説明

回転スイッチ

【課題】 操作部材を回転させた際に、その操作部材の回転状態を感覚的に知ることができ、これにより操作部材の操作性を向上させることができる回転スイッチを提供する。
【解決手段】 回転方向に操作可能な操作部材である巻真12に、これと一体的に回転する磁石部材14を取り付け、この磁石部材14の回転磁界を磁気センサ15で検出すると共に、磁石部材14に断面形状が非円形状に形成された非円形部26を設け、巻真12と共に回転する非円形部26に板ばね28を弾接させた。従って、巻真12を回転させて磁石部材14を回転させると、この磁石部材14の回転磁界を磁気センサ15で検出することができると共に、巻真12の回転に伴って非円形部26が回転して板ばね28を弾性変形させて乗り越えることにより、巻真12にクリック感を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子腕時計などの電子機器に用いられる回転スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子腕時計においては、特許文献1に記載されているように、時刻を修正する際に、巻真を所定位置に引き出して回転させることにより、巻真の回転に応じて指針を運針させる時刻を修正する回転スイッチを備えた構成のもが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−122377号公報
【0004】
このような電子腕時計は、腕時計ケースに巻真を、その軸方向における第1の位置と第2の位置とに移動可能に設けると共に、巻真の軸を中心とする回転方向にも回転可能に設け、この巻真に磁石を設け、この磁石の円周方向に位置する腕時計ケース内に磁気センサを設けた構成になっている。
【0005】
この種の電子腕時計では、巻真を押し込んだ第1の位置状態のときに、巻真に設けられた磁石が磁気センサから離れ、また巻真を引き出した第2の位置状態のときに、巻真と共に磁石が移動して磁気センサに対応し、この状態で巻真を回転させると、磁石が巻真と共に回転し、この回転する磁石の磁界を磁気センサが検出し、この磁気センサで検出された検出データに基づいて指針を運針させることにより、時刻を修正している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の電子腕時計においては、巻真を引き出した第2の位置状態のときに、巻真を回転させて磁石を巻真と共に回転させ、この磁石による回転磁界を磁気センサが非接触状態で検出する構成であるから、巻真を回転させても、巻真にクリック感がないため、巻真の回転状態を感覚的に知ることができないという問題がある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、巻真などの操作部材を回転させた際に、その操作部材の回転状態を感覚的に知ることができ、これにより操作部材の操作性を向上させることができる回転スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、回転方向に操作可能な操作部材と、この操作部材に取り付けられて前記操作部材と一体的に回転する磁石部材と、この磁石部材の回転を検出する磁気センサと、前記操作部材もしくは前記磁石部材に設けられて断面形状が非円形状に形成された非円形部と、この非円形部に弾接し、前記操作部材を回転させた際に前記非円形部によって弾性変形して前記非円形部が乗り越えるばね部材とを備えていることを特徴とする回転スイッチである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記ばね部材が、前記非円形部を弾力的に挟み付ける一対の弾接片を備えていることを特徴とする請求項1に記載の回転スイッチである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記磁石部材が、磁界を発生する磁石と、この磁石を包み込む樹脂部とを備え、この樹脂部に前記非円形部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転スイッチである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、操作部材を回転させて磁石部材を操作部材と共に一体的に回転させると、この磁石部材の回転を磁気センサで検出することができると共に、操作部材が回転すると、非円形部も回転し、この非円形部の回転に伴って非円形部がばね部材を弾性変形させて乗り越えることにより、操作部材にクリック感を付与することができる。このため、操作部材を回転させた際に、その操作部材の回転状態を感覚的に知ることができ、これにより操作部材の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を電子腕時計に適用した一実施形態を示した要部の拡大断面図である。
【図2】図1に示された電子腕時計のA−A矢視における時計モジュールの要部を示した拡大裏面図である。
【図3】図1に示された電子腕時計のB−B矢視における時計モジュールの要部を示した拡大裏面図である。
【図4】図2に示された時計モジュールのC−C矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図5】図4に示された磁石部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大側面図である。
【図6】図5に示された磁石部材の各断面を示し、(a)は図5(a)のD−D矢視における要部の拡大断面図、(b)は図5(b)のE−E矢視における要部の拡大断面図である。
【図7】図3に示されたばね部材を示し、(a)はその拡大平面図、(b)はその拡大側面図である。
【図8】図7(a)に示されたばね部材のF−F矢視における拡大断面図である。
【図9】図3に示されたG−G矢視における断面を示し、(a)はばね部材が磁石部材の非円形部によって押し広げられた状態を示した拡大断面図、(b)は磁石部材の非円形部がばね部材を乗り越えた状態を示した拡大断面図である。
【図10】図3に示された巻真を引き出して位置規制部材のオシドリを回転させた時刻修正状態を示した要部の拡大裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図10参照して、この発明を指針式の電子腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この電子腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられており、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。
【0014】
また、この腕時計ケース1の内部には、図1に示すように、時計モジュール4が中枠5によって設けられている。この時計モジュール4は、指針を運針する時計ムーブメント(図示せず)と、時刻を修正するための時刻修正装置6とを備えている。この場合、時計モジュール4の上面には、文字板7が設けられており、この文字板7の上面には、リング状の見切部材8が設けられている。
【0015】
時刻修正装置6は、図1に示すように、腕時計ケース1の側壁部に回転可能に挿入されて外部に突出する竜頭10と、この竜頭10に取り付けられて時計モジュール4内の地板11に軸方向に移動操作可能で且つその軸を中心とする回転方向にも回転操作可能に設けられた操作部材である巻真12と、この巻真12の軸方向における移動位置を規制する位置規制部材13(図3参照)と、巻真12にスライド可能に設けられて巻真12と共に回転する磁石部材14と、この磁石部材14の円周方向に位置して磁石部材14の回転を検出する磁気センサ15とを備えている。
【0016】
この場合、巻真12は、図1に示すように、ほぼ丸棒状に形成され、その一端部(図1では右端部)に竜頭10が取り付けられている。この竜頭10は、腕時計ケース1の側壁部に設けられた貫通孔1aに外側から挿入されている。また、この巻真12は、図1に示すように、その他端部(図1では左端部)が地板11に軸方向に移動操作可能で、且つその軸を中心とする回転方向にも回転操作可能に取り付けられている。これにより、巻真12は、腕時計ケース1の外部に位置する竜頭10を引き出し方向に操作すると、これに伴って軸方向に移動し、また竜頭10を回転方向に操作すると、軸回りに回転するように構成されている。
【0017】
また、この巻真12は、図1、図3および図4に示すように、そのほぼ中間部に小径の段差凹部12aが環状に設けられている。この段差凹部12aにおける時計モジュール1の内部側に位置する先端側(図4では左端側)には、図1および図4に示すように、後述する磁石部材14をスライド可能に取り付けるための、断面形状が四角形状の角棒状に形成された係合軸部16が設けられている。
【0018】
さらに、この巻真12の内部側に位置する係合軸部16の先端部(図4では左端部)には、図1および図4に示すように、小径の軸部12bが設けられている。この軸部12bは、丸棒状に形成され、地板11に設けられたガイド穴11a内に軸方向に移動可能で且つその軸を中心に回転可能な状態で挿入されている。これにより、巻真12は、図3および図4に示すように、軸方向(矢印X方向)に押し込まれた第1の位置と、図10に示すように、軸方向(矢印Y方向)に引き出された第2の位置とに移動するように構成されている。
【0019】
位置規制部材13は、図3および図10に示すように、オシドリ20、オシドリばね21、スイッチ板22、および押え板23を備えている。オシドリ20は、図3および図10に示すように、平板状に形成され、地板11に設けられた支持軸17に回転可能に取り付けられ、巻真12の軸方向への移動に応じて支持軸17を中心に回転するように構成されている。
【0020】
すなわち、オシドリ20には、図3および図10に示すように、巻真12の段差凹部12a内に配置される連動アーム部20aと、オシドリばね21によって弾力的に位置規制される連動ピン20bと、スイッチ板22をオシドリ20と共に回転させる連結ピン20cとが設けられている。これにより、オシドリ20は、図3および図10に示すように、巻真12が軸方向に移動すると、巻真12の段差凹部12aの移動に伴って連動アーム部20aが揺動することにより、支持軸17を中心に回転するように構成されている。
【0021】
オシドリばね21は、図3および図10に示すように、板ばねであり、オシドリ20の近傍に位置する箇所の地板11に固定され、オシドリ20の連動ピン20bを弾力的に保持して位置規制することにより、オシドリ20の回転位置を規制して巻真12の軸方向の移動位置を規制するように構成されている。すなわち、このオシドリばね21は、図3および図10に示すように、その先端部にオシドリ20の連動ピン20bを弾力的に保持する位置規制部24が設けられている。
【0022】
この位置規制部24には、図3および図10に示すように、連動ピン20bを弾力的に係止する複数の係止凹部が設けられている。これにより、オシドリばね21は、図3に示すように、巻真12が押し込まれた第1の位置状態のときに、オシドリ20の連動ピン20bを位置規制部24の下部側に位置する係止凹部で弾力的に係止することにより、巻真12を第1の位置に規制するように構成されている。
【0023】
また、このオシドリばね21は、図10に示すように、巻真12が軸方向に引き出された第2の位置に移動するときに、オシドリ20が支持軸17を中心に回転し、これに伴う連動ピン20bの回転移動によって、位置規制部24が弾性変形し、この弾性変形した位置規制部24の上部側に位置する係止凹部がオシドリ20の連動ピン20bを弾力的に係止することにより、巻真12を第2の位置に規制するように構成されている。
【0024】
スイッチ板22は、図3および図10に示すように、金属板からなり、オシドリ20と共に地板11の支持軸17に回転可能に取り付けられている。このスイッチ板22には、後述する回路基板25の上面に接触して摺動する接触ばね部22aが、オシドリ20の連動アーム部20aと反対側に向けて延設されている。このスイッチ板22の所定箇所には、図3および図10に示すように、オシドリ20の連結ピン20cが挿入する挿入孔22bが設けられている。
【0025】
これにより、スイッチ板22は、図3および図10に示すように、接触ばね部22aの先端部が回路基板25の上面に接触した状態で、支持軸17を中心にオシドリ20と共に回転移動し、この接触ばね部22aの先端部が回路基板25の上面に設けられた2つの接点部25a、25bに対する接触位置を切り替えるように構成されている。押え板23は、オシドリばね21と共に地板11にねじ23aによって取り付けられて、オシドリばね21およびスイッチ板22を押え付けることにより、オシドリ20を地板11に押し付けるように構成されている。
【0026】
ところで、巻真12にスライド可能に設けられた磁石部材14は、図4〜図6に示すように、リング状の磁石18と、この磁石18を包む樹脂部19とからなり、全体がほぼ円板状に形成されている。この場合、樹脂部19には、図4〜図6に示すように、非円形部26が巻真12の軸方向における小径の軸部12b側に向けて突出して設けられている。この非円形部26は、図6(a)および図6(b)に示すように、その外径が磁石18の外径よりも小さく形成されている共に、断面が四角形状に形成されている。この非円形部26の左端部には、その外径よりも大きいガイド鍔部27が設けられている。
【0027】
この磁石部材14は、図4〜図6に示すように、その中心部に巻真12の係合軸部15が挿入する断面四角形状の係合孔14aが設けられ、図3および図4に示すように、地板11に設けられた板ばね28によって弾力的に押えられている。この板ばね28は、図3および図4に示すように、巻真12の軸方向に沿って細長く形成され、磁石部材14の軸方向における全長に亘って配置され、この状態でばね押え板29によって押え付けられている。
【0028】
また、この板ばね28には、図7〜図9に示すように、磁石部材14の非円形部26の外周に位置して、非円形部26を外周側から弾力的に挟み付ける一対の弾性片28aが設けられている。この一対の弾性片28aは、図3に示すように、磁石18の側面に位置する樹脂部19とガイド鍔部27との間に配置され、この状態で磁石部材14が巻真12の軸方向への移動を規制するように構成されている。
【0029】
これにより、磁石部材14は、図3および図4に示すように、その中心に設けられた係合孔14aに巻真12の係合軸部16がスライド可能に挿入し、この状態で巻真12が軸方向に移動しても、板ばね28によって弾力的に押えられていることにより、巻真12に対し相対的に移動して常に一定の位置に保持され、この状態で巻真12と共に一体的に回転するように構成されている。
【0030】
すなわち、この磁石部材14は、図3および図4に示すように、巻真12が押し込まれた第1の位置状態のときに、巻真12の内部側に位置する係合軸部16の外側の端部側(図4では右側)に位置し、図10に示すように、巻真12が引き出された第2の位置状態のときに、巻真12の内部側に位置する係合軸部16の内側の先端部側(図4では左側)に位置するように構成されている。
【0031】
また、この磁石部材14は、巻真12が押し込まれた第1の位置状態においても、また巻真12が引き出された第2の位置状態においても、巻真12と共に一体的に回転し、このときに、図9(a)および図9(b)に示すように、非円形部26が板ばね28の一対の弾性片28aを押し広げるように弾性変形させて乗り越えながら回転することにより、巻真12に順次クリック感を付与するように構成されている。
【0032】
すなわち、この磁石部材14の非円形部26は、断面四角形状に形成されていることにより、磁石部材14が巻真12と共に一体的に回転する際に、図9(a)に示すように、非円形部26の角部が板ばね28の一対の弾性片28aを押し広げ、図9(b)に示すように、非円形部26が板ばね28の一対の弾性片28aを乗り越えると、板ばね28の一対の弾性片28aが互いに接近する方向に弾性復帰して非円形部26の辺部を挟み付けるように弾性変形することにより、巻真12にクリック感を付与するように構成されている。
【0033】
これにより、非円形部26は、巻真12が連続して回転して非円形部26が連続回転すると、その連続回転に伴って、非円形部26の角部が板ばね28の一対の弾性片28aを順次弾性変形させて順次乗り越えることにより、巻真12の連続回転に応じて、巻真12に順次クリック感を付与するように構成されている。
【0034】
一方、磁気センサ15は、図1、図2および図4に示すように、地板11の裏面(図4では下面)に設けられた回路基板25の下面における磁石部材14と対応する箇所に設けられている。これにより、磁気センサ15は、回路基板25を間に挟んで磁石部材14と対応している。
【0035】
この磁気センサ15は、2つの磁気検出素子、例えば2つの磁気抵抗素子(MR素子:Magneto Resistance 素子)と、その出力をデジタル化するICとを1つのパッケージに収めたものであり、2つの磁気抵抗素子で磁石部材14の回転に伴う磁界の変化を検出して、高い(ハイ:H)、低い(ロウ:L)の2種類の検出信号を出力するように構成されている。
【0036】
すなわち、この磁気センサ15は、2つの磁気抵抗素子の設置位置が異なっていることにより、磁石部材14の回転に伴う磁界の変化を検出した際に、その出力に位相差が生じ、この位相差によって2種類の検出信号を出力することにより、磁石部材14の回転を検出するように構成されている。この場合、回路基板25に設けられたマイコン(図示せず)は、2種類の検出信号を解析して、磁石部材14の回転角度を算出する。
【0037】
また、この磁気センサ15は、磁石部材14の回転方向(正回転であるか逆回転であるか)を検出すると共に、磁石部材14の正回転または逆回転が連続しているか否かをも検出する。これにより、回路基板25に設けられたマイコンは、磁気センサ15で検出された回転方向の検出信号により、指針を正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に回転させると共に、磁気センサ15で検出された磁石部材14の回転が連続しているか否かの検出信号により、回転が連続している場合に、指針を早送りで正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に回転させる。
【0038】
また、この磁気センサ15は、図10に示すように、巻真12が引き出されて位置規制部材13のスイッチ板22が回転し、このスイッチ板22の接触ばね部22aが、回路基板25に設けられた左側に位置する他方の接点部25bに接触して、通常運針状態から時刻修正状態に切り替わった際に、オン状態となり、磁石部材14の磁石18の磁界を検出するように構成されている。
【0039】
この場合、磁気センサ15は、図3に示すように、巻真12が押し込まれて位置規制部材13のスイッチ板22の接触ばね部22aが、回路基板25に設けられた右側に位置する一方の接点部25aに接触して、時計回路(図示せず)がオン状態になり、通常運針状態であるときには、オフ状態となり、磁石部材14の磁石18の磁界を検出しないように構成されている。
【0040】
また、この磁気センサ15の周囲には、図1、図2および図4に示すように、耐磁板30が配置されている。この耐磁板30は、磁性材料からなり、腕時計ケース1の外部からの磁界を吸収するためのものであり、全体が枠状に形成され、回路基板25に半田31によって取り付けられている。これにより、磁気センサ15は、耐磁板30によって外部磁界の影響を受けずに、磁石部材14の回転磁界を感度良く正確に検出するように構成されている。
【0041】
次に、この電子腕時計における時刻修正装置6の作用について説明する。
まず、巻真12を軸方向に押し込んで第1の位置に移動させると、図3および図4に示すように、巻真12の段差凹部12aが時計モジュール4の内部側(図4では左側)に移動し、巻真12の係合軸部16が図4に示す矢印X方向に押し込まれる。この状態では、磁石部材14が板ばね28で押えられているので、巻真12が押し込まれても、磁石部材14は巻真12と共に移動せず、巻真12の係合軸部16における外側の端部側(図4では右側)に位置して、磁気センサ15に対応している。
【0042】
また、このときには、巻真12の段差凹部12aが時計モジュール4の内部側に移動するので、図3に示すように、オシドリ20の連動アーム部20aが時計モジュール4の内部側(図3では右側)に向けて移動し、オシドリ20が支持軸17を中心に反時計回りに回転する。これに伴って、図3に示すように、連動ピン20aがオシドリばね21に設けられた位置規制部24の下部側に位置する係止凹部に弾力的に保持される。これにより、巻真12が押し込まれた第1の位置に規制される。
【0043】
また、このときには、スイッチ板22がオシドリ20の連結ピン20cによってオシドリ20と連結されているので、図3に示すように、スイッチ板22が支持軸17を中心にオシドリ20と共に時計回りに回転する。これにより、スイッチ板22における接触ばね部22aの先端部が、図3に示すように、回路基板25の上面に接触した状態で回転移動する。
【0044】
これにより、接触ばね部22aが、図3に示すように、回路基板25に設けられた右側に位置する一方の接点部25aに接触し、時計回路をオン状態にして、通常運針状態にする。このときには、磁気センサ15がオフ状態になり、磁気センサ15による磁気検出が停止されている。これにより、巻真12を回転させて磁石部材14を回転させても、磁気センサ15が磁石部材14の回転磁界を検出しない。
【0045】
一方、巻真12が軸方向に引き出されて第2の位置に移動すると、図10に示すように、巻真12の段差凹部12aが時計モジュール4の外側に向けて移動し、巻真12の係合軸部16が引出し方向(図10に矢印Yで示す右方向)に移動する。このときにも、磁石部材14が板ばね28で押えられているので、巻真12が引出し方向に移動しても、磁石部材14は巻真12と共に移動せず、巻真12の係合軸部16における内側の先端部側(図10では左側)に位置する。
【0046】
また、このときには、図10に示すように、巻真12の段差凹部12aが時計モジュール4の外側(図10では右側)に向けて移動するので、オシドリ20の連動アーム部20aが時計モジュール4の外側に向けて移動し、オシドリ20が支持軸17を中心に時計回りに回転する。これに伴って、図10に示すように、連動ピン20aがオシドリばね21に設けられた位置規制部24の上部側に位置する係止凹部に弾力的に保持される。これにより、巻真12が引き出された第2の位置に規制される。
【0047】
このときにも、スイッチ板22がオシドリ20の連結ピン20cによってオシドリ20と連結されているので、図10に示すように、スイッチ板22が支持軸17を中心にオシドリ20と共に時計回りに回転する。これにより、スイッチ板22の接触ばね部22aの先端部が、回路基板25に接触した状態で上記とは逆方向に回転移動する。これにより、図10に示すように、回路基板25に設けられた左側に位置する他方の接点部25bに移動して接触し、磁気センサ15をオン状態にして、磁気センサ15による磁気検出を可能な状態にする。
【0048】
この状態で巻真12を回転させると、磁石部材14が巻真12と共に回転して磁界が変化し、この回転する磁界の変化を磁気センサ15が検出する。この磁気センサ15で出力された検出信号は、回路基板25のマイコンで解析されて、巻真12の回転に応じて指針(図示せず)を運針させて時刻を修正する。このときには、磁気センサ15が磁石部材14の回転方向(正回転であるか逆回転であるか)をも検出し、指針を正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に運針させて時刻を修正する。
【0049】
また、このときには、磁石部材14が巻真12と共に回転すると、磁石部材14の非円形部26が、巻真12と共に一体的に回転するので、図9(a)に示すように、非円形部26の角部が板ばね28の一対の弾性片28aを押し広げて乗り越えることにより、巻真12にクリック感が付与され、これにより巻真12の回転状態を感覚的に知ることができるので、巻真12を良好に回転操作することができる。
【0050】
この場合、磁石部材14の正回転または逆回転が連続していることを磁気センサ15が検出した場合には、指針を早送りで正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に運針させて、速やかに時刻を修正する。このときにも、巻真12の連続回転に伴って非円形部26が連続回転するので、その連続回転に伴って、非円形部26の角部が板ばね28の一対の弾性片28aを順次弾性変形させて順次乗り越える。
【0051】
このため、巻真12の連続回転に応じて、巻真12に順次クリック感が付与されるので、このときにも巻真12の連続回転状態を感覚的に知ることができ、これにより巻真12を良好に回転操作することができる。また、巻真12が引き出された第2の位置で、巻真12が数十秒の間、回転操作されないときには、磁気センサ15をオフ状態にして、電力の消費を防ぐ。
【0052】
このように、この電子腕時計によれば、回転方向に操作可能な操作部材である巻真12と、この巻真12に取り付けられて巻真12と一体的に回転する磁石部材14と、この磁石部材14の回転磁界を検出する磁気センサ15と、磁石部材14に設けられて断面形状が非円形状に形成された非円形部26と、この非円形部26に弾接し、巻真12を回転させた際に非円形部26によって弾性変形して非円形部26が乗り越える板ばね28とを備えているので、巻真12にクリック感を付与することができる。
【0053】
すなわち、この電子腕時計では、巻真12を回転させて磁石部材14を巻真12と一体的に回転させると、この磁石部材14の回転磁界を磁気センサ15で検出することができると共に、巻真12が回転すると、非円形部26も回転し、この非円形部26が板ばね28を弾性変形させて乗り越えるので、巻真12にクリック感を付与することができる。このため、巻真12を回転させた際に、その巻真12の回転状態を感覚的に知ることができるので、巻真12の回転操作性を向上させることができる。
【0054】
この場合、板ばね28は、磁石部材14の非円形部26を弾力的に挟み付ける一対の弾接片28aを備えているので、この一対の弾性片28aによって弾力的に非円形部26を確実に且つ良好に挟み付けることができ、これにより巻真12と共に非円形部26が回転する際に、非円形部26が一対の弾性片28aを押し広げて乗り越えることにより、巻真12にクリック感を確実に且つ良好に付与することができる。
【0055】
この場合、巻真12が連続して回転し、これに伴って非円形部26が連続回転する際には、その連続回転に伴って、非円形部26が一対の弾性片28aを順次弾性変形させて順次乗り越えることにより、巻真12の連続回転に応じて、巻真12に順次クリック感を付与することができ、これにより巻真12の連続回転状態を感覚的に知ることができる。
【0056】
また、この電子腕時計によれば、磁石部材14が、磁界を発生する磁石18と、この磁石18を包み込む樹脂部19とを備え、この樹脂部19に非円形部26が設けられていることにより、樹脂部19を成形するときに、これと同時に非円形部26を容易に且つ簡単に形成することができると共に、非円形部26を磁石部材14と共に巻真12に組み付けることができる。
【0057】
この場合、非円形部26は、その外径が磁石18の外径よりも小さく、且つ磁石18の側面に位置する樹脂部19とガイド鍔部27との間に位置し、この状態で板ばね28の一対の弾性片28aに挟まれているので、この一対の弾性片28aによって非円形部26を磁石部材14と共に位置規制することができる。
【0058】
また、この電子腕時計によれば、巻真12の断面非円形の係合軸部16が磁石部材14の係合孔18aに係合しているので、巻真12を軸方向に移動操作する際に、磁石部材14を巻真12に対して相対的に移動させることができると共に、非円形部26を弾力的に挟む一対の弾性片28aによって磁石部材14が軸方向の位置が規制されているので、これにより磁石部材14を巻真12の軸方向に対して常に一定の位置に保持することができる。
【0059】
このため、巻真12を軸方向に移動操作しても、巻真12や磁石部材14を破損せずに、常に磁石部材14を磁気センサ15に対応させることができるので、巻真12を軸方向における複数の位置に移動させても、1つの磁気センサ15で巻真12の回転を正確に検出することができるほか、磁気センサ15が磁石部材14に対して非接触状態であるから、耐久性の高いものを提供することができる。
【0060】
この場合、磁気センサ15は、磁石部材14の回転を検出して検出信号を出力し、この出力された検出信号が回路基板25のマイコンで解析されて、巻真12の回転に応じて指針(図示せず)を運針させて時刻を修正することができる。このときには、磁気センサ15が磁石部材14の回転方向(正回転であるか逆回転であるか)を検出するので、指針を正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に回転させることができる。
【0061】
また、このとき、磁石部材14の正回転または逆回転が連続しているか否かを磁気センサ15で検出することにより、回転が連続している場合に、指針を早送りで正方向(時計回り)または逆方向(反時計回り)に回転させて、速やかに時刻を修正することができる。この場合、磁気センサ15は、耐磁板30によって囲われているので、腕時計ケース1の外部磁界の影響を受けず、磁石部材14の磁界を正確に検出することができる。
【0062】
また、この電子腕時計では、巻真12をその軸方向における第1の位置と第2の位置とに位置規制する位置規制部材13を備えているので、巻真12をその軸方向における第1の位置と第2の位置とに正確に且つ確実に位置規制することができる。すなわち、位置規制部材13は、巻真12の軸方向への移動に伴って回転するオシドリ20と、このオシドリ20の連動ピンを位置規制部24の複数の係止凹部によって弾力的に保持するオシドリばね21とを備えているので、オシドリばね21の位置規制部24によってオシドリ20の回転位置を規制することができ、これにより巻真12の軸方向における位置を確実に規制することができる。
【0063】
また、巻真12は、その軸方向に押し込まれた第1の位置と引き出された第2の位置とで、回路基板25の接点部25a、25bを切り替える接点切替部材であるスイッチ板22を備えているので、磁石部材14が磁気センサ15に常に対応していても、スイッチ板22で回路基板25の接点部25a、25bを切り替えることにより、磁気センサ15をオン状態とオフ状態とに切り替えることができる。
【0064】
すなわち、スイッチ板22は、巻真12の軸方向への移動に伴って回転するオシドリ20と共に回転して、接触ばね部22aが回路基板25に設けられた2つの接点部25a、25bを切り替えることができるので、巻真12が押し込まれた第1の位置のときに、接触ばね部22aが回路基板25に設けられた右側に位置する一方の接点部25aに接触して、磁気センサ15をオフ状態にし、また巻真12が引き出された第2の位置のときに、接触ばね部22aが回路基板25に設けられた左側に位置する他方の接点部25bに接触して、磁気センサ15をオン状態にすることができる。
【0065】
このため、巻真12が押し込まれた第1の位置のときには、磁気センサ15がオフ状態であるから、磁気センサ15に対する待機電流を防ぐことができると共に、この状態で巻真12を回転させて磁石部材14を回転させても、磁気センサ15によって磁石部材14の回転を検出することがないので、磁気センサ15による消費電力を低減することができる。
【0066】
また、巻真12が引き出された第2の位置のときには、磁気センサ15がオン状態になるので、巻真12を回転させて磁石部材14を回転させると、磁気センサ15で磁石部材14の回転を検出することができる。この場合、巻真12が引き出された第2の位置のときに、数十秒の間、巻真12が回転操作されないときには、磁気センサ15をオフ状態にするので、これによっても磁気センサ15による消費電力を抑えて、低消費電力化を図ることができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、磁石部材14の樹脂部19に設けられた非円形部26が断面四角形状に形成されている場合にいて述べたが、これに限らず、非円形部は、例えば断面形状が三角形状であっても良く、また断面形状が五角形、六角形などの多角形状でも良く、さらに断面形状が楕円形状であっても良い。
【0068】
また、上述した実施形態では、板ばね28に一対の弾性片28aを設け、この一対の弾性片28aで磁石部材14の樹脂部19に設けられた非円形部26を弾力的に挟むように構成した場合について述べたが、必ずしも一対の弾性片28aで非円形部26を弾力的に挟む必要はなく、弾性片を片側のみに設け、この片側の弾性片のみを非円形部26の外周面に弾接させた構成でも良い。
【0069】
また、上述した実施形態では、磁石部材14の樹脂部19を軸方向に突出させ、この突出した樹脂部19に非円形部26を設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば樹脂部19を磁石18の外周面よりも外周方向に突出させ、この突出した樹脂部19の外周を非円形状に形成することにより、磁石18の外周面よりも外周方向に突出する非円形部を設けた構成であっても良い。
【0070】
また、これに限らず、巻真12に非円形部を設け、この非円形部の外周に板ばね26の一部を弾接させた構成でも良い。このように構成しても、巻真12の回転によって非円形部が板ばね26の一部を弾性変形させて乗り越えることにより、巻真12にクリック感を良好に付与することができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、巻真12に断面四角形状の係合軸部16を設け、磁石部材14の中心部に巻真12の係合軸部16が挿入する四角形状の係合孔14aを設けた場合について述べたが、これに限らず、巻真12の係合軸部16および磁石部材14の係合孔14aの各断面形状を、三角形、五角形、六角形などの多角形状、または楕円形状、スプライン形状などの非円形状に形成しても良い。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、巻真12がその軸方向における第1の位置と第2の位置とに移動するように構成された場合について述べたが、必ずしも第1、第2の各位置のみに移動する構成である必要はなく、第2の位置から更に引き出された第3の位置にも移動するように構成しても良い。このように構成しても、磁石部材14を板ばね26によって押え付けることにより、巻真12の軸方向への引出し操作に応じて磁石部材14が移動することがなく、常に磁石部材14が1つの磁気センサ15に対応するので、この1つの磁気センサ15で巻真12の回転を検出することができる。
【0073】
なおまた、上述した実施形態およびその各変形例では、指針式の電子腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも電子腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の電子時計に適用することができるほか、必ずしも電子時計に限らず、携帯電話機やPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)などの電子機器にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 腕時計ケース
4 時計モジュール
6 時刻修正装置
11 地板
12 巻真
13 位置規制部材
14 磁石部材
14a 係合孔
15 磁気センサ
16 係合軸部
18 磁石
19 樹脂部
25 回路基板
26 非円形部
27 ガイド鍔部
28 板ばね
28a 一対の弾性片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向に操作可能な操作部材と、
この操作部材に取り付けられて前記操作部材と一体的に回転する磁石部材と、
この磁石部材の回転を検出する磁気センサと、
前記操作部材もしくは前記磁石部材に設けられて断面形状が非円形状に形成された非円形部と、
この非円形部に弾接し、前記操作部材を回転させた際に前記非円形部によって弾性変形して前記非円形部が乗り越えるばね部材と
を備えていることを特徴とする回転スイッチ。
【請求項2】
前記ばね部材は、前記非円形部を弾力的に挟み付ける一対の弾接片を備えていることを特徴とする請求項1に記載の回転スイッチ。
【請求項3】
前記磁石部材は、磁界を発生する磁石と、この磁石を包み込む樹脂部とを備え、この樹脂部に前記非円形部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転スイッチ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−165468(P2011−165468A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26474(P2010−26474)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】