説明

回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置

【課題】本発明は、瞬時引外し電流設定値を高く調整した場合においても、すなわち固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を広くした場合においても、瞬時引外し動作の遅延発生を回避できる回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置では、各極の固定鉄心71は固定鉄心支持部材70に軸支されている。連動軸体77には、連動軸体77の回動に応じて各極の前記固定鉄心71に対して接離する方向に変位される腕部77cが設けられている。固定鉄心71と固定鉄心支持部材70との間には、固定鉄心71を腕部77cに押付ける方向に固定鉄心71を付勢する固定鉄心復帰ばね72が架設されている。固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gは、連動軸体77の回動に連動して各極の固定鉄心71が回動されることで調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置に関し、特に瞬時引外し用電磁石装置の固定鉄心と該固定鉄心に対向する可動鉄片との間の空隙を変更して瞬時引外し電流設定値を調整するようにしたものの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の瞬時引外し用電磁石装置としては、例えば下記の特許文献1等に示された構成を挙げることができる。すなわち、従来の瞬時引外し用電磁石装置では、回路遮断機の主回路に磁気的に接続された固定鉄心と、この固定鉄心に対向するように配置された可動鉄片とが設けられている。可動鉄片の近傍には、主回路の固定接触子と可動接触子との接続状態のラッチを解除するためのトリップ部材が配置されている。このような構成において、所定の瞬時引外し電流設定値を超える電流(過電流)が主回路に流れると、過電流により固定鉄心が励磁されて、可動鉄片が固定鉄心に引き付けられる。可動鉄片が固定鉄心に引き付けられると、可動鉄片の変位によりトリップ部材が回動されて、主回路の固定接触子と可動接触子との接続状態のラッチが解除される(回路遮断器のトリップ動作が行われる)。
【0003】
上述のような従来の瞬時引外し用電磁石装置では、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を調節できるように、固定鉄心に対して近づく方向及び離れる方向に変位可能に可動鉄片が設けられている。そして、可動鉄片が変位されて、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅が調節されることで、瞬時引外し電流設定値の大きさが調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−22925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来構成では、可動鉄片を変位させることにより固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を調節するように構成しているので、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を変更した際に、可動鉄片とトリップ部材との間の距離も変更される。このため、瞬時引外し電流設定値を高くするために固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を広げると、可動鉄片とトリップ部材との間の距離も広くなる。すなわち、上記のような従来構成では、瞬時引外し電流設定値を高くすると、可動鉄片がトリップ部材を押圧するまでに必要な時間が長くなり、瞬時引外し装置による開路動作に遅延が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、瞬時引外し電流設定値を高く調整した場合においても、すなわち固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を広くした場合においても、瞬時引外し動作の遅延発生を回避できる回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置は、固定鉄心と該固定鉄心に対向する可動鉄片とを有し、回路遮断器の主回路に所定の瞬時引外し電流設定値を超えた電流が流れた際に、固定鉄心と可動鉄片とが互いに引き付け合うことで、可動鉄片の変位により回路遮断器の各極共通のトリップ部材を回動させて、回路遮断器のトリップ動作を行う瞬時引外し用電磁石装置であって、各極の固定鉄心を軸支する固定鉄心支持部材と、固定鉄心の回動軸と平行な軸回りに回動可能に設けられた連動軸体と、連動軸体に設けられ、連動軸体の回動に応じて各極の固定鉄心に対して接離する方向に変位される腕部と、固定鉄心と固定鉄心支持部材との間に架設され、固定鉄心を腕部に押付ける方向に固定鉄心を付勢する固定鉄心復帰ばねとを備え、連動軸体の回動に連動して各極の固定鉄心が回動されることで、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅が調整されるように構成されている。
【0008】
また、固定鉄心及び固定鉄心支持部材のいずれか一方には段部が設けられ、固定鉄心及び固定鉄心支持部材の他方には段部に当接される突片が設けられ、固定鉄心の可動鉄片に近づく方向の回動は、突片の段部への当接により規制される。
また、利用者により回転操作される操作ノブ、及び調節回動軸を介して操作ノブに連結された調整カムを有する調整操作部材をさらに備え、調節回動軸の延在方向に沿う調整カムの端面には、第1当接位置、調節回動軸の延在方向に関して第1当接位置と異なる位置に配置された第2当接位置、及び第1当接位置と第2当接位置とを連続的に接続する接続当接位置が設けられ、連動軸体には、調整カムの端面に当接されるカム突起が設けられ、利用者による操作ノブの回転操作に応じて、調整カムの端面に対するカム突起の当接位置が変更されることで、連動軸体が回動されて、空隙幅が調整される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置では、連動軸体の回動に連動して各極の固定鉄心が回動されることで、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅が調整されるように構成されているので、固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を調節する際に、可動鉄片とトリップ部材との間の距離が変更されることを防止できる。これにより、瞬時引外し電流設定値を高く調整した場合においても、すなわち固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅を広くした場合においても、瞬時引外し動作の遅延発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態による瞬時引外し用電磁石装置を含む回路遮断器の側断面図である。
【図2】図1に示す回路遮断器の一部破断平面図である。
【図3】図1の瞬時引外し用電磁石装置を示す斜視図である。
【図4】図3の固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅が最も小さく設定されたときの瞬時引外し用電磁石装置を示す側面図である。
【図5】図3の固定鉄心と可動鉄片との間の空隙幅が最も大きく設定されたときの瞬時引外し用電磁石装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態による瞬時引外し用電磁石装置7を含む回路遮断器の側断面図であり、図2は、図1に示す回路遮断器の一部破断平面図である。図1及び図2に示すように、モールドベース1とモールドカバー2とから構成された回路遮断器の閉鎖外被の内部には、電源側端子3、負荷側端子4、開閉機構5、消弧装置6、及び瞬時引外し用電磁石装置7が設けられている。電源側端子3には、電源からの電力線が接続され、負荷側端子4には、負荷からの電力線が接続される。図2に示すように、電源側端子3及び負荷側端子4は、R,S,Tの三極用に3つずつ設けられている。
【0012】
開閉機構5は、電源側端子3と負荷側端子4との間に介在されるものであり、電源側端子3と負荷側端子4との間の接続を開閉するものである。この開閉機構5には、固定接触子50、可動接触子51、可撓接続線52、主電流導体53、操作ハンドル54、及びトグルリンク機構55が設けられている。
【0013】
固定接触子50は、電源側端子3に接続された導体であり、モールドベース1に固定されている。可動接触子51は、軸部51aを中心に回動可能に設けられた略L字状の導体である。可動接触子51の先端部51bは、可動接触子51の回動動作に応じて、固定接触子50に対して接離される。可撓接続線52は、可撓性を有するように複数本の線状導体が束ねられたものであり、可動接触子51の後端部51cと主電流導体53との間を接続するものである。主電流導体53は、断面クランク状に成形された板状導体であり、可撓接続線52が接続された第1端部53a、モールドベース1に固定された基部53b、及び基部53bからモールドカバー2側に向かって延出された第2端部53cから構成されている。主電流導体53の第2端部53cは、負荷側端子4から延びる延長端部4aに接合されている。すなわち、電源から負荷へと電力を伝える回路遮断器の主回路が、電源側端子3、負荷側端子4、固定接触子50、可動接触子51、可撓接続線52、及び主電流導体53によって構成されている。
【0014】
操作ハンドル54は、先端がモールドカバー2の上面から突出するように設けられたものであり、利用者によって操作されるものである。トグルリンク機構55は、例えば特開2000−67729号公報等に開示されているように、操作ハンドル54と可動接触子51との間を作動的に連結するリンク機構である。すなわち、操作ハンドル54の操作は、トグルリンク機構55を介して可動接触子51に伝えられる。
【0015】
このトグルリンク機構55には、トリップレバー550、フック体551、及びトリップ部材552が含まれている。トリップレバー550は、一端がフック体551に設けられた係合部551aと釈放自在に係合される。このトリップレバー550は可動接触子51に連結されており、トリップレバー550の一端が係合部551aに係合されることで、固定接触子50と可動接触子51との間の接続状態がラッチされる。トリップ部材552は、トリップレバー550の近傍に配置されており、後述の瞬時引外し用電磁石装置7の動作に応じて、トリップレバー550とフック体551との間の係合を解除するものである。すなわち、トリップ部材552は、固定接触子50と可動接触子51との間の接続状態のラッチを解除するものである。
【0016】
消弧装置6は、周知のように、主回路に電流が流れている状態で可動接触子51が固定接触子50から引き外された際に、固定接触子50と可動接触子51との間に発生する電弧を消すためのものである。瞬時引外し用電磁石装置7については、以下詳細に説明する。
【0017】
次に、図3は、図1の瞬時引外し用電磁石装置7を示す斜視図である。また、図4は、図3の固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gが最も小さく設定されたときの瞬時引外し用電磁石装置7を示す側面図であり、図5は、図3の固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gが最も大きく設定されたときの瞬時引外し用電磁石装置7を示す側面図である。図3に示すように、瞬時引外し用電磁石装置7には、固定鉄心支持部材70、固定鉄心71、固定鉄心付勢ばね72、可動鉄片支持部材73、可動鉄片74、可動鉄片復帰ばね75、調整操作部材76、連動軸体77、及び微調節部材78が設けられている。
【0018】
固定鉄心支持部材70は、各極の負荷側端子4の近傍に配置された部材であり、モールドベース1の底壁に固着された底壁部70aと、底壁部70aから立設された一対の側壁部70bとを有している。側壁部70bの上部には、後述の固定子突片71dが当接される段部70cが形成されている。
【0019】
固定鉄心71は、一対のティース部71aと、ティース部71a間を連結する鉄心基部71bとを有する平面コ字状の磁性体である。この固定鉄心71は、各極の負荷側端子4の延長端部4a及び主電流導体53(図1参照)の第2端部53cの近傍に配置され、かつ、これら延長端部4a及び第2端部53cがティース部71a間に位置するように配置されている。鉄心基部71bの下端には、ティース部71aの離間方向に沿って延在する鉄心回動軸71cが設けられており、鉄心回動軸71cは固定鉄心支持部材70の側壁部70bに設けられた支持孔に挿通されている。すなわち、固定鉄心71は、鉄心回動軸71cを中心に固定鉄心支持部材70に回動自在に支持されている。鉄心基部71bの側部には、ティース部71aの離間方向に沿って各ティース部71aよりも外方に延出された固定子突片71dが設けられている。この固定子突片71dは、固定鉄心71の回動に応じて固定鉄心支持部材70の段部70cに当接されるものであり、段部70cとともに、固定鉄心71の可動鉄片74に近づく方向への回動を規制するストッパを構成している。
【0020】
固定鉄心付勢ばね72は、固定鉄心71の鉄心基部71bに設けられた折曲部71eと、固定鉄心支持部材70の底壁部70aとの間に架設された引きバネである。この固定鉄心付勢ばね72は、後述の連動軸体77の腕部77cに固定鉄心71を押付ける方向に、固定鉄心71を付勢するものである。なお、固定鉄心付勢ばね72の架設の状態は、図1にも示されている。
【0021】
可動鉄片支持部材73は、モールドベース1の底壁に固着されたものであり、鉄片回動軸74aを中心に可動鉄片74を回動自在に支持している。可動鉄片74は、各極の固定鉄心71に対向して配置された磁性体である。この可動鉄片74には、下部に鉄片回動軸74aが設けられるとともに固定鉄心71に対向して配置された鉄片基部74bと、鉄片基部74bの上端から斜め後方に向かって延出された作動片74cとが設けられている。なお、作動片74cが延出される斜め後方とは、モールドベース1の底壁からモールドカバー2(図1参照)側に向かうにつれて、固定鉄心71から離れる方向である。作動片74cは、トリップ部材552(図4及び図5参照)に対向するように配置されている。可動鉄片復帰ばね75は、可動鉄片支持部材73と可動鉄片74との間に架設された捩りばねであり、固定鉄心71から可動鉄片74を引き離す方向に可動鉄片74を付勢するものである。
【0022】
調整操作部材76は、操作ノブ76a、調節回動軸76b、調整カム76cを有している。操作ノブ76aは、調節回動軸76bの上端に設けられたものであり、モールドカバー2(図1参照)の上面から露出されたものである。調節回動軸76bは、操作ノブ76aと調整カム76cとを連結するものであり、利用者による操作ノブ76aの回転操作を調整カム76cに伝えるものである。調節回動軸76bは、固定鉄心71の鉄心回動軸71cと直交する方向に延在されている。
【0023】
調整カム76cは、調節回動軸76bが中心に配置された円筒部材である。この調整カム76cの上面(調節回動軸76bの延在方向に沿う調整カムの端面)には、図4及び図5に示すように、第1当接位置76d、第2当接位置76e、及び接続当接位置76fが設けられている。第1当接位置76d及び第2当接位置76eは平面により構成されており、調整カム76cの周方向に沿って互いに離間して配置されるとともに、調節回動軸76bの延在方向に関して互いに異なる位置に配置されている。接続当接位置76fは、テーパ面により構成されており、調整カム76cの周方向及び調節回動軸76bの延在方向に沿って第1当接位置76dと第2当接位置76eとを接続する位置である。なお、接続当接位置76fは、階段状の端面により形成されてもよい。
【0024】
連動軸体77は、図3〜図5に示すように、軸体77a、カム突起77b、3つの腕部77c、及びカム突起付勢ばね77dを有するものであり、全体として絶縁部材により構成されている。軸体77aは、図3に示すように、固定鉄心71の鉄心回動軸71cと平行な方向に沿って延在されたものであり、図示しない軸保持体によって鉄心回動軸71cと平行な方向を軸として回動自在に支持されている。カム突起77bは、図4及び図5に示すように軸体77aから調整操作部材76に向かって延出されており、調整カム76cの上面に当接されている。すなわち、利用者による操作ノブ76aの回転操作に応じて、調整カム76cの上面におけるカム突起77bの当接位置が、第1当接位置76d、接続当接位置76f、及び第2当接位置76eの中で変更されることで、軸体77aを中心に連動軸体77が回動される。腕部77cは、図4及び図5に示すように軸体77aから各極の固定鉄心71に向かって延出されており、固定鉄心71の鉄心基部71bに当接されている。この腕部77cは、連動軸体77の回動に応じて各極の固定鉄心71に対して接離する方向に変位される。カム突起付勢ばね77dは、軸体77aの延在方向に沿う略中央に配置された腕部77cとカム突起77bの後端79との間に架設された引張ばねであり、カム突起77bを調整カム76cの上面から遠ざかる方向にカム突起77bを付勢するものである。微調節部材78は、連動軸体77に装着され、先端にカム突起77bを有し、後端に調整ねじ78aが設けられた、固定鉄心71の位置を微調整する部材である。
【0025】
次に、瞬時引外し用電磁石装置7の動作について説明する。図4又は図5の状態で、回路遮断器の主回路、より詳細には各極の負荷側端子4の延長端部4a及び主電流導体53の第2端部53cに、所定の瞬時引外し電流設定値を超えた電流(過電流)が流れると、この過電流によって発生する磁束により固定鉄心71が励磁される。このとき、固定鉄心付勢ばね72及び可動鉄片復帰ばね75の力に抗して、固定鉄心71と可動鉄片74とが互いに引き付け合う。
【0026】
固定鉄心71は、固定子突片71dが固定鉄心支持部材70の段部70cに当接されるまで、可動鉄片74に向かって回動される。可動鉄片74が固定鉄心71に十分に引き付けられると、トリップ部材552が可動鉄片74の作動片74cに押圧されることで、図中反時計回りにトリップ部材552が回動される。このとき、トリップ部材552の係合爪とフック体551の係合突起片との係合、並びにフック体551の係合部551aとトリップレバー550との係合が順次釈放されて、固定接触子50と可動接触子51との間の接続状態のラッチが解除される。すなわち、主回路に過電流が流れた場合に、上述の瞬時引外し用電磁石装置7のトリップ動作に応じて、可動接触子51が固定接触子50から引き外される(回路遮断器のトリップ動作が行われる)。
【0027】
ここで、固定鉄心71と可動鉄片74との間の磁気結合度は、図4及び図5においてgで示す固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅の大きさとの間に反比例の関係を有する。すなわち、固定鉄心付勢ばね72及び可動鉄片復帰ばね75の力に抗して、固定鉄心71と可動鉄片74とが互いに引き付け合うために必要な電流値(瞬時引外し電流設定値)は、固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gを変更することで、調整できる。
【0028】
上述のように、固定鉄心71は、鉄心回動軸71cを中心に固定鉄心支持部材70に回動自在に支持されている。また、固定鉄心71は、連動軸体77の腕部77cに押付けられるように固定鉄心付勢ばね72によって付勢されている。さらに、利用者による操作ノブ76aの回転操作に応じて連動軸体77が回動されることで、腕部77cが各極の固定鉄心71に対して接離する方向に変位される。すなわち、図4及び図5に示すように、操作ノブ76aが回転操作されて連動軸体77が回動されることで、各極の固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gが同時に調節され得る。なお、固定子突片71d及び段部70cは、図4に示すように固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gが最も小さく設定されたときに、互いに当接するように配置されている。
【0029】
一方で、空隙幅gの調節時には、可動鉄片74は全く変位されない。すなわち、図4及び図5に示すように空隙幅gを調節しても、可動鉄片74の作動片74cとトリップ部材552との間の空隙幅dは変更されない。
【0030】
このような回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置7では、連動軸体77の回動に連動して各極の固定鉄心71が回動されることで、固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gが調整されるように構成されているので、固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅gを調節する際に、可動鉄片74とトリップ部材552との間の距離が変更されることを防止できる。これにより、瞬時引外し電流設定値を高く調整した場合においても、すなわち固定鉄心71と可動鉄片74との間の空隙幅を広くした場合においても、瞬時引外し動作の遅延発生を回避できる。
【0031】
また、固定鉄心支持部材70に段部70cが設けられ、固定鉄心71に固定子突片71dが設けられ、固定鉄心71の可動鉄片74に近づく方向への回動が、固定子突片71dの段部70cへの当接により規制されるので、可動鉄片74の作動片74cがトリップ部材552に当接することを阻害するまで固定鉄心71が可動鉄片74に近づく方向に回動されることを防止でき、動作の信頼性を向上できる。
【0032】
さらに、利用者による操作ノブ76aの回転操作に応じて、調整カム76cの端面に対するカム突起77bの当接位置が、第1当接位置76d、第2当接位置76e、及び接続当接位置76fの中で変更されることで、連動軸体77が回動されて、空隙幅gが調整されるので、簡単な操作で各極の空隙幅gをより均一に調節でき、利便性を向上できる。
【0033】
なお、実施の形態では、固定鉄心支持部材70に段部70cが設けられ、固定鉄心71に固定子突片71dが設けられるように説明したが、固定鉄心支持部材に突片が設けられ、固定鉄心に段部が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0034】
7 瞬時引外し用電磁石装置
70 固定鉄心支持部材
70c 段部
71 固定鉄心
71d 固定子突片(突片)
74 可動鉄片
76 調整操作部材
76a 操作ノブ
76b 調節回動軸
76c 調整カム
76d 第1当接位置
76e 第2当接位置
76f 接続当接位置
77 連動軸体
77b カム突起
77c 腕部
552 トリップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定鉄心(71)と該固定鉄心(71)に対向する可動鉄片(74)とを有し、回路遮断器の主回路に所定の瞬時引外し電流設定値を超えた電流が流れた際に、前記固定鉄心(71)と前記可動鉄片(74)とが互いに引き付け合うことで、前記可動鉄片(74)の変位により回路遮断器の各極共通のトリップ部材(552)を回動させて、回路遮断器のトリップ動作を行う瞬時引外し用電磁石装置(7)であって、
各極の前記固定鉄心(71)を軸支する固定鉄心支持部材(70)と、
前記固定鉄心(71)の回動軸と平行な軸回りに回動可能に設けられた連動軸体(77)と、
前記連動軸体(77)に設けられ、前記連動軸体(77)の回動に応じて各極の前記固定鉄心(71)に対して接離する方向に変位される腕部(77c)と、
前記固定鉄心(71)と前記固定鉄心支持部材(70)との間に架設され、前記固定鉄心(71)を前記腕部(77c)に押付ける方向に前記固定鉄心(71)を付勢する固定鉄心復帰ばね(72)と
を備え、
前記連動軸体(77)の回動に連動して各極の前記固定鉄心(71)が回動されることで、前記固定鉄心(71)と前記可動鉄片(74)との間の空隙幅(g)が調整されるように構成されていることを特徴とする回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置。
【請求項2】
前記固定鉄心(71)及び前記固定鉄心支持部材(70)のいずれか一方には段部(70c)が設けられ、前記固定鉄心(71)及び前記固定鉄心支持部材(70)の他方には前記段部(70c)に当接される突片(71d)が設けられ、前記固定鉄心(71)の前記可動鉄片(74)に近づく方向の回動は、前記突片(71d)の前記段部(70c)への当接により規制されることを特徴とする請求項1記載の回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置。
【請求項3】
利用者により回転操作される操作ノブ(76a)と、調節回動軸(76b)を介して前記操作ノブ(76a)に連結された前記調整カム(76c)とを有する調整操作部材(76)をさらに備え、
前記調節回動軸(76b)の延在方向に沿う前記調整カム(76c)の端面には、第1当接位置(76d)と、前記調整カム(76c)の周方向に沿って前記第1当接位置(76d)から離間して配置されるとともに、前記調節回動軸(76b)の延在方向に関して前記第1当接位置(76d)と異なる位置に配置された第2当接位置(76e)と、前記調整カム(76c)の周方向及び前記調節回動軸(76b)の延在方向に沿って前記第1当接位置(76d)と前記第2当接位置(76e)と間を接続する接続当接位置(76f)が設けられ、
前記連動軸体(77)には、前記調整カム(76c)の前記端面に当接されるカム突起(77b)が設けられ、
利用者による前記操作ノブ(76a)の回転操作に応じて、前記調整カム(76c)の前記端面に対する前記カム突起(77b)の当接位置が変更されることで、前記連動軸体(77)が回動されて、前記空隙幅(g)が調整されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回路遮断器の瞬時引外し用電磁石装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238550(P2011−238550A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111045(P2010−111045)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000180966)寺崎電気産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】