説明

回転コネクタ

【課題】可動側ハウジングに固定された3枚以上の可撓性ケーブルの各一端部近傍を、部品点数を増やすことなく且つ組立性良く可動側ハウジングの内筒部外周とケーブル保持部材との間に確実に拘持できる回転コネクタを提供する。
【解決手段】ロータ3が固定側ハウジング(外筒部および底板)に回動自在に連結されて、環状空間S内に4枚の可撓性ケーブル5が収納されている回転コネクタにおいて、ケーブル保持部材6をロータ3に取り付けることによって、4枚の可撓性ケーブル5の一端部近傍を内筒部32に固定する。ケーブル保持部材6は、周方向に離隔した一対の保持壁部61と、これら保持壁部61の上縁部から径方向外側へ延出する一対の取付壁部62と、各保持壁部61の下縁部を連結するリング部63とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動側ハウジングと固定側ハウジング間の環状空間内に収納された可撓性ケーブルを介して、自動車のステアリングホイールに備えられた電気装置と車体側に備えられた電気装置とを電気的に接続する回転コネクタに係り、特に、3枚以上の可撓性ケーブルが収納されている回転コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、回動自在に連結された固定側ハウジングおよび可動側ハウジングと、これら両ハウジング間に画成される環状空間内に収納・巻回された可撓性ケーブル(フラットケーブル)とで概略構成されている。この可撓性ケーブルは、その両端部が両ハウジングに固定されて外部回路と電気的に接続される。また、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して正逆いずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じて可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締めあるいは巻き戻され、いずれの状態においても両ハウジング間の電気的接続が可撓性ケーブルを介して維持されるようになっている。
【0003】
このように概略構成された回転コネクタは、固定側ハウジングをステアリングコラム等のステータ部材に固定すると共に可動側ハウジングをステアリングホイール側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられる。そして、ステアリングホイールに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路、各種操作スイッチ等の電気的接続手段として使用される。
【0004】
このような回転コネクタにおいて、従来より、可動側ハウジングの内筒部の外周面に沿って配置される可撓性ケーブルの一端部近傍を、ケーブル保持具(固定具)を用いて、可動側ハウジングの内筒部の外周面とケーブル保持具との間に拘持できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものは、可動側ハウジングを固定側ハウジングに組み付ける前の段階で、ケーブル保持具をスナップ結合などの固定手段を用いて可動側ハウジングに取り付けることにより、内筒部の外周面とケーブル保持具との間に可撓性ケーブルの一端部近傍を拘持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−143882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、ステアリングホイールに装着された操作スイッチによって操作可能な車体側の電気装置(電子機器を含む)の種類が増大する傾向にあり、それに伴って回転コネクタに収納される可撓性ケーブルの枚数が増えているため、可動側ハウジングに複数のケーブル保持具を取り付けなければならない場合が生じている。すなわち、3枚以上の可撓性ケーブルの各一端部近傍を可動側ハウジングの内筒部外周との間に拘持するためには、最低でも2つ以上のケーブル保持具を可動側ハウジングに取り付ける必要があり、その場合、部品点数が増えて可動側ハウジングに各ケーブル保持具を組み付ける作業が増えるので、前述した従来の回転コネクタでは組立性が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、可動側ハウジングに固定される可撓性ケーブルが3枚以上であっても、部品点数を増やすことなく且つ組立性良く各可撓性ケーブルの一端部近傍を可動側ハウジングの内筒部外周とケーブル保持部材との間に拘持できる回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、外筒部と該外筒部の下部開放端を中央部を除いて覆う底板とを有する固定側ハウジングと、前記外筒部の上部開放端を中央部を除いて覆う天板部と該天板部の内周縁から下方へ延設された内筒部とを有して前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、前記両ハウジングによって画成される環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されて両端部が前記各ハウジングに固定された少なくとも3枚の可撓性ケーブルと、前記内筒部の内周面側に連結されて一部が前記底板の下面に対向するロータスナップと、前記内筒部の外周面に沿って配置される前記各可撓性ケーブルの一端部近傍を該内筒部の外周面との間に拘持するケーブル保持部材とを備えた回転コネクタにおいて、前記ケーブル保持部材が、周方向に離隔した位置でそれぞれが前記内筒部の外周面に対向する複数の保持壁部と、これら保持壁部の上縁部から径方向外側へ延出して前記天板部に係止される複数の取付壁部と、前記各保持壁部の下縁部を連結する環状のリング部とを有する一体成形品からなり、前記各保持壁部と前記内筒部との間にそれぞれ相異なる前記可撓性ケーブルの一端部近傍を拘持すると共に、前記リング部を前記内筒部と前記底板との間に介設するようにした。
【0009】
このように構成された回転コネクタでは、ケーブル保持部材の各保持壁部と内筒部の外周面との間に1枚または2枚の可撓性ケーブルの一端部近傍を挟み込んで拘持することができるため、部品点数を増やすことなく且つ組立性良く各可撓性ケーブルの一端部近傍を可動側ハウジングの内筒部外周とケーブル保持部材との間に拘持できる。また、この回転コネクタは、ケーブル保持部材が一体成形品であるためリング部と各保持壁部および各取付壁部との相対位置を高精度に規定でき、可動側ハウジングに対するケーブル保持部材の取付位置精度を高めやすい。
【0010】
上記の構成において、ケーブル保持部材が、軸線に対して略対称に形成された一対の保持壁部と、同じく軸線に対して略対称に形成された一対の取付壁部とを有すると共に、可動側ハウジングへの導出位置を互いに異にした4枚の可撓性ケーブルが環状空間内に収納されており、このうち2枚の可撓性ケーブルの各一端部近傍が一方の保持壁部と内筒部との間に拘持され、残り2枚の可撓性ケーブルの各一端部近傍が他方の保持壁部と内筒部との間に拘持されていると、ケーブル保持部材を単純でバランスの良い形状に形成できるため、可動側ハウジングに対するケーブル保持部材の取付位置精度を一層高めやすくなる。また、1つのケーブル保持部材を用いて4枚の可撓性ケーブルの各一端部を内筒部に固定できるため、多回路化に好適で信頼性の高い回転コネクタを少ない部品点数で実現することができる。
【0011】
また、上記の構成において、回転コネクタの各構成部品のうち、底板と可動側ハウジングとが第1の樹脂材料からなる成形品であると共に、外筒部とロータスナップおよびケーブル保持部材が第1の樹脂材料と異種の第2の樹脂材料からなる成形品であると、リング部を底板に対して円滑に摺動させることができるため、可動側ハウジングの回転時に摺動音等の異音が発生しにくくなる。すなわち、選択可能な樹脂材料が限られている場合には、可動側ハウジングと底板を同種材料にすると共に、可動側ハウジングとは異種材料のケーブル保持部材のリング部をスペーサとして機能させれば、限られた樹脂材料を好適に選択することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転コネクタによれば、リング部と複数の保持壁部と複数の取付壁部とを有する一体成形品のケーブル保持部材を可動側ハウジングに取り付け、各保持壁部と内筒部の外周面との間にそれぞれ相異なる可撓性ケーブルの一端部近傍を拘持しているため、1つのケーブル保持部材を用いて3枚以上の可撓性ケーブルの各一端部を内筒部に確実に固定することができる。それゆえ、この回転コネクタは、多回路化に好適であるのみならず、部品点数を増やすことなく且つ組立性良く各可撓性ケーブルの一端部近傍を可動側ハウジングの内筒部外周とケーブル保持部材との間に拘持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタの縦断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】該回転コネクタの可動側ハウジングに対するケーブル保持部材の取付構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】該ケーブル保持部材の外観図である。
【図5】該回転コネクタを可動側ハウジングおよびケーブル保持部材を図示省略して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態例に係る回転コネクタについて図1〜図5を参照しつつ説明する。この回転コネクタは、図1や図5に示すように、固定側ハウジングである外筒部1および底板2と、可動側ハウジングであるロータ3と、ロータ3の脱落を防止しているロータスナップ4と、両ハウジング間の環状空間S内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納された4枚の可撓性ケーブル(フラットケーブル)5と、これら可撓性ケーブル5の各一端部近傍、すなわち各可撓性ケーブル5のロータ3への巻き始めとなる部分を、後述する内筒部32の外周面との間に拘持するためにロータ3に取り付けられたケーブル保持部材6と、環状空間S内に回動自在に配置されたローラホルダ7と、このローラホルダ7に回動自在に取り付けられた複数のローラ8とによって主に構成されている。なお、これら各部材のうち、可撓性ケーブル5は複数本の箔状導体を絶縁性フィルムでラミネートしてなる公知のものであり、他の部材は絶縁性の樹脂材料からなる成形品である。
【0015】
外筒部1はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる成形品である。この外筒部1は上部開放端1aおよび下部開放端1bを有する円筒状に形成されている。外筒部1の外周面の下部には、ステアリングコラム等のステータ部材に固定するための取付ボス11と、車体側の電気装置に接続された図示せぬ外部コネクタを装着するためのコネクタ取付部12とが突設されている。
【0016】
底板2はポリアセタール(POM)からなる成形品である。この底板2は、外筒部1の下部開放端1bを中央部を除いて覆うカバーとして形成されており、底板2の外周部が外筒部1の下縁部に嵌合してスナップ結合等で固定されている。
【0017】
ロータ3はポリアセタールからなる成形品である。このロータ3は、外筒部1の上部開放端1aを中央部を除いて覆う天板部31と、この天板部31の内周縁から下方へ延設された内筒部32とを有し、天板部31がステアリングホイールと連結されるようになっている。天板部31の上面側には、ステアリングホイール側の電気装置に接続された図示せぬ外部コネクタを装着するためのコネクタ取付部33が2箇所に突設されている。各コネクタ取付部33には、2枚の可撓性ケーブル5の一端が電気的に導出されている(図示省略)。なお、図3に示すように、それらの可撓性ケーブル5は、その一端部近傍(すなわち内筒部32への巻き初めとなる部分)が、内筒部32の外周面に沿うように直角に折り曲げられてロータ3に巻き付くように配置される。そして、各可撓性ケーブル5がケーブル保持部材6によって内筒部32の外周面との間に拘持される。図1や図3に示すように、天板部31の下面側の外周部には環状凹部34が形成されており、この環状凹部34と外筒部1の上縁部とは比較的大きなクリアランスを存して対向している。また、天板部31の下面側の環状凹部34よりも径方向内側の領域には複数の第1係止爪35が形成されている。これら第1係止爪35はケーブル保持部材6の掛止部65(図4参照)を係着(スナップ結合)させるためのものである。また、図1や図2に示すように、内筒部32の内周面には周方向に所定の間隔を存して複数の第2係止爪36が形成されており、内筒部32の外周面の下端には凹段部37が形成されている。第2係止爪36はロータスナップ4の掛止部41を係着させるためのものである。また、凹段部37にはケーブル保持部材6のリング部63が外挿されて係合しており、このリング部63は底板2の内周部と摺動自在に対向している。
【0018】
ロータスナップ4はポリブチレンテレフタレートからなる成形品である。このロータスナップ4は、図1において、下方より内筒部32に挿入されて第2係止爪36に係着される複数の掛止部41と、底板2の内周部の下面と対向する円環状のプレート部42と、下方へ延設されてステアリングシャフトが挿通される筒状部43とを有する。そして、回転コネクタの組立時には、ケーブル保持部材6を取り付けたロータ3を固定側ハウジング(外筒部1および底板2)に組み付けた状態で、掛止部41を底板2の下方から内筒部32内へ挿入して第2係止爪36に係着させることによって、ロータスナップ4をロータ3にスナップ結合させる。これにより、プレート部42が底板2の下面に摺動自在に対向するため、ロータ3は軸線方向に位置規制されて固定側ハウジングに回動自在に連結された状態となる。また、これらロータ3と外筒部1と底板2とによって、可撓性ケーブル5やローラホルダ7等を収納する環状空間Sが画成される。
【0019】
ケーブル保持部材6はポリブチレンテレフタレートからなる成形品である。図1に示すように、このケーブル保持部材6は、内筒部32の外周面と対向する一対の保持壁部61と、これら保持壁部61の上縁部から径方向外側へ延出して天板部31の下面と対向する一対の取付壁部62と、各保持壁部61の下縁部を連結している円環状のリング部63とを有する。図1および図4に示すように、一対の保持壁部61は軸線に対して略対称な位置関係に形成されており、各保持壁部61の内周面側には可撓性ケーブル5を拘持するための押圧突起64が複数箇所に形成されている。一対の取付壁部62も軸線に対して略対称に形成されており、各取付壁部62には複数の掛止部65が上向きに突設されている。図3に示すように、これら掛止部65を天板部31の対応する第1係止爪35に係着させることによってケーブル保持部材6は天板部31にスナップ結合され、各保持壁部61が内筒部32の外周面の所定領域と対向すると共に、リング部63が内筒部32の凹段部37に外挿されて係合するようになっている。すなわち、このケーブル保持部材6はスナップ結合によってロータ3に位置決め状態で取り付けられる。このように、ケーブル保持部材6をロータ3に取り付けることによって、4枚の可撓性ケーブル5の一端部近傍が一括して内筒部32の外周面に固定(拘持)できる。また、図1に示すように、凹段部37内のリング部63が内筒部32の下縁部と底板2の内周部との間でスペーサ機能を果たすため、このリング部63によってロータ3は固定側ハウジング(外筒部1および底板2)に対して径方向に位置規制される。
【0020】
環状空間S内に巻回・収納されている4枚の可撓性ケーブル5は、その一端がロータ3のコネクタ取付部33へと電気的に導出されており、他端が外筒部1のコネクタ取付部12へと電気的に導出されている。各可撓性ケーブル5は環状空間S内において所定のローラ8に巻き掛けられており、ロータ3の回転方向に応じて各可撓性ケーブル5が巻き締められたり巻き戻されたりする。回転コネクタを自動車のステアリング装置に組み付けると、ステアリングホイールに備えられた電気装置と車体側に備えられた電気装置との電気的接続が可撓性ケーブル5を介して保たれるようになっている。
【0021】
ローラホルダ7はポリプロピレンからなる成形品である。このローラホルダ7は、図1および図5に示すように、円環状のベース板71と、ベース板71上に立設された複数のローラ保持部72を有し、各ローラ保持部72にローラ8が回動自在に取り付けられている。
【0022】
本実施形態例に係る回転コネクタを組み立てる際には、まず、4枚の可撓性ケーブル5の一端側の各導体(不図示)と中間接続体9の接続端子91とを接続すると共に、それら4枚の可撓性ケーブル5の他端側の各導体(不図示)と他の中間接続体(不図示)の接続端子とを接続する。そして、接続端子91の一部(図3の紙面裏側)が各コネクタ取付部33内に導出されるように、各中間接続体9を天板部31の下面に取り付け、各可撓性ケーブル5の内筒部32への巻き初めになる部分(一端部近傍)を直角に折り曲げて、ロータ3の内筒部32の外周面に沿って各可撓性ケーブル5を巻き付ける。また、他の中間接続体の接続端子の一部がコネクタ取付部12内に導出されるように、外筒部1に他の中間接続体を取り付ける。次に、ケーブル保持部材6をロータ3に取り付けることによって、各保持壁部61と内筒部32の外周面との間のそれぞれに2枚(計4枚)の可撓性ケーブル5の各一端部近傍を拘持する。これにより、4枚の可撓性ケーブル5の一端部近傍が内筒部32に拘持された状態となる。次に、ロータ3の内筒部32を外筒部1内に挿入して天板部31で上部開放端1aの中央部を除く領域を覆うと共に、外筒部1と内筒部32との間の環状空間Sに各可撓性ケーブル5を収納する。そして、ローラ8が取り付けられたローラホルダ7を環状空間Sに組み込んで、所定のローラ8に各可撓性ケーブル5を巻き掛けした後、底板2を外筒部1に取り付けて一体化する。最後に、底板2の下方からロータスナップ4の掛止部41を内筒部32内へ挿入してロータスナップ4をロータ3にスナップ結合させる。これにより、ロータ3は軸線方向および径方向に位置規制された状態で固定側ハウジング(外筒部1および底板2)に回動自在に連結される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態例に係る回転コネクタは、ケーブル保持部材6の一対の保持壁部61とロータ3の内筒部32との間にそれぞれ2枚(計4枚)の可撓性ケーブル5の各一端部近傍を挟み込んで拘持しているため、1つのケーブル保持部材6を用いて4枚の可撓性ケーブル5の各一端部近傍、すなわちロータ3の内筒部32への巻き初めとなる部分を内筒部32に確実に拘持できる。それゆえ、この回転コネクタは、多回路化に好適であるのみならず、部品点数の増大や組立性の悪化を抑えつつ、ロータ3側に固定された4枚の可撓性ケーブル5の各一端部の断線や脱落を効果的に防止することができる。また、この回転コネクタは、ケーブル保持部材6が一体成形品であるためリング部63と各保持壁部61および各取付壁部62の相対位置を高精度に規定でき、ロータ3に対するケーブル保持部材6の取付位置精度が高めやすい。
【0024】
なお、本実施形態例に係る回転コネクタでは、ケーブル保持部材6の一対の保持壁部61同士と一対の取付壁部62同士がいずれも軸線に対して略対称な位置関係に形成されているため、ケーブル保持部材6の形状が単純でバランスも良く、この点からもロータ3に対するケーブル保持部材6の取付位置精度が高めやすい。
【0025】
また、本実施形態例に係る回転コネクタでは、底板2とロータ3をポリアセタール(POM)からなる成形品にすると共に、外筒部1とロータスナップ4およびケーブル保持部材6を、ポリアセタールに対し摺動特性に優れたポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる成形品としたので、リング部63と底板2を円滑に摺動させることができて、ロータ3の回転時に摺動音等の異音か発生しにくい。また、専用のスペーサが不要なため、部品点数を増やさずに回転コネクタとして好適な限られた樹脂材料を選択できる。ただし、選択する樹脂の種類は本実施形態例に限定されるものではない。また、ロータ3に対するケーブル保持部材6の取付位置精度が高めやすいことから、リング部63と底板2との間のクリアランスを狭く設定しておくことにより、ロータ3を径方向に精度良く位置規制することもできる。
【0026】
なお、上記の実施形態例では、回転コネクタに収納する可撓性ケーブルの枚数が4枚の場合について説明したが、可撓性ケーブルが3枚または5枚以上の場合にも、本発明を適用することによって上記の実施形態例とほぼ同様の効果が得られる。ただし、可撓性ケーブルが5枚以上の場合には、ケーブル保持部材に3つ以上の保持壁部を周方向に分散して設けておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 外筒部(固定側ハウジング)
1a 上部開放端
1b 下部開放端
2 底板(固定側ハウジング)
3 ロータ(可動側ハウジング)
4 ロータスナップ
5 可撓性ケーブル
6 ケーブル保持部材
7 ローラホルダ
8 ローラ
9 中間接続体
12 コネクタ取付部
31 天板部
32 内筒部
33 コネクタ取付部
35 第1係止爪
36 第2係止爪
37 凹段部
41 掛止部
42 プレート部
61 保持壁部
62 取付壁部
63 リング部
65 掛止部
91 接続端子
S 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部と該外筒部の下部開放端を中央部を除いて覆う底板とを有する固定側ハウジングと、前記外筒部の上部開放端を中央部を除いて覆う天板部と該天板部の内周縁から下方へ延設された内筒部とを有して前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、前記両ハウジングによって画成される環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されて両端部が前記各ハウジングに固定された少なくとも3枚の可撓性ケーブルと、前記内筒部の内周面側に連結されて一部が前記底板の下面に対向するロータスナップと、前記内筒部の外周面に沿って配置される前記各可撓性ケーブルの一端部近傍を該内筒部の外周面との間に拘持するケーブル保持部材とを備えた回転コネクタであって、
前記ケーブル保持部材が、周方向に離隔した位置でそれぞれが前記内筒部の外周面に対向する複数の保持壁部と、これら保持壁部の上縁部から径方向外側へ延出して前記天板部に係止される複数の取付壁部と、前記各保持壁部の下縁部を連結する環状のリング部とを有する一体成形品からなり、前記各保持壁部と前記内筒部との間にそれぞれ相異なる前記可撓性ケーブルの一端部近傍を拘持すると共に、前記リング部を前記内筒部と前記底板との間に介設したことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ケーブル保持部材が、軸線に対して略対称に形成された一対の前記保持壁部と、同じく軸線に対して略対称に形成された一対の前記取付壁部とを有すると共に、前記可動側ハウジングへの導出位置を互いに異にした4枚の前記可撓性ケーブルが前記環状空間内に収納されており、このうち2枚の可撓性ケーブルの各一端部近傍が一方の前記保持壁部と前記内筒部との間に拘持され、残り2枚の可撓性ケーブルの各一端部近傍が他方の前記保持壁部と前記内筒部との間に拘持されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記底板と前記可動側ハウジングとが第1の樹脂材料からなる成形品であると共に、前記外筒部と前記ロータスナップおよび前記ケーブル保持部材が前記第1の樹脂材料と異種の第2の樹脂材料からなる成形品であることを特徴とする回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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