回線集線設計装置、その方法及びプログラム
【課題】集線装置における転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側カードの切替回数を最適化し得る回線集線設計を行うこと。
【解決手段】推定値算出部151にて、回線集線要求により新規集線を実施した場合に推定される転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側カードACの切替回数の値(推定点)を加入者側カードACの切替回数毎に算出し、理想値算出部152にて、回線集線設計を実施した場合に理想とされる転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側カードACの切替回数の値(理想点)を求め、ユークリッド距離算出部153にて、推定点と理想点とのユークリッド距離を加入者側カードACの切替回数毎に算出し、選定部154にて、最も小さいユークリッド距離が算出された加入者側カードACの切替回数を新規集線の集線先として選定する。
【解決手段】推定値算出部151にて、回線集線要求により新規集線を実施した場合に推定される転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側カードACの切替回数の値(推定点)を加入者側カードACの切替回数毎に算出し、理想値算出部152にて、回線集線設計を実施した場合に理想とされる転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側カードACの切替回数の値(理想点)を求め、ユークリッド距離算出部153にて、推定点と理想点とのユークリッド距離を加入者側カードACの切替回数毎に算出し、選定部154にて、最も小さいユークリッド距離が算出された加入者側カードACの切替回数を新規集線の集線先として選定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスネットワークに配置され、複数の加入者回線をコアネットワークとの通信回線(以下、上位回線と呼ぶ。)に集線する集線装置における回線集線設計、即ちどの加入者回線をどの上位回線に接続するか、言い換えればどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかの設計を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回線集線設計技術を適用する集線装置としては、例えば光ファイバ回線を収容する集線装置やパケット通信網におけるルータ装置などが挙げられる。以下では光ファイバ回線の集線装置における回線集線設計を例に挙げて説明するものとする。
【0003】
図1は光ファイバ通信ネットワークの概要を示すもので、アクセスネットワーク及びコアネットワークからなっている。ここで、アクセスネットワークとは、加入者宅からの光ファイバ回線(加入者宅内のONUを含む。)1と、サービス装置2と、サービス装置2の上位に位置し、各光ファイバ回線(加入者回線)1を集線する集線装置3とからなる部分をいう。また、コアネットワークとは、上位回線4を介して集線装置3と接続され、集線装置3にて集約された情報を各地に転送するルータ5と、各ルータ5間を接続する通信回線(基幹回線)6とからなる部分をいう。
【0004】
図2に示すように、アクセスネットワークのうち通信局内に設置される設備としては、サービス装置2、集線装置3及びこれらを接続する光ファイバ回線7がある。
【0005】
サービス装置2は、加入者(ユーザ)へサービスを提供する複数のパッケージPKGを具備し、各パッケージPKGは加入者宅からの複数本の加入者回線(局外加入者回線)1を1本の光ファイバ回線(局内加入者回線)7にまとめて集線装置3に接続する。
【0006】
集線装置3は、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュール、具体的にはサービス装置2との接続アダプタである加入者側カードACと、コアネットワークとの通信回線である上位回線4を収容する複数の転送者側モジュール、具体的にはルータ5との接続アダプタである転送者側カードTCとを具備し、各転送者側カードTCはスイッチカード(スイッチ機能部)SWを介して1以上の加入者側カードACと接続され、この加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係によってどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるか(回線集線設計)を設定・管理する如くなっている。また、転送者側カードTCは通常、複数の上位回線4を介してルータ5に接続され、コアネットワークとの通信を行う如くなっている。
【0007】
なお、通信局内には一般的に複数のサービス装置2及び複数の集線装置3が設置されるが、図2ではそれぞれ1個のみ示した。また、加入者側カードACに実際に接続される加入者回線は局内加入者回線であるが、「加入者側カード(加入者側モジュール)が収容する二以上の加入者回線」という場合の「加入者回線」とは、「加入者宅からの加入者回線(局外加入者回線)」を意味するものとする。また、以下の説明において複数の各加入者側カードを区別せずに表すときは「加入者側カード」、「加入者側カードAC」、「AC」等と表記し、区別して表すときは「加入者側カードAC1,加入者側カードAC2,…」、「AC1,AC2,…」等と表記するものとする(転送者側カードも同様)。
【0008】
図3は集線装置内で管理している集線情報の一例を示すもので、加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルからなっている。
【0009】
加入者側カード情報テーブルでは、加入者側カードAC毎の接続先(集線先)の転送者側カードTCに関する情報及び使用帯域に関する情報を登録している。図3の例で示すと、装置番号1の集線装置、例えば3−1の1番目の加入者側カードAC1及び2番目の加入者側カードAC2は、1番目の転送者側カードTC1が接続先として登録されている。各加入者側カードACの帯域情報は、下位に接続されているサービス装置で提供されているサービス使用帯域の合計を意味する。例えば、加入者側カードACが複数個のサービス装置(のPKG)と接続されている場合、この加入者側カードACの帯域情報は当該複数個のサービス装置(のPKG)で使用されている帯域の合計を意味する。
【0010】
加入者側カード収容情報テーブルでは、加入者側カードAC毎の収容ユーザ数(加入者回線の収容数)に関する情報を登録している。加入者側カード情報テーブルの帯域情報と同様、各加入者側カードACの収容ユーザ数は、下位に接続されているサービス装置でサービスが提供されているユーザ数の合計を意味する。例えば、加入者側カードACが複数個のサービス装置(のPKG)と接続されている場合、この加入者側カードACの収容ユーザ数は当該複数個のサービス装置(のPKG)でサービスが提供されているユーザ数の合計を意味する。
【0011】
転送者側カード情報テーブルでは、転送者側カードTC毎の使用帯域に関する情報を登録している。具体的には各転送者側カードTCの帯域情報は、加入者側カード情報テーブルに当該転送者側カードTCを接続先として登録されている加入者側カードACの使用帯域の合計値となっている。
【0012】
以上のように集線装置内では集線情報として、加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係で集線元(の加入者回線)及び集線先(の上位回線)が管理され、また、加入者側カードAC毎の帯域値及び収容ユーザ数、並びに転送者側カードTC毎の帯域値が管理されている。よって、集線装置では転送者側カードTCが帯域あふれを起こすと、スイッチカードSWに対する設定変更(集線装置の動作を停止した状態でのコンフィグ情報の書き換え)より加入者側カードACの接続先(集線先)の切り替えを実施し、サービス装置とルータとの間の通信伝送を円滑に管理することが可能である。
【0013】
加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係を固定した状態で加入者側カードACの帯域が増加した場合の転送者側カードTCの帯域状態の変化を示す図4を用いて集線装置における課題について整理する。
【0014】
集線装置で処理されるトラフィックは、ユーザによるサービスの利用度合いによって転送者側カードTC単位で増減があり、各転送者側カードTCの帯域に偏りの少ないものが望ましい。
【0015】
図4に示すように、最初に集線装置での各加入者側カードACの使用帯域をランダムに与え、転送者側カードTC毎の使用帯域の標準偏差(a)を算出する(1)。次に各加入者側カードACの使用帯域をそれぞれ一定量(例えば3%)増加していき(2)、転送者側カードTCの最大利用可能帯域までを需要対応限界(3)として、現状から需要対応限界までの帯域増加回数(b)をカウントする。
【0016】
上述した試行(1)〜(3)を200回繰り返し、図5に示すようにTC標準偏差(a)と帯域増加回数(b)をプロットすると、
・TC標準偏差(a)が高い方が帯域増加回数(需要対応)(b)が少ない、
・TC標準偏差(a)が低い方が帯域増加回数(需要対応)(b)が多い、
という傾向が分かる。この結果から、各転送者側カードTCの帯域に偏りがない方が、需要対応が可能となることが分かる。
【0017】
図6に示すように集線装置における回線集線設計によっては、転送者側カードTCの使用帯域にバラつきが発生する。図6(1)は集線(集線先の切り替え)を行わない状態を示す。1つの転送者側カードTCの最大利用可能帯域が6Gであり、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:6.1G、TC2:3.0G、TC3:3.5G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTC毎の使用帯域のバラつきを標準偏差で計算すると「1215」となる。
【0018】
これに対して、図6(1)の集線先を図6(2)に示すように
<既存の集線先> <新しい集線先>
AC2→TC1 AC2→TC3
AC5→TC3 AC5→TC1
と変更し、その結果、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:6.0G、TC2:3.0G、TC3:5.6G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTCのバラつきを標準偏差で計算すると「1127」となり、図6(1)の場合と比較するとバラつきが減少する。
【0019】
また、図6(1)の集線先を図6(3)に示すように
<既存の集線先> <新しい集線先>
AC2→TC1 AC2→TC2
AC3→TC2 AC3→TC1
と変更し、その結果、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:4.5G、TC2:4.6G、TC3:3.5G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTCのバラつきを標準偏差で計算すると「500」となり、図6(1)(2)の場合と比較するとバラつきは最小となる。
【0020】
図6(1)の状態は帯域あふれが発生しているため、集線先を変えることで再度切り替えを実施する必要がある。その際、集線先をどの転送者側カードTCにするのかによって、転送者側カードTCの使用帯域のバラつきが変わってくるため、変動耐久力がある状態は各転送者側カードTCの使用帯域のバラつきが少ない状態であることが分かる。
【0021】
前記の通り、集線先を変えることで切り替えを実施すると、その都度、転送者側カードTCのバラつきが少なくなるが、図7に示すように切り替えにかかる工事量も切替回数毎に増えてくる。
【0022】
既存の集線先が図7(1)に示すように決まっている状態において、各加入者側カードAC配下の収容ユーザ数は加入者側カードAC毎に800ユーザとする。次に図7(2)に示すように集線先をAC2→TC1からAC2→TC2に切り替える場合、加入者側カードAC2配下に収容されている800ユーザの回線を借用し、集線先を設定変更する必要がある。さらに図7(3)に示すように集線先をAC2→TC1,AC3→TC2からそれぞれAC2→TC2,AC3→TC1に切り替える場合、加入者側カードAC2,AC3配下に収容されている合計1600ユーザの回線を借用し、集線先を設定変更する必要がある。このように、集線装置での切り替えにかかる工事量も切替回数に比例して増えてくることが分かる。
【0023】
図8により図6、図7での結果を整理する。縦軸を転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)とし、横軸を加入者側カードACの切替回数とした場合、ある転送者側カードTCが帯域あふれを起こしたとき、加入者側カードACの切替回数を増やせば、その分だけ縦軸の転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)が減少する傾向が分かる。しかし、加入者側カードACの切替回数が増えた分、切り替えのための工事、即ち回線を借用し、集線先を設定変更する工事が増えることを意味する。
【0024】
加入者側カードACの切替回数を抑えた場合のType−1では、転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)は変わらず高いままである。転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)を少なくした場合のType−2では、加入者側カードACの切替回数が増えるため、工事が多数発生する。
【0025】
本発明の意図する機能は、Type−1/2にあるトレードオフを解消し、転送者側カードTCが帯域あふれを起こした場合の最適な加入者側カードACの切替回数を導出することにある。
【0026】
以下に、このような問題又は類似する問題を解決するための従来の技術について説明する。
【0027】
特許文献1には、通信時の集線装置の制御方法であって、集線装置のポート監視部が検出できなかった場合には通信制御の障害と判断し、ポート接続切替部において冗長系の通信制御とポートとの接続を行う技術が記載されている。
【0028】
また、特許文献2には、通信時の集線装置の制御方法であって、HUBに装置を接続する場合、接続用ケーブルをストレートケーブルとして用いるか、カスケードケーブルとして用いるかを相手装置に応じて自動的に切り替えることができるようにする技術が記載されている。
【0029】
また、特許文献3には、同時期に送信要求する集線装置及び端末の数を制限することにより、個々の送信要求受付が遅くなること及びデータ転送速度が遅くなることを防止する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかし、前述した各特許文献1〜3に記載の技術は、それぞれ集線において発生する切り替え行為を制御する技術であり、前述したような集線をする際の切替回数を最適化する本発明の回線集線設計装置に適用することは出来なかった。
【0031】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側モジュールの切替回数を最適化し得る、即ち両者を同時に少なくし得る回線集線設計を行う装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するため、本発明は、アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における回線集線設計、即ちどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計を行う回線集線設計装置であって、前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出する推定値算出手段と、前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出する理想値算出手段と、前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定する選定手段とを備えたことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、加入者側モジュールの切替回数毎に転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)の推定値と理想値が算出され、理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果が新規の集線先(回線集線設計)として選定され、これにより最適な回線集線設計が可能となる。
【0034】
ここで、前記選定手段としては、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計を最適な回線集線設計として選定するものが挙げられる。
【0035】
また、前記理想値算出手段としては、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、加入者側モジュールの切替回数毎に転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)の推定値と理想値が算出され、理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計が新規の集線先(回線集線設計)として選定され、これにより最適な回線集線設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】光ファイバ通信ネットワークの概要を示す説明図
【図2】光ファイバ通信ネットワークの要部の詳細を示す説明図
【図3】集線装置内で管理している集線情報の一例(現状の集線状態)を示す説明図
【図4】加入者側カードの帯域増加に伴う転送者側カードの帯域の変化の一例を示す説明図
【図5】転送者側カードの使用帯域の標準偏差と帯域増加回数との相関を示す説明図
【図6】集線装置における回線集線設計による転送者側カードの使用帯域のバラつきの一例を示す説明図
【図7】集線装置における回線集線設計による切替工事量の一例を示す説明図
【図8】集線装置における回線集線設計の課題の説明図
【図9】本発明の回線集線設計装置の実施の形態の一例を示す構成図
【図10】図9中の集線位置決定部の詳細を示すブロック構成図
【図11】推定値の算出ルールの説明図
【図12】推定値の算出手順を示すフローチャート
【図13】推定値の算出結果の一例を示す説明図
【図14】理想値の算出手順を示すフローチャート
【図15】最適点の決定ルールの説明図
【図16】ユークリッド距離の算出手順を示すフローチャート
【図17】本発明の実施例における集線設計の実施条件を示す説明図
【図18】本発明の実施例における推定値算出の説明図
【図19】本発明の実施例における変数a1算出の説明図
【図20】本発明の実施例における変数b2算出の説明図
【図21】本発明の実施例における変数b6算出の説明図
【図22】本発明の実施例における変数b7算出の説明図
【図23】本発明の実施例における正規化情報の算出結果(定数以外)の説明図
【図24】本発明の実施例における正規化情報の算出結果(定数)の説明図
【図25】本発明の実施例におけるユークリッド距離の算出の説明図
【図26】本発明の実施例におけるユークリッド距離の算出の説明図
【図27】本発明の実施例における最終的な集線結果の説明図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態に係る回線集線設計装置について図面を参照して説明するが、本実施の形態では背景技術で説明した集線装置を回線集線設計の対象とする場合の例について説明する。
【0039】
図9は本発明の回線集線設計装置の実施の形態の一例を示すもので、本発明の回線集線設計装置10は、オペレータが入力装置21に入力した設計要求に応じて設計結果を出力装置22に出力する装置であり、具体的には、回線集線要求(集線需要の発生)に対して当該集線の集線先の転送者側カードを選定するものである。前記回線集線要求には、例えば通信局や集線装置を特定する情報も含まれる。
【0040】
回線集線設計装置10は、詳細には、集線装置の加入者側カード毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側カードに関する情報、並びに転送者側カード毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する集線情報データベース11と、入力装置21及び出力装置22とのインターフェイス12と、入力装置21から入力された回線集線要求を解析する入力解析部13と、入力解析部13の解析結果に基づき集線情報データベース11から集線先候補となる転送者側カードに係る集線情報を取得する集線候補取得部14と、前記集線情報から後述する回線集線設計アルゴリズムにより集線先の転送者側カードを選定する集線位置決定部15と、回線集線設計結果(集線結果)を所定の出力形式で出力装置22に出力する出力処理部16とを備えている。
【0041】
なお、回線集線設計装置10は、コンピュータにプログラムをインストールすることにより実現されていても良く、またその実装形態は任意である。例えば、回線集線設計装置10の各部を1つのコンピュータに実装しても、複数のコンピュータに分散実装しても良く、また前記入力装置及び出力装置と同一のコンピュータ上に実装しても良い。
【0042】
集線情報データベース11には、図3で説明したものと同様な集線情報、即ち加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルが記憶されている。なお、図3には1台の集線装置3−1に対応する集線情報のみが示されているが、本データベース11には回線集線設計の対象となる全ての通信局に設置された全ての集線装置について、同様な各テーブルが記憶されているものとする。
【0043】
入力解析部13は、入力装置21から入力された回線集線要求の書式チェックやコマンドチェック等を行うとともに回線集線要求に含まれる通信局や集線装置を指定する情報を抽出する。
【0044】
集線候補取得部14は、前記通信局や集線装置を指定する情報に基づき、集線情報データベース11から回線集線設計対象となる集約装置に係る集線情報を取得する。例えば、図3に示したような集線装置がどこにあるのかを示す装置番号から、回線集線設計対象となった装置番号に対応する加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルの情報を取得する。所謂、新規集線のビルと集線装置が集線条件として指定されている場合、当該条件に合致する集線装置の集線情報を集線情報データベース11から取得し、当該集線装置の集線情報を集線候補として後段の集線位置決定部15に渡す。
【0045】
出力処理部16は、集線位置決定部15による集線結果を所定の出力形式で入出力装置22に出力する他、必要に応じて当該集線結果を図示しない記憶装置に保存し、実際の回線集線処理において利用可能にしている。
【0046】
次に集線位置決定部15について説明する。図10は集線位置決定部15の詳細構成を示すもので、図中、151は推定値算出部、152は理想値算出部、153はユークリッド距離算出部、154は選定部である。
【0047】
まず、図10を参照して集線位置決定部15における集線位置決定アルゴリズムについて説明する。
【0048】
最初に、集線候補取得部14により取得された情報に基づき、推定値算出部151にて、回線集線要求により新規集線を実施した場合に推定される収容状態(転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差))及び集線状態(加入者側カードACの切替回数)の値(推定点)を、集線状態(加入者側カードACの切替回数)毎に算出する。次に理想値算出部152にて、回線集線設計を実施した場合に理想とされる収容状態(転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差))及び集線状態(加入者側カードACの切替回数)の値(理想点)を算出する。次にユークリッド距離算出部153にて、前述した推定点と理想点とのユークリッド距離を集線状態(加入者側カードACの切替回数)毎に算出する。そして、選定部154にて、最も小さいユークリッド距離が算出された集線状態(加入者側カードACの切替回数)を新規集線の集線先として選定する。
【0049】
<推定値の算出>
本実施形態の推定値の算出について図11、図12、図13を用いて説明する。推定値の算出目的は、図11に示す通り、加入者側カードACの切替回数毎の転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)が最小値となるような加入者側カードACと転送者側カードTCの集線先の組み合わせを探すことにある。
【0050】
図12に従って推定値の算出手順を説明する。まず、回線集線要求から該当する集線装置を抽出し、集線情報データベース11中の該当する集線装置に対応する加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルから諸所の集線情報を取得する(s11)。次に、全ての加入者側カードACの転送者側集線先を切り替える際のTC標準偏差(yn)、即ち切替回数毎の転送者側カードTCの標準偏差(yn)の計算(n=0,……N)を実施する(s12)。次に加入者側カードACの転送者側集線先を切り替えた際には転送者側カードTCの帯域値が変わるため、切替後のTC標準偏差(yn)、切替回数(xn)を取得する(s13)。手順s13を実施した時の概念図を図11にて説明する。
【0051】
図11は加入者側カードの切替回数(n=0〜8)に対して、転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)を備えた図である。例えば、加入者側カードの切替回数が「0」の時は、既存の集線先のままであるため、転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)も1点である。また、加入者側カードの切替回数が「1」の時は、例えば現状AC1→TC1(AC1の集線先はTC1)がAC1→TC2(AC1の集線先はTC2)に切り替わった場合を指す。また、切替回数が「1」の時の集線先としてはAC1→TC2(AC1の集線先はTC2)だけでなく、AC1→TC3(AC1の集線先はTC3)やAC1→TC4(AC1の集線先はTC4)のように設定することも可能である。さらに加入者側カードAC1に限らず、現状AC2→TC1(AC2の集線先はTC1)からAC2→TC2(AC2の集線先はTC2)のように、加入者側カードAC2について設定する場合も含まれる。このように切り替えを1回実施した場合は加入者側カードの集線先が変わるため、転送者側カードの帯域が変わり、各転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)も変わる。以下、同様に各切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)を取得する手順がs13の手順となる。
【0052】
次に同じ切替回数(xn)での計算結果同士を比較するため、同じ切替回数(xn)での前回の計算結果、即ち転送者側カードの標準偏差(yn')を取得し(s14)、今回の計算結果(yn)と前回の計算結果(yn')とを比較する(s15)。
【0053】
比較1回目は前回の計算結果が無いため無条件に手順s13に戻るが、今回の計算結果(yn)と前回の計算結果(yn')とがあり、この際、比較結果がyn>yn'であれば、目的とする「切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)が最小値となるような加入者側カードと転送者側カードの集線先の組み合わせを探すこと」には該当せず、他の候補を取得するために手順s13を再度実行する。また、比較結果がyn≦yn'もしくは他に候補が無い場合であれば、今回の計算結果(xn,yn)を仮推定値として登録する(s16)。
【0054】
次に、次処理の有無を確認、即ち予め設定した切替回数の最大値Nと手順s16までの処理実施済みの変数nとを比較し(s17)、該当処理がn<Nであればn+1として手順s13〜s16を再度実行し、n=Nであればその時点で仮推定値として登録されている計算結果(xn,yn)を正式な推定値として抽出し(s18)、処理を終了する。
【0055】
具体的には、図12の手順を実施することによって、図13にて示すように加入者側カードの切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値を得ることが可能となる。
【0056】
<理想値の算出>
次に図14に従って本実施形態の理想値の算出手順を説明する。まず、設計者による理想値の外部情報の投入の有無を確認し(s21)、無い場合は理想値(X,Y)=(0,0)として設定する(s22)。ある場合は、前述した切替回数に対応する切替コスト(X)の外部情報を取得し(s23)、前述したTC標準偏差に対応する将来的な切替コスト(Y)の外部情報を取得して(s24)、外部情報(X,Y)の上書きを実施する(s25)。そして、理想値を抽出して(s26)、処理を終了する。
【0057】
<ユークリッド距離の算出>
本実施形態のユークリッド距離の算出について図15、図16を用いて説明する。ユークリッド距離の算出目的は、図15に示す通り、推定値を正規化した各推定点と理想点(理想値)とのユークリッド距離を算出して、最も小さいユークリッド距離が算出された集線状態(加入者側カードの切替回数)を新規集線の集線先として選定することにある。
【0058】
図16に従ってユークリッド距離の算出手順を説明する。まず、算出範囲(n=0,……N)を決定して加入者側カードの切替範囲を特定し(s31)、特定された切替範囲における切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)ynを取得する(s32)。
【0059】
例として手順s32を図13を用いて説明する。仮に手順s31で算出範囲が0〜8とし、切替回数「0」、即ち「x0」の標準偏差ynを取得すると、「y0」が取得可能であり、手順s32の実施後に(x0,y0)を取得する。
【0060】
次に正規化変数に必要な情報を取得する手順s33を図15を用いて説明する。図15の正規化変数の例にあるようにa=a1*a2、b=b1*b7*b8を取得する。ここではx,y軸を共通の評価パラメータとするために正規化を実施する。
【0061】
(正規化変数aの説明)
x=切替回数をコスト化するためにa1を切り替え対象加入者側カードACのユーザ数とする。a1の具体的な説明図としては図7があり、例えば図7(2)のようにAC2→TC1からAC2→TC2に1回切り替える場合、カードAC2毎のユーザ数として800人がいる場合はa1=800となる。a2は1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にa2=100円/人の場合、切り替えコストはa1*a2=800人*100円/人=80,000円となる。よって、1回切り替える場合、a=a1*a2*a3*xn=80,000円*1/1*1=80,000円となる。
【0062】
(正規化変数bの説明)
y=転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)をコスト化するために、まずb1は、各転送者側カードTCmの割合を出すために平均なynを算出する。b7については図15を用いて説明する。まず、転送者側カードTCの帯域超のユーザ数(b7)を算出する。TC帯域超のユーザ数(b7)は、最大TC帯域(b5)を超過したユーザ数を指しているので、現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域を合算から最大TC帯域(b5)の差で計算が可能である。
【0063】
図15の右図にm番目の転送者側カードTCmの帯域超の帯域を示した図がある。これは、現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域を示している。将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域は、現状のTCmのユーザ数(b2)に帯域確保サービス追加申し込み率(b3)と帯域確保サービスの平均帯域値(b4)から算出可能である。よって、TC帯域超の帯域は、TCmの最大転送者側帯域(b5)から現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域(b2*b3*b4)の合算の差(b5−(b6+b2*b3*b4))から算出可能である。
【0064】
前記まではTCm帯域超の帯域を示しているため、TCmの最大TC帯域(b5)を超える帯域であるかを判断するために、b5−(b6+b2*b3*b4)>0であればb5−(b6+b2*b3*b4)=0として判断することも可能である。また、TC帯域超のユーザ数(b7)で算出したい単位は「ユーザ数」なので、TCmの最大TC帯域(b5)を超える帯域(b5−(b6+b2*b3*b4)、但し、b5−(b6+b2*b3*b4)>0であればb5−(b6+b2*b3*b4)=0)に、帯域確保サービスの平均帯域値(b4)を割れば単位が揃うことが分かる。
【0065】
次にb8は1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にTC帯域超のユーザ数(b7)として800人がいる場合はb7=800となる。b8では1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にb1=1/1000、b8=100円/人の場合、将来的な切り替えコストはb=b1*b7*b8=1/2*800人*100円/人=80円となる。
【0066】
次に、Lnの計算結果を取得する手順s34を図15を用いて説明する。仮にn=2、a=80,000、b=80、(X,Y)=(0,0)、(x2,y2)=(2,2000)とすると
L2={(80000*2−0)2+(80*2000−0)2}1/2
=565.68
となる。
【0067】
次に、次処理の有無を確認、即ち手順s31で設定したNと手順s34までの処理実施済みの変数nとを比較し(s35)、該当処理がn<Nであればn+1として手順s32〜s34を再度実行し、n=Nであれば全てのLnの計算結果を取得済みとして、各Lnの中から最短ユークリッド距離を抽出し(s36)、処理を終了する。
【0068】
以上、本発明の実施の形態の一例について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正規化変数のような統計的な予測の性質を持った情報でも数値化が可能であれば本発明を適用できる。また、上記実施の形態では説明の簡単のため、加入者側カードAC単位で切替回数を算出したが、加入者側カード単位ではなく、TC単位、サービス装置単位、PKG単位であっても本発明を適用できる。
【0069】
また、上記実施の形態では設計対象として、光ファイバ回線を収容する集線装置における回線集線設計について説明したが、他のシステム、例えばパケット通信網におけるルータ装置における回線集線設計でも本発明を適用できる。
【実施例1】
【0070】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。ここでは上記実施の形態の回線集線設計装置を用いて以下の条件のもとで収容設計を行うものとする。
【0071】
図17は本実施例における集線設計の実施条件を示しており、集線装置には4つの転送者側カードTC1〜TC4と、8つの加入者側カードAC1〜AC8とが搭載されており、各転送者側カードの最大帯域は6Gとして設定されているものとする。また、加入者側カード情報テーブルには加入者側カード毎の接続先の転送者側カードの番号及び使用帯域(G)値が設定され、加入者側カード収容情報テーブルには加入者側カード毎の収容ユーザ数が設定されている。また、加入者側カード情報テーブルの接続先転送者側情報から、転送者側カード情報テーブルにおける転送者側カード毎の使用帯域(G)値が設定されている。
【0072】
以上の条件のもと、シミュレーションを行う。本発明は推定値算出→理想値算出→ユークリッド距離算出手順から最適な集線先を決める発明のため、上記手順に沿って、実施例を説明する。
【0073】
図18は図17で与えられた転送者側カード及び加入者側カードの帯域・収容数からの推定値算出を説明するもので、各加入者側カードの切替回数(n=0〜8)における転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値を算出する。図17で与えられた転送者側カード及び加入者側カードの切り替えパターンの転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値は、
(x0,y0)=(0,1658)
(x1,y1)=(1,2318)
(x2,y2)=(2,353)
(x3,y3)=(3,790)
(x4,y4)=(4,707)
(x5,y5)=(5,353)
(x6,y6)=(6,935)
(x7,y7)=(7,1457)
(x8,y8)=(8,1457)
となる。
【0074】
理想値の算出については、説明を簡便にするため、設計者による外部情報の投入はなく、理想値(X,Y)=(0,0)であるとする。
【0075】
次に、ユークリッド距離の算出手順を説明するが、図16中の正規化変数に必要な情報取得手順s33については図19〜図24を用いて、また、最短ユークリッド距離抽出手順s36については図25、図26を用いて説明する。
【0076】
図19は変数a1(切替対象ACのユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図では加入者側カードの番号(No)毎の接続先TC番号を算出している。これは、各加入者側カードの切替回数(n)における転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値(以下、切替回数毎の最小標準偏差値)となる切り替えパターンを算出するものである。
【0077】
例えば、切替回数「0回」の最小標準偏差値の切り替えパターンは、切り替えをしていないため、図17の加入者側カード情報テーブルにある接続先TC番号と同値となり、図19の変数a1は切替回数0回(各ACNoが切り替えがない)ため、各ACNo合計でも0人となる。
【0078】
また、切替回数「1回」の最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが分かる。その場合、AC7に収容されている全てのユーザが切り替えられるので、図17の加入者側カード収容情報テーブルにおけるAC7の収容ユーザ数は「200」となっているため、変数a1は切り替えがないACNo(AC7以外)は0ユーザで、カードAC7のみ200ユーザとなり、各ACNoを合計すると200人となる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0079】
図20は変数b2(TCm収容ユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図は切り替え後の各転送者側カードの収容ユーザ数を加入者側カード番号毎に示している。例えば、切替回数「1回」の場合、最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが図19から分かる。そのため、カードAC7に登録されていた収容ユーザが全てTC4からTC3に切り替えられる。具体的には、カードAC7に収容されていた200ユーザが接続先転送者側番号をAC7→TC4からAC7→TC3へ切り替えられるため、200ユーザがカードTC4から減少し、カードTC3に増加することになる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0080】
図21は変数b6(現状のTCm帯域)算出(取得)を説明するもので、本図は切り替え後の各転送者側カードの帯域値を加入者側カード番号毎に示している。
【0081】
例えば、切替回数「1回」の場合、最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが図19から分かる。そのため、カードAC7に登録されていた帯域値が全てTC4からTC3に切り替えられる。具体的には、カードAC7に収容されていた帯域1.5Gが接続先TC番号をAC7→TC4からAC7→TC3へ切り替えられるため、帯域1.5GがカードTC4から減少し、カードTC3に増加することになる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0082】
図22は変数b7(TC帯域超のユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図では変数b7を構成するb2,b3,b4,b5,b6から算出する。ここで、
b2:TCm収容ユーザ数 →TCmによって変わる
b3:帯域サービス追加申し込み率 →定数(実施例:50%)
b4:帯域サービスの平均帯域値 →定数(実施例:0.05G/ユーザ)
b5:最大TC帯域 →定数(実施例:6G)
b6:現状のTCm帯域 →TCmによって変わる
である。
【0083】
上記の変数の中で定数以外のb2,b6は図19、図20で算出しているため、b3,b4,b5の定数を実施例として仮に決めた上で算出方法を説明する。まず、切り替え回数が1回の時のb7を算出するために必要なb2,b6を取得すると
b2 b6
TC1 950 6.5G
TC2 750 6.5G
TC3 750 6.0G
TC4 150 1.0G
となる。
【0084】
ここで、変数b7は
【0085】
【数1】
であるため、カードTC1のb5−(b6+b2*b3*b4)を算出すると、
6.0G−(6.5G+(950ユーザ*50%*0.05G/ユーザ))
=6.0G−(6.5G+23.75G)
=6.0G−30.25G
=−24.25
≒−24G
となる。
【0086】
カードTC2〜TC4もカードTC1と同様に算出すると
b2 b6 b5−(b6+b2*b3*b4)
TC1 950 6.5G −24G
TC2 750 6.5G −19G
TC3 750 6.0G −19G
TC4 150 1.0G 0G
となる。
【0087】
次にカードTC1〜TC4のb7を算出すると、
|−24G−19G−19G+0|÷0.05G/ユーザ=1245ユーザ
となり、切替回数1回の場合のb7=1245ユーザとなる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0088】
最終的には図16にあるユークリッド距離算出手順の中でも、正規化変数に必要な情報取得手順s33を図19〜図22を使って算出方法を説明した。図23、図24は図19〜図22にて算出した変数を整理するためのものである。
【0089】
図23には正規化情報の算出結果(定数以外)として、図18に記載の切替回数(xn)、標準偏差(yn)と、図19〜図22に記載の各正規化変数(a1,b2,b6,b7)とを記載している。また、図24には正規化情報の算出結果(定数)として、実施例で定めた定数を記載している。
【0090】
次に、図16中の最短ユークリッド距離抽出手順s36を図25、図26を用いて説明する。
【0091】
図25はユークリッド距離算出のために将来的な切替コストと切替コストを各切替回数毎に算出している。例えば切替コストはa1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)*a3(1/xn)*xnとなるため、切替コストはa1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)となる。図25のa*xn欄は実質上、a1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)となるため、同表のa=a1*a2とa*xnは同値となる。
【0092】
また、将来的な切替コストとしては、標準偏差(yn)とb(正規化変数)の積で算出可能である。例えば、切替回数1回の標準偏差(yn)は2318.4であり、b(正規化変数)は111.7であるため、両者の積であるb*ynは111.7*2318.4=258,939円となる。
【0093】
最終的なLnを説明する。例えば、切替回数1回のL1は、
(X,Y)=(0,0):理想点
(x1,y1)=(20000,258939):推定値
であるから、
L1={(a1*x1−X)2+(b*y1−Y)2}1/2
={(20000−0)2+(258939−0)2}1/2
=259,710円
となる。また他の切替回数時のLnについても同様の算出方法で算出が可能である。
【0094】
図26は切替回数毎のユークリッド距離から最適な切替回数を選定している。各切替回数毎の「将来的な切替コスト」と「切替コスト」を算出し、現在の切り替えする場合の切替コストと、切り替え後に発生予定のコストである将来的な切替コストを示している。両者のコスト算出結果を踏まえて、各切替回数のユークリッド距離を算出している。算出結果から最短となるLnを算出するが、図26ではL2の値が最短となるため、2回切り替えするのが各切替回数の中では最適となる。
【0095】
図27は本実施例における最終的な集線結果を示す。回線集線前の状態から回線集線後は図26の経緯から2回の切り替えが最適となった。その内訳は、集線前はAC2→TC1、AC4→TC2であったが、集線後ではAC2→TC4、AC4→TC1となることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1:光ファイバ回線(局外加入者回線)、2:サービス装置、3:集線装置、4:上位回線、5:ルータ、6:基幹回線、7:光ファイバ回線(局内加入者回線)、10:回線集線設計装置、11:集線情報データベース、12:インターフェイス、13:入力解析部、14:集線候補取得部、15:集線位置決定部、16:出力処理部、21:入力装置、22:出力装置、151:推定値算出部、152:理想値算出部、153:ユークリッド距離算出部、154:選定部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開2009−302611号公報
【特許文献2】特開2009−141552号公報
【特許文献3】特開2009−21918号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスネットワークに配置され、複数の加入者回線をコアネットワークとの通信回線(以下、上位回線と呼ぶ。)に集線する集線装置における回線集線設計、即ちどの加入者回線をどの上位回線に接続するか、言い換えればどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかの設計を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回線集線設計技術を適用する集線装置としては、例えば光ファイバ回線を収容する集線装置やパケット通信網におけるルータ装置などが挙げられる。以下では光ファイバ回線の集線装置における回線集線設計を例に挙げて説明するものとする。
【0003】
図1は光ファイバ通信ネットワークの概要を示すもので、アクセスネットワーク及びコアネットワークからなっている。ここで、アクセスネットワークとは、加入者宅からの光ファイバ回線(加入者宅内のONUを含む。)1と、サービス装置2と、サービス装置2の上位に位置し、各光ファイバ回線(加入者回線)1を集線する集線装置3とからなる部分をいう。また、コアネットワークとは、上位回線4を介して集線装置3と接続され、集線装置3にて集約された情報を各地に転送するルータ5と、各ルータ5間を接続する通信回線(基幹回線)6とからなる部分をいう。
【0004】
図2に示すように、アクセスネットワークのうち通信局内に設置される設備としては、サービス装置2、集線装置3及びこれらを接続する光ファイバ回線7がある。
【0005】
サービス装置2は、加入者(ユーザ)へサービスを提供する複数のパッケージPKGを具備し、各パッケージPKGは加入者宅からの複数本の加入者回線(局外加入者回線)1を1本の光ファイバ回線(局内加入者回線)7にまとめて集線装置3に接続する。
【0006】
集線装置3は、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュール、具体的にはサービス装置2との接続アダプタである加入者側カードACと、コアネットワークとの通信回線である上位回線4を収容する複数の転送者側モジュール、具体的にはルータ5との接続アダプタである転送者側カードTCとを具備し、各転送者側カードTCはスイッチカード(スイッチ機能部)SWを介して1以上の加入者側カードACと接続され、この加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係によってどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるか(回線集線設計)を設定・管理する如くなっている。また、転送者側カードTCは通常、複数の上位回線4を介してルータ5に接続され、コアネットワークとの通信を行う如くなっている。
【0007】
なお、通信局内には一般的に複数のサービス装置2及び複数の集線装置3が設置されるが、図2ではそれぞれ1個のみ示した。また、加入者側カードACに実際に接続される加入者回線は局内加入者回線であるが、「加入者側カード(加入者側モジュール)が収容する二以上の加入者回線」という場合の「加入者回線」とは、「加入者宅からの加入者回線(局外加入者回線)」を意味するものとする。また、以下の説明において複数の各加入者側カードを区別せずに表すときは「加入者側カード」、「加入者側カードAC」、「AC」等と表記し、区別して表すときは「加入者側カードAC1,加入者側カードAC2,…」、「AC1,AC2,…」等と表記するものとする(転送者側カードも同様)。
【0008】
図3は集線装置内で管理している集線情報の一例を示すもので、加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルからなっている。
【0009】
加入者側カード情報テーブルでは、加入者側カードAC毎の接続先(集線先)の転送者側カードTCに関する情報及び使用帯域に関する情報を登録している。図3の例で示すと、装置番号1の集線装置、例えば3−1の1番目の加入者側カードAC1及び2番目の加入者側カードAC2は、1番目の転送者側カードTC1が接続先として登録されている。各加入者側カードACの帯域情報は、下位に接続されているサービス装置で提供されているサービス使用帯域の合計を意味する。例えば、加入者側カードACが複数個のサービス装置(のPKG)と接続されている場合、この加入者側カードACの帯域情報は当該複数個のサービス装置(のPKG)で使用されている帯域の合計を意味する。
【0010】
加入者側カード収容情報テーブルでは、加入者側カードAC毎の収容ユーザ数(加入者回線の収容数)に関する情報を登録している。加入者側カード情報テーブルの帯域情報と同様、各加入者側カードACの収容ユーザ数は、下位に接続されているサービス装置でサービスが提供されているユーザ数の合計を意味する。例えば、加入者側カードACが複数個のサービス装置(のPKG)と接続されている場合、この加入者側カードACの収容ユーザ数は当該複数個のサービス装置(のPKG)でサービスが提供されているユーザ数の合計を意味する。
【0011】
転送者側カード情報テーブルでは、転送者側カードTC毎の使用帯域に関する情報を登録している。具体的には各転送者側カードTCの帯域情報は、加入者側カード情報テーブルに当該転送者側カードTCを接続先として登録されている加入者側カードACの使用帯域の合計値となっている。
【0012】
以上のように集線装置内では集線情報として、加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係で集線元(の加入者回線)及び集線先(の上位回線)が管理され、また、加入者側カードAC毎の帯域値及び収容ユーザ数、並びに転送者側カードTC毎の帯域値が管理されている。よって、集線装置では転送者側カードTCが帯域あふれを起こすと、スイッチカードSWに対する設定変更(集線装置の動作を停止した状態でのコンフィグ情報の書き換え)より加入者側カードACの接続先(集線先)の切り替えを実施し、サービス装置とルータとの間の通信伝送を円滑に管理することが可能である。
【0013】
加入者側カードACと転送者側カードTCとの接続関係を固定した状態で加入者側カードACの帯域が増加した場合の転送者側カードTCの帯域状態の変化を示す図4を用いて集線装置における課題について整理する。
【0014】
集線装置で処理されるトラフィックは、ユーザによるサービスの利用度合いによって転送者側カードTC単位で増減があり、各転送者側カードTCの帯域に偏りの少ないものが望ましい。
【0015】
図4に示すように、最初に集線装置での各加入者側カードACの使用帯域をランダムに与え、転送者側カードTC毎の使用帯域の標準偏差(a)を算出する(1)。次に各加入者側カードACの使用帯域をそれぞれ一定量(例えば3%)増加していき(2)、転送者側カードTCの最大利用可能帯域までを需要対応限界(3)として、現状から需要対応限界までの帯域増加回数(b)をカウントする。
【0016】
上述した試行(1)〜(3)を200回繰り返し、図5に示すようにTC標準偏差(a)と帯域増加回数(b)をプロットすると、
・TC標準偏差(a)が高い方が帯域増加回数(需要対応)(b)が少ない、
・TC標準偏差(a)が低い方が帯域増加回数(需要対応)(b)が多い、
という傾向が分かる。この結果から、各転送者側カードTCの帯域に偏りがない方が、需要対応が可能となることが分かる。
【0017】
図6に示すように集線装置における回線集線設計によっては、転送者側カードTCの使用帯域にバラつきが発生する。図6(1)は集線(集線先の切り替え)を行わない状態を示す。1つの転送者側カードTCの最大利用可能帯域が6Gであり、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:6.1G、TC2:3.0G、TC3:3.5G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTC毎の使用帯域のバラつきを標準偏差で計算すると「1215」となる。
【0018】
これに対して、図6(1)の集線先を図6(2)に示すように
<既存の集線先> <新しい集線先>
AC2→TC1 AC2→TC3
AC5→TC3 AC5→TC1
と変更し、その結果、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:6.0G、TC2:3.0G、TC3:5.6G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTCのバラつきを標準偏差で計算すると「1127」となり、図6(1)の場合と比較するとバラつきが減少する。
【0019】
また、図6(1)の集線先を図6(3)に示すように
<既存の集線先> <新しい集線先>
AC2→TC1 AC2→TC2
AC3→TC2 AC3→TC1
と変更し、その結果、各転送者側カードTCの使用帯域がそれぞれ、TC1:4.5G、TC2:4.6G、TC3:3.5G、TC4:3.5Gであった場合、転送者側カードTCのバラつきを標準偏差で計算すると「500」となり、図6(1)(2)の場合と比較するとバラつきは最小となる。
【0020】
図6(1)の状態は帯域あふれが発生しているため、集線先を変えることで再度切り替えを実施する必要がある。その際、集線先をどの転送者側カードTCにするのかによって、転送者側カードTCの使用帯域のバラつきが変わってくるため、変動耐久力がある状態は各転送者側カードTCの使用帯域のバラつきが少ない状態であることが分かる。
【0021】
前記の通り、集線先を変えることで切り替えを実施すると、その都度、転送者側カードTCのバラつきが少なくなるが、図7に示すように切り替えにかかる工事量も切替回数毎に増えてくる。
【0022】
既存の集線先が図7(1)に示すように決まっている状態において、各加入者側カードAC配下の収容ユーザ数は加入者側カードAC毎に800ユーザとする。次に図7(2)に示すように集線先をAC2→TC1からAC2→TC2に切り替える場合、加入者側カードAC2配下に収容されている800ユーザの回線を借用し、集線先を設定変更する必要がある。さらに図7(3)に示すように集線先をAC2→TC1,AC3→TC2からそれぞれAC2→TC2,AC3→TC1に切り替える場合、加入者側カードAC2,AC3配下に収容されている合計1600ユーザの回線を借用し、集線先を設定変更する必要がある。このように、集線装置での切り替えにかかる工事量も切替回数に比例して増えてくることが分かる。
【0023】
図8により図6、図7での結果を整理する。縦軸を転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)とし、横軸を加入者側カードACの切替回数とした場合、ある転送者側カードTCが帯域あふれを起こしたとき、加入者側カードACの切替回数を増やせば、その分だけ縦軸の転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)が減少する傾向が分かる。しかし、加入者側カードACの切替回数が増えた分、切り替えのための工事、即ち回線を借用し、集線先を設定変更する工事が増えることを意味する。
【0024】
加入者側カードACの切替回数を抑えた場合のType−1では、転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)は変わらず高いままである。転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)を少なくした場合のType−2では、加入者側カードACの切替回数が増えるため、工事が多数発生する。
【0025】
本発明の意図する機能は、Type−1/2にあるトレードオフを解消し、転送者側カードTCが帯域あふれを起こした場合の最適な加入者側カードACの切替回数を導出することにある。
【0026】
以下に、このような問題又は類似する問題を解決するための従来の技術について説明する。
【0027】
特許文献1には、通信時の集線装置の制御方法であって、集線装置のポート監視部が検出できなかった場合には通信制御の障害と判断し、ポート接続切替部において冗長系の通信制御とポートとの接続を行う技術が記載されている。
【0028】
また、特許文献2には、通信時の集線装置の制御方法であって、HUBに装置を接続する場合、接続用ケーブルをストレートケーブルとして用いるか、カスケードケーブルとして用いるかを相手装置に応じて自動的に切り替えることができるようにする技術が記載されている。
【0029】
また、特許文献3には、同時期に送信要求する集線装置及び端末の数を制限することにより、個々の送信要求受付が遅くなること及びデータ転送速度が遅くなることを防止する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかし、前述した各特許文献1〜3に記載の技術は、それぞれ集線において発生する切り替え行為を制御する技術であり、前述したような集線をする際の切替回数を最適化する本発明の回線集線設計装置に適用することは出来なかった。
【0031】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)及び加入者側モジュールの切替回数を最適化し得る、即ち両者を同時に少なくし得る回線集線設計を行う装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するため、本発明は、アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における回線集線設計、即ちどの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計を行う回線集線設計装置であって、前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出する推定値算出手段と、前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出する理想値算出手段と、前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定する選定手段とを備えたことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、加入者側モジュールの切替回数毎に転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)の推定値と理想値が算出され、理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果が新規の集線先(回線集線設計)として選定され、これにより最適な回線集線設計が可能となる。
【0034】
ここで、前記選定手段としては、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計を最適な回線集線設計として選定するものが挙げられる。
【0035】
また、前記理想値算出手段としては、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、加入者側モジュールの切替回数毎に転送者側モジュールの帯域バラつき(標準偏差)の推定値と理想値が算出され、理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計が新規の集線先(回線集線設計)として選定され、これにより最適な回線集線設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】光ファイバ通信ネットワークの概要を示す説明図
【図2】光ファイバ通信ネットワークの要部の詳細を示す説明図
【図3】集線装置内で管理している集線情報の一例(現状の集線状態)を示す説明図
【図4】加入者側カードの帯域増加に伴う転送者側カードの帯域の変化の一例を示す説明図
【図5】転送者側カードの使用帯域の標準偏差と帯域増加回数との相関を示す説明図
【図6】集線装置における回線集線設計による転送者側カードの使用帯域のバラつきの一例を示す説明図
【図7】集線装置における回線集線設計による切替工事量の一例を示す説明図
【図8】集線装置における回線集線設計の課題の説明図
【図9】本発明の回線集線設計装置の実施の形態の一例を示す構成図
【図10】図9中の集線位置決定部の詳細を示すブロック構成図
【図11】推定値の算出ルールの説明図
【図12】推定値の算出手順を示すフローチャート
【図13】推定値の算出結果の一例を示す説明図
【図14】理想値の算出手順を示すフローチャート
【図15】最適点の決定ルールの説明図
【図16】ユークリッド距離の算出手順を示すフローチャート
【図17】本発明の実施例における集線設計の実施条件を示す説明図
【図18】本発明の実施例における推定値算出の説明図
【図19】本発明の実施例における変数a1算出の説明図
【図20】本発明の実施例における変数b2算出の説明図
【図21】本発明の実施例における変数b6算出の説明図
【図22】本発明の実施例における変数b7算出の説明図
【図23】本発明の実施例における正規化情報の算出結果(定数以外)の説明図
【図24】本発明の実施例における正規化情報の算出結果(定数)の説明図
【図25】本発明の実施例におけるユークリッド距離の算出の説明図
【図26】本発明の実施例におけるユークリッド距離の算出の説明図
【図27】本発明の実施例における最終的な集線結果の説明図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態に係る回線集線設計装置について図面を参照して説明するが、本実施の形態では背景技術で説明した集線装置を回線集線設計の対象とする場合の例について説明する。
【0039】
図9は本発明の回線集線設計装置の実施の形態の一例を示すもので、本発明の回線集線設計装置10は、オペレータが入力装置21に入力した設計要求に応じて設計結果を出力装置22に出力する装置であり、具体的には、回線集線要求(集線需要の発生)に対して当該集線の集線先の転送者側カードを選定するものである。前記回線集線要求には、例えば通信局や集線装置を特定する情報も含まれる。
【0040】
回線集線設計装置10は、詳細には、集線装置の加入者側カード毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側カードに関する情報、並びに転送者側カード毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する集線情報データベース11と、入力装置21及び出力装置22とのインターフェイス12と、入力装置21から入力された回線集線要求を解析する入力解析部13と、入力解析部13の解析結果に基づき集線情報データベース11から集線先候補となる転送者側カードに係る集線情報を取得する集線候補取得部14と、前記集線情報から後述する回線集線設計アルゴリズムにより集線先の転送者側カードを選定する集線位置決定部15と、回線集線設計結果(集線結果)を所定の出力形式で出力装置22に出力する出力処理部16とを備えている。
【0041】
なお、回線集線設計装置10は、コンピュータにプログラムをインストールすることにより実現されていても良く、またその実装形態は任意である。例えば、回線集線設計装置10の各部を1つのコンピュータに実装しても、複数のコンピュータに分散実装しても良く、また前記入力装置及び出力装置と同一のコンピュータ上に実装しても良い。
【0042】
集線情報データベース11には、図3で説明したものと同様な集線情報、即ち加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルが記憶されている。なお、図3には1台の集線装置3−1に対応する集線情報のみが示されているが、本データベース11には回線集線設計の対象となる全ての通信局に設置された全ての集線装置について、同様な各テーブルが記憶されているものとする。
【0043】
入力解析部13は、入力装置21から入力された回線集線要求の書式チェックやコマンドチェック等を行うとともに回線集線要求に含まれる通信局や集線装置を指定する情報を抽出する。
【0044】
集線候補取得部14は、前記通信局や集線装置を指定する情報に基づき、集線情報データベース11から回線集線設計対象となる集約装置に係る集線情報を取得する。例えば、図3に示したような集線装置がどこにあるのかを示す装置番号から、回線集線設計対象となった装置番号に対応する加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルの情報を取得する。所謂、新規集線のビルと集線装置が集線条件として指定されている場合、当該条件に合致する集線装置の集線情報を集線情報データベース11から取得し、当該集線装置の集線情報を集線候補として後段の集線位置決定部15に渡す。
【0045】
出力処理部16は、集線位置決定部15による集線結果を所定の出力形式で入出力装置22に出力する他、必要に応じて当該集線結果を図示しない記憶装置に保存し、実際の回線集線処理において利用可能にしている。
【0046】
次に集線位置決定部15について説明する。図10は集線位置決定部15の詳細構成を示すもので、図中、151は推定値算出部、152は理想値算出部、153はユークリッド距離算出部、154は選定部である。
【0047】
まず、図10を参照して集線位置決定部15における集線位置決定アルゴリズムについて説明する。
【0048】
最初に、集線候補取得部14により取得された情報に基づき、推定値算出部151にて、回線集線要求により新規集線を実施した場合に推定される収容状態(転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差))及び集線状態(加入者側カードACの切替回数)の値(推定点)を、集線状態(加入者側カードACの切替回数)毎に算出する。次に理想値算出部152にて、回線集線設計を実施した場合に理想とされる収容状態(転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差))及び集線状態(加入者側カードACの切替回数)の値(理想点)を算出する。次にユークリッド距離算出部153にて、前述した推定点と理想点とのユークリッド距離を集線状態(加入者側カードACの切替回数)毎に算出する。そして、選定部154にて、最も小さいユークリッド距離が算出された集線状態(加入者側カードACの切替回数)を新規集線の集線先として選定する。
【0049】
<推定値の算出>
本実施形態の推定値の算出について図11、図12、図13を用いて説明する。推定値の算出目的は、図11に示す通り、加入者側カードACの切替回数毎の転送者側カードTCの帯域バラつき(標準偏差)が最小値となるような加入者側カードACと転送者側カードTCの集線先の組み合わせを探すことにある。
【0050】
図12に従って推定値の算出手順を説明する。まず、回線集線要求から該当する集線装置を抽出し、集線情報データベース11中の該当する集線装置に対応する加入者側カード情報テーブル、加入者側カード収容情報テーブル及び転送者側カード情報テーブルから諸所の集線情報を取得する(s11)。次に、全ての加入者側カードACの転送者側集線先を切り替える際のTC標準偏差(yn)、即ち切替回数毎の転送者側カードTCの標準偏差(yn)の計算(n=0,……N)を実施する(s12)。次に加入者側カードACの転送者側集線先を切り替えた際には転送者側カードTCの帯域値が変わるため、切替後のTC標準偏差(yn)、切替回数(xn)を取得する(s13)。手順s13を実施した時の概念図を図11にて説明する。
【0051】
図11は加入者側カードの切替回数(n=0〜8)に対して、転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)を備えた図である。例えば、加入者側カードの切替回数が「0」の時は、既存の集線先のままであるため、転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)も1点である。また、加入者側カードの切替回数が「1」の時は、例えば現状AC1→TC1(AC1の集線先はTC1)がAC1→TC2(AC1の集線先はTC2)に切り替わった場合を指す。また、切替回数が「1」の時の集線先としてはAC1→TC2(AC1の集線先はTC2)だけでなく、AC1→TC3(AC1の集線先はTC3)やAC1→TC4(AC1の集線先はTC4)のように設定することも可能である。さらに加入者側カードAC1に限らず、現状AC2→TC1(AC2の集線先はTC1)からAC2→TC2(AC2の集線先はTC2)のように、加入者側カードAC2について設定する場合も含まれる。このように切り替えを1回実施した場合は加入者側カードの集線先が変わるため、転送者側カードの帯域が変わり、各転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)も変わる。以下、同様に各切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)を取得する手順がs13の手順となる。
【0052】
次に同じ切替回数(xn)での計算結果同士を比較するため、同じ切替回数(xn)での前回の計算結果、即ち転送者側カードの標準偏差(yn')を取得し(s14)、今回の計算結果(yn)と前回の計算結果(yn')とを比較する(s15)。
【0053】
比較1回目は前回の計算結果が無いため無条件に手順s13に戻るが、今回の計算結果(yn)と前回の計算結果(yn')とがあり、この際、比較結果がyn>yn'であれば、目的とする「切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)が最小値となるような加入者側カードと転送者側カードの集線先の組み合わせを探すこと」には該当せず、他の候補を取得するために手順s13を再度実行する。また、比較結果がyn≦yn'もしくは他に候補が無い場合であれば、今回の計算結果(xn,yn)を仮推定値として登録する(s16)。
【0054】
次に、次処理の有無を確認、即ち予め設定した切替回数の最大値Nと手順s16までの処理実施済みの変数nとを比較し(s17)、該当処理がn<Nであればn+1として手順s13〜s16を再度実行し、n=Nであればその時点で仮推定値として登録されている計算結果(xn,yn)を正式な推定値として抽出し(s18)、処理を終了する。
【0055】
具体的には、図12の手順を実施することによって、図13にて示すように加入者側カードの切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値を得ることが可能となる。
【0056】
<理想値の算出>
次に図14に従って本実施形態の理想値の算出手順を説明する。まず、設計者による理想値の外部情報の投入の有無を確認し(s21)、無い場合は理想値(X,Y)=(0,0)として設定する(s22)。ある場合は、前述した切替回数に対応する切替コスト(X)の外部情報を取得し(s23)、前述したTC標準偏差に対応する将来的な切替コスト(Y)の外部情報を取得して(s24)、外部情報(X,Y)の上書きを実施する(s25)。そして、理想値を抽出して(s26)、処理を終了する。
【0057】
<ユークリッド距離の算出>
本実施形態のユークリッド距離の算出について図15、図16を用いて説明する。ユークリッド距離の算出目的は、図15に示す通り、推定値を正規化した各推定点と理想点(理想値)とのユークリッド距離を算出して、最も小さいユークリッド距離が算出された集線状態(加入者側カードの切替回数)を新規集線の集線先として選定することにある。
【0058】
図16に従ってユークリッド距離の算出手順を説明する。まず、算出範囲(n=0,……N)を決定して加入者側カードの切替範囲を特定し(s31)、特定された切替範囲における切替回数毎の転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)ynを取得する(s32)。
【0059】
例として手順s32を図13を用いて説明する。仮に手順s31で算出範囲が0〜8とし、切替回数「0」、即ち「x0」の標準偏差ynを取得すると、「y0」が取得可能であり、手順s32の実施後に(x0,y0)を取得する。
【0060】
次に正規化変数に必要な情報を取得する手順s33を図15を用いて説明する。図15の正規化変数の例にあるようにa=a1*a2、b=b1*b7*b8を取得する。ここではx,y軸を共通の評価パラメータとするために正規化を実施する。
【0061】
(正規化変数aの説明)
x=切替回数をコスト化するためにa1を切り替え対象加入者側カードACのユーザ数とする。a1の具体的な説明図としては図7があり、例えば図7(2)のようにAC2→TC1からAC2→TC2に1回切り替える場合、カードAC2毎のユーザ数として800人がいる場合はa1=800となる。a2は1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にa2=100円/人の場合、切り替えコストはa1*a2=800人*100円/人=80,000円となる。よって、1回切り替える場合、a=a1*a2*a3*xn=80,000円*1/1*1=80,000円となる。
【0062】
(正規化変数bの説明)
y=転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)をコスト化するために、まずb1は、各転送者側カードTCmの割合を出すために平均なynを算出する。b7については図15を用いて説明する。まず、転送者側カードTCの帯域超のユーザ数(b7)を算出する。TC帯域超のユーザ数(b7)は、最大TC帯域(b5)を超過したユーザ数を指しているので、現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域を合算から最大TC帯域(b5)の差で計算が可能である。
【0063】
図15の右図にm番目の転送者側カードTCmの帯域超の帯域を示した図がある。これは、現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域を示している。将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域は、現状のTCmのユーザ数(b2)に帯域確保サービス追加申し込み率(b3)と帯域確保サービスの平均帯域値(b4)から算出可能である。よって、TC帯域超の帯域は、TCmの最大転送者側帯域(b5)から現状のTCm帯域(b6)と将来的にユーザのサービス追加等で追加される帯域(b2*b3*b4)の合算の差(b5−(b6+b2*b3*b4))から算出可能である。
【0064】
前記まではTCm帯域超の帯域を示しているため、TCmの最大TC帯域(b5)を超える帯域であるかを判断するために、b5−(b6+b2*b3*b4)>0であればb5−(b6+b2*b3*b4)=0として判断することも可能である。また、TC帯域超のユーザ数(b7)で算出したい単位は「ユーザ数」なので、TCmの最大TC帯域(b5)を超える帯域(b5−(b6+b2*b3*b4)、但し、b5−(b6+b2*b3*b4)>0であればb5−(b6+b2*b3*b4)=0)に、帯域確保サービスの平均帯域値(b4)を割れば単位が揃うことが分かる。
【0065】
次にb8は1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にTC帯域超のユーザ数(b7)として800人がいる場合はb7=800となる。b8では1ユーザ当たりの切り替えコストを表し、仮にb1=1/1000、b8=100円/人の場合、将来的な切り替えコストはb=b1*b7*b8=1/2*800人*100円/人=80円となる。
【0066】
次に、Lnの計算結果を取得する手順s34を図15を用いて説明する。仮にn=2、a=80,000、b=80、(X,Y)=(0,0)、(x2,y2)=(2,2000)とすると
L2={(80000*2−0)2+(80*2000−0)2}1/2
=565.68
となる。
【0067】
次に、次処理の有無を確認、即ち手順s31で設定したNと手順s34までの処理実施済みの変数nとを比較し(s35)、該当処理がn<Nであればn+1として手順s32〜s34を再度実行し、n=Nであれば全てのLnの計算結果を取得済みとして、各Lnの中から最短ユークリッド距離を抽出し(s36)、処理を終了する。
【0068】
以上、本発明の実施の形態の一例について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正規化変数のような統計的な予測の性質を持った情報でも数値化が可能であれば本発明を適用できる。また、上記実施の形態では説明の簡単のため、加入者側カードAC単位で切替回数を算出したが、加入者側カード単位ではなく、TC単位、サービス装置単位、PKG単位であっても本発明を適用できる。
【0069】
また、上記実施の形態では設計対象として、光ファイバ回線を収容する集線装置における回線集線設計について説明したが、他のシステム、例えばパケット通信網におけるルータ装置における回線集線設計でも本発明を適用できる。
【実施例1】
【0070】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。ここでは上記実施の形態の回線集線設計装置を用いて以下の条件のもとで収容設計を行うものとする。
【0071】
図17は本実施例における集線設計の実施条件を示しており、集線装置には4つの転送者側カードTC1〜TC4と、8つの加入者側カードAC1〜AC8とが搭載されており、各転送者側カードの最大帯域は6Gとして設定されているものとする。また、加入者側カード情報テーブルには加入者側カード毎の接続先の転送者側カードの番号及び使用帯域(G)値が設定され、加入者側カード収容情報テーブルには加入者側カード毎の収容ユーザ数が設定されている。また、加入者側カード情報テーブルの接続先転送者側情報から、転送者側カード情報テーブルにおける転送者側カード毎の使用帯域(G)値が設定されている。
【0072】
以上の条件のもと、シミュレーションを行う。本発明は推定値算出→理想値算出→ユークリッド距離算出手順から最適な集線先を決める発明のため、上記手順に沿って、実施例を説明する。
【0073】
図18は図17で与えられた転送者側カード及び加入者側カードの帯域・収容数からの推定値算出を説明するもので、各加入者側カードの切替回数(n=0〜8)における転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値を算出する。図17で与えられた転送者側カード及び加入者側カードの切り替えパターンの転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値は、
(x0,y0)=(0,1658)
(x1,y1)=(1,2318)
(x2,y2)=(2,353)
(x3,y3)=(3,790)
(x4,y4)=(4,707)
(x5,y5)=(5,353)
(x6,y6)=(6,935)
(x7,y7)=(7,1457)
(x8,y8)=(8,1457)
となる。
【0074】
理想値の算出については、説明を簡便にするため、設計者による外部情報の投入はなく、理想値(X,Y)=(0,0)であるとする。
【0075】
次に、ユークリッド距離の算出手順を説明するが、図16中の正規化変数に必要な情報取得手順s33については図19〜図24を用いて、また、最短ユークリッド距離抽出手順s36については図25、図26を用いて説明する。
【0076】
図19は変数a1(切替対象ACのユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図では加入者側カードの番号(No)毎の接続先TC番号を算出している。これは、各加入者側カードの切替回数(n)における転送者側カードの帯域バラつき(標準偏差)の最小値(以下、切替回数毎の最小標準偏差値)となる切り替えパターンを算出するものである。
【0077】
例えば、切替回数「0回」の最小標準偏差値の切り替えパターンは、切り替えをしていないため、図17の加入者側カード情報テーブルにある接続先TC番号と同値となり、図19の変数a1は切替回数0回(各ACNoが切り替えがない)ため、各ACNo合計でも0人となる。
【0078】
また、切替回数「1回」の最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが分かる。その場合、AC7に収容されている全てのユーザが切り替えられるので、図17の加入者側カード収容情報テーブルにおけるAC7の収容ユーザ数は「200」となっているため、変数a1は切り替えがないACNo(AC7以外)は0ユーザで、カードAC7のみ200ユーザとなり、各ACNoを合計すると200人となる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0079】
図20は変数b2(TCm収容ユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図は切り替え後の各転送者側カードの収容ユーザ数を加入者側カード番号毎に示している。例えば、切替回数「1回」の場合、最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが図19から分かる。そのため、カードAC7に登録されていた収容ユーザが全てTC4からTC3に切り替えられる。具体的には、カードAC7に収容されていた200ユーザが接続先転送者側番号をAC7→TC4からAC7→TC3へ切り替えられるため、200ユーザがカードTC4から減少し、カードTC3に増加することになる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0080】
図21は変数b6(現状のTCm帯域)算出(取得)を説明するもので、本図は切り替え後の各転送者側カードの帯域値を加入者側カード番号毎に示している。
【0081】
例えば、切替回数「1回」の場合、最小標準偏差値の切り替えパターンは、図17の加入者側カード情報テーブルの接続先TC番号ではAC7→TC4であった接続先をAC7→TC3へ切り替えていることが図19から分かる。そのため、カードAC7に登録されていた帯域値が全てTC4からTC3に切り替えられる。具体的には、カードAC7に収容されていた帯域1.5Gが接続先TC番号をAC7→TC4からAC7→TC3へ切り替えられるため、帯域1.5GがカードTC4から減少し、カードTC3に増加することになる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0082】
図22は変数b7(TC帯域超のユーザ数)算出(取得)を説明するもので、本図では変数b7を構成するb2,b3,b4,b5,b6から算出する。ここで、
b2:TCm収容ユーザ数 →TCmによって変わる
b3:帯域サービス追加申し込み率 →定数(実施例:50%)
b4:帯域サービスの平均帯域値 →定数(実施例:0.05G/ユーザ)
b5:最大TC帯域 →定数(実施例:6G)
b6:現状のTCm帯域 →TCmによって変わる
である。
【0083】
上記の変数の中で定数以外のb2,b6は図19、図20で算出しているため、b3,b4,b5の定数を実施例として仮に決めた上で算出方法を説明する。まず、切り替え回数が1回の時のb7を算出するために必要なb2,b6を取得すると
b2 b6
TC1 950 6.5G
TC2 750 6.5G
TC3 750 6.0G
TC4 150 1.0G
となる。
【0084】
ここで、変数b7は
【0085】
【数1】
であるため、カードTC1のb5−(b6+b2*b3*b4)を算出すると、
6.0G−(6.5G+(950ユーザ*50%*0.05G/ユーザ))
=6.0G−(6.5G+23.75G)
=6.0G−30.25G
=−24.25
≒−24G
となる。
【0086】
カードTC2〜TC4もカードTC1と同様に算出すると
b2 b6 b5−(b6+b2*b3*b4)
TC1 950 6.5G −24G
TC2 750 6.5G −19G
TC3 750 6.0G −19G
TC4 150 1.0G 0G
となる。
【0087】
次にカードTC1〜TC4のb7を算出すると、
|−24G−19G−19G+0|÷0.05G/ユーザ=1245ユーザ
となり、切替回数1回の場合のb7=1245ユーザとなる。また、他の切替回数についても同様の算出方法で算出が可能である。
【0088】
最終的には図16にあるユークリッド距離算出手順の中でも、正規化変数に必要な情報取得手順s33を図19〜図22を使って算出方法を説明した。図23、図24は図19〜図22にて算出した変数を整理するためのものである。
【0089】
図23には正規化情報の算出結果(定数以外)として、図18に記載の切替回数(xn)、標準偏差(yn)と、図19〜図22に記載の各正規化変数(a1,b2,b6,b7)とを記載している。また、図24には正規化情報の算出結果(定数)として、実施例で定めた定数を記載している。
【0090】
次に、図16中の最短ユークリッド距離抽出手順s36を図25、図26を用いて説明する。
【0091】
図25はユークリッド距離算出のために将来的な切替コストと切替コストを各切替回数毎に算出している。例えば切替コストはa1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)*a3(1/xn)*xnとなるため、切替コストはa1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)となる。図25のa*xn欄は実質上、a1(切替対象ACのユーザ数)とa2(1ユーザ当たりの切替コスト)となるため、同表のa=a1*a2とa*xnは同値となる。
【0092】
また、将来的な切替コストとしては、標準偏差(yn)とb(正規化変数)の積で算出可能である。例えば、切替回数1回の標準偏差(yn)は2318.4であり、b(正規化変数)は111.7であるため、両者の積であるb*ynは111.7*2318.4=258,939円となる。
【0093】
最終的なLnを説明する。例えば、切替回数1回のL1は、
(X,Y)=(0,0):理想点
(x1,y1)=(20000,258939):推定値
であるから、
L1={(a1*x1−X)2+(b*y1−Y)2}1/2
={(20000−0)2+(258939−0)2}1/2
=259,710円
となる。また他の切替回数時のLnについても同様の算出方法で算出が可能である。
【0094】
図26は切替回数毎のユークリッド距離から最適な切替回数を選定している。各切替回数毎の「将来的な切替コスト」と「切替コスト」を算出し、現在の切り替えする場合の切替コストと、切り替え後に発生予定のコストである将来的な切替コストを示している。両者のコスト算出結果を踏まえて、各切替回数のユークリッド距離を算出している。算出結果から最短となるLnを算出するが、図26ではL2の値が最短となるため、2回切り替えするのが各切替回数の中では最適となる。
【0095】
図27は本実施例における最終的な集線結果を示す。回線集線前の状態から回線集線後は図26の経緯から2回の切り替えが最適となった。その内訳は、集線前はAC2→TC1、AC4→TC2であったが、集線後ではAC2→TC4、AC4→TC1となることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1:光ファイバ回線(局外加入者回線)、2:サービス装置、3:集線装置、4:上位回線、5:ルータ、6:基幹回線、7:光ファイバ回線(局内加入者回線)、10:回線集線設計装置、11:集線情報データベース、12:インターフェイス、13:入力解析部、14:集線候補取得部、15:集線位置決定部、16:出力処理部、21:入力装置、22:出力装置、151:推定値算出部、152:理想値算出部、153:ユークリッド距離算出部、154:選定部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開2009−302611号公報
【特許文献2】特開2009−141552号公報
【特許文献3】特開2009−21918号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における、どの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計である回線集線設計を行う回線集線設計装置であって、
前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出する推定値算出手段と、
前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出する理想値算出手段と、
前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定する選定手段とを備えた
ことを特徴とする回線集線設計装置。
【請求項2】
前記選定手段は、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計結果を最適な回線集線設計結果として選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の回線集線設計装置。
【請求項3】
前記理想値算出手段は、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の回線集線設計装置。
【請求項4】
アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における、どの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計である回線集線設計を行う方法であって、
前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段を用い、
推定値算出手段が、前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出するステップと、
理想値算出手段が、前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出するステップと、
選定手段が、前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定するステップとを含む
ことを特徴とする回線集線設計方法。
【請求項5】
前記選定ステップは、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計結果を最適な回線集線設計結果として選定する
ことを特徴とする請求項4に記載の回線集線設計方法。
【請求項6】
前記理想値算出ステップは、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の回線集線設計方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至3のいずれかに記載の回線集線設計装置の各手段として機能させるための回線集線設計プログラム。
【請求項1】
アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における、どの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計である回線集線設計を行う回線集線設計装置であって、
前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出する推定値算出手段と、
前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出する理想値算出手段と、
前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定する選定手段とを備えた
ことを特徴とする回線集線設計装置。
【請求項2】
前記選定手段は、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計結果を最適な回線集線設計結果として選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の回線集線設計装置。
【請求項3】
前記理想値算出手段は、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の回線集線設計装置。
【請求項4】
アクセスネットワークに配置され、二以上の加入者回線を収容する複数の加入者側モジュールと、コアネットワークとの通信回線である上位回線を収容する複数の転送者側モジュールとを少なくとも具備し、各転送者側モジュールを1以上の加入者側モジュールと接続することで複数の加入者回線を上位回線に集線する集線装置における、どの加入者回線の使用帯域をどの上位回線の帯域に割り当てるかを設定するための加入者側モジュールと転送者側モジュールとの接続関係の設計である回線集線設計を行う方法であって、
前記集線装置の加入者側モジュール毎の加入者回線の収容数、使用帯域及び接続先の転送者側モジュールに関する情報、並びに転送者側モジュール毎の使用帯域に関する情報を少なくとも含む集線情報を記憶する記憶手段を用い、
推定値算出手段が、前記記憶手段に記憶された集線情報に基づき、新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数毎の転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの推定値を算出するステップと、
理想値算出手段が、前記新規に回線集線設計を行った場合の、加入者側モジュールの切替回数及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの理想値を算出するステップと、
選定手段が、前記推定値のうち前記理想値に最も近似する推定値を算出したときの回線集線設計結果を新規の回線集線設計結果として選定するステップとを含む
ことを特徴とする回線集線設計方法。
【請求項5】
前記選定ステップは、前記推定値及び理想値がそれぞれ、加入者側モジュールの切替回数と転送者側モジュールの使用帯域のバラつきとにより表される2次元空間における1点を示すベクトル値を用いたものである場合、前記推定値と理想値とのユークリッド距離を算出し、これが最小となる推定値を算出したときの回線集線設計結果を最適な回線集線設計結果として選定する
ことを特徴とする請求項4に記載の回線集線設計方法。
【請求項6】
前記理想値算出ステップは、設計者による外部情報の投入がない場合、加入者側モジュールの切替回数の最小値及び転送者側モジュールの使用帯域のバラつきの最小値を理想値として算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の回線集線設計方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至3のいずれかに記載の回線集線設計装置の各手段として機能させるための回線集線設計プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−120084(P2012−120084A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270231(P2010−270231)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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