、I0は、ピークの振幅であり、aおよびbは、x方向およびy方向に沿ったGaussian分布の幅を反映しており、x0およびy0は、ピークの中心座標を記述するものであり、θ(シータ)は、ピクセル縁に対する楕円の傾斜角である。このフィッティングに基づき、
【0094】
【数3】
であると定義されるピーク楕円率を算出した。この楕円率が15%を超える場合、画質が悪いか、または複数の活性スイッチが存在する可能性を示し、この領域は分析から除外した。
【0095】
(3)そのピークで集めたカウントの合計数を2πabI0(2パイabI0)として算出し、光電子に変換し、電子の増倍および画像化中に使用するADCゲイン設定のために、カメラ製造業者の較正曲線を用いて光子の数を検出した。そのピークの光電子の合計数が2,000未満であった場合、高い位置特定精度を達成するのに統計的に十分ではないため、その領域は除外した。
【0096】
上述の試験に合格した蛍光トレースの領域を、最終的な位置特定分析で使用した。これらの領域に対応する蛍光画像を、ピクセルにしたGaussian関数を用いて最終的にフィッティングさせ、重心位置を決定した。CCDチップが有限サイズの平方ピクセルを含んでいるため、精度を最適化するために、画像を以下にフィッティングさせた:
【0097】
【数4】
これを、評価を簡単にするために、誤差関数の観点から以下のように表しなおすことができる:
【0098】
【数5】
式中、A、I0、a、b、x0およびy0は上に定義したとおりであり、δ(デルタ)は、目的平面のピクセルの固定した半幅である。このフィッティングで得た最終的な重心の座標(x0,y0)を、最終的なSTORM画像の1個のデータ点として使用した。
【0099】
画像分析の別の例では、活性化フレーム(例えば、中に活性化レーザあり)および画像化フレーム(例えば、中に画像化レーザあり)の繰り返しを備えた動画を調製した。それぞれの画像化フレームで、蛍光スポットを特定し、Gaussian関数および/または楕円Gaussian関数にフィッティングし、重心の位置、強度、幅および楕円率を決定してもよい。これらのパラメータに基づき、位置特定精度を満足いくレベルまで高めるために、特定の場合には、さらなる分析から、輪郭のはっきりしないピーク、幅広すぎるピーク、曲がっているピークなどを除外してもよい。連続した画像化フレームで1カメラピクセルよりも小さな変位であらわれるピークは、同じ蛍光分子由来のものであると考えられ、これらのピークの重心位置をフレーム全体でつなげ、データ構造にまとめる。このことを「ストリング(string)」と称する。各ストリングは、1個の蛍光レポーター分子の1個のスイッチングサイクルをあらわし、ストリングの出発点は、分子がオンにスイッチングするフレームであり、終点は、その分子がオフにスイッチングするフレームである。分子の最終的な位置は、ストリング全体にわたる重心位置の重量平均として決定され、各フレームのピーク強度によって重量測定された。各スイッチングサイクルで検出された光子の合計数をさらなるフィルタとして使用し、精度の低い位置特定をさらに排除した。活性化フレームの直後に画像化フレームから出発するストリングは、制御された活性化事象であると認識することができ、活性化レーザの色によって色分けされていてもよい。他のストリングは、非特異的な活性化であると特定され、ほとんどは、赤色画像化レーザによって誘発されたものであると考えられる。
【0100】
画像化中の顕微鏡の機械的なドリフトを補正するために、同じフィッティングアルゴリズムを使用し、視野にあるいくつかの蛍光ビーズの動きを自動で調べた。ビーズは基準マークの役割を果たし、各画像化サイクル中に、ビーズの位置をサンプリングした。ビーズの平均化した動きを、各1個のスイッチの位置から得た座標から引き、ドリフト補正して再構築した画像を得た。
【0101】
別のドリフト補正法として、活性化フレームで活性化剤フルオロフォアを画像化し、第1の活性化フレームとその後のすべての活性化フレームとの相関関数を算出した。上述の相関関数の重心を調べることにより、画像のドリフトを決定し、STORM画像を補正した。基準マーカーの画像から得た相関関数をドリフト補正に使用してもよい。いくつかの場合には、STORM画像の相関関数自体を時間の関数として分析することによって、いくつかのさらなるドリフト補正が可能であることもわかった。
【0102】
dsDNA上に等間隔にあるスイッチを用いて、画像の定量分析をする場合、再構築した画像の座標をk平均クラスタリングアルゴリズムを用いて分類し、スイッチ間の距離をクラスターの重心間の距離として算出した。上述のアルゴリズムへのクラスターの入力数は、最初の赤色光照射中に観測される光退色工程の数によって選択した。
【0103】
(DNA形状の予測)
表面に結合したdsDNAの135bp片の可能な形状は、DNAのMonte Carloシミュレーションによって、平面に虫様形状の鎖であると算出された。dsDNAのWatson−Crick構造によれば、Cy5分子をヌクレオチドに接続するC6リンカーの長さを説明することができ、隣にあるCy5分子との輪郭長さの予想値は46±1nmであると算出された。平面内にある一連の1Å(オングストローム)接続部としてDNAを処理し、それぞれ、持続長50nmを与えるように選択されたGaussian分布から選択されるランダムな角度で曲っている。スイッチ間の距離の測定値を、この状況でのポリマーの末端から末端までの距離の分布と比較した。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載し、図示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施し、および/または本明細書に記載の結果および/または1つ以上の利点を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想像でき、このような変形例および/または改変例はそれぞれ、本発明の範囲内にあると考えられる。さらに一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、物質および構成は例示を意図しており、実際のパラメータ、寸法、物質および/または構成は、本発明の教示内容が使用される特定の1つ以上の適用例に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、通常の実験を超えない範囲で、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解するか、または解明することができるであろう。したがって、上述の実施形態が単に一例をあらわすものであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、特定的に記載され、特許請求の範囲に記載されたもの以外のやり方で実施してもよいことを理解するべきである。本発明は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。それに加え、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾していない場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【0105】
すべての定義は、本明細書で定義され、使用される場合、辞書の定義、参考として組み込まれる文書に記載の定義、および/または定義された用語の一般的な意味よりも優先すると理解されるべきである。
【0106】
不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、矛盾する意味が明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0107】
句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、その接続された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合には接続的に存在する要素、他の場合には非接続的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素は、同じ様式で解釈されるべきである。すなわち、接続された要素の「1つ以上」であると解釈されるべきである。「および/または」の節で特定的に特定された要素以外の他の要素が任意に存在してもよく、他の要素は、特定的に特定された要素と関係ある要素でもよいし、無関係な要素であってもよい。したがって、非限定例として、「Aおよび/またはB」とは、例えば「〜を含む」のような非限定な語句と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(B以外の要素を任意に含む)を指し、別の実施形態では、Bのみ(A以外の要素を任意に含む)を指し、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(他の要素を任意に含む)などを指す。
【0108】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上に定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストで項目に分けられている場合、「または」または「および/または」は、包括的に解釈されるべきであり、すなわち、多くの要素または要素のリストのうち、少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意に、列挙されていない項目をさらに含むと解釈されるべきである。それとは反対に、示されているもののみを示す用語、例えば、「〜のうち1つのみ」または「〜のうち実際に1つ」または請求項で使用される場合、「〜からなる」は、多くの要素または要素のリストのうち、実際に1つの要素を含むことを指す。一般的に、用語「または」は、本明細書で使用される場合、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「〜のうち1つ」、「〜のうち1つのみ」または「実際に〜のうち1つ」)が前にある場合、排他的な代替物のみを示すと解釈される(すなわち、「片方または他方であり、両方ではない」)。「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で通常使用される意味を有する。
【0109】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素のリストを参照している場合、その要素のリストにある任意の1つ以上の要素から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、その要素のリストに特定的に列挙された各要素およびすべての要素のうち少なくとも1つを必ず含むわけではなく、その要素のリストにある要素の任意の組み合わせを排除するものではないと理解されるべきである。この定義では、要素が、任意に、句「少なくとも1つ」が指す要素のリストに特定的に特定された要素以外の要素(特定的に特定された要素と関係のある要素であってもよいし、無関係の要素であってもよい)が存在してもよい。したがって、非限定例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ」(または、同じ意味で、「AまたはBのうち少なくとも1つ」、または同じ意味で、「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のAを含み、Bが存在しないこと(B以外の要素を任意に含む)を指し、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のBを含み、Aが存在しないこと(A以外の要素を任意に含む)を指し、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意に2つ以上のBを含むこと(他の要素を任意に含む)などを指す。
【0110】
矛盾する意味が明確に示されていない限り、2つ以上のステップまたは工程を含む本明細書で請求される任意の方法では、その方法のステップまたは工程の順序は、本方法のステップまたは工程操作が列挙されている順序に必ずしも限定されるものではないことも理解されるべきである。
【0111】
特許請求の範囲および上の記載では、すべての移行句(例えば、「〜を含む(comprising)」、「〜を含む(including)」、「〜を有する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を含有する(containing)」、「〜を含む(involving)」、「〜を保持する(holding)」、「〜から構成される(composed of)」などは、非限定的であると理解されるべきである。すなわち、含むことを意味するが限定するものではないと理解されるべきである。移行句の中で、「〜からなる」および「〜から本質的になる」は、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03に記載されるように、それぞれ、限定的な移行句または半限定的な移行句である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の方法。
【請求項2】
サンプル中の光スイッチング可能な蛍光プローブに関する空間情報を決定する方法であって、該方法は:
(a)活性化されたときに少なくとも1つの波長の光を放出することができる、複数の光スイッチング可能な蛍光プローブで標識されたサンプルを提供する工程であって、該光スイッチング可能な蛍光プローブの少なくともいくつかは、放出された該光の該少なくとも1つの波長よりも短い分離距離で分離される、工程;
(b)該複数の光スイッチング可能な蛍光プローブを、十分に弱い強度を有する活性化光に暴露し、その結果、該活性化光が、該複数の光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットを、光を放出することができない状態から光を放出することができる状態へ活性化する工程;
(c)活性化された該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットを励起光で励起させる工程であって、該励起光は、活性化された該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットに、放出波長で光を放出させ、続いて該励起光への連続的な暴露により不活性化させる、励起波長を有する、工程;
(d)該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットの不活性化の前に、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットにより放出された該光を測定する工程;
(e)(b)〜(d)を1回以上反復する工程であって、各々の回において、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的に異なるサブセットに、光を放出させる、工程;ならびに
(f)該サンプル内での該光スイッチング可能な蛍光プローブの少なくともいくつかの該位置を、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットによって放出された該光を用いて、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットから放出された該光の波長よりも小さな精度にまで決定する工程
を包含する方法。
【請求項3】
前記工程(f)において決定された前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を用いて画像を構築する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像は、前記放出された光の前記波長に基づく色を少なくとも3つ含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を決定する工程が、前記複数の蛍光プローブの前記統計的サブセットによって放出される前記光のGaussianフィッティングを用いる工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を、時間の関数として決定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
30分以下の画像化時間で前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を用いて画像を構築する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の蛍光プローブの前記統計的サブセットによって放出される前記光を決定する工程が、該複数の蛍光プローブの該統計的サブセットによって放出される該光の画像を得ることを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を決定する工程が、該蛍光プローブの少なくともいくつかの該位置を決定するためにドリフト補正を用いる工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ドリフト補正を用いる工程が、ドリフトを決定するために基準マーカーを用いる工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精度が700nmより小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記精度が100nmより小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(d)がカメラを用いて前記放出された光を得ることを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化光のタイミングおよび前記カメラのフレームが同期化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかは、Cy5、Cy5.5、Cy7および/またはAlexa Fluor(登録商標)647を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル中の前記蛍光プローブの実質的にすべてが本質的に同一である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の蛍光プローブの少なくともいくつかは、1000nm未満の距離で分離される、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかは、Cy5−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy5−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy5.5−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy7−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5、Alexa Fluor(登録商標)647−Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)647−Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)647−Cy2、Alexa Fluor(登録商標)647−Cy3、および/またはAlexa Fluor(登録商標)647−Cy3.5を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項1】
明細書中に記載の方法。
【請求項2】
サンプル中の光スイッチング可能な蛍光プローブに関する空間情報を決定する方法であって、該方法は:
(a)活性化されたときに少なくとも1つの波長の光を放出することができる、複数の光スイッチング可能な蛍光プローブで標識されたサンプルを提供する工程であって、該光スイッチング可能な蛍光プローブの少なくともいくつかは、放出された該光の該少なくとも1つの波長よりも短い分離距離で分離される、工程;
(b)該複数の光スイッチング可能な蛍光プローブを、十分に弱い強度を有する活性化光に暴露し、その結果、該活性化光が、該複数の光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットを、光を放出することができない状態から光を放出することができる状態へ活性化する工程;
(c)活性化された該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットを励起光で励起させる工程であって、該励起光は、活性化された該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットに、放出波長で光を放出させ、続いて該励起光への連続的な暴露により不活性化させる、励起波長を有する、工程;
(d)該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットの不活性化の前に、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットにより放出された該光を測定する工程;
(e)(b)〜(d)を1回以上反復する工程であって、各々の回において、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的に異なるサブセットに、光を放出させる、工程;ならびに
(f)該サンプル内での該光スイッチング可能な蛍光プローブの少なくともいくつかの該位置を、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットによって放出された該光を用いて、該光スイッチング可能な蛍光プローブの統計的なサブセットから放出された該光の波長よりも小さな精度にまで決定する工程
を包含する方法。
【請求項3】
前記工程(f)において決定された前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を用いて画像を構築する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像は、前記放出された光の前記波長に基づく色を少なくとも3つ含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を決定する工程が、前記複数の蛍光プローブの前記統計的サブセットによって放出される前記光のGaussianフィッティングを用いる工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を、時間の関数として決定する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
30分以下の画像化時間で前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を用いて画像を構築する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の蛍光プローブの前記統計的サブセットによって放出される前記光を決定する工程が、該複数の蛍光プローブの該統計的サブセットによって放出される該光の画像を得ることを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかの前記位置を決定する工程が、該蛍光プローブの少なくともいくつかの該位置を決定するためにドリフト補正を用いる工程を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ドリフト補正を用いる工程が、ドリフトを決定するために基準マーカーを用いる工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精度が700nmより小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記精度が100nmより小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(d)がカメラを用いて前記放出された光を得ることを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化光のタイミングおよび前記カメラのフレームが同期化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかは、Cy5、Cy5.5、Cy7および/またはAlexa Fluor(登録商標)647を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル中の前記蛍光プローブの実質的にすべてが本質的に同一である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の蛍光プローブの少なくともいくつかは、1000nm未満の距離で分離される、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光プローブの少なくともいくつかは、Cy5−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy5−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy5−Cy2、Cy5−Cy3、Cy5−Cy3.5、Cy5.5−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy5.5−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy5.5−Cy2、Cy5.5−Cy3、Cy5.5−Cy3.5、Cy7−Alexa Fluor(登録商標)405、Cy7−Alexa Fluor(登録商標)488、Cy7−Cy2、Cy7−Cy3、Cy7−Cy3.5、Alexa Fluor(登録商標)647−Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)647−Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)647−Cy2、Alexa Fluor(登録商標)647−Cy3、および/またはAlexa Fluor(登録商標)647−Cy3.5を含む、請求項2に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【公開番号】特開2012−215594(P2012−215594A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−178598(P2012−178598)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2009−523831(P2009−523831)の分割
【原出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(505061964)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178598(P2012−178598)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2009−523831(P2009−523831)の分割
【原出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(505061964)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (11)
【Fターム(参考)】
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