説明

回転位置決め装置と方法

【課題】切粉が発生する環境において円筒体をローラで回転して位置決めする場合に、円筒体とローラの間に入り込んだ切粉により円筒体の回転に異常が生じた場合に、これを検出できるようにする。
【解決手段】円筒体1の一端部を把持して円筒体1と共に回転する第1のチャック機構5と、円筒体1の他端部を把持して円筒体1と共に回転する第2のチャック機構7と、第1のチャック機構5の回転位相を検出する第1の回転センサ9と、第2のチャック機構7の回転位相を検出する第2の回転センサ11とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒体をその軸回りに回転させることにより、円筒体の外周面にある切削位置を周方向において切削装置の位置に位置決めする回転位置決め装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削対象の円筒体は、例えば、ボイラから発生した蒸気を集めるための管寄せである。管寄せの外周面には、スタブ管が溶接される。そのために、管寄せの外周面を切削することにより、この外周面に、スタブ管が挿入される孔を形成しておく。
【0003】
この孔を形成する際には、水平に配置した円筒体を台座上で回転させる。これにより、円筒体の外周面にある切削位置を、周方向において、切削装置の位置(例えば円筒体の真上)に位置決めする。その後、円筒体を、台座においてクランプにより固定する。この状態で、円筒体の外周面における切削位置を切削装置(例えばドリル)で切削することにより、円筒体に孔を形成する。
【0004】
また、円筒体における別の周方向位置にある切削位置に孔を形成する場合には、クランプを外して、円筒体を回転させる。これにより、別の切削位置を切削装置の位置にして、上述と同様に孔を形成する。
【0005】
円筒体を回転させるために、ローラを用いることができる。ローラは、円筒体と平行に配置され円筒体に接触する。ローラは、回転駆動されることにより、円筒体を回転させる。円筒体を回転させるローラは、下記の特許文献1に記載されている。
【0006】
また、円筒体の回転位相を検出するために、チャック機構を設けることができる。チャック機構は、円筒体の一端部を把持して、円筒体と共に回転する。このチャック機構の回転位相を検出することにより、円筒体の回転位相を検出できる。
円筒体には、周方向の基準位置を示すマークが設けられている。このマークをチャック機構における周方向の基準位置(例えばマーク)に合わせた状態で、円筒体とチャック機構の回転位相を合わせることができる。これにより、チャック機構の回転位相を、円筒体の回転位相として検出できる。検出した円筒体の回転位相に基づいて、円筒体の切削位置を切削装置の位置へ回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−80640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ローラと円筒体の間に、切削により生じた切粉が入り込むと、ローラは、円筒体の外周面上を滑ってしまう。
【0009】
そこで、下記の構成(1)を採用できる。または、構成(1)に加えて後述の構成(2)を採用できる。
【0010】
(1)ローラを、円筒体の軸方向に間隔をおいた複数位置に設ける。これにより、いずれかの軸方向位置におけるローラと円筒体の間に切粉が入り込んでも、他の軸方向位置のローラにより円筒体を回転させることができる。
【0011】
しかし、この構成において、いずれかの軸方向位置におけるローラと円筒体の間に切粉が入り込んだ場合に、切粉が入り込んだ軸方向位置では、円筒体に回転駆動力が作用せず、他のローラの軸方向位置では円筒体に回転駆動力が作用する結果、円筒体が捩じれてしまう可能性がある。
【0012】
(2)そこで、さらに、チャック機構を回転駆動させる。これにより、いずれかの軸方向位置におけるローラと円筒体の間に切粉が入り込んでも、他の軸方向位置のローラとチャック機構とで、円筒体に生じる捩れを抑えながら円筒体を安定して回転させることができる。
【0013】
しかし、チャック機構が、円筒体を把持して回転駆動されると、チャック機構と円筒体との間に滑りが生じる可能性がある。例えば、円筒体の端部にも孔開け位置(切削位置)が存在する場合には、チャック機構が、円筒体を把持できる部分は小さい。従って、チャック機構の把持力が小さくなるので、チャック機構と円筒体との間に滑りが生じる可能性がある。また、すべてのローラと円筒体の間に切粉が入り込んだ場合には、チャック機構だけで円筒体を回転させると、チャック機構と円筒体との間に滑りが生じる可能性がある。このような滑りにより、円筒体の回転位相が検出できなくなる。
【0014】
さらに、この滑りが生じない場合において、すべてのローラと円筒体の間に切粉が入り込むと、円筒体の端部には、チャック機構により回転駆動力が作用し、円筒体の他の部分には、回転駆動力が作用しなくなる。その結果、円筒体が捩じれてしまう可能性がある。
【0015】
そのため、上述の構成(1)を採用した場合に、または、上述の構成(1)(2)を採用した場合に、円筒体に捩じれが発生したり、チャック機構と円筒体との間に滑りが発生しても、このような異常を検出できるようにすることが望まれる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、切粉が発生する環境において円筒体を回転して位置決めする場合に、円筒体の捩じれ、または、チェック駆動機構と円筒体との滑りを検出できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するため、本発明によると、円筒体をその軸回りに回転させることにより、円筒体の外周面にある切削位置を、前記軸回りの周方向において切削装置の位置に位置決めする回転位置決め装置であって、
円筒体の軸方向に間隔をおいて、円筒体と平行に配置された複数のローラを備え、各ローラは、円筒体に接触しながら回転駆動されることにより、円筒体を回転させ、
さらに、円筒体の一端部を把持して、円筒体と共に回転する第1のチャック機構と、
円筒体の他端部を把持して、円筒体と共に回転する第2のチャック機構と、
第1のチャック機構の回転位相を検出する第1の回転センサと、
第2のチャック機構の回転位相を検出する第2の回転センサと、
第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラを同期して回転させる制御装置と、を備える、ことを特徴とする回転位置決め装置が提供される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の回転センサが検出した回転位相が、第2の回転センサが検出した回転位相と異なる場合には、その旨を示すエラー信号を出力するエラー検出部を備える。
【0019】
本発明の別の実施形態によると、第1の回転センサが検出した回転位相と、第2の回転センサが検出した回転位相とを表示する表示装置を備える。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によると、第1および第2のチャック機構の一方は、円筒体の一端部を把持して、ローラと同期して回転駆動されることにより、ローラと協働して円筒体を回転させ、
第1および第2のチャック機構の他方は、円筒体の他端部を把持して、円筒体の回転に従動して回転し、
制御装置は、第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラと一方のチャック機構を同期して回転させる。
【0021】
また、上述した目的を達成するため、本発明によると、円筒体をその軸回りに回転させることにより、円筒体の外周面にある切削位置を、前記軸回りの周方向において切削装置の位置に位置決めする回転位置決め方法であって、
円筒体の軸方向に間隔をおいた複数位置において、それぞれ円筒体と平行に配置され、円筒体に接触しながら回転駆動されることにより、円筒体を回転させるローラと、
円筒体の一端部を把持して、円筒体と共に回転する第1のチャック機構と、
円筒体の他端部を把持して、円筒体と共に回転する第2のチャック機構と、
第1のチャック機構の回転位相を検出する第1の回転センサと、
第2のチャック機構の回転位相を検出する第2の回転センサと、を設け、
(A)第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラを回転させ、
(B)第1の回転センサが検出した回転位相が、第2の回転センサが検出した回転位相と同じであるかを判断する、ことを特徴とする回転位置決め方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
上述した本発明によると、第1および第2のチャック機構の回転位相をそれぞれ検出する第1および第2の回転センサを設けることにより、第1の回転センサが検出した回転位相と、第2の回転センサが検出した回転位相とが同じであるかどうかを検出できる。すなわち、第1のチャック機構の回転位相と第2のチャック機構の回転位相が、同じであれば、円筒体の回転が正常であると判断でき、異なっていれば、円筒体が捩じれているか、または、チャック機構と円筒体との間に滑りが生じている異常な状態であると判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態による回転位置決め装置の構成図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】本発明の実施形態による回転位置決め方法を示すフローチャートである。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】切削装置の構成例を示す。
【図6】本発明の実施形態による回転位置決め装置の変更例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態による回転位置決め装置10の構成図である。図2は、図1のII−II線矢視図である。
【0026】
回転位置決め装置10は、円筒体1の軸回りに円筒体1を回転させることにより、円筒体1の外周面にある切削位置を、周方向において、後述する切削装置30の位置に位置決めする。円筒体1は、この例では管である。なお、周方向とは、円筒体1の軸回りの方向を意味する(以下同様)。
【0027】
回転位置決め装置10は、ローラ3、第1のチャック機構5、第2のチャック機構7、第1の回転センサ9、第2の回転センサ11、制御装置13、および、エラー検出部15を備える。
【0028】
ローラ3は、円筒体1と平行に配置され、円筒体1に接触しながらモータ4により回転駆動されることにより、円筒体1を回転させる。ローラ3は、円筒体1の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられる。好ましくは、ローラ3は、円筒体1の重力を受けて円筒体1を支持する。図1と図2の例では、2つのローラ3を1組として、円筒体1の軸方向に間隔をおいた複数位置の各々に、1組のローラ3が設けられている。この場合、各組の2つのローラ3は、共に同期して回転駆動されるように構成されるのがよい。ただし、各組において、2つのローラ3のうち、一方は回転駆動され、他方は回転自在に構成されてもよい。
【0029】
第1のチャック機構5は、円筒体1の一端部を把持して、ローラ3と同期して回転駆動されることにより、ローラ3と協働して円筒体1を回転させる。第1のチャック機構5は、円筒体1の端縁部を把持する爪17を有する回転部19と、ベアリング21を介して回転部19を回転可能に支持する支持部23とを備える。回転部19は、モータ25により回転駆動される。
【0030】
第2のチャック機構7は、円筒体1の他端部を把持して、円筒体1の回転に従動して回転する。第2のチャック機構7は、円筒体1の端縁部を把持する爪17を有する回転部19と、ベアリング21を介して回転部19を回転可能に支持する支持部23とを備える。
【0031】
第1の回転センサ9は、時々刻々と、第1のチャック機構5の回転位相を検出して、検出した回転位相を制御装置13とエラー検出部15へ出力する。
【0032】
第2の回転センサ11は、時々刻々と、第2のチャック機構7の回転位相を検出して、検出した回転位相をエラー検出部15へ出力する。
【0033】
制御装置13は、第1の回転センサ9または第2の回転センサ11(図1の例では、第1の回転センサ9)が検出した回転位相に基づいて、各ローラ3と第1のチャック機構5の回転を制御する。すなわち、制御装置13は、第1の回転センサ9または第2の回転センサ11が検出した回転位相に基づいて、切削位置を切削装置30の位置へ位置決めするように各ローラ3と第1のチャック機構5を同期して回転させる。なお、切削位置は、周方向において、間隔をおいて複数存在し、軸方向においても、間隔をおいて複数存在する。例えば、第1の軸方向位置において、周方向に間隔をおいて複数の切削位置があり、第1の軸方向位置と異なる第2の軸方向位置において、周方向に間隔をおいて複数の切削位置がある。
【0034】
エラー検出部15は、第1の回転センサ9が検出した回転位相が、この回転位相の検出時点に第2の回転センサ11が検出した回転位相と異なる場合には、その旨を示すエラー信号を出力する。好ましくは、エラー検出部15は、エラー信号を制御装置13に出力する。制御装置13は、第1のチャック機構5およびローラ3を回転させている時に、エラー信号を受けると、第1のチャック機構5およびローラ3の回転を止める。
【0035】
円筒体1の両端部には、円筒体1の周方向の基準位置にマークが付されている。このマークを第1のチャック機構5の基準位置(例えば、マークの位置)および第2のチャック機構7の基準位置(例えば、マークの位置)に合わせる。この整合状態で、第1のチャック機構5および第2のチャック機構7は、それぞれ、円筒体1の両端部を把持する。これにより、第1および第2の回転センサ9、11は、それぞれ、第1および第2のチャック機構5、7の回転位相を円筒体1の位相として検出できる。
これについて、切削位置は、周方向において、円筒体1の前記マークに対する既知の位置にある。従って、制御装置13は、上述の整合状態において、円筒体1の切削位置が切削装置30の位置にある時に、第1の回転センサ9または第2の回転センサ11が検出する回転位相を目標位相として記憶している。制御装置13は、第1の回転センサ9または第2の回転センサ11が検出する回転位相が目標位相となるように、各ローラ3と第1のチャック機構5を回転させる。
【0036】
なお、上述の整合状態で、第1および第2のチャック機構5、7が、それぞれ、円筒体1の両端部を把持した時に、第1および第2の回転センサ9、11がそれぞれ検出する回転位相は同じ値になる。
【0037】
図3は、上述した回転位置決め装置10を用いた回転位置決め方法を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS1において、円筒体1をローラ3に設置する。
【0039】
ステップ2において、チャック機構5、7が円筒体1を把持する。すなわち、円筒体1の周方向の基準位置に設けられたマークと、第1および第2のチャック機構5、7の基準位置(例えば、マークの位置)とを、周方向において一致させ、この状態で、第1および第2のチャック機構5、7が、それぞれ、円筒体1の両端部を把持する。
【0040】
ステップS3において、制御装置13が、第1または第2の回転センサ9、11が検出した回転位相に基づいて、切削装置30の位置へ切削位置を位置決めするように各ローラ3と第1のチャック機構5を互いに同期させて回転させる。すなわち、第1のチャック機構5により回転させられる円筒体1の回転速度と、ローラ3により回転させられる円筒体1の回転速度とが同じになるように、各ローラ3と第1のチャック機構5が互いに同期して回転させられる。なお、切削装置30の位置とは、図1や後述の図5の例では、周方向における、円筒体1の最上点(真上)の位置を意味する。
【0041】
ステップS4において、第1の回転センサ9が検出した回転位相が、この回転位相の検出時点で第2の回転センサ11が検出した回転位相と同じであるかを判断する。本実施形態では、エラー検出部15は、第1の回転センサ9が検出した回転位相が、第2の回転センサ11が検出した回転位相と異なる場合には、その旨を示すエラー信号を制御装置13に出力する。これにより、制御装置13は、その後において、第1のチャック機構5およびローラ3の回転を止めた状態にする。例えば、制御装置13は、第1のチャック機構5およびローラ3を回転させている時に、エラー信号を受けると、第1のチャック機構5およびローラ3の回転を止める。
【0042】
なお、ステップS4は、ステップS3の後に行われてもよいが、ステップS3で円筒体1を回転している時に行われてもよい。
【0043】
上述した回転位置決め方法により、周方向において、円筒体1の切削位置を切削装置30の位置に位置決めしたら、固定装置20a、20b、20cにより、円筒体1を固定する。この例では、切削装置30の位置は、円筒体1の真上の位置である。
【0044】
図1の例では、複数の固定装置20a、20b、20cが設けられる。図4は、図1のIV−IV線矢視図である。図4に示すように、固定装置20aは、昇降部27と、2つのシリンダ装置29と、べース部31とを有する。
各シリンダ装置29は、べース部31に固定されたシリンダ29aと、シリンダ29a内の油圧室に供給される油圧により往復運動するピストン29bと、を有する。
【0045】
昇降部27は、上昇することにより、円筒体1に下方から接触して円筒体1を支持する。昇降部27は、例えば、シリンダ装置またはジャッキにより構成されてよい。
【0046】
2つのシリンダ装置29は、ピストン29bを前進させて円筒体1に押し付けることにより、円筒体1を固定する。図4において、2つのシリンダ装置29は、水平方向に対して下方に傾いて、ピストン29bの軸が互いに交差するように配置される。従って、円筒体1は、2つのシリンダ装置29により昇降部27に押し付けられることにより安定して固定される。
【0047】
他の固定装置20b、20cも、固定装置20aと同じ構成を有していてよい。好ましくは、中央の固定装置20bのべース部31は、円筒体1の軸方向を向くレール上(図示せず)を走行可能に構成されてよい。この場合、固定装置20bにおいて、昇降部27は、べース部31に昇降可能に取り付けられる。この構成で、後述する切削装置30の加工具39を円筒体1の軸方向に移動させて、軸方向における複数の切削位置で切削する場合に、各切削位置の近傍に固定装置20bを移動させることにより、該切削位置を切削する時に、該切削位置の近傍で円筒体1を固定できる。従って、切削加工の安定性が高まる。
【0048】
このような構成の固定装置20a、20b、20cにより、円筒体1を固定したら、円筒体1の切削位置を切削装置30で切削する。
【0049】
図5は、切削装置30の構成例を示す。図5(A)は、図1の一部に相当するが、切削装置30と円筒体1のみを示す。図5(B)は、図5(A)のB−B線矢視図であり、切削装置30と円筒体1と固定装置20bのみを示す。
【0050】
切削装置30は、鉛直フレーム33、水平フレーム35、水平移動部37、および、加工具39を有する。
【0051】
1対の鉛直フレーム33が、円筒体1を間に挟むように配置される。各鉛直フレーム33は、互いに同期して円筒体1の軸方向に移動可能である。そのために、例えば、各鉛直フレーム33の下端部には、円筒体1の軸方向を向くレール41上を転動可能な車輪43を有する。また、図示しない駆動機構により、各鉛直フレーム33は、互いに同期して円筒体1の軸方向に駆動されてよい。
【0052】
水平フレーム35は、1対の鉛直フレーム33に架け渡されるように、これらの鉛直フレーム33に水平に取り付けられる。水平フレーム35は、鉛直フレーム33に対して上下方向に移動可能である。
【0053】
水平移動部37は、水平フレーム35に取り付けられる。水平移動部37は、水平フレーム35に対して水平方向に移動可能である。
【0054】
加工具39は、水平移動部37に取り付けられる。加工具39は、この例では、円筒体1の切削位置において円筒体1の外周面に孔を切削により形成するドリルである。
【0055】
このような構成により、鉛直フレーム33の移動により、円筒体1の軸方向に関して、円筒体1の切削位置(図5(B)において符号Pで示す位置)に加工具39を位置させる。
次いで、水平移動部37の移動により、円筒体1の軸方向に直交する水平方向に関して、円筒体1の切削位置Pに加工具39を位置させる。
その後、水平フレーム35を下降させて、真上を向いている円筒体1の切削位置Pに孔を加工具39で切削形成する。
【0056】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜3のいずれかを採用してもよいし、変更例1〜3を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、他の点は上述と同じであってよい。
【0057】
(変更例1)
第1のチャック機構5は、回転駆動されずに、第2のチャック機構7と同様に、円筒体1の一端部を把持した状態で、円筒体1の回転に従動して円筒体1と一体で回転するように構成されてもよい。
【0058】
(変更例2)
上述では、エラー検出部15は、エラー信号を制御装置13に出力していた。これについて、本発明によると、エラー検出部15は、エラー信号を警告装置に出力してもよい。警告装置は、エラー信号を受けると、異常である旨の音や光などのアラームを発生させる。ステップS3で円筒体1を回転させている時に、このアラームが発生した場合には、人が、操作装置を操作することにより、ローラ3とチャック機構5の回転を停止させる。
【0059】
(変更例3)
上述では、第1の回転センサ9が検出した回転位相と、第2の回転センサ11が検出した回転位相は、エラー検出部15に入力されていた。これについて、本発明によると、図6のように、エラー検出部15の代わりに表示装置45を設けてもよい。この場合、表示装置45には、第1の回転センサ9が検出した回転位相と、第2の回転センサ11が検出した回転位相が入力される。これにより、表示装置45は、第1の回転センサ9が検出した回転位相と、第2の回転センサ11が検出した回転位相を表示する。表示された回転位相を人が見ることにより、円筒体1の回転が正常かどうかを人が判断できる。異常と判断されたら、例えば、その後の切削加工を中止する。
【符号の説明】
【0060】
1 円筒体、3 ローラ、4 モータ、5 第1のチャック機構、7 第2のチャック機構、9 第1の回転センサ、10 回転位置決め装置、11 第2の回転センサ、13 制御装置、15 エラー検出部、17 爪、19 回転部、20a、20b、20c 固定装置、21 ベアリング、23 支持部、25 モータ、27 昇降部、29 シリンダ装置、29a シリンダ、29b ピストン、30 切削装置、31 べース部、33 鉛直フレーム、35 水平フレーム、37 水平移動部、39 加工具、41 レール、43 車輪、45 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体をその軸回りに回転させることにより、円筒体の外周面にある切削位置を、前記軸回りの周方向において切削装置の位置に位置決めする回転位置決め装置であって、
円筒体の軸方向に間隔をおいて、円筒体と平行に配置された複数のローラを備え、各ローラは、円筒体に接触しながら回転駆動されることにより、円筒体を回転させ、
さらに、円筒体の一端部を把持して、円筒体と共に回転する第1のチャック機構と、
円筒体の他端部を把持して、円筒体と共に回転する第2のチャック機構と、
第1のチャック機構の回転位相を検出する第1の回転センサと、
第2のチャック機構の回転位相を検出する第2の回転センサと、
第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラを同期して回転させる制御装置と、を備える、ことを特徴とする回転位置決め装置。
【請求項2】
第1の回転センサが検出した回転位相が、第2の回転センサが検出した回転位相と異なる場合には、その旨を示すエラー信号を出力するエラー検出部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の回転位置決め装置。
【請求項3】
第1の回転センサが検出した回転位相と、第2の回転センサが検出した回転位相とを表示する表示装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の回転位置決め装置。
【請求項4】
第1および第2のチャック機構の一方は、円筒体の一端部を把持して、ローラと同期して回転駆動されることにより、ローラと協働して円筒体を回転させ、
第1および第2のチャック機構の他方は、円筒体の他端部を把持して、円筒体の回転に従動して回転し、
制御装置は、第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラと一方のチャック機構を同期して回転させる、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の回転位置決め装置。
【請求項5】
円筒体をその軸回りに回転させることにより、円筒体の外周面にある切削位置を、前記軸回りの周方向において切削装置の位置に位置決めする回転位置決め方法であって、
円筒体の軸方向に間隔をおいた複数位置において、それぞれ円筒体と平行に配置され、円筒体に接触しながら回転駆動されることにより、円筒体を回転させるローラと、
円筒体の一端部を把持して、円筒体と共に回転する第1のチャック機構と、
円筒体の他端部を把持して、円筒体と共に回転する第2のチャック機構と、
第1のチャック機構の回転位相を検出する第1の回転センサと、
第2のチャック機構の回転位相を検出する第2の回転センサと、を設け、
(A)第1または第2の回転センサが検出した回転位相に基づいて、前記切削位置を切削装置の位置へ位置決めするように前記各ローラを回転させ、
(B)第1の回転センサが検出した回転位相が、第2の回転センサが検出した回転位相と同じであるかを判断する、ことを特徴とする回転位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66971(P2013−66971A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207170(P2011−207170)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】