回路シミュレーション方法
【課題】半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を正確に見積もることができる回路シミュレーション方法。
【解決手段】端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子102と、端子部上に形成されたコンタクトCTと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法。コンタクトCTと抵抗本体部との間の端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化する(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅)。
【解決手段】端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子102と、端子部上に形成されたコンタクトCTと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法。コンタクトCTと抵抗本体部との間の端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化する(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路シミュレーション方法に関し、特にウェル抵抗素子を備えた回路に対する回路シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化によりロジック回路の面積は縮小されるのに対し、アナログ回路は必ずしも縮小されない。そのため、アナログ回路の面積縮小は、コスト削減のための大きな課題になりつつある。アナログ回路の面積縮小を阻害する原因として、抵抗素子の面積縮小が難しい点を挙げることができる。ここで、ウェル抵抗素子の端子部(開口部)は、タップ及びタップ上に規則的に配置された複数のコンタクトを介して配線と接続されている。ここで、抵抗素子の端子部の抵抗(以下、端子部寄生抵抗という)は、正確に見積もることが難しかった。
【0003】
端子部寄生抵抗の見積り誤差があると、その誤差を見込んでマージンを大きくするか、見積り誤差が無視できるようなレイアウト設計を行う必要がある。いずれの場合も回路面積の増大につながる。特に近年の微細化に伴い、端子部寄生抵抗の主要素の1つであるコンタクトの抵抗が加速度的に大きくなっている。そのため、端子部寄生抵抗が抵抗素子本体の抵抗に対して相対的に大きくなり、端子部寄生抵抗の見積り誤差の問題がより顕著になってきた。
【0004】
一般に、端子部寄生抵抗を見積もるには、レイアウト設計後にLPE(Layout Parameter Extraction)ツールを用いて複雑な寄生抵抗ネットを抽出する必要があった。さらに、回路シミュレーション時間を短縮するためには、逐次的な手計算や回路縮退ツールにより回路縮退を行う必要がある。しかしながら、これらの手法は手間がかかったり、LPEツールに起因した見積もり誤差が含まれるという問題があった。
【0005】
そもそも、LPEツールを用いた検証後に、回路設計を見直すとなると、極めて設計効率が悪い。そのため、レイアウト設計前の回路設計段階において、端子部寄生抵抗を見積もる必要がある。この場合、LPEツールを用いることはできないため、従来は簡易的に端子部寄生抵抗を見積もる手法が用いられてきた。具体的には、端子部寄生抵抗が開口部の面積に反比例するとみなすものである。同様の考え方として、特許文献1では、バイポーラトランジスタのエミッタの寄生抵抗が拡散層の開口部の面積に反比例するとしてモデル化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−49897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、実際には、ウェル抵抗素子の開口部を拡大しても、抵抗素子の長手方向の寄生抵抗により、開口部下における抵抗素子本体から遠い領域は端子部寄生抵抗の低減に寄与できず、見積もり誤差が生じる。その結果、レイアウト設計後の回路シミュレーション結果が設計値と乖離し、結局回路設計及びレイアウト設計の見直しが必要となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回路シミュレーション方法は、
端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子と、
前記端子部上に形成されたコンタクトと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法であって、
前記コンタクトと前記抵抗本体部との間の前記端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化するものである。
(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、
L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、
W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅、である。)
【0009】
本発明では、物理的考察に基づくフィッティングパラメータρ0、L'0、W'0を導入することにより、ウェル抵抗素子の端子部寄生抵抗Rt0を正確に見積もることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェル抵抗素子の端子部寄生抵抗を正確に見積もることができる回路シミュレーション方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための縦断面図である。
【図1B】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。
【図1C】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための横断面図である。
【図1D】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部の等価回路である。
【図2】端子部寄生抵抗Rt0のタップTAPの幅W'依存性を示す模式的に示すグラフである。
【図3】端子部寄生抵抗Rt0のタップTAPの長さL'依存性を示す模式的に示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法と比較例に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。
【図5】実施の形態2に係る回路シミュレーション方法と比較例に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。
【図6A】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための断面図である。
【図6B】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。
【図6C】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部の等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
(実施の形態1)
図1A〜1Dを参照して本発明の第1の実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象となる半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗について説明する。図1Aは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための半導体抵抗素子長手方向の断面図(縦断面図)である。また、図1Cは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための半導体抵抗素子幅方向の断面図(横断面図)である。
【0014】
図1A、1Cに示すように、抵抗素子102上には素子分離層STIが形成されている。この素子分離層STIは、抵抗素子102上の略全面に形成されているが、図1A、1Cに示す抵抗素子102の端子部では、素子分離層STIが選択的に形成さておらず、開口部が形成されている。この開口部では、抵抗素子102上にタップTAPが形成されている。このタップTAP上には、複数のコンタクトCTが形成されている。そして、複数のコンタクトCT上に配線101が形成されている。即ち、抵抗素子102は、タップTAP及びコンタクトCTを介して配線101に接続されている。
【0015】
図1Bは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。図1Bに示すように、幅Wの抵抗素子102上に、幅W'、長さL'のタップTAPが形成さている。ここで、タップTAPと抵抗素子102の側壁との距離はFである。従って、W=2×F+W'である。なお、抵抗素子102の端子部を除く本体の長さはLである。タップTAP上の略全面には、複数のコンタクトCTがマトリクス状に配置されている。以下、本明細書において単に長手方向、幅方向という場合、それぞれ抵抗素子102の長手方向、幅方向を意味するものとする。
【0016】
なお、図1Bでは、配線101を省略している。また、図1Aは図1BにおけるIa−Ia断面図、図1Cは図1BにおけるIc−Ic断面図である。また、第1の実施の形態に係る抵抗素子102は両端に端子部を有し、図示されていないが、他方の端子部も図1A〜1Cと同様の構成を有している。
【0017】
ここで、配線101は、例えばCu(銅)やAl(アルミニウム)などの良導体からなる。また、抵抗素子102は、Nウェル抵抗素子又はPウェル抵抗素子である。TAPはウェルよりも高濃度の不純物拡散層である。また、図示しないが、抵抗素子102がNウェル抵抗素子の場合、抵抗素子102の周囲はP型基板又Pウェルであり、抵抗素子102がPウェル抵抗素子の場合、抵抗素子102の周囲はN型基板又Nウェルである。本実施の形態では、抵抗素子102はNウェル抵抗素子であるとする。コンタクトCTは、例えばW(タングステン)からなる。
【0018】
図1A、1Cには、抵抗素子102の端子部及び本体の抵抗を示す模式的回路図も重ねて記載されている。ここで、図1A、1Cには、抵抗素子102の本体の抵抗をr2、端子部における抵抗素子102の長手方向の寄生抵抗をrl、幅方向の寄生抵抗をrw、深さ方向の寄生抵抗をrdとして示している。
【0019】
図1Dは、実施の形態1に係る抵抗素子102の端子部寄生抵抗Rt0の等価回路である。端子部寄生抵抗Rt0の一端は、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctに接続され、他端は抵抗素子102の本体の抵抗r2と接続されている。また、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctの他端は、配線101の本体の抵抗r1に接続されている。端子部寄生抵抗Rt0は、端子部のタップTAPの抵抗や抵抗素子102の寄生抵抗rl、rw、rdなどから構成される。
【0020】
実施の形態1に係る回路シミュレーション方法では、上述の通り複雑な端子部の寄生抵抗を、物理的考察に基づくモデル式により単一の端子部寄生抵抗Rt0として表現する。これにより高精度かつ高速な回路シミュレーションを実現することができる。当然のことながら、回路シミュレーション装置(ハードウェア)上で、回路シミュレーションソフト(ソフトウェア)を実行することにより、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法は実施される。
【0021】
次に、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法に用いるモデル式について説明する。実施の形態1に係る端子部寄生抵抗Rt0のモデル式は次式(1)で与えられる。
【0022】
ここで、式(1)に至る物理的考察を説明するため、比較例として単純に端子部寄生抵抗Rt0が開口部の面積(L'×W')に反比例するとみなすモデル式を示す。抵抗素子102を構成するNウェルの比抵抗ρ、素子分離層STIの厚さTとすると、比較例のモデル式は次式(2)で与えられる。式(2)から分かるように、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlを考慮されていない。また、比抵抗ρは例えばNウェルの不純物濃度から求めることができる。
【0023】
式(1)におけるW'0、L'0、ρ0はフィッティングパラメータである。すなわち、実測データに対し、モデル式(1)を例えば最小二乗近似することなどに得られるパラメータである。まず、フィッティングパラメータW'0を導入した理由について説明する。抵抗素子102の横断面である図1Cに示すように、開口部即ちタップTAP直下だけでなく、抵抗素子102の側壁近傍にも電流は流れる。そのため、実際の端子部寄生抵抗Rt0はタップTAPの幅W'に単純に反比例すると考えるよりも小さくなる。従って、比較例のタップTAPの幅W'が見かけ上拡大することを示すフィッティングパラメータW'0を導入することで、式(2)よりも端子部寄生抵抗Rt0を高精度に表現できる。図2は、タップTAPの長さL'を一定に固定した場合のタップTAPの幅W'に対する端子部寄生抵抗Rt0の変化の模式的グラフである。なお、本実施の形態1では、タップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fは固定値である。点線は比較例の式(2)を示しており、タップTAPの幅W'に対し端子部寄生抵抗Rt0は反比例する。他方、実線は本実施の形態に係るモデル式(1)の変化を示している。距離Fに比べタップTAPの幅W'が相対的に小さい程、フィッティングパラメータW'0を導入した効果が顕著になる。
【0024】
次に、フィッティングパラメータL'0、ρ0を導入した理由について説明する。図1Aに示すように、タップTAP下の深さ方向の抵抗素子102の寄生抵抗rdについては、抵抗素子102の本体から遠くなるほど、直列に接続される長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlが多くなる。そのため、タップTAPの長さL'がある程度大きくなると、抵抗素子102の本体から遠い領域は端子部寄生抵抗Rt0の低下に寄与できなくなる。この場合、比較例の式(2)のように端子部寄生抵抗Rt0がタップTAPの長さL'に反比例すると考えると、低く見積もり過ぎることになる。そこで、比較例の式(2)でT/L'としていた部分を、本実施の形態に係るモデル式(1)では(L'+L'0)/L'と表現する。以下に場合分けをして説明する。
【0025】
1)タップTAPの長さL'が素子分離層STIの厚さTに対して十分小さい(L'<<T)場合
この場合、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlは深さ方向の抵抗素子102の寄生抵抗rdに比べ、相対的に無視できる。そのため、端子部寄生抵抗Rt0はタップTAPの長さL'に反比例する。本実施の形態に係るモデル式(1)において、フィッティングパラメータL'0を素子分離層STIの厚さTと同程度の数値に設定すれば、L'<<L'0となるため、(L'+L'0)/L'≒L'0/L'となる。よって、この場合、端子部寄生抵抗Rt0がL'に反比例するとみなせる。
【0026】
2)タップTAPの長さL'が素子分離層STIの厚さTに対して十分小さくはない場合
この場合、タップTAPの長さL'がある程度大きくなると、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlの影響により、端子部寄生抵抗Rt0はほとんど減少しなくなる。即ち、端子部寄生抵抗Rt0は一定値に近づくはずである。
【0027】
図3は、タップTAPの幅W'を一定に固定した場合のタップTAPの長さL'に対する端子部寄生抵抗Rt0の変化の模式的グラフである。点線は比較例の式(2)を示しており、タップTAPの長さL'に対し端子部寄生抵抗Rt0は反比例する。即ち、比較例の式(2)では、タップTAPの長さL'→∞に伴い、端子部寄生抵抗Rt0→0となってしまい、実際の端子部寄生抵抗Rt0の変化に合致しない。
【0028】
これに対し、図3の実線は本実施の形態に係るモデル式(1)の変化を示している。本実施の形態に係るモデル式(1)では、タップTAPの長さL'→∞に伴い、(L'+L'0)/L'→1となり一定値に収束し、実際の端子部寄生抵抗Rt0の変化に合致する。ここで、端子部寄生抵抗Rt0の収束値を調整するためには、フィッティングパラメータρ0を適切な値に設定すればよい。従って、フィッティングパラメータρ0は必ずしも物理的な比抵抗ではない。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル式では、物理的考察に基づきフィッティングパラメータW'0、L'0、ρ0を導入している。そのため、高精度に端子部寄生抵抗Rt0を見積もることができる。また、端子部寄生抵抗ネットを単一の端子部寄生抵抗Rt0として表現できるため、ノード数が削減される。これにより回路シミュレーション時間が短縮される。さらに、本実施の形態に係るモデル式(1)では、最終的に実測値と対比すること(フィッティング)によりフィッティングパラメータW'0、L'0、ρ0の値を決定する。そのため、端子部の抵抗素子102(ウェル)とタップTAPとを区別する必要がない。
【0030】
次に、図4を用いて、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果について説明する。図4は、実施の形態1の実施例と比較例によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。横軸はタップTAPの長さL'(μm)の対数、縦軸は端子部寄生抵抗Rt0(Ω)の対数を示している。
【0031】
また、図4において、◆は端子部寄生抵抗Rt0の実測、実線は実施の形態1に係る回路シミュレーション方法による実施例、点線は比較例を示している。上述の通り、比較例は式(2)で与えられ、端子部寄生抵抗Rt0がタップTAPの長さL'に反比例するとみなすものである。
【0032】
図4に示すように、本実施の形態に係るモデル式(1)を適用した実施例は実測値と極めて精度良く一致している。他方、比較例はタップTAPの長さL'の増加とともに実測値との乖離が大きくなる。即ち、端子部寄生抵抗Rt0の見積もり誤差が大きくなる。これは、比較例では、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlを考慮していないからである。即ち、タップTAPの長さL'が増加すると、タップTAP下の抵抗素子102のうち、抵抗素子102の本体から遠い部分は端子部寄生抵抗Rt0の低減に寄与しないためである。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る回路シミュレーション方法について説明する。図1Bに示されたタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fは、通常固定値である。上述の実施の形態1に係るモデル式(1)ではタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fを固定値としているが、変数とすることもできる。
【0034】
上述の通り、モデル式(1)のフィッティングパラメータW'0についての物理的考察から、フィッティングパラメータW'0は距離Fの関数であると容易に考えることができる。ここで、本実施の形態2に係るモデル式(1)において、一例としてフィッティングパラメータW'0を距離Fの2次関数即ちW'0=a0+a1×F+a2×F2とすると、本実施の形態2に係るモデル式次式(3)を得る。ここで、a0、a1、a2はフィッティングパラメータである。
【0035】
次に、図5を用いて、実施の形態2に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果について説明する。図5は、実施の形態2の実施例と比較例によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。横軸は距離F(μm)、縦軸は端子部寄生抵抗Rt0(Ω)を示している。
【0036】
また、図5において、◆は端子部寄生抵抗Rt0の実測、実線は実施の形態2に係る回路シミュレーション方法による実施例、点線は比較例を示している。上述の通り、比較例は、式(2)で与えられ、距離Fの関数でないため、距離Fによらず一定値となる。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態に係るモデル式(3)を適用した実施例は実測値と極めて精度良く一致している。なお、フィッティングパラメータW'0がタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fの2次関数により表現される物理的意味は解明し切れていないが、このように実測値と精度良く一致する。
【0038】
(実施の形態3)
次に、図6A〜6Cを参照して本発明の第3の実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗について説明する。図6Aは、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための断面図である。図6Bは、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。また、図6Aは、図6BにおけるVIa−VIa断面図である。
【0039】
ここで、実施の形態1では、モデル化対象の端子部が抵抗素子102の端部に設けられていたのに対し、実施の形態3では、抵抗素子102の中間部に設けられている。即ち、抵抗素子102が抵抗r2bと抵抗r2cとからなるラダー抵抗を構成し、モデル化対象の端子部が抵抗r2bと抵抗r2cとを互いに接続する節点に設けられている。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。実施の形態3においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
図6Cは、実施の形態3に係る抵抗素子102の端子部の等価回路である。図6Cに示すように、実施の形態3に係る抵抗素子102の端子部の等価回路は、端子部と複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctとを接続する節点A、端子部と抵抗素子102の本体の抵抗r2bとを接続する節点B、端子部と抵抗素子102の本体の抵抗r2cとを接続する節点Cとを有する。そのため、端子部寄生抵抗は単一の抵抗としては表現できず、2つの抵抗Ra、Rbにより表現される。また、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctの他端は、配線101の本体の抵抗r1に接続されている。
【0041】
次に、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法に用いるモデル式の導出方法について説明する。節点A、節点Bのみに着目した場合の節点A、B間の抵抗をRABなどと表現すると、図6Cの等価回路における抵抗Ra、Rbは次式(4)により表現される。
【0042】
つまり、抵抗RAB、RAC、RBCを求めればよい。抵抗RAB、RACについては、当然に実施の形態1に係るモデル式(1)が成立するため、次式(5)が得られる。
【0043】
次に、抵抗RBCを算出する。ここで、節点B、C間の抵抗RBCについては抵抗素子102の本体の抵抗と同様であると考える。即ち、抵抗素子102の本体のシート抵抗ρs、抵抗素子102の両側側壁近傍に形成される空乏層による抵抗素子102の幅Wの細り量dWとすると、抵抗RBCは次式(6)により表現される。ここで、シート抵抗ρs、細り量dWは実測することができる。
【0044】
よって、式(4)、(5)、(6)から、抵抗Ra、Rbの値は、次のモデル式(7)により表現される。
【符号の説明】
【0045】
101 配線
102 抵抗素子
CT コンタクト
TAP タップ
STI 素子分離層
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路シミュレーション方法に関し、特にウェル抵抗素子を備えた回路に対する回路シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化によりロジック回路の面積は縮小されるのに対し、アナログ回路は必ずしも縮小されない。そのため、アナログ回路の面積縮小は、コスト削減のための大きな課題になりつつある。アナログ回路の面積縮小を阻害する原因として、抵抗素子の面積縮小が難しい点を挙げることができる。ここで、ウェル抵抗素子の端子部(開口部)は、タップ及びタップ上に規則的に配置された複数のコンタクトを介して配線と接続されている。ここで、抵抗素子の端子部の抵抗(以下、端子部寄生抵抗という)は、正確に見積もることが難しかった。
【0003】
端子部寄生抵抗の見積り誤差があると、その誤差を見込んでマージンを大きくするか、見積り誤差が無視できるようなレイアウト設計を行う必要がある。いずれの場合も回路面積の増大につながる。特に近年の微細化に伴い、端子部寄生抵抗の主要素の1つであるコンタクトの抵抗が加速度的に大きくなっている。そのため、端子部寄生抵抗が抵抗素子本体の抵抗に対して相対的に大きくなり、端子部寄生抵抗の見積り誤差の問題がより顕著になってきた。
【0004】
一般に、端子部寄生抵抗を見積もるには、レイアウト設計後にLPE(Layout Parameter Extraction)ツールを用いて複雑な寄生抵抗ネットを抽出する必要があった。さらに、回路シミュレーション時間を短縮するためには、逐次的な手計算や回路縮退ツールにより回路縮退を行う必要がある。しかしながら、これらの手法は手間がかかったり、LPEツールに起因した見積もり誤差が含まれるという問題があった。
【0005】
そもそも、LPEツールを用いた検証後に、回路設計を見直すとなると、極めて設計効率が悪い。そのため、レイアウト設計前の回路設計段階において、端子部寄生抵抗を見積もる必要がある。この場合、LPEツールを用いることはできないため、従来は簡易的に端子部寄生抵抗を見積もる手法が用いられてきた。具体的には、端子部寄生抵抗が開口部の面積に反比例するとみなすものである。同様の考え方として、特許文献1では、バイポーラトランジスタのエミッタの寄生抵抗が拡散層の開口部の面積に反比例するとしてモデル化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−49897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、実際には、ウェル抵抗素子の開口部を拡大しても、抵抗素子の長手方向の寄生抵抗により、開口部下における抵抗素子本体から遠い領域は端子部寄生抵抗の低減に寄与できず、見積もり誤差が生じる。その結果、レイアウト設計後の回路シミュレーション結果が設計値と乖離し、結局回路設計及びレイアウト設計の見直しが必要となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回路シミュレーション方法は、
端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子と、
前記端子部上に形成されたコンタクトと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法であって、
前記コンタクトと前記抵抗本体部との間の前記端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化するものである。
(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、
L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、
W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅、である。)
【0009】
本発明では、物理的考察に基づくフィッティングパラメータρ0、L'0、W'0を導入することにより、ウェル抵抗素子の端子部寄生抵抗Rt0を正確に見積もることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェル抵抗素子の端子部寄生抵抗を正確に見積もることができる回路シミュレーション方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための縦断面図である。
【図1B】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。
【図1C】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための横断面図である。
【図1D】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部の等価回路である。
【図2】端子部寄生抵抗Rt0のタップTAPの幅W'依存性を示す模式的に示すグラフである。
【図3】端子部寄生抵抗Rt0のタップTAPの長さL'依存性を示す模式的に示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る回路シミュレーション方法と比較例に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。
【図5】実施の形態2に係る回路シミュレーション方法と比較例に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。
【図6A】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための断面図である。
【図6B】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。
【図6C】実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部の等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
(実施の形態1)
図1A〜1Dを参照して本発明の第1の実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象となる半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗について説明する。図1Aは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための半導体抵抗素子長手方向の断面図(縦断面図)である。また、図1Cは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための半導体抵抗素子幅方向の断面図(横断面図)である。
【0014】
図1A、1Cに示すように、抵抗素子102上には素子分離層STIが形成されている。この素子分離層STIは、抵抗素子102上の略全面に形成されているが、図1A、1Cに示す抵抗素子102の端子部では、素子分離層STIが選択的に形成さておらず、開口部が形成されている。この開口部では、抵抗素子102上にタップTAPが形成されている。このタップTAP上には、複数のコンタクトCTが形成されている。そして、複数のコンタクトCT上に配線101が形成されている。即ち、抵抗素子102は、タップTAP及びコンタクトCTを介して配線101に接続されている。
【0015】
図1Bは、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。図1Bに示すように、幅Wの抵抗素子102上に、幅W'、長さL'のタップTAPが形成さている。ここで、タップTAPと抵抗素子102の側壁との距離はFである。従って、W=2×F+W'である。なお、抵抗素子102の端子部を除く本体の長さはLである。タップTAP上の略全面には、複数のコンタクトCTがマトリクス状に配置されている。以下、本明細書において単に長手方向、幅方向という場合、それぞれ抵抗素子102の長手方向、幅方向を意味するものとする。
【0016】
なお、図1Bでは、配線101を省略している。また、図1Aは図1BにおけるIa−Ia断面図、図1Cは図1BにおけるIc−Ic断面図である。また、第1の実施の形態に係る抵抗素子102は両端に端子部を有し、図示されていないが、他方の端子部も図1A〜1Cと同様の構成を有している。
【0017】
ここで、配線101は、例えばCu(銅)やAl(アルミニウム)などの良導体からなる。また、抵抗素子102は、Nウェル抵抗素子又はPウェル抵抗素子である。TAPはウェルよりも高濃度の不純物拡散層である。また、図示しないが、抵抗素子102がNウェル抵抗素子の場合、抵抗素子102の周囲はP型基板又Pウェルであり、抵抗素子102がPウェル抵抗素子の場合、抵抗素子102の周囲はN型基板又Nウェルである。本実施の形態では、抵抗素子102はNウェル抵抗素子であるとする。コンタクトCTは、例えばW(タングステン)からなる。
【0018】
図1A、1Cには、抵抗素子102の端子部及び本体の抵抗を示す模式的回路図も重ねて記載されている。ここで、図1A、1Cには、抵抗素子102の本体の抵抗をr2、端子部における抵抗素子102の長手方向の寄生抵抗をrl、幅方向の寄生抵抗をrw、深さ方向の寄生抵抗をrdとして示している。
【0019】
図1Dは、実施の形態1に係る抵抗素子102の端子部寄生抵抗Rt0の等価回路である。端子部寄生抵抗Rt0の一端は、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctに接続され、他端は抵抗素子102の本体の抵抗r2と接続されている。また、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctの他端は、配線101の本体の抵抗r1に接続されている。端子部寄生抵抗Rt0は、端子部のタップTAPの抵抗や抵抗素子102の寄生抵抗rl、rw、rdなどから構成される。
【0020】
実施の形態1に係る回路シミュレーション方法では、上述の通り複雑な端子部の寄生抵抗を、物理的考察に基づくモデル式により単一の端子部寄生抵抗Rt0として表現する。これにより高精度かつ高速な回路シミュレーションを実現することができる。当然のことながら、回路シミュレーション装置(ハードウェア)上で、回路シミュレーションソフト(ソフトウェア)を実行することにより、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法は実施される。
【0021】
次に、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法に用いるモデル式について説明する。実施の形態1に係る端子部寄生抵抗Rt0のモデル式は次式(1)で与えられる。
【0022】
ここで、式(1)に至る物理的考察を説明するため、比較例として単純に端子部寄生抵抗Rt0が開口部の面積(L'×W')に反比例するとみなすモデル式を示す。抵抗素子102を構成するNウェルの比抵抗ρ、素子分離層STIの厚さTとすると、比較例のモデル式は次式(2)で与えられる。式(2)から分かるように、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlを考慮されていない。また、比抵抗ρは例えばNウェルの不純物濃度から求めることができる。
【0023】
式(1)におけるW'0、L'0、ρ0はフィッティングパラメータである。すなわち、実測データに対し、モデル式(1)を例えば最小二乗近似することなどに得られるパラメータである。まず、フィッティングパラメータW'0を導入した理由について説明する。抵抗素子102の横断面である図1Cに示すように、開口部即ちタップTAP直下だけでなく、抵抗素子102の側壁近傍にも電流は流れる。そのため、実際の端子部寄生抵抗Rt0はタップTAPの幅W'に単純に反比例すると考えるよりも小さくなる。従って、比較例のタップTAPの幅W'が見かけ上拡大することを示すフィッティングパラメータW'0を導入することで、式(2)よりも端子部寄生抵抗Rt0を高精度に表現できる。図2は、タップTAPの長さL'を一定に固定した場合のタップTAPの幅W'に対する端子部寄生抵抗Rt0の変化の模式的グラフである。なお、本実施の形態1では、タップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fは固定値である。点線は比較例の式(2)を示しており、タップTAPの幅W'に対し端子部寄生抵抗Rt0は反比例する。他方、実線は本実施の形態に係るモデル式(1)の変化を示している。距離Fに比べタップTAPの幅W'が相対的に小さい程、フィッティングパラメータW'0を導入した効果が顕著になる。
【0024】
次に、フィッティングパラメータL'0、ρ0を導入した理由について説明する。図1Aに示すように、タップTAP下の深さ方向の抵抗素子102の寄生抵抗rdについては、抵抗素子102の本体から遠くなるほど、直列に接続される長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlが多くなる。そのため、タップTAPの長さL'がある程度大きくなると、抵抗素子102の本体から遠い領域は端子部寄生抵抗Rt0の低下に寄与できなくなる。この場合、比較例の式(2)のように端子部寄生抵抗Rt0がタップTAPの長さL'に反比例すると考えると、低く見積もり過ぎることになる。そこで、比較例の式(2)でT/L'としていた部分を、本実施の形態に係るモデル式(1)では(L'+L'0)/L'と表現する。以下に場合分けをして説明する。
【0025】
1)タップTAPの長さL'が素子分離層STIの厚さTに対して十分小さい(L'<<T)場合
この場合、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlは深さ方向の抵抗素子102の寄生抵抗rdに比べ、相対的に無視できる。そのため、端子部寄生抵抗Rt0はタップTAPの長さL'に反比例する。本実施の形態に係るモデル式(1)において、フィッティングパラメータL'0を素子分離層STIの厚さTと同程度の数値に設定すれば、L'<<L'0となるため、(L'+L'0)/L'≒L'0/L'となる。よって、この場合、端子部寄生抵抗Rt0がL'に反比例するとみなせる。
【0026】
2)タップTAPの長さL'が素子分離層STIの厚さTに対して十分小さくはない場合
この場合、タップTAPの長さL'がある程度大きくなると、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlの影響により、端子部寄生抵抗Rt0はほとんど減少しなくなる。即ち、端子部寄生抵抗Rt0は一定値に近づくはずである。
【0027】
図3は、タップTAPの幅W'を一定に固定した場合のタップTAPの長さL'に対する端子部寄生抵抗Rt0の変化の模式的グラフである。点線は比較例の式(2)を示しており、タップTAPの長さL'に対し端子部寄生抵抗Rt0は反比例する。即ち、比較例の式(2)では、タップTAPの長さL'→∞に伴い、端子部寄生抵抗Rt0→0となってしまい、実際の端子部寄生抵抗Rt0の変化に合致しない。
【0028】
これに対し、図3の実線は本実施の形態に係るモデル式(1)の変化を示している。本実施の形態に係るモデル式(1)では、タップTAPの長さL'→∞に伴い、(L'+L'0)/L'→1となり一定値に収束し、実際の端子部寄生抵抗Rt0の変化に合致する。ここで、端子部寄生抵抗Rt0の収束値を調整するためには、フィッティングパラメータρ0を適切な値に設定すればよい。従って、フィッティングパラメータρ0は必ずしも物理的な比抵抗ではない。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル式では、物理的考察に基づきフィッティングパラメータW'0、L'0、ρ0を導入している。そのため、高精度に端子部寄生抵抗Rt0を見積もることができる。また、端子部寄生抵抗ネットを単一の端子部寄生抵抗Rt0として表現できるため、ノード数が削減される。これにより回路シミュレーション時間が短縮される。さらに、本実施の形態に係るモデル式(1)では、最終的に実測値と対比すること(フィッティング)によりフィッティングパラメータW'0、L'0、ρ0の値を決定する。そのため、端子部の抵抗素子102(ウェル)とタップTAPとを区別する必要がない。
【0030】
次に、図4を用いて、実施の形態1に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果について説明する。図4は、実施の形態1の実施例と比較例によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。横軸はタップTAPの長さL'(μm)の対数、縦軸は端子部寄生抵抗Rt0(Ω)の対数を示している。
【0031】
また、図4において、◆は端子部寄生抵抗Rt0の実測、実線は実施の形態1に係る回路シミュレーション方法による実施例、点線は比較例を示している。上述の通り、比較例は式(2)で与えられ、端子部寄生抵抗Rt0がタップTAPの長さL'に反比例するとみなすものである。
【0032】
図4に示すように、本実施の形態に係るモデル式(1)を適用した実施例は実測値と極めて精度良く一致している。他方、比較例はタップTAPの長さL'の増加とともに実測値との乖離が大きくなる。即ち、端子部寄生抵抗Rt0の見積もり誤差が大きくなる。これは、比較例では、長手方向の抵抗素子102の寄生抵抗rlを考慮していないからである。即ち、タップTAPの長さL'が増加すると、タップTAP下の抵抗素子102のうち、抵抗素子102の本体から遠い部分は端子部寄生抵抗Rt0の低減に寄与しないためである。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る回路シミュレーション方法について説明する。図1Bに示されたタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fは、通常固定値である。上述の実施の形態1に係るモデル式(1)ではタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fを固定値としているが、変数とすることもできる。
【0034】
上述の通り、モデル式(1)のフィッティングパラメータW'0についての物理的考察から、フィッティングパラメータW'0は距離Fの関数であると容易に考えることができる。ここで、本実施の形態2に係るモデル式(1)において、一例としてフィッティングパラメータW'0を距離Fの2次関数即ちW'0=a0+a1×F+a2×F2とすると、本実施の形態2に係るモデル式次式(3)を得る。ここで、a0、a1、a2はフィッティングパラメータである。
【0035】
次に、図5を用いて、実施の形態2に係る回路シミュレーション方法によるシミュレーション結果について説明する。図5は、実施の形態2の実施例と比較例によるシミュレーション結果及び実測結果を示すグラフである。横軸は距離F(μm)、縦軸は端子部寄生抵抗Rt0(Ω)を示している。
【0036】
また、図5において、◆は端子部寄生抵抗Rt0の実測、実線は実施の形態2に係る回路シミュレーション方法による実施例、点線は比較例を示している。上述の通り、比較例は、式(2)で与えられ、距離Fの関数でないため、距離Fによらず一定値となる。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態に係るモデル式(3)を適用した実施例は実測値と極めて精度良く一致している。なお、フィッティングパラメータW'0がタップTAPと抵抗素子102の側壁との距離Fの2次関数により表現される物理的意味は解明し切れていないが、このように実測値と精度良く一致する。
【0038】
(実施の形態3)
次に、図6A〜6Cを参照して本発明の第3の実施の形態に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗について説明する。図6Aは、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための断面図である。図6Bは、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法のモデル化対象である半導体抵抗素子の端子部寄生抵抗を説明するための平面図である。また、図6Aは、図6BにおけるVIa−VIa断面図である。
【0039】
ここで、実施の形態1では、モデル化対象の端子部が抵抗素子102の端部に設けられていたのに対し、実施の形態3では、抵抗素子102の中間部に設けられている。即ち、抵抗素子102が抵抗r2bと抵抗r2cとからなるラダー抵抗を構成し、モデル化対象の端子部が抵抗r2bと抵抗r2cとを互いに接続する節点に設けられている。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。実施の形態3においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
図6Cは、実施の形態3に係る抵抗素子102の端子部の等価回路である。図6Cに示すように、実施の形態3に係る抵抗素子102の端子部の等価回路は、端子部と複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctとを接続する節点A、端子部と抵抗素子102の本体の抵抗r2bとを接続する節点B、端子部と抵抗素子102の本体の抵抗r2cとを接続する節点Cとを有する。そのため、端子部寄生抵抗は単一の抵抗としては表現できず、2つの抵抗Ra、Rbにより表現される。また、複数のコンタクトCTの全体の抵抗rctの他端は、配線101の本体の抵抗r1に接続されている。
【0041】
次に、実施の形態3に係る回路シミュレーション方法に用いるモデル式の導出方法について説明する。節点A、節点Bのみに着目した場合の節点A、B間の抵抗をRABなどと表現すると、図6Cの等価回路における抵抗Ra、Rbは次式(4)により表現される。
【0042】
つまり、抵抗RAB、RAC、RBCを求めればよい。抵抗RAB、RACについては、当然に実施の形態1に係るモデル式(1)が成立するため、次式(5)が得られる。
【0043】
次に、抵抗RBCを算出する。ここで、節点B、C間の抵抗RBCについては抵抗素子102の本体の抵抗と同様であると考える。即ち、抵抗素子102の本体のシート抵抗ρs、抵抗素子102の両側側壁近傍に形成される空乏層による抵抗素子102の幅Wの細り量dWとすると、抵抗RBCは次式(6)により表現される。ここで、シート抵抗ρs、細り量dWは実測することができる。
【0044】
よって、式(4)、(5)、(6)から、抵抗Ra、Rbの値は、次のモデル式(7)により表現される。
【符号の説明】
【0045】
101 配線
102 抵抗素子
CT コンタクト
TAP タップ
STI 素子分離層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子と、
前記端子部上に形成されたコンタクトと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法であって、
前記コンタクトと前記抵抗本体部との間の前記端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化する半導体回路のシミュレーション方法。
(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、
L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、
W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅、である。)
【請求項2】
前記端子部は、前記抵抗本体部を構成するウェルと当該ウェルの表面に形成されたタップとを含み、
前記モデル化において、前記ウェルと前記タップとを区別しないことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記端子部が、前記ウェル抵抗素子の端部に形成されており、
前記モデル化において、前記端子部の寄生抵抗Rt0を、
前記コンタクトの抵抗と、前記本体部の抵抗との間に直列に接続された単一の抵抗からなる等価抵抗としてモデル化することを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション方法。
【請求項4】
前記端子部が、前記ウェル抵抗素子の中間部に形成されており、
前記モデル化において、前記端子部の寄生抵抗Rt0を、
一端がコンタクトの抵抗に接続された第1の部分抵抗Raと、
当該第1の部分抵抗Raの他端に一端が接続され、他端はそれぞれ前記端子部の両側に形成された前記本体部の抵抗に接続された2つの第2の部分抵抗Rbとからなる等価抵抗としてモデル化することを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
前記第1の部分抵抗Raと第2の部分抵抗Rbとが次式によりモデル化されることを特徴とする請求項4に記載のシミュレーション方法。
(ただし、ρs:前記ウェル抵抗素子のシート抵抗値、
dW:前記ウェル抵抗素子の幅の細り量、である。)
【請求項1】
端子部と抵抗本体部とを有するウェル抵抗素子と、
前記端子部上に形成されたコンタクトと、を備えた半導体回路のシミュレーション方法であって、
前記コンタクトと前記抵抗本体部との間の前記端子部の寄生抵抗Rt0を、次式によりモデル化する半導体回路のシミュレーション方法。
(ただし、ρ0、L'0、W'0:フィッティングパラメータ、
L':前記ウェル抵抗素子の長手方向の前記端子部の長さ、
W':前記ウェル抵抗素子の幅方向の前記端子部の幅、である。)
【請求項2】
前記端子部は、前記抵抗本体部を構成するウェルと当該ウェルの表面に形成されたタップとを含み、
前記モデル化において、前記ウェルと前記タップとを区別しないことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記端子部が、前記ウェル抵抗素子の端部に形成されており、
前記モデル化において、前記端子部の寄生抵抗Rt0を、
前記コンタクトの抵抗と、前記本体部の抵抗との間に直列に接続された単一の抵抗からなる等価抵抗としてモデル化することを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション方法。
【請求項4】
前記端子部が、前記ウェル抵抗素子の中間部に形成されており、
前記モデル化において、前記端子部の寄生抵抗Rt0を、
一端がコンタクトの抵抗に接続された第1の部分抵抗Raと、
当該第1の部分抵抗Raの他端に一端が接続され、他端はそれぞれ前記端子部の両側に形成された前記本体部の抵抗に接続された2つの第2の部分抵抗Rbとからなる等価抵抗としてモデル化することを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
前記第1の部分抵抗Raと第2の部分抵抗Rbとが次式によりモデル化されることを特徴とする請求項4に記載のシミュレーション方法。
(ただし、ρs:前記ウェル抵抗素子のシート抵抗値、
dW:前記ウェル抵抗素子の幅の細り量、である。)
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公開番号】特開2011−65465(P2011−65465A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215974(P2009−215974)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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