回転体のトルク制限機構、逆回転防止機構、及びそれらを備えた重送防止機構
【課題】回転体のトルク制限機構及び逆回転防止機構を提供する。
【解決手段】シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され 回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、摩擦部材33や摩擦部材接触面の表面処理、あるいは、ブラケット14の保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転体12のトルクを調整する。
【解決手段】シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され 回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、摩擦部材33や摩擦部材接触面の表面処理、あるいは、ブラケット14の保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転体12のトルクを調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体のトルク制限機構、逆回転防止機構、及びそれらを備えた重送防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどには、用紙を送り出す用紙送り出し機構に、一方向への回転のみを許容し逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えたローラを有している。
【0003】
この逆回転防止機構としては、シャフトと回転体との間に、周方向へ間隔をあけて配設された複数のコロをそれぞれバネによって一方向へ付勢したベアリング構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この逆回転防止機構では、シャフトに対する回転体の一方向への回転は許容するが、他方向への回転力が回転体に作用すると、コロがバネの付勢力に抗して移動し、このコロによって回転体がシャフトに係合し、シャフトに対する他方向への回転が防止される。
【0005】
また、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置において、紙の二重送りを防ぐとともに、紙詰まりの際に、紙送り出し機構を逆転させて詰まった紙を取り除くことができるトルク制限機構を備えたローラもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−63028号公報
【特許文献2】特許第3456882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術による逆回転防止機構やトルク制限機構は、部品点数が多く複雑な構造であるため、コストが高く、また、組み立て分解が困難であるという問題点を有している。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のような従来の逆回転防止機構やトルク制限機構が有している問題点を解決することがその一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材を備え、前記シャフトの回転軸に対して垂直に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにし、前記回転規制部材を、前記固定台の壁面に接触させたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の回転体の逆回転防止機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面との摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。
【0010】
請求項13に記載の回転体のトルク制限機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。
【0011】
請求項21に記載の回転体のトルク制限機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記摩擦部材は、その基端部がブラケットの保持部と前記シャフトとの間に挟持され、左右に設けられた構造により、前記回転体の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする。
【0012】
請求項26に記載の重送防止機構は、フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、前記フィードローラは請求項1〜12のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは請求項13〜25のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明者が先に特願2005−114639として出願した逆回転防止機構の説明を図1〜図7を参照して説明する。
図1〜図7に示す逆回転防止機構は、例えば、印刷機のフィードローラなどの回転体を回転自在に支持するシャフトに回転規制部材が取り付けられ、この回転規制部材が、シャフトに対して正回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に対して摺動して回転を許容し、シャフトに対して逆回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に密着して回転を阻止するようになっているものである。
【0014】
図1及び図2は、特願2005−114639の逆回転防止機構を備えたローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
図1に示すように、用紙送り出し機構は、積層された用紙Pの上面にピックアップローラ1を接触させて引き出し、その後、この用紙Pをリタードローラ2に対峙したフィードローラ3よって一枚ずつ送り出し、さらに、図2に示すように、一対の送り出しローラ4に挟持させて搬送する構造を有している。
【0015】
ここで、フィードローラ3は、送り出しローラ4へ用紙Pが渡されてシャフト3aの回転が停止された後に、送り出しローラ4によって送り出される用紙Pによってつれ回りするように、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えている。
【0016】
次に、この逆回転防止機構について詳述する。
図3は、この実施例における回転体の逆回転防止機構を示す斜視図、図4は、逆回転防止機構の構成を説明する分解斜視図、図5は、逆回転防止機構の構造を説明する断面図、図6は、逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図、図7は、逆回転防止機構の作用を説明する断面図である。
図3〜図6に示すように、フィードローラ3は、その側部に、逆回転防止機構11が設けられている。
【0017】
この逆回転防止機構11は、フィードローラ3と連結固定された円筒状の回転体12と、この回転体12の中心に挿通されたフィードローラ3のシャフト3aに取り付けられた回転規制部材13と、この回転規制部材13をシャフト3aに支持するブラケット14とを有している。
【0018】
ブラケット14は、シャフト3aに固定される固定部15と、この固定部15の一端にて側方へ延在した保持部16とを有する断面視L字状に形成されている。
【0019】
ブラケット14には、固定部15の端部近傍に係合孔17が形成されている。そして、このブラケット14は、その固定部15を、シャフト3aに形成された取付孔18に挿入し、その端部をシャフト3aの反対側へ突出させた状態にて、係合孔17へ係合ピン19を嵌合させて係止することにより、シャフト3aに取り付けられている。
そして、回転規制部材13は、その基端部がブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に挟持されて保持されている。
【0020】
回転規制部材13は、例えば、各種のゴム、エラストマ、スポンジあるいはこれらの複合物などの弾性材から形成されたものや合成皮革、皮、布、不織布、注型(ウレタンなど)で、ブラケット14に保持された基端部から先端部へ向かって、シャフト3aの正回転方向αへ延在して湾曲されている。そして、この回転規制部材13の一部が回転体12の内周面に対して摺動可能に接触されている。
【0021】
そして、上記構造の逆回転防止機構11では、図7(a)に示すように、シャフト3aが正回転方向αへ回転すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0022】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によってシャフト3aとともに、正回転方向αへ回転し、この回転体12が連結固定されたフィードローラ3が正回転方向αへ回転される。
【0023】
また、図7(b)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも正回転方向αへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12に正回転方向αへ向かう回転力が作用すると、停止しているシャフト3aに対して、回転体12が正回転方向αへ向かって回転する。つまり、回転規制部材13は、基端部から先端部へ向かって正回転方向αへ延在して湾曲されているので、回転体12が回転しても回転体12の内周面に押圧されて密着することがなく、回転体12の内周面に僅かに接して摺動することとなる。
【0024】
これにより、シャフト3aが停止した状態にて、フィードローラ3は、回転体12とともに、正回転方向αへ回転する。
【0025】
また、図7(c)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に逆回転方向βへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が作用すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0026】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によって、停止しているシャフト3aと一体化し、逆回転方向βへの回転が阻止される。
【0027】
このように、上記の逆回転防止機構11によれば、シャフト3aに対する回転体12の逆回転方向βへの回転を阻止する弾性体からなる回転規制部材13をシャフト3aに設けた簡易な構成であるので、低コスト化を図ることができ、しかも、組み立て分解の容易化を図ることができ、これにより、内部の消耗部品を容易に交換することができる。
【0028】
以下、本発明に係る回転体のトルク制限機構及び逆回転防止機構の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、上述の特願2005−114639の逆回転防止機構11に対し、改良を加え、回転トルクが調整可能な回転体のトルク制限機構及び逆回転防止機構を得るものである。
【0029】
すなわち、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構のみならず、一方向への回転には抵抗を与えず、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能、もしくは、両方向への回転にそれぞれ所定の抵抗を与えるダンパー機能を有するトルク制限機構をも実現できるものである。
【0030】
ダンパー機能を有するものは、例えば、ヒンジなどに使用でき、OA機器、音響機器、住宅機器、家電機器等における急な開閉が適さない開閉部分において、その開閉の動作をゆっくりと、なめらかに動作させることができる。
【0031】
トルクリミッター機能を有するものは、例えば、図1及び図2に示した用紙送り機構において、複数の紙を同時に挟んで送ってしまう所謂、“重送”を防止する重送防止機構に使用することができる。
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態を挙げ、図面を参照して説明する。(第1の実施の形態)
図8〜図11は、本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
第1の実施の形態に係る逆回転防止機構における回転体12の内周面の一部は、図8(a)に示すように、固定台21側から固定部15側に向かって回転体内側が狭くなるような傾斜面12aとなっている。このため、回転規制部材13を、回転体12のシャフト3aの回転軸に固定されている固定台21(この例では、シャフト3aの回転軸に対して略垂直に取り付けられている)の壁面に接触させて回転させていくと、回転規制部材13は固定台21の壁面21aに接触しながら移動し、回転規制部材13がつぶされるに従って空間が広い側へ押し出されていき(図8(b))、最後に、逆回転阻止状態となる(図8(c))。
【0033】
この逆回転阻止状態の逆回転防止機構11を正面から見ると図9に示すように、回転規制部材13が弾性変形して、回転体12への良好な密着状態が維持されている。なお、回転体12の傾斜面12aの形状は、金型は一般に先が細くなるようにすると成型品が抜けやすいため成形が容易である。
【0034】
また、回転規制部材13の厚さに偏りをつけ(回転規制部材13の先端部のみでもよい)て、シャフト3aの軸に対して垂直な壁面21aにロックされる(回転が阻止される)構造としてもよい。もしくは、回転規制部材13の厚さは略均一とし、固定台21に傾斜をつけてもよい。
【0035】
図9は、第1の実施の形態の変形例1であり、固定台21の側面に傾斜を付けた例である。また、図10は、固定台21の側面を逆向きの傾斜を付けた変形例2である。また、図11は、回転体12の内周面に傾斜のかわりに段差12bを付けた変形例3である。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、図12に示すように、回転体12の内周面12c、固定台21の壁面21aやその対向する側面12dなど摩擦部材33が接触する面(以下、摩擦部材接触面と記す)の少なくとも1面を摩擦係数を高める、あるいは、摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したものである。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
【0037】
なお、摩擦部材33は、図5に示した回転規制部材13に相当するものである。
この摩擦部材接触面は、表面が粗い面である方が回転体12がロック状態になりやすく、表面がなめらかな面である方がロック状態になりにくい、または、ロック状態から元に戻りやすい。
【0038】
この摩擦部材接触面素材としては、スポンジ、不織布、金属、プラスチック、ゴム、エラストマなどを用いる(表面にこれらの素材を貼り付けるだけでもよい)。
【0039】
また、この摩擦部材接触面を凹凸のある構造とすると、摩擦係数を高めることができる。そのためには、表面が凹凸のある形状の金型を使用して成形する。または、成形後に以下に挙げる加工を施して、摩擦部材接触面に凹凸を付ける。
【0040】
摩擦部材接触面に凹凸を付けるための加工の例としては、研磨、紙ヤスリ、金属ブラシ、たわし、腐食、シボ、放電目、塗装・吹きつけ、溶融などの加工が挙げられる。なお、摩擦部材接触面の凹凸がランダムな状態になっている方が規則的な凹凸であるよりも摩擦係数が高くなる。
【0041】
例えば、プラスチック成型物の表面に紙ヤスリをかけると、表面は先端が鋭角になったとげが並んだ状態となる。あるいは、モーター治具で表面を加工する。または、この表面を転写してもよい。あるいは、ドリル・エンドミルでの削り跡も有効である。
【0042】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、研磨による摩擦部材33の表面の状態、あるいは、摩擦部材33の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたものである。
【0043】
摩擦部材33の表面を研磨した場合は、回転体12がロック状態になりにくい、あるいは、ロック状態から元に戻りやすい。一方、研磨していない場合は、回転体12がロック状態になりやすい。
【0044】
また、摩擦部材33の表面状態によっては、回転体12のロック時に、摩擦部材33がつぶれて表面同士が密着して、離れにくくなる場合もあり、このような場合の“離れにくさ”を摩擦部材33の研磨によって変化させることができる。
【0045】
摩擦部材33の研磨方法としては、シボ、放電加工目、ブラストなどがある。
さらに、逆に弾性体側の表面を接触する内壁に、故意に適度に擦ったものを組み込んでもよい。これによって、初期トルクからの回転トルクの上下幅を小さくすることができる。初期表面から摩耗などによって表面が変化したときなど、表面変化による回転トルクの変化を最小限にすることができる(エージング)。
これらの研磨方法の選択、研磨時間、研磨範囲(全体を研磨するか、一部分のみ研磨するかなど)等の調整により、上記のような回転体12のロック状態のなりやすさを調整し、所定の特性のトルク制限機構または逆回転防止機構を実現できる。
【0046】
また、摩擦部材33の幅、長さ、厚さ、無負荷状態の形状を変えることによっても、回転体12のロック状態のなりやすさを調整し、所定の特性のトルク制限機構または逆回転防止機構を実現できる。
【0047】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構は、第2〜第3の実施の形態で示した摩擦部材33を用い、図13のような構造としたものである。本実施の形態のトルク制限機構31は、摩擦部材33を備え、その基端部がブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に挟持されて保持されている。
【0048】
図13(a)に示すように、保持部16及び摩擦部材33が、シャフト3aの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台15の左右それぞれに設けられた構造により、回転体12の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限する構造となっている(図13(a)は、回転体12が静止した状態)。
【0049】
なお、左右それぞれに設けられた摩擦部材33の長さ・形状は、左右対称であっても、あるいは、非対称であってもよい。図13の(d),(e),(f)に示すものは、摩擦部材33の長さ・形状が非対称の例である。
【0050】
そして、回転体12が左回りに回転した状態が図13(b)であり、このとき、回転に対して一定の負荷がかかる。また、回転体12が右回りに回転した状態が図13(c)であり、このときも、回転に対して一定の負荷がかかる。本実施の形態では、左右どちら回りの回転に対しても、摩擦部材の性質によっては、例えば接触角との摩擦が低いものではロック状態にはならない。
【0051】
なお、摩擦部材33は、例えば、各種のゴム、プラスチック、エラストマ、シリコンゴム、コルク、コルクとゴムの混合物等、あるいはこれらの複合物などの弾性材から形成される。また、摩擦部材33は、図14に示すような筒状のものでもよい。
【0052】
また、上記の略対称に設けられた摩擦部材33及びブラケット14の構造を複数有するものでもよく、このような変形例を図15〜図18に示す。
【0053】
例えば、図15(a)に示す例では、上下2カ所に上記構造が設けられている。そして、回転体12が左回りに回転した場合は、図15(b)に示すように、上下の摩擦部材33がそれぞれ回転体12の内周面に押しつけられ、この回転に対するトルク制限がなされる(右回りの回転に対しても同様である)。
【0054】
摩擦部材33は、保持部16より長く、図15(a)に示す如くはみ出ているが、この摩擦部材33のはみ出した部分の長さを変えることにより(例えば、左右非対称とする)、回転トルクを調整することができる。
【0055】
なお、この2カ所の摩擦部材33が、図14に示した如く筒状のものの場合に、回転体12が左回りに回転した様子を、図15(c)に示す。この場合も図15(b)と同様に回転に対するトルク制限がなされる。
【0056】
図16は、上記変形例を歯車内に使用したものであり、歯車34の内側の回転体12の内側にトルク制限機構31を備えている。これにより、歯車34の回転に対するトルクを制限し、回転体12にかかる負荷を第2及び第3の実施の形態により調整することにより、トルクリミッター又はダンパーの機能を実現できる。
【0057】
図17及び図18は、図16の変形例であり、保持部16の逆側、すなわち回転体12の内周壁に対向する側に摩擦部材33を備えたものである。図17(a)は、上側の保持部16に板状の摩擦部材33を、下側の保持部16に筒状の摩擦部材33を、それぞれ備えている。また、図17(b)では、上下の保持部16それぞれに筒状の摩擦部材33を備えている。
【0058】
また、図18(a)では、上側の保持部16にのみ、板状の摩擦部材33を備えた例である。また、図18(b)では、下側の保持部16にのみ筒状の摩擦部材33を、備えた例である。また、図18(c)は、摩擦部材33及びブラケット14の構造が、上下左右の4カ所に設けられた例である。
【0059】
また、本実施の形態において、複数ある摩擦部材33をそれぞれ異なるものとしてもよい。例えば、図19に示す変形例のように、左側に設けられた摩擦部材33aと右側に設けられた摩擦部材33bと異なるものとする。
【0060】
この摩擦部材33a,33bは、前述第3の実施の形態で述べた方法で摩擦係数を異なるものとして成形したり、幅、長さ、厚さが異なるようにしてもよい。これにより、回転方向によって、回転トルクの特性が変わる。
また、本実施の形態において、複数ある保持部16の長さを変えても良い。
【0061】
また、本実施の形態において、図20に示す変形例のように、摩擦部材33の側面に対向する部分に、側面ガイド35を設けても良い。
図20において、保持部16には、摩擦部材33の側面から隙間Sを開けて略垂直に側面ガイド35が左右に取り付けられている。なお、この側面ガイド35は、摩擦部材33の潰れ具合に合わせるように、傾斜を付けても良い。側面ガイド35は摩擦部材33の左右のいずれか一方のみに取り付けたものでもよい。側面ガイド35を使用した場合、回転トルクを制限する効果が大きくできる。
【0062】
また、側面ガイド35のサイズや形、表面形状、隙間Sの大きさ、上記傾斜の度合い、さらにこれらの組み合わせによって、トルクの特性を変えることができる。
また、摩擦部材33はゴム等の弾性体であるので、様々な形状にすることが容易にできる。例えば、図21の(a)〜(h)のような形状とすることができる。
【0063】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、ブラケット14の保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能な回転体のトルク制限機構を実現できるものである。
【0064】
図22は、図13に示したトルク制限機構の作用を説明する断面図である。図22(a)に示すトルク制限機構31において、回転体12が回転すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している摩擦部材33が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧される。この押圧される部分の拡大図を図22(b)及び図22(c)に示す。
【0065】
図22(b)は摩擦部材33が滑りにくい場合であり、図22(c)は図22(b)の場合よりも滑りやすい場合である。
【0066】
また、摩擦部材33のすべり具合により、保持部16と回転体12との間の狭い部分の空間Gへの押し込まれ具合が変わる。この“押し込まれ具合”を変えることにより、トルクを変えることができる。
【0067】
また、保持部16と回転体12との間の空間Gの形状や大きさが異なれば、上記“押し込まれ具合”を変えることができる。例えば、固定部の角の形状をとがった形状や曲面形状などに変えることによって、上記空間Gの形状を変えることができる。
【0068】
図23は、保持部16の角の形状を様々な形に変えた例を、列挙したものである。このように、保持部16の角の形状の違いにより上記空間Gの形状が変わり、従って、摩擦部材33の“押し込まれ具合”が変わるため、トルクを変えることができる。
【0069】
次に示す図24は、摩擦部材33の無負荷時の形状の例を示すものである。例えば、図24(a)、(b)に示すように摩擦部材33の一部に凹凸を設けてもよい。摩擦部材33の曲部の曲率Rは図24(c)、(d)、(e)のように変えてもよい。
【0070】
また、図24(f)のように平板形状であってもよい。回転体12の回転による負荷がかかった状態を図25に示す。摩擦部材33が図24(f)のように平板形状である場合、回転体12の内周に図25(a)に示すように、押圧Aがかかる。
【0071】
回転体12の内周にかかる押圧は以下の大小は以下の(1)〜(3)のような関係となる。
R(1)>R(2)>R(3)・・・・(1)
R(4)>R(5)>R(6)・・・・(2)
A<B<C<D・・・・(3)
なお、上記R(1)、R(2)、R(3)、R(4)、R(5)、R(6)は円の半径である。
以上のように、摩擦部材33は、平板形状のもの(図24(f)を曲げて収納した方が、回転体12の内周にかかる押圧が大きく、曲率が大きい収納状態ほど押圧が大きい。回転角度により、回転トルクが異なると言える。同様に無負荷状態で図24の(c),(d),(e)のような形状でも収納時の変形曲率が大きい程、押圧が大きくなる。
【0072】
また、摩擦部材33が保持部16の上部に設けられている場合は、図26(a)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(b)のように、(c)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(d)のように、(e)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(f)のように、それぞれ回転体12の内周に押圧がかかる。
保持部16は、以上に述べたように、摩擦部材33に対する加圧付与の機能を有するものであるが、摩擦部材33が巻き込まれてしまうと機能しなくなるので、この巻き込み防止のための機能も有している。
【0073】
次に、保持部16は適宜、さまざまな形状とすることができ、例えば、図27に示すような形状が挙げられる。そのなかでも、特に、摩擦部材33によって回転体12の内周に押圧がかかる箇所が複数ある場合には、仮に回転体12の内周に押圧がかからない箇所があったとしても、他の箇所に押圧がかかれば摩擦部材33としての機能を果たすことが出来る。
【0074】
なお、摩擦部材33及び保持部16が複数(3個)ある場合の斜視図を図28に示す。摩擦部材33及び保持部が複数ある場合には、摩擦部材33及び保持部16は、硬度や硬度の温度特性などの特性が異なる材質のものを設けてもよい。
【0075】
さらに、保持部16の形状の例を図29に示す。図29(a)、(b)に示す保持部16は、複数の凹部を有し、その凹部の1つに摩擦部材33が取り付けられているものである。
【0076】
以上のように、摩擦部材33及び保持部16の形状を変えることにより、回転体12の内周にかかる押圧を変えることができるので、回転トルクを調整できる。このように、保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能なトルク制限機構を実現できる。
【0077】
図30に示すトルク制限機構は、斜視図(a)とその断面図(b)に示す筒状の弾性体(ゴムなど)の一部を切断した摩擦部材33(図30(c))と図30(d)に示すブラケット14を組み合わせたもの(図30(e))である。
この図30(e)に示すトルク制限機構は、ブラケット14の保持部16に挟み付けられて保持されている。そして、回転体12に取り付けた状態が図30(f)である。この例では、回転体12の内周面に押しつぶされるように挿入される。
この摩擦部材33の厚さ、幅、長さ、硬度等の条件により、回転トルクが調整可能である。
【0078】
なお、摩擦部材33は図30(c)に示すように切断されているので、左右の回転に際し、摩擦部材33はその切断部の両側がそれぞれ独立して動けるので、回転体12の内周面に密着しやすい。
【0079】
図31に示すトルク制限機構は、図30に示すものにおいて、摩擦部材33を手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332の2枚(拡大図参照)としたものである。この手前側摩擦部材331及び奥側摩擦部材332は、例えば、ゴム、スポンジ、エラストマ、注型(ウレタンなど)等で形成される。
【0080】
また、上記2枚の摩擦部材33(手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332)は、図32(a)に示すように、1枚の弾性体に切れ込みを入れて2列にしたものでもよい。また、図32(b)に示すように、3枚の弾性体であってもよく、さらに、3枚以上であってもよい。
【0081】
また、手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332を、それぞれ、研磨表面が異なるものとしてもよい。例えば、トルクリミッターの場合は、図32(c)に示す2枚の弾性体が、図32(d)にそれらの研磨方向を模式的に示すように、研磨の“目”の方向を異なるもの(順目と逆目)とし、交互に並べ、左右の回転時に、研磨方向(“目”の方向)の影響を打ち消すようにすることもできる。すなわち、回転体12の左右の回転トルクの差を極力少なくするようにできる。
【0082】
摩擦部材33の表面研磨時には、研磨加工時の表面がゴムなどの有機系のものは表面状態が回転トルクに大きく影響する。研磨方向による違いは、例えば、順目で250gfcmのとき、逆目では120gfcmとなる場合もあり、このような研磨方向による違いが表れる。
【0083】
なお、研磨加工をしないものに対しても、次のようにして、表面状態を変えることにより、回転トルクを調整することができる。例えば、弾性体成型または作成時に金型表面に細工する。または、金型加工時にできるエンドミルや放電加工跡、磨き、鏡面など弾性体成型または作成時に金型表面に細工する。このように、成型または作成されたものに対し、研磨加工時の表面の粗さにより、回転トルクの最大値も変化する。
【0084】
また、研磨表面を考慮して向きを変えた2枚の摩擦部材を組み込んでもよい。片側方向の回転トルクのみを大きくし、反対側方向の回転トルクを小さくする場合などにも、上記のような研磨表面の特性を利用して実現することができる。
なお、2枚の摩擦部材の長さ、幅、厚さ等を異ならせて左右の回転トルクの特性を変えてもよい。
【0085】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る重送防止機構は、対になった回転体の組み合わせによって実現できるものである。例えば、前述の図1で示した、用紙送り出し機構におけるリタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3の組み合わせである。このフィードローラ3をワンウェイクラッチとし、リタードローラ2をトルクリミッターとして構成したものであり、これにより、複数の紙を同時に挟んで送ってしまう所謂、“重送”を防止する重送防止機構として使用することができる。
これら対になった二つの回転体は、それぞれ第1の実施の形態から第5の実施の形態に挙げた逆回転防止機構およびトルク制限機構を適宜組み合わせて構成することができる。
【0086】
次に、本実施の形態の一実施例を図面を参照して説明する。
図33は、本実施の形態の用紙送り出し機構の一実施例の構成およびその作用を説明する断面図である。
【0087】
図33に示す重送防止機構は、リタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3を備え、積層された用紙Pをリタードローラ2(重送送り防止ローラ)およびフィードローラ3が、Fの方向に回転し、Eの方向に紙Pを一枚ずつ送り出す。
【0088】
フィードローラ3は逆回転防止機構11を備え、Fの方向には回転が許容されるが、反対方向の回転はロックされるワンウェイクラッチとして機能する。
リタードローラ2(重送送り防止ローラ)は、トルク制限機構31を備え、Fの方向には、所定の抵抗を与えて回転のトルク制限をするトルクリミッターとして機能する。
【0089】
よって、例えば、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置の紙送り出し機構に使用することにより、紙の重送を防ぐとともに、紙詰まりの際に、紙送り出し機構を逆転させて詰まった紙を取り除くことができる。
【0090】
従来技術においては、フィードローラ側に付属するワンウェイクラッチとリタードローラ側に付属するトルクリミッターとは、全く構造が異なり、その製造に関わる部材・道具・材料は別のものである(例えば、ゴムローラを取り巻く芯となるプラスチック部材、摩擦部材が摩擦する部材、摩擦部材の弾性体、ブラケットの保持部など)。
【0091】
これに対して、本実施の形態では、対になる2つのローラ(リタードローラ2とフィードローラ3)は、共通の部材、共通の製造具を使用することができるので、金型や部品の種類を削減でき、低コスト化や製造現場の省スペース化を実現することができる。更に、製造時の工数を削減することも可能である。
【0092】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、重送防止機構に用いられるリタードローラとフィードローラにおいて、この2つのローラが連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造としたものであり、連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造にしたものである。図34は、リタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3に1枚の用紙Pを送り出す場合(図34(a))と、用紙が2枚以上重なって送られようとしている(重送時の)場合(図34(b))を説明する模式図である。
【0093】
リタードローラ2とフィードローラ3とが同径の場合、図34(a)に示す1枚の用紙Pを送り出す場合には、連れ回りするので、例えば、フィードローラ3の回転数が100rpmの時、リタードローラ2の回転数も100rpmとなる。よって、リタードローラ2とリタードローラの軸2aとの相対回転数は200rpmとなる。
これに対して、重送時の場合には、図34(b)に示すように連れ回らないので、リタードローラ2とリタードローラの軸2aとの相対回転数は、200rpm未満、0rpm以上の範囲になる。
リタードローラ2において、連れ回り時の負荷は、理想的には0にすることが望ましいが、回転数(回転体の内周面の周速度)が高いほど、空回りのトルクも大きくなるため、連れ回り時の回転トルクが大きくなる。
【0094】
図35は、回転体の内周面の速度の違いによる摩擦部材の状態を示す断面図であり、(a)は回転体の内周面の速度が遅い場合、(b)は回転体の内周面の速度が速い場合である。回転体12の内周面の速度が速くなるほど、図35(b)のように、摩擦部材33が回転体12の回転方向につられやすくすることにより、回転体12の回転トルクが大きくなるため、回転速度が速くなるほど、滑りやすいものでも、摩擦部材33が狭い空間へ運ばれるようになる。同時に回転に対する負荷も大きくなる。
重送防止側(リタードローラ側)のトルク制限機構の回転トルクが大きくなりすぎると、連れ回り時には、大きな負荷となり、フィードローラの搬送力を妨げる方向となり、通紙不可となる。本実施の形態によれば、これを改善することができる。
【0095】
以下、第7の実施の形態における具体的な実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
実施例1は、摩擦部材33が押し込まれる部分の角度を大きくした場合である。図36及び図37は、この押し込まれる部分(図中の40)の角度を大きくした場合の2つの例を示す断面図である。図36の例では、できるだけ固定部16から遠い位置で作用させる。また、図37の例では、大きなR(半径)で作用させる。無負荷状態(組み込まれる前の状態)と負荷状態(組み込まれた後の状態)とで形状がほぼ同じとなるようにする。また、回転中の形状も無負荷状態時の形状とほぼ同じ形状とする。
【0096】
(実施例2)
図38は、摩擦部材33と回転体12の内周面との間に摩擦部材33よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材41を備えた実施例2の断面図(a)、斜視図(b)である。
低摩擦部材41の材質としては、例えば、OHPシートなどが挙げられる。
図39は、摩擦部材33と回転体12の内周面との間に複数の低摩擦部材を設けた例であり、この図の例では、2枚の低摩擦部材411,412を備えている。
また、複数の低摩擦部材(411,412)の摩擦係数はそれぞれ異なったものでもよい。例えば、この3者(摩擦部材33、低摩擦部材411、低摩擦部材412)の摩擦係数が大、中、小となるようにしてもよい。
また、この低摩擦部材(41,411,412)はその寸法、幅、厚さ、形状は場合によって適宜設定してもよく、さらに、折り目を付けるなどしてもよい。なお、3枚以上の低摩擦部材を設けてもよい。
この実施例2では、摩擦部材33が狭い空間に追い込まれても、摩擦部材33よりも摩擦係数が小さい低摩擦部材41が回転体12の内周面との間にあるので、回転トルクは、部材41がない場合よりも小さくなる。即ち、回転速度が速くなっても回転トルクの上昇を防止する効果があり、回転トルク値の変動幅を減少させることができる。
【0097】
(実施例3)
図40は、摩擦部材33が筒状になっている実施例3の断面図(a)、(b)である。本実施例では、摩擦部材33が筒状になっており、図40(a)では摩擦部材33が左右に、図40(b)では、片側(右側)に設けられている。本実施例によれば、摩擦部材33が筒状になっているので自由に動くことを妨げる効果がある。
【0098】
次に、第7の実施の形態の実施例2の効果を実証するため、低摩擦部材を備えた例と低摩擦部材の無い例との比較について述べる。
図41は、実施例2−aの構造を示す断面図(a)、その摩擦部材33の研磨方向を示す模式図(b)である。図42は、比較例1の構造を示す断面図(a)、その摩擦部材33の研磨方向を示す模式図(b)である。
上記実施例2−aおよび比較例1において、回転体12の内周面を動かないように固定し、シャフト3aを図示した矢印の方向へ回転させたときのシャフト3aの回転数に対する回転トルクの測定値を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
次に、低摩擦部材の長さと摩擦部材の長さとがそれぞれ異なる例と低摩擦部材の無い例との比較について述べる。
図43は、(a)低摩擦部材の長さaかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b1,(b)低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b2,(c)低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがdである実施例2−b3,(d)低摩擦部材が無くかつ摩擦部材の長さがdである比較例2の構造を示す断面図である。
上記実施例2−b1,実施例2−b2,実施例2−b3,比較例2において、回転体12の内周面を動かないように固定し、シャフト3aを図示した矢印の方向へ回転させたときのシャフト3aの回転数に対する回転トルクの測定値を表2に示す。
【0101】
【表2】
ここで、シャフト3aは直径6mm、回転体の内周面の内径は15mmであり、この内周面はポリアセタール樹脂(POM:ポリオキシメチレン)を切削したものである。低摩擦部材は市販のOHPシートであり、長さはaよりcの方が長くなるようにした。摩擦部材は厚さ1.5mm、幅7mmのシリコンゴムであり、その長さはdよりcの方が長くなるようにした。
またここでは、上記a〜dの長さは、a=0.5mm、b=2.5mm、c=10mm、d=5mmとした。
表2の結果から分かるように、シャフト3aの回転数によるトルクの差は、低摩擦部材を備えた実施例(2−b1,2−b2,2−b3)の方が、低摩擦部材が無い比較例bよりも少なくなっている。
【0102】
本実施例によれば、摩擦部材を変えなくても、低摩擦部材の長さを変えることにより回転トルクを所定の値に調整することができる。シャフト3aを駆動するモーター等は、従来は連れ回り時にかかる大きな負荷を考慮して駆動力の大きなモーターを用いていたが、本実施例によれば、特に駆動力の大きなモーターを用意する必要がなくなる。
【0103】
(第8の実施の形態)
次に、図44、図45を参照して、第8の実施の形態について説明する。
第8の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、前述の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構と摩擦部材33の無負荷時の形状のみが異なるものであり、以下、摩擦部材33の無負荷時の形状に関する事項のみを説明する。
【0104】
図44(a)、(b)は、第8の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状を示す斜視図。図45の(a)は図44に示す摩擦部材をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けて、シャフト3aが停止している状態にてフィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合の断面図であり、(b)は逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合の断面図である。
【0105】
前述の第5の実施の形態の図24においては、摩擦部材33の無負荷時の形状としては、正回転方向αへ向かう円弧状に湾曲した形状である例として図24(a)〜(e)と、平板形状である例として図24(f)を示した。
本第8の実施の形態における摩擦部材33の無負荷時の形状は、図44(a)、(b)に示すように、逆回転方向βへ湾曲する円弧状とし、且つ摩擦部材33の回転体12の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたものである。この凹凸は、図44(a)のように規則的に設けられていてもよく、あるいは、図44(b)のように不規則に設けられていてもよい。
【0106】
図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けたときの作用は、前述の図7の説明と同様であるが、図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けてシャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合(図45(a))は、摩擦部材33が屈曲した部分の内側に凹凸があるため、図7(b)の場合よりも柔軟に屈曲して回転体12の内側に収納し易い。よって、回転体12の内周面に対する反発を抑え、回転体12にかかる負荷が少なくなる。
【0107】
また、図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けてフィードローラ3に逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合(図45(b))は、摩擦部材33が屈曲した部分の内側に凹凸があるため、図7(c)の場合よりも図45(b)の方が、ブラケット14と回転体12との間の狭い部分の空間Hに押し込まれる摩擦部材33の部分が変形し易くなる。よって、ロック状態になりやすく、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0108】
以上、詳述したように、本発明の実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材13を備え、シャフト3aの回転軸に対して垂直に固定されている固定台15から、回転規制部材13を固定する固定部21に向かって回転体12の内側が狭くなるようにし、回転規制部材13を、固定台21の壁面に偏りのある状態で接触させたことを特徴とする。
以上の構成により、回転規制部材13が弾性変形して、回転体12への良好な密着状態が維持されるので、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0109】
また、本発明の実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、回転体12が回転するとき、摩擦部材33が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
表面が粗い面となるように表面処理を施して、摩擦係数が大きい値となることにより回転体12がロック状態になりやすく、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0110】
本発明の実施の形態に係る回転体のトルク制限機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、回転体12が回転するとき、摩擦部材33が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
摩擦部材接触面の表面処理を変えて摩擦係数を調整することができるので、
(1) 一方向への回転には抵抗を与えず、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能。
(2) 一方向への回転をロックし、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能。
(3) 両方向への回転にそれぞれ所定の抵抗を与えるダンパー機能。
以上、(1)〜(3)の機能をそれぞれ使用用途に応じた回転トルクに調整することができる。
【0111】
また、本発明の実施の形態に係る回転体のトルク制限機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、摩擦部材33は、その基端部がブラケットの保持部とシャフトとの間に挟持され、左右にそれぞれに設けられた構造により、回転体12の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする。
これにより、左右の回転に対してそれぞれ回転トルクを調整することができるので、トルクリミッター機能、ダンパー機能を、それぞれ使用用途に応じた回転トルクに調整することができる。
【0112】
また、本発明の実施の形態に係る重送防止機構は、フィードローラ3と、フィードローラ3に対峙した重送送り防止ローラ2と、を備える重送防止機構であって、フィードローラ3は、前述の各実施の形態のうちの任意の逆回転防止機構を有し、重送送り防止ローラは、前述の各実施の形態のうちの任意のトルク制限機構を有するものである。
これにより、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置の紙送り出し機構における重送防止機構において、その金型や部品の種類を削減できるので、低コスト化や製造現場の省スペース化を実現することができる。更に、製造時の工数を削減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】フィードローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図2】フィードローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図3】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を示す斜視図である。
【図4】図3の構成を説明する分解斜視図である。
【図5】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を説明する断面図である。
【図6】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図である。
【図7】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造の作用を説明する断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構を説明する断面図である。
【図14】筒状の摩擦部材を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する側面図である。
【図21】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の形状例である。
【図22】図13に示したトルク制限機構の作用を説明する断面図である。
【図23】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の保持部の角の形状を列挙した例である。
【図24】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状の例である。
【図25】図24の摩擦部材に回転体の回転による負荷がかかった状態を示す図である。
【図26】摩擦部材が保持部の上部に設けられている例である。
【図27】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の保持部の及び摩擦部材の形状を列挙した例である。
【図28】摩擦部材及び保持部が3個ある場合の一例を示す斜視図である。
【図29】複数の凹部を有し、その凹部の1つに摩擦部材が取り付けられている例である。
【図30】摩擦部材がブラケットの保持部に挟み付けられて保持されているトルク制限機構の一例を説明する図である。
【図31】図30において、摩擦部材を2枚とした例を説明する図である。
【図32】摩擦部材を複数枚とした例を説明する図である。
【図33】本発明の第6の実施の形態に係る重送防止機構の一実施例の構成およびその作用を説明する断面図である。
【図34】本発明の第7の実施の形態に係る重送防止機構に用いられるリタードローラとフィードローラにおいて、1枚の用紙Pを送り出す場合(a)と、用紙が2枚以上重なって送られようとしている場合(b)を説明する模式図である。
【図35】回転体の内周面の速度の違いによる摩擦部材の状態を示す断面図であり、(a)は回転体の内周面の速度が遅い場合、(b)は回転体の内周面の速度が速い場合である。
【図36】本発明の第7の実施の形態に係る実施例1(固定部から遠い位置で作用させる例)を示す断面図である。
【図37】本発明の第7の実施の形態に係る実施例1(大きなR(半径)で作用させる例)を示す断面図である。
【図38】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2を示す断面図(a)、斜視図(b)である。
【図39】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2において、摩擦部材と回転体の内周面との間に複数の低摩擦部材を設けた例を示す斜視図である。
【図40】本発明の第7の実施の形態に係る実施例3を示す断面図(a)、(b)である。
【図41】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2−aの構造を示す断面図(a)、その摩擦部材の研磨方向を示す模式図(b)である。
【図42】比較例1の構造を示す断面図(a)、その摩擦部材の研磨方向を示す模式図(b)である。
【図43】本発明の第7の実施の形態に係る、低摩擦部材の長さaかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b1(a),低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b2(b),低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがdである実施例2−b3(c),低摩擦部材が無くかつ摩擦部材の長さがdである比較例2(d)を示す断面図である。
【図44】本発明の第8の実施の形態に係る、トルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状を示す斜視図であり、(a)は凹凸が規則的に設けられた例、(b)は凹凸が不規則に設けられた例である。
【図45】(a)は図44に示す摩擦部材をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けて、シャフト3aが停止している状態にてフィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合の断面図であり、(b)は逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合の断面図である。
【符号の説明】
【0114】
3a シャフト
11 逆回転防止機構
12 回転体
13 回転規制部材
14 ブラケット
15 固定部
16 保持部
21 固定台
33 摩擦部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体のトルク制限機構、逆回転防止機構、及びそれらを備えた重送防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどには、用紙を送り出す用紙送り出し機構に、一方向への回転のみを許容し逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えたローラを有している。
【0003】
この逆回転防止機構としては、シャフトと回転体との間に、周方向へ間隔をあけて配設された複数のコロをそれぞれバネによって一方向へ付勢したベアリング構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この逆回転防止機構では、シャフトに対する回転体の一方向への回転は許容するが、他方向への回転力が回転体に作用すると、コロがバネの付勢力に抗して移動し、このコロによって回転体がシャフトに係合し、シャフトに対する他方向への回転が防止される。
【0005】
また、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置において、紙の二重送りを防ぐとともに、紙詰まりの際に、紙送り出し機構を逆転させて詰まった紙を取り除くことができるトルク制限機構を備えたローラもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−63028号公報
【特許文献2】特許第3456882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術による逆回転防止機構やトルク制限機構は、部品点数が多く複雑な構造であるため、コストが高く、また、組み立て分解が困難であるという問題点を有している。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のような従来の逆回転防止機構やトルク制限機構が有している問題点を解決することがその一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材を備え、前記シャフトの回転軸に対して垂直に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにし、前記回転規制部材を、前記固定台の壁面に接触させたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の回転体の逆回転防止機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面との摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。
【0010】
請求項13に記載の回転体のトルク制限機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。
【0011】
請求項21に記載の回転体のトルク制限機構は、シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、前記摩擦部材は、その基端部がブラケットの保持部と前記シャフトとの間に挟持され、左右に設けられた構造により、前記回転体の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする。
【0012】
請求項26に記載の重送防止機構は、フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、前記フィードローラは請求項1〜12のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは請求項13〜25のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明者が先に特願2005−114639として出願した逆回転防止機構の説明を図1〜図7を参照して説明する。
図1〜図7に示す逆回転防止機構は、例えば、印刷機のフィードローラなどの回転体を回転自在に支持するシャフトに回転規制部材が取り付けられ、この回転規制部材が、シャフトに対して正回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に対して摺動して回転を許容し、シャフトに対して逆回転方向へ向かう回転力が回転体に作用した際に回転体の内周面に密着して回転を阻止するようになっているものである。
【0014】
図1及び図2は、特願2005−114639の逆回転防止機構を備えたローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
図1に示すように、用紙送り出し機構は、積層された用紙Pの上面にピックアップローラ1を接触させて引き出し、その後、この用紙Pをリタードローラ2に対峙したフィードローラ3よって一枚ずつ送り出し、さらに、図2に示すように、一対の送り出しローラ4に挟持させて搬送する構造を有している。
【0015】
ここで、フィードローラ3は、送り出しローラ4へ用紙Pが渡されてシャフト3aの回転が停止された後に、送り出しローラ4によって送り出される用紙Pによってつれ回りするように、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構を備えている。
【0016】
次に、この逆回転防止機構について詳述する。
図3は、この実施例における回転体の逆回転防止機構を示す斜視図、図4は、逆回転防止機構の構成を説明する分解斜視図、図5は、逆回転防止機構の構造を説明する断面図、図6は、逆回転防止機構を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図、図7は、逆回転防止機構の作用を説明する断面図である。
図3〜図6に示すように、フィードローラ3は、その側部に、逆回転防止機構11が設けられている。
【0017】
この逆回転防止機構11は、フィードローラ3と連結固定された円筒状の回転体12と、この回転体12の中心に挿通されたフィードローラ3のシャフト3aに取り付けられた回転規制部材13と、この回転規制部材13をシャフト3aに支持するブラケット14とを有している。
【0018】
ブラケット14は、シャフト3aに固定される固定部15と、この固定部15の一端にて側方へ延在した保持部16とを有する断面視L字状に形成されている。
【0019】
ブラケット14には、固定部15の端部近傍に係合孔17が形成されている。そして、このブラケット14は、その固定部15を、シャフト3aに形成された取付孔18に挿入し、その端部をシャフト3aの反対側へ突出させた状態にて、係合孔17へ係合ピン19を嵌合させて係止することにより、シャフト3aに取り付けられている。
そして、回転規制部材13は、その基端部がブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に挟持されて保持されている。
【0020】
回転規制部材13は、例えば、各種のゴム、エラストマ、スポンジあるいはこれらの複合物などの弾性材から形成されたものや合成皮革、皮、布、不織布、注型(ウレタンなど)で、ブラケット14に保持された基端部から先端部へ向かって、シャフト3aの正回転方向αへ延在して湾曲されている。そして、この回転規制部材13の一部が回転体12の内周面に対して摺動可能に接触されている。
【0021】
そして、上記構造の逆回転防止機構11では、図7(a)に示すように、シャフト3aが正回転方向αへ回転すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0022】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によってシャフト3aとともに、正回転方向αへ回転し、この回転体12が連結固定されたフィードローラ3が正回転方向αへ回転される。
【0023】
また、図7(b)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも正回転方向αへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12に正回転方向αへ向かう回転力が作用すると、停止しているシャフト3aに対して、回転体12が正回転方向αへ向かって回転する。つまり、回転規制部材13は、基端部から先端部へ向かって正回転方向αへ延在して湾曲されているので、回転体12が回転しても回転体12の内周面に押圧されて密着することがなく、回転体12の内周面に僅かに接して摺動することとなる。
【0024】
これにより、シャフト3aが停止した状態にて、フィードローラ3は、回転体12とともに、正回転方向αへ回転する。
【0025】
また、図7(c)に示すように、シャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に逆回転方向βへ向かう回転力が作用されると、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が伝わる。このように、回転体12にも逆回転方向βへ向かう回転力が作用すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している回転規制部材13が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧されて密着する。また、このとき、ブラケット14の保持部16によって回転規制部材13の逆回転方向β側への変形が規制され、回転規制部材13の回転体12への良好な密着状態が維持される。
【0026】
これにより、回転体12は、回転規制部材13によって、停止しているシャフト3aと一体化し、逆回転方向βへの回転が阻止される。
【0027】
このように、上記の逆回転防止機構11によれば、シャフト3aに対する回転体12の逆回転方向βへの回転を阻止する弾性体からなる回転規制部材13をシャフト3aに設けた簡易な構成であるので、低コスト化を図ることができ、しかも、組み立て分解の容易化を図ることができ、これにより、内部の消耗部品を容易に交換することができる。
【0028】
以下、本発明に係る回転体のトルク制限機構及び逆回転防止機構の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、上述の特願2005−114639の逆回転防止機構11に対し、改良を加え、回転トルクが調整可能な回転体のトルク制限機構及び逆回転防止機構を得るものである。
【0029】
すなわち、一方向への回転のみを許容し、逆方向への回転を阻止する逆回転防止機構のみならず、一方向への回転には抵抗を与えず、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能、もしくは、両方向への回転にそれぞれ所定の抵抗を与えるダンパー機能を有するトルク制限機構をも実現できるものである。
【0030】
ダンパー機能を有するものは、例えば、ヒンジなどに使用でき、OA機器、音響機器、住宅機器、家電機器等における急な開閉が適さない開閉部分において、その開閉の動作をゆっくりと、なめらかに動作させることができる。
【0031】
トルクリミッター機能を有するものは、例えば、図1及び図2に示した用紙送り機構において、複数の紙を同時に挟んで送ってしまう所謂、“重送”を防止する重送防止機構に使用することができる。
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態を挙げ、図面を参照して説明する。(第1の実施の形態)
図8〜図11は、本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
第1の実施の形態に係る逆回転防止機構における回転体12の内周面の一部は、図8(a)に示すように、固定台21側から固定部15側に向かって回転体内側が狭くなるような傾斜面12aとなっている。このため、回転規制部材13を、回転体12のシャフト3aの回転軸に固定されている固定台21(この例では、シャフト3aの回転軸に対して略垂直に取り付けられている)の壁面に接触させて回転させていくと、回転規制部材13は固定台21の壁面21aに接触しながら移動し、回転規制部材13がつぶされるに従って空間が広い側へ押し出されていき(図8(b))、最後に、逆回転阻止状態となる(図8(c))。
【0033】
この逆回転阻止状態の逆回転防止機構11を正面から見ると図9に示すように、回転規制部材13が弾性変形して、回転体12への良好な密着状態が維持されている。なお、回転体12の傾斜面12aの形状は、金型は一般に先が細くなるようにすると成型品が抜けやすいため成形が容易である。
【0034】
また、回転規制部材13の厚さに偏りをつけ(回転規制部材13の先端部のみでもよい)て、シャフト3aの軸に対して垂直な壁面21aにロックされる(回転が阻止される)構造としてもよい。もしくは、回転規制部材13の厚さは略均一とし、固定台21に傾斜をつけてもよい。
【0035】
図9は、第1の実施の形態の変形例1であり、固定台21の側面に傾斜を付けた例である。また、図10は、固定台21の側面を逆向きの傾斜を付けた変形例2である。また、図11は、回転体12の内周面に傾斜のかわりに段差12bを付けた変形例3である。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、図12に示すように、回転体12の内周面12c、固定台21の壁面21aやその対向する側面12dなど摩擦部材33が接触する面(以下、摩擦部材接触面と記す)の少なくとも1面を摩擦係数を高める、あるいは、摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したものである。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
【0037】
なお、摩擦部材33は、図5に示した回転規制部材13に相当するものである。
この摩擦部材接触面は、表面が粗い面である方が回転体12がロック状態になりやすく、表面がなめらかな面である方がロック状態になりにくい、または、ロック状態から元に戻りやすい。
【0038】
この摩擦部材接触面素材としては、スポンジ、不織布、金属、プラスチック、ゴム、エラストマなどを用いる(表面にこれらの素材を貼り付けるだけでもよい)。
【0039】
また、この摩擦部材接触面を凹凸のある構造とすると、摩擦係数を高めることができる。そのためには、表面が凹凸のある形状の金型を使用して成形する。または、成形後に以下に挙げる加工を施して、摩擦部材接触面に凹凸を付ける。
【0040】
摩擦部材接触面に凹凸を付けるための加工の例としては、研磨、紙ヤスリ、金属ブラシ、たわし、腐食、シボ、放電目、塗装・吹きつけ、溶融などの加工が挙げられる。なお、摩擦部材接触面の凹凸がランダムな状態になっている方が規則的な凹凸であるよりも摩擦係数が高くなる。
【0041】
例えば、プラスチック成型物の表面に紙ヤスリをかけると、表面は先端が鋭角になったとげが並んだ状態となる。あるいは、モーター治具で表面を加工する。または、この表面を転写してもよい。あるいは、ドリル・エンドミルでの削り跡も有効である。
【0042】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、研磨による摩擦部材33の表面の状態、あるいは、摩擦部材33の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたものである。
【0043】
摩擦部材33の表面を研磨した場合は、回転体12がロック状態になりにくい、あるいは、ロック状態から元に戻りやすい。一方、研磨していない場合は、回転体12がロック状態になりやすい。
【0044】
また、摩擦部材33の表面状態によっては、回転体12のロック時に、摩擦部材33がつぶれて表面同士が密着して、離れにくくなる場合もあり、このような場合の“離れにくさ”を摩擦部材33の研磨によって変化させることができる。
【0045】
摩擦部材33の研磨方法としては、シボ、放電加工目、ブラストなどがある。
さらに、逆に弾性体側の表面を接触する内壁に、故意に適度に擦ったものを組み込んでもよい。これによって、初期トルクからの回転トルクの上下幅を小さくすることができる。初期表面から摩耗などによって表面が変化したときなど、表面変化による回転トルクの変化を最小限にすることができる(エージング)。
これらの研磨方法の選択、研磨時間、研磨範囲(全体を研磨するか、一部分のみ研磨するかなど)等の調整により、上記のような回転体12のロック状態のなりやすさを調整し、所定の特性のトルク制限機構または逆回転防止機構を実現できる。
【0046】
また、摩擦部材33の幅、長さ、厚さ、無負荷状態の形状を変えることによっても、回転体12のロック状態のなりやすさを調整し、所定の特性のトルク制限機構または逆回転防止機構を実現できる。
【0047】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構は、第2〜第3の実施の形態で示した摩擦部材33を用い、図13のような構造としたものである。本実施の形態のトルク制限機構31は、摩擦部材33を備え、その基端部がブラケット14の保持部16とシャフト3aとの間に挟持されて保持されている。
【0048】
図13(a)に示すように、保持部16及び摩擦部材33が、シャフト3aの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台15の左右それぞれに設けられた構造により、回転体12の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限する構造となっている(図13(a)は、回転体12が静止した状態)。
【0049】
なお、左右それぞれに設けられた摩擦部材33の長さ・形状は、左右対称であっても、あるいは、非対称であってもよい。図13の(d),(e),(f)に示すものは、摩擦部材33の長さ・形状が非対称の例である。
【0050】
そして、回転体12が左回りに回転した状態が図13(b)であり、このとき、回転に対して一定の負荷がかかる。また、回転体12が右回りに回転した状態が図13(c)であり、このときも、回転に対して一定の負荷がかかる。本実施の形態では、左右どちら回りの回転に対しても、摩擦部材の性質によっては、例えば接触角との摩擦が低いものではロック状態にはならない。
【0051】
なお、摩擦部材33は、例えば、各種のゴム、プラスチック、エラストマ、シリコンゴム、コルク、コルクとゴムの混合物等、あるいはこれらの複合物などの弾性材から形成される。また、摩擦部材33は、図14に示すような筒状のものでもよい。
【0052】
また、上記の略対称に設けられた摩擦部材33及びブラケット14の構造を複数有するものでもよく、このような変形例を図15〜図18に示す。
【0053】
例えば、図15(a)に示す例では、上下2カ所に上記構造が設けられている。そして、回転体12が左回りに回転した場合は、図15(b)に示すように、上下の摩擦部材33がそれぞれ回転体12の内周面に押しつけられ、この回転に対するトルク制限がなされる(右回りの回転に対しても同様である)。
【0054】
摩擦部材33は、保持部16より長く、図15(a)に示す如くはみ出ているが、この摩擦部材33のはみ出した部分の長さを変えることにより(例えば、左右非対称とする)、回転トルクを調整することができる。
【0055】
なお、この2カ所の摩擦部材33が、図14に示した如く筒状のものの場合に、回転体12が左回りに回転した様子を、図15(c)に示す。この場合も図15(b)と同様に回転に対するトルク制限がなされる。
【0056】
図16は、上記変形例を歯車内に使用したものであり、歯車34の内側の回転体12の内側にトルク制限機構31を備えている。これにより、歯車34の回転に対するトルクを制限し、回転体12にかかる負荷を第2及び第3の実施の形態により調整することにより、トルクリミッター又はダンパーの機能を実現できる。
【0057】
図17及び図18は、図16の変形例であり、保持部16の逆側、すなわち回転体12の内周壁に対向する側に摩擦部材33を備えたものである。図17(a)は、上側の保持部16に板状の摩擦部材33を、下側の保持部16に筒状の摩擦部材33を、それぞれ備えている。また、図17(b)では、上下の保持部16それぞれに筒状の摩擦部材33を備えている。
【0058】
また、図18(a)では、上側の保持部16にのみ、板状の摩擦部材33を備えた例である。また、図18(b)では、下側の保持部16にのみ筒状の摩擦部材33を、備えた例である。また、図18(c)は、摩擦部材33及びブラケット14の構造が、上下左右の4カ所に設けられた例である。
【0059】
また、本実施の形態において、複数ある摩擦部材33をそれぞれ異なるものとしてもよい。例えば、図19に示す変形例のように、左側に設けられた摩擦部材33aと右側に設けられた摩擦部材33bと異なるものとする。
【0060】
この摩擦部材33a,33bは、前述第3の実施の形態で述べた方法で摩擦係数を異なるものとして成形したり、幅、長さ、厚さが異なるようにしてもよい。これにより、回転方向によって、回転トルクの特性が変わる。
また、本実施の形態において、複数ある保持部16の長さを変えても良い。
【0061】
また、本実施の形態において、図20に示す変形例のように、摩擦部材33の側面に対向する部分に、側面ガイド35を設けても良い。
図20において、保持部16には、摩擦部材33の側面から隙間Sを開けて略垂直に側面ガイド35が左右に取り付けられている。なお、この側面ガイド35は、摩擦部材33の潰れ具合に合わせるように、傾斜を付けても良い。側面ガイド35は摩擦部材33の左右のいずれか一方のみに取り付けたものでもよい。側面ガイド35を使用した場合、回転トルクを制限する効果が大きくできる。
【0062】
また、側面ガイド35のサイズや形、表面形状、隙間Sの大きさ、上記傾斜の度合い、さらにこれらの組み合わせによって、トルクの特性を変えることができる。
また、摩擦部材33はゴム等の弾性体であるので、様々な形状にすることが容易にできる。例えば、図21の(a)〜(h)のような形状とすることができる。
【0063】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、ブラケット14の保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能な回転体のトルク制限機構を実現できるものである。
【0064】
図22は、図13に示したトルク制限機構の作用を説明する断面図である。図22(a)に示すトルク制限機構31において、回転体12が回転すると、その回転力により、一部が回転体12の内周面に接している摩擦部材33が、弾性変形しながら回転体12の内周面に押圧される。この押圧される部分の拡大図を図22(b)及び図22(c)に示す。
【0065】
図22(b)は摩擦部材33が滑りにくい場合であり、図22(c)は図22(b)の場合よりも滑りやすい場合である。
【0066】
また、摩擦部材33のすべり具合により、保持部16と回転体12との間の狭い部分の空間Gへの押し込まれ具合が変わる。この“押し込まれ具合”を変えることにより、トルクを変えることができる。
【0067】
また、保持部16と回転体12との間の空間Gの形状や大きさが異なれば、上記“押し込まれ具合”を変えることができる。例えば、固定部の角の形状をとがった形状や曲面形状などに変えることによって、上記空間Gの形状を変えることができる。
【0068】
図23は、保持部16の角の形状を様々な形に変えた例を、列挙したものである。このように、保持部16の角の形状の違いにより上記空間Gの形状が変わり、従って、摩擦部材33の“押し込まれ具合”が変わるため、トルクを変えることができる。
【0069】
次に示す図24は、摩擦部材33の無負荷時の形状の例を示すものである。例えば、図24(a)、(b)に示すように摩擦部材33の一部に凹凸を設けてもよい。摩擦部材33の曲部の曲率Rは図24(c)、(d)、(e)のように変えてもよい。
【0070】
また、図24(f)のように平板形状であってもよい。回転体12の回転による負荷がかかった状態を図25に示す。摩擦部材33が図24(f)のように平板形状である場合、回転体12の内周に図25(a)に示すように、押圧Aがかかる。
【0071】
回転体12の内周にかかる押圧は以下の大小は以下の(1)〜(3)のような関係となる。
R(1)>R(2)>R(3)・・・・(1)
R(4)>R(5)>R(6)・・・・(2)
A<B<C<D・・・・(3)
なお、上記R(1)、R(2)、R(3)、R(4)、R(5)、R(6)は円の半径である。
以上のように、摩擦部材33は、平板形状のもの(図24(f)を曲げて収納した方が、回転体12の内周にかかる押圧が大きく、曲率が大きい収納状態ほど押圧が大きい。回転角度により、回転トルクが異なると言える。同様に無負荷状態で図24の(c),(d),(e)のような形状でも収納時の変形曲率が大きい程、押圧が大きくなる。
【0072】
また、摩擦部材33が保持部16の上部に設けられている場合は、図26(a)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(b)のように、(c)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(d)のように、(e)の場合に回転体12が矢印方向に回転すると(f)のように、それぞれ回転体12の内周に押圧がかかる。
保持部16は、以上に述べたように、摩擦部材33に対する加圧付与の機能を有するものであるが、摩擦部材33が巻き込まれてしまうと機能しなくなるので、この巻き込み防止のための機能も有している。
【0073】
次に、保持部16は適宜、さまざまな形状とすることができ、例えば、図27に示すような形状が挙げられる。そのなかでも、特に、摩擦部材33によって回転体12の内周に押圧がかかる箇所が複数ある場合には、仮に回転体12の内周に押圧がかからない箇所があったとしても、他の箇所に押圧がかかれば摩擦部材33としての機能を果たすことが出来る。
【0074】
なお、摩擦部材33及び保持部16が複数(3個)ある場合の斜視図を図28に示す。摩擦部材33及び保持部が複数ある場合には、摩擦部材33及び保持部16は、硬度や硬度の温度特性などの特性が異なる材質のものを設けてもよい。
【0075】
さらに、保持部16の形状の例を図29に示す。図29(a)、(b)に示す保持部16は、複数の凹部を有し、その凹部の1つに摩擦部材33が取り付けられているものである。
【0076】
以上のように、摩擦部材33及び保持部16の形状を変えることにより、回転体12の内周にかかる押圧を変えることができるので、回転トルクを調整できる。このように、保持部16の形状、または、保持部16の形状と摩擦部材33の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能なトルク制限機構を実現できる。
【0077】
図30に示すトルク制限機構は、斜視図(a)とその断面図(b)に示す筒状の弾性体(ゴムなど)の一部を切断した摩擦部材33(図30(c))と図30(d)に示すブラケット14を組み合わせたもの(図30(e))である。
この図30(e)に示すトルク制限機構は、ブラケット14の保持部16に挟み付けられて保持されている。そして、回転体12に取り付けた状態が図30(f)である。この例では、回転体12の内周面に押しつぶされるように挿入される。
この摩擦部材33の厚さ、幅、長さ、硬度等の条件により、回転トルクが調整可能である。
【0078】
なお、摩擦部材33は図30(c)に示すように切断されているので、左右の回転に際し、摩擦部材33はその切断部の両側がそれぞれ独立して動けるので、回転体12の内周面に密着しやすい。
【0079】
図31に示すトルク制限機構は、図30に示すものにおいて、摩擦部材33を手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332の2枚(拡大図参照)としたものである。この手前側摩擦部材331及び奥側摩擦部材332は、例えば、ゴム、スポンジ、エラストマ、注型(ウレタンなど)等で形成される。
【0080】
また、上記2枚の摩擦部材33(手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332)は、図32(a)に示すように、1枚の弾性体に切れ込みを入れて2列にしたものでもよい。また、図32(b)に示すように、3枚の弾性体であってもよく、さらに、3枚以上であってもよい。
【0081】
また、手前側摩擦部材331と奥側摩擦部材332を、それぞれ、研磨表面が異なるものとしてもよい。例えば、トルクリミッターの場合は、図32(c)に示す2枚の弾性体が、図32(d)にそれらの研磨方向を模式的に示すように、研磨の“目”の方向を異なるもの(順目と逆目)とし、交互に並べ、左右の回転時に、研磨方向(“目”の方向)の影響を打ち消すようにすることもできる。すなわち、回転体12の左右の回転トルクの差を極力少なくするようにできる。
【0082】
摩擦部材33の表面研磨時には、研磨加工時の表面がゴムなどの有機系のものは表面状態が回転トルクに大きく影響する。研磨方向による違いは、例えば、順目で250gfcmのとき、逆目では120gfcmとなる場合もあり、このような研磨方向による違いが表れる。
【0083】
なお、研磨加工をしないものに対しても、次のようにして、表面状態を変えることにより、回転トルクを調整することができる。例えば、弾性体成型または作成時に金型表面に細工する。または、金型加工時にできるエンドミルや放電加工跡、磨き、鏡面など弾性体成型または作成時に金型表面に細工する。このように、成型または作成されたものに対し、研磨加工時の表面の粗さにより、回転トルクの最大値も変化する。
【0084】
また、研磨表面を考慮して向きを変えた2枚の摩擦部材を組み込んでもよい。片側方向の回転トルクのみを大きくし、反対側方向の回転トルクを小さくする場合などにも、上記のような研磨表面の特性を利用して実現することができる。
なお、2枚の摩擦部材の長さ、幅、厚さ等を異ならせて左右の回転トルクの特性を変えてもよい。
【0085】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る重送防止機構は、対になった回転体の組み合わせによって実現できるものである。例えば、前述の図1で示した、用紙送り出し機構におけるリタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3の組み合わせである。このフィードローラ3をワンウェイクラッチとし、リタードローラ2をトルクリミッターとして構成したものであり、これにより、複数の紙を同時に挟んで送ってしまう所謂、“重送”を防止する重送防止機構として使用することができる。
これら対になった二つの回転体は、それぞれ第1の実施の形態から第5の実施の形態に挙げた逆回転防止機構およびトルク制限機構を適宜組み合わせて構成することができる。
【0086】
次に、本実施の形態の一実施例を図面を参照して説明する。
図33は、本実施の形態の用紙送り出し機構の一実施例の構成およびその作用を説明する断面図である。
【0087】
図33に示す重送防止機構は、リタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3を備え、積層された用紙Pをリタードローラ2(重送送り防止ローラ)およびフィードローラ3が、Fの方向に回転し、Eの方向に紙Pを一枚ずつ送り出す。
【0088】
フィードローラ3は逆回転防止機構11を備え、Fの方向には回転が許容されるが、反対方向の回転はロックされるワンウェイクラッチとして機能する。
リタードローラ2(重送送り防止ローラ)は、トルク制限機構31を備え、Fの方向には、所定の抵抗を与えて回転のトルク制限をするトルクリミッターとして機能する。
【0089】
よって、例えば、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置の紙送り出し機構に使用することにより、紙の重送を防ぐとともに、紙詰まりの際に、紙送り出し機構を逆転させて詰まった紙を取り除くことができる。
【0090】
従来技術においては、フィードローラ側に付属するワンウェイクラッチとリタードローラ側に付属するトルクリミッターとは、全く構造が異なり、その製造に関わる部材・道具・材料は別のものである(例えば、ゴムローラを取り巻く芯となるプラスチック部材、摩擦部材が摩擦する部材、摩擦部材の弾性体、ブラケットの保持部など)。
【0091】
これに対して、本実施の形態では、対になる2つのローラ(リタードローラ2とフィードローラ3)は、共通の部材、共通の製造具を使用することができるので、金型や部品の種類を削減でき、低コスト化や製造現場の省スペース化を実現することができる。更に、製造時の工数を削減することも可能である。
【0092】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、重送防止機構に用いられるリタードローラとフィードローラにおいて、この2つのローラが連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造としたものであり、連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造にしたものである。図34は、リタードローラ2(重送送り防止ローラ)とそれに対峙したフィードローラ3に1枚の用紙Pを送り出す場合(図34(a))と、用紙が2枚以上重なって送られようとしている(重送時の)場合(図34(b))を説明する模式図である。
【0093】
リタードローラ2とフィードローラ3とが同径の場合、図34(a)に示す1枚の用紙Pを送り出す場合には、連れ回りするので、例えば、フィードローラ3の回転数が100rpmの時、リタードローラ2の回転数も100rpmとなる。よって、リタードローラ2とリタードローラの軸2aとの相対回転数は200rpmとなる。
これに対して、重送時の場合には、図34(b)に示すように連れ回らないので、リタードローラ2とリタードローラの軸2aとの相対回転数は、200rpm未満、0rpm以上の範囲になる。
リタードローラ2において、連れ回り時の負荷は、理想的には0にすることが望ましいが、回転数(回転体の内周面の周速度)が高いほど、空回りのトルクも大きくなるため、連れ回り時の回転トルクが大きくなる。
【0094】
図35は、回転体の内周面の速度の違いによる摩擦部材の状態を示す断面図であり、(a)は回転体の内周面の速度が遅い場合、(b)は回転体の内周面の速度が速い場合である。回転体12の内周面の速度が速くなるほど、図35(b)のように、摩擦部材33が回転体12の回転方向につられやすくすることにより、回転体12の回転トルクが大きくなるため、回転速度が速くなるほど、滑りやすいものでも、摩擦部材33が狭い空間へ運ばれるようになる。同時に回転に対する負荷も大きくなる。
重送防止側(リタードローラ側)のトルク制限機構の回転トルクが大きくなりすぎると、連れ回り時には、大きな負荷となり、フィードローラの搬送力を妨げる方向となり、通紙不可となる。本実施の形態によれば、これを改善することができる。
【0095】
以下、第7の実施の形態における具体的な実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
実施例1は、摩擦部材33が押し込まれる部分の角度を大きくした場合である。図36及び図37は、この押し込まれる部分(図中の40)の角度を大きくした場合の2つの例を示す断面図である。図36の例では、できるだけ固定部16から遠い位置で作用させる。また、図37の例では、大きなR(半径)で作用させる。無負荷状態(組み込まれる前の状態)と負荷状態(組み込まれた後の状態)とで形状がほぼ同じとなるようにする。また、回転中の形状も無負荷状態時の形状とほぼ同じ形状とする。
【0096】
(実施例2)
図38は、摩擦部材33と回転体12の内周面との間に摩擦部材33よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材41を備えた実施例2の断面図(a)、斜視図(b)である。
低摩擦部材41の材質としては、例えば、OHPシートなどが挙げられる。
図39は、摩擦部材33と回転体12の内周面との間に複数の低摩擦部材を設けた例であり、この図の例では、2枚の低摩擦部材411,412を備えている。
また、複数の低摩擦部材(411,412)の摩擦係数はそれぞれ異なったものでもよい。例えば、この3者(摩擦部材33、低摩擦部材411、低摩擦部材412)の摩擦係数が大、中、小となるようにしてもよい。
また、この低摩擦部材(41,411,412)はその寸法、幅、厚さ、形状は場合によって適宜設定してもよく、さらに、折り目を付けるなどしてもよい。なお、3枚以上の低摩擦部材を設けてもよい。
この実施例2では、摩擦部材33が狭い空間に追い込まれても、摩擦部材33よりも摩擦係数が小さい低摩擦部材41が回転体12の内周面との間にあるので、回転トルクは、部材41がない場合よりも小さくなる。即ち、回転速度が速くなっても回転トルクの上昇を防止する効果があり、回転トルク値の変動幅を減少させることができる。
【0097】
(実施例3)
図40は、摩擦部材33が筒状になっている実施例3の断面図(a)、(b)である。本実施例では、摩擦部材33が筒状になっており、図40(a)では摩擦部材33が左右に、図40(b)では、片側(右側)に設けられている。本実施例によれば、摩擦部材33が筒状になっているので自由に動くことを妨げる効果がある。
【0098】
次に、第7の実施の形態の実施例2の効果を実証するため、低摩擦部材を備えた例と低摩擦部材の無い例との比較について述べる。
図41は、実施例2−aの構造を示す断面図(a)、その摩擦部材33の研磨方向を示す模式図(b)である。図42は、比較例1の構造を示す断面図(a)、その摩擦部材33の研磨方向を示す模式図(b)である。
上記実施例2−aおよび比較例1において、回転体12の内周面を動かないように固定し、シャフト3aを図示した矢印の方向へ回転させたときのシャフト3aの回転数に対する回転トルクの測定値を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
次に、低摩擦部材の長さと摩擦部材の長さとがそれぞれ異なる例と低摩擦部材の無い例との比較について述べる。
図43は、(a)低摩擦部材の長さaかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b1,(b)低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b2,(c)低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがdである実施例2−b3,(d)低摩擦部材が無くかつ摩擦部材の長さがdである比較例2の構造を示す断面図である。
上記実施例2−b1,実施例2−b2,実施例2−b3,比較例2において、回転体12の内周面を動かないように固定し、シャフト3aを図示した矢印の方向へ回転させたときのシャフト3aの回転数に対する回転トルクの測定値を表2に示す。
【0101】
【表2】
ここで、シャフト3aは直径6mm、回転体の内周面の内径は15mmであり、この内周面はポリアセタール樹脂(POM:ポリオキシメチレン)を切削したものである。低摩擦部材は市販のOHPシートであり、長さはaよりcの方が長くなるようにした。摩擦部材は厚さ1.5mm、幅7mmのシリコンゴムであり、その長さはdよりcの方が長くなるようにした。
またここでは、上記a〜dの長さは、a=0.5mm、b=2.5mm、c=10mm、d=5mmとした。
表2の結果から分かるように、シャフト3aの回転数によるトルクの差は、低摩擦部材を備えた実施例(2−b1,2−b2,2−b3)の方が、低摩擦部材が無い比較例bよりも少なくなっている。
【0102】
本実施例によれば、摩擦部材を変えなくても、低摩擦部材の長さを変えることにより回転トルクを所定の値に調整することができる。シャフト3aを駆動するモーター等は、従来は連れ回り時にかかる大きな負荷を考慮して駆動力の大きなモーターを用いていたが、本実施例によれば、特に駆動力の大きなモーターを用意する必要がなくなる。
【0103】
(第8の実施の形態)
次に、図44、図45を参照して、第8の実施の形態について説明する。
第8の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構は、前述の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構と摩擦部材33の無負荷時の形状のみが異なるものであり、以下、摩擦部材33の無負荷時の形状に関する事項のみを説明する。
【0104】
図44(a)、(b)は、第8の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状を示す斜視図。図45の(a)は図44に示す摩擦部材をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けて、シャフト3aが停止している状態にてフィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合の断面図であり、(b)は逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合の断面図である。
【0105】
前述の第5の実施の形態の図24においては、摩擦部材33の無負荷時の形状としては、正回転方向αへ向かう円弧状に湾曲した形状である例として図24(a)〜(e)と、平板形状である例として図24(f)を示した。
本第8の実施の形態における摩擦部材33の無負荷時の形状は、図44(a)、(b)に示すように、逆回転方向βへ湾曲する円弧状とし、且つ摩擦部材33の回転体12の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたものである。この凹凸は、図44(a)のように規則的に設けられていてもよく、あるいは、図44(b)のように不規則に設けられていてもよい。
【0106】
図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けたときの作用は、前述の図7の説明と同様であるが、図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けてシャフト3aが停止している状態にて、フィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合(図45(a))は、摩擦部材33が屈曲した部分の内側に凹凸があるため、図7(b)の場合よりも柔軟に屈曲して回転体12の内側に収納し易い。よって、回転体12の内周面に対する反発を抑え、回転体12にかかる負荷が少なくなる。
【0107】
また、図44(a)、(b)に示す形状の摩擦部材33をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けてフィードローラ3に逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合(図45(b))は、摩擦部材33が屈曲した部分の内側に凹凸があるため、図7(c)の場合よりも図45(b)の方が、ブラケット14と回転体12との間の狭い部分の空間Hに押し込まれる摩擦部材33の部分が変形し易くなる。よって、ロック状態になりやすく、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0108】
以上、詳述したように、本発明の実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材13を備え、シャフト3aの回転軸に対して垂直に固定されている固定台15から、回転規制部材13を固定する固定部21に向かって回転体12の内側が狭くなるようにし、回転規制部材13を、固定台21の壁面に偏りのある状態で接触させたことを特徴とする。
以上の構成により、回転規制部材13が弾性変形して、回転体12への良好な密着状態が維持されるので、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0109】
また、本発明の実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、回転体12が回転するとき、摩擦部材33が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
表面が粗い面となるように表面処理を施して、摩擦係数が大きい値となることにより回転体12がロック状態になりやすく、より逆回転防止の効果が大きくなる。
【0110】
本発明の実施の形態に係る回転体のトルク制限機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体12との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、回転体12が回転するとき、摩擦部材33が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする。なお、表面処理をせずとも、摩擦係数がすでに所望の値に摩擦係数がなっている場合は、表面処理をしなくてもよい。
摩擦部材接触面の表面処理を変えて摩擦係数を調整することができるので、
(1) 一方向への回転には抵抗を与えず、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能。
(2) 一方向への回転をロックし、逆方向への回転に所定の抵抗を与えて、逆方向への回転のトルク制限をするトルクリミッター機能。
(3) 両方向への回転にそれぞれ所定の抵抗を与えるダンパー機能。
以上、(1)〜(3)の機能をそれぞれ使用用途に応じた回転トルクに調整することができる。
【0111】
また、本発明の実施の形態に係る回転体のトルク制限機構は、シャフト3aと、該シャフト3aに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が回転体12に作用した際に回転体12の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材33を備え、摩擦部材33は、その基端部がブラケットの保持部とシャフトとの間に挟持され、左右にそれぞれに設けられた構造により、回転体12の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする。
これにより、左右の回転に対してそれぞれ回転トルクを調整することができるので、トルクリミッター機能、ダンパー機能を、それぞれ使用用途に応じた回転トルクに調整することができる。
【0112】
また、本発明の実施の形態に係る重送防止機構は、フィードローラ3と、フィードローラ3に対峙した重送送り防止ローラ2と、を備える重送防止機構であって、フィードローラ3は、前述の各実施の形態のうちの任意の逆回転防止機構を有し、重送送り防止ローラは、前述の各実施の形態のうちの任意のトルク制限機構を有するものである。
これにより、複写機、プリンタあるいはファクシミリなどの給紙装置の紙送り出し機構における重送防止機構において、その金型や部品の種類を削減できるので、低コスト化や製造現場の省スペース化を実現することができる。更に、製造時の工数を削減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】フィードローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図2】フィードローラを有する用紙送り機構の概略構成図である。
【図3】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を示す斜視図である。
【図4】図3の構成を説明する分解斜視図である。
【図5】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を説明する断面図である。
【図6】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造を備えたフィードローラの一部を断面視した平面図である。
【図7】本発明の各実施の形態に係る回転体の逆回転防止機構またはトルク制限機構の基本構造の作用を説明する断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構を説明する断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構を説明する断面図である。
【図14】筒状の摩擦部材を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する断面図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態に係るトルク制限機構の変形例を説明する側面図である。
【図21】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の形状例である。
【図22】図13に示したトルク制限機構の作用を説明する断面図である。
【図23】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の保持部の角の形状を列挙した例である。
【図24】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状の例である。
【図25】図24の摩擦部材に回転体の回転による負荷がかかった状態を示す図である。
【図26】摩擦部材が保持部の上部に設けられている例である。
【図27】本発明の各実施の形態に係るトルク制限機構または逆回転防止機構の保持部の及び摩擦部材の形状を列挙した例である。
【図28】摩擦部材及び保持部が3個ある場合の一例を示す斜視図である。
【図29】複数の凹部を有し、その凹部の1つに摩擦部材が取り付けられている例である。
【図30】摩擦部材がブラケットの保持部に挟み付けられて保持されているトルク制限機構の一例を説明する図である。
【図31】図30において、摩擦部材を2枚とした例を説明する図である。
【図32】摩擦部材を複数枚とした例を説明する図である。
【図33】本発明の第6の実施の形態に係る重送防止機構の一実施例の構成およびその作用を説明する断面図である。
【図34】本発明の第7の実施の形態に係る重送防止機構に用いられるリタードローラとフィードローラにおいて、1枚の用紙Pを送り出す場合(a)と、用紙が2枚以上重なって送られようとしている場合(b)を説明する模式図である。
【図35】回転体の内周面の速度の違いによる摩擦部材の状態を示す断面図であり、(a)は回転体の内周面の速度が遅い場合、(b)は回転体の内周面の速度が速い場合である。
【図36】本発明の第7の実施の形態に係る実施例1(固定部から遠い位置で作用させる例)を示す断面図である。
【図37】本発明の第7の実施の形態に係る実施例1(大きなR(半径)で作用させる例)を示す断面図である。
【図38】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2を示す断面図(a)、斜視図(b)である。
【図39】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2において、摩擦部材と回転体の内周面との間に複数の低摩擦部材を設けた例を示す斜視図である。
【図40】本発明の第7の実施の形態に係る実施例3を示す断面図(a)、(b)である。
【図41】本発明の第7の実施の形態に係る実施例2−aの構造を示す断面図(a)、その摩擦部材の研磨方向を示す模式図(b)である。
【図42】比較例1の構造を示す断面図(a)、その摩擦部材の研磨方向を示す模式図(b)である。
【図43】本発明の第7の実施の形態に係る、低摩擦部材の長さaかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b1(a),低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがcである実施例2−b2(b),低摩擦部材の長さbかつ摩擦部材の長さがdである実施例2−b3(c),低摩擦部材が無くかつ摩擦部材の長さがdである比較例2(d)を示す断面図である。
【図44】本発明の第8の実施の形態に係る、トルク制限機構または逆回転防止機構の摩擦部材の無負荷時の形状を示す斜視図であり、(a)は凹凸が規則的に設けられた例、(b)は凹凸が不規則に設けられた例である。
【図45】(a)は図44に示す摩擦部材をトルク制限機構または逆回転防止機構に取り付けて、シャフト3aが停止している状態にてフィードローラ3に正回転方向αへ向かう回転力が作用した場合の断面図であり、(b)は逆回転方向βへ向かう回転力が作用した場合の断面図である。
【符号の説明】
【0114】
3a シャフト
11 逆回転防止機構
12 回転体
13 回転規制部材
14 ブラケット
15 固定部
16 保持部
21 固定台
33 摩擦部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、
回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材を備え、
前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにし、前記回転規制部材を前記固定台の壁面に接触させたことを特徴とする回転体の逆回転防止機構。
【請求項2】
前記回転体の内周面の一部を傾斜面とすることにより、前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項3】
前記回転体の内周面の一部に段差を設けることにより、前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項4】
前記固定台の壁面に傾斜または段差を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項5】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面との摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする回転体の逆回転防止機構。
【請求項6】
前記摩擦部材接触面は、前記回転体の内周面、前記シャフトの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台の壁面、その対向する側面の少なくとも1面であることを特徴とする請求項5に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項7】
前記摩擦部材接触面を凹凸がある構造とすることを特徴とする請求項6に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項8】
表面に凹凸がある形状の金型を使用して、前記摩擦部材接触面を成形することを特徴とする請求項7に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項9】
成形後に加工を施して、前記摩擦部材接触面に凹凸を付けることを特徴とする請求項7に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項10】
前記摩擦部材の表面の状態、または、前記摩擦部材の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたことを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項11】
前記摩擦部材の回転体の内周面に接する面又はその反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項10に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項12】
前記摩擦部材の無負荷時の形状が、逆回転方向へ湾曲する円弧状であり、且つ回転体の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項11に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項13】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする回転体のトルク制限機構。
【請求項14】
前記摩擦部材接触面は、前記回転体の内周面、前記シャフトの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台の壁面、その対向する側面の少なくとも1面であることを特徴とする請求項13に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項15】
前記摩擦部材接触面を凹凸がある構造とすることを特徴とする請求項14に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項16】
表面に凹凸がある形状の金型を使用して、前記摩擦部材接触面を成形することを特徴とする請求項15に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項17】
成形後に加工を施して、前記摩擦部材接触面に凹凸を付けることを特徴とする請求項15に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項18】
前記摩擦部材の表面の状態、または、前記摩擦部材の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたことを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項19】
前記摩擦部材の回転体の内周面に接する面又はその反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項18に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項20】
前記摩擦部材の無負荷時の形状が、逆回転方向へ湾曲する円弧状であり、且つ回転体の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項19に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項21】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記摩擦部材は、その基端部がブラケットの保持部と前記シャフトとの間に挟持され左右それぞれに設けられた構造により、前記回転体の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする回転体のトルク制限機構。
【請求項22】
前記摩擦部材は、筒状であることを特徴とする請求項21に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項23】
前記左右それぞれに設けられた構造を複数有することを特徴とする請求項21または請求項22に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項24】
前記左右それぞれに設けられた摩擦部材または保持部をそれぞれ異なるものとすることを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項25】
ブラケットの保持部の形状、または、前記保持部の形状と前記摩擦部材の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能なことを特徴とする請求項13〜24のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項26】
フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、
前記フィードローラは、請求項1〜12のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは、請求項13〜25のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする重送防止機構。
【請求項27】
連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項28】
連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項29】
前記保持部を前記摩擦部材に沿って伸ばすように設け、前記摩擦部材が押し込まれる部分の角度を大きくしたことを特徴とする請求項27または請求項28に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項30】
前記摩擦部材と前記回転体の内周面との間に、前記摩擦部材よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材を備えたことを特徴とする請求項27または請求項28に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項31】
連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造であることを特徴とする請求項13〜25のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項32】
連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造であることを特徴とする請求項13〜25のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項33】
前記保持部を前記摩擦部材に沿って伸ばすように設け、前記摩擦部材が押し込まれる部分の角度を大きくしたことを特徴とする請求項31または請求項32に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項34】
前記摩擦部材と前記回転体の内周面との間に、前記摩擦部材よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材を備えたことを特徴とする請求項31または請求項32に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項35】
フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、
前記フィードローラは、請求項27〜30のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは、請求項31〜34のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする重送防止機構。
【請求項1】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、
回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる回転規制部材を備え、
前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにし、前記回転規制部材を前記固定台の壁面に接触させたことを特徴とする回転体の逆回転防止機構。
【請求項2】
前記回転体の内周面の一部を傾斜面とすることにより、前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項3】
前記回転体の内周面の一部に段差を設けることにより、前記シャフトの回転軸に固定されている固定台から、前記回転規制部材を固定する固定部に向かって回転体内側が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項4】
前記固定台の壁面に傾斜または段差を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項5】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面との摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする回転体の逆回転防止機構。
【請求項6】
前記摩擦部材接触面は、前記回転体の内周面、前記シャフトの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台の壁面、その対向する側面の少なくとも1面であることを特徴とする請求項5に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項7】
前記摩擦部材接触面を凹凸がある構造とすることを特徴とする請求項6に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項8】
表面に凹凸がある形状の金型を使用して、前記摩擦部材接触面を成形することを特徴とする請求項7に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項9】
成形後に加工を施して、前記摩擦部材接触面に凹凸を付けることを特徴とする請求項7に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項10】
前記摩擦部材の表面の状態、または、前記摩擦部材の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたことを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項11】
前記摩擦部材の回転体の内周面に接する面又はその反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項10に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項12】
前記摩擦部材の無負荷時の形状が、逆回転方向へ湾曲する円弧状であり、且つ回転体の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項11に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項13】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記回転体が回転するとき、前記摩擦部材が接触する摩擦部材接触面の摩擦係数が所定の値になるように表面処理を施したことを特徴とする回転体のトルク制限機構。
【請求項14】
前記摩擦部材接触面は、前記回転体の内周面、前記シャフトの回転軸に対して略垂直に固定されている固定台の壁面、その対向する側面の少なくとも1面であることを特徴とする請求項13に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項15】
前記摩擦部材接触面を凹凸がある構造とすることを特徴とする請求項14に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項16】
表面に凹凸がある形状の金型を使用して、前記摩擦部材接触面を成形することを特徴とする請求項15に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項17】
成形後に加工を施して、前記摩擦部材接触面に凹凸を付けることを特徴とする請求項15に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項18】
前記摩擦部材の表面の状態、または、前記摩擦部材の形状を変えることにより、摩擦係数を変化させたことを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項19】
前記摩擦部材の回転体の内周面に接する面又はその反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項18に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項20】
前記摩擦部材の無負荷時の形状が、逆回転方向へ湾曲する円弧状であり、且つ回転体の内周面に接する面の反対側の面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項19に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項21】
シャフトと、該シャフトに回転自在に支持された回転体との間に介装され、回転力が前記回転体に作用した際に前記回転体の内周面に対して摺動し、回転トルクを制限する弾性材からなる摩擦部材を備え、
前記摩擦部材は、その基端部がブラケットの保持部と前記シャフトとの間に挟持され左右それぞれに設けられた構造により、前記回転体の内周面の複数個所に対して摺動して回転トルクを制限することを特徴とする回転体のトルク制限機構。
【請求項22】
前記摩擦部材は、筒状であることを特徴とする請求項21に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項23】
前記左右それぞれに設けられた構造を複数有することを特徴とする請求項21または請求項22に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項24】
前記左右それぞれに設けられた摩擦部材または保持部をそれぞれ異なるものとすることを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項25】
ブラケットの保持部の形状、または、前記保持部の形状と前記摩擦部材の形状との組み合わせによって、回転トルクが調整可能なことを特徴とする請求項13〜24のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項26】
フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、
前記フィードローラは、請求項1〜12のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは、請求項13〜25のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする重送防止機構。
【請求項27】
連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項28】
連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項29】
前記保持部を前記摩擦部材に沿って伸ばすように設け、前記摩擦部材が押し込まれる部分の角度を大きくしたことを特徴とする請求項27または請求項28に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項30】
前記摩擦部材と前記回転体の内周面との間に、前記摩擦部材よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材を備えたことを特徴とする請求項27または請求項28に記載の回転体の逆回転防止機構。
【請求項31】
連れ回り時と連れ回らない時とで、両者の回転トルクの変化量を減少させる構造であることを特徴とする請求項13〜25のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項32】
連れ回り時の回転トルク及び連れ回らない時の回転トルクをそれぞれ調整可能とする構造であることを特徴とする請求項13〜25のいずれかに記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項33】
前記保持部を前記摩擦部材に沿って伸ばすように設け、前記摩擦部材が押し込まれる部分の角度を大きくしたことを特徴とする請求項31または請求項32に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項34】
前記摩擦部材と前記回転体の内周面との間に、前記摩擦部材よりも摩擦係数が小さい部材である低摩擦部材を備えたことを特徴とする請求項31または請求項32に記載の回転体のトルク制限機構。
【請求項35】
フィードローラと、該フィードローラに対峙した重送送り防止ローラと、を備える重送防止機構であって、
前記フィードローラは、請求項27〜30のいずれかに記載の逆回転防止機構を有し、前記重送送り防止ローラは、請求項31〜34のいずれかに記載のトルク制限機構を有することを特徴とする重送防止機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2007−51766(P2007−51766A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138337(P2006−138337)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(591043569)オムロン プレシジョンテクノロジー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(591043569)オムロン プレシジョンテクノロジー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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