説明

回転コネクタ

【課題】3枚以上のフラットケーブルを使用してもスムーズな巻き締め巻き戻し動作を実現した回転コネクタ。
【解決手段】ステータ部材1とロータ部材2との間の環状空間10内に4枚のフラットケーブル3,4を途中で巻き方向を反転した状態で収納し、該フラットケーブルの反転部3a,4aを環状空間の内部に回動可能に配置したホルダ5の第1、第2の開口12,13に個別に通過させた回転コネクタにおいて、第1の開口の周方向に沿う幅寸法を第2の開口よりも狭く設定し、第1の開口を通過する1枚の駆動側フラットケーブル3の曲げ強度を第2の開口を通過する残り3枚の従動側フラットケーブル4の曲げ強度よりも高く設定し、かつ、第1のケーブル導出部P1から導出される駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4のうち、駆動側フラットケーブルが内筒部8bの外周面の下側に巻かれ、その上に従動側フラットケーブルが巻かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリング装置に組み込まれてエアーバッグシステム等の電気的接続手段として使用される回転コネクタに係り、特に、ステータ部材とロータ部材との間に画成される環状空間内に3枚以上のフラットケーブルが反転部を介して逆向きに巻回された回転コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、外筒部を有するステータ部材に内筒部を有するロータ部材を回転自在に支持し、これら外筒部と内筒部との間に画成される環状空間内にフラットケーブルを収納・巻回したものであり、自動車のステアリング装置のように回転数が有限であるハンドルに装着されたエアーバッグ・インフレータ等の電気的接続手段として使用されている。前記フラットケーブルは絶縁フィルムに導体を担持した帯状体であり、このフラットケーブルを渦巻状に巻回した渦巻タイプと途中で反転して逆向きに巻回した反転タイプとが知られているが、後者の反転タイプの方がフラットケーブルの長さを格段に短くすることができて主流になっている。通常、このような反転タイプの回転コネクタでは1枚のフラットケーブルが用いられているが、2枚以上のフラットケーブルに導体を振り分けて多回路化に対応するようにした回転コネクタが従来より提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は上記特許文献1に開示された従来の回転コネクタの平面図であり、この回転コネクタは、外筒部100aを有するステータ部材100と、このステータ部材100の中心位置に回転自在に支持された内筒部101aを有するロータ部材101と、これら外筒部100aと内筒部101aによって画成される環状空間102の内部に回転可能に配置されたリング状のホルダ103と、この環状空間102内に途中で巻き方向を反転した状態で収納された第1および第2のフラットケーブル104,105とを備えている。ホルダ103には一対の固定筒106が立設されると共に、複数のローラ107が回転可能に支持されており、これら固定筒106はそれぞれローラ107群の1つと周方向に所定幅を保って対向している。一方の固定筒106とそれに対向するローラ107との間を第1の開口108、他方の固定筒106とそれに対向するローラ107との間を第2の開口109とすると、第1の開口108の周方向の幅寸法は第2の開口109の周方向の幅寸法に比べて小さめに設定されている。
【0004】
第1および第2のフラットケーブル104,105は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の絶縁フィルムに複数本の導体を担持した帯状体であり、便宜上、第1のフラットケーブル104を黒塗り、第2のフラットケーブル105を白抜きで示してある。両フラットケーブル104,105の外方端部は外筒部100aに設けられた固定側ジョイント110に接続され、この固定側ジョイント110を介してステータ部材100の外部に電気的に導出されている。また、両フラットケーブル104,105の内方端部は内筒部101aに設けられた可動側ジョイント111に接続され、この可動側ジョイント111を介してロータ部材101の外部に電気的に導出されている。その際、両フラットケーブル104,105は、第1のフラットケーブル104を内側(下側)にした状態で可動側ジョイント111から導出されて内筒部101aの外周壁に反時計方向に巻回された後、そこから分岐して第1のフラットケーブル104は幅狭な第1の開口108を通過してローラ107群の1つにU字状に反転され(以下、これを反転部104aという)、第2のフラットケーブル105は幅広な第2の開口109を通過してローラ107群の別の1つにU字状に反転され(以下、これを反転部105aという)、さらに第2のフラットケーブル105を外側にした状態で外筒部100aの内周壁に沿って時計方向に巻回された後、固定側ジョイント110に至るように環状空間102内に収納されている。
【0005】
このように概略構成された回転コネクタにおいて、ロータ部材101が中立位置から反時計方向(図5の矢印A方向)に回転すると、第1および第2のフラットケーブル104,105の反転部104a,105aはロータ部材101よりも少ない回転量だけ矢印A方向へ移動し、これら反転部104a,105aに追従してホルダ103も矢印A方向へ移動する。その結果、これらの移動量の約2倍の長さのフラットケーブル104,105が内筒部101aの外周壁から繰り出されて外筒部100aの内周壁側に巻き戻される。この場合、巻付径の大きい第2のフラットケーブル105の反転部105aの方が巻付径の小さい第1のフラットケーブル104の反転部104aよりも若干速く移動するが、前述したように第1の開口108が第2の開口109よりも幅狭に設定されているため、両反転部104a,105aはそれぞれの開口108,108に対面する固定筒106を押圧し、ホルダ103は両反転部104a,105aからの押圧力を受けて環状空間102の内部を矢印A方向へ回動する。
【0006】
上記とは逆に、ロータ部材101が中立位置から時計方向(図5の矢印B方向)に回転すると、両フラットケーブル104,105の反転部104a,105aはロータ部材101よりも少ない回転量だけ矢印B方向へ移動し、これら反転部104a,105aに追従してホルダ103も矢印B方向へ移動する。その結果、これらの移動量の約2倍の長さのフラットケーブル104,105が外筒部100aの内周壁側から繰り出されて内筒部101aの外周壁に巻き締められる。この場合も、巻付径の大きい第2のフラットケーブル105の反転部105aの方が巻付径の小さい第1のフラットケーブル104の反転部104aよりも若干速く移動するが、第1の開口108が第2の開口109よりも幅狭に設定されているため、両反転部104a,105aはそれぞれの開口108,108に対面するローラ107を引っ張り、ホルダ103は両反転部104a,105aからの引張力を受けて環状空間102の内部を矢印B方向へ回動する。
【0007】
前述した従来の回転コネクタにおいては、ロータ部材101を矢印A方向へ回転して両フラットケーブル104,105を外筒部100aの内周壁側に巻き戻す動作時に、第1の開口108を通過する第1のフラットケーブル104にローラ107との接触部位で図6の矢印Fで示す方向の繰り出し力が発生し、この繰り出し力Fの矢印Fxと矢印Fyで示す方向の各分力のうち、矢印Fx方向の分力がホルダ103を回転駆動する押圧力として作用し、矢印Fy方向の分力が第1のフラットケーブル104の反転部104aを外筒部100a側へ押し出す巻き広げ力として作用する。詳細な説明は省略するが、第2の開口109を通過する第2のフラットケーブル105についても同様である。そして、通常の巻き戻し動作時では、矢印Fx方向の分力が矢印Fy方向の分力よりも上回っているため、第1のフラットケーブル104の反転部104aが第1の開口108を通過するときに固定筒106を回転方向(矢印A方向)へ押圧し、同様にして第2のフラットケーブル105の反転部105aが第2の開口109を通過するときに固定筒106を回転方向へ押圧し、ホルダ103は両反転部104a,105aからの押圧力を受けて矢印A方向へスムーズに回転する。
【特許文献1】特開平10−116672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の回転コネクタにおいて、3枚以上のフラットケーブルを3つ以上の開口で反転させてロータ部材を反時計方向に回転するとき、各フラットケーブルの反転部がそれぞれの開口に対面する固定筒を押圧するように各開口の幅を設定するのは困難であり、ロータ部材を時計方向に回転するとき、各フラットケーブルの反転部がそれぞれの開口に対面するローラを引っ張るように各開口の幅を設定するのも困難である。また、各開口の幅の設定値によっては、各フラットケーブルの反転部からホルダに作用する駆動力が干渉し合い、スムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現することが困難となる。
【0009】
そこで、幅狭な開口を通過するフラットケーブルの反転部のみでホルダを駆動するように各開口の幅を設定することが考えられるが、この場合、幅狭な開口を通過するフラットケーブルの反転部に多大なストレスがかかり、幅狭な開口におけるフラットケーブルの反転部の矢印A方向への動きが阻害されてホルダをスムーズに駆動できなくなるため、回転方向へ進めなくなった幅狭な開口におけるフラットケーブルの反転部がその開口に連続するスペース内に無理に入り込んでしまうことがある。その結果、幅狭な開口を通過するフラットケーブルが複雑に折れ曲がって座屈したり、フラットケーブルの絶縁フィルムに担持された導体が破断してしまうという問題が発生し、特に環境温度が高温になるとこのような問題の発生頻度は高くなる。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、3枚以上のフラットケーブルを使用してもスムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現できる回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の回転コネクタは、外筒部を有するステータ部材と、内筒部を有し前記ステータ部材に回転自在に支持されたロータ部材と、前記外筒部と前記内筒部との間に画成された環状空間内に途中で巻き方向を反転した状態で収納され、その両端が前記ステータ部材と前記ロータ部材にそれぞれ固定された3枚以上のフラットケーブルと、前記環状空間に回転可能に配置され、前記各フラットケーブルの反転部が個別に通過する3つ以上の開口部を有するホルダとを備え、1つの前記開口部の周方向に沿う幅寸法が残りの前記開口部の周方向に沿う幅寸法よりも幅狭になるように設定し、前記ホルダがこの幅狭な開口部を通過する前記フラットケーブルからの押圧力を受けて駆動されるようになすと共に、この駆動側のフラットケーブルの曲げ強度を残りの前記フラットケーブルの曲げ強度よりも高く設定し、かつ、前記駆動側のフラットケーブルを含む少なくとも2枚以上の前記フラットケーブルを前記内筒部の共通のケーブル導出部から前記環状空間に向けて導出させ、これら各フラットケーブルのうち前記駆動側のフラットケーブルが前記内筒部の外周面に最も下側で巻かれるようにした。
【0012】
このように構成された回転コネクタでは、幅狭な開口部を通過する1枚のフラットケーブルはホルダに回転方向の押圧力を付与する駆動側フラットケーブルであるが、幅広な開口部を通過する残り複数枚のフラットケーブルはホルダの駆動に関与しない従動側フラットケーブルであり、この駆動側フラットケーブルの曲げ強度が他の各従動側フラットケーブルの曲げ強度よりも高く設定されているので、駆動側フラットケーブルの座屈を防止してホルダをスムーズに駆動することができる。また、駆動側フラットケーブルがケーブル導出部から導出されて内筒部の外周面に最も下側に巻かれ、その上に残りの従動側フラットケーブルが順次巻かれるため、駆動側フラットケーブルの反転部の曲率が他の従動側フラットケーブルの反転部の曲率に比べて大きくなり、その分、駆動側フラットケーブルの反転部にかかる曲げストレスを低減させることができ、駆動側フラットケーブルの長寿命化を図ることができる。すなわち、内筒部の外周面に対して最も下側に巻かれるフラットケーブルよりも上側に巻かれるフラットケーブルの反転部は、このフラットケーブルの反転部と内筒部の外周面との間および外筒部の内周面との間のそれぞれに、内筒部の外周面に対して下側に巻かれるフラットケーブルが介在するため、これらの介在する各フラットケーブルの厚さ分だけ反転部と内筒部の外周面との間および外筒部の内周面との間のスペースが小さくなり、内筒部の外周面に対して最も下側に巻かれるフラットケーブルの反転部の曲率に比べると小さな曲率となる。したがって、仮に内筒部の外周面に対して最も下側に巻かれるフラットケーブルよりも上側に巻かれるフラットケーブルを駆動側フラットケーブルとした場合は、内筒部の外周面に対して最も下側に巻かれるフラットケーブルを駆動側フラットケーブルとした反転部の曲率に比べて小さな曲率となるので、駆動側フラットケーブルの反転部にかかる曲げストレスが大きくなり、駆動側フラットケーブルの断線や破損が生じ易くなる。それゆえ、上記した本発明の構成によれば、3枚以上のフラットケーブルを使用してもスムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現することができ、また高温の使用環境下であっても安定して使用できると共に、駆動側フラットケーブルの長寿命化を図ることができる。
【0013】
上記の構成において、駆動側フラットケーブルを含む3枚以上全てのフラットケーブルを内筒部の共通のケーブル導出部から導出させることも可能であるが、内筒部の周方向に離れた2カ所に一対のケーブル導出部を設け、一方のケーブル導出部から駆動側フラットケーブルと従動側フラットケーブルを含む2枚以上のフラットケーブルを導出させると共に、他方のケーブル導出部から2枚以上の従動側フラットケーブルを導出させるようにしても良い。
【0014】
また、上記の構成において、駆動側フラットケーブルの曲げ強度を他のフラットケーブルよりも高くする手段として、駆動側フラットケーブルの絶縁フィルムのみを従動側フラットケーブルの絶縁フィルムに比べて座屈しにくい材料とすることも可能であるが、駆動側と従動側を含めた全てのフラットケーブルが同一材料の絶縁フィルムに導体を担持した帯状体からなると共に、駆動側フラットケーブルの厚み寸法を他の従動側フラットケーブルの厚み寸法よりも大きく設定すると、各フラットケーブル間の摩擦抵抗を均一にすることができて好ましい。
【0015】
また、上記の構成において、残りの開口部の周方向に沿う幅寸法が幅狭な開口部の周方向に沿う幅寸法の4.5倍以上に設定されていると、3枚以上のフラットケーブルの各反転部からホルダに作用する駆動力が干渉し合わないようにすることができるので、さらなるスムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現することができて好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転コネクタは、使用される3枚以上のフラットケーブルのうち、幅狭な開口部を通過する1枚のフラットケーブルがホルダに回転方向の押圧力を付与する駆動側フラットケーブルとなると共に、幅広な開口部を通過する残りのフラットケーブルがホルダの駆動に関与しない従動側フラットケーブルとなり、この駆動側フラットケーブルの曲げ強度が他の各従動側フラットケーブルの曲げ強度よりも高く設定されているので、駆動側フラットケーブルの座屈を防止してホルダをスムーズに駆動することができ、しかも、駆動側フラットケーブルがケーブル導出部から導出されて内筒部の外周面の最も下側に巻かれており、駆動側フラットケーブルの反転部の曲率が他の従動側フラットケーブルの反転部の曲率に比べて大きくなるため、駆動側フラットケーブルの反転部にかかる曲げストレスを低減させることができる。それゆえ、3枚以上のフラットケーブルを使用してもスムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現することができ、また高温の使用環境下であっても安定して使用できると共に、駆動側フラットケーブルの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る回転コネクタの断面図、図2は図1の回転コネクタのケーブル巻き締め状態を示す平面図、図3は図1の回転コネクタのケーブル巻き戻し状態を示す平面図、図4は図1の回転コネクタに備えられる駆動側フラットケーブルと従動側フラットケーブルの寸法関係を示す説明図である。ただし、図2と図3において、ロータ部材の天板部は図示省略されている。
【0018】
本実施形態例に係る回転コネクタは、ステータ部材1と、ステータ部材1に対して回転自在に連結されたロータ部材2と、これらステータ部材1とロータ部材2間を電気的に接続する1枚の駆動側フラットケーブル3および3枚の従動側フラットケーブル4と、ステータ部材1とロータ部材2の内部に配置された合成樹脂製のホルダ5とで概略構成されている。
【0019】
ステータ部材1はステアリングコラムに設置される固定側部材であり、このステータ部材1は合成樹脂製の底板6と外筒部である外筒体7とからなる。底板6の中央にはセンタ孔6aが形成されており、外筒体7は底板6の外周縁に一体化されている。また、外筒体7の外周面には外方へ突出する一対の延出部7a,7bが一体形成されており、これら延出部7a,7bの内部には図示せぬ固定側ジョイントがそれぞれ配設されている。
【0020】
ロータ部材2はハンドルに連結される可動側部材であり、このロータ部材2は合成樹脂製のロータ本体8とロータスナップ9とからなる。ロータ本体8は、底板6に対向する円環状の天板部8aと、この天板部8aの中央から垂下する内筒部8bとを有している。内筒部8bはステアリングシャフトに挿通できる程度の内径寸法を有しており、この内筒部8bの内部には図示せぬ一対の可動側ジョイントが配設されている。ロータスナップ9はロータ本体8の内筒部8bにスナップ結合によって一体化されており、このロータスナップ9を底板6のセンタ孔6aに挿入することにより、ステータ部材1に対してロータ部材2が回転自在に連結されるようになっている。そして、かかるステータ部材1とロータ部材2の連結状態において、ステータ部材1の底板6および外筒体7とロータ本体8の天板部8aおよび内筒部8bとによって平面視リング状の環状空間10が画成されている。
【0021】
駆動側フラットケーブル3はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる絶縁フィルムに導体を担持した帯状体であり、同様に3枚の従動側フラットケーブル4もPETからなる絶縁フィルムに導体を担持した帯状体であり、これら各フラットケーブル3,4は環状空間10内にそれぞれU字状の反転部3a,4aを介して逆向きに収納されている。ただし、駆動側フラットケーブル3の厚み寸法t1は従動側フラットケーブル4の厚み寸法t2に比べて十分に大きく設定してあり(本実施形態例の場合、t1=0.22mm、t2=0.11mm)、このように駆動側フラットケーブル3として従動側フラットケーブル4の2倍程度の厚みを有するフラットケーブルを使用することにより、駆動側フラットケーブル3の曲げ強度(弾性限度)が従動側フラットケーブル4の曲げ強度よりも十分に高くなるように設定してある。
【0022】
図2から明らかなように、駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4の外方端部は延出部7a内の一方の固定側ジョイントに接続され、残り2枚の従動側フラットケーブル4の外方端部は延出部7b内の他方の固定側ジョイントに接続されており、各フラットケーブル3,4の外方端部はこれら固定側ジョイントを介してステータ部材1の外部に電気的に導出されている。
【0023】
また、図3から明らかなように、駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4の内方端部は第1のケーブル導出部P1を通過して内筒部8b内の一方の可動側ジョイントに接続され、残り2枚の従動側フラットケーブル4の内方端部は第2のケーブル導出部P2を通過して内筒部8b内の他方の可動側ジョイントに接続されており、各フラットケーブル3,4の内方端部はこれら可動側ジョイントを介してロータ部材2の外部に電気的に導出されている。ここで、第1のケーブル導出部P1と第2のケーブル導出部P2は内筒部8bの周方向に約180度離れた対向位置に設けられており、駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4が第1のケーブル導出部P1から環状空間10に向けて導出され、残り2枚の従動側フラットケーブル4が第2のケーブル導出部P2から環状空間10に向けて導出されている。そして、第1のケーブル導出部P1を上流側として第2のケーブル導出部P2に至る約半周の範囲についてみると、駆動側フラットケーブル3が内筒部8bの外周面に最も下側に巻かれ、その上に従動側フラットケーブル4が巻かれている。
【0024】
ホルダ5は、ステータ部材1の底板6上に載置された環状平板部5aと、この環状平板部5a上に立設された複数のガイド壁5bおよび支軸5cとを有し、各支軸5cにはそれぞれローラ11が回転可能に支持されている。これらローラ11群の1つはガイド壁5bと第1の開口12を介して対向しており、この第1の開口12内に駆動側フラットケーブル3の反転部3aが位置している。また、ローラ11群の3つはそれぞれガイド壁5bと第2の開口13を介して対向しており、これら第2の開口13内に3枚の従動側フラットケーブル4の各反転部4aがそれぞれ個別に位置している。ここで、第1の開口12の周方向の幅寸法をw1、第2の開口13の周方向の幅寸法をw2とすると、w1はw2に比べて十分に小さい値に設定されている(本実施形態例の場合、w1=2mm、w2=11mm)。このように1つの第1の開口12の開口幅w1を残り3つの第2の開口13の開口幅w2よりも小さな値に設定することにより、ロータ部材2を時計方向へ回転したときに、駆動側フラットケーブル3の反転部3aのみがローラ11を回転方向へ引っ張ると共に、ロータ部材2を反時計方向へ回転したときに、駆動側フラットケーブル3の反転部3aのみがガイド壁5bを回転方向へ押圧するようになっている。
【0025】
本実施形態例では、第2の開口13の幅w2を第1の開口12の幅w1の5.5倍の値に設定しているが、その値は使用する駆動側フラットケーブル3および従動側フラットケーブル4のそれぞれの厚さ寸法やハンドル(ロータ部材2)の回転数などによって適宜設定されるものであり、実用的には、その値を4.5倍以上とすることが望ましい。なお、幅w2を幅w1の4.5未満に設定すると、ロータ部材2を反時計方向へ回転するときに、第1の開口12を通過する駆動側フラットケーブル3の反転部3aがガイド壁5bを押圧してホルダ5を駆動するが、従動側フラットケーブル4の各反転部4aの一部が第2の開口13を臨むローラ11に接触して、駆動側フラットケーブル3の反転部3aがホルダ5を駆動する方向とは逆方向に作用するので、ホルダ5の回転がスムーズに行われなくなる。また、ロータ部材2を時計方向へ回転するときには、第1の開口12を通過する駆動側フラットケーブル3の反転部3aがローラ11を引っ張ってホルダ5を駆動するが、従動側フラットケーブル4の各反転部4aの一部がガイド壁5bに接触して、駆動側フラットケーブル3の反転部3aがホルダ5を駆動する方向とは逆方向に作用するので、ホルダ5の回転がスムーズに行われなくなる。
【0026】
このように構成された回転コネクタは、ステータ部材1をステアリングコラムに設置すると共にロータ部材2をハンドルに連結した状態で自動車のステアリング装置に組み込まれ、ハンドルに装着されたエアーバッグ・インフレータやホーン回路等の電気的接続手段として使用される。使用に際し、運転者がハンドルを時計方向あるいは反時計方向へ回転操作すると、その回転力がロータ部材2に伝達されて、該ロータ部材2が時計方向あるいは反時計方向へ回転する。
【0027】
例えば、ハンドルの中立位置からロータ部材2が時計方向(図2の矢印B方向)に回転すると、駆動側と従動側を含む全てのフラットケーブル3,4の反転部3a,4aはロータ部材2よりも少ない回転量だけ矢印B方向へ移動し、これら反転部3a,4aに追従してホルダ5も矢印B方向へ移動する。このとき、幅狭な第1の開口12を通過する駆動側フラットケーブル3の反転部3aはローラ11にループされながら内筒部8bの外周壁に巻き付けられるが、幅広な第2の開口13を通過する3枚の従動側フラットケーブル4の各反転部4aはローラ11に当接しないため、ホルダ5は駆動側フラットケーブル3の反転部3aのみからの巻付力を受けて環状空間10の内部を矢印B方向へ回動する。その結果、各反転部3a,4aの移動量の約2倍の長さのフラットケーブル3,4が外筒体7の内周壁側から繰り出されて内筒部8bの外周壁に巻き締められる。
【0028】
上記とは逆に、ハンドルの中立位置からロータ部材2が反時計方向(図3の矢印A方向)に回転すると、各フラットケーブル3,4の反転部3a,4aはロータ部材2よりも少ない回転量だけ矢印A方向へ移動し、これら反転部3a,4aに追従してホルダ5も矢印A方向へ移動する。このとき、幅狭な第1の開口12を通過する駆動側フラットケーブル3の反転部3aはガイド壁5bに当接するが、幅広な第2の開口13を通過する3枚の従動側フラットケーブル4の各反転部4aはガイド壁5bに当接しないため、ホルダ5は駆動側フラットケーブル3の反転部3aのみからの押圧力を受けて環状空間10の内部を矢印A方向へ回動する。その結果、各反転部3a,4aの移動量の約2倍の長さのフラットケーブル3,4が内筒部8bの外周壁から繰り出されて外筒体7の内周壁側に巻き戻される。
【0029】
このように本実施形態例に係る回転コネクタは、使用される4枚のフラットケーブルのうち、幅狭に設定された第1の開口12を通過する1枚のフラットケーブルはガイド壁5bに当接してホルダ5に回転方向の押圧力を付与する駆動側フラットケーブル3であるが、幅広に設定された第2の開口13を通過する残り3枚のフラットケーブルはガイド壁5bに当接しない従動側フラットケーブル4であり、この駆動側フラットケーブル3として従動側フラットケーブル4の2倍程度の厚みを有するフラットケーブル、すなわち従動側フラットケーブル4よりも曲げ強度(弾性限度)の高いフラットケーブルを使用している。したがって、駆動側フラットケーブル3とローラ11間の摩擦抵抗が非常に大きくなり、ロータ部材2を矢印A方向へ回転して各フラットケーブル3,4を外筒体7の内周壁側に巻き戻す動作時に、第1の開口12内の反転部3aを外筒体7側へ押し出す巻き広げ力が反転部3aの進行方向の押圧力を上回ってしまったとしても、駆動側フラットケーブル3の座屈を防止してホルダ5を回転方向へスムーズに回転駆動することができる。この場合、従動側フラットケーブル4の反転部4aは、ホルダ5の回転によって第2の開口13を通過して外筒体7の内周壁側に確実に巻き戻される。しかも、内筒部8bの第1のケーブル導出部P1から導出される駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4のうち、駆動側フラットケーブル3が内筒部8bの外周面に対して最も下側に巻かれ、その上に従動側フラットケーブル4が巻かれているため、駆動側フラットケーブル3の反転部3aの曲率が従動側フラットケーブル4の反転部4aの曲率に比べて大きくなり、その分、駆動側フラットケーブル3の反転部3aにかかる曲げストレスを低減することができる。それゆえ、駆動側と従動側を含めて4枚のフラットケーブル3,4を使用したのにも拘わらずスムーズな巻き締め/巻き戻し動作を実現することができ、また高温の使用環境下であっても安定して使用できると共に、駆動側フラットケーブル3の長寿命化を図ることができる。
【0030】
なお、上記実施形態例では、1枚の駆動側フラットケーブルと3枚の従動側フラットケーブルを使用した回転コネクタについて説明したが、従動側フラットケーブルは2枚以上であれば必ずしも3枚に限定されず、本発明は1枚の駆動側フラットケーブルと2枚以上の従動側フラットケーブルを使用した回転コネクタに適用可能である。
【0031】
また、上記実施形態例では、使用される4枚のフラットケーブルのうち、駆動側フラットケーブル3と1枚の従動側フラットケーブル4を内筒部8bの第1のケーブル導出部P1から導出させ、残り2枚の従動側フラットケーブル4を内筒部8bの第2のケーブル導出部P2から導出させているが、使用される3枚以上のフラットケーブルの全てを内筒部8bの共通のケーブル導出部から導出させることも可能である。この場合も、共通のケーブル導出部から導出される3枚以上のフラットケーブルのうち、駆動側フラットケーブル3が内筒部8bの外周面に最も下側で巻かれ、その上に残りの従動側フラットケーブル4が巻かれるようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタの断面図である。
【図2】図1の回転コネクタのケーブル巻き締め状態を示す平面図である。
【図3】図1の回転コネクタのケーブル巻き戻し状態を示す平面図である。
【図4】図1の回転コネクタに備えられる駆動側フラットケーブルと従動側フラットケーブルの寸法関係を示す説明図である。
【図5】従来例に係る回転コネクタの平面図である。
【図6】図5の回転コネクタの問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ステータ部材
2 ロータ部材
3 駆動側フラットケーブル
3a 反転部
4 従動側フラットケーブル
4a 反転部
5 ホルダ
5a 環状平板部
5b ガイド壁
5c 支軸
6 底板
7 外筒体(外筒部)
8 ロータ本体
8a 天板部
8b 内筒部
9 ロータスナップ
10 環状空間
11 ローラ
12 第1の開口
13 第2の開口
P1 第1のケーブル導出部
P2 第2のケーブル導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部を有するステータ部材と、内筒部を有し前記ステータ部材に回転自在に支持されたロータ部材と、前記外筒部と前記内筒部との間に画成された環状空間内に途中で巻き方向を反転した状態で収納され、その両端が前記ステータ部材と前記ロータ部材にそれぞれ固定された3枚以上のフラットケーブルと、前記環状空間に回転可能に配置され、前記各フラットケーブルの反転部が個別に通過する3つ以上の開口部を有するホルダとを備え、
1つの前記開口部の周方向に沿う幅寸法が残りの前記開口部の周方向に沿う幅寸法よりも幅狭になるように設定し、前記ホルダがこの幅狭な開口部を通過する前記フラットケーブルからの押圧力を受けて駆動されるようになすと共に、この駆動側のフラットケーブルの曲げ強度を残りの前記フラットケーブルの曲げ強度よりも高く設定し、かつ、前記駆動側のフラットケーブルを含む少なくとも2枚以上の前記フラットケーブルを前記内筒部の共通のケーブル導出部から前記環状空間に向けて導出させ、これら各フラットケーブルのうち前記駆動側のフラットケーブルが前記内筒部の外周面に最も下側で巻かれるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記内筒部の前記ケーブル導出部と周方向に離れた位置に別のケーブル導出部が設けられており、このケーブル導出部から前記駆動側のフラットケーブルを含まない少なくとも2枚以上の前記フラットケーブルが前記環状空間に向けて導出されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記各フラットケーブルが全て同一材料の絶縁フィルムに導体を担持した帯状体からなると共に、前記駆動側のフラットケーブルの厚み寸法を残りの前記フラットケーブルの厚み寸法よりも大きく設定したことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記残りの開口部の周方向に沿う幅寸法が前記幅狭な開口部の周方向に沿う幅寸法の4.5倍以上に設定されていることを特徴とする回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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