回転コネクタ装置
【課題】本発明は、回転ローラー45をより円滑に回転させることのできるステアリングロールコネクタ10を提供することを目的とする。
【解決手段】ロテータ20とステータ30とを回転可能に嵌合し、ロテータ20とステータ30とで収容空間Sを構成し、収容空間S底部に複数の回転ローラー45を軸支するリテーナ40と、フラットケーブルCとを収容したステアリングロールコネクタ10であって、リテーナ40に設けた軸受部43aと、回転ローラー45に設けた回転軸部453とを回転自在に軸支する構成とし、回転軸部453を、軸受部43aの内周面43bと摺動する摺動部Tを有して、円周方向に複数配置した脚部455と、脚部455の先端に形成した係止部456とで構成し、脚部455において、少なくとも摺動部Tにおける径方向断面を、軸受部43aと点接触、もしくは脚部455の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成したことを特徴とする。
【解決手段】ロテータ20とステータ30とを回転可能に嵌合し、ロテータ20とステータ30とで収容空間Sを構成し、収容空間S底部に複数の回転ローラー45を軸支するリテーナ40と、フラットケーブルCとを収容したステアリングロールコネクタ10であって、リテーナ40に設けた軸受部43aと、回転ローラー45に設けた回転軸部453とを回転自在に軸支する構成とし、回転軸部453を、軸受部43aの内周面43bと摺動する摺動部Tを有して、円周方向に複数配置した脚部455と、脚部455の先端に形成した係止部456とで構成し、脚部455において、少なくとも摺動部Tにおける径方向断面を、軸受部43aと点接触、もしくは脚部455の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車のステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するような回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置は、相対的に回転可能に同軸上に組み付けられるステータとロテータとで構成されるケーブルハウジングを備えている。
【0003】
回転コネクタ装置は、ケーブルハウジングのうち、ステータが車体側に固定され、ロテータがステアリングホイール側に組み付けられる。さらに、回転コネクタ装置は、ケーブルハウジング内部の収容空間にフラットケーブルを配設している。このように構成することによって、回転コネクタ装置は、フラットケーブルを介して、車体側とステアリングホイール側との間において、例えば、ステアリングホイール側に装備したホーンモジュール、エアバックモジュールと、車体側電源との電気的な接続を行う。
【0004】
また、回転コネクタ装置は、例えば特許文献1に記載されたように、収容空間の底面に配置され、フラットケーブルをステアリングの軸回りに回転案内するリテーナを備えたものも提案されている。このようなリテーナには、複数の回転ローラーが設けられて、収容空間においてフラットケーブルの巻き締め及び巻き戻しを回転補助することで、回転コネクタ装置がステアリング操作に追従して円滑に回転動作することができる。
【0005】
なお、特許文献1に記載の回転ローラーは、その回転軸となる部分がスナップフィット構造となっており、リテーナの軸受けにスナップフィット結合している(特許文献1中の図3参照)。
【0006】
このような回転ローラーの回転軸と、リテーナの軸受けとが摺動する摺動部の径方向断面(図8(a)参照)において、スナップフィット構造の脚部455は、軸受けの内周面43bに沿う断面形状となっている(図8(b)参照)。
【0007】
ここで回転ローラーを有する回転コネクタ装置が回転する際、リテーナと回転ローラーとの摺動部に異物を噛み込むと、回転軸と軸受けとの摺動面積が大きいため、容易に異物が排出されず、回転ローラーが円滑に回転できなくなるという問題がある。さらに、異物を噛み込んだことにより、軸受け側あるいは回転軸側の摺動部にバリなどが生じて、回転ローラーの回転に影響が出るという問題もある。
【0008】
このような異物は、回転コネクタ装置組み立て時に、外部から侵入するものだけでなく、リテーナや回転ローラー成型時に除去しきれなかったバリなどが要因となることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−217974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、回転ローラーをより円滑に回転させることのできる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、前記収容空間における前記リテーナ上部に、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続したフラットケーブルを、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、前記リテーナに設けた円周状の軸受部によって、前記回転ローラーに設けた回転軸部を回転自在に軸支する構成とし、前記回転軸部を、前記軸受部の円周面と摺動する摺動部を有し、円周方向に複数配置した脚部と、該脚部の先端に形成し、前記軸受部の円周縁に係止する係止部とで構成し、前記脚部において、少なくとも前記摺動部における径方向断面を、前記軸受部と点接触、もしくは前記脚部の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成したことを特徴とする。
前記円周面は、軸受部の外周面、あるいは軸受部の内周面とすることができる。
【0012】
この発明により、回転軸部と軸受部は、少なくとも径方向断面において点接触状態、あるいは脚部の周方向幅より狭い接触幅の線接触状態で摺動することができる。また、回転軸部の脚部が円周面の軸方向にある程度接触する形状であれば、回転軸部と軸受部は、軸方向に線接触状態、あるいは面接触状態で摺動することができる。従って、少なくとも径方向断面において点接触状態または線接触状態のいずれであっても、回転ローラーの回転軸部と軸受部との摺動面積が小さくなる。よって、回転軸部と軸受部との摺動部に異物が混入し難く、万一、異物を噛み込んでも容易に排出することができる。
【0013】
さらに、回転軸部と軸受部との摺動部に異物を噛み込んだまま、回転ローラーが回転するリスクを低減することができ、回転軸部の摺動部や軸受部の円周面に、異物によるバリやカエリなどが発生するおそれを抑制できる。このように異物による傷の発生を抑制することで、回転ローラーは、ひっかかりなどなく円滑に回転することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記径方向断面形状における前記軸受部に対向する形状を、前記軸受部の方向へ山形の突形状に形成することができる。
【0015】
この発明により、フラットケーブルの巻き締め及び巻き戻しで回転ローラーの回転方向が変わる際などに脚部に倒れあるいは捩れが発生しても、摺動部は少なくとも径方向断面において点接触状態あるいは線接触状態を維持することができる。また、脚部の軸受部に対向する面と径方向の面からなる隅部が、円周面と接することなく摺動することができる。従って、成型時の隅部バリを摺動部に巻き込むことがなく、回転ローラーの円滑な回転を阻害すること、あるいは隅部バリが剥離して新たな異物となることを防止することができる。さらに、回転ローラーの回転方向が変わる際に、隅部が、円周面に接してひっかかりの原因となり、回転方向がスムーズに反転しないことを防止することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記突形状を、前記軸受部の曲率半径よりも小さい曲率半径の曲面に形成することができる。
前記曲率半径は、曲線の任意の点における曲がり具合を示すものであり、この曲率半径を小さくするほど、曲線の曲がり具合がきつくすることができる。
【0017】
この発明により、回転ローラーの脚部における軸受部と対向する面に、軸受部の円周面に沿うことのない曲面形状を形成し、脚部の倒れや捩れに対して、摺動部の少なくとも径方向断面における点接触状態あるいは線接触状態を、より安定して維持することができる。また、曲面形状は、必ずしも一定の曲率半径を有する円弧形状に限らず、楕円形の長径端の曲面形状などに形成することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記係止部を、径方向へ突出して前記円周縁に係止する鉤爪状のフック形状にすることができる。
【0019】
この発明により、回転ローラーが、軸受部の円周縁にしっかりと係止されて、振動などの外力による軸方向の移動を規制するとともに、軸受部から回転軸部が容易に脱落することを阻止し、回転ローラーの回転不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、回転ローラーをより円滑に回転させることのできる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観を示す斜視図。
【図2】本実施形態のステアリングロールコネクタの分解状態を示す分解斜視図。
【図3】ロテータを外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】回転ローラーとローラー支持突部の軸支状態を示す断面図。
【図6】回転ローラーとローラー支持突部における図5中のB−B線矢視方向の断面図。
【図7】径方向断面形状の別の実施形態を示す断面図。
【図8】従来技術の回転ローラーの断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は、本実施形態のステアリングロールコネクタ10の外観の斜視図を示し、図2は、本実施形態のステアリングロールコネクタ10の分解状態の分解斜視図を示し、図3は、ロテータ20を外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタ10の平面図を示し、図4は、図1中のA−A線矢視断面図を示している。
【0023】
本実施形態のステアリングロールコネクタ10は、図1から図4に示すように、ケーブルハウジング10aと、リテーナ40と、回転ロック構成体50とで構成している。
【0024】
ケーブルハウジング10aは、図3及び図4に示すように、平面視中央部分にステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状に構成している。差込孔Hは、ステアリングコラム(図示省略)から突出するステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成している。そして、ケーブルハウジング10aは、互いに相対回転可能なステータ30と、ロテータ20とで構成している。
なお、ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールを固定している。
【0025】
ロテータ20は、図2に示すように、リング状に形成された天板として機能する回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から下方に向かって延びる円筒状の内周筒部22とで構成している。
【0026】
そして、ロテータ20は、ステアリングホイールに固定され、ステアリングホイールとともに一体的に回転する構成である。詳しくは、ロテータ20は、ステアリングの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。
【0027】
また、ロテータ20には、ロテータ20の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23を備えている。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとで構成している。第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側23Bとは、回転側リング板21の周方向において、所定間隔を隔ててコネクタ接続口が上向きになるように配置している。
【0028】
そして、ロテータ側コネクタ23(23A、23B)は、例えば、ステアリングホイールに配置されるホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0029】
ステータ30は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラム内部に配設しているコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定して、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けている。ステータ30は、図2に示すように、環状に形成した底板として機能する固定側リング板31と、この固定側リング板31の外周縁から上方に向かって延びる円筒状の外周筒部32とで構成し、固定側リング板31の外周縁と外周筒部32の下端とを嵌合することで一体に構成している。
【0030】
外周筒部32は、図3及び図4に示すように、円筒状の外側外周筒部32oと、外側外周筒部32oよりも僅かに小径である円筒状の内側外周筒部32iとで構成し、外側外周筒部32oと内側外周筒部32iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した径方向の2層構造で構成している。
【0031】
また、内側外周筒部32iの上部には、図4に示すように、半径方向の内側(径内方向)へ向けて突出し、後述するフラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片33を鍔状に形成している。
【0032】
また、ステータ30には、ステータ側コネクタ34を備えている。
ステータ側コネクタ34は、第1ステータ側コネクタ34Aと第2ステータ側コネクタ34Bとで構成している。第1ステータ側コネクタ34Aと第2ステータ側コネクタ34Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部32(外側外周筒部32o)の外側に配置している。
【0033】
そして、ステータ側コネクタ34(34A、34B)は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0034】
このようなステータ30とロテータ20とをステアリングの回転軸方向に組み付けたケーブルハウジング10aの内部は、図2から図4に示すように、ステータ30の固定側リング板31が、ロテータ20の回転側リング板21と回転軸方向で対面し、ステータ30の外周筒部32が、ロテータ20の内周筒部22に対して半径方向外側で対面して収容空間Sを構成している。
この収容空間Sには、リテーナ40と、フラットケーブルCとを収容している。
【0035】
リテーナ40は、図2から図4に示すように、複数の回転ローラー45とベースリング41とで構成し、収容空間Sを構成するステータ30の底面にロテータ20の回転軸を中心にして回転可能に載置している。
【0036】
ベースリング41は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部42とローラー支持突部43とローラー外周側突部44とで構成している。
なお、回転ローラー45とローラー支持突部43については、後で詳しく説明するものとし、ここでは簡単に説明する。
【0037】
ベースリング本体部42は、固定側リング板31に対して回転方向に摺動可能に載置し、ステータ30に対して相対回転可能に構成している。
ローラー支持突部43は、ベースリング本体部42の周方向に等間隔ごとに回転ローラー45を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0038】
ローラー外周側突部44は、ローラー支持突部43の間で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラー45の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部42に対して上方に向けて突出している。
【0039】
回転ローラー45は、ローラー支持突部43と同じ数で備えられ、それぞれローラー支持突部43に軸支され、それぞれがロテータ20の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けている。
【0040】
フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて2本を重ね合わせて巻き回した状態で収容し、第1ロテータ側コネクタ23Aと第1ステータ側コネクタ34A、及び、第2ロテータ側コネクタ23Bと第2ステータ側コネクタ34Bとを、それぞれ相互に電気的に接続している。
【0041】
詳しくは、重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第1ロテータ側コネクタ23Aに接続し、他端を第2ステータ側コネクタ34Aに接続している。
【0042】
そして、もう一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第2ロテータ側コネクタ23Bに接続し、他端を第2ステータ側コネクタ34Bに接続している。
【0043】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング10aの内部の収容空間Sにおいて、固定側リング板31に対して回転自在に載置されたリテーナ40によって支持され、巻回した状態で収容している。
【0044】
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ34A、第2ステータ側コネクタ34Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3から図4に示すように、リテーナ40の外側でステータ30の外周筒部32(内側外周筒部32i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coを構成している。
【0045】
従って、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ34の位置において固定している。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回しているが、図3及び図4では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0046】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の回転ローラー45のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crを構成している。
【0047】
さらに、フラットケーブルCにおいて、反転部分Crより長さ方向の先端側によって、リテーナ40の内側でロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciを構成している。フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23Bに接続している。
【0048】
従って、内側巻き部分Ciの先端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定している。
【0049】
このように、収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ20がステータ30に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0050】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ40とともに適宜回転する。これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0051】
続いて上述の回転ロック構成体50について簡単に説明する。回転ロック構成体50は、図2に示すように、ロック体51とバネ受けスリーブ53と、ロック体51および該バネ受けスリーブ53との間に介在する戻しバネ52とで構成している。
【0052】
バネ受けスリーブ53を戻しバネ52の付勢力に抗して押し上げることでステータ30に対してロテータ20が相対回転しないようロック体51でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体51によるロックを解除することができる。
【0053】
次に、上述したようなステアリングロールコネクタ10において、ローラー支持突部43及びローラー支持突部43で軸支する回転ローラー45について、図5から図7を用いて詳述する。
【0054】
なお、図5は、回転ローラー45とローラー支持突部43の軸支状態の断面図を示し、図6は、回転ローラー45とローラー支持突部43における図5中のB−B線矢視方向の断面図を示している。また、図6(a)は、図5中のB−B矢視方向の断面図を示し、図6(b)は、図6(a)のX部を拡大した部分拡大図を示している。
【0055】
ローラー支持突部43は、図5に示すように、ベースリング本体部42から円筒部材を上方へ向けて突出して形成し、その内周面には、軸方向中央近傍に径方向中心に向けて膨出した軸受部43aを形成している。また、軸受部43aの内周面43bには、潤滑剤として少量のグリスを塗布している。
【0056】
回転ローラー45は、フラットケーブルCと接して巻き締め及び巻き戻しを補助するローラー部本体450と、ローラー部本体450の中央から軸方向下方へ延設した回転軸部453とで構成している。
【0057】
ローラー部本体450は、ローラー支持突部43の外周径よりも僅かに大きい内周径を有する軸方向に延びた円筒状のローラー部451と、ローラー部451の上端近傍において一定の厚みを有して、ローラー部451の内周を塞ぐように形成した上面部452とで構成している。
【0058】
回転軸部453は、上面部452の中央に軸受部43aより小径に形成した下向きの凸断面形状の基部454と、基部454の根元における円周上の3箇所に等間隔に配置した(図6(a)参照)脚部455と、脚部455の先端から径方向外側へ向う鉤爪状のフック形状の係止部456とで構成した、いわゆるスナップフット構造をなしている。
【0059】
なお、脚部455は、ローラー支持突部43の軸受部43aを貫通する長さを有し、内周面43bに接するように径方向外側へ緩やかに屈曲する形状に形成している。
【0060】
このような回転ローラー45の回転軸部453を、ローラー支持突部43の軸受部43aに挿通するように上方から組み付けて、回転ローラー45をローラー支持突部43で軸支している。このとき、図5に示すように、回転軸部453の脚部455と、軸受部43aと内周面43bとが摺動する摺動部Tは、僅かに軸方向に接している。
【0061】
さらに、図6(a)に示すように、脚部455と内周面43bとが摺動する摺動部Tでの径方向断面において、脚部455における内周面43bと対向する面は、内周面43bの方向へ向けて山形の突形状をなしている。
【0062】
詳述すると、図6(a)中の脚部455の1つ(図中のX部)を拡大した図6(b)に示すように、脚部455における内周面43bに対向する面は、中心Yを中心とする曲率半径一定の円弧形状に形成している。なお、この円弧形状は、内周面43bの曲率半径よりも小さい曲率半径で形成している。つまり、中心Yは、内周面43bの中心とは異なる中心であって、内周面43bに対して径方向内側に設定している。
【0063】
このように脚部455における内周面43bと対面する面を円弧形状としたことにより、脚部455は、摺動部Tの径方向断面において、内周面43bと点接触する点接触断面形状をなしている。
【0064】
上述した構成により、回転軸部453と軸受部43aは、軸方向に線接触状態で摺動することができる。従って、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tの摺動面積を小さくすることができ、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tに異物が混入し難く、万一、異物を噛み込んでも容易に排出することができる。
【0065】
さらに、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tに異物を噛み込んだまま、回転ローラー45が回転するリスクを低減することができ、回転軸部453の摺動部Tや軸受部43aの内周面43bに、異物によるバリやカエリなどが発生することを抑制することができる。異物による傷の発生を抑制することで、回転ローラー45は、ひっかかりなどなく円滑に回転することができる。
【0066】
また、脚部455における内周面43bと対向する面を、内周面43bの方向へ向けて山形の突形状としたことにより、フラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻しで回転ローラー45の回転方向が変わる際などに脚部455に倒れあるいは捩れが発生しても、摺動部Tは、線接触状態を維持することができる。
【0067】
加えて、突形状を内周部43bの中心とは異なる中心Yを中心とした円弧形状、つまり、内周部43bの曲率半径より小さい曲率半径の円弧形状としたことにより、脚部455の倒れや捩れに対して、より安定して摺動部Tの線接触状態を維持することができる。
【0068】
また、脚部455における内周面43bと対向する面の隅部が、内周面43bと接することなく摺動することができる。従って、成型時の隅部バリを摺動部Tに巻き込むことがなく、回転ローラー45の円滑な回転を阻害すること、あるいは隅部バリが剥離して新たな異物となることを防止することができる。さらに、回転ローラー45の回転方向が変わる際に、隅部が、内周面43bに接してひっかかりの原因となり、回転方向がスムーズに反転しないことを防止することができる。
【0069】
また、係止部456を鉤爪状のフック形状としたことで、回転ローラー45が、軸受部43aの円周縁にしっかりと係止されて、振動などの外力による軸方向の移動を規制するとともに、軸受部43aから回転軸部453が容易に脱落することを阻止し、回転ローラー45の回転不良を防止することができる。
【0070】
このようにして、回転ローラー45は、より円滑に回転することができるので、フラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻しを回転ローラー45に沿ってスムーズに行うことができる。そして、ステアリングロールコネクタ10を介してステアリング操作フィーリングにひっかかりなどの違和感が生じる、あるいは電気的に接続した各モジュールが操作不能になるようなことを防止することができる。
【0071】
また、内周面43bに塗布したグリスが、低温下では粘度が上がって、回転ローラー45の円滑な回転を阻害するおそれがある。しかしながら、摺動部Tの摺動面積を小さくしたことで、このようなグリスの粘度変化の影響も受け難くなる。
【0072】
なお、本実施形態では、摺動部Tを、軸方向に線接触としたが、脚部455と内周面43bが点接触で摺動するようにしてもよい。あるいは、摺動部Tを、摺動部Tの径方向断面において、脚部455の周方向幅より狭い接触幅で脚部455が内周面43bと線接触し、かつ回転軸部453の軸方向において、脚部455が内周面43bとある程度接触した状態、つまり面接触状態としてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、回転軸部453と摺動する円周面を軸受部43aの内周面43bとして説明したが、回転軸部と軸受部は、回転軸部が軸受部の外周面と摺動するような形状であってもよい。
【0074】
さらに、脚部455の突形状は、摺動部Tに対応する範囲でだけでなく、脚部455全体及び係止部456に至る範囲に形成してもよい。
【0075】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の回転コネクタ装置は、実施形態のステアリングロールコネクタ10に対応し、
以下同様に、
円周面は、内周面43bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0076】
例えば、径方向断面形状の別の実施形態の断面図である図7(a)に示すように、径方向断面形状における内周面43bと対向する形状を、楕円形の曲面形状などに形成してもよい。あるいは、図7(b)に示すように、径方向断面形状における内周面43bと対向する突形状の頂点近傍に凹溝部Uを設けて、1つの脚部455に摺動部Tを2箇所形成してもよい。このとき凹溝部Uは、グリス溜まりとして機能して、回転ローラー45の回転に伴い適宜、内周面43bにグリス補充することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…ステアリングロールコネクタ
20…ロテータ
21…回転側リング板
22…内周筒部
30…ステータ
31…固定側リング板
32…外周筒部
40…リテーナ
43a…軸受部
43b…内周面
45…回転ローラー
453…回転軸部
455…脚部
456…係止部
C…フラットケーブル
S…収容空間
T…摺動部
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車のステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するような回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置は、相対的に回転可能に同軸上に組み付けられるステータとロテータとで構成されるケーブルハウジングを備えている。
【0003】
回転コネクタ装置は、ケーブルハウジングのうち、ステータが車体側に固定され、ロテータがステアリングホイール側に組み付けられる。さらに、回転コネクタ装置は、ケーブルハウジング内部の収容空間にフラットケーブルを配設している。このように構成することによって、回転コネクタ装置は、フラットケーブルを介して、車体側とステアリングホイール側との間において、例えば、ステアリングホイール側に装備したホーンモジュール、エアバックモジュールと、車体側電源との電気的な接続を行う。
【0004】
また、回転コネクタ装置は、例えば特許文献1に記載されたように、収容空間の底面に配置され、フラットケーブルをステアリングの軸回りに回転案内するリテーナを備えたものも提案されている。このようなリテーナには、複数の回転ローラーが設けられて、収容空間においてフラットケーブルの巻き締め及び巻き戻しを回転補助することで、回転コネクタ装置がステアリング操作に追従して円滑に回転動作することができる。
【0005】
なお、特許文献1に記載の回転ローラーは、その回転軸となる部分がスナップフィット構造となっており、リテーナの軸受けにスナップフィット結合している(特許文献1中の図3参照)。
【0006】
このような回転ローラーの回転軸と、リテーナの軸受けとが摺動する摺動部の径方向断面(図8(a)参照)において、スナップフィット構造の脚部455は、軸受けの内周面43bに沿う断面形状となっている(図8(b)参照)。
【0007】
ここで回転ローラーを有する回転コネクタ装置が回転する際、リテーナと回転ローラーとの摺動部に異物を噛み込むと、回転軸と軸受けとの摺動面積が大きいため、容易に異物が排出されず、回転ローラーが円滑に回転できなくなるという問題がある。さらに、異物を噛み込んだことにより、軸受け側あるいは回転軸側の摺動部にバリなどが生じて、回転ローラーの回転に影響が出るという問題もある。
【0008】
このような異物は、回転コネクタ装置組み立て時に、外部から侵入するものだけでなく、リテーナや回転ローラー成型時に除去しきれなかったバリなどが要因となることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−217974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、回転ローラーをより円滑に回転させることのできる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、前記収容空間における前記リテーナ上部に、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続したフラットケーブルを、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、前記リテーナに設けた円周状の軸受部によって、前記回転ローラーに設けた回転軸部を回転自在に軸支する構成とし、前記回転軸部を、前記軸受部の円周面と摺動する摺動部を有し、円周方向に複数配置した脚部と、該脚部の先端に形成し、前記軸受部の円周縁に係止する係止部とで構成し、前記脚部において、少なくとも前記摺動部における径方向断面を、前記軸受部と点接触、もしくは前記脚部の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成したことを特徴とする。
前記円周面は、軸受部の外周面、あるいは軸受部の内周面とすることができる。
【0012】
この発明により、回転軸部と軸受部は、少なくとも径方向断面において点接触状態、あるいは脚部の周方向幅より狭い接触幅の線接触状態で摺動することができる。また、回転軸部の脚部が円周面の軸方向にある程度接触する形状であれば、回転軸部と軸受部は、軸方向に線接触状態、あるいは面接触状態で摺動することができる。従って、少なくとも径方向断面において点接触状態または線接触状態のいずれであっても、回転ローラーの回転軸部と軸受部との摺動面積が小さくなる。よって、回転軸部と軸受部との摺動部に異物が混入し難く、万一、異物を噛み込んでも容易に排出することができる。
【0013】
さらに、回転軸部と軸受部との摺動部に異物を噛み込んだまま、回転ローラーが回転するリスクを低減することができ、回転軸部の摺動部や軸受部の円周面に、異物によるバリやカエリなどが発生するおそれを抑制できる。このように異物による傷の発生を抑制することで、回転ローラーは、ひっかかりなどなく円滑に回転することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記径方向断面形状における前記軸受部に対向する形状を、前記軸受部の方向へ山形の突形状に形成することができる。
【0015】
この発明により、フラットケーブルの巻き締め及び巻き戻しで回転ローラーの回転方向が変わる際などに脚部に倒れあるいは捩れが発生しても、摺動部は少なくとも径方向断面において点接触状態あるいは線接触状態を維持することができる。また、脚部の軸受部に対向する面と径方向の面からなる隅部が、円周面と接することなく摺動することができる。従って、成型時の隅部バリを摺動部に巻き込むことがなく、回転ローラーの円滑な回転を阻害すること、あるいは隅部バリが剥離して新たな異物となることを防止することができる。さらに、回転ローラーの回転方向が変わる際に、隅部が、円周面に接してひっかかりの原因となり、回転方向がスムーズに反転しないことを防止することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記突形状を、前記軸受部の曲率半径よりも小さい曲率半径の曲面に形成することができる。
前記曲率半径は、曲線の任意の点における曲がり具合を示すものであり、この曲率半径を小さくするほど、曲線の曲がり具合がきつくすることができる。
【0017】
この発明により、回転ローラーの脚部における軸受部と対向する面に、軸受部の円周面に沿うことのない曲面形状を形成し、脚部の倒れや捩れに対して、摺動部の少なくとも径方向断面における点接触状態あるいは線接触状態を、より安定して維持することができる。また、曲面形状は、必ずしも一定の曲率半径を有する円弧形状に限らず、楕円形の長径端の曲面形状などに形成することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記係止部を、径方向へ突出して前記円周縁に係止する鉤爪状のフック形状にすることができる。
【0019】
この発明により、回転ローラーが、軸受部の円周縁にしっかりと係止されて、振動などの外力による軸方向の移動を規制するとともに、軸受部から回転軸部が容易に脱落することを阻止し、回転ローラーの回転不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、回転ローラーをより円滑に回転させることのできる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観を示す斜視図。
【図2】本実施形態のステアリングロールコネクタの分解状態を示す分解斜視図。
【図3】ロテータを外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】回転ローラーとローラー支持突部の軸支状態を示す断面図。
【図6】回転ローラーとローラー支持突部における図5中のB−B線矢視方向の断面図。
【図7】径方向断面形状の別の実施形態を示す断面図。
【図8】従来技術の回転ローラーの断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は、本実施形態のステアリングロールコネクタ10の外観の斜視図を示し、図2は、本実施形態のステアリングロールコネクタ10の分解状態の分解斜視図を示し、図3は、ロテータ20を外した状態の本実施形態のステアリングロールコネクタ10の平面図を示し、図4は、図1中のA−A線矢視断面図を示している。
【0023】
本実施形態のステアリングロールコネクタ10は、図1から図4に示すように、ケーブルハウジング10aと、リテーナ40と、回転ロック構成体50とで構成している。
【0024】
ケーブルハウジング10aは、図3及び図4に示すように、平面視中央部分にステアリングの回転軸方向(図4中の上下方向)に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状に構成している。差込孔Hは、ステアリングコラム(図示省略)から突出するステアリングシャフト(図示省略)の挿入を許容する径で形成している。そして、ケーブルハウジング10aは、互いに相対回転可能なステータ30と、ロテータ20とで構成している。
なお、ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールを固定している。
【0025】
ロテータ20は、図2に示すように、リング状に形成された天板として機能する回転側リング板21と、この回転側リング板21の内周縁から下方に向かって延びる円筒状の内周筒部22とで構成している。
【0026】
そして、ロテータ20は、ステアリングホイールに固定され、ステアリングホイールとともに一体的に回転する構成である。詳しくは、ロテータ20は、ステアリングの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。
【0027】
また、ロテータ20には、ロテータ20の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23を備えている。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとで構成している。第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側23Bとは、回転側リング板21の周方向において、所定間隔を隔ててコネクタ接続口が上向きになるように配置している。
【0028】
そして、ロテータ側コネクタ23(23A、23B)は、例えば、ステアリングホイールに配置されるホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0029】
ステータ30は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラム内部に配設しているコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定して、ステアリングホイールに対して相対回転可能に取り付けている。ステータ30は、図2に示すように、環状に形成した底板として機能する固定側リング板31と、この固定側リング板31の外周縁から上方に向かって延びる円筒状の外周筒部32とで構成し、固定側リング板31の外周縁と外周筒部32の下端とを嵌合することで一体に構成している。
【0030】
外周筒部32は、図3及び図4に示すように、円筒状の外側外周筒部32oと、外側外周筒部32oよりも僅かに小径である円筒状の内側外周筒部32iとで構成し、外側外周筒部32oと内側外周筒部32iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した径方向の2層構造で構成している。
【0031】
また、内側外周筒部32iの上部には、図4に示すように、半径方向の内側(径内方向)へ向けて突出し、後述するフラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片33を鍔状に形成している。
【0032】
また、ステータ30には、ステータ側コネクタ34を備えている。
ステータ側コネクタ34は、第1ステータ側コネクタ34Aと第2ステータ側コネクタ34Bとで構成している。第1ステータ側コネクタ34Aと第2ステータ側コネクタ34Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部32(外側外周筒部32o)の外側に配置している。
【0033】
そして、ステータ側コネクタ34(34A、34B)は、ロアコラムカバー(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続している。
【0034】
このようなステータ30とロテータ20とをステアリングの回転軸方向に組み付けたケーブルハウジング10aの内部は、図2から図4に示すように、ステータ30の固定側リング板31が、ロテータ20の回転側リング板21と回転軸方向で対面し、ステータ30の外周筒部32が、ロテータ20の内周筒部22に対して半径方向外側で対面して収容空間Sを構成している。
この収容空間Sには、リテーナ40と、フラットケーブルCとを収容している。
【0035】
リテーナ40は、図2から図4に示すように、複数の回転ローラー45とベースリング41とで構成し、収容空間Sを構成するステータ30の底面にロテータ20の回転軸を中心にして回転可能に載置している。
【0036】
ベースリング41は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部42とローラー支持突部43とローラー外周側突部44とで構成している。
なお、回転ローラー45とローラー支持突部43については、後で詳しく説明するものとし、ここでは簡単に説明する。
【0037】
ベースリング本体部42は、固定側リング板31に対して回転方向に摺動可能に載置し、ステータ30に対して相対回転可能に構成している。
ローラー支持突部43は、ベースリング本体部42の周方向に等間隔ごとに回転ローラー45を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0038】
ローラー外周側突部44は、ローラー支持突部43の間で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラー45の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部分Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部42に対して上方に向けて突出している。
【0039】
回転ローラー45は、ローラー支持突部43と同じ数で備えられ、それぞれローラー支持突部43に軸支され、それぞれがロテータ20の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けている。
【0040】
フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて2本を重ね合わせて巻き回した状態で収容し、第1ロテータ側コネクタ23Aと第1ステータ側コネクタ34A、及び、第2ロテータ側コネクタ23Bと第2ステータ側コネクタ34Bとを、それぞれ相互に電気的に接続している。
【0041】
詳しくは、重ね合わせた2本のうち一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第1ロテータ側コネクタ23Aに接続し、他端を第2ステータ側コネクタ34Aに接続している。
【0042】
そして、もう一方のフラットケーブルCにおける長さ方向の一端を第2ロテータ側コネクタ23Bに接続し、他端を第2ステータ側コネクタ34Bに接続している。
【0043】
このようなフラットケーブルCは、ケーブルハウジング10aの内部の収容空間Sにおいて、固定側リング板31に対して回転自在に載置されたリテーナ40によって支持され、巻回した状態で収容している。
【0044】
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ34A、第2ステータ側コネクタ34Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3から図4に示すように、リテーナ40の外側でステータ30の外周筒部32(内側外周筒部32i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coを構成している。
【0045】
従って、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ34の位置において固定している。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わせて巻き回しているが、図3及び図4では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0046】
そして、図3中の破線で示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の回転ローラー45のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crを構成している。
【0047】
さらに、フラットケーブルCにおいて、反転部分Crより長さ方向の先端側によって、リテーナ40の内側でロテータ20の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciを構成している。フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23Bに接続している。
【0048】
従って、内側巻き部分Ciの先端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定している。
【0049】
このように、収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ20がステータ30に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0050】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ40とともに適宜回転する。これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0051】
続いて上述の回転ロック構成体50について簡単に説明する。回転ロック構成体50は、図2に示すように、ロック体51とバネ受けスリーブ53と、ロック体51および該バネ受けスリーブ53との間に介在する戻しバネ52とで構成している。
【0052】
バネ受けスリーブ53を戻しバネ52の付勢力に抗して押し上げることでステータ30に対してロテータ20が相対回転しないようロック体51でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回転することを許容するようロック体51によるロックを解除することができる。
【0053】
次に、上述したようなステアリングロールコネクタ10において、ローラー支持突部43及びローラー支持突部43で軸支する回転ローラー45について、図5から図7を用いて詳述する。
【0054】
なお、図5は、回転ローラー45とローラー支持突部43の軸支状態の断面図を示し、図6は、回転ローラー45とローラー支持突部43における図5中のB−B線矢視方向の断面図を示している。また、図6(a)は、図5中のB−B矢視方向の断面図を示し、図6(b)は、図6(a)のX部を拡大した部分拡大図を示している。
【0055】
ローラー支持突部43は、図5に示すように、ベースリング本体部42から円筒部材を上方へ向けて突出して形成し、その内周面には、軸方向中央近傍に径方向中心に向けて膨出した軸受部43aを形成している。また、軸受部43aの内周面43bには、潤滑剤として少量のグリスを塗布している。
【0056】
回転ローラー45は、フラットケーブルCと接して巻き締め及び巻き戻しを補助するローラー部本体450と、ローラー部本体450の中央から軸方向下方へ延設した回転軸部453とで構成している。
【0057】
ローラー部本体450は、ローラー支持突部43の外周径よりも僅かに大きい内周径を有する軸方向に延びた円筒状のローラー部451と、ローラー部451の上端近傍において一定の厚みを有して、ローラー部451の内周を塞ぐように形成した上面部452とで構成している。
【0058】
回転軸部453は、上面部452の中央に軸受部43aより小径に形成した下向きの凸断面形状の基部454と、基部454の根元における円周上の3箇所に等間隔に配置した(図6(a)参照)脚部455と、脚部455の先端から径方向外側へ向う鉤爪状のフック形状の係止部456とで構成した、いわゆるスナップフット構造をなしている。
【0059】
なお、脚部455は、ローラー支持突部43の軸受部43aを貫通する長さを有し、内周面43bに接するように径方向外側へ緩やかに屈曲する形状に形成している。
【0060】
このような回転ローラー45の回転軸部453を、ローラー支持突部43の軸受部43aに挿通するように上方から組み付けて、回転ローラー45をローラー支持突部43で軸支している。このとき、図5に示すように、回転軸部453の脚部455と、軸受部43aと内周面43bとが摺動する摺動部Tは、僅かに軸方向に接している。
【0061】
さらに、図6(a)に示すように、脚部455と内周面43bとが摺動する摺動部Tでの径方向断面において、脚部455における内周面43bと対向する面は、内周面43bの方向へ向けて山形の突形状をなしている。
【0062】
詳述すると、図6(a)中の脚部455の1つ(図中のX部)を拡大した図6(b)に示すように、脚部455における内周面43bに対向する面は、中心Yを中心とする曲率半径一定の円弧形状に形成している。なお、この円弧形状は、内周面43bの曲率半径よりも小さい曲率半径で形成している。つまり、中心Yは、内周面43bの中心とは異なる中心であって、内周面43bに対して径方向内側に設定している。
【0063】
このように脚部455における内周面43bと対面する面を円弧形状としたことにより、脚部455は、摺動部Tの径方向断面において、内周面43bと点接触する点接触断面形状をなしている。
【0064】
上述した構成により、回転軸部453と軸受部43aは、軸方向に線接触状態で摺動することができる。従って、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tの摺動面積を小さくすることができ、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tに異物が混入し難く、万一、異物を噛み込んでも容易に排出することができる。
【0065】
さらに、回転軸部453と軸受部43aとの摺動部Tに異物を噛み込んだまま、回転ローラー45が回転するリスクを低減することができ、回転軸部453の摺動部Tや軸受部43aの内周面43bに、異物によるバリやカエリなどが発生することを抑制することができる。異物による傷の発生を抑制することで、回転ローラー45は、ひっかかりなどなく円滑に回転することができる。
【0066】
また、脚部455における内周面43bと対向する面を、内周面43bの方向へ向けて山形の突形状としたことにより、フラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻しで回転ローラー45の回転方向が変わる際などに脚部455に倒れあるいは捩れが発生しても、摺動部Tは、線接触状態を維持することができる。
【0067】
加えて、突形状を内周部43bの中心とは異なる中心Yを中心とした円弧形状、つまり、内周部43bの曲率半径より小さい曲率半径の円弧形状としたことにより、脚部455の倒れや捩れに対して、より安定して摺動部Tの線接触状態を維持することができる。
【0068】
また、脚部455における内周面43bと対向する面の隅部が、内周面43bと接することなく摺動することができる。従って、成型時の隅部バリを摺動部Tに巻き込むことがなく、回転ローラー45の円滑な回転を阻害すること、あるいは隅部バリが剥離して新たな異物となることを防止することができる。さらに、回転ローラー45の回転方向が変わる際に、隅部が、内周面43bに接してひっかかりの原因となり、回転方向がスムーズに反転しないことを防止することができる。
【0069】
また、係止部456を鉤爪状のフック形状としたことで、回転ローラー45が、軸受部43aの円周縁にしっかりと係止されて、振動などの外力による軸方向の移動を規制するとともに、軸受部43aから回転軸部453が容易に脱落することを阻止し、回転ローラー45の回転不良を防止することができる。
【0070】
このようにして、回転ローラー45は、より円滑に回転することができるので、フラットケーブルCの巻き締め及び巻き戻しを回転ローラー45に沿ってスムーズに行うことができる。そして、ステアリングロールコネクタ10を介してステアリング操作フィーリングにひっかかりなどの違和感が生じる、あるいは電気的に接続した各モジュールが操作不能になるようなことを防止することができる。
【0071】
また、内周面43bに塗布したグリスが、低温下では粘度が上がって、回転ローラー45の円滑な回転を阻害するおそれがある。しかしながら、摺動部Tの摺動面積を小さくしたことで、このようなグリスの粘度変化の影響も受け難くなる。
【0072】
なお、本実施形態では、摺動部Tを、軸方向に線接触としたが、脚部455と内周面43bが点接触で摺動するようにしてもよい。あるいは、摺動部Tを、摺動部Tの径方向断面において、脚部455の周方向幅より狭い接触幅で脚部455が内周面43bと線接触し、かつ回転軸部453の軸方向において、脚部455が内周面43bとある程度接触した状態、つまり面接触状態としてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、回転軸部453と摺動する円周面を軸受部43aの内周面43bとして説明したが、回転軸部と軸受部は、回転軸部が軸受部の外周面と摺動するような形状であってもよい。
【0074】
さらに、脚部455の突形状は、摺動部Tに対応する範囲でだけでなく、脚部455全体及び係止部456に至る範囲に形成してもよい。
【0075】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の回転コネクタ装置は、実施形態のステアリングロールコネクタ10に対応し、
以下同様に、
円周面は、内周面43bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0076】
例えば、径方向断面形状の別の実施形態の断面図である図7(a)に示すように、径方向断面形状における内周面43bと対向する形状を、楕円形の曲面形状などに形成してもよい。あるいは、図7(b)に示すように、径方向断面形状における内周面43bと対向する突形状の頂点近傍に凹溝部Uを設けて、1つの脚部455に摺動部Tを2箇所形成してもよい。このとき凹溝部Uは、グリス溜まりとして機能して、回転ローラー45の回転に伴い適宜、内周面43bにグリス補充することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…ステアリングロールコネクタ
20…ロテータ
21…回転側リング板
22…内周筒部
30…ステータ
31…固定側リング板
32…外周筒部
40…リテーナ
43a…軸受部
43b…内周面
45…回転ローラー
453…回転軸部
455…脚部
456…係止部
C…フラットケーブル
S…収容空間
T…摺動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、
環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、
前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、
該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、
前記収容空間における前記リテーナ上部に、
前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続したフラットケーブルを、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、
前記リテーナに設けた円周状の軸受部によって、前記回転ローラーに設けた回転軸部を回転自在に軸支する構成とし、
前記回転軸部を、
前記軸受部の円周面と摺動する摺動部を有し、円周方向に複数配置した脚部と、該脚部の先端に形成し、前記軸受部の円周縁に係止する係止部とで構成し、
前記脚部において、少なくとも前記摺動部における径方向断面を、
前記軸受部と点接触、もしくは前記脚部の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記径方向断面形状における前記軸受部に対向する形状を、
前記軸受部の方向へ山形の突形状に形成した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記突形状を、
前記軸受部の曲率半径よりも小さい曲率半径の曲面に形成した
請求項1または請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記係止部を、
径方向へ突出して前記円周縁に係止する鉤爪状のフック形状とした
請求項1から請求項3のいずれかに記載の回転コネクタ装置。
【請求項1】
環状の回転側リング板及び該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成するロテータと、
環状の固定側リング板及び該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成するステータとを、時計回り方向及び反時計回り方向に相対回転可能に嵌合し、
前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで収容空間を構成し、
該収容空間底部に、複数の回転ローラーを軸支する環状のリテーナを載置するとともに、
前記収容空間における前記リテーナ上部に、
前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続したフラットケーブルを、前記回転ローラーに沿って巻き締め及び巻き戻し可能に収容した回転コネクタ装置であって、
前記リテーナに設けた円周状の軸受部によって、前記回転ローラーに設けた回転軸部を回転自在に軸支する構成とし、
前記回転軸部を、
前記軸受部の円周面と摺動する摺動部を有し、円周方向に複数配置した脚部と、該脚部の先端に形成し、前記軸受部の円周縁に係止する係止部とで構成し、
前記脚部において、少なくとも前記摺動部における径方向断面を、
前記軸受部と点接触、もしくは前記脚部の周方向幅より狭い接触幅で線接触する径方向断面形状に形成した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記径方向断面形状における前記軸受部に対向する形状を、
前記軸受部の方向へ山形の突形状に形成した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記突形状を、
前記軸受部の曲率半径よりも小さい曲率半径の曲面に形成した
請求項1または請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記係止部を、
径方向へ突出して前記円周縁に係止する鉤爪状のフック形状とした
請求項1から請求項3のいずれかに記載の回転コネクタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−109181(P2012−109181A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258780(P2010−258780)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
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