説明

回転体のトルク測定装置

【課題】 固定体側より電源を供給する必要がなく、回転体が回転中は当然のこととして、回転停止した状態においてもトルク測定が可能であり、高速回転する伝動軸に生ずる動的トルクを的確に測定可能とする。
【解決手段】 駆動軸1と負荷軸2は、フランジ部1bとフランジ部2bが緊締ねじによって接続されることによって一体化されている。ケーシング部材6に固定された磁石固定板14によって複数個の永久磁石13が保持されている。この永久磁石13に対峙するようにして同数のコイル17が、フランジ部1b、2bに固定保持されている。コイル17が回転することにより、電磁誘導によってコイル17に電流が流れ、この電流に所定の処理が施されて安定化されたうえ、充電池24に充電される。負荷軸2の起歪部2eには、せん断ひずみを検出し得るように複数のひずみゲージSG1、SG2が添着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク測定装置に関し、より詳しくは、回転力伝達系中の駆動軸側と負荷軸側との間に介挿され両軸間に伝達されるトルクを測定する回転体のトルク測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のトルク変換器としては、例えば、特許文献1(特公昭60−46372号公報)に記載された形式のものが多く使用されてきた。
即ち、特許文献1に記載のトルク変換器は、原動機側の回転軸と、負荷側の回転軸との間に細径に形成してなる起歪部の外周面上の円周方向に180°離間した位置に、起歪部の軸方向に対しほぼ45°だけ傾斜して配設され、2つの圧縮側ひずみゲージがそれぞれ2つの引張側ひずみゲージに対して90°だけ異なる方向に感度をもつように添着され、これにより、各ひずみゲージは、引張力とこれに対して90°の方向に生ずる圧縮力に応じた抵抗値を呈するようになされている。このように添着された複数の圧縮側ひずみゲージと複数の引張側のひずみゲージとを隣接する辺にそれぞれ回路挿入してなるブリッジ回路よりトルクに応じた電気信号を得るようにしている。
【0003】
そして、ケーシング(固定側)から起歪部(回転側)上のブリッジ回路の入力端にブリッジ電源を供給したり、ブリッジ回路から出力されるトルク検出信号を起歪部側からケーシング側に伝達する手段として、起歪部に並設された4つのスリップリングと、ケーシングに設けられた4つのブラシを介して、コネクタに伝達する、いわゆる直接接触式の伝送手段が用いられている。
一方、トルク検出信号を非接触で回転側から固定側へ伝送する方式のトルク測定装置が、例えば、特許文献2(特開平11−160171号公報)にて提案されている。
即ち、この特許文献2に係るトルク測定装置(発明の名称としては、電気動力計と称されている)は、電動機または発電機の回転軸に固定した管状部に取付けられたひずみゲージにより管状部のトルクによる応力を検出し、この検出信号を回転トランスの回転側コイルおよび固定側コイルを介して軸受部の外周に設けられたトルクメータ本体に伝え、さらにそのコネクタに接続された信号線を介して外部に出力するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−46732号公報
【特許文献2】特開平11−160171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術で述べた特許文献1に係るトルク変換器は、ひずみゲージで得られたトルク検出信号をスリップリングによる直接接触方式で伝送するものであるため、信号伝達系中にブラシの摺動ノイズが混入し、測定精度に悪影響を与えるという問題がある他、スリップリングが接触構造であるため、ブラシの寿命が短く、メンテナンスが必要となるばかりでなく、トルクメータの最高回転数が数千r.p.m迄の測定に限定される、という不都合があった。
一方、上記背景技術で述べた特許文献2に係る電気動力計は、トルク検出信号を非接触で回転体側から固定体側へ伝送する方式であるため、上述した接触ノイズの問題は、回避されるが、ひずみゲージによって検出される検出信号は、回転トランスによって固定側に伝送されるため、回転トランスに供給する電源(例えば、100Vの商用電源)が必要となるという、制約がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、固定側より特に電源を供給する必要がない回転体のトルク測定装置を提供することにあり、
第2の目的とするところは、回転体が静止している状態においても駆動軸側と負荷軸側との間に負荷されているトルクを的確に測定し得る回転体のトルク測定装置を提供することにあり、
第3の目的とするところは、回転体側と固定体側との間の電力・信号の授受において無用なノイズの混入がし難い回転体のトルク測定装置を提供することにあり、
第4の目的とするところは、高速回転する伝動軸に生ずる動的トルクを測定し得る回転体のトルク測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
回転力伝達系中の駆動軸側と負荷軸側との間に介挿され、両軸間に伝達されるトルクを測定する回転体のトルク測定装置において、
固定体と前記回転体との間に配設され前記回転体の回動に伴い発電する発電機構と、
前記回転体側に配設され、前記発電機構により発電した電力を蓄積する充電池と、
前記負荷軸に負荷されるトルクを検出し、検出信号を出力するトルク検出手段と、
このトルク検出手段から出力される検出信号を増幅、信号変換などを行う信号処理回路と、
この信号処理回路からの出力信号を非接触で固定体側へ伝送する伝送手段とを具備し、
前記トルク検出手段、前記信号処理回路および前記伝送手段に対し、前記発電機構または前記充電池から電力を供給し得るように構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記発電機構は、前記固定体を構成するケーシング部材または当該ケーシング部材と一体的な部材に配設された複数個の永久磁石と、前記回転体の一部を構成する前記駆動軸または前記負荷軸のフランジ部に配設された複数個のコイルと、からなることを特徴としている。
請求項3に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記複数個の永久磁石は、駆動軸を中心とする第1の仮想円上に等角度間隔をもって前記ケーシング部材上に複数個配設され、前記複数個の前記コイルは、前記駆動軸を中心とする前記仮想円と同一半径の第2の仮想円上に等角度間隔をもって前記フランジ部上に複数個配設され、前記各コイルと前記各永久磁石は、所定の間隙を存して対峙するように配設したことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記充電池は、前記駆動軸および/または前記負荷軸の中心部に沿って穿設された充電池収納穴に装填するように構成したことを特徴としている。
請求項5に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記負荷軸には、前記信号処理回路および前記伝送手段等の回路部品を収納するための回路部品収納ケース部を設けたことを特徴としている。
請求項6に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記トルク検出手段、前記信号処理手段および前記伝送手段は、前記駆動軸が停止中にも前記充電池から電力の供給を受けて前記負荷軸に負荷されている停止時のトルクを検出し得るように構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項7に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第4の目的を達成するために、
前記トルク検出手段は、前記負荷軸の細径とされた起歪部上に、180°の角度間隔をあけて添着された複数のひずみゲージからなり、前記起歪部に生じるせん断ひずみを検出し得るように構成したことを特徴としている。
請求項8に記載した発明に係る回転体のトルク測定装置は、
上述した第1〜第6の目的を達成するために、
前記駆動軸と前記負荷軸は、それぞれの端部に形成された対をなすフランジ部同士が、軸中心を合致させるように当接された状態で、ねじ結合手段をもって接合したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、回転力伝達系中の駆動軸側と負荷軸側との間に介挿され、両軸間に伝達されるトルクを測定する回転体のトルク測定装置において、
固定体と前記回転体との間に配設され前記回転体の回動に伴い発電する発電機構と、
前記回転体側に配設され、前記発電機構により発電した電力を蓄積する充電池と、
前記負荷軸に負荷されるトルクを検出し、検出信号を出力するトルク検出手段と、
このトルク検出手段から出力される検出信号を増幅、信号変換などを行う信号処理回路と、
この信号処理回路からの出力信号を非接触で固定体側へ伝送する伝送手段とを具備し、
前記トルク検出手段、前記信号処理回路および前記伝送手段に対し、前記発電機構または前記充電池から電力を供給し得るように構成したので、次のような効果が得られる。
【0012】
第1に、外部電源、該電源から電力を伝達するスリップリング・ブラシ、発振器および回転トランスなどを用いることなく、電源となる電力を自ら生成し、充電しておくことができる回転体のトルク測定装置を提供することができる。
第2に、回転体が回転を停止している状態においても、駆動軸側と負荷軸側との間に負荷されているトルクを的確に測定し得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
第3に、回転体側と固定体側との間の電力や信号の授受において無用なノイズが混入し難い回転体のトルク測定装置を提供することができる。
第4に、高速回転に耐え、且つ高速回転中の伝動軸の動的トルクを検出し得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記発電機構は、前記固定体を構成するケーシング部材またはこれと一体的な部材に配設された複数個の永久磁石と、前記回転体の一部を構成する前記駆動軸または負荷軸のフランジ部に配設された複数個のコイルと、からなるので、簡略な構成で上記の効果を奏する回転体のトルク測定装置を提供することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記複数個の永久磁石は、駆動軸を中心とする第1の仮想円上に等角度間隔をもって前記ケーシング部材上に複数個配設され、前記複数個の前記コイルは、前記駆動軸を中心とする前記仮想円と同一半径の第2の仮想円上に等角度間隔をもって前記フランジ部上に複数個配設され、前記各コイルと前記各永久磁石は、所定の間隙を存して対峙するように配設したので、比較的低速回転でも効率よく発電をし、充電池に安定的な充電電圧を保持させ得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、前記充電池は、前記駆動軸および/または前記負荷軸の中心部に沿って穿設された充電池収納穴に装填するように構成したので、充電池に作用する遠心力が最小で済み、高速回転に耐え得るトルク測定装置を提供することができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、前記負荷軸には、前記信号処理回路および前記伝送手段等の回路部品を収納するための回路部品収納ケース部を設けたので、検出したトルクに対応する信号を増幅・信号変換・伝送のための変調等を回転体内で行い、固定体側への信号伝送を安定的に非接触で行い得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記トルク検出手段、前記信号処理手段および前記伝送手段は、前記駆動軸が停止中にも前記充電池から電力の供給を受けて前記負荷軸に負荷されている停止時のトルクを検出し得るように構成したので、回転体の停止状態においても、トルクを的確に測定し得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
また、請求項7に記載の発明によれば、前記トルク検出手段は、前記負荷軸の細径とされた起歪部上に、180°の角度間隔をあけて添着された複数のひずみゲージからなり、前記起歪部に生じるせん断ひずみを検出し得るように構成したので、小トルクから大トルクまで広範囲のトルクを精度よく検出し得る回転体のトルク測定装置を提供することができる。
また、請求項8に記載の発明によれば、前記駆動軸と前記負荷軸は、それぞれの端部に形成された対をなすフランジ部同士が、軸中心を合致させるように当接された状態で、ねじ結合手段をもって接合されてなるので、駆動軸に対し起歪部を有する負荷軸を容易、迅速、正確に着脱することができ、補修作業が行い易い回転体のトルク測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る回転体のトルク測定装置について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る回転体のトルク測定装置の中央縦断面図、図2は、図1に示す回転体のトルク測定装置の右側面図、図3は、図1に示す回転体のトルク測定装置の全体構成を示す斜視図、図4は、図1に示す回転体のトルク測定装置からケーシング部材、磁石固定板、永久磁石等を外した状態の内部構造の断面、即ち図5のA−A線矢視方向を断面図、図5は、図4の右側面図、図6は、図4の斜視図、図7は、図1に示す回転体のトルク測定装置のケーシング部材の一部を破断して示す斜視図、図8は、図4の分解斜視図である。
駆動軸1と負荷軸2は、駆動軸1を原動軸とする回転力伝達系を構成する。
例えば、駆動軸1は、エンジンの出力軸に対し、図示省略のカップリングを介して接続され、両者はキー溝1aに嵌合するキーにより回転止めが施される。
【0016】
また、負荷軸2側は、例えば、図示省略の自動車の駆動軸(プロペラシャフト)、発電機の入力軸等、何らかの負荷のかかる入力軸に対し、図示省略のカップリングを介して接続され、両者は、キー溝2aに嵌合するキーにより回転止めが施される。
駆動軸1の一端部(図1において右端部)には、フランジ部1bが形成され、負荷軸2の一端部(図1の左端部)には、フランジ部1bよりも大径とされたフランジ部2bが形成されている。
これらフランジ部1bおよびフランジ部2bは、互いの接合面に円環状の段差が形成された、いわゆる印ろう部同士が嵌合し、両軸中心が合致された状態で、ねじ結合手段としての緊締ねじ3(図8参照)により両者は連結される。
【0017】
これら駆動軸1と負荷軸2は、2個のボールベアリング4、5を介してケーシング部材6に対し回動自在に支持されている。
上記ボールベアリング4および5は、ケーシング部材6に形成された凹状溝内に嵌入され、スナップリング7および8によって抜け止めが図られていると共に、ボールベアリング4および5の各外端側は、止めねじ11および12によって取付けられたベアリング押え9および10によって押えられ、ケーシング部材6からの抜け止めが図られている。
ケーシング部材6の内部の一方側(図1において左側)には、永久磁石13が固定されたアクリル板よりなる磁石固定版14が止めねじによって取付けられている。
この磁石固定板14は、上記の如くケーシング部材6に一体化され、駆動軸1を中心とする仮想円(以下、「第1の仮想円」という)上に、等角度間隔(この例の場合、60°間隔)で複数個(この例の場合、6個)の円状溝または円状穴が穿設されており、上記円状溝または円状穴には複数個(この例の場合6個)の永久磁石13がそれぞれ嵌入され且つ脱落しないように固定されている。
【0018】
一方、回転側における構成について説明をする。
駆動軸1のフランジ部1bおよび負荷軸2のフランジ部2bには、中心軸に平行に複数個(この場合、8個)の貫通孔1cおよびねじ穴2cがそれぞれ穿設されている(図8参照)。
フランジ部1bと2bは、軸中心を合致させて当接された状態で、緊締ねじ3を上記貫通孔1cを挿通して上記ねじ穴(雌ねじ穴)2cに螺合させて強く締め付けることで、強固に接合されることになる。
フランジ部2b側には、さらに、負荷軸2を中心とする上述した第1の仮想円と同一の半径の第2の仮想円上に等角度(この例の場合60°)間隔をもって複数個(この例の場合、6個)のねじ穴2dが穿設されており、このねじ穴2dには、それぞれ鉄芯16が螺合され、さらにこの鉄芯16には、それぞれコイル17が嵌合されている。
【0019】
これらコイル17の一端(図1において左端)側には、非磁性体であるアクリル板よりなる鉄芯固定板18が当接され、さらにこの鉄芯固定板18は止めねじ19によってフランジ部1bに固定されている。
このように、固定体側である磁石固定板14に固定された永久磁石13と、回転体側であるフランジ部1bに固定されたコイル17とは、所定の間隙を存して相対回転自在に対峙するように構成されることになる。
上記フランジ部2bには、さらに、アンプケース20が止めねじ22によって一体的に取付けられている。止めねじ22は、フランジ部2bに穿設された貫通孔2gを貫通し、アンプケース20に形成されたねじ穴20aに螺合する。
このアンプケース20の内部には、図示はしないが、後述する各種回路部品が収納され、各種回路部品の搭載後は、アンプケース蓋21が止めねじ23によって固定されることによって、各種回路部品は、高速回転にも耐える状態で保持されることになる。
【0020】
負荷軸2の中間部は、細径に削成されて、起歪部2eが設けられており、その起歪部2eの円周上には、180°の角度間隔をあけて少なくとも二対のひずみゲージSG1、SG2が接着、蒸着、溶着、その他の手段により添着されている。
即ち、例えば、0°の位置に、起歪部2eの軸方向(図1において左右方向)に対し、ほぼ45°だけ傾斜して添着された第1のひずみゲージSG1と、このひずみゲージSG1に対し90°だけ異なる方向に傾斜して添着された第2のひずみゲージSG2とが設けられ、また、例えば、180°の位置に同様に、第1のひずみゲージSG1と、第2のひずみゲージSG2とが設けられるものとする。
このように、0°位置に設けた第1のひずみゲージSG1と180°位置に設けた第1のひずみゲージSG1とを、図示しないブリッジ回路の対辺に接続し、0°位置に設けた第2のひずみゲージSG2と180°位置に設けた第2のひずみゲージSG2とを、上記ブリッジ回路の隣接する対辺にそれぞれ接続する。
【0021】
このように構成されたブリッジ回路の入力端にブリッジ電源が供給されると、ブリッジ電源の出力端からは、負荷軸2に印加されたトルクに対応した検出信号(電圧または電流)が得られる。
尚、固定体を構成するケーシング部材6は、床、フレーム等の固定部に設置するための取付脚部6a、この取付脚部6aと一体をなすケース本体6b、このケース本体6bを切欠いて設けられた点検開口6cを閉塞する開口蓋6d、ケース本体6bの開口部を閉塞するケーシング側板6eとからなっている。
従って、一方のボールベアリング4は、ケーシング部材6のケース本体6bに嵌合され、他方のボールベアリング5は、ケーシング部材6のケーシング側板6eに嵌合されていることになる。
これら充電池収納穴1fおよび2fは、駆動軸1の右端側および負荷軸2の左端側には、複数個(この例の場合、2個)の充電池(二次電池)24が収納される充電池収納穴1fおよび2fがそれぞれ穿設されている。
駆動軸1および負荷軸2にまたがるように形成してあるが、一方側の軸のみに形成してもよいが、各軸の強度上は、両軸1,2のフランジ部1b、2bが存在する近傍部位に設けることが望ましい。
【0022】
次に、本発明の電気回路構成の概要を説明する。
先ず、本発明の発電機構は、固定側(ケース本体6b)に設けた永久磁石13と、これに対峙して回転側(フランジ部1b、2b)に設けたコイル17および鉄芯16とが近接していることにより、コイル17と鉄芯16が回転すると、電磁誘導によりコイル17に起電力が生じる。このコイル17から導出された電流は、整流回路、例えば、ダイオードをブリッジの四辺にそれぞれ回路挿入してなる整流回路により、整流され、さらに、平滑用のコンデンサやレギュレータからなる平滑化回路で平滑化した直流電源を得る。
さらにこの直流電源は、電圧安定化回路を介してさらに安定化された電源として、充電池24に充電される。
このようにして充電された充電池24は、後述する各部回路の電源として供給される。
【0023】
次に、上述した一実施の形態に係る回転体のトルク測定装置の作用につき説明する。
上記の構成よりなる回転体のトルク測定装置の駆動軸1を原動機の出力軸にカップリングを介して接続し、負荷軸2を、被測定対象である、例えば、風力発電機の回転軸にカップリングを介して接続して、実稼動状態に設定する。
この状態で、原動機を駆動開始すると、原動機の駆動力は、駆動軸1→フランジ部1b→フランジ部2b→起歪部2e→負荷軸2→被測定対象物(風力発電機)の経路で伝達されるので、細径に形成された起歪部2eに負荷されているトルクに応じたせん断ひずみ(捩り)が生ずる。
このせん断ひずみは、一対の第1のひずみゲージSG1に、例えば引張りひずみを生じさせ、一対の第2のひずみゲージSG2に、例えば圧縮ひずみを生じさせる。これら一対の第1のひずみゲージSG1を対辺に、一対の第2のひずみゲージSG2を、これらに隣接する対辺にそれぞれ回路接続したブリッジ回路の入力端に前記充電池24からブリッジ電源を供給すると、ブリッジ回路の出力端からは、起歪部2eに印加されたトルクに対応したひずみ検出信号(電圧または電流)が出力される。
【0024】
このひずみ検出信号は、図示は省略したが、例えば、信号処理手段の一つである直流アンプで直流増幅され、変調回路でFM変調あるいはPCM変調等を行い、送信手段によりアンテナから空中送信する。このようにして送信された信号は、固定体側、即ち、ケーシング部材6側に設けられた受信アンテナを介して受信手段で受信し、復調回路で最適な復調を行い、DCアンプで、オフセット、レベル等の調整をして、表示器あるいは記録器により表示され、あるいは記録される。
このように構成され且つ作用する本発明の一実施の形態における回転体のトルク測定装置によれば、固定体(外部)から電源を供給する必要がないので、直接接触伝送方式における電源装置、スリップリング、ブラシなどが不要となり、非接触伝送方式における電源装置、発振器、回転トランス等が不要となり、構成が簡素化されると共に、コストを低減することができる。
【0025】
また本発明の上述の実施の形態によれば、上記電源機構に加えて充電池24を備えているため、負荷軸2が停止している状態であっても起歪部2eに生じているせん断ひずみを検出し、負荷されているトルクを的確に検出することができる。
また、スリップリングを使用しない非接触型の構成を採用しているので、摺動ノイズが検出出力に混入することがなく、高精度なトルクを測定することができると共に、高速回転に耐え、高速回転中の動的トルクを的確に測定することができる。
また、回転トランスは、外部から電源(例えば、100V〜200Vの商用電源が必須であるが、本願発明は、回転体より回転力を受けて発電をするので、例えば、商用電源が得られない船舶や自動車などにおけるエンジントルクやブレーキトルクやプロペラのトルク等を何らの支障なく、実測することができる。
また、充電池24を、駆動軸1および負荷軸2の中心部に収納保持せしめる構成としたので、慣性モーメントが小さく、より高速の回転を実現することができる。
また、回転体側(負荷軸側)にアンプケース26を設けたので、回路部品が安定に保持され、所定の信号処理が回転体側で行われ、安定した信号の伝送が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る回転体のトルク測定装置の全体構成を示す中央縦断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の実施の形態に係る回転体のトルク測定装置の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図1の回転体のトルク測定装置からケーシング部材、永久磁石、磁石固定板等を取外した状態の内部構造を示す図5のA−A線矢視方向断面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図4に示す内部構造の外観構成を示す斜視図である。
【図7】図1に示す一実施の形態に係る回転体のトルク測定装置のケーシング部材を一部破断して内部構造を分り易く表した斜視図である。
【図8】図4に示す回転体のトルク測定装置の内部構造を分解して示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 駆動軸
1b、2b フランジ部
1f、2f 充電池収納穴
2 負荷軸
2e 起歪部
3 緊締ねじ
4、5 ボールベアリング
6 ケーシング部材
7、8 スナップリング
9、10 ベアリング押え
11、12 止めねじ
13 永久磁石
14 磁石固定板
16 鉄芯
17 コイル
18 鉄芯固定板
20 アンプケース
21 アンプケース蓋
24 充電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力伝達系中の駆動軸側と負荷軸側との間に介挿され、両軸間に伝達されるトルクを測定する回転体のトルク測定装置において、
固定体と前記回転体との間に配設され前記回転体の回動に伴い発電する発電機構と、
前記回転体側に配設され、前記発電機構により発電した電力を蓄積する充電池と、
前記負荷軸に負荷されるトルクを検出し、検出信号を出力するトルク検出手段と、
このトルク検出手段から出力される検出信号を増幅、信号変換などを行う信号処理回路と、
この信号処理回路からの出力信号を非接触で固定体側へ伝送する伝送手段とを具備し、
前記トルク検出手段、前記信号処理回路および前記伝送手段に対し、前記発電機構または前記充電池から電力を供給し得るように構成したことを特徴とする回転体のトルク測定装置。
【請求項2】
前記発電機構は、前記固定体を構成するケーシング部材または当該ケーシング部材と一体的な部材に配設された複数個の永久磁石と、前記回転体の一部を構成する前記駆動軸または前記負荷軸のフランジ部に配設された複数個のコイルと、からなることを特徴とする請求項1に記載の回転体のトルク測定装置。
【請求項3】
前記複数個の永久磁石は、駆動軸を中心とする第1の仮想円上に等角度間隔をもって前記ケーシング部材上に複数個配設され、前記複数個の前記コイルは、前記駆動軸を中心とする前記仮想円と同一半径の第2の仮想円上に等角度間隔をもって前記フランジ部に複数個配設され、前記各コイルと前記各永久磁石は、所定の間隙を存して対峙するように配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の回転体のトルク測定装置。
【請求項4】
前記充電池は、前記駆動軸および/または前記負荷軸の中心部に沿って穿設された充電池収納穴に装填するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転体のトルク測定装置。
【請求項5】
前記負荷軸には、前記信号処理回路および前記伝送手段等の回路部品を収納するための回路部品収納ケース部を設けたことを特徴とする回転体のトルク測定装置。
【請求項6】
前記トルク検出手段、前記信号処理手段および前記伝送手段は、前記駆動軸が停止中にも前記充電池から電力の供給を受けて前記負荷軸に負荷されている停止時のトルクを検出し得るように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転体のトルク測定装置。
【請求項7】
前記トルク検出手段は、前記負荷軸の細径とされた起歪部上に、180°の角度間隔をあけて添着された複数のひずみゲージからなり、前記起歪部に生じるせん断ひずみを検出し得るように構成したことを特徴とする請求項1または6に記載の回転体のトルク測定装置。
【請求項8】
前記駆動軸と前記負荷軸は、それぞれの端部に形成された対をなすフランジ部同士が、軸中心を合致させるように当接された状態で、ねじ結合手段をもって接合したことを特徴とする請求項1に記載の回転体のトルク測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327890(P2007−327890A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160358(P2006−160358)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)