回路モジュールおよびそれを備えた電子機器
【課題】基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことが可能な回路モジュールを提供する。
【解決手段】この回路モジュールは、実装面1aを有する多層配線基板1と、多層配線基板1に装着されたシールド部材2とを備えている。そして、シールド部材2は、枠部21aを有し、その枠部21aが実装面1aに半田接合されたシールドフレーム21と、天面部22aおよび側部22bを有し、その側部22bがシールドフレーム21の枠部21aに取り付けられたシールドカバー22とを含んでいる。また、シールドカバー22の天面部22aの所定の隅にL字型のスリット22fが形成されている。
【解決手段】この回路モジュールは、実装面1aを有する多層配線基板1と、多層配線基板1に装着されたシールド部材2とを備えている。そして、シールド部材2は、枠部21aを有し、その枠部21aが実装面1aに半田接合されたシールドフレーム21と、天面部22aおよび側部22bを有し、その側部22bがシールドフレーム21の枠部21aに取り付けられたシールドカバー22とを含んでいる。また、シールドカバー22の天面部22aの所定の隅にL字型のスリット22fが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路モジュールおよびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICなどの電子部品を基板に実装し、その基板に実装した電子部品をシールドケースで覆った回路モジュールが知られている。このような従来の回路モジュールでは、通常、シールドケースは基板に装着されることで保持されている。そして、基板に対するシールドケースの装着は、たとえば、リフロー炉を用いた半田接合によってなされる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3714088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の回路モジュールでは、基板とシールドケースとを半田接合するリフロー工程の際に、シールドケースの全体が加熱されるので、シールドケースに大きく反りが発生する。このため、シールドケースに対する加熱が解除されても、シールドケースに発生した反りが残り、基板とシールドケースとの間でなされる半田接合が接合不良となってしまう。すなわち、従来の回路モジュールでは、基板に対するシールドケースの装着が確実に行われないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことが可能な回路モジュールおよびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による回路モジュールは、実装面を有し、その実装面に電子部品が実装された基板と、電子部品を覆うように基板に装着されたシールド部材とを備えている。そして、シールド部材は、実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた枠部を有し、その枠部が実装面に半田接合されたシールドフレームと、シールドフレームを外側から覆うように配置され、実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた天面部、および、天面部の外周に立設された側部を有し、その側部がシールドフレームの枠部に取り付けられたシールドカバーとを含んでいる。また、実装面と対向する領域側からの平面視において、シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅に、その所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されている。
【0007】
第1の局面による回路モジュールでは、上記のようなシールド部材(シールドフレームとシールドカバーとからなる部材)を用いることによって、基板の実装面にシールドフレームの枠部を半田接合するとともに、そのシールドフレームを外側から覆うようにシールドカバーを配置し、シールドフレームの枠部にシールドカバーの側部を取り付けることにより、基板に対してシールド部材が装着された状態にすることができる。
【0008】
この場合、シールドフレームは大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であるので、回路モジュールの製造工程(あるいは、回路モジュールを別基板に半田接合する工程)においてシールドフレームが加熱されたとしても、シールドフレームには殆ど反りが発生しない。もちろん、シールドフレームに対する加熱の解除後(シールドフレームの冷却時)にシールドフレームに反りが発生することも殆どない。
【0009】
また、シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅にはその所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されているので、回路モジュールの製造工程(あるいは、回路モジュールを別基板に半田接合する工程)においてシールドカバーが加熱されたとしても、シールドカバーの天面部と側部との間の温度差はそれほど大きくならず、シールドカバーに発生する反りが小さく抑えられる。このため、シールドカバーに対する加熱の解除後(シールドカバーの冷却時)に、シールドカバーに反りが発生したままになってしまうのを抑制することができる。したがって、シールドカバーの側部はシールドフレームの枠部に取り付けられているが、そのシールドフレームの枠部が基板の実装面から離れる方向に強く引っ張られることはない。
【0010】
さらに、シールドカバーの天面部の所定の隅にその所定の隅をなす2辺に沿ってL字型のスリットを形成すると、シールドカバーの天面部と側部とが部分的に分断される。これにより、シールドカバーの天面部に反りが発生したとしても、そのシールドカバーの天面部に発生した反りに追従してシールドカバーの側部(シールドカバーの側部が取り付けられているシールドフレームの枠部)が浮き上がってしまうのも抑制される。
【0011】
これらの結果、基板の実装面とシールドフレームの枠部との間でなされている半田接合が接合不良となるのを回避することができる。すなわち、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことが可能となる。
【0012】
それに加えて、第1の局面による回路モジュールでは、上記のようなシールド部材(シールドフレームとシールドカバーとからなる部材)を用いることによって、実際に電子部品を覆うシールドカバーを基板に半田接合する必要がなくなる。すなわち、基板にシールド部材を装着した後であっても、シールドカバーについては容易に取り外せる。これにより、たとえば、基板にシールド部材を装着した後、電子部品の欠品や短絡などのマウント不良を検査しなければならない場合に、マウント不良の検査を簡単に行うことができる。なお、シールドフレームは骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行える。したがって、シールドフレームを取り外す必要はない。
【0013】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドカバーの天面部の4隅の全てにL字型のスリットが形成されていることが好ましい。このように構成すれば、シールドカバーに発生する反りをさらに小さくすることができる。
【0014】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられており、シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部にそれぞれ設けられた嵌合部が互いに嵌合していることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームに対するシールドカバーの取り付けが確実になされた状態になる。
【0015】
シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられている構成において、シールドフレームの枠部に設けられた嵌合部が嵌合突起であるとともに、シールドカバーの側部に設けられた嵌合部が嵌合穴であることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームの枠部の嵌合突起をシールドカバーの側部の嵌合穴に挿入するだけでよくなるので、シールドフレームに対するシールドカバーの取り付け作業が容易になる。もちろん、シールドフレームからのシールドカバーの取り外し作業についても容易になる。
【0016】
第1の局面による回路モジュールにおいて、基板が多層配線基板であり、シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分を横切るように引き回された所定の配線層が存在する場合には、実装面に設けられた最上層の配線層ではなくて下層の配線層が所定の配線層とされることが好ましい。このように構成すれば、所定の配線層を引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレームの枠部に形成する必要がないので、基板の実装面に対するシールドフレームの枠部の半田接合を全周にわたって行うことができる。このため、基板の実装面とシールドフレームの枠部との間でなされる半田接合が強固になり、より一層、シールドフレームに反りが発生し難くなる。
【0017】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドフレームの枠部で囲まれた領域を跨ぐように架設された架設部をシールドフレームがさらに有していることが好ましい。このように構成すれば、剛性が高く、反りが発生し難いシールドフレームを容易に得ることができる。
【0018】
シールドフレームが架設部をさらに有している構成において、シールドフレームの架設部の所定部分が実装面に向かって延ばされていることによって、そのシールドフレームの架設部の所定部分が実装面の面内に立設されたようになっていることが好ましい。このように構成すれば、シールド壁となる部材を別途準備することなく、基板の実装面の面内にシールド壁(シールドフレームの架設部の所定部分)が立設された状態にすることができる。
【0019】
シールドフレームの架設部の所定部分をシールド壁として利用する構成において、シールドフレームの架設部およびシールドカバーの天面部のそれぞれに嵌合部が設けられており、シールドフレームの架設部およびシールドカバーの天面部にそれぞれ設けられた嵌合部が互いに嵌合していることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームの架設部とシールドカバーの天面部とが密着するので、シールドフレームの架設部の所定部分によるシールドがより効果的に行われる。
【0020】
本発明の第2の局面による電子機器は、上記した第1の局面による回路モジュールを備えている。このように構成すれば、電子機器に備えられた回路モジュールに不具合(基板に対するシールド部材の装着不良)が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、容易に、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による回路モジュールの概略を示した斜視図である。
【図2】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドフレームの詳細構造を説明するための平面図(基板の実装面にシールドフレームの枠部が半田接合された状態を示した平面図)である。
【図3】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドフレームの詳細構造を説明するための側面図(基板の実装面にシールドフレームの枠部が半田接合された状態を示した側面図)である。
【図4】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドカバーの詳細構造を説明するための平面図である。
【図5】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドカバーの詳細構造を説明するための側面図(シールドフレームとシールドカバーとの間の嵌合箇所を示した側面図)である。
【図6】図2の破線で囲まれた領域100の平面図(シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分における配線層の引き回し状態を示した平面図)である。
【図7】図2の200−200線に沿った断面図(シールドフレームの架設部の所定部分がシールド壁として利用されている状態を示した断面図)である。
【図8】図1に示した回路モジュールを備えた電子機器(地上波デジタルチューナ)の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するための平面図(比較例1のシールドカバーの平面図)である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するための平面図(比較例2のシールドカバーの平面図)である。
【図11】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するためのグラフ(リフロー工程時の温度と時間との関係を示したグラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による回路モジュール10の構成について説明する。
【0024】
本実施形態の回路モジュール10は、図1に示すように、種々の電子機器に内蔵される小型のものであって、多層配線基板1と、シールド部材2とを備えている。多層配線基板1は、本発明の「基板」の一例であり、たとえば、ガラスエポキシ基板などの有機基板からなっている。また、シールド部材2は、たとえば、洋白板(銅と亜鉛とニッケルとを含む合金板)からなっている。
【0025】
多層配線基板1は、配線層が設けられた実装面1aを有し、実装面1aと対向する領域側から平面的に見た場合(以下、単に平面視と言う)の外形形状が略四角形状とされている。また、多層配線基板1の実装面1aには複数個の電子部品3が実装されており、外部機器から電子部品3への電気信号の送信(あるいは、電子部品3から外部機器への電気信号の送信)が配線層を介して行われるようになっている。なお、多層配線基板1の実装面1aに実装される電子部品3としては、IC、メモリ、トランジスタおよび抵抗などであり、個数や種類は用途に応じて変更される。また、電子部品3の実装方法としては、電子部品3の端子を配線層に半田付けする場合もあるし、電子部品3の端子をスルーホールに挿入して半田付けする場合もある。
【0026】
そして、この多層配線基板1にシールド部材2が装着され、それによって、多層配線基板1の実装面1aに実装された複数個の電子部品3がシールド部材2で覆われている。
【0027】
シールド部材2は、互いに別部材であるシールドフレーム21およびシールドカバー22を含んでいる。そして、シールドフレーム21が多層配線基板1に取り付けられ、そのシールドフレーム21を外側から覆うようにシールドカバー22がシールドフレーム21に取り付けられることによって、多層配線基板1にシールド部材2が装着された状態となっている。なお、図1に示すシールドフレーム21およびシールドカバー22はそれらの概略を表したものであって、シールドフレーム21の詳細な構造は図2および図3に示され、シールドカバー22の詳細な構造は図4および図5に示されている。
【0028】
シールドフレーム21は、図2および図3に示すように、平面視における外形形状が略四角形状(額縁形状)とされた枠部21aと、その枠部21aで囲まれた領域を跨ぐように架設された略十字形状の架設部21bとを有している。すなわち、シールドフレーム21は、大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であると言える。そして、シールドフレーム21は、その枠部21aが多層配線基板1の実装面1aに半田接合されることにより、多層配線基板1に取り付けられた状態となっている。
【0029】
ここで、図6に示すように、多層配線基板1には数多くの配線層Wが引き回されるが、用途によっては、半田接合部分(シールドフレーム21の枠部21aが半田接合される部分)Pを横切るように配線層Wを引き回す場合がある。
【0030】
この場合、半田接合部分Pを横切る配線層Wが最上層の配線層(多層配線基板1の実装面1aに設けられた配線層)W1であれば、配線層Wを引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレーム21の枠部21aに形成しなければならない。したがって、シールドフレーム21の枠部21aに形成される切り欠きの幅の大きさ分だけ、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間の半田による接合箇所が減ってしまう。
【0031】
このため、本実施形態では、最上層の配線層W1と下層の配線層W2とをスルーホールTHを介して接続し、最上層の配線層W1ではなくて下層の配線層W2が半田接合部分Pを横切るようにしている。すなわち、半田接合部分Pに配線層Wが露出されないようにしており、それによって、シールドフレーム21の枠部21aへの切り欠きの形成を不要としている。そして、多層配線基板1の実装面1aに対するシールドフレーム21の枠部21aの半田接合を全周にわたって行うようにしている。
【0032】
図2および図3に戻って、シールドフレーム21の枠部21aには円柱状の嵌合突起21cが形成されており、後述するシールドカバー22の側部22bに形成された嵌合穴22cに嵌合されるようになっている。また、シールドフレーム21の架設部21bにも円柱状の嵌合突起21dが形成されており、後述するシールドカバー22の天面部22aに形成された嵌合穴22dに嵌合されるようになっている。なお、嵌合突起21cおよび21dは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0033】
さらに、シールドフレーム21の架設部21bは、その所定部分21eが多層配線基板1の実装面1aに向かって略垂直に延びるように曲げられている。このため、図7に示すように、多層配線基板1の実装面1aの面内にシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eが壁状に立設されたようになっている。そして、本実施形態では、このシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させている。すなわち、図7に示す電子部品3を電子部品3aおよび3bに分類して説明すると、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eによって、電子部品3aと電子部品3bとの間を仕切っている。
【0034】
図4および図5に移って、シールドカバー22は、平面視における外形形状が略四角形状とされた天面部22aと、その天面部22aの外周に立設された側部22bとを有している。そして、シールドカバー22の側部22bには開口形状が円形状とされた嵌合穴22cが形成されており、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cにシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cが嵌合されている。これによって、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けがなされている。このシールドカバー22の側部22bに形成された嵌合穴22cは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0035】
なお、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けは、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cにシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cが嵌合されることのみによってなされている。このため、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cとシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cとの嵌合を解除すれば、シールドフレーム21からシールドカバー22が取り外される。すなわち、シールドフレーム21に対してシールドカバー22が着脱可能になっていると言える。
【0036】
また、シールドカバー22の天面部22aには、開口形状が円形状とされた嵌合穴22dが形成されている。そして、そのシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dにシールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dが嵌合されることにより、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着している。なお、嵌合穴22dは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0037】
このように、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着していれば、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させる場合(図7参照)、電子部品3aと電子部品3bとの間のシールドが確実になる。
【0038】
また、図4に示すように、シールドカバー22の天面部22aには、開口形状が円形状とされた放熱穴22eが形成されている。これにより、シールドカバー22の天面部22aの放熱穴22eを介して、シールドカバー22の内側の熱が放熱される。
【0039】
さらに、本実施形態では、シールドカバー22の天面部22aに、嵌合穴22dおよび放熱穴22eに加えて、L字型のスリット22fが形成されている。シールドカバー22の天面部22aに対するL字型のスリット22fの形成数は4つとされており、シールドカバー22の天面部22aの平面視における4隅のそれぞれにL字型のスリット22fが1つずつ配置されている。そして、それらシールドカバー22の天面部22aのL字型のスリット22fは、シールドカバー22の天面部22aの平面視における2辺に沿った状態となっている。
【0040】
このようなL字型のスリット22fをシールドカバー22の天面部22aの平面視における4隅にそれぞれ形成し、かつ、シールドカバー22の天面部22aの平面視における2辺に沿った状態にしておくと、シールドカバー22が加熱されたとしても、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとの間の温度差はそれほど大きくはならない。
【0041】
具体的には、図4および図5に示したシールドカバー22と同じ構造のシールドカバーを作製し、そのシールドカバーを265℃のホットプレートで加熱して温度測定を行ったところ、図中の領域A〜Dの各領域における温度は以下の表1のようになった。なお、比較対照するために、図4および図5に示したシールドカバー22からL字型のスリット22fを省略した構造のシールドカバーを作製し、そのシールドカバーについても同様の条件で温度測定を行った。
【0042】
【表1】
表1を参照して、スリット有りのシールドカバーおよびスリット無しのシールドカバーのそれぞれの側部(領域D)の温度は、共に200℃〜225℃となった。一方で、スリット有りのシールドカバーの天面部(領域A、領域Bおよび領域C)の温度は150℃〜225℃となったのに対し、スリット無のシールドカバーの天面部(領域Aおよび領域B)の温度は125℃〜175℃となった。
【0043】
次に、本実施形態の回路モジュール10の製造方法について説明する。
【0044】
まず、多層配線基板1の実装面1aに半田ペーストを塗布し、その半田ペーストを介して、電子部品3およびシールドフレーム21(枠部21a)を多層配線基板1の実装面1aにそれぞれ搭載する。この後、リフロー炉を用いて、半田ペーストを溶融するとともに硬化させる。このようにして、多層配線基板1の実装面1aに電子部品3を半田接合するとともに、多層配線基板1の実装面1aにシールドフレーム21の枠部21aを半田接合する。
【0045】
続いて、自動検査機または目視によって、電子部品3の欠品および短絡などのマウント不良を検査する。このとき、シールドフレーム21が骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行う。
【0046】
その後、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに嵌合させることによって、シールドフレーム21にシールドカバー22を取り付ける。また、同時に、シールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dをシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dに嵌合させる。
【0047】
これにより、本実施形態の回路モジュール10が完成される。
【0048】
そして、この回路モジュール10は、リフロー炉を用いて、種々の電子機器に組み込まれる別基板(ユーザの商品基板など)に半田接合される。
【0049】
なお、本実施形態の回路モジュール10が搭載される電子機器としては、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナなどが挙げられる。この地上波デジタルチューナは、図8に示すように、アンテナ11から送信された信号を受けるフロントエンド回路12、OFDM復調回路13および誤りビット訂正回路14などを含む。そして、地上波デジタルチューナから出力される信号は、画像/音声復号化部15およびRFモジュレータ部16を経て表示部17に伝わるようになっている。
【0050】
また、本実施形態の回路モジュール10が搭載される電子機器としては、パーソナルコンピュータ(タブレット型端末などを含む)や携帯電話(PHSなどを含む)などであってもよいし、もちろん、これら以外の電子機器であってもよい。
【0051】
本実施形態では、上記のようなシールド部材2(シールドフレーム21とシールドカバー22とからなる部材)を用いることによって、多層配線基板1の実装面1aにシールドフレーム21の枠部21aを半田接合するとともに、そのシールドフレーム21を外側から覆うようにシールドカバー22を配置し、シールドフレーム21の枠部21aにシールドカバー22の側部22bを取り付けることにより、多層配線基板1に対してシールド部材2が装着された状態になる。
【0052】
この場合、シールドフレーム21は大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であるので、回路モジュール10の製造工程(あるいは、回路モジュール10を別基板に半田接合する工程)においてシールドフレーム21が加熱されたとしても、シールドフレーム21には殆ど反りが発生しない。もちろん、シールドフレーム21に対する加熱の解除後(シールドフレーム21の冷却時)にシールドフレーム21に反りが発生することも殆どない。
【0053】
また、シールドカバー22の天面部22aの4隅のうちの所定の隅(本実施形態では、4隅の全て)にはその所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリット22fが形成されているので、回路モジュール10の製造工程(あるいは、回路モジュール10を別基板に半田接合する工程)においてシールドカバー22が加熱されたとしても、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとの間の温度差はそれほど大きくならず、シールドカバー22に発生する反りが小さく抑えられる。このため、シールドカバー22に対する加熱の解除後(シールドカバー22の冷却時)に、シールドカバー22に反りが発生したままになってしまうのを抑制することができる。したがって、シールドカバー22の側部22bはシールドフレーム21の枠部21aに取り付けられているが、そのシールドフレーム21の枠部21aが多層配線基板1の実装面1aから離れる方向に強く引っ張られることはない。
【0054】
さらに、シールドカバー22の天面部22aの所定の隅にその所定の隅をなす2辺に沿ってL字型のスリット22fを形成すると、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとが部分的に分断される。これにより、シールドカバー22の天面部22aに反りが発生したとしても、そのシールドカバー22の天面部22aに発生した反りに追従してシールドカバー22の側部22b(シールドカバー22の側部22bが取り付けられているシールドフレーム21の枠部21a)が浮き上がってしまうのも抑制される。
【0055】
これらの結果、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間でなされている半田接合が接合不良となるのを回避することができる。すなわち、多層配線基板1に対するシールド部材2の装着を確実に行うことが可能となる。
【0056】
それに加えて、本実施形態では、上記のようなシールド部材2(シールドフレーム21とシールドカバー22とからなる部材)を用いることによって、実際に電子部品3を覆うシールドカバー22を多層配線基板1に半田接合する必要がなくなる。すなわち、多層配線基板1にシールド部材2を装着した後であっても、シールドカバー22については容易に取り外せる。これにより、たとえば、多層配線基板1にシールド部材2を装着した後、電子部品3の欠品や短絡などのマウント不良を検査しなければならない場合に、マウント不良の検査を簡単に行うことができる。なお、シールドフレーム21は骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行える。したがって、シールドフレーム21を取り外す必要はない。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、シールドフレーム21の枠部21aに嵌合突起21cを形成するとともに、シールドカバー22の側部22bに嵌合穴22cを形成することによって、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに嵌合させることにより、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けが確実になされた状態にすることができる。
【0058】
さらに、このような方法によってシールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けが行われるようにすれば、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに挿入するだけでよくなるので、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付け作業が容易になる。もちろん、シールドフレーム21からのシールドカバー22の取り外し作業についても容易になる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、配線層Wのうちの最上層の配線層(多層配線基板1の実装面1aに設けられた配線層)W1ではなくて下層の配線層W2が半田接合部分(シールドフレーム21の枠部21aが半田接合される部分)Pを横切るようにすることによって、配線層Wを引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレーム21の枠部21aに形成する必要がないので、多層配線基板1の実装面1aに対するシールドフレーム21の枠部21aの半田接合を全周にわたって行うことができる。これにより、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間でなされる半田接合が強固になり、より一層、シールドフレーム21に反りが発生し難くなる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、シールドフレーム21の枠部21aで囲まれた領域を跨ぐように架設部21bを架設することによって、剛性が高く、反りが発生し難いシールドフレーム21を容易に得ることができる。
【0061】
そして、そのシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eを多層配線基板1の実装面1aに向かって延ばすことによって、シールド壁となる部材を別途準備することなく、多層配線基板1の実装面1aの面内にシールド壁(シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21e)が立設された状態にすることができる。
【0062】
また、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させる場合において、シールドフレーム21の架設部21bに嵌合突起21dを形成するとともに、シールドカバー22の天面部22aに嵌合穴22dを形成し、シールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dをシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dに嵌合させることによって、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着するので、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eによるシールドがより効果的に行われる。
【0063】
次に、上記した効果を確認するために行った実験について説明する。
【0064】
この確認実験では、実施例として、上記実施形態のシールドカバー22と同じ構造のシールドカバーを用いた回路モジュールを作製した(作製数:15個)。また、比較対照するために、比較例1として、上記実施形態のシールドカバー22の構造において、L字型のスリット22fが省略されたシールドカバー(図9参照)を用いて回路モジュールを作製した(作製数:61個)。さらに、比較例2として、上記実施形態のシールドカバー22の構造において、L字型のスリット22fに代えて、4つの直線状のスリット22gが十字型に配置されたシールドカバー(図10参照)を用いて回路モジュールを作製した(作製数:10個)。
【0065】
なお、各例の回路モジュールを作製する際のリフロー工程では、図11に示すような条件で行った。具体的に言うと、期間T1は予備加熱を行う期間であり、加熱時間を60秒〜120秒とし、加熱温度を130℃〜180℃とした。また、期間T2は本加熱を行う期間であり、加熱時間を30秒〜60秒とし、加熱温度を230℃以上とした。ただし、ピーク温度を250℃とし、その時間を10秒以下とした。
【0066】
そして、実施例、比較例1および比較例2のそれぞれについてシールドカバーに発生する反りを検査したところ、実施例では、反りの発生率が0%であった。その一方、比較例1では、61個のうちの13個に反りが発生し、反りの発生率が21.3%となった。また、比較例2では、10個のうちの4個に反りが発生し、反りの発生率が40%と非常に高くなった。
【0067】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、シールドカバーの天面部の4隅のうちの全てにL字型のスリットを形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、シールドカバーの天面部の4隅のうちの対角をなす一対の隅にL字型のスリットを1つずつ(合計2つ)形成するようにしてもよい。あるいは、シールドカバーの天面部の4隅のうちの1つの隅にのみL字型のスリットを形成するようにしてもよいし、シールドカバーの天面部の4隅のうちの3つの隅にL字型のスリットを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 多層配線基板(基板)
1a 実装面
2 シールド部材
3 電子部品
21 シールドフレーム
21a 枠部
21b 架設部
21c、21d 嵌合突起(嵌合部)
21e 所定部分
22 シールドカバー
22a 天面部
22b 側部
22c、22d 嵌合穴(嵌合部)
22e 放熱穴
22f L字型のスリット
P 半田接合部分
W 配線層
W1 最上層の配線層
W2 下層の配線層
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路モジュールおよびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICなどの電子部品を基板に実装し、その基板に実装した電子部品をシールドケースで覆った回路モジュールが知られている。このような従来の回路モジュールでは、通常、シールドケースは基板に装着されることで保持されている。そして、基板に対するシールドケースの装着は、たとえば、リフロー炉を用いた半田接合によってなされる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3714088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の回路モジュールでは、基板とシールドケースとを半田接合するリフロー工程の際に、シールドケースの全体が加熱されるので、シールドケースに大きく反りが発生する。このため、シールドケースに対する加熱が解除されても、シールドケースに発生した反りが残り、基板とシールドケースとの間でなされる半田接合が接合不良となってしまう。すなわち、従来の回路モジュールでは、基板に対するシールドケースの装着が確実に行われないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことが可能な回路モジュールおよびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による回路モジュールは、実装面を有し、その実装面に電子部品が実装された基板と、電子部品を覆うように基板に装着されたシールド部材とを備えている。そして、シールド部材は、実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた枠部を有し、その枠部が実装面に半田接合されたシールドフレームと、シールドフレームを外側から覆うように配置され、実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた天面部、および、天面部の外周に立設された側部を有し、その側部がシールドフレームの枠部に取り付けられたシールドカバーとを含んでいる。また、実装面と対向する領域側からの平面視において、シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅に、その所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されている。
【0007】
第1の局面による回路モジュールでは、上記のようなシールド部材(シールドフレームとシールドカバーとからなる部材)を用いることによって、基板の実装面にシールドフレームの枠部を半田接合するとともに、そのシールドフレームを外側から覆うようにシールドカバーを配置し、シールドフレームの枠部にシールドカバーの側部を取り付けることにより、基板に対してシールド部材が装着された状態にすることができる。
【0008】
この場合、シールドフレームは大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であるので、回路モジュールの製造工程(あるいは、回路モジュールを別基板に半田接合する工程)においてシールドフレームが加熱されたとしても、シールドフレームには殆ど反りが発生しない。もちろん、シールドフレームに対する加熱の解除後(シールドフレームの冷却時)にシールドフレームに反りが発生することも殆どない。
【0009】
また、シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅にはその所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されているので、回路モジュールの製造工程(あるいは、回路モジュールを別基板に半田接合する工程)においてシールドカバーが加熱されたとしても、シールドカバーの天面部と側部との間の温度差はそれほど大きくならず、シールドカバーに発生する反りが小さく抑えられる。このため、シールドカバーに対する加熱の解除後(シールドカバーの冷却時)に、シールドカバーに反りが発生したままになってしまうのを抑制することができる。したがって、シールドカバーの側部はシールドフレームの枠部に取り付けられているが、そのシールドフレームの枠部が基板の実装面から離れる方向に強く引っ張られることはない。
【0010】
さらに、シールドカバーの天面部の所定の隅にその所定の隅をなす2辺に沿ってL字型のスリットを形成すると、シールドカバーの天面部と側部とが部分的に分断される。これにより、シールドカバーの天面部に反りが発生したとしても、そのシールドカバーの天面部に発生した反りに追従してシールドカバーの側部(シールドカバーの側部が取り付けられているシールドフレームの枠部)が浮き上がってしまうのも抑制される。
【0011】
これらの結果、基板の実装面とシールドフレームの枠部との間でなされている半田接合が接合不良となるのを回避することができる。すなわち、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことが可能となる。
【0012】
それに加えて、第1の局面による回路モジュールでは、上記のようなシールド部材(シールドフレームとシールドカバーとからなる部材)を用いることによって、実際に電子部品を覆うシールドカバーを基板に半田接合する必要がなくなる。すなわち、基板にシールド部材を装着した後であっても、シールドカバーについては容易に取り外せる。これにより、たとえば、基板にシールド部材を装着した後、電子部品の欠品や短絡などのマウント不良を検査しなければならない場合に、マウント不良の検査を簡単に行うことができる。なお、シールドフレームは骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行える。したがって、シールドフレームを取り外す必要はない。
【0013】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドカバーの天面部の4隅の全てにL字型のスリットが形成されていることが好ましい。このように構成すれば、シールドカバーに発生する反りをさらに小さくすることができる。
【0014】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられており、シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部にそれぞれ設けられた嵌合部が互いに嵌合していることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームに対するシールドカバーの取り付けが確実になされた状態になる。
【0015】
シールドフレームの枠部およびシールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられている構成において、シールドフレームの枠部に設けられた嵌合部が嵌合突起であるとともに、シールドカバーの側部に設けられた嵌合部が嵌合穴であることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームの枠部の嵌合突起をシールドカバーの側部の嵌合穴に挿入するだけでよくなるので、シールドフレームに対するシールドカバーの取り付け作業が容易になる。もちろん、シールドフレームからのシールドカバーの取り外し作業についても容易になる。
【0016】
第1の局面による回路モジュールにおいて、基板が多層配線基板であり、シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分を横切るように引き回された所定の配線層が存在する場合には、実装面に設けられた最上層の配線層ではなくて下層の配線層が所定の配線層とされることが好ましい。このように構成すれば、所定の配線層を引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレームの枠部に形成する必要がないので、基板の実装面に対するシールドフレームの枠部の半田接合を全周にわたって行うことができる。このため、基板の実装面とシールドフレームの枠部との間でなされる半田接合が強固になり、より一層、シールドフレームに反りが発生し難くなる。
【0017】
第1の局面による回路モジュールにおいて、シールドフレームの枠部で囲まれた領域を跨ぐように架設された架設部をシールドフレームがさらに有していることが好ましい。このように構成すれば、剛性が高く、反りが発生し難いシールドフレームを容易に得ることができる。
【0018】
シールドフレームが架設部をさらに有している構成において、シールドフレームの架設部の所定部分が実装面に向かって延ばされていることによって、そのシールドフレームの架設部の所定部分が実装面の面内に立設されたようになっていることが好ましい。このように構成すれば、シールド壁となる部材を別途準備することなく、基板の実装面の面内にシールド壁(シールドフレームの架設部の所定部分)が立設された状態にすることができる。
【0019】
シールドフレームの架設部の所定部分をシールド壁として利用する構成において、シールドフレームの架設部およびシールドカバーの天面部のそれぞれに嵌合部が設けられており、シールドフレームの架設部およびシールドカバーの天面部にそれぞれ設けられた嵌合部が互いに嵌合していることが好ましい。このように構成すれば、シールドフレームの架設部とシールドカバーの天面部とが密着するので、シールドフレームの架設部の所定部分によるシールドがより効果的に行われる。
【0020】
本発明の第2の局面による電子機器は、上記した第1の局面による回路モジュールを備えている。このように構成すれば、電子機器に備えられた回路モジュールに不具合(基板に対するシールド部材の装着不良)が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、容易に、基板に対するシールド部材の装着を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による回路モジュールの概略を示した斜視図である。
【図2】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドフレームの詳細構造を説明するための平面図(基板の実装面にシールドフレームの枠部が半田接合された状態を示した平面図)である。
【図3】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドフレームの詳細構造を説明するための側面図(基板の実装面にシールドフレームの枠部が半田接合された状態を示した側面図)である。
【図4】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドカバーの詳細構造を説明するための平面図である。
【図5】図1に示した回路モジュールの一部品であるシールドカバーの詳細構造を説明するための側面図(シールドフレームとシールドカバーとの間の嵌合箇所を示した側面図)である。
【図6】図2の破線で囲まれた領域100の平面図(シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分における配線層の引き回し状態を示した平面図)である。
【図7】図2の200−200線に沿った断面図(シールドフレームの架設部の所定部分がシールド壁として利用されている状態を示した断面図)である。
【図8】図1に示した回路モジュールを備えた電子機器(地上波デジタルチューナ)の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するための平面図(比較例1のシールドカバーの平面図)である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するための平面図(比較例2のシールドカバーの平面図)である。
【図11】本発明の効果を確認するために行った実験を説明するためのグラフ(リフロー工程時の温度と時間との関係を示したグラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による回路モジュール10の構成について説明する。
【0024】
本実施形態の回路モジュール10は、図1に示すように、種々の電子機器に内蔵される小型のものであって、多層配線基板1と、シールド部材2とを備えている。多層配線基板1は、本発明の「基板」の一例であり、たとえば、ガラスエポキシ基板などの有機基板からなっている。また、シールド部材2は、たとえば、洋白板(銅と亜鉛とニッケルとを含む合金板)からなっている。
【0025】
多層配線基板1は、配線層が設けられた実装面1aを有し、実装面1aと対向する領域側から平面的に見た場合(以下、単に平面視と言う)の外形形状が略四角形状とされている。また、多層配線基板1の実装面1aには複数個の電子部品3が実装されており、外部機器から電子部品3への電気信号の送信(あるいは、電子部品3から外部機器への電気信号の送信)が配線層を介して行われるようになっている。なお、多層配線基板1の実装面1aに実装される電子部品3としては、IC、メモリ、トランジスタおよび抵抗などであり、個数や種類は用途に応じて変更される。また、電子部品3の実装方法としては、電子部品3の端子を配線層に半田付けする場合もあるし、電子部品3の端子をスルーホールに挿入して半田付けする場合もある。
【0026】
そして、この多層配線基板1にシールド部材2が装着され、それによって、多層配線基板1の実装面1aに実装された複数個の電子部品3がシールド部材2で覆われている。
【0027】
シールド部材2は、互いに別部材であるシールドフレーム21およびシールドカバー22を含んでいる。そして、シールドフレーム21が多層配線基板1に取り付けられ、そのシールドフレーム21を外側から覆うようにシールドカバー22がシールドフレーム21に取り付けられることによって、多層配線基板1にシールド部材2が装着された状態となっている。なお、図1に示すシールドフレーム21およびシールドカバー22はそれらの概略を表したものであって、シールドフレーム21の詳細な構造は図2および図3に示され、シールドカバー22の詳細な構造は図4および図5に示されている。
【0028】
シールドフレーム21は、図2および図3に示すように、平面視における外形形状が略四角形状(額縁形状)とされた枠部21aと、その枠部21aで囲まれた領域を跨ぐように架設された略十字形状の架設部21bとを有している。すなわち、シールドフレーム21は、大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であると言える。そして、シールドフレーム21は、その枠部21aが多層配線基板1の実装面1aに半田接合されることにより、多層配線基板1に取り付けられた状態となっている。
【0029】
ここで、図6に示すように、多層配線基板1には数多くの配線層Wが引き回されるが、用途によっては、半田接合部分(シールドフレーム21の枠部21aが半田接合される部分)Pを横切るように配線層Wを引き回す場合がある。
【0030】
この場合、半田接合部分Pを横切る配線層Wが最上層の配線層(多層配線基板1の実装面1aに設けられた配線層)W1であれば、配線層Wを引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレーム21の枠部21aに形成しなければならない。したがって、シールドフレーム21の枠部21aに形成される切り欠きの幅の大きさ分だけ、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間の半田による接合箇所が減ってしまう。
【0031】
このため、本実施形態では、最上層の配線層W1と下層の配線層W2とをスルーホールTHを介して接続し、最上層の配線層W1ではなくて下層の配線層W2が半田接合部分Pを横切るようにしている。すなわち、半田接合部分Pに配線層Wが露出されないようにしており、それによって、シールドフレーム21の枠部21aへの切り欠きの形成を不要としている。そして、多層配線基板1の実装面1aに対するシールドフレーム21の枠部21aの半田接合を全周にわたって行うようにしている。
【0032】
図2および図3に戻って、シールドフレーム21の枠部21aには円柱状の嵌合突起21cが形成されており、後述するシールドカバー22の側部22bに形成された嵌合穴22cに嵌合されるようになっている。また、シールドフレーム21の架設部21bにも円柱状の嵌合突起21dが形成されており、後述するシールドカバー22の天面部22aに形成された嵌合穴22dに嵌合されるようになっている。なお、嵌合突起21cおよび21dは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0033】
さらに、シールドフレーム21の架設部21bは、その所定部分21eが多層配線基板1の実装面1aに向かって略垂直に延びるように曲げられている。このため、図7に示すように、多層配線基板1の実装面1aの面内にシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eが壁状に立設されたようになっている。そして、本実施形態では、このシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させている。すなわち、図7に示す電子部品3を電子部品3aおよび3bに分類して説明すると、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eによって、電子部品3aと電子部品3bとの間を仕切っている。
【0034】
図4および図5に移って、シールドカバー22は、平面視における外形形状が略四角形状とされた天面部22aと、その天面部22aの外周に立設された側部22bとを有している。そして、シールドカバー22の側部22bには開口形状が円形状とされた嵌合穴22cが形成されており、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cにシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cが嵌合されている。これによって、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けがなされている。このシールドカバー22の側部22bに形成された嵌合穴22cは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0035】
なお、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けは、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cにシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cが嵌合されることのみによってなされている。このため、シールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cとシールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cとの嵌合を解除すれば、シールドフレーム21からシールドカバー22が取り外される。すなわち、シールドフレーム21に対してシールドカバー22が着脱可能になっていると言える。
【0036】
また、シールドカバー22の天面部22aには、開口形状が円形状とされた嵌合穴22dが形成されている。そして、そのシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dにシールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dが嵌合されることにより、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着している。なお、嵌合穴22dは、本発明の「嵌合部」の一例である。
【0037】
このように、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着していれば、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させる場合(図7参照)、電子部品3aと電子部品3bとの間のシールドが確実になる。
【0038】
また、図4に示すように、シールドカバー22の天面部22aには、開口形状が円形状とされた放熱穴22eが形成されている。これにより、シールドカバー22の天面部22aの放熱穴22eを介して、シールドカバー22の内側の熱が放熱される。
【0039】
さらに、本実施形態では、シールドカバー22の天面部22aに、嵌合穴22dおよび放熱穴22eに加えて、L字型のスリット22fが形成されている。シールドカバー22の天面部22aに対するL字型のスリット22fの形成数は4つとされており、シールドカバー22の天面部22aの平面視における4隅のそれぞれにL字型のスリット22fが1つずつ配置されている。そして、それらシールドカバー22の天面部22aのL字型のスリット22fは、シールドカバー22の天面部22aの平面視における2辺に沿った状態となっている。
【0040】
このようなL字型のスリット22fをシールドカバー22の天面部22aの平面視における4隅にそれぞれ形成し、かつ、シールドカバー22の天面部22aの平面視における2辺に沿った状態にしておくと、シールドカバー22が加熱されたとしても、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとの間の温度差はそれほど大きくはならない。
【0041】
具体的には、図4および図5に示したシールドカバー22と同じ構造のシールドカバーを作製し、そのシールドカバーを265℃のホットプレートで加熱して温度測定を行ったところ、図中の領域A〜Dの各領域における温度は以下の表1のようになった。なお、比較対照するために、図4および図5に示したシールドカバー22からL字型のスリット22fを省略した構造のシールドカバーを作製し、そのシールドカバーについても同様の条件で温度測定を行った。
【0042】
【表1】
表1を参照して、スリット有りのシールドカバーおよびスリット無しのシールドカバーのそれぞれの側部(領域D)の温度は、共に200℃〜225℃となった。一方で、スリット有りのシールドカバーの天面部(領域A、領域Bおよび領域C)の温度は150℃〜225℃となったのに対し、スリット無のシールドカバーの天面部(領域Aおよび領域B)の温度は125℃〜175℃となった。
【0043】
次に、本実施形態の回路モジュール10の製造方法について説明する。
【0044】
まず、多層配線基板1の実装面1aに半田ペーストを塗布し、その半田ペーストを介して、電子部品3およびシールドフレーム21(枠部21a)を多層配線基板1の実装面1aにそれぞれ搭載する。この後、リフロー炉を用いて、半田ペーストを溶融するとともに硬化させる。このようにして、多層配線基板1の実装面1aに電子部品3を半田接合するとともに、多層配線基板1の実装面1aにシールドフレーム21の枠部21aを半田接合する。
【0045】
続いて、自動検査機または目視によって、電子部品3の欠品および短絡などのマウント不良を検査する。このとき、シールドフレーム21が骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行う。
【0046】
その後、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに嵌合させることによって、シールドフレーム21にシールドカバー22を取り付ける。また、同時に、シールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dをシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dに嵌合させる。
【0047】
これにより、本実施形態の回路モジュール10が完成される。
【0048】
そして、この回路モジュール10は、リフロー炉を用いて、種々の電子機器に組み込まれる別基板(ユーザの商品基板など)に半田接合される。
【0049】
なお、本実施形態の回路モジュール10が搭載される電子機器としては、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナなどが挙げられる。この地上波デジタルチューナは、図8に示すように、アンテナ11から送信された信号を受けるフロントエンド回路12、OFDM復調回路13および誤りビット訂正回路14などを含む。そして、地上波デジタルチューナから出力される信号は、画像/音声復号化部15およびRFモジュレータ部16を経て表示部17に伝わるようになっている。
【0050】
また、本実施形態の回路モジュール10が搭載される電子機器としては、パーソナルコンピュータ(タブレット型端末などを含む)や携帯電話(PHSなどを含む)などであってもよいし、もちろん、これら以外の電子機器であってもよい。
【0051】
本実施形態では、上記のようなシールド部材2(シールドフレーム21とシールドカバー22とからなる部材)を用いることによって、多層配線基板1の実装面1aにシールドフレーム21の枠部21aを半田接合するとともに、そのシールドフレーム21を外側から覆うようにシールドカバー22を配置し、シールドフレーム21の枠部21aにシールドカバー22の側部22bを取り付けることにより、多層配線基板1に対してシールド部材2が装着された状態になる。
【0052】
この場合、シールドフレーム21は大面積の板状部分(反りが発生し易い部分)を持たない骨組み構造体であるので、回路モジュール10の製造工程(あるいは、回路モジュール10を別基板に半田接合する工程)においてシールドフレーム21が加熱されたとしても、シールドフレーム21には殆ど反りが発生しない。もちろん、シールドフレーム21に対する加熱の解除後(シールドフレーム21の冷却時)にシールドフレーム21に反りが発生することも殆どない。
【0053】
また、シールドカバー22の天面部22aの4隅のうちの所定の隅(本実施形態では、4隅の全て)にはその所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリット22fが形成されているので、回路モジュール10の製造工程(あるいは、回路モジュール10を別基板に半田接合する工程)においてシールドカバー22が加熱されたとしても、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとの間の温度差はそれほど大きくならず、シールドカバー22に発生する反りが小さく抑えられる。このため、シールドカバー22に対する加熱の解除後(シールドカバー22の冷却時)に、シールドカバー22に反りが発生したままになってしまうのを抑制することができる。したがって、シールドカバー22の側部22bはシールドフレーム21の枠部21aに取り付けられているが、そのシールドフレーム21の枠部21aが多層配線基板1の実装面1aから離れる方向に強く引っ張られることはない。
【0054】
さらに、シールドカバー22の天面部22aの所定の隅にその所定の隅をなす2辺に沿ってL字型のスリット22fを形成すると、シールドカバー22の天面部22aと側部22bとが部分的に分断される。これにより、シールドカバー22の天面部22aに反りが発生したとしても、そのシールドカバー22の天面部22aに発生した反りに追従してシールドカバー22の側部22b(シールドカバー22の側部22bが取り付けられているシールドフレーム21の枠部21a)が浮き上がってしまうのも抑制される。
【0055】
これらの結果、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間でなされている半田接合が接合不良となるのを回避することができる。すなわち、多層配線基板1に対するシールド部材2の装着を確実に行うことが可能となる。
【0056】
それに加えて、本実施形態では、上記のようなシールド部材2(シールドフレーム21とシールドカバー22とからなる部材)を用いることによって、実際に電子部品3を覆うシールドカバー22を多層配線基板1に半田接合する必要がなくなる。すなわち、多層配線基板1にシールド部材2を装着した後であっても、シールドカバー22については容易に取り外せる。これにより、たとえば、多層配線基板1にシールド部材2を装着した後、電子部品3の欠品や短絡などのマウント不良を検査しなければならない場合に、マウント不良の検査を簡単に行うことができる。なお、シールドフレーム21は骨組み構造体であるので、その骨組みの隙間を介してマウント不良の検査を行える。したがって、シールドフレーム21を取り外す必要はない。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、シールドフレーム21の枠部21aに嵌合突起21cを形成するとともに、シールドカバー22の側部22bに嵌合穴22cを形成することによって、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに嵌合させることにより、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けが確実になされた状態にすることができる。
【0058】
さらに、このような方法によってシールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付けが行われるようにすれば、シールドフレーム21の枠部21aの嵌合突起21cをシールドカバー22の側部22bの嵌合穴22cに挿入するだけでよくなるので、シールドフレーム21に対するシールドカバー22の取り付け作業が容易になる。もちろん、シールドフレーム21からのシールドカバー22の取り外し作業についても容易になる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、配線層Wのうちの最上層の配線層(多層配線基板1の実装面1aに設けられた配線層)W1ではなくて下層の配線層W2が半田接合部分(シールドフレーム21の枠部21aが半田接合される部分)Pを横切るようにすることによって、配線層Wを引き回すための切り欠き(開口)をシールドフレーム21の枠部21aに形成する必要がないので、多層配線基板1の実装面1aに対するシールドフレーム21の枠部21aの半田接合を全周にわたって行うことができる。これにより、多層配線基板1の実装面1aとシールドフレーム21の枠部21aとの間でなされる半田接合が強固になり、より一層、シールドフレーム21に反りが発生し難くなる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、シールドフレーム21の枠部21aで囲まれた領域を跨ぐように架設部21bを架設することによって、剛性が高く、反りが発生し難いシールドフレーム21を容易に得ることができる。
【0061】
そして、そのシールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eを多層配線基板1の実装面1aに向かって延ばすことによって、シールド壁となる部材を別途準備することなく、多層配線基板1の実装面1aの面内にシールド壁(シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21e)が立設された状態にすることができる。
【0062】
また、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eをシールド壁として機能させる場合において、シールドフレーム21の架設部21bに嵌合突起21dを形成するとともに、シールドカバー22の天面部22aに嵌合穴22dを形成し、シールドフレーム21の架設部21bの嵌合突起21dをシールドカバー22の天面部22aの嵌合穴22dに嵌合させることによって、シールドフレーム21の架設部21bとシールドカバー22の天面部22aとが密着するので、シールドフレーム21の架設部21bの所定部分21eによるシールドがより効果的に行われる。
【0063】
次に、上記した効果を確認するために行った実験について説明する。
【0064】
この確認実験では、実施例として、上記実施形態のシールドカバー22と同じ構造のシールドカバーを用いた回路モジュールを作製した(作製数:15個)。また、比較対照するために、比較例1として、上記実施形態のシールドカバー22の構造において、L字型のスリット22fが省略されたシールドカバー(図9参照)を用いて回路モジュールを作製した(作製数:61個)。さらに、比較例2として、上記実施形態のシールドカバー22の構造において、L字型のスリット22fに代えて、4つの直線状のスリット22gが十字型に配置されたシールドカバー(図10参照)を用いて回路モジュールを作製した(作製数:10個)。
【0065】
なお、各例の回路モジュールを作製する際のリフロー工程では、図11に示すような条件で行った。具体的に言うと、期間T1は予備加熱を行う期間であり、加熱時間を60秒〜120秒とし、加熱温度を130℃〜180℃とした。また、期間T2は本加熱を行う期間であり、加熱時間を30秒〜60秒とし、加熱温度を230℃以上とした。ただし、ピーク温度を250℃とし、その時間を10秒以下とした。
【0066】
そして、実施例、比較例1および比較例2のそれぞれについてシールドカバーに発生する反りを検査したところ、実施例では、反りの発生率が0%であった。その一方、比較例1では、61個のうちの13個に反りが発生し、反りの発生率が21.3%となった。また、比較例2では、10個のうちの4個に反りが発生し、反りの発生率が40%と非常に高くなった。
【0067】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、シールドカバーの天面部の4隅のうちの全てにL字型のスリットを形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、シールドカバーの天面部の4隅のうちの対角をなす一対の隅にL字型のスリットを1つずつ(合計2つ)形成するようにしてもよい。あるいは、シールドカバーの天面部の4隅のうちの1つの隅にのみL字型のスリットを形成するようにしてもよいし、シールドカバーの天面部の4隅のうちの3つの隅にL字型のスリットを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 多層配線基板(基板)
1a 実装面
2 シールド部材
3 電子部品
21 シールドフレーム
21a 枠部
21b 架設部
21c、21d 嵌合突起(嵌合部)
21e 所定部分
22 シールドカバー
22a 天面部
22b 側部
22c、22d 嵌合穴(嵌合部)
22e 放熱穴
22f L字型のスリット
P 半田接合部分
W 配線層
W1 最上層の配線層
W2 下層の配線層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有し、前記実装面に電子部品が実装された基板と、
前記電子部品を覆うように前記基板に装着されたシールド部材とを備え、
前記シールド部材は、
前記実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた枠部を有し、前記枠部が前記実装面に半田接合されたシールドフレームと、
前記シールドフレームを外側から覆うように配置され、前記実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた天面部、および、前記天面部の外周に立設された側部を有し、前記側部が前記シールドフレームの枠部に取り付けられたシールドカバーとを含んでおり、
前記実装面と対向する領域側からの平面視において、前記シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅に、前記所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項2】
前記シールドカバーの天面部の4隅の全てに前記L字型のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記シールドフレームの枠部および前記シールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられており、
前記シールドフレームの枠部および前記シールドカバーの側部にそれぞれ設けられた前記嵌合部が互いに嵌合していることを特徴とする請求項1または2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記シールドフレームの枠部に設けられた前記嵌合部が嵌合突起であるとともに、前記シールドカバーの側部に設けられた前記嵌合部が嵌合穴であることを特徴とする請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記基板が多層配線基板であり、
前記シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分を横切るように引き回された所定の配線層が存在する場合には、前記実装面に設けられた最上層の配線層ではなくて下層の配線層が前記所定の配線層とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記シールドフレームの枠部で囲まれた領域を跨ぐように架設された架設部を前記シールドフレームがさらに有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記シールドフレームの架設部の所定部分が前記実装面に向かって延ばされていることによって、前記シールドフレームの架設部の所定部分が前記実装面の面内に立設されたようになっていることを特徴とする請求項6に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記シールドフレームの架設部および前記シールドカバーの天面部のそれぞれに嵌合部が設けられており、
前記シールドフレームの架設部および前記シールドカバーの天面部にそれぞれ設けられた前記嵌合部が互いに嵌合していることを特徴とする請求項7に記載の回路モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の回路モジュールを備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
実装面を有し、前記実装面に電子部品が実装された基板と、
前記電子部品を覆うように前記基板に装着されたシールド部材とを備え、
前記シールド部材は、
前記実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた枠部を有し、前記枠部が前記実装面に半田接合されたシールドフレームと、
前記シールドフレームを外側から覆うように配置され、前記実装面と対向する領域側からの平面視における外形形状が四角形状とされた天面部、および、前記天面部の外周に立設された側部を有し、前記側部が前記シールドフレームの枠部に取り付けられたシールドカバーとを含んでおり、
前記実装面と対向する領域側からの平面視において、前記シールドカバーの天面部の4隅のうちの所定の隅に、前記所定の隅をなす2辺に沿うようにL字型のスリットが形成されていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項2】
前記シールドカバーの天面部の4隅の全てに前記L字型のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記シールドフレームの枠部および前記シールドカバーの側部のそれぞれに嵌合部が設けられており、
前記シールドフレームの枠部および前記シールドカバーの側部にそれぞれ設けられた前記嵌合部が互いに嵌合していることを特徴とする請求項1または2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記シールドフレームの枠部に設けられた前記嵌合部が嵌合突起であるとともに、前記シールドカバーの側部に設けられた前記嵌合部が嵌合穴であることを特徴とする請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記基板が多層配線基板であり、
前記シールドフレームの枠部が半田接合される半田接合部分を横切るように引き回された所定の配線層が存在する場合には、前記実装面に設けられた最上層の配線層ではなくて下層の配線層が前記所定の配線層とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記シールドフレームの枠部で囲まれた領域を跨ぐように架設された架設部を前記シールドフレームがさらに有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記シールドフレームの架設部の所定部分が前記実装面に向かって延ばされていることによって、前記シールドフレームの架設部の所定部分が前記実装面の面内に立設されたようになっていることを特徴とする請求項6に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記シールドフレームの架設部および前記シールドカバーの天面部のそれぞれに嵌合部が設けられており、
前記シールドフレームの架設部および前記シールドカバーの天面部にそれぞれ設けられた前記嵌合部が互いに嵌合していることを特徴とする請求項7に記載の回路モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の回路モジュールを備えていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−104632(P2012−104632A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251494(P2010−251494)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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