回路基板および空芯コイルの実装方法
【課題】空芯コイルの、回路基板上の実装高さを低くする。
【解決手段】空芯コイル1の巻回部を、コイル実装部上に設けられた開口部51に収容する。空芯コイル1は、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部1bと、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部1cとを有する。第1のリード部1bと第2のリード部1cとは、略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされている。また、コイル実装部は、巻回部を収容する開口部51と、開口部51の周辺に設けられて第1のリード部1bと接触する第1の導電部56aと、第2のリード部と接触する第2の導電部56bとを有する。
【解決手段】空芯コイル1の巻回部を、コイル実装部上に設けられた開口部51に収容する。空芯コイル1は、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部1bと、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部1cとを有する。第1のリード部1bと第2のリード部1cとは、略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされている。また、コイル実装部は、巻回部を収容する開口部51と、開口部51の周辺に設けられて第1のリード部1bと接触する第1の導電部56aと、第2のリード部と接触する第2の導電部56bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板および空芯コイルの実装方法に関し、特に、薄型の電子機器に実装される回路基板に空芯コイルを実装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される回路基板に、空芯コイルを実装したものがある。空芯コイルは、たとえば導線を螺旋状に巻いて構成し、実装機を使用して、回路基板上に半田付けで取り付けられる。例えば特許文献1には、回路基板の表面に空芯コイルを実装する際に、空芯コイル専用の特殊な実装機を用意して実装作業を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−172299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空芯コイルは、特許文献1に示すように回路基板上に実装されることで、その巻回部分が回路基板から比較的大きく突出する。図11は、空芯コイル2が回路基板3に実装された状態を示す側面図である。空芯コイル2は、導線が螺旋状に複数回巻回されてなる巻回部2aと、巻回部2aの一端から延びた第1のリード部2bと、巻回部2aの他端から延びた第2のリード部2cとより構成される。第1のリード部2bと第2のリード部2cとは、巻回部2aの外側に向けて同一方向に延びており、互いに略平行とされている。
【0005】
空芯コイル2の回路基板3への実装は、図11に示されるように、第1のリード部2bと第2のリード部2cとを、それぞれ回路基板3上に設けられた開口部3aと開口部3bに挿入することにより行われる。つまり、空芯コイル2の巻回部2aが回路基板3の上に乗る形となる。このため、電子機器の回路基板を収納する箇所の厚さを、巻回部2aの外径に相当する高さよりも低くすることができないという問題があった。
【0006】
巻回部2aの径を小さくすれば、回路基板3から空芯コイル2が突出する部分の高さを低くすることができるが、空芯コイル2の用途によっては、巻回部2aの径を小さくできない場合もある。つまり、空芯コイル2が、回路基板を搭載した電子機器の薄型化や小型化を阻む大きな要因となっていた。
【0007】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、空芯コイルの回路基板上の実装高さを低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の回路基板は、空芯コイルとコイル実装部とを備える構成とし、各部の構成及び機能を次のようにする。空芯コイルは、導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを備える。そして、第1のリード部と第2のリード部とが、略同一平面上で互いに異なる方向に延びる形状とした。コイル実装部は、巻回部を収容する開口部と、開口部の周辺に設けられて第1のリード部が接触される第1の導電部と、開口部の周辺に設けられて第2のリード部が接触される第2の導電部とを有する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示の空芯コイル実装方法は、次の手順で行う。まず、空芯コイルの巻回部を、コイル実装部上に設けられた開口部に収容する。空芯コイルは、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有する。第1のリード部と第2のリード部とは、略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされる。コイル実装部は、巻回部を収容する開口部と、開口部の周辺に設けられて第1のリード部が接触される第1の導電部と、開口部の周辺に設けられて第2のリード部が接触される第2の導電部とを有する。次に、空芯コイルの第1のリード部とコイル実装部の第1の導電部および、空芯コイルの第2のリード部とコイル実装部の第2の導電部とを電気的に接続する。
【0010】
このように構成および実装することで、開口部に空芯コイルが収容された状態で、空芯コイルの第1のリード部と第2のリード部とがコイル実装部上に配置される。つまり、空芯コイルが開口部に埋め込まれる形となるため、回路基板から空芯コイルが突出する高さが非常に低くなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の回路基板および空芯コイルの実装方法によれば、空芯コイルの、回路基板上の実装高さを低くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの構成例を示す斜視図である。
【図2】本開示の一実施形態に係る回路基板に空芯コイルが実装された状態の例を示す斜視図である。
【図3】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルが、自動実装機の吸着ノズルによって真空吸着された状態の例を示す側面図である。
【図4】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの変形例1を示す上面図である。
【図5】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの変形例2を示す上面図である。
【図6】本開示の一実施形態に係る回路基板が実装されるチューナ部の内部構成例を示すブロック図である。
【図7】本開示の一実施形態に係る回路基板が実装されるチューナ部内のハイパスフィルタの内部構成例を示すブロック図である。
【図8】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの寸法の例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図9】本開示の一実施形態に係る回路基板に空芯コイルが実装された状態の例を示す上面図である。
【図10】本開示の一実施形態に係る回路基板がチューナ部に実装された状態の例を示す断面図である。
【図11】従来の空芯コイルの回路基板への実装例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一実施形態に係る空芯コイルが実装された回路基板および、空芯コイルの実装方法の一例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。
1.空芯コイルの構成例
2.空芯コイルの回路基板への実装例
3.空芯コイルの変形例
4.空芯コイルをテレビジョン受像機のチューナ部に適用した場合の構成例
【0014】
<1.空芯コイルの構成例>
まず、本開示の一実施形態に係る回路基板に搭載される空芯コイルについて、図1を参照して説明する。図1は、空芯コイル1の構成例を示す斜視図である。空芯コイル1は、螺旋状に導線を巻回した巻回部1aと、巻回部1aの一端から直線状に導線が延びた第1のリード部1bと、巻回部1aの他端から直線状に導線が延びた第2のリード部1cとより構成される。第1のリード部1bと第2のリード部1cとは、略同一平面上で互いに異なる方向に延びている。すなわち、互いに略180°反対の方向に延びている。
【0015】
図2は、回路基板50上に設けられた開口部51に、空芯コイル1が収容された様子を示した図である。開口部51は、長辺の長さを、空芯コイル1の巻回部1aの巻き線の巻き方向L1より少し長い長さにしてある。短辺の長さは、巻回部1aの端部と開口部51との間の隙間が、それぞれ0.15mmとなる長さとしてある。すなわち、巻回部1aの外径の長さL2+0.3mmの長さとしている。開口部51の短辺の長さは、巻回部1aの外径より長く、かつ、巻回部1aの外径に第1のリード部1bの長さと第2のリード部1cの長さとを足した長さよりも、短い長さとする。つまり、第1のリード部1bと第2のリード部1cによって、空芯コイル1を回路基板50上で安定して支えられる程度の長さとする。
【0016】
開口部51の大きさをこのように設定し、かつ、空芯コイル1を図1に示したような形状とすることで、開口部51に空芯コイル1が収容された状態で、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが回路基板50上に配置される。つまり、空芯コイル1の巻回部1aが開口部51に埋め込まれる形となるため、回路基板50の厚み方向において回路基板から空芯コイル1が突出する部分の高さが非常に低くなる。回路基板50から空芯コイル1が突出する部分の長さは、巻回部1aの外径から回路基板の厚みを引いた長さとなる。
【0017】
また、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容された状態で、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが回路基板50上に配置される。そのため、半田付けされていない状態でも、空芯コイル1が回路基板50上に保持されるようになる。また、開口部51を、空芯コイル1の巻回部1aを収容可能な程度のサイズに構成してあるため、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されることで、空芯コイル1の開口部51に対する水平方向および垂直方向の位置も定まる。
【0018】
図11に示した従来の構成では、第1のリード部2bと第2のリード部2cが挿入される開口部3aおよび開口部3bの径が非常に小さいため、空芯コイル2の回路基板3への実装時には非常にシビアな位置調整が求められる。これに対して、上述した実施の形態によれば、このような細かな位置調整を行う必要がなくなる。したがって、空芯コイル1の開口部51への収容を、専用の特殊な実装機を用いたり人手を介して行うのではなく、通常用いられる自動実装機によって行えるようになる。
【0019】
図3は、空芯コイル1が自動実装機の吸着ノズル200によって吸着されている状態を示す側面図である。自動実装機(図示略)は、まず、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが延びている側の面を、吸着ノズル200によって真空吸着する。そして、図2に示した回路基板50の開口部51の上部まで移動した地点で真空吸着を解除する。このような操作が行われることにより、空芯コイル1の巻回部1aは開口部51に収容され、第1のリード部1bと第2のリード部1cは回路基板50上にとどまる。
【0020】
図3に示した例では、第1のリード部1bと第2のリード部1cとが、吸着ノズル200の吸着面に対してちょうど平行となっている例を示してあるが、完全に平行とならなくてもよい。真空吸着解除後に、第1のリード部1bと第2のリード部1cのいずれか一方が回路基板50に接触することにより、他方のリード部も続いて回路基板50と接触し、これによって巻回部1aが開口部51に収容されるためである。
【0021】
<2.空芯コイルの変形例>
なお、上述した実施の形態では、第1のリード部1bと第2のリード部1cとを、巻回部1aからそれぞれ直線状に延ばした形状としたが、これに限定されるものではない。図4に示すように、第1のリード部1b′と第2のリード部1c′の途中から先端までの部分を、巻回部1a′の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げた、2つの直線部分を持つ形状としてもよい。このように構成することにより、第1のリード部1b′と第2のリード部1c′とが回路基板50に接触した際に、L字状(2軸)のリード部1b′,1c′が回路基板50と接触して、回路基板50上に空芯コイル1がより安定して載るようになる。
【0022】
また、図5に示すように、空芯コイル1′′の第1のリード部1b′′と第2のリード部1c′′の途中から先端までの部分を、回路基板50の面と垂直な方向に折り曲げた形状としてもよい。この場合は、回路基板50上に、第1のリード部1b格納用の開口部61aと、第2のリード部1c格納用の開口部61bとを設ける必要がある。そして、第1のリード部1b′′と第2のリード部1c′′とをこれらの開口部に挿入することにより、巻回部1a′′を開口部51に収容する。
【0023】
また、上述した実施の形態では、空芯コイル1を収容する開口部51を穴として構成したが、この形状に限定されるものではない。例えば、開口部51を回路基板50の辺の部分に、切り欠きとして構成してもよい。
【0024】
<3.空芯コイルをテレビジョン受像機のチューナ部に適用した場合の構成例>
続いて、空芯コイル1を、誘導雷サージによる機器破壊防止用のコイルとして使用する場合の例を説明する。誘導雷サージ対策用のコイルは、様々な電子機器で使用されるが、ここではテレビジョン受像機に適用した例をあげる。
【0025】
図6は、テレビジョン受像機のチューナ部100の構成例を示す図である。チューナ部100は、ハイパスフィルタ110(以下、「HPF110」と称する)と、高周波回路部120と、復調部130とを備える。HPF110は、アンテナ入力端子101から入力されたRF(Radio Frequency)信号のうち、不要な帯域外の周波数の信号を除去して高周波回路部120に出力する。HPF110の構成の詳細については、次の図7を参照して後述する。
【0026】
高周波回路部120は、図示せぬAGC(Automatic Gain Control)や局部発振器、周波数変換器等を備え、HPF110によって不要な周波数が除去された信号を増幅し、受信チャンネルと同じ周波数の信号を選択して出力する。復調部130は、高周波回路部120から出力された信号を、図示せぬ送信機から送信された信号と同じ変調方式を用いて復調する。
【0027】
図7は、HPF110の構成例を示すブロック図である。アンテナ10はコンデンサ111を介して高周波回路部120(図6参照)に接続されている。コンデンサ111の信号が入力される側の端部はインダクタとしての空芯コイル1を介して接地し、もう一方の端部は、さらに別のインダクタ112を介して接地している。そして、インダクタとしての空芯コイル1と、コンデンサ111と、インダクタ112とがHPFを構成して特定の周波数の信号を除去する。
【0028】
HPF110のカットオフ周波数は、例えば、現在日本で放送されている地上波デジタルテレビ放送を受信したい場合には、90MHz以下とする必要がある。現在地上波テレビ放送のチャンネル周波数として使用されている周波数のうち、もっとも低い周波数の中心周波数は93MHzであるためである。HPF110のカットオフ周波数を90MHz以下にするには、空芯コイル1とインダクタ112のインダクタンスは160nH以上として十分大きいインピーダンスとすることが経験的に求められる。
【0029】
HPF110のインダクタとしての空芯コイル1は、アンテナ10の入力端子に直接接続させ、もう一方の端部を接地させることで、誘導雷による破壊防止用のコイルとしても機能する。誘導雷サージ電圧は±9kV程度と非常に高いため、誘導雷破壊防止用のコイルには空芯コイルを使用することが好ましい。回路基板上に形成するパターンインダクタや、チップ部品のチップインダクタは、耐電性が低いため、±9kVもの高い電圧が印加された場合には溶断してしまうためである。ただし、空芯コイルを使用する場合であっても、誘導雷サージ電圧に対する耐性を持たせるためには、導線の線径をある程度太くする必要がある。
【0030】
図8は、空芯コイル1を、これらの要求をすべて満足するように構成した場合の構成図である。図8(a)は、空芯コイル1の上面図であり、図8(b)は側面図である。図8(a)に示すように、空芯コイル1の導線の線径wdは0.35mmとし、巻数を17回とする。これにより、第1のリード部1bと第2のリード部1cのそれぞれの中心を通る線の間を結んだ長さdは、7.1mmとなる。なお、空芯コイル1の巻数は、空芯コイル1を吸着ノズル200(図3参照)で真空吸着した際に空芯コイル1が撓まない程度の巻数として算出したものであり、吸着ノズル200のサイズや真空吸着の強さ等に応じた任意の値が設定されるものとする。
【0031】
空芯コイル1の巻数を17回とし、コイルの巻き線の巻き方向の長さdを7.1mmとすると、インダクタンスを前述した160nH以上とするためには、空芯コイル1の外径odを3mm程度に設定する必要がある。本実施の形態では、図8(b)に示すように、空芯コイル1の外径odは2.7mmとしている。第1のリード部1bおよび第2のリード部1cにおいては、いずれも導線の被覆を剥がして裸線を露出させてあり、半田メッキを施してある。第1のリード部1bおよび第2のリード部1cの長さldは、それぞれ1.7mmとしてある。なお、図8に示した各値(空芯コイル1の設計値)は一例であり、これらの値に限定されるものではない。
【0032】
図9は、このように構成された空芯コイル1が、コイル実装部としての回路基板50の開口部51にはめ込まれた状態を示す上面図である。なお、図9には、回路基板50のうち、空芯コイル1が収容された開口部51とその周辺部のみを図示してある。図9において、プリント基板として構成された回路基板50上で銅箔が張られている部分は斜線で示してあり、レジストあるいは絶縁皮膜が剥がされた導電部はドット模様で示してある。
【0033】
図9に示す回路基板50の上方には、アンテナ入力端子101(図6参照)を構成するコネクタ部品の中心導体接続部がはめ込まれる、スルーホール52が形成されている。その外周部分には、導電部53が形成されている。スルーホール52の左側には、グランド電位接続用のスルーホール54aとスルーホール54bが設けられている。スルーホール54aの右側には、HPF110を構成するコンデンサ111(図7参照)用の導電部55が設けられている。
【0034】
アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品が接続されるスルーホール52の脇には、空芯コイル1を収容するための開口部51が形成されている。開口部51の左下方には、第1の導電部としての導電部56aが設けられており、その対角線上の右上方には、第2の導電部としての導電部56bを設けている。開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されていることで、空芯コイル1の第1のリード部1bが導電部56aに接触し、第2のリード部1cが導電部56bに接触している。第1のリード部1bと導電部56a、および、第2のリード部1cと導電部56bとは、半田付けによって電気的に接続される。
【0035】
図10は、空芯コイル1および回路基板50が装着されたチューナ部100の構成例を示す断面図である。回路基板50の上部と下部には、それぞれカバー41とカバー42とが取り付けられている。上側のカバー41にはアンテナ入力端子101を取り付けてあり、アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品の背面側から出ている中心導体接続部101aは、回路基板50のスルーホール52に挿入される。アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品の背面側から出ている接地用接続部101bは、カバー42に直接接続している。
【0036】
スルーホール52のすぐ右側には、開口部51が設けられており、開口部51には、空芯コイル1の巻回部1aが収容されている。そして、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されることにより、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが、回路基板50の導電部56aと導電部56b(図9参照)に接触する。
【0037】
空芯コイル1が回路基板50に対してこのように実装されることで、回路基板50の厚み方向に突出する空芯コイル1の高さが、空芯コイル1の外径odから回路基板50の厚みを引いた高さとなる。これにより、上側のカバー41と下側のカバー42とを、回路基板50により近い位置に配置できるようになる。すなわち、チューナ部100の厚さをより薄くすることが可能となる。これにより、チューナ部100が搭載されるテレビジョン受像機自体の厚さも、チューナ部100が薄くなった分だけ薄くすることができる。
【0038】
また、空芯コイル1を第1のリード部1bと第2のリード部1cとが略同一平面上で互いに異なる方向に張り出す形状に構成し、空芯コイル1を収容する開口部51を回路基板50上に設けることで、空芯コイル1を回路基板50に自動実装できるようになる。すなわち、回路基板50の開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容される際に、第1のリード部1bおよび第2のリード部1cが回路基板50の面上に接触して回路基板50上に留まるようになる。つまり、真空吸着の解除後に空芯コイル1が回路基板50の下に落下してしまうことがなくなる。よって、吸着ノズル200(図3参照)で真空吸着を行う自動実装機による、回路基板50への空芯コイル1の自動実装が可能となる。これにより、従来のように、人の手を介して空芯コイルを回路基板に実装する場合や、専用の特殊な実装機を用意する場合と比較して、部品製造にかかる時間や手間を大幅に短縮できる。
【0039】
ここで、従来の構成として図11に示したように、空芯コイル2の第1のリード部2bと第2のリード部2cとを、巻回部2aの外側に向けて同一方向で、互いに略平行となるように延ばして形成した場合を考えてみる。このように構成された空芯コイル2を、真空吸着によって回路基板3上に自動実装するには、真空吸着された状態で、空芯コイル2の第1のリード部2bと第2のリード部2cとが回路基板3の面に対して垂直となっていなければならない。空芯コイル2のこのような姿勢を可能とするためには、空芯コイル2における吸着ノズル200による吸着箇所を平坦にするか、平坦な形状の素材を空芯コイル2に接着する必要がある。しかし、このような加工を行うことで、部品の製造工程が増えるだけでなく、製造コストも増大してしまう。
【0040】
上述した実施の形態によれば、上述したように空芯コイル1が構成されて、その巻回部1aが回路基板50の開口部51に実装されるため、製造工程や製造コストが増加することがない。
【0041】
また、上述した実施の形態のように、空芯コイル1をチューナ部100に搭載する場合には、空芯コイル1に、帯域外不要波減衰用のHPF110を構成するインダクタの役割と、誘導雷サージによる機器破壊防止素子の役割とを兼ねさせることができる。したがって、部品点数を削減することが可能となる。
【0042】
さらに、帯域外不要波減衰用のHPF110を構成するインダクタとして、Q値の高い空芯コイル1を用いることで、入力信号の高周波回路部分の減衰量を低く抑えることが可能となる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、誘導雷サージによる機器破壊防止用素子としての空芯コイル1を、テレビジョン受像機のチューナ部100に適用した例をあげたが、これに限定されるものではない。屋外から引き込まれた配線が接続される電子機器で、薄型化が望まれている機器であれば、どのような電子機器に適用してもよい。例えば、モデム、パーソナルコンピュータ、電話機、インターホン等の電子機器に適用が可能である。
【0044】
また、上述した実施の形態では、空芯コイル1を、誘導雷サージによる機器破壊防止用の素子として使用する例をあげたが、空芯コイル1の用途はこれに限定されるものではない。高周波の共振や高周波の抑止用に使用されるコイルに適用してもよい。
【0045】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルと、
前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部とを備えた回路基板。
(2)前記開口部は、その長辺の長さは、前記空芯コイルの巻回部の巻き線の巻き方向の長さ以上であり、その短辺の長さは、前記巻回部の外径よりも長く、かつ、前記巻回部の外径に前記第1のリード部の長さと前記第2のリード部の長さとを足した長さよりも短い(1)に記載の回路基板。
(3)前記回路基板は電子機器に装着され、前記空芯コイルの前記第1のリード部と前記第2のリード部のうちいずれか一方は、前記電子機器に外部から入力される入力信号の入力端子に接続されるとともに、他方は接地される(1)または(2)に記載の回路基板。
(4)前記入力端子はアンテナの入力端子であり、前記空芯コイルは、前記入力端子に接続される(1)〜(3)のいずれかに記載の回路基板。
(5)前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記巻回部の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げられている(1)〜(4)のいずれかに記載の空芯コイルが実装された回路基板。
(6)前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記コイル実装部平面に対して垂直の方向に略90°折り曲げられている(1)〜(4)のいずれかに記載の空芯コイルが実装された回路基板。
(7)前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルの前記巻回部を、前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部に収容することと、
前記第1のリード部と前記第1の導電部および、前記第2のリード部と前記第2の導電部とを電気的に接続することとを含む空芯コイルの実装方法。
【符号の説明】
【0046】
1、1′、1′′…空芯コイル、1a,1a′,1a′′…巻回部、1b,1b′,1b′′…第1のリード部、1c,1c′,1c′′…第2のリード部、2…空芯コイル、2a…巻回部、2b…第1のリード部、2c…第2のリード部、3…回路基板、3a,3b…開口部、10…アンテナ、41,42…カバー、50…回路基板、51…開口部、52…スルーホール、53…導電部、54a,54b…スルーホール、55,56a,56b…導電部、61a,61b…穴、100…チューナ部、101…アンテナ入力端子、110…ハイパスフィルタ、111…コンデンサ、112…インダクタ、120…高周波回路部、130…復調部、200…吸着ノズル
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板および空芯コイルの実装方法に関し、特に、薄型の電子機器に実装される回路基板に空芯コイルを実装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される回路基板に、空芯コイルを実装したものがある。空芯コイルは、たとえば導線を螺旋状に巻いて構成し、実装機を使用して、回路基板上に半田付けで取り付けられる。例えば特許文献1には、回路基板の表面に空芯コイルを実装する際に、空芯コイル専用の特殊な実装機を用意して実装作業を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−172299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空芯コイルは、特許文献1に示すように回路基板上に実装されることで、その巻回部分が回路基板から比較的大きく突出する。図11は、空芯コイル2が回路基板3に実装された状態を示す側面図である。空芯コイル2は、導線が螺旋状に複数回巻回されてなる巻回部2aと、巻回部2aの一端から延びた第1のリード部2bと、巻回部2aの他端から延びた第2のリード部2cとより構成される。第1のリード部2bと第2のリード部2cとは、巻回部2aの外側に向けて同一方向に延びており、互いに略平行とされている。
【0005】
空芯コイル2の回路基板3への実装は、図11に示されるように、第1のリード部2bと第2のリード部2cとを、それぞれ回路基板3上に設けられた開口部3aと開口部3bに挿入することにより行われる。つまり、空芯コイル2の巻回部2aが回路基板3の上に乗る形となる。このため、電子機器の回路基板を収納する箇所の厚さを、巻回部2aの外径に相当する高さよりも低くすることができないという問題があった。
【0006】
巻回部2aの径を小さくすれば、回路基板3から空芯コイル2が突出する部分の高さを低くすることができるが、空芯コイル2の用途によっては、巻回部2aの径を小さくできない場合もある。つまり、空芯コイル2が、回路基板を搭載した電子機器の薄型化や小型化を阻む大きな要因となっていた。
【0007】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、空芯コイルの回路基板上の実装高さを低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の回路基板は、空芯コイルとコイル実装部とを備える構成とし、各部の構成及び機能を次のようにする。空芯コイルは、導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを備える。そして、第1のリード部と第2のリード部とが、略同一平面上で互いに異なる方向に延びる形状とした。コイル実装部は、巻回部を収容する開口部と、開口部の周辺に設けられて第1のリード部が接触される第1の導電部と、開口部の周辺に設けられて第2のリード部が接触される第2の導電部とを有する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示の空芯コイル実装方法は、次の手順で行う。まず、空芯コイルの巻回部を、コイル実装部上に設けられた開口部に収容する。空芯コイルは、巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有する。第1のリード部と第2のリード部とは、略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされる。コイル実装部は、巻回部を収容する開口部と、開口部の周辺に設けられて第1のリード部が接触される第1の導電部と、開口部の周辺に設けられて第2のリード部が接触される第2の導電部とを有する。次に、空芯コイルの第1のリード部とコイル実装部の第1の導電部および、空芯コイルの第2のリード部とコイル実装部の第2の導電部とを電気的に接続する。
【0010】
このように構成および実装することで、開口部に空芯コイルが収容された状態で、空芯コイルの第1のリード部と第2のリード部とがコイル実装部上に配置される。つまり、空芯コイルが開口部に埋め込まれる形となるため、回路基板から空芯コイルが突出する高さが非常に低くなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の回路基板および空芯コイルの実装方法によれば、空芯コイルの、回路基板上の実装高さを低くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの構成例を示す斜視図である。
【図2】本開示の一実施形態に係る回路基板に空芯コイルが実装された状態の例を示す斜視図である。
【図3】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルが、自動実装機の吸着ノズルによって真空吸着された状態の例を示す側面図である。
【図4】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの変形例1を示す上面図である。
【図5】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの変形例2を示す上面図である。
【図6】本開示の一実施形態に係る回路基板が実装されるチューナ部の内部構成例を示すブロック図である。
【図7】本開示の一実施形態に係る回路基板が実装されるチューナ部内のハイパスフィルタの内部構成例を示すブロック図である。
【図8】本開示の一実施形態に係る回路基板に実装される空芯コイルの寸法の例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図9】本開示の一実施形態に係る回路基板に空芯コイルが実装された状態の例を示す上面図である。
【図10】本開示の一実施形態に係る回路基板がチューナ部に実装された状態の例を示す断面図である。
【図11】従来の空芯コイルの回路基板への実装例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一実施形態に係る空芯コイルが実装された回路基板および、空芯コイルの実装方法の一例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。
1.空芯コイルの構成例
2.空芯コイルの回路基板への実装例
3.空芯コイルの変形例
4.空芯コイルをテレビジョン受像機のチューナ部に適用した場合の構成例
【0014】
<1.空芯コイルの構成例>
まず、本開示の一実施形態に係る回路基板に搭載される空芯コイルについて、図1を参照して説明する。図1は、空芯コイル1の構成例を示す斜視図である。空芯コイル1は、螺旋状に導線を巻回した巻回部1aと、巻回部1aの一端から直線状に導線が延びた第1のリード部1bと、巻回部1aの他端から直線状に導線が延びた第2のリード部1cとより構成される。第1のリード部1bと第2のリード部1cとは、略同一平面上で互いに異なる方向に延びている。すなわち、互いに略180°反対の方向に延びている。
【0015】
図2は、回路基板50上に設けられた開口部51に、空芯コイル1が収容された様子を示した図である。開口部51は、長辺の長さを、空芯コイル1の巻回部1aの巻き線の巻き方向L1より少し長い長さにしてある。短辺の長さは、巻回部1aの端部と開口部51との間の隙間が、それぞれ0.15mmとなる長さとしてある。すなわち、巻回部1aの外径の長さL2+0.3mmの長さとしている。開口部51の短辺の長さは、巻回部1aの外径より長く、かつ、巻回部1aの外径に第1のリード部1bの長さと第2のリード部1cの長さとを足した長さよりも、短い長さとする。つまり、第1のリード部1bと第2のリード部1cによって、空芯コイル1を回路基板50上で安定して支えられる程度の長さとする。
【0016】
開口部51の大きさをこのように設定し、かつ、空芯コイル1を図1に示したような形状とすることで、開口部51に空芯コイル1が収容された状態で、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが回路基板50上に配置される。つまり、空芯コイル1の巻回部1aが開口部51に埋め込まれる形となるため、回路基板50の厚み方向において回路基板から空芯コイル1が突出する部分の高さが非常に低くなる。回路基板50から空芯コイル1が突出する部分の長さは、巻回部1aの外径から回路基板の厚みを引いた長さとなる。
【0017】
また、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容された状態で、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが回路基板50上に配置される。そのため、半田付けされていない状態でも、空芯コイル1が回路基板50上に保持されるようになる。また、開口部51を、空芯コイル1の巻回部1aを収容可能な程度のサイズに構成してあるため、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されることで、空芯コイル1の開口部51に対する水平方向および垂直方向の位置も定まる。
【0018】
図11に示した従来の構成では、第1のリード部2bと第2のリード部2cが挿入される開口部3aおよび開口部3bの径が非常に小さいため、空芯コイル2の回路基板3への実装時には非常にシビアな位置調整が求められる。これに対して、上述した実施の形態によれば、このような細かな位置調整を行う必要がなくなる。したがって、空芯コイル1の開口部51への収容を、専用の特殊な実装機を用いたり人手を介して行うのではなく、通常用いられる自動実装機によって行えるようになる。
【0019】
図3は、空芯コイル1が自動実装機の吸着ノズル200によって吸着されている状態を示す側面図である。自動実装機(図示略)は、まず、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが延びている側の面を、吸着ノズル200によって真空吸着する。そして、図2に示した回路基板50の開口部51の上部まで移動した地点で真空吸着を解除する。このような操作が行われることにより、空芯コイル1の巻回部1aは開口部51に収容され、第1のリード部1bと第2のリード部1cは回路基板50上にとどまる。
【0020】
図3に示した例では、第1のリード部1bと第2のリード部1cとが、吸着ノズル200の吸着面に対してちょうど平行となっている例を示してあるが、完全に平行とならなくてもよい。真空吸着解除後に、第1のリード部1bと第2のリード部1cのいずれか一方が回路基板50に接触することにより、他方のリード部も続いて回路基板50と接触し、これによって巻回部1aが開口部51に収容されるためである。
【0021】
<2.空芯コイルの変形例>
なお、上述した実施の形態では、第1のリード部1bと第2のリード部1cとを、巻回部1aからそれぞれ直線状に延ばした形状としたが、これに限定されるものではない。図4に示すように、第1のリード部1b′と第2のリード部1c′の途中から先端までの部分を、巻回部1a′の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げた、2つの直線部分を持つ形状としてもよい。このように構成することにより、第1のリード部1b′と第2のリード部1c′とが回路基板50に接触した際に、L字状(2軸)のリード部1b′,1c′が回路基板50と接触して、回路基板50上に空芯コイル1がより安定して載るようになる。
【0022】
また、図5に示すように、空芯コイル1′′の第1のリード部1b′′と第2のリード部1c′′の途中から先端までの部分を、回路基板50の面と垂直な方向に折り曲げた形状としてもよい。この場合は、回路基板50上に、第1のリード部1b格納用の開口部61aと、第2のリード部1c格納用の開口部61bとを設ける必要がある。そして、第1のリード部1b′′と第2のリード部1c′′とをこれらの開口部に挿入することにより、巻回部1a′′を開口部51に収容する。
【0023】
また、上述した実施の形態では、空芯コイル1を収容する開口部51を穴として構成したが、この形状に限定されるものではない。例えば、開口部51を回路基板50の辺の部分に、切り欠きとして構成してもよい。
【0024】
<3.空芯コイルをテレビジョン受像機のチューナ部に適用した場合の構成例>
続いて、空芯コイル1を、誘導雷サージによる機器破壊防止用のコイルとして使用する場合の例を説明する。誘導雷サージ対策用のコイルは、様々な電子機器で使用されるが、ここではテレビジョン受像機に適用した例をあげる。
【0025】
図6は、テレビジョン受像機のチューナ部100の構成例を示す図である。チューナ部100は、ハイパスフィルタ110(以下、「HPF110」と称する)と、高周波回路部120と、復調部130とを備える。HPF110は、アンテナ入力端子101から入力されたRF(Radio Frequency)信号のうち、不要な帯域外の周波数の信号を除去して高周波回路部120に出力する。HPF110の構成の詳細については、次の図7を参照して後述する。
【0026】
高周波回路部120は、図示せぬAGC(Automatic Gain Control)や局部発振器、周波数変換器等を備え、HPF110によって不要な周波数が除去された信号を増幅し、受信チャンネルと同じ周波数の信号を選択して出力する。復調部130は、高周波回路部120から出力された信号を、図示せぬ送信機から送信された信号と同じ変調方式を用いて復調する。
【0027】
図7は、HPF110の構成例を示すブロック図である。アンテナ10はコンデンサ111を介して高周波回路部120(図6参照)に接続されている。コンデンサ111の信号が入力される側の端部はインダクタとしての空芯コイル1を介して接地し、もう一方の端部は、さらに別のインダクタ112を介して接地している。そして、インダクタとしての空芯コイル1と、コンデンサ111と、インダクタ112とがHPFを構成して特定の周波数の信号を除去する。
【0028】
HPF110のカットオフ周波数は、例えば、現在日本で放送されている地上波デジタルテレビ放送を受信したい場合には、90MHz以下とする必要がある。現在地上波テレビ放送のチャンネル周波数として使用されている周波数のうち、もっとも低い周波数の中心周波数は93MHzであるためである。HPF110のカットオフ周波数を90MHz以下にするには、空芯コイル1とインダクタ112のインダクタンスは160nH以上として十分大きいインピーダンスとすることが経験的に求められる。
【0029】
HPF110のインダクタとしての空芯コイル1は、アンテナ10の入力端子に直接接続させ、もう一方の端部を接地させることで、誘導雷による破壊防止用のコイルとしても機能する。誘導雷サージ電圧は±9kV程度と非常に高いため、誘導雷破壊防止用のコイルには空芯コイルを使用することが好ましい。回路基板上に形成するパターンインダクタや、チップ部品のチップインダクタは、耐電性が低いため、±9kVもの高い電圧が印加された場合には溶断してしまうためである。ただし、空芯コイルを使用する場合であっても、誘導雷サージ電圧に対する耐性を持たせるためには、導線の線径をある程度太くする必要がある。
【0030】
図8は、空芯コイル1を、これらの要求をすべて満足するように構成した場合の構成図である。図8(a)は、空芯コイル1の上面図であり、図8(b)は側面図である。図8(a)に示すように、空芯コイル1の導線の線径wdは0.35mmとし、巻数を17回とする。これにより、第1のリード部1bと第2のリード部1cのそれぞれの中心を通る線の間を結んだ長さdは、7.1mmとなる。なお、空芯コイル1の巻数は、空芯コイル1を吸着ノズル200(図3参照)で真空吸着した際に空芯コイル1が撓まない程度の巻数として算出したものであり、吸着ノズル200のサイズや真空吸着の強さ等に応じた任意の値が設定されるものとする。
【0031】
空芯コイル1の巻数を17回とし、コイルの巻き線の巻き方向の長さdを7.1mmとすると、インダクタンスを前述した160nH以上とするためには、空芯コイル1の外径odを3mm程度に設定する必要がある。本実施の形態では、図8(b)に示すように、空芯コイル1の外径odは2.7mmとしている。第1のリード部1bおよび第2のリード部1cにおいては、いずれも導線の被覆を剥がして裸線を露出させてあり、半田メッキを施してある。第1のリード部1bおよび第2のリード部1cの長さldは、それぞれ1.7mmとしてある。なお、図8に示した各値(空芯コイル1の設計値)は一例であり、これらの値に限定されるものではない。
【0032】
図9は、このように構成された空芯コイル1が、コイル実装部としての回路基板50の開口部51にはめ込まれた状態を示す上面図である。なお、図9には、回路基板50のうち、空芯コイル1が収容された開口部51とその周辺部のみを図示してある。図9において、プリント基板として構成された回路基板50上で銅箔が張られている部分は斜線で示してあり、レジストあるいは絶縁皮膜が剥がされた導電部はドット模様で示してある。
【0033】
図9に示す回路基板50の上方には、アンテナ入力端子101(図6参照)を構成するコネクタ部品の中心導体接続部がはめ込まれる、スルーホール52が形成されている。その外周部分には、導電部53が形成されている。スルーホール52の左側には、グランド電位接続用のスルーホール54aとスルーホール54bが設けられている。スルーホール54aの右側には、HPF110を構成するコンデンサ111(図7参照)用の導電部55が設けられている。
【0034】
アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品が接続されるスルーホール52の脇には、空芯コイル1を収容するための開口部51が形成されている。開口部51の左下方には、第1の導電部としての導電部56aが設けられており、その対角線上の右上方には、第2の導電部としての導電部56bを設けている。開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されていることで、空芯コイル1の第1のリード部1bが導電部56aに接触し、第2のリード部1cが導電部56bに接触している。第1のリード部1bと導電部56a、および、第2のリード部1cと導電部56bとは、半田付けによって電気的に接続される。
【0035】
図10は、空芯コイル1および回路基板50が装着されたチューナ部100の構成例を示す断面図である。回路基板50の上部と下部には、それぞれカバー41とカバー42とが取り付けられている。上側のカバー41にはアンテナ入力端子101を取り付けてあり、アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品の背面側から出ている中心導体接続部101aは、回路基板50のスルーホール52に挿入される。アンテナ入力端子101を構成するコネクタ部品の背面側から出ている接地用接続部101bは、カバー42に直接接続している。
【0036】
スルーホール52のすぐ右側には、開口部51が設けられており、開口部51には、空芯コイル1の巻回部1aが収容されている。そして、開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容されることにより、空芯コイル1の第1のリード部1bと第2のリード部1cとが、回路基板50の導電部56aと導電部56b(図9参照)に接触する。
【0037】
空芯コイル1が回路基板50に対してこのように実装されることで、回路基板50の厚み方向に突出する空芯コイル1の高さが、空芯コイル1の外径odから回路基板50の厚みを引いた高さとなる。これにより、上側のカバー41と下側のカバー42とを、回路基板50により近い位置に配置できるようになる。すなわち、チューナ部100の厚さをより薄くすることが可能となる。これにより、チューナ部100が搭載されるテレビジョン受像機自体の厚さも、チューナ部100が薄くなった分だけ薄くすることができる。
【0038】
また、空芯コイル1を第1のリード部1bと第2のリード部1cとが略同一平面上で互いに異なる方向に張り出す形状に構成し、空芯コイル1を収容する開口部51を回路基板50上に設けることで、空芯コイル1を回路基板50に自動実装できるようになる。すなわち、回路基板50の開口部51に空芯コイル1の巻回部1aが収容される際に、第1のリード部1bおよび第2のリード部1cが回路基板50の面上に接触して回路基板50上に留まるようになる。つまり、真空吸着の解除後に空芯コイル1が回路基板50の下に落下してしまうことがなくなる。よって、吸着ノズル200(図3参照)で真空吸着を行う自動実装機による、回路基板50への空芯コイル1の自動実装が可能となる。これにより、従来のように、人の手を介して空芯コイルを回路基板に実装する場合や、専用の特殊な実装機を用意する場合と比較して、部品製造にかかる時間や手間を大幅に短縮できる。
【0039】
ここで、従来の構成として図11に示したように、空芯コイル2の第1のリード部2bと第2のリード部2cとを、巻回部2aの外側に向けて同一方向で、互いに略平行となるように延ばして形成した場合を考えてみる。このように構成された空芯コイル2を、真空吸着によって回路基板3上に自動実装するには、真空吸着された状態で、空芯コイル2の第1のリード部2bと第2のリード部2cとが回路基板3の面に対して垂直となっていなければならない。空芯コイル2のこのような姿勢を可能とするためには、空芯コイル2における吸着ノズル200による吸着箇所を平坦にするか、平坦な形状の素材を空芯コイル2に接着する必要がある。しかし、このような加工を行うことで、部品の製造工程が増えるだけでなく、製造コストも増大してしまう。
【0040】
上述した実施の形態によれば、上述したように空芯コイル1が構成されて、その巻回部1aが回路基板50の開口部51に実装されるため、製造工程や製造コストが増加することがない。
【0041】
また、上述した実施の形態のように、空芯コイル1をチューナ部100に搭載する場合には、空芯コイル1に、帯域外不要波減衰用のHPF110を構成するインダクタの役割と、誘導雷サージによる機器破壊防止素子の役割とを兼ねさせることができる。したがって、部品点数を削減することが可能となる。
【0042】
さらに、帯域外不要波減衰用のHPF110を構成するインダクタとして、Q値の高い空芯コイル1を用いることで、入力信号の高周波回路部分の減衰量を低く抑えることが可能となる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、誘導雷サージによる機器破壊防止用素子としての空芯コイル1を、テレビジョン受像機のチューナ部100に適用した例をあげたが、これに限定されるものではない。屋外から引き込まれた配線が接続される電子機器で、薄型化が望まれている機器であれば、どのような電子機器に適用してもよい。例えば、モデム、パーソナルコンピュータ、電話機、インターホン等の電子機器に適用が可能である。
【0044】
また、上述した実施の形態では、空芯コイル1を、誘導雷サージによる機器破壊防止用の素子として使用する例をあげたが、空芯コイル1の用途はこれに限定されるものではない。高周波の共振や高周波の抑止用に使用されるコイルに適用してもよい。
【0045】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルと、
前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部とを備えた回路基板。
(2)前記開口部は、その長辺の長さは、前記空芯コイルの巻回部の巻き線の巻き方向の長さ以上であり、その短辺の長さは、前記巻回部の外径よりも長く、かつ、前記巻回部の外径に前記第1のリード部の長さと前記第2のリード部の長さとを足した長さよりも短い(1)に記載の回路基板。
(3)前記回路基板は電子機器に装着され、前記空芯コイルの前記第1のリード部と前記第2のリード部のうちいずれか一方は、前記電子機器に外部から入力される入力信号の入力端子に接続されるとともに、他方は接地される(1)または(2)に記載の回路基板。
(4)前記入力端子はアンテナの入力端子であり、前記空芯コイルは、前記入力端子に接続される(1)〜(3)のいずれかに記載の回路基板。
(5)前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記巻回部の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げられている(1)〜(4)のいずれかに記載の空芯コイルが実装された回路基板。
(6)前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記コイル実装部平面に対して垂直の方向に略90°折り曲げられている(1)〜(4)のいずれかに記載の空芯コイルが実装された回路基板。
(7)前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルの前記巻回部を、前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部に収容することと、
前記第1のリード部と前記第1の導電部および、前記第2のリード部と前記第2の導電部とを電気的に接続することとを含む空芯コイルの実装方法。
【符号の説明】
【0046】
1、1′、1′′…空芯コイル、1a,1a′,1a′′…巻回部、1b,1b′,1b′′…第1のリード部、1c,1c′,1c′′…第2のリード部、2…空芯コイル、2a…巻回部、2b…第1のリード部、2c…第2のリード部、3…回路基板、3a,3b…開口部、10…アンテナ、41,42…カバー、50…回路基板、51…開口部、52…スルーホール、53…導電部、54a,54b…スルーホール、55,56a,56b…導電部、61a,61b…穴、100…チューナ部、101…アンテナ入力端子、110…ハイパスフィルタ、111…コンデンサ、112…インダクタ、120…高周波回路部、130…復調部、200…吸着ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルと、
前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部とを備えた
回路基板。
【請求項2】
前記開口部は、その長辺の長さは、前記空芯コイルの巻回部の巻き線の巻き方向の長さ以上であり、その短辺の長さは、前記巻回部の外径よりも長く、かつ、前記巻回部の外径に前記第1のリード部の長さと前記第2のリード部の長さとを足した長さよりも短い
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記回路基板は電子機器に装着され、前記空芯コイルの前記第1のリード部と前記第2のリード部のうちいずれか一方は、前記電子機器に外部から入力される入力信号の入力端子に接続されるとともに、他方は接地される
請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記入力端子はアンテナの入力端子である
請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記巻回部の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げられている
請求項2に記載の回路基板。
【請求項6】
前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記コイル実装部平面に対して垂直の方向に略90°折り曲げられている
請求項2に記載の回路基板。
【請求項7】
巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルの前記巻回部を、前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部と接触する第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部と接触する第2の導電部とを有するコイル実装部に収容することと、
前記第1のリード部と前記第1の導電部および、前記第2のリード部と前記第2の導電部とを電気的に接続することとを含む
空芯コイルの実装方法。
【請求項1】
導線が螺旋状に巻回されてなる巻回部と、前記巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルと、
前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部が接触される第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部が接触される第2の導電部とを有するコイル実装部とを備えた
回路基板。
【請求項2】
前記開口部は、その長辺の長さは、前記空芯コイルの巻回部の巻き線の巻き方向の長さ以上であり、その短辺の長さは、前記巻回部の外径よりも長く、かつ、前記巻回部の外径に前記第1のリード部の長さと前記第2のリード部の長さとを足した長さよりも短い
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記回路基板は電子機器に装着され、前記空芯コイルの前記第1のリード部と前記第2のリード部のうちいずれか一方は、前記電子機器に外部から入力される入力信号の入力端子に接続されるとともに、他方は接地される
請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記入力端子はアンテナの入力端子である
請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記巻回部の巻き線の巻き方向と平行な方向に略90°折り曲げられている
請求項2に記載の回路基板。
【請求項6】
前記第1のリード部と前記第2のリード部は、前記コイル実装部平面に対して垂直の方向に略90°折り曲げられている
請求項2に記載の回路基板。
【請求項7】
巻回部の一方の端部から延びる第1のリード部と、前記巻回部の他方の端部から延びる第2のリード部とを有し、前記第1のリード部と前記第2のリード部とが略同一平面上で互いに異なる方向に延ばされてなる空芯コイルの前記巻回部を、前記巻回部を収容する開口部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第1のリード部と接触する第1の導電部と、前記開口部の周辺に設けられて前記第2のリード部と接触する第2の導電部とを有するコイル実装部に収容することと、
前記第1のリード部と前記第1の導電部および、前記第2のリード部と前記第2の導電部とを電気的に接続することとを含む
空芯コイルの実装方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−26607(P2013−26607A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163244(P2011−163244)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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