説明

回路遮断器及び回路遮断器のトリップ機構

【課題】コイル、ポットの組み換えを容易に行うことができ、またコイル、ポットの位置決め精度の製品毎のバラつきを抑える。
【解決手段】回路遮断器は、電磁コイル31、アーマチュア32、ヨーク34、ポット35等を構成するトリップ機構30をケース40内部に備えている。ポット35は、電磁コイル31のボビン37の中空軸の軸孔及びヨーク34の貫通孔34Aに挿入されている。また、アーマチュア32がヨーク34の上端側で揺動自在に且つ着脱自在に支持されている。ケース40は、矢印Y方向の反対方向に沿ってヨーク34の底面の一部に当接する第一ヨーク位置決め部材41と、矢印Y方向に直交する方向に沿ってヨーク34の一部に当接する第二ヨーク位置決め部材42と、ポット35の挿入方向(矢印Y方向)に沿ってポット35の頭部35Bの一部に当接するポット位置決め部材43と、を内壁面に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショート(短絡)や電気の使いすぎ(過負荷)等によって電路に過電流が流れた時に電路の電流を遮断する回路遮断器及びこの回路遮断器に備えられたトリップ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ショート(短絡)や電気の使いすぎ(過負荷)等によって電路に過電流が流れた時に電路を遮断するために、配線用遮断器等の回路遮断器(例えば、特許文献1参照。)が用いられている。
【0003】
回路遮断器は、図7に示すように、操作ハンドル101、機構ハンドル102、接触子開閉機構103、トリップ機構104等から構成され、可動接触子105と固定接触子106との間に過電流が流れる際に可動接触子105を固定接触子106から退避させて電流を遮断する。操作ハンドル101は、ON位置とOFF位置との間を揺動自在に支持され、機構ハンドル102を介して連結された接触子開閉機構103のアーム108を揺動させることによって可動接触子105を固定接触子106に対して離接させる。
【0004】
接触子開閉機構103は、可動接触子105、可動接触子バネ107及びアーム108等を備えている。可動接触子105は、固定接触子106に当接する閉位置と固定接触子106から離間する開位置との間を移動自在に支持されている。また、可動接触子105は、可動接触子バネ107によって固定接触子106に当接する方向の回転力が付与されている。アーム108は、操作ハンドル101の揺動に伴って揺動し、可動接触子105を閉位置と開位置との間で移動させる。
【0005】
トリップ機構104は、電磁コイル111、ヨーク112及びアーマチュア113等を備えている。トリップ機構104は、可動接触子105と固定接触子106との間に過電流が流れる際に、電磁コイル111に発生した磁力でアーマチュア113を動作させ、閉位置にある可動接触子105を開位置に強制的に退避させる。
【0006】
電磁コイル111は、導線が巻回されたボビン111Aの中空軸の軸孔にポット115挿通されている。ポット115の下方端部は、半田116によってヨーク112に固着されている。ポット115の上方端部は、ボビン111Aの鍔に当接しているので、半田116によってポット115及び電磁コイル111がヨーク112に一体的に支持されている。また、アーマチュア113についても、ヨーク112に固着支持されている。なお、半田付けによってヨーク112に対する電磁コイル111及びポット115の位置決めがされる。ヨーク112は、回路遮断器のケース(筐体)に支持されている。
【0007】
電磁コイル111やポット115は、アーマチュア113を動作させたい過電流の大きさ等に応じて複数種類があり、用途に応じて組み合わせて使用される。
【特許文献1】特開平3−246849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようにポットをヨークに半田付けする構成では、一旦半田付けを行って組み立ててしまうと、電磁コイル、ポットの組み換えを容易に行うことが困難となる。また、半田付けによって電磁コイル及びポットの位置決めがされることになるので、位置決め精度を半田付けを行う作業者の熟練度に頼ることとなり、製品自体の信頼性にバラつきがでてしまう。
【0009】
この発明の目的は、コイル、ポットの位置決め精度の製品毎のバラつきを抑えることができ、またコイル、ポットの組み換えを容易に行うことができる回路遮断器及びこの回路遮断器に備えられたトリップ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の回路遮断器は、トリップ機構と、筐体を備えている。トリップ機構は、中空軸の両端部側に第一鍔、第二鍔が形成されたボビンを有するコイルと、中空軸の軸孔に連通する貫通孔が形成された板部材を有し、筐体の内壁面に着脱自在に支持されたヨークと、第一端部が中空軸の軸孔及び貫通孔を貫通し、第二端部に第一鍔に当接する頭部が形成されたポットと、頭部に対向する延出部を有し、延出部を頭部に当接、離間させるように揺動自在なアーマチュアと、を含んでいる。
【0011】
第二鍔は、ポットの中空軸の軸孔及び貫通孔への挿入方向に沿って板部材に当接する。筐体は、ポットの挿入方向への移動を規制するポット位置決め部材と、ヨークの挿入方向への移動を規制する第一ヨーク位置決め部材と、ヨークの挿入方向と直交する方向への移動を規制する第二ヨーク位置決め部材と、を内壁面に備えている。
【0012】
この構成においては、ポットがボビンの中空軸の軸孔及びヨークの貫通孔に挿通され、コイル、ポット及びヨークが一体となっている。ボビンは、ヨークに挿通されたポットによって挿入方向に直交する方向の位置決めがされる。ポットも、ヨークによって挿入方向に直交する方向の位置決めがされる。ヨークは、第二ヨーク位置決め部材によって挿入方向に直交する方向の位置決めがされる。また、回路遮断器の筐体の内壁面に形成されているポット位置決め部材、第一ヨーク位置決め部材によって、コイル、ポット及びヨークの挿入方向の位置決めがされる。
【0013】
したがって、従来のように半田付けを行わなくても、コイル及びポットの位置決めを行うことができ、全ての製品においてコイル及びポットの位置決め精度を一定に維持でき、品質を一定に保持することができる。
【0014】
また、アーマチュアは、ヨークに着脱自在に支持させることができる。
【0015】
この構成においては、アーマチュアがヨークから着脱自在であり、またコイル、ポットもヨークから着脱自在である。ヨークは、筐体から着脱自在であるので、コイル及びポット等をヨークに組み付けた後であっても他の種類のコイル及びポットに容易に組み替えることができる。
【0016】
この発明の回路遮断器は、第二鍔とヨークとの位置関係を保持する保持部材を備えていてもよい。
【0017】
これによって、第二鍔とヨークとの間の位置関係のバラつきが低減できる。
【0018】
また、保持部材は、ボビンの回転を規制してもよい。
【0019】
これによって、コイルとヨークとの位置関係をより正確に保持することができる。
【0020】
さらに、ポット位置決め部材は、挿入方向に直交する方向への移動を規制することができる。
【0021】
したがって、ポット位置決め部材が挿入方向に加えて挿入方向に直交する方向への移動も規制するので、挿入方向に直交する方向についてヨーク及びポットの位置決めをより確実に行うことができる。
【0022】
この発明の回路遮断器のトリップ機構は、コイルと、ヨークと、ポットと、アーマチュアと、アーマチュアバネと、当接部材と、を備えている。コイルは、中空軸の両端部側に第一鍔、第二鍔が形成されたボビンを有する。ヨークは、中空軸の軸孔に連通する貫通孔が形成された板部材を有し、筐体の内壁面に着脱自在に支持されている。ポットは、第一端部が中空軸の軸孔及び貫通孔を貫通し、第二端部に第一鍔に当接する頭部が形成されている。アーマチュアは、頭部に対向する延出部を有し、延出部を頭部に当接、離間させるように揺動自在にされている。
【0023】
アーマチュアバネは、第一端部がアーマチュアに接続され、第二端部がヨークに接続され、延出部を頭部から離間させる離間方向にアーマチュアを付勢する。当接部材は、延出部が頭部から離間した所定位置にある時に、アーマチュアの離間方向の揺動を規制し、アーマチュア又はヨークに設けられ、ヨーク又はアーマチュアに当接する。また、第二鍔は、ポットの中空軸の軸孔及び貫通孔への挿入方向に沿って板部材に当接する。
【0024】
この構成においては、ポットがボビンの中空軸の軸孔及びヨークの貫通孔に挿通され、コイル、ポット及びヨークが一体となっている。また、ヨークによってアーマチュアが揺動自在に支持されている。アーマチュアは、延出部材が所定位置にある時に当接部材によって揺動が規制される。この当接部材は、アーマチュア又はヨークに設けられてヨーク又はアーマチュアに当接するので、当接時にアーマチュアがヨークによって支持されている箇所とで、アーマチュアをヨークから離間しないように保持することができる。
【0025】
したがって、コイル、ポット、アーマチュアをヨークで一体的に保持することができる。また、コイル、ポットの位置決めを回路遮断器の筐体に形成した位置決め部材を用いて行うことで、位置決めも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明の回路遮断器によれば、従来のように半田付けを行わなくても、コイル及びポットの位置決めを行うことができ、全ての製品においてコイル及びポットの位置決め精度を一定に維持でき、品質を一定に保持することができる。
【0027】
また、ヨークは筐体から着脱自在であり、またコイル、ポット及びアーマチュアもヨークから着脱自在であるので、コイル及びポット等をヨークに組み付けた後であっても他の種類のコイル及びポットに容易に組み替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1(A),(B)は、この発明の実施形態に係る回路遮断器の簡単な構成を示す上面図及びケースの一方を取り外した状態を示す側面図である。図3は、操作ハンドルをOFF位置からON位置に揺動させた際の接触子開閉機構の動作状態を示す説明図である。図3(A)は操作ハンドルがOFF位置にあるときの接触子開閉機構の状態を示し、図3(B)は操作ハンドルがON位置にあるときの接触子開閉機構の状態を示す。
【0029】
回路遮断器1は、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に可動接触子51を固定接触子52から退避させて過電流を遮断する。回路遮断器1は、ハンドル部10、接触子開閉機構20、トリップ機構30、ケース(本発明の筐体に相当する。)40等から構成されている。
【0030】
ハンドル部10は、操作ハンドル11、機構ハンドル12、ハンドルバネ13等から構成され、操作ハンドル11の操作に応じて可動接触子51を固定接触子52に対して離接させる。操作ハンドル11は、図1(B),図3(B)に示す状態のON位置と図3(A)に示すOFF位置との間を揺動自在に支持され、機構ハンドル12を介して連結された接触子開閉機構20を構成するアーム21を揺動させる。これにより、可動接触子51が固定接触子52に対して離接する。機構ハンドル12は、操作ハンドル11の揺動時の回転力により回転する。
【0031】
また、機構ハンドル12は、連結部材15によってアーム21に連結され、操作ハンドル11の揺動時の回転力をアーム21に伝達する。ハンドルバネ13は、機構ハンドル12を操作ハンドル11がON位置からOFF位置に揺動する方向に付勢する。
【0032】
接触子開閉機構20は、操作ハンドル11の揺動時の回転力により可動接触子51を固定接触子52に対して離接させる。また、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に、過電流により駆動するトリップ機構30と連携して操作ハンドル11とアーム21との連結を解除して可動接触子51を固定接触子52から退避させる。
【0033】
接触子開閉機構20は、図2(A),(B),(C)に示すように、可動接触子51、アーム21、機構盤22、引き外しバネ23及び引き外し機構24等から構成されている。なお、図2(A)は、接触子開閉機構20の構成を示す説明図である。図2(B)は、図2(C)で示す矢印Y方向から見た図である。図2(C)は、可動接触子51が開位置にある状態の接触子開閉機構20の状態を示す説明図である。
【0034】
可動接触子51は、図1(B)、図3(B)に示すように、アーム21が有する接触子回転軸21Aによって第一端部51Aが固定接触子52に当接する閉位置と、図2(C)、図3(A)に示すように第一端部51Aが固定接触子52から離間する開位置との間を移動自在に支持されている。また、可動接触子51は、図2(A)に示すように接触子バネ53によって反時計回りに回転するように付勢されている。接触子バネ53は、接触子回転軸21Aに遊嵌している。
【0035】
また、可動接触子51の第二端部51Bは、接触子バネ53による可動接触子51の回転を所定位置で規制するようにアーム21に当接する。第二端部51Bは、当接した状態で接触子バネ53に付与された回転力を利用し、接触子回転軸21Aとで可動接触子51を保持する。これにより、アーム21は、可動接触子51を一体的に保持できる。
【0036】
アーム21は、L字形状を呈し、図2(A)〜(C)に示すように機構盤22に形成されたアーム回転軸26によって屈曲部で回転自在に支持されている。また、アーム21には、係止溝21Bが形成されている。係止溝21Bには、図1(B)に示すように連結部材15の第一端部15Aに設けられた摺動軸16が貫通する。摺動軸16は、係止溝21Bから外れないように、引き外し杆27の第一端部に形成されたカギ爪27Aと係止溝21Bの壁面とで係止(挟持)される。連結部材15は、係止された状態で、機構ハンドル12を介して操作ハンドル11とアーム21とを連結する。また、アーム21は、回転して可動接触子51を閉位置と開位置との間で移動させる。
【0037】
機構盤22は、ケース40に固定され、アーム回転軸26を介してアーム21を回転自在に支持する。引き外しバネ23は、一端がアーム21に接続され、他端が機構盤22に接続されている。引き外しバネ23は、可動接触子51を閉位置から開位置に退避させる方向の回転力をアーム21に付与する。
【0038】
機構盤22には、図2(A)に示すようにアーム当接部材22Aが形成されている。アーム当接部材22Aは、図2(C)に示すように可動接触子51が開位置にある時にアーム21に当接し、可動接触子51が閉位置から開位置に退避する方向のアーム21の回転を規制する。アーム当接部材22Aは、この状態の時に、引き外しバネ23により付与された回転力を利用してアーム回転軸26とでアーム21を保持する。これにより、機構盤22は、アーム21を一体的に保持することができる。したがって、図2(C)に示すような状態で、機構盤22によって接触子開閉機構20全体が一体的に保持され、接触子開閉機構20のみでユニット化することができる。
【0039】
引き外し機構24は、引き外し杆27及び引き外し杆バネ28等から構成され、連結部材15のアーム21への係止、解除を行う。引き外し杆27は、図2(A)に示すように、アーム21の内部に位置し、アーム回転軸26に回転自在に支持されている。また、引き外し杆27は、第一端部にカギ爪27Aが形成されており、第二端部に凹部27Bが形成されている。引き外し杆バネ28は、一端部がアーム21に係止され、他端部が凹部27Bに接続されている。
【0040】
引き外し杆バネ28は、図2(C)に示す状態で反時計回りに回転させる回転力を引き外し杆27に付与する。カギ爪27Aは、この回転力を用いて係止溝21Bの壁面とで摺動軸16を挟持する。これによって、連結部材15とアーム21とが連結される。
【0041】
操作ハンドル11がOFF位置にある時は、図3(A)に示すように可動接触子51が開位置にある。作業者が操作ハンドル11をOFF位置からON位置に揺動させた場合、操作ハンドル11の回転力が機構ハンドル12及び連結部材15を介してアーム21に伝達される。これによって、アーム21は、図3(B)に示すように、引き外しバネ23に付与された回転力に抗して反時計回りに回転する。この回転に伴って、可動接触子51が固定接触子52に当接する閉位置に移動する。
【0042】
回路遮断器1は、端子61,62を備えている。可動接触子51が固定接触子52に当接したON状態にある時、電流は、端子61から固定接触子52、可動接触子51、電磁コイル31を経て端子62に流れる。
【0043】
なお、アーム21は可動接触子51が閉位置に到達しても引き外しバネ23によって時計回りに回転しようとするが、連結部材15がストッパとなって回転を規制する。連結部材15は、可動接触子51が閉位置に到達した状態では、機構ハンドル12に軸支された第二端部15Bが機構ハンドル12を時計回りに回転させる位置にまで移動している。機構ハンドル12は、可動接触子51が閉位置にある状態では時計回りに回らないように、周面に形成された突出部がケース40に当接する。そのため、アーム21は回転しない。
【0044】
一方、作業者が操作ハンドル11を図3(B)に示すON位置から図3(A)に示すOFF位置に揺動させた場合、操作ハンドル11の回転によって機構ハンドル12が反時計回りに回転し、連結部材15の第二端部15Bが機構ハンドル12を反時計回りに回転させる位置にまで移動する。これによって、引き外しバネ23によりアーム21が時計回りに回転する。この時のアーム21の回転力によって機構ハンドル12が反時計回りに回転し、操作ハンドル11もOFF位置に移動する。また、アーム21の時計回りの回転に伴って可動接触子51も図3(A)に示すように開位置に移動する。
【0045】
トリップ機構30は、可動接触子51と固定接触子52との間に過電流が流れようとする際に、過電流を検知して操作ハンドル11と接触子開閉機構20との連結を解除して閉位置にある可動接触子51を開位置に退避させる。トリップ機構30は、電磁コイル31、アーマチュア32、アーマチュアバネ33、ヨーク34、ポット35等から構成されている。
【0046】
電磁コイル31は、過電流が流れた際に発生する磁力によってアーマチュア32の第一端部32Aを引き寄せる。電磁コイル31は、導線36をボビン37に巻回して形成されている。ポット35は、中空円筒形状を呈し、内部にシリコンオイル、バネ及びフランジャを備えた公知のダッシュポット構造を呈している。アーマチュア32の第一端部32Aは、本発明の延出部に相当する。
【0047】
ポット35は、図5に示すように第一端部35Aが挿入方向である矢印Z方向にボビン37の中空軸の軸孔及びヨーク34の底面に形成された貫通孔34Aに貫通している。また、ポット35は、第二端部である頭部35Bが矢印Z方向にボビン37の第一鍔37Aに当接している。電磁コイル31は、ポット35を介してヨーク34に支持されている。ポット35は、電磁コイル31及びヨーク34から着脱自在である。なお、ヨーク34の底面は、本発明の板部材に相当する。
【0048】
ポット35の頭部35Bは、図6に示すように、鍔35BA及び鍔35BAの上面に固着した蓋35BBから構成されている。蓋35BBは、中空内部を遮蔽する。なお、図5はトリップ機構30の構成を示す説明図であり、図6は図1(B)に示す二点鎖線部の拡大図である。
【0049】
アーマチュア32は、L字形状を呈し、屈曲部付近に係止溝39Aが形成されている。係止溝39Aは、ヨーク34の上端部に形成されている係止爪39Bに係止されている。アーマチュア32は、ヨーク34の係止爪39Bに回転自在に支持されている。また、アーマチュア32は、屈曲部に係止解除部材32Cを備えている。係止解除部材32Cは、アーム21に向かう方向に屈曲部から突出し、アーマチュア32が電磁コイル31に引き寄せられた際に引き外し杆27に当接する。これによって、連結部材15とアーム21との連結が解除される。
【0050】
アーマチュアバネ33は、一端部がアーマチュア32のバネ係止爪32Dに接続され、他端部がヨーク34のバネ係止爪34Bに接続されている。アーマチュアバネ33は、図1(B)に示した状態で時計回りに回転させる回転力をアーマチュア32に付与する。したがって、アーマチュア32は、電磁コイル31に引き寄せられていない場合は、アーマチュアバネ33によって第一端部32Aがケース40の内壁面に形成されたカバー部材45に当接し、回転が規制される。
【0051】
ヨーク34は、L字形状を呈し、電磁コイル31、アーマチュア32、アーマチュアバネ33を一体的に保持し、ケース40に着脱自在に固定支持されている。ヨーク34は、ケース40に固定された際、図1(B)に示すように、底面の下面側が第一ヨーク位置決め部材41A,41Bに矢印Z方向に当接する。第一ヨーク位置決め部材41A,41Bは、ケース40の内壁面に形成された突状体であり、ヨーク34の矢印Z方向の移動を規制する。
【0052】
また、ヨーク34は、第二ヨーク位置決め部材42A,42Bに挟持されている。第二ヨーク位置決め部材42A,42Bは、ケース40の内壁面に形成され、ヨーク34の矢印Z方向に直交する方向(水平方向)の移動を規制する。
【0053】
ヨーク34がケース40に固定された際、図6に示すように、ポット35の頭部35Bの鍔35BAの上面の一部がポット位置決め部材43に当接する。ポット位置決め部材43は、ケース40の内壁面に形成された突状体であり、ポット35の矢印Z方向とは反対方向の移動を規制する。
【0054】
したがって、ヨーク34がケース40に固定された状態では、ボビン37の第一鍔37A及び第二鍔37Bは、図1(B)に示すようにポット35の頭部35B及びヨーク34の底面の上面に当接した状態となる。そのため、第一ヨーク位置決め部材41、第二ヨーク位置決め部材42及びポット位置決め部材43によって、電磁コイル31、ヨーク34及びポット35のケース40に対する矢印Z方向の位置決めがされる。
【0055】
なお、ケース40における電磁コイル31は、ポット35がボビン37及びヨーク34に貫通しているので、水平方向について位置決めされている。また、本実施形態の貫通孔34Aに連通する円筒を、ヨーク34の底面の下面側に設けてもよい。これによって、ポット35が挿入された際にポット35を水平方向に対してより安定して保持することができる。
【0056】
本実施形態では、ポット位置決め部材43は、図6に示すようにポット35の矢印Z方向とは反対方向の移動を規制しているが、矢印Z方向に加えて水平方向(矢印X方向)にも頭部35B側面に当接するものであってもよい。これにより、矢印X方向についてより正確に電磁コイル31、ヨーク34及びポット35の位置決めをすることができる。
【0057】
さらに、ボビン37の第二鍔37Bには、図5に示すようにガイド部材37Cが形成されている。ガイド部材37Cは、ヨーク34の底面の側面に当接し、ボビン37の第二鍔37Bがヨーク34の底面の上面に当接する位置が常に一定になるようにガイドする。つまり、ボビン37とヨーク34との位置関係を保持する本発明の保持部材である。また、ガイド部材37Cは、ボビン37が回転しないように規制する。
【0058】
また、ガイド部材37Cは、図5の二点鎖線で囲んで拡大した箇所のように一部がカギ爪形状となっているので、ボビン37がヨーク34から矢印Z方向に離間しないように係止することができ、ポット35の挿入も容易に行うことができる。
【0059】
図4は、過電流発生時の回路遮断器1の動作を示す説明図である。図4(A)は過電流発生時の回路遮断器1の状態を示し、図4(B)は過電流が発生した後に回路遮断器1がトリップした状態を示す。
【0060】
電磁コイル31に過電流が流れると、電磁コイル31がアーマチュア32を吸引する。これによって、図4(A)に示すようにアーマチュア32が回転して係止解除部材32Cが引き外し杆27に当接する。そのため、引き外し杆27が上方に押し上げられ、連結部材15の摺動軸16の係止が解除される。アーム21は、ストッパとなっていた連結部材15との連結が解除されたので、引き外しバネ23によって図4(B)に示すように時計回りに回転する。
【0061】
この時、摺動軸16は、係止溝21Bから外れる。また、操作ハンドル11は、ハンドルバネ13によって機構ハンドル12を介してON位置からOFF位置に揺動するが、機構ハンドル12の周面に設けられたストッパ12Aがアーム21の端部に形成された延出部21Cに当接し、一定位置で機構ハンドル12の回転を規制する。そのため、操作ハンドル11は、OFF位置にまで戻らず、図4(B)に示すようにOFF位置とON位置との中間位置となるトリップ位置で回転が停止する。
【0062】
なお、図4(B)に示すトリップ状態を解除(リセット)するには、図3(A)に示すように一度操作ハンドル11をOFF位置に戻して連結部材15とアーム21とを再度連結させればよい。
【0063】
以上のように、ケース40に位置決め部材41〜43を設けてヨーク34及びポット35を固定することによって、従来のように半田付けを行わなくても、電磁コイル31及びポット35の位置決めを行うことができ、全ての製品において電磁コイル31及びポット35の位置決め精度を一定に維持でき、品質を一定に保持することができる。
【0064】
また、ヨーク34はケース40から着脱自在であり、また電磁コイル31、ポット35びアーマチュア32もヨーク34に固着されていないことから着脱自在であるので、電磁コイル31及びポット35等をヨーク34に組み付けた後であっても他の種類の電磁コイル31及びポット35に容易に組み替えることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ヨーク34をケース40から取り外した状態で、電磁コイル31、アーマチュア32、ポット35をヨーク34で一体的に保持することができる。これは、ヨーク34をケース40から取り外した状態では、アーマチュアバネ33によってアーマチュア32の第二端部32Bがヨーク34の壁面に当接するので、ヨーク34の係止爪39Bと第二端部32Bとでアーマチュア32がヨーク34から離間しないように一体的に保持されるからである。これにより、トリップ機構30をユニットとして在庫を確保することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、この発明の当接部材として第二端部32Bを用いているが、ヨーク34に当接部材を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施形態に係る回路遮断器の簡単な構成を示す上面図及びケースの一方を取り外した状態を示す側面図である。
【図2】同回路遮断器の接触子開閉機構の簡単な構成を示す説明図である。
【図3】同回路遮断器について操作ハンドルをOFF位置からON位置に揺動させた際の動作状態を示す説明図である。
【図4】同回路遮断器の過電流発生時の動作を示す説明図である。
【図5】同回路遮断器のトリップ機構の構成を示す説明図である。
【図6】同回路遮断器のボビン及びポットの取り付け状態を示す説明図である。
【図7】従来の回路遮断器の構成を示す上面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1−回路遮断器
30−トリップ機構
31−電磁コイル
32−アーマチュア
33−アーマチュアバネ
34−ヨーク
34A−貫通孔
35−ポット
35A−第一端部
35Bー頭部
36−導線
37−ボビン
37A,37B−第一鍔、第二鍔
37C−ガイド部材
40−ケース
41−第一ヨーク位置決め部材
42−第二ヨーク位置決め部材
43−ポット位置決め部材
51−可動接触子
52−固定接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸の両端部側に第一鍔、第二鍔が形成されたボビンを有するコイルと、前記中空軸の軸孔に連通する貫通孔が形成された板部材を有し、筐体の内壁面に着脱自在に支持されたヨークと、第一端部が前記中空軸の軸孔及び前記貫通孔を貫通し、第二端部に前記第一鍔に当接する頭部が形成されたポットと、前記頭部に対向する延出部を有し、前記延出部を前記頭部に当接、離間させるように揺動自在なアーマチュアと、を含むトリップ機構を備えた回路遮断器において、
前記第二鍔は、前記ポットの前記中空軸の軸孔及び前記貫通孔への挿入方向に沿って前記板部材に当接し、
前記筐体は、前記ポットの前記挿入方向への移動を規制するポット位置決め部材と、前記ヨークの前記挿入方向への移動を規制する第一ヨーク位置決め部材と、前記ヨークの前記挿入方向と直交する方向への移動を規制する第二ヨーク位置決め部材と、を内壁面に備えたことを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記アーマチュアは、前記ヨークに着脱自在に支持されていることを特徴とする請求項
1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記第二鍔と前記ヨークとの位置関係を保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記保持部材は、前記ボビンの回転を規制することを特徴とする請求項3に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記ポット位置決め部材は、前記挿入方向に直交する方向への移動も規制することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の回路遮断器。
【請求項6】
中空軸の両端部側に第一鍔、第二鍔が形成されたボビンを有するコイルと、前記中空軸の軸孔に連通する貫通孔が形成された板部材を有し、筐体の内壁面に着脱自在に支持されているヨークと、第一端部が前記中空軸の軸孔及び前記貫通孔を貫通し、第二端部に前記第一鍔に当接する頭部が形成されたポットと、前記頭部に対向する延出部を有し、前記延出部を前記頭部に当接、離間させるように揺動自在なアーマチュアと、を有する回路遮断器のトリップ機構において、
第一端部が前記アーマチュアに接続され、第二端部が前記ヨークに接続され、前記延出部を前記頭部から離間させる離間方向に前記アーマチュアを付勢するアーマチュアバネと、
前記延出部が前記頭部から離間した所定位置にある時に、前記アーマチュアの前記離間方向の揺動を規制する当接部材であって、前記アーマチュア又は前記ヨークに設けられ、前記ヨーク又は前記アーマチュアに当接する当接部材と、を備え
前記第二鍔は、前記ポットの前記中空軸の軸孔及び貫通孔への挿入方向に沿って前記板部材に当接したことを特徴とする回路遮断器のトリップ機構。
【請求項7】
前記アーマチュアは、前記ヨークに着脱自在に支持されたことを特徴とする請求項6に記載の回路遮断器のトリップ機構。
【請求項8】
前記第二鍔と前記ヨークとの位置関係を保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の回路遮断器のトリップ機構。
【請求項9】
前記保持部材は、前記ボビンの回転を規制することを特徴とする請求項8に記載の回路遮断器のトリップ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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