説明

回転コネクタ装置

【課題】回転のロック及びロック解除をスムーズに行うことができる簡易な構成の回転コネクタ装置を提供する。
【解決手段】ステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、フレキシブルフラットケーブル14と、ロック体17と、戻しバネ18と、を備える。ロック体17は、ロテータ12とステータ11との間の相対回転をロックするロック位置と、相対回転のロックを解除するロック解除位置と、の間で移動可能である。戻しバネ18は、ロック体17を前記ロック位置へ付勢する。ロック体17には中心孔55が形成されるとともに、この中心孔55の周囲に、前記差込孔19に差し込まれたボス部100によって押されることが可能な環状の被押圧面56が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作具と固定体との間で各種の信号を伝達し又は電力等を供給するために用いられる回転コネクタ装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種の回転コネクタ装置を開示する。特許文献1に開示される回転コネクタ装置は、固定側部材であるステータと、回転側部材であるロータと、ステータに対してロータを中立位置に仮固定する仮固定機構部と、を備えている。この仮固定機構部は、ステータの中立位置にロータを仮固定(ロック)するための中立固定部材を備える。この中立固定部材は、ステアリングホイールの中立位置の下側に設けられた中立解除部材としての突起部によって駆動される。前記仮固定機構部はロータの上面の周縁部に配置されている。
【特許文献1】特開2007−273236号公報
【0003】
また、特許文献2が開示する回転コネクタは、合成樹脂材からなる2つのハウジングを備える。第1のハウジングには、ロック機構の一部をなすロック部材が片持ち状に一体成形されている。また、このロック部材には解除用突起が一体成形されており、この突起は第1のハウジングの天面より突出している。第2のハウジングには複数の係合溝が形成されており、この係合溝に前記ロック部材の自由端が係合することで、第1のハウジングがロック状態に維持される。一方、ステアリングホイールの取付時においては、解除用突起がステアリングホイールの下面によって押圧されることで、ロック部材の自由端が係合溝から後退し、第1のハウジングの回転規制は自動的に解除される。
【特許文献2】特開平8−138818号公報
【0004】
特許文献3が開示する回転接続装置は、固定側部材と回転側部材とを備える。回転側部材の中心筒部にはコイルスプリングが設けられ、このコイルスプリングの上部には、L字状のワイヤーからなるストッパーが2つ取り付けられている。固定側部材の下面にはストッパー溝が形成される一方、回転側部材の前記中心筒部の内面には係止爪が形成されている。それぞれのストッパーは係止爪によって支持されるとともに、前記ストッパー溝に対して係合する。この係合により、回転側部材が中立位置で回り止めされて保持される。一方、ステアリングホイールの組付時には、当該ステアリングホイールのハブでスプリングが押圧されることで、ストッパーの下部が固定側部材のストッパー溝から外れて、回り止めの保持が解除される。
【特許文献3】特開平11−187557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、中立解除部材を駆動するために突起等の部品が必要になり、部品点数が増大するとともに構成が複雑化してしまっていた。また、仮固定機構部がロータの周縁部に配置されているために、ステアリングホイールを装着する作業時に当該ステアリングホイールが傾くと、突起と中立解除部材との間で引っ掛かりが生じたり、接触が斜めになって中立解除に失敗したりすることがあった。更に、仮固定機構部がロータの上面に配置されているため、組立作業時等に手などが中立解除部材に触れてしまい、意に反してロックが解除されてロータの位置ズレが生じるおそれがあった。
【0006】
また、特許文献2の構成は、ロック部材が第1のハウジングと一体成形されているので耐久性を確保することが困難であり、例えばステアリングホイールが傾いた状態で解除用突起を押した場合、無理な力が加わってロック部材等が破損するおそれがあった。また、解除用突起が天面より突出しているので、特許文献1と同様に、意図せずに回転規制が解除されて第2のハウジングに位置ズレが生じるおそれがあった。
【0007】
更に、特許文献3の回転接続装置においては、複数のストッパーのそれぞれが細かい部品(ワイヤー)から構成されているので、回転接続装置の組立時にストッパーを係止爪に保持させたり、ストッパーをストッパー溝に係合させたりする作業が煩雑になる場合があった。また、例えばステアリングホイールが傾いた状態でスプリングを押圧した場合、一部のストッパーの移動が小さくなり、ストッパー溝との係合の解除が不十分になって、ステアリングホイールの回転に引っ掛かりが生じるおそれもあった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、回転のロック及びロック解除をスムーズに行うことができる簡易な構成の回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の回転操作具用回転コネクタ装置が提供される。即ち、この回転コネクタ装置は、固定側部材と、回転操作側部材と、ケーブルと、ロック体と、付勢部材と、を備える。前記固定側部材は、第1筒部を有する。前記回転操作側部材は、前記第1筒部の内側に配置される第2筒部を有するとともに、前記固定側部材に対し回転可能に取り付けられる。前記ケーブルは、前記第1筒部と前記第2筒部の間に形成される環状の収容空間に収容され、前記固定側部材のコネクタと前記回転操作側部材のコネクタとを電気的に接続する。前記ロック体は、前記回転操作側部材と前記固定側部材との間の相対回転をロックするロック位置と、前記相対回転のロックを解除するロック解除位置と、の間で移動可能である。前記付勢部材は、前記ロック体を前記ロック位置へ付勢する。前記ロック体には中心孔が形成されるとともに、この中心孔をほぼ取り囲むように、回転操作具のボス部によって押されることが可能な環状の被押圧面が備えられている。
【0011】
これにより、ロック体の中心孔の周囲に形成された被押圧面が回転操作具のボス部に均等に接触し易くなるので、ロック体を真っ直ぐに押圧してロック解除位置へ確実に移動させてロックを解除することができる。また、回転操作具のボス部によってロック解除を行う構成となるので、ロック解除のための構成を簡素化でき、小型化とコスト低減に寄与することができる。
【0012】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ロック体は、前記付勢部材からの力を受ける作用面を備える。この作用面は、前記被押圧面に対して、前記ロック体が付勢される方向と反対側に位置している。
【0013】
これにより、ロック体の被押圧面が回転操作具のボス部によって押されると、ロック体は、付勢部材から作用面に作用する力をバランス良く受け止めながらロック解除位置へ移動することになる。従って、ロック体のスムーズな移動によって相対回転のロックを容易に解除することができる。
【0014】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記固定側部材及び前記回転操作側部材から構成されるケーブルハウジングには、前記ボス部を差込可能な差込孔が形成されている。前記ロック位置にあるときの前記ロック体の前記被押圧面が前記差込孔の内部に位置している。
【0015】
これにより、ロック体の被押圧面が差込孔の内部に位置するので、例えば作業者が被押圧面に不意に手を触れてロックが解除され、回転操作側部材が位置ズレしてしまうことを防止できる。
【0016】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ロック体は前記回転操作側部材と一体的に回転するように取り付けられている。このロック体が前記ロック位置にあるとき、前記固定側部材に前記ロック体の一部が引っ掛かり、これによって前記回転操作側部材の相対回転が阻止される。
【0017】
これにより、回転操作具のボス部によってロック体がロック解除位置に移動したとき、ロック体が回転操作具と一体的に回転することになる。従って、回転操作具のボス部と被押圧面との間で摩擦が生じることを防止し、回転操作具の回転抵抗及び異音の発生を防止することができる。
【0018】
前記の回転コネクタ装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記固定側部材は、前記第1筒部と前記第2筒部とを接続するように配置される固定側リング板を備える。この固定側リング板の中心孔の周囲において、当該固定側リング板には、前記ロック体が付勢される方向と反対側の面に止め部が設けられる。前記ロック体の一部は、前記止め部に引っ掛かることが可能に構成されている。
【0019】
これにより、回転操作側部材のロック機能を、ケーブルの収容空間等に干渉することのないコンパクトな構成で実現することができる。
【0020】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、前記固定側部材には、前記回転操作側部材の中立位置を含む複数の位置に対応するように、前記ロック体の一部を引っ掛けることが可能な止め部が複数形成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、回転操作側部材を、中立位置以外の位置でロックすることが可能になる。従って、例えば修理及びメンテナンス時における仮止め等、様々な目的でロック機能を活用することができる。
【0022】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この回転操作具用回転コネクタ装置は、前記回転操作側部材に固定される受け部材を備える。前記ロック体は前記受け部材に対して相対回転不能に取り付けられている。前記付勢部材は、前記受け部材が有する受け面と前記ロック体の間に配置されるコイルバネとして構成されている。
【0023】
これにより、ロック体と受け部材とが一体的に回転することになるので、ロック体と受け部材の間で摩擦が生じることを防止でき、回転抵抗や異音の発生を防止できる。また、回転操作具の回転に伴ってロック体と受け部材を回転させつつ、コイルバネによってロック体をロック位置へ近づく向きに確実に付勢することができる。
【0024】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、前記受け部材は前記第2筒部の内周面に固定されることが好ましい。
【0025】
これにより、受け部材をケーブルの収容空間等に干渉させることなく、コンパクトな構成で回転操作側部材に固定し、コイルバネを受け止めさせることができる。
【0026】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記固定側部材は、前記第1筒部と前記第2筒部とを接続するように配置される固定側リング板を備える。前記受け部材は突出部を備える。この突出部は、前記固定側リング板よりも、前記ロック体が付勢される方向と反対側へ突出している。前記受け面は前記突出部に配置されている。
【0027】
これにより、コイルバネを受ける受け面を固定側リング板よりも車体側に配置できるので、コイルバネの設置スペースを容易に確保できるとともに、ロック体の移動ストロークを大きく確保することができる。
【0028】
前記の回転操作具用回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ロック体は、前記固定側部材に引っ掛かることが可能な引掛け部を備える。前記受け部材の前記突出部の内部に前記引掛け部が配置されている。
【0029】
これにより、強度が弱くなり易いロック体の引掛け部を突出部によって保護できるので、部品の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタ1の全体的な構成を示す斜視図、図2はステアリングロールコネクタ1の分解斜視図である。図3はロテータ12の相対回転が阻止されたロック状態を示す断面図、図4はロック状態を示す一部断面斜視図である。
【0031】
図1から図3に示す回転コネクタ装置としてのステアリングロールコネクタ1は、互いに相対回転可能なステータ(固定側部材)11とロテータ(回転操作側部材)12とによりなるケーブルハウジング13を備えている。
【0032】
ステータ11は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図略)に固定されている。前記ケーブルハウジング13の中心には貫通状の差込孔19が形成され、この差込孔19に、前記ステアリングコラムに支持されたステアリングシャフトが挿入されている。前記ステータ11はステアリングシャフトに対して相対回転可能に取り付けられる一方、ロテータ12はステアリングシャフトとともに一体的に回転するように構成されている。また、ステアリングホイール(回転操作具)は、前記ステアリングシャフトに固定されている。
【0033】
前記ステータ11は、固定側リング板(底板)21と、この固定側リング板21の外縁から垂直に延びる円筒状の外側筒部(第1筒部)31と、を備えている。また、前記ロテータ12は、リング状に形成された回転側リング板(天板)22と、この回転側リング板22の内縁から垂直に延びる円筒状の内側筒部(第2筒部)32と、を備えている。ロテータ12はステータ11に対し、前記ステアリングシャフトの回転軸と同一の軸線を中心にして回転することができる。
【0034】
ステータ11には第1コネクタ41が取り付けられ、ロテータ12には第2コネクタ42が取り付けられる。第2コネクタ42は、ロテータ12の回転に伴って一体的に回転する。これらのコネクタ41,42には、外部の電気回路(例えば、ホーンスイッチ、エアバッグモジュール、電源等)から引き出された図略のケーブルをそれぞれ接続可能に構成されている。
【0035】
第1コネクタ41は外側筒部31の外側に配置され、第2コネクタ42は回転側リング板22に配置されている。第1コネクタ41と第2コネクタ42とは、ケーブルハウジング13の内部(後述する収容空間15の内部)に配置されたフレキシブルフラットケーブル(ケーブル)14によって相互に電気的に接続されている。
【0036】
前記固定側リング板21と回転側リング板22は、ロテータ12の回転軸の方向で互いに対面するとともに、それぞれが外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置されている。また、前記内側筒部32は外側筒部31より内側に配置され、前記外側筒部31と内側筒部32は、径方向で互いに対面するように配置されている。2つのリング板21,22及び2つの筒部31,32によって囲まれた環状の空間である収容空間15には、前記フレキシブルフラットケーブル14が適宜巻かれた状態で収容されている。
【0037】
ステアリングロールコネクタ1は、ロテータ12に固定されたバネ受けスリーブ(受け部材)16を備えている。このバネ受けスリーブ16は、受け板36と、バネ収容壁38と、保護壁39と、を備えている。バネ受けスリーブ16のうち大部分(具体的には、バネ収容壁38の基部、保護壁39及び受け板36)は、ステータ11から突出する2重円筒形状の突出部44を構成している。この突出部44は、前記固定側リング板21よりも、車体側へ突出するように構成されている。なお、「車体側」とは、後述のロック体17が戻しバネ18によって付勢される方向と反対側であって、内側筒部32から離れる側を意味する。
【0038】
受け板36はリング状に形成されており、前記ステアリングシャフトを差込可能な円形の中心孔37を備えている。また、受け板36には、前記ロテータ12の回転軸方向に沿って延びる円筒状のバネ収容壁38が形成されている。
【0039】
バネ収容壁38は円筒状に形成されるとともに、このバネ収容壁38には、ステータ11に対するロテータ12の相対回転を阻止することが可能なロック体17が支持されている。また、バネ収容壁38の内部には、ロック体17にバネ力を作用させる圧縮コイルバネ状の戻しバネ(付勢部材、コイルバネ)18が収容されている。前記受け板36の前記ステータ11側を向く面には、前記戻しバネ18の一端を受け止めることが可能な受け面45が形成されている。
【0040】
保護壁39は円筒状に形成されており、前記バネ収容壁38の外側に配置されている。この保護壁39は、後述のロック凹部66の周囲を取り囲むように配置される。
【0041】
前記ロック体17は、リング状の本体46と、この本体46から径方向外側に突出する一対のロック突起(引掛け部)47と、を備えている。一方、前記バネ収容壁38には、前記ロック突起47に対応する位置に一対のガイド溝48が形成されている。それぞれのガイド溝48は、ロテータ12の回転軸方向に平行に細長く形成されている。
【0042】
この構成で、ロック突起47がガイド溝48に差し込まれることにより、バネ受けスリーブ16に対するロック体17の回転は阻止される。また、ロック体17は、前記ロック突起47がガイド溝48に案内されることにより、ロテータ12の回転軸方向に所定のストロークで移動することができる。また、円筒状の前記バネ収容壁38の内面は、ロック体17の本体46の外周面に近接するように形成されている。従って、バネ収容壁38はガイド壁として機能し、ロック体17が斜めに傾くことを阻止しながらその移動を円滑に案内する。ロック体17がバネ受けスリーブ16に支持された状態では、前記ロック突起47は、バネ受けスリーブ16が備える前記突出部44の内部(保護壁39の内部)に位置している。
【0043】
前記ロック体17の本体46には中心孔55が形成されている。この中心孔55は、バネ受けスリーブ16の中心孔37及び戻しバネ18とともに、ケーブルハウジング13の差込孔19と中心を一致させるように配置されている。従って、前記ステアリングシャフトは、バネ受けスリーブ16の中心孔37、戻しバネ18、及びロック体17の中心孔55をそれぞれ通過するようにして、前記差込孔19に挿入されることになる。
【0044】
前記中心孔55の周囲において、ロック体17の本体46には平坦な被押圧面56が形成されている。この本体46の被押圧面56は前記中心孔55を取り囲むようにしてリング状に形成されており、他の部材(具体的には、前記ステアリングホイールの回転中心に配置された芯金のボス部)に接触して押されることが可能に構成されている。
【0045】
本体46において、前記被押圧面56と反対側にはバネ作用面(作用面)57が形成されている。このバネ作用面57には、押し縮められた状態でロック体17とバネ受けスリーブ16との間に配置された前記戻しバネ18の一端が接触している。バネ作用面57は、被押圧面56に対して、前記車体側に位置している。
【0046】
前記バネ収容壁38の端部には複数の突起58が形成されている。一方、ロテータ12の内側筒部32の内周面には、前記突起58に対応する位置に爪59が形成されている。この構成で、前記爪59に前記突起58を引っ掛けることにより、バネ受けスリーブ16がロテータ12に相対回転不能に取り付けられる。前述のとおりロック体17はバネ受けスリーブ16に対して相対回転不能であるので、ロテータ12がステータ11に対して回転するとき、ロック体17はバネ受けスリーブ16とともにロテータ12と一体的に回転することになる。
【0047】
前記ステータ11の固定側リング板21には中心孔65が形成されている。この固定側リング板21の中心孔65は、前記ロテータ12が備える内側筒部32の内周側の空間とともに、前記ケーブルハウジング13の差込孔19を形成している。前記ロック体17、戻しバネ18、及びバネ受けスリーブ16のバネ収容壁38は、前記中心孔65の内部を通過するように配置されている。前記ロック体17は、そのロック突起47が前記固定側リング板21よりも車体側に位置する一方、本体46は前記中心孔65から差込孔19内に入り込むように配置されている。
【0048】
前記固定側リング板21の中心孔65の周囲において、前記固定側リング板21の前記車体側を向く面にはロック凹部(止め部)66が周方向に複数並べて形成されている。それぞれのロック凹部66は車体側を開放させる溝として形成されており、前記ロック体17が前記戻しバネ18によって押されることで、そのロック突起47が何れかのロック凹部66に車体側から嵌まることが可能に構成されている。
【0049】
この構成で、ロック突起47がロック凹部66に嵌まった状態が図3及び図4に示される。なお、以下の説明では、このときのロック体の位置を「ロック位置」と称することがある。このロック位置においては、当該ロック体17はステータ11に対して相対回転不能に結合されるので、バネ受けスリーブ16及びロテータ12もステータ11に対して相対回転することはできない。
【0050】
一方、ロック体17が戻しバネ18のバネ力に抗する向きに押されて、ロック突起47がロック凹部66から抜けた位置(以下、この位置を「ロック解除位置」という)にある状態が図5及び図6に示される。この位置では、ロック体17はステータ11に対して自由に相対回転できるので、バネ受けスリーブ16及びロテータ12の回転も許容される。
【0051】
次に、フレキシブルフラットケーブル14をケーブルハウジング13に収容するための構成を説明する。前記ステータ11の外側筒部31の内部(収容空間15)には、ロテータ12の回転軸を中心にして回転可能なリテーナ25が配置されている。このリテーナ25は、ベースリング26と、複数の回転ローラ27と、を備えている。ベースリング26は板状の部材として構成されており、前記固定側リング板21に近接して配置されている。このベースリング26は、ステータ11に対して相対回転可能に構成されている。
【0052】
前記ベースリング26には複数の回転ローラ27が支持されている。回転ローラ27は周方向に等間隔で並べて配置され、それぞれが、前記ロテータ12の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0053】
以上の構成で、第1コネクタ41側に一端を接続されるとともに前記収容空間15へ引き出されたフレキシブルフラットケーブル14は、その一部がリテーナ25の外側でステータ11の外側筒部31の内周面に沿うように巻かれる。そして、フレキシブルフラットケーブル14は途中で、複数の前記回転ローラ27のうち1つに巻き掛かるようにして向きを反転する。その後は、フレキシブルフラットケーブル14はリテーナ25の内側でロテータ12の内側筒部32の外周面に沿うように巻かれ、最終的には収容空間15から引き出されて第2コネクタ42側に接続される。
【0054】
このように、前記収容空間15の内部においてフレキシブルフラットケーブル14は適宜の長さの弛みを有するように巻かれており、この弛みの長さは、ロテータ12がステータ11に対して回転することにより変化する。本実施形態のステアリングロールコネクタ1では、この弛み長さの変化に追従するようにリテーナ25が適宜回転することにより、フレキシブルフラットケーブル14を収容空間15内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0055】
ここで、本実施形態のステアリングロールコネクタ1が取り付けられる乗用車両のステアリングホイールは、左右にそれぞれ最大で2回転から2回転半程度回転できるように構成されている。そして、この回転範囲を2等分する位置が中立位置に設定され、ステアリングホイールを当該中立位置としたときに車両が直進するように構成される。
【0056】
これに対応して、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、前記ステアリングホイールの回転範囲に所定のマージンを見込んで、ロテータ12をステータ11に対し左右にそれぞれ3回転程度回転できるように構成されている。そして、この回転範囲を2等分する位置が中立位置に設定されており、ステアリングロールコネクタ1はロテータ12を前記中立位置に合わせた状態で出荷される。
【0057】
この状態のステアリングロールコネクタ1においては、ロック体17は図3及び図4に示すように、そのロック突起47がロック凹部66に差し込まれている(ロック位置)。これによってロテータ12がステータ11に対し相対回転不能に連結されるので、ロテータ12が前記中立位置から意に反して回転することを防止することができる。また、このロック位置においては前記ロック体17の被押圧面56がケーブルハウジング13の差込孔19の内部に位置しているので、何らかの作業中に被押圧面56が押されてロックが不意に解除されることも起こりにくい構成になっている。
【0058】
次に、ステアリングロールコネクタ1をステアリングコラムに取り付けた後、当該ステアリングコラムにステアリングホイールを装着する。なおこのとき、ステアリングロールコネクタ1の中立位置とステアリングホイールの中立位置を一致させるようにする。
【0059】
このステアリングホイールの取付作業に伴って、図5に示すように、ステアリングホイールの芯金のボス部100がケーブルハウジング13の差込孔19に差し込まれ、その差込方向先端面がロック体17の本体46の被押圧面56を押す。これにより、ロック体17はロック解除位置へ移動し、図5及び図6に示すようにロック突起47がロック凹部66から抜けるので、ロック体17、バネ受けスリーブ16及びロテータ12はステアリングホイールとともに自由に回転することができる。ステアリングホイールはこの状態で固定されるので、その後は、ロック体17はロック解除位置で常に保持されることになる。
【0060】
なお、ロック体17の本体46の被押圧面56は中心孔55の周囲に環状に形成されているので、ステアリングホイールの取付時において、当該被押圧面56はその全周にわたって前記ボス部100に接触して押圧されるようになっている。また、前述したバネ収容壁38のガイド壁としての機能により、ロック体17は傾くことなくボス部100によってロック解除位置へ真っ直ぐ円滑に押し込まれる。従って、ロック体17を斜めに傾けたりすることなく真っ直ぐに且つ均等に押圧し、ロック解除をスムーズに行うことができる。
【0061】
以上に示すように、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、フレキシブルフラットケーブル14と、ロック体17と、戻しバネ18と、を備える。ステータ11は、外側筒部31を有する。ロテータ12は、外側筒部31の内側に配置される内側筒部32を有するとともに、ステータ11に対し回転可能に取り付けられる。フレキシブルフラットケーブル14は、外側筒部31と内側筒部32の間に形成される環状の収容空間15に収容され、ステータ11側のコネクタ41とロテータ12側のコネクタ42とを電気的に接続する。ロック体17は、ロテータ12とステータ11との間の相対回転をロックするロック位置と、前記相対回転のロックを解除するロック解除位置と、の間で移動可能である。戻しバネ18は、ロック体17を前記ロック位置へ付勢する。ロック体17には中心孔55が形成されるとともに、この中心孔55の周囲に、ステアリングホイールのボス部100によって押されることが可能な環状の被押圧面56が備えられている。
【0062】
これにより、ステアリングホイールのボス部100をロック体17の被押圧面56に対し全周にわたって接触させ、当該被押圧面56に対し真っ直ぐに且つ均等に押圧することが容易となる。従って、ロック体17をロック解除位置へ確実に移動させてロックを解除することができる。また、ステアリングホイールのボス部100によってロック解除を行う構成であるので、ロック解除のための構成を簡素化でき、小型化とコスト低減に寄与することができる。
【0063】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、前記ロック体17は戻しバネ18からの力を受けるバネ作用面57を備える。このバネ作用面57は、前記被押圧面56に対して、ロック体17が付勢される方向と反対側(車体側)に位置している。
【0064】
これにより、ロック体17の被押圧面56がステアリングホイールのボス部100によって押されると、ロック体17は、戻しバネ18からバネ作用面57に作用するバネ力をバランス良く受け止めながらロック解除位置へ移動することになる。従って、ロック体17のスムーズな移動によって相対回転のロックを容易に解除することができる。
【0065】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1においてステータ11及びロテータ12から構成されるケーブルハウジング13には、ステアリングホイールのボス部100を差込可能な差込孔19が形成されている。そして、前記ロック位置にあるときのロック体17の被押圧面56が、差込孔19の内部に位置している。
【0066】
これにより、差込孔19内の奥にロック体17の被押圧面56が位置しているため、例えば作業者が被押圧面56に不意に手を触れてロックが解除され、ロテータ12が位置ズレしてしまうことを防止できる。
【0067】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、ロック体17はロテータ12と一体的に回転するように取り付けられている。そして、ロック体17が前記ロック位置にあるとき、ステータ11にロック突起47(ロック体17の一部)が引っ掛かり、これによってロテータ12の相対回転が阻止される。
【0068】
これにより、ステアリングホイールのボス部100によってロック体17がロック解除位置に移動したとき、ロック体17がステアリングホイールと一体的に回転することになる。従って、ステアリングホイールのボス部100と被押圧面56との間で摩擦が生じることを防止し、ステアリングホイールの回転抵抗及び異音の発生を防止することができる。またこのとき、バネ受けスリーブ16はロック体17(及びステアリングホイール)と一体的に回転するが、前記保護壁39の頂部が固定側リング板21の面に対して摺動することで、バネ受けスリーブ16を滑らかに回転させることができる。
【0069】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、ステータ11は、外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置される固定側リング板21を備える。固定側リング板21の中心孔の周囲において、当該固定側リング板21には、ロック体17が付勢される方向とは反対側(車体側)の面にロック凹部66が設けられる。前記ロック突起47(ロック体17の一部)は、ロック凹部66に引っ掛かることが可能に構成されている。
【0070】
これにより、ロテータ12をロックする機能を、フレキシブルフラットケーブル14のための収容空間15等に干渉することのないコンパクトな構成で実現することができる。
【0071】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、ステータ11には、ロテータ12の中立位置を含む複数の位置に対応するように、前記ロック突起47(ロック体17の一部)を引っ掛けることが可能なロック凹部66が複数形成されている。
【0072】
これにより、ロテータ12を中立位置以外の位置でロックすることが可能になる。従って、例えば修理及びメンテナンス時における仮止め等、様々な場面でロック機能を活用することができる。
【0073】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、ロテータ12に固定されるバネ受けスリーブ16を備える。ロック体17はバネ受けスリーブ16に対して相対回転不能に取り付けられている。戻しバネ18は、バネ受けスリーブ16が有する受け板36の一側の面(受け面)とロック体17の間に配置されるコイルバネとして構成されている。
【0074】
これにより、ロック体17とバネ受けスリーブ16とが一体的に回転することになるので、ロック体17とバネ受けスリーブ16との間で摩擦が生じることを防止でき、回転抵抗や異音の発生を防止できる。また、ステアリングホイールの回転に伴ってロック体17とバネ受けスリーブ16を回転させつつ、戻しバネ18によってロック体17をロック位置へ近づく向きに確実に付勢することができる。また、ロック体17の移動をバネ受けスリーブ16(バネ収容壁38)によって案内させることで、ロック解除を円滑に行うことができる。
【0075】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、バネ受けスリーブ16は内側筒部32の内周面に固定されている。
【0076】
これにより、バネ受けスリーブ16をフレキシブルフラットケーブル14の収容空間15等に干渉させることなく、コンパクトな構成でロテータ12に固定し、戻しバネ18を受け止めさせることができる。
【0077】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、前記ステータ11は、外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置される固定側リング板21を備える。バネ受けスリーブ16は突出部44を備える。この突出部44は、固定側リング板21よりも、前記ロック体17が付勢される方向と反対側(車体側)へ突出する突出部44を備える。そして、前記受け面45は突出部44に配置されている。
【0078】
これにより、戻しバネ18を受ける受け面45を固定側リング板21よりも車体側に配置できるので、戻しバネ18の設置スペースを容易に確保できるとともに、ロック体17の移動ストロークを大きく確保することができる。
【0079】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、ロック体17は、ステータ11に引っ掛かることが可能なロック突起(引掛け部)47を備える。そして、バネ受けスリーブ16の突出部44の内部にロック突起47が配置されている。
【0080】
これにより、強度が弱くなり易いロック体17のロック突起47を覆うように突出部44で保護することができるので、部品の破損を防止することができる。
【0081】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0082】
ロック体17の中心孔55は円形に限らず、例えば楕円形、多角形等に変更することができる。同様に、中心孔55の周囲の被押圧面56は円環状に限らず、例えば多角形状に変更することができる。更に、被押圧面56はロック体17の中心孔55を360°取り囲むように構成されることに代えて、一部が欠けた例えばC字状の被押圧面に変更することができる。
【0083】
ロック体17のロック突起47は一対(2つ)設けられる構成に代えて、1つ、又は3つ以上のロック突起が設けられる構成に変更することができる。
【0084】
ロック凹部66は、リング板21の中心孔65の周囲において周方向に多数並べて形成される構成に代えて、ロテータ12の中立位置に相当する箇所にのみ形成する構成に変更することができる。
【0085】
上記実施形態ではステアリングロールコネクタ1にリテーナ25が配置されているが、リテーナを省略した回転コネクタ装置に変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタの全体的な構成を示す斜視図。
【図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ロテータの相対回転が阻止されたロック状態を示す断面図。
【図4】ロック状態を示す一部断面斜視図。
【図5】ロテータの相対回転が許容されたロック解除状態を示す断面図。
【図6】ロック解除状態を示す一部断面斜視図。
【符号の説明】
【0087】
1 ステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)
11 ステータ(固定側部材)
12 ロテータ(回転操作側部材)
13 ケーブルハウジング
14 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
15 収容空間
16 バネ受けスリーブ(受け部材)
17 ロック体
18 戻しバネ(付勢部材、コイルバネ)
19 差込孔
21 固定側リング板(リング板)
31 外側筒部(第1筒部)
32 内側筒部(第2筒部)
41,42 コネクタ
44 突出部
45 受け面
47 ロック突起(引掛け部、ロック体の一部)
55 中心孔
56 被押圧面
57 バネ作用面(作用面)
66 ロック凹部(止め部)
100 ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒部を有する固定側部材と、
前記第1筒部の内側に配置される第2筒部を有するとともに前記固定側部材に対し回転可能に取り付けられる回転操作側部材と、
前記第1筒部と前記第2筒部の間に形成される環状の収容空間に収容され、前記固定側部材のコネクタと前記回転操作側部材のコネクタとを電気的に接続するケーブルと、
前記回転操作側部材と前記固定側部材との間の相対回転をロックするロック位置と、前記相対回転のロックを解除するロック解除位置と、の間で移動可能なロック体と、
前記ロック体を前記ロック位置へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記ロック体には中心孔が形成されるとともに、この中心孔をほぼ取り囲むように、回転操作具のボス部によって押されることが可能な被押圧面が備えられていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ロック体は、前記付勢部材からの力を受ける作用面を備え、
この作用面は、前記被押圧面に対して、前記ロック体が付勢される方向と反対側に位置していることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置であって、
前記固定側部材及び前記回転操作側部材から構成されるケーブルハウジングには、前記ボス部を差込可能な差込孔が形成されており、
前記ロック位置にあるときの前記ロック体の前記被押圧面が前記差込孔の内部に位置していることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ロック体は前記回転操作側部材と一体的に回転するように取り付けられており、
このロック体が前記ロック位置にあるとき、前記固定側部材に前記ロック体の一部が引っ掛かり、これによって前記回転操作側部材の相対回転が阻止されることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回転コネクタ装置であって、
前記固定側部材は、前記第1筒部と前記第2筒部とを接続するように配置される固定側リング板を備え、
この固定側リング板の中心孔の周囲において、当該固定側リング板には、前記ロック体が付勢される方向と反対側の面に止め部が設けられ、
前記ロック体の一部は、前記止め部に引っ掛かることが可能に構成されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の回転コネクタ装置であって、
前記固定側部材には、前記回転操作側部材の中立位置を含む複数の位置に対応するように、前記ロック体の一部を引っ掛けることが可能な止め部が複数形成されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記回転操作側部材に固定される受け部材を備え、
前記ロック体は前記受け部材に対して相対回転不能に取り付けられており、
前記付勢部材は、前記受け部材が有する受け面と前記ロック体の間に配置されるコイルバネとして構成されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の回転コネクタ装置であって、
前記受け部材は前記第2筒部の内周面に固定されることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の回転コネクタ装置であって、
前記固定側部材は、前記第1筒部と前記第2筒部とを接続するように配置される固定側リング板を備え、
前記受け部材は突出部を備え、
この突出部は、前記固定側リング板よりも、前記ロック体が付勢される方向と反対側へ突出しており、
前記受け面は前記突出部に配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ロック体は、前記固定側部材に引っ掛かることが可能な引掛け部を備え、
前記受け部材の前記突出部の内部に前記引掛け部が配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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