説明

回転体の軸への固定装置

【課題】回転体をテーパー面とする軸に容易に取付と脱着を可能にした回転体の軸への固定装置を提供する。
【解決手段】回転体6を2つのスリーブ3,4によって軸2の装着部位に機械的に固定、脱着できるようにした回転体の軸への固定装置1であり、回転体の装着部位21をテーパー面22とし、端部に螺旋部23を有する軸2と、軸2の回転体の装着部位21に合着するように内面をテーパー面31にした内部スリーブ3と、内部スリーブ3の外周部を局部的に嵌合した状態で包囲した外部スリーブ4と、軸2の螺旋部23に螺着し、外部スリーブ4を押付けあるいは引抜きする方向に回転させて回転体6を機械的に固定あるいは脱着するようにした締付ナット5、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転体の軸への固定装置に係り、詳しくは歯付プーリ、Vリブドベルト用プーリ、Vプーリ、ローラなどの回転体の装着部位をテーパー面とした軸にキーを使用しないで容易に取付け、脱着できるようにした回転体の軸への固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から歯付プーリ、Vリブドプーリ、Vプーリ、ローラなどの回転体を回転軸に取付けこれを固着させる場合には、回転体の軸穴と回転軸にそれぞれキー溝を切り、この溝にキーを嵌入していた。しかし、従来からキー溝を軸穴と回転軸にキー溝を切るには、相当の工数を要していたことから、キーとキー溝を使用しない新たな固定装置の改善が望まれていた。
【0003】
特許文献1には、回転体と軸との間に、外周が直円筒状で内周が一側で径小となると共に軸方向に割溝を形成したテーパー状の外スリーブと該外スリーブの内周に嵌合して軸方向に割溝を有する内スリーブに介在させた回転体の取付装置が記載されている。
【特許文献1】実公昭37−2711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の取付装置では、テーパー状の外スリーブと内スリーブとを組合わせて回転体と軸との間に挿入した構造であるが、回転体を軸に取付ける場合は容易であっても、脱着する場合にはやや困難な構造であった。
【0005】
本発明は、従来の問題点を改善するものであり、回転体をテーパー面とする軸に容易に取付と脱着を可能にした回転体の軸への固定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項記載の発明では、回転体を2つのスリーブによって軸の装着部位に機械的に固定、脱着できるようにした回転体の軸への固定装置において、
回転体の装着部位をテーパー面とし、端部に螺旋部を有する軸と、
該軸の回転体の装着部位に合着するように内面をテーパー面にした内部スリーブと、
該内部スリーブの外周部を局部的に嵌合した状態で包囲した外部スリーブと、
該軸の螺旋部に螺着し、該外部スリーブを押付けあるいは引抜きする方向に回転させて回転体を機械的に固定あるいは脱着するようにした締付ナットと、からなる回転体の軸への固定装置であり、また外部スリーブは複数の分離したスリーブからなっている場合や、外部スリーブでは、弾性体リングが外周部に設けられた溝部に装着し、回転体壁面に接触している場合を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転体の軸への固定装置では、軸の螺旋部に螺着した締付ナットが外部スリーブを押付けあるいは引抜きする方向に回転して回転体をテーパー面とする軸に機械的に固定あるいは脱着するようにした構造であるために、回転体の軸への固定と脱着が容易になり、また外部スリーブを複数の分離したスリーブにすることで固定装置の組付けや、また弾性体リングを装着することにより分離したスリーブの取付けが容易になり、更には締付ナットの緩め時には回転体と外部スリーブのばらし作業も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る回転体の軸への固定装置の概略断面図、図2は内部スリーブの断面図、そして図3は外部スリーブの断面図である。
本発明の回転体の軸への固定装置1は、回転体の装着部位21のみをテーパー面22とし、端部に螺旋部23を有する軸2と、該軸2の回転体の装着部位21に合着するように内面をテーパー面31にした内部スリーブ3と、該内部スリーブ3の外周部を局部的に嵌合した状態で包囲した外部スリーブ4と、軸2の螺旋部23に螺着し、外部スリーブ4を押付けあるいは引抜きする方向に回転させて歯付プーリ等の回転体6を機械的に固定あるいは脱着するようにした締付ナット5から構成されている。
【0009】
内部スリーブ3は、図1と図2に示すように内面では軸方向の長手方向に内径を除々に大きくしたテーパー面31になり、また外面では外径を軸方向の長手方向に一定とする面であり、端部に突出部32を形成して外部スリーブ4と嵌合可能になっている。上記テーパー面31の長さは軸2のテーパー面22の長さに一致している。内部スリーブ3は長さ方向の始端から末端に沿って貫通した1つのスリット33とテーパー面31のある領域には複数(3個)のスリット34を切り込み、弾性変形を容易にしている。
【0010】
外部スリーブ4は、図1と図3に示すように2つに分離したスリーブ45になって固定装置1への組付けを容易にし、各スリーブ45にスリット46を設けて、また内面と外面では軸方向の長手方向に内径と外径に変化のない形状をしている。内面の一端に設けられた輪状の第1の凹部41は、締付ナット5に装着した留め部51を収容し、締付ナット5の回転に応じて外部スリーブ4は押付けあるいは引抜きする方向へ移動するようになり、一方内面の他端には内部スリーブ3の突出部32を収容した第2の凹部42が設けられ、外部スリーブ4が内部スリーブ3と移動できるようになっている。そして、外面の端部には溝部43が設けられ、その中にゴム、ウレタン等からなる弾性体リング44を収容して分離した外部スリーブ4の取付けを容易にし、締付ナット5の緩め時には回転体6と外部スリーブ4とのばらしが容易になる。
【0011】
締付ナット5は、前述のとおり軸2の螺旋部23に螺着し外部スリーブ4の外径よりやや小さい径であって外部スリーブ4の端面に当接し、また端面に装着した留め部51が外部スリーブ4の第1の凹部41に係止されている。締付ナット5は回転によって外部スリーブ4を押付けあるいは引抜きする方向に移動させる。
【0012】
次に、本発明に係る固定装置1の軸2への取付けと脱着について図4〜図6を用いて説明する。
【0013】
図4は固定装置1の軸2への取付けの初期状態の断面図であり、2つに分離した外部スリーブ4は第2の凹部42を内部スリーブ3の突出部32に嵌合させるとともに、第1の凹部41に締付ナット5の留め部51を係止させるように設置され、外面の端部に設けた溝部43に弾性体リング44を収容して一体的に組立てられた後、回転体6を外部スリーブ4の外面に挿入して設置する。
【0014】
回転体6を移動させた後に締付ナット5を軸2の螺旋部23に螺着して回転すると、外部スリーブ4の第2の凹部42と内部スリーブ3の突出部32が嵌合しているために、外部スリーブ4の押付け方向(図5に示す矢印)に従って内部スリーブ3も移動し、軸2のテーパー面22に密着する。更に、締付ナット5を回転させると、図1に示すように軸2、内部スリーブ3、外部スリーブ4、そして回転体6が互いに強く固着し合い固定装置1になる。
【0015】
一方、回転体6を脱着させる場合には、締付ナット5を逆に回転して外部スリーブ4とともに内部スリーブ3を図6の矢印方向へ回転させることによって軸2、内部スリーブ3、外部スリーブ4、そして回転体6の互いの固着を開放し、更に締付ナット5を回転することで、容易に回転体6を軸2から脱着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る回転体の軸への固定装置は、歯付プーリ、Vリブドベルト用プーリ、Vプーリ、ローラなどの回転体の装着部位をテーパー面とした軸にキーを使用しないで容易に取付けと脱着できるようにした回転体の軸への固定装置として広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る固定装置の概略断面図である。
【図2】内部スリーブの断面図である。
【図3】外部スリーブの断面図である。
【図4】発明に係る固定装置の軸への取付けの初期状態の断面図である。
【図5】発明に係る固定装置の軸への取付けの中間状態の断面図である。
【図6】発明に係る固定装置において回転体を脱着させる初期状態の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 固定装置
2 軸
3 内部スリーブ
4 外部スリーブ
5 締付ナット
6 回転体
21 回転体の装着部位
22 テーパー面
23 螺旋部
31 テーパー面
32 突出部
33 スリット
34 スリット
41 第1の凹部
42 第2の凹部
43 溝部
44 弾性体リング
51 留め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を2つのスリーブによって軸の装着部位に機械的に固定、脱着できるようにした回転体の軸への固定装置において、
回転体の装着部位をテーパー面とし、端部に螺旋部を有する軸と、
該軸の回転体の装着部位に合着するように内面をテーパー面にした内部スリーブと、
該内部スリーブの外周部を局部的に嵌合した状態で包囲した外部スリーブと、
該軸の螺旋部に螺着し、該外部スリーブを押付けあるいは引抜きする方向に回転させて回転体を機械的に固定あるいは脱着するようにした締付ナットと、
からなることを特徴とする回転体の軸への固定装置。
【請求項2】
外部スリーブは複数の分離したスリーブからなっている請求項1記載の回転体の軸への固定装置。
【請求項3】
外部スリーブでは、弾性体リングが外周部に設けられた溝部に装着し、回転体壁面に接触している請求項1または2記載の回転体の軸への固定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate