説明

回転コネクタ装置

【課題】回転コネクタ装置におけるロテータ回転時の接触による異音の発生防止が、端子導体の構造の複雑化などを招来することなくできるとともに、その他の利点も得られるようにする。
【解決手段】ステータ31とロテータ41を有し、前記ステータ31の外周面に外周方向に突出し、当該回転コネクタ装置21の内部に収容されたフラットケーブル11の固定側の端部のモールド部16を収容し保持する固定側ケーブル端部収容部34が形成された回転コネクタ装置21において、フラットケーブル11における固定側のモールド部16側の部分に、フラットケーブル11の長手方向の長さを短くするように折り縮めるとともに、固定側の端部11aをフラットケーブル11の幅方向にずらす折り曲げ部12が、フラットケーブル11の長手方向と交差する方向に延びる平行な谷折り線12aと山折り線12bで形成された回転コネクタ装置21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転コネクタ装置に関し、より詳しくは、異音の発生を防止できるようなコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタ装置は、固定側部材と、これに対して相対回転可能に取り付けられる回転側部材を備える。自動車の車体とステアリングホイールとの間を電気的に接続するための回転コネクタ装置では、車体に固定される固定側部材と、ステアリングホイールが相対回転不可に固定される回転側部材を有する。
【0003】
そして、これら固定側部材と回転側部材の間は、フラットケーブルで接続されている。フラットケーブルの両端には、バスバーで構成される端子導体を保持した端子導体接続部が設けられ、この端子導体接続部が前記固定側部材や回転側部材に保持される。
【0004】
このとき、図6に示したように、固定側部材101に対して保持されるフラットケーブル102の端子導体接続部103は、フラットケーブル102の延長線上にある。このため、下記特許文献1にも図示されているように、固定側の端子導体接続部103を導入して保持する固定側ケーブル端部収容部104は、回転コネクタ装置105における比較的高い位置まで存在することになる。つまり、図6に示したように、前記固定側ケーブル端部収容部104が、固定側部材101に対して相対回転する回転側部材106に近い。この結果、回転時に回転側部材が固定側部材101の前記固定側ケーブル端部収容部104に接触して異音が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−327575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような不都合を回避するためには、端子導体接続部103に保持する端子導体107をフラットケーブル102の幅方向に曲げるなど、導体配索を工夫することも考えられるが、導体配索の構造が複雑になり、端子導体の大きさも大きくなるなど、コストの上昇につながるという難点がある。
【0007】
また、回転コネクタ装置105を車体のコンビネーションスイッチ側に固定したときには、図7に示したように、前記固定側ケーブル端部収容部104が回転コネクタ装置105の厚み方向の上方に位置せざるを得ないので、コラムカバー108との接触を防ぐためコラムカバー108の一部を切欠く必要がある。この切欠き部分109はステアリングホイールの下を覗き込むと見えるので、内部構造が露出した印象が強く、見劣りがする。切欠き部分109からコラム内に異物が入り易いという問題もある。
【0008】
そこで、この発明は、異音の発生防止が、端子導体の構造の複雑化などを招来することなくできるとともに、その他の利点も得られるようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、前記固定側部材の外周面に外周方向に突出し、当該回転コネクタ装置の内部に収容されたフラットケーブルの端部の端子導体接続部を収容し保持する固定側ケーブル端部収容部が形成された回転コネクタ装置であって、前記フラットケーブルにおける端子導体接続部側の部分に、該端子接続部側の部分をフラットケーブルの幅方向にずらすべくフラットケーブルを折り曲げる折り曲げ部が形成された回転コネクタ装置である。
【0010】
このほかに、フラットケーブルの長手方向の長さを短くするように折り縮めるとともに、前記端子接続部側の部分をフラットケーブルの幅方向にずらす折り曲げ部が形成された回転コネクタ装置や、フラットケーブルの長手方向と交差する方向に延びる折り目で折り縮められる折り曲げ部が形成された回転コネクタ装置であってもよい。
【0011】
前記折り曲げ部が、フラットケーブルにおける端子導体接続部側の部分をフラットケーブルの幅方向にずらすので、回転コネクタ装置の厚み方向における端子導体接続部の位置を低くできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、折り曲げ部によって回転コネクタ装置の厚み方向における端子導体接続部の位置が低くなるので、この部分を保持する固定側ケーブル端子収容部が回転側部材に接触するのを防止できる。この結果、異音の発生をなくせる。
【0013】
しかも、そのための構成はフラットケーブルに折り曲げ部を形成するという簡素なものであり、構造の複雑化やコストの上昇を回避できる。
【0014】
また、回転コネクタ装置をコラムカバーで被覆する場合には、コラムカバーには回転側部材が露出する部分だけの開口が形成されればよいので、切欠き部分を有する場合のような外観の劣化を防ぎ、ゴミなど異物の侵入を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フラットケーブルの折り曲げ部を示す正面図。
【図2】回転コネクタ装置の斜視図。
【図3】折り曲げ部の作用状態を示す説明図。
【図4】回転コネクタ装置をコラムカバーで覆った状態の斜視図。
【図5】他の例に係るフラットケーブルの折り曲げ部を示す正面図。
【図6】従来の回転コネクタ装置の説明図。
【図7】従来の回転コネクタ装置をコラムカバーで覆った状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、この発明の要部であるフラットケーブル11の端部の正面図、図2は、このフラットケーブル11を収容する回転コネクタ装置21の斜視図である。
【0017】
この回転コネクタ装置21は、自動車のコラム部分に配置される。具体的には、ステアリングホイール(図示せず)とコンビネーションスイッチ(図示せず)との間に備えられるものである。
【0018】
まず、回転コネクタ装置21全体の概略構造について説明する。
【0019】
回転コネクタ装置21は、下面側に位置する固定側部材としてのステータ31と、上面側に位置する回転側部材の一部としてのロテータ41と、これらステータ31およびロテータ41間でのステータ31に対するロテータ41の中立位置(回転コネクタ装置21の中立位置)を保持する回転側部材の一部としての回転ロックユニット51を備える。
【0020】
前記ステータ31は、中央に円形の穴を有する固定側リング板部材32と、この固定側リング板部材32における外周側部位の上面に係合して一体化される平面視円形をなす外周筒部材33とで構成される。
【0021】
そして、外周筒部材33の上端位置から少し下がった位置に、外周方向に突出する固定側ケーブル端部収容部34が形成されている。この固定側ケーブル端部収容部34には、前記固定側リング板部材32に形成された固定側ケーブル端部収容部34と組み合わされて、前記ステータ31とロテータ41で構成される収容空間(図示せず)から引き出されたフラットケーブル11(図1参照)の固定側の端部11aを導入し、保持する。
【0022】
前記ロテータ41は、前記ステータ31の固定側リング板部材32の上面側と外周筒部33の内周側との間に、フラットケーブル11(図1参照)を収容するための環状をなす前記収容空間(図示せず)を形成できるように、平面視リング状をなす天板部42と、この天板部42の内周縁から垂設された内周筒部43とを一体に有する。
【0023】
内周筒部43から天板部42にかけての部分には、回転側ケーブル端部収容部44が形成され、この回転側ケーブル端部収容部44に、前記収容空間(図示せず)から引き出されたフラットケーブル11(図1参照)の回転側の端部を導入し、保持する。
【0024】
このような回転コネクタ装置21に収容されるフラットケーブル11の両端には、図1に示したように、端子導体としてのバスバー15が接続される。バスバー15は、端子導体接続部としてのモールド部16にインサート成形により一体に保持されている。また、両端のモールド部16のうちの固定側ケーブル端部収容部に保持されるモールド部16、すなわち前記固定側の端部11aのモールド部16には、バスバー15の接続端子部(図示せず)を囲むハウジング17が設けられている。
【0025】
そして、フラットケーブル11における固定側の端部11a(端子導体接続部側である固定側ケーブル端部収容部34に保持される部分)には、この部分をフラットケーブル11の幅方向にずらすべくフラットケーブル11を折り曲げる折り曲げ部12が形成される。この折り曲げ部12は、フラットケーブル11の長手方向の長さを短くするように折り縮めるとともに、固定側ケーブル端部収容部34に保持される部分をフラットケーブル11の幅方向にずらす形態であるとよい。また、フラットケーブル11の長手方向と交差する方向に延びる折り目で折り縮められる形態であってもよい。この場合には、特に、図1に示したように、フラットケーブル11の長手方向と交差する方向に延びる平行な山折り線12aと谷折り線12bで前記折り曲げ部12を形成できる。図中、破線は谷折り線12a、一点鎖線は山折り線12bを示す。
【0026】
前記固定側の端部11aをずらす方向は、図3に示したように、ステータ31の上端位置よりも下がった位置に形成された前記固定側ケーブル端部収容部34,35に収められるように回転コネクタ装置21の厚み方向の下方である。
【0027】
この前記固定側の端部11aを変位させる量(ずらす量)は、前記折り曲げ部12を構成する谷折り線12aと山折り線12bの角度や間隔(折り縮め量)によって適宜設定できる。
【0028】
折り曲げ部12が形成されることによって、フラットケーブルには2つの折り目12cが形成され、襞あるいはプリーツが形成されたような形態となる。
【0029】
なお、フラットケーブル11の折り曲げ状態は、ステータ31に形成された図示しない溝に嵌め込むことで保持される。
【0030】
このように構成された回転コネクタ装置21では、図1、図3に示したように、折り曲げ部12によってフラットケーブル11における固定側の端部11aをフラットケーブル11の幅方向において下方にずらすので、ステータ31における外周筒部材33の固定側ケーブル端部収容部34の形成位置を低くできる。すなわち、固定側ケーブル端部収容部34の上面位置を低くできる。
【0031】
このため、回転するロテータ41が、固定側ケーブル端部収容部34に接触して異音を発生するのを防止できる。
【0032】
しかも、そのための構成はフラットケーブル11に折り曲げ部12を形成するという簡素なものである。バスバー15の構造によって前記のようなフラットケーブル11の幅方向における変位を行う場合のような、構造の複雑化やコストの上昇を回避できる。
【0033】
そのうえ、作業はフラットケーブル11の一部を折り曲げて挟み込むだけでよいので簡単である。
【0034】
加えて、フラットケーブル11は可撓性あるいは弾発性を有するが、折り曲げ部12は、谷折り12aと山折り12bをして折り縮めて形成するので、所望の折り縮めと幅方向への変位が容易に行える。
【0035】
また、図4に示したように、このような回転コネクタ装置21をコラムカバー61で被覆する場合には、コラムカバー61にはロテータ41が露出する円形の穴62を形成すれば足りる。従来のように切欠き109(図7参照)は不要であるため、外観の劣化を防止できるとともに、ゴミなど異物の侵入を抑制することもできる。
【0036】
図5は、フラットケーブル11の他の例に係る折り曲げ部12を示す正面図であり、この図に示すように、フラットケーブル11を折り縮めずに、フラットケーブル11の長手方向と交差する2本の谷折り線12aで折り曲げて折り曲げ部12を形成してもよい。
【0037】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の固定側部材は、前記ステータ31に対応し、
以下同様に、
回転側部材は、前記ロテータ41に対応し、
端子導体接続部は、前記モールド部16に対応し、
端子導体接続部側の部分は、固定側の端部11aに対応するも、
この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
例えば、折り曲げ部は、回転側の端部に形成されたものであってもよい。また、折り曲げは複数段階に行って複数の襞あるいはプリーツを形成することもでき、さらに折り曲げ部の形成によって結び目としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
11…フラットケーブル
11a…固定側の端部
12…折り曲げ部
12a…谷折り線
12b…山折り線
12c…折り目
21…回転コネクタ装置
31…ステータ
34…固定側ケーブル端部収容部
41…ロテータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、前記固定側部材の外周面に外周方向に突出し、当該回転コネクタ装置の内部に収容されたフラットケーブルの端部の端子導体接続部を収容し保持する固定側ケーブル端部収容部が形成された回転コネクタ装置であって、
前記フラットケーブルにおける端子導体接続部側の部分に、該端子接続部側の部分をフラットケーブルの幅方向にずらすべくフラットケーブルを折り曲げる折り曲げ部が形成された
回転コネクタ装置。
【請求項2】
固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、前記固定側部材の外周面に外周方向に突出し、当該回転コネクタ装置の内部に収容されたフラットケーブルの端部の端子導体接続部を収容し保持する固定側ケーブル端部収容部が形成された回転コネクタ装置であって、
前記フラットケーブルにおける端子導体接続部側の部分に、フラットケーブルの長手方向の長さを短くするように折り縮めるとともに、前記端子接続部側の部分をフラットケーブルの幅方向にずらす折り曲げ部が形成された
回転コネクタ装置。
【請求項3】
固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、前記固定側部材の外周面に外周方向に突出し、当該回転コネクタ装置の内部に収容されたフラットケーブルの端部の端子導体接続部を収容し保持する固定側ケーブル端部収容部が形成された回転コネクタ装置であって、
前記フラットケーブルにおける端子導体接続部側の部分に、フラットケーブルの長手方向と交差する方向に延びる折り目で折り縮められる折り曲げ部が形成された
回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記折り曲げ部が、前記フラットケーブルの長手方向と交差する方向に延びる平行な山折り線と谷折り線で形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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