説明

回転体の回転方向切換装置及びディスク搬送装置

【課題】ディスクの搬送方向に関係なく駆動源に対する負荷を一定にする。
【解決手段】ローラアーム46には、光ディスク1の搬送方向に長い搬送ローラ37のローラ軸37aが係合される第1の係合部51が形成され、シャーシ44には、第1の係合部51に交差するようにして搬送ローラ37のローラ軸37aが係合される第2の係合部53が形成されている。交差する第1の係合部51と第2の係合部53内でローラ軸37aが揺動可能である。これにより、ローラ軸37aがシャーシ44の第2の係合部53の長辺で搬送方向が規制され、ローラアーム46への外力の発生を防止することができ、搬送方向にかかわらず、駆動源への負荷を一定にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等を記録及び/又は再生位置に搬送する回転体の回転方向を切り換える回転体の回転方向切換装置及びディスク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に示すように、ディスク記録及び/又は再生装置の中には、光ディスクを搬送ローラを用いてローディング方向とイジェクト方向に搬送するものがある。搬送ローラは、対向配置されたディスクガイド部とによって光ディスクを挟持し、第1の方向に回転されることによって、光ディスクをローディング方向に搬送し、第2の方向に回転されることによって、光ディスクをイジェクト方向に搬送する。
【0003】
代表的な、搬送ローラを用いた搬送装置を図6を用いて説明する。この搬送装置101は、光ディスク100を図示しないディスクガイド部とで挟持して搬送する搬送ローラであるゴムローラ102と、ゴムローラ102のローラ軸103に取り付けられる回転ギヤ104と、駆動モータに接続された駆動ギヤ105とを備え、回転ギヤ104と駆動ギヤ105とが連結することによって駆動力が伝達されて、搬送ローラ102が回転するようになっている。また、同軸のゴムローラ102と回転ギヤ104とは、駆動ギヤ105の回転方向に従って回動するフリクションアーム106に取り付けられる。このフリクションアーム106は、図示しないが付勢部材によって、ゴムローラ102が光ディスク100に圧着される方向に回動付勢されている。この搬送装置101では、駆動ギヤ105の回転方向に応じてゴムローラ102がローディング方向又はイジェクト方向に回転する。
【0004】
ここで、図6の各矢印は、光ディスク100を図6中矢印Z方向(イジェクト方向)に搬送する場合を示している。この場合、駆動ギヤ105は、図6中矢印X方向に回転されると、回転ギヤ104は、図6中矢印Y方向に回転される。この場合、搬送する光ディスク100には、光ディスク100にゴムローラ102が駆動ギヤ105及びフリクションアーム106の支軸107の方向に食い込む食い込み力が発生する。一方で、光ディスク100をローディングのため図6中反矢印Z方向に搬送する場合、ゴムローラ102には、搬送する光ディスク100から離れる逃げ力が発生する。
【0005】
これを具体的に説明すると次のようになる。ここで、図6中の符号は、次の通りである。
d,Do,D1は、各ギヤの直径。
Po:フリクションアーム106を付勢するばねのみで発生するローラ圧着力。
Px:ゴム面へのローラ軸103の総圧着力(スリップ時に発生)。
μ:ローラ軸103とゴムローラ102間の回転方向の摩擦係数。
Fe:Pxとμで生じる摩擦力(クラッチ力)。
Fe’:Feの反作用としてローラ軸103を介し、フリクションアーム106にかかる反力。
T1:Feで生じたギヤ(D1)のクラッチトルク。
F1:T1で生じた、フリクションアーム106全体にかかる力(駆動ギヤの回転接線方向:実際はギヤ圧力角方向だが、比で捉えるので、接線方向で代用)。
Fg:排出力。
【0006】
そして、図6に示すイジェクト方向に光ディスク100を搬送する場合を説明する。
【0007】
Fe=Fe’=Px×μ
T1=Fe×d/2
F1=T1/(D1/2)=Fe×(d/2)/(D1/2)=Px×μ×d/D1
そして、スリップ状態でアーム回動の釣合モーメントは次のようになる。
【0008】
Px×L2=Po×L2Fe’×L3F1×L1 ・・・(式1)
式1では、Fe’,F1はPoと反対方向のモーメントを構成することになる。
【0009】
L1=Do/2
Px×L2=Po×L2−Px×μ×L3−Px×μ×d/D1×(Do/2)
=Po×L2−Px×μ×(L3+d×Do/(2×D1))
Px×L2+Px×μ×(L3+d×Do/(2×D1))=Po×L2
Px×(L2+μ×(L3+d×Do/(2×D1))=Po×L2
Px=Po×L2/(L2+μ×(L3+d×Do/(2×D1)))
=Po/(1(μ/L2)×(L3+d×Do/(2×D1)))
また、光ディスク100をローディング方向に搬送する場合を説明する。この場合、図6における矢印(X方向、Y方向、F1、Fe’)がPoを除き全部逆となる。そして、スリップ状態でアーム回動の釣合モーメントは次のようになる。
【0010】
Px×L2=Po×L2Fe’×L3+F1×L1 ・・・(式2)
式2では、Fe’,F1はPoと同じ方向のモーメントを構成することになる。
【0011】
そして、イジェクトの場合と同様に整理すると次のようになる。
Px=Po/(1(μ/L2)×(L3+d×Do/(2×D1)))
以上のように、Fe’F1は、Poに対して同じモーメント(食い込み力)又は反対のモーメント(逃げ力)を構成するため、ゴムローラ102は、光ディスク100をローディングするときとイジェクトするときとで、圧着力Pxが異なることになる。図7は、図6のL3に対する搬送装置101のローディング時とイジェクト時のPxを示す。このときの条件は次の通りである。
【0012】
Po=380g、Do=8.8mm、D1=15.2mm、L2=10.5mm、L3=可変(mm)、d=2.5mm、D=5mm、μ=0.6
図7から、L3が小さい程ローディング時とイジェクト時とでPx差が大きくなることが分かる。
【0013】
以上のように、ローディング時とイジェクト時とで圧着力Pxの差が発生すると、駆動ギヤ105を駆動する駆動モータに対する負荷がローディング時とイジェクト時とで異なることになってしまう。また、L3によってPxが異なる。設計を行う場合、駆動ギヤ105を駆動する駆動モータへの負荷をなるべく一定にするためには、なるべくL3を小さくする必要があり、部品配置設計が極めて制限されてしまう。
【0014】
【特許文献1】特許第2859490号公報
【特許文献2】特公平4−4671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被移動体の搬送方向に関係なく駆動源に対する負荷を一定にすることができる回転体の回転方向切換装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明は、ディスクの搬送方向に関係なく駆動源に対する負荷を一定にすることができるディスク搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る回転体の回転方向切換装置は、被移動体を被圧着部とで挟み込んで直線的に搬送する回転体と、上記回転体の回転軸に取り付けられる回転ギヤと、駆動源に接続される駆動ギヤと、上記駆動ギヤが第1の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第1の伝達ギヤと、上記駆動ギヤが第2の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第2の伝達ギヤとを有し、シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動して、上記第1の伝達ギヤと上記第2の伝達ギヤとを選択的に上記回転ギヤに接続するフリクションアームと、上記回転体を回転自在に支持すると共に、上記シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動するローラアームと、上記ローラアームを、上記回転体が上記被圧着部に近接する方向に付勢する付勢部材とを備える。上記ローラアームには、上記被移動体の搬送方向に長い上記回転体の回転軸が挿入される第1の係合部が形成され、上記シャーシには、上記第1の係合部に交差するようにして上記回転体の回転軸が係合される第2の係合部が形成されている。そして、上記交差する第1の係合部と第2の係合部内で上記回転軸が揺動可能であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るディスク搬送装置は、ディスクをディスクガイド部とで挟み込んで直線的に搬送する搬送ローラと、上記搬送ローラのローラ軸に取り付けられる回転ギヤと、駆動源に接続される駆動ギヤと、上記駆動ギヤが第1の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第1の伝達ギヤと、上記駆動ギヤが第2の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第2の伝達ギヤとを有し、シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動して、上記第1の伝達ギヤと上記第2の伝達ギヤとを選択的に上記回転ギヤに接続するフリクションアームと、上記搬送ローラを回転自在に支持すると共に、上記シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動するローラアームと、上記ローラアームを、上記搬送ローラが上記ディスクガイド部に近接する方向に付勢する付勢部材とを備える。上記ローラアームには、上記ディスクの搬送方向に長い上記搬送ローラのローラ軸が係合される第1の係合部が形成され、上記シャーシには、上記第1の係合部に交差するようにして上記搬送ローラのローラ軸が係合される第2の係合部が形成されている。そして、上記交差する第1の係合部と第2の係合部内で上記ローラ軸が揺動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、交差する第1の係合部と第2の係合部内で回転軸又はローラ軸が揺動可能であることから、回転体又は搬送ローラの回転時、回転軸又はローラ軸がシャーシの第2の係合部の長辺で搬送方向が規制され、ローラアームへの外力の発生を防止することができる。これにより、搬送方向にかかわらず、駆動源への負荷を一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用されたディスク記録再生装置について図面を参照して説明する。
【0021】
このディスク記録再生装置は、音楽データ、映像データ、地図データ等のデータが記録されたコンパクトディスクやデジタル・バーサタイル・ディスクといった光ディスクの記録再生装置であって、例えば、車載用として用いられる。
【0022】
図1に示すように、このディスク記録再生装置10は、例えば金属板を折曲して形成されたベース11に、光ディスク1を回転するディスク回転駆動機構12が設けられている。
【0023】
光ディスク1を回転するディスク回転駆動機構12は、図1に示すように、光ディスク1が装着されるディスクテーブル13を有する。このディスクテーブル13は、ベース11の裏面に取り付けられたスピンドルモータ14のスピンドル15に取り付けられ、スピンドル15と一体的に回転するようになっている。このディスク回転駆動機構12は、例えば、光ディスク1を、CLV(Constant Linear Velocity)、CAV(Constant Angula Velocity)、ZCLV(Zone Constant Linear Velocity)、ZCAV(Zone Constant Angular Velocity)等となるようなサーボ制御を行いながら回転する。
【0024】
また、ベース11には、光ピックアップ16が配設されている。この光ピックアップ16は、ディスクテーブル13に装着された光ディスク1の径方向に亘ってベース11に設けられた開口部17より外方に臨まされている。この光ピックアップ16は、ディスクテーブル13によって回転されている光ディスク1に対して光源から出射された光ビームを対物レンズ16aで集光して照射し、光ディスク1で反射された戻りの光ビームを光検出器で検出することによって、トラッキングサーボ、フォーカシングサーボ等の制御を行いながら光ディスク1に対してデータを書き込み、また、光ディスク1に記録されているデータの読み出しを行う。
【0025】
この光ピックアップ16は、ピックアップベース18に取り付けられて、移動機構21によって開口部17内をディスクテーブル13に回転可能に支持されている光ディスク1の径方向に直線的に送り操作される。光ピックアップ16を光ディスク1の径方向に送り操作する移動機構21は、ピックアップベース18に形成されたガイド孔19に、ベース11に固定されたガイド軸22を挿通することによって、一端が支持されると共に、図示しないが他端がベース11に形成されたガイド溝にピックアップベース18の係合片を係合させることによって、光ピックアップ16を光ディスク1の径方向に直線的に移動可能に支持している。ピックアップベース18は、これに一体的に設けられたラック24と図示しない駆動モータとの間を減速ギヤブロックで連結している。そして、ピックアップベース18は、減速ギヤブロックの最終段の駆動ギヤ23とラック24とが連結されることによって、光ディスク1の径方向に直線的に移動されることになる。
【0026】
以上のように、ディスクテーブル13、光ピックアップ16、更には光ピックアップ16の移動機構21が配設されたベース11には、図1に示すように、回動支持部材31がベース11を跨ぐようにして回動可能に取り付けられる。すなわち、ベース11には、基端側に、一対の支持片32,32が形成され、各支持片32,32には、軸孔32a,32aが形成されている。回動支持部材31には、ベース11側の一対の支持片32,32に対応して回動軸33,33が形成されている。回動軸33,33は、互いに内方に向かって形成されているのではなく、同じ方向を向いて形成されている。したがって、回動支持部材31は、回動軸33,33を、ベース11の支持片32,32に形成された軸孔32a,32aにスライドさせるようにして取り付けることができる。
【0027】
この回動支持部材31の中程には、ディスクテーブル13とで光ディスク1を挟み込むディスク押さえ板34が回転可能に取り付けられている。このディスク押さえ板34は、ディスクテーブル13と共にディスク回転駆動機構12を構成するものであり、回動支持部材31の中程に回転自在に取り付けられている。以上のようにディスク押さえ板34が取り付けられる回動支持部材31は、一側面部に、操作突起35が形成されており、ベース11に対して、回動し、ディスク押さえ板34をディスクテーブル13に対して近接離間することができるようにしている。
【0028】
回動支持部材31がベース11に対して離間しているとき、光ディスク1の搬送が行われる。光ディスク1をディスクテーブル13に装着される記録及び/又は再生位置と装置本体外のディスク交換位置とに亘って搬送するディスク搬送機構36は、光ディスク1を装置本体の内外に亘って搬送する搬送ローラ37を有し、装置本体の前面に形成されたディスク挿脱口から光ディスク1が直接挿脱されるいわゆるスロットインタイプの搬送機構として構成される。搬送ローラ37は、装置本体の前面側において両側面間に亘って回転自在に支持され、駆動機構41により正転あるいは逆転駆動され、光ディスク1を装置本体の内外に亘って搬送する。なお、搬送ローラ37と対向する位置には、搬送する光ディスク1が搬送ローラ37によって圧着されるディスクガイド部38が設けられている。搬送ローラ37は、図示しない昇降機構によってディスク搬送領域を昇降するようになっており、光ディスク1がディスク回転機構6にチャッキングされ回転駆動される際は昇降機構によって下降され、光ディスク1から離間する。また光ディスク1の挿入又は排出時には昇降機構によって上昇され、光ディスク1と当接され、搬送可能となる。
【0029】
ディスク搬送機構36の搬送ローラ37を駆動する駆動機構41は、搬送ローラ37の回転方向を光ディスク1をローディング方向に搬送する回転方向と光ディスク1をイジェクト方向に切り換えて搬送ローラ37を回転駆動する。
【0030】
この駆動機構41は、図2及び図3に示すように、搬送ローラ37のローラ軸37aに取り付けられる回転ギヤ42と、駆動モータ等の駆動源に接続される駆動ギヤ43と、装置本体を構成するシャーシ44に駆動ギヤ43と同軸に取り付けられ駆動ギヤ43の回転方向に従って回動するフリクションアーム45と、搬送ローラ37を回転自在に支持すると共にシャーシ44に駆動ギヤ43と同軸に取り付けられ駆動ギヤ43の回転方向に従って回動するローラアーム46と、ローラアーム46を搬送ローラ37がディスクガイド部38に近接する方向に付勢する付勢部材47とを備える。
【0031】
回転ギヤ42は、図2及び図3に示すように、搬送ローラ37のローラ軸37aに一体的に取り付けられ、搬送ローラ37を一体的に回転駆動できるようになっている。
【0032】
駆動ギヤ43は、シャーシ44の支軸43aに回転自在に取り付けられており、駆動源となっている駆動モータ、ウォーム等を介して連結されている。この支軸43aには、更に、フリクションアーム45が回動可能に取り付けられており、このフリクションアーム45は、駆動ギヤ43とのフリクションによって駆動ギヤ43の回転方向に従って回動するようになっている。このフリクションアーム45には、このフリクションアーム45に形成された支軸48aに回転自在に第1の伝達ギヤ48が回転自在に取り付けられていると共に、このフリクションアーム45に形成された支軸49aに回転自在に第2の伝達ギヤ49が回転自在に取り付けられている。第1及び第2の伝達ギヤ48,49は、常時、駆動ギヤ43に連結されていると共に、フリクションアーム45の回動に伴って選択的に回転ギヤ42に連結される。すなわち、回転ギヤ42は、第1の伝達ギヤ48又は第2の伝達ギヤ49を介して駆動ギヤ43からの駆動力が伝達され回転される。具体的に、第1の伝達ギヤ48は、イジェクト時に回転ギヤ42に連結され、第2の伝達ギヤ49は、ローディング時に回転ギヤ42に連結される。
【0033】
また、駆動ギヤ43の支軸43aには、更に、搬送ローラ37を回転自在に支持するローラアーム46が回動可能に取り付けられており、このローラアーム46は、駆動ギヤ43とのフリクションによって駆動ギヤ43の回転方向に従って回動するようになっている。このローラアーム46は、付勢部材47によって、搬送ローラ37を光ディスク1に圧着する方向に付勢されている。付勢部材47は、例えばねじりバネであり、一端を、シャーシ44の係止部47aに係止させ、他端を、ローラアーム46の突起37bに係止させることによって、ローラアーム46を、光ディスク1に圧着させる方向に付勢している。
【0034】
ローラアーム46には、光ディスク1の搬送方向(図2中矢印Z方向及び反矢印Z方向)に長い例えば略矩形の貫通孔でなる第1の係合部51が形成されている。図3及び図4に示すように、搬送ローラ37のローラ軸37aには、第1の軸受け52が取り付けられており、この第1の軸受け52を介して第1の係合部51に係合されている。第1の軸受け52は、ローラ軸37aと第1の係合部51の幅に対して誤差程度のがたつきを有するように形成されている。
【0035】
また、シャーシ44には、第1の係合部51と交差するようにして、例えば光ディスク10の搬送方向に直交する方向に長い例えば略矩形の貫通孔でなる第2の係合部53が形成されている。図3及び図4に示すように、搬送ローラ37のローラ軸37aには、第2の軸受け54が取り付けられており、この第2の軸受け54を介して第2の係合部53に係合されている。第2の軸受け54は、ローラ軸37aと第2の係合部54の幅に対して誤差程度のがたつきを有するように形成されている。
【0036】
すなわち、搬送ローラ37のローラ軸37aは、第1の係合部51と第2の係合部53とが交差した位置において、第1及び第2の軸受け52,54を介して揺動可能に支持されている。
【0037】
以上のような駆動機構41の動作について図4を参照して説明する。先ず、光ディスク1をイジェクトする場合、すなわち図4中Z方向に搬送する場合を説明する。この場合、駆動ギヤ43が図4中矢印A方向に回転されると、フリクションアーム45は、駆動ギヤ43の回転方向に従って図2に示す状態に回動する。すると、第1の伝達ギヤ48と回転ギヤ42とが連結され、駆動力が図4中矢印B方向に回転する第1の伝達ギヤ48を介して駆動ギヤ43から回転ギヤ42に伝達されるようになる。これにより、回転ギヤ42は、図4中矢印C方向に回転し、搬送ローラ37も同方向に回転する。
【0038】
また、光ディスク1のローディング方向に搬送する場合、すなわち図4中反矢印Z方向に搬送する場合、駆動ギヤ43が図4中矢印D方向に回転されると、フリクションアーム45は、駆動ギヤ43の回転方向に従って図2に示す状態とは反対の方向に回動する。すると、第2の伝達ギヤ49と回転ギヤ42とが連結され、駆動力が図4中矢印E方向に回転する第2の伝達ギヤ49を介して駆動ギヤ43から回転ギヤ42に伝達されるようになる。これにより、回転ギヤ42は、図4中矢印F方向に回転し、搬送ローラ37も同方向に回転する。
【0039】
ここで、第1の軸受け52は、第1の係合部51に対し誤差程度のがたつきによって揺動可能であり、第2の軸受け54は、第2の係合部52に対し誤差程度のがたつきによって揺動可能である。そして、図2及び図4に示すように、ローラ軸37aの第1の軸受け52とローラアーム46をローラアーム46の第1の係合部51で分割することによって、ローラアーム46に作用するFe’は、シャーシ44の第2の係合部53の長辺で搬送方向が規制され、ローラアーム46への外力にならず、ローラアーム46への影響がなくなる。したがって、駆動ギヤ43が接続される駆動モータに対する負荷も、イジェクト時とローディング時とで略同じにすることができる。なお、以下、従来の技術と同じ符号を用いて説明する。
【0040】
ここで、F1’は、F1’=Py×μ×d/D1’であり、
イジェクト時は、F1e’=F1’×COS(θe)
=Py×μ×d/D1’×COS(θe) となり、
ローディング時は、F1l’=F1’×COS(θl)
=Py×μ×d/D1’×COS(θl) となる。
【0041】
ローラ軸37aは、シャーシ44の第2の係合部53によってローラアーム46に対し独立しており、光ディスク1への圧着方向には自由度を持っているが、それと直角方向、すなわち光ディスク1の搬送方向には、シャーシ44の第2の係合部53の長辺により規制されている。このため、ローラクラッチが効いている状態、すなわち駆動力測定状態では、その反力(図6でのFe’相当)は、ローラアーム46の圧着力への影響がなくなる。代わりに、クラッチ力(F1’)は、回転ギヤ42に対する外力となり、ローラ圧着方向の成分が実質圧着力(Py)に作用する。
〔Eject時〕: Py=Po−F1e’→Py=Po/(1(μ×COS(θe)×d/D1’))
F1e’=F1×COS(θe) 、F1:クラッチトルク(T)により発生する、ギヤ接線力=T/(D1’/2)=Py×μ×(d/2)/(D1’/2)
〔Ldg時〕: Py=Po+F1l’→Py=Po/(1(μ×COS(θl)×d/D1’))
しかしながら、図6の従来の搬送装置と異なり、Pxに相当するPyは、L3の影響を受けなくなる。したがって、イジェクト時とローディング時とでPyの差を小さくしながら、L3を自由に設定することができる。したがって、駆動機構41の部品配置を設計するに当たっても、自由に行うことができる。
【0042】
図5は、図6の従来の搬送装置と本発明の駆動機構41との比較実験結果であり、イジェクト時とローディング時との圧着力の差を示すものであり、線61は、ローディング時を示し、線62は、イジェクト時を示し、線63は、ローディング時とイジェクト時の搬送力の差を示す。図5より明らかなように、本発明の駆動機構41によれば、イジェクト時とローディング時との圧着力の差を小さくすることができることが分かる。
【0043】
なお、本発明は、上述の車載用のディスク記録再生装置10の他、据え置き型のディスク記録再生装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を適用したディスク記録再生装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の駆動機構の側面図である。
【図3】上記駆動機構の断面図である。
【図4】上記駆動機構の拡大側面図である。
【図5】本発明と従来技術との比較実験結果を示す図である。
【図6】従来の搬送機構を示す側面図である。
【図7】従来の搬送装置のローディング時とイジェクト時のPxを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光ディスク、10 ディスク記録再生装置、11 ベース、12 ディスク回転駆動機構、13 ディスクテーブル、14 スピンドルモータ、15 スピンドル、16 光ピックアップ、16a 対物レンズ、17 開口部、18 ピックアップベース、21 移動機構、22 ガイド軸、23 駆動ギヤ、24 ラック、31 回動支持部材、34 ディスク押さえ板、37 搬送ローラ、37a ローラ軸、38 ディスクガイド部、41 駆動機構、42 回転ギヤ、43 駆動ギヤ、44 シャーシ、45 フリクションアーム、46 ローラアーム、47 付勢部材、48 第1の伝達ギヤ、49 第2の伝達ギヤ。51 第1の係合部、52 第1の軸受け、53 第2の係合部、54 第2の軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移動体を被圧着部とで挟み込んで直線的に搬送する回転体と、
上記回転体の回転軸に取り付けられる回転ギヤと、
駆動源に接続される駆動ギヤと、
上記駆動ギヤが第1の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第1の伝達ギヤと、上記駆動ギヤが第2の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第2の伝達ギヤとを有し、シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動して、上記第1の伝達ギヤと上記第2の伝達ギヤとを選択的に上記回転ギヤに接続するフリクションアームと、
上記回転体を回転自在に支持すると共に、上記シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動するローラアームと、
上記ローラアームを、上記回転体が上記被圧着部に近接する方向に付勢する付勢部材とを備え、
上記ローラアームには、上記被移動体の搬送方向に長い上記回転体の回転軸が挿入される第1の係合部が形成され、
上記シャーシには、上記第1の係合部に交差するようにして上記回転体の回転軸が係合される第2の係合部が形成され、
上記交差する第1の係合部と第2の係合部内で上記回転軸が揺動可能であることを特徴とする回転体の回転方向切換装置。
【請求項2】
上記第1の係合部と上記第2の係合部とは、互いに直交するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転体の回転方向切換装置。
【請求項3】
上記回転軸は、軸受けを介して上記第1の係合部と上記第2の係合部に係合されることを特徴とする請求項1記載の回転体の回転方向切換装置。
【請求項4】
ディスクをディスクガイド部とで挟み込んで直線的に搬送する搬送ローラと、
上記搬送ローラのローラ軸に取り付けられる回転ギヤと、
駆動源に接続される駆動ギヤと、
上記駆動ギヤが第1の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第1の伝達ギヤと、上記駆動ギヤが第2の方向に回転するとき、この回転力を上記回転ギヤに伝達する第2の伝達ギヤとを有し、シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動して、上記第1の伝達ギヤと上記第2の伝達ギヤとを選択的に上記回転ギヤに接続するフリクションアームと、
上記搬送ローラを回転自在に支持すると共に、上記シャーシに対して上記駆動ギヤの回転方向に従って回動するローラアームと、
上記ローラアームを、上記搬送ローラが上記ディスクガイド部に近接する方向に付勢する付勢部材とを備え、
上記ローラアームには、上記ディスクの搬送方向に長い上記搬送ローラのローラ軸が係合される第1の係合部が形成され、
上記シャーシには、上記第1の係合部に交差するようにして上記搬送ローラのローラ軸が係合される第2の係合部が形成され、
上記交差する第1の係合部と第2の係合部内で上記ローラ軸が揺動可能であることを特徴とするディスク搬送装置。
【請求項5】
上記第1の係合部と上記第2の係合部とは、互いに直交するように形成されていることを特徴とする請求項4記載のディスク搬送装置。
【請求項6】
上記ローラ軸は、軸受けを介して上記第1の係合部と上記第2の係合部に係合されることを特徴とする請求項4記載のディスク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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