説明

回転体摺動部の潤滑装置

【課題】カップリング装置などに形成される回転体摺動部について、予め回転体の内部に注入した潤滑剤が回転体の回転に伴って回転体摺動部に自然に供給され、それによって回転体摺動部の摩耗抑制、耐久性向上が図られるようにすることを課題としている。
【解決手段】回転体の回転に伴ってその回転体に連結又は係合した相手部材との間に、径方向、軸方向若しくは径方向と軸方向の滑りが生じる回転体摺動部の潤滑装置である。回転体2に、その回転体の軸方向に延びた潤滑剤貯留穴7を設け、この潤滑剤貯留穴7に、当該穴の内部に注入された潤滑剤を回転体2の回転に伴って開口側に誘導する螺旋溝8aなどで構成された案内部8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転体連結用のカップリング装置に設けられた回転体相互の軸ずれ吸収部や、ブッシュとそのブッシュで支持した回転体との間に形成される回転摺動部など(この発明ではこれ等を総称して回転体摺動部と言う)に回転体の回転を利用して潤滑剤を自動的に供給することを可能にした回転体摺動部の潤滑装置に関する。なお、この発明では、回転中に相対変位が起こるギヤの噛み合い部なども回転体摺動部とみなす。
【背景技術】
【0002】
2つの回転体を、軸ずれの吸収機能を有するカップリング装置で接続する用途は、多々存在する。例えば、ABS(アンチロック制御)、ESC(横滑り防止制御)、TCS(トラクションコントロール)などの制御機能を有する車両用ブレーキ液圧制御装置に使われていて、この装置は、モータで駆動するポンプを有している。
【0003】
そのポンプには、プランジャポンプと歯車ポンプがあり、このうち、後者の歯車ポンプは、ポンプロータを装着したロータ軸にモータの出力軸を連結し、モータを起動させてロータ軸を回転させる。
【0004】
前記ロータ軸とモータの出力軸の連結は、両軸間に不可避の軸ずれが生じることから、その軸ずれの吸収能を有するカップリング装置を用いて行われている。その種のカップリング装置は、例えば、下記特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−68836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されているようなカップリング装置は、連結された軸に不可避の軸ずれ(軸心のずれ)があることから、被駆動軸が駆動軸によって回転駆動されたときに両軸間に振れによる小さな相対変位が生じ、それが原因で、カップリング装置の軸ずれ吸収部が摩耗する。
【0007】
駆動頻度の高い回転軸のカップリング装置や、元々のサイズが小さくて摩耗によるサイズ縮小で強度維持が難しくなるようなカップリング装置の場合、上記の摩耗によってその寿命が短縮される。
【0008】
従って、潤滑剤による潤滑を行って摺動部の摩耗を抑制することが望まれるが、構造が複雑であるとか、サイズが小さいなどの理由によって外部からの給油ができない状況で使用されるカップリング装置に関しては、予め摺動部に注入した潤滑剤に依存せざるを得ないため、最初に注入した潤滑剤が劣化すると潤滑性能が低下して摩耗が促進されるようになる。
【0009】
この発明は、カップリング装置などに形成される回転体摺動部について、予め回転体の内部に注入した潤滑剤が回転体の回転に伴って回転体摺動部に自然に供給され、それによって回転体摺動部の摩耗抑制、耐久性向上が図られるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、回転体の回転に伴ってその回転体に連結又は係合した相手部材との間に、径方向、軸方向若しくは径方向と軸方向の滑り(相対変位)が生じる回転体摺動部の潤滑装置を以下の通りに構成した。
すなわち、前記回転体に、その回転体の軸方向に延びた潤滑剤貯留穴を設け、その潤滑剤貯留穴は、一端が前記回転体の前記相手部材側の端面に開口するとともに奥端が塞がれた穴にし、この潤滑剤貯留穴に、当該穴の内部に注入された潤滑剤を前記回転体の回転に伴って開口側に誘導する案内部を設けた。
【0011】
この潤滑装置は、前記回転体の潤滑剤貯留穴が開口している側の端部外周にキャップを被せ、そのキャップで、前記回転体と前記相手部材の連結部又は係合部(回転体摺動部)の外周を覆うと好ましい。
【0012】
前記案内部は、具体的態様として、以下に列挙するものが挙げられる。
i)前記潤滑剤貯留穴の内周面に、溝位置が前記回転体の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴の奥端側に変位する螺旋溝を設け、その螺旋溝で形成した案内部。
ii)前記潤滑剤貯留穴の内周面に螺旋の突条を設け、この螺旋の突条は、その突条自身の位置が前記回転体の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴の奥端側に変位するように形成し、その螺旋の突条で形成した案内部。
iii)前記潤滑剤貯留穴を、開口側の内径が奥端側の内径よりも大きくなるテーパ穴にしてそのテーパ穴の内周面で形成した案内部。
【0013】
なお、上記ii)の螺旋の突条で形成される案内部は、前記潤滑剤貯留穴にコイル線材を圧入してそのコイル線材で形成することができる。
【0014】
また、前記iii)のテーパ穴の潤滑剤貯留穴は、内周面のテーパ角が穴軸方向の途中で変化する複数テーパ角設定の穴にしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の潤滑装置は、回転体に設けた潤滑剤貯留穴にグリスなどの潤滑剤を貯留し、その潤滑剤を潤滑剤貯留穴から徐々に流出させて回転体と相手部材の摺動部に供給する。
【0016】
潤滑剤貯留穴からの潤滑剤の供給は、回転体の回転によって行なわれる。前記i)の形態の螺旋溝で形成される案内部又は前記ii)の形態の螺旋の突条で形成される案内部を設けたものは、螺旋溝の溝位置や螺旋の突条の位置が回転体の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴内の奥端側に変位することと、回転体の回転初期には潤滑剤貯留穴内の潤滑剤が静止慣性によって元の位置に止まろうとすることによって、回転体が回転すると螺旋溝内の潤滑剤、或いは螺旋の突条間の潤滑剤に対して穴の開口側に向って軸方向の送りがかかる。そのために、潤滑剤が潤滑剤貯留穴から穴の外に流出し、それが摺動部に供給される。
【0017】
また、そのi)又はii)の形態の案内部を設けた潤滑装置は、回転体が引き続いて回転すると、潤滑剤貯留穴内の潤滑剤が回転体に引きずられて回転体と一緒に回転するようになる。そのため、潤滑剤の供給は、回転体の回転の初期にのみ実施され、これにより、潤滑剤貯留穴からの潤滑剤供給期間が長くなって、長寿命化が図られる。
【0018】
上記iii)の形態のテーパ穴で形成される案内部を設けたものは、回転体が回転するとテーパ穴の孔面に付着した潤滑剤が遠心力でテーパ穴の大径側に流れ、それがテーパ穴(潤滑剤貯留穴)の開口から流れ出て摺動部に供給される。この形態の潤滑装置は、回転体が回転している間は潤滑剤の供給が継続するので、テーパ穴のテーパ角を適切に設定して潤滑剤貯留穴内の潤滑剤に、遠心力による流動力が過剰に働かないようにするのがよい。
【0019】
なお、カップリング装置の潤滑では、回転体と相手部材(駆動軸と被駆動軸)が高速で回転すると回転体摺動部に供給された潤滑剤が遠心力で飛散して潤滑機能が損なわれる。
【0020】
これに対し、回転体の潤滑剤貯留穴が開口している側の端部外周にキャップを被せてそのキャップで潤滑対象の回転体摺動部を覆う構造は、キャップで飛散を防止して潤滑機能を維持することができ、使用時に遠心力が強く働く回転体摺動部用として適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の潤滑装置を採用したカップリング装置の一例を示す分解斜視図
【図2】図1のカップリング装置の断面図
【図3】回転体に設ける潤滑剤貯留穴と螺旋溝で構成される案内部の他の例を示す断面図
【図4】回転体に設ける潤滑剤貯留穴と螺旋の突条で構成される案内部の一例を示す断面図
【図5】回転体に設ける潤滑剤貯留穴とテーパの穴面で構成される案内部の一例を示す断面図
【図6】回転体に設ける潤滑剤貯留穴とテーパの穴面で構成される案内部の他の例を示す断面図
【図7】潤滑対象の回転体摺動部の他の例(回転摺動部)を示す断面図
【図8】潤滑対象の回転体摺動部のさらに他の例(ギヤの噛み合い部)を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の回転体摺動部の潤滑装置の実施の形態を、添付図面の図1〜図8に基づいて説明する。図1及び図2は、この発明の潤滑装置を、軸ずれ吸収機能を有するカップリング装置に適用した例を示している。
【0023】
図示のカップリング装置1は、回転体(駆動側回転体)2とその回転体2に連結される相手部材(被駆動側回転体)3と、キャップ4を組み合わせて構成されている。
【0024】
回転体2は、回転駆動源の出力軸(例えばモータの出力軸)に接続されるか又は一体に形成される。その回転体2の片端にクレビス溝5が設けられ、回転体2に連結される相手部材3には、クレビス溝5に嵌合させる1山のクレビス突起6が設けられている。
【0025】
回転体2と相手部材3は、前者のクレビス溝5に後者のクレビス突起6を摺動可能に嵌合させることで、トルク伝達がなされるように連結される。その両者のクレビス溝5とクレビス突起6の嵌合面が、潤滑対象の摺動部である。
【0026】
その摺動部の潤滑のために、図示のカップリング装置1においては、一端が回転体2の端面(連結側の端面)に開口する潤滑剤貯留穴7を回転体2に設け、さらに、その潤滑剤貯留穴7に、この穴の内部に注入された潤滑剤を回転体2の回転に伴って開口側に誘導する案内部8を設けている。
【0027】
潤滑剤貯留穴7は、回転体2の軸心と同心の穴が好ましいが、回転体2の軸心から偏心した穴でも発明の目的が達成される。この発明の潤滑装置10は、上記潤滑剤貯留穴7と案内部8によって構成される。
【0028】
潤滑剤貯留穴7は、奥端が塞がれた穴であって、回転体2の軸方向に延びている。この潤滑剤貯留穴7に潤滑剤(グリス)が注入され、その潤滑剤が案内部8の働きによってクレビス溝5とクレビス突起6が摺動する箇所(摺動部)に供給されるようになっている。
【0029】
図1、図2の潤滑装置10に採用された案内部8は、潤滑剤貯留穴7の内周面に設けた螺旋溝8aによって構成されている。その螺旋溝8aは、溝位置が回転体2の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴7の奥端側に変位する溝になっている(図2では、右側からの端面視において反時計回り方向に溝をたどっていったときに溝位置が潤滑剤貯留穴7の奥端側に移る)。
【0030】
この螺旋溝8aで構成された案内部8があると、回転体2が回転駆動開始されたときに、潤滑剤貯留穴7に注入された潤滑剤に対して、その潤滑剤を穴の外部に導く送り力が働く。
【0031】
それは、既に述べたように、螺旋溝の溝位置が回転体の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴内の奥端側に変位することと、潤滑剤が静止慣性によって元の位置に止まろうとすることによるものであり、これにより、潤滑剤が潤滑剤貯留穴から送り出されて摺動部に供給される。
【0032】
このときの潤滑装置の供給は、潤滑剤に対して慣性力が働く間だけであるので、回転体の回転の初期のみとなり、そのために、潤滑剤貯留穴から潤滑剤が供給される期間が長くなって摺動部の長寿命化が図られる。
【0033】
なお、図のように、摺動部の摺動面が回転体の外径側に解放しているカップリング装置の潤滑では、回転体が高速で回転するとクレビス溝とクレビス突起の嵌合部(すなわち両者の摺動部)に供給された潤滑剤が遠心力で飛散する。
【0034】
キャップ4は、その問題の対策として設けたものである。クレビス突起6を貫通させる開口4aを端壁に設けたそのキャップ4は、回転体2の連結側の端部外周に被せられて潤滑対象の摺動部を覆う。これにより、摺動部に供給された潤滑剤の飛散をこのキャップ4で防止して潤滑機能を維持することができる。
【0035】
なお、本実施例では、キャップ4に回転体2が圧入されることでキャップ4が回転体2に固定される。そのキャップ4は、潤滑剤の飛散を防止すべく回転体2の外周に被せられて潤滑対象の摺動部を覆っていればよい。つまり、相手部材3に固定されてもよい。
【0036】
上記キャップ4は、好ましい要素であるが必須ではない。摺動部に供給された潤滑剤が飛散する可能性が低ければ、省いても差し支えない。
【0037】
図3は、案内部8を構成する螺旋溝8aの変形例を示している。その螺旋溝8aは、図に示すように、リード角の小さな溝であってもよい。潤滑剤貯留穴7の内径、回転体2の回転速度、潤滑剤貯留穴7に注入する潤滑剤の粘性などを考慮して回転体2の回転の初期に適正量の潤滑剤が供給されるようにしておくとよい。その螺旋溝8aのリード角や溝深さなどを適切に設定することで、潤滑剤の適正量供給を実現することができる。
【0038】
図4は、潤滑剤貯留穴7の内部に螺旋の突条8bを設けてその螺旋の突条8bで潤滑剤を供給する案内部8を構成したものである。螺旋の突条8bは、ここでは、潤滑剤貯留穴7にコイル線材を圧入してそのコイル線材で形成している。この構造は、潤滑剤貯留穴7の内周面に突条を機械加工して設ける構造や螺旋溝を加工する構造よりも加工が容易である。
【0039】
このコイル線材などからなる螺旋の突条8bも螺旋の溝と同様の働きをする。従って、その螺旋の突条8bからなる案内部8を設置することで、潤滑剤貯留穴7内の潤滑剤を回転体の回転初期に摺動部に供給することができる。
【0040】
なお、上記螺旋溝8a又は螺旋の突条8bで形成される案内部8を設けた潤滑装置は、回転体2の回転終了時に潤滑剤貯留穴7内の潤滑剤に対して回転開始時とは反対方向(戻り方向)にその潤滑剤を移動させようとする慣性力が働く状況が考えられるが、潤滑剤貯留穴7が有底の穴であるので、そのような状況が起こっても潤滑剤は潤滑剤貯留穴7内に保持され、それが次の回転の初期に潤滑対象の摺動部に向けて再度送り出される。従って、回転終了時の減速度(負の角加速度)が如何なる大きさであっても、回転の初期に潤滑対象の摺動部に潤滑剤を供給できるように螺旋溝8aや螺旋の突条8bの形状(リード角や溝深さ等)を設定することで、摺動部への潤滑剤の供給が良好に行なわれることとなる。
このように、本発明装置による摺動部への潤滑剤供給は、潤滑の必要性が高い回転の初期に行われる。
【0041】
図5、図6は、潤滑剤貯留穴7を開口側の内径が奥端側の内径よりも大きくなるテーパ穴にし、そのテーパ穴の内周面7aで案内部8を形成した態様を示している。この構造での潤滑剤貯留穴7は、図5のように、穴の内周面の全域が同一テーパ角となった穴にしてもよいし、内周面のテーパ角が穴軸方向の途中で変化する図6のような複数テーパ角設定の穴にしてもよい。
【0042】
この形態の潤滑装置は、回転体の回転に伴ってテーパ穴の孔面に付着した潤滑剤が遠心力でテーパ穴の大径側に流れ、それにより、摺動部に対する潤滑剤供給の目的が達成される。なお、この形態では、回転体が回転している間は潤滑剤の供給が継続するので、遠心力による潤滑剤の流動力が過剰に働かないように、回転体の回転条件などを考慮してテーパ穴のテーパ角の設定を行なう。
【0043】
次に、この発明の潤滑装置を、カップリング装置以外の回転体摺動部に設置する例を図7、図8に示す。図7は、回転体(図のそれは駆動軸)2をハウジング9に固定されたブッシュ11で支持し、そのブッシュ11と当該ブッシュに挿入した回転体(駆動軸)2との間の回転摺動部を潤滑対象にして、回転体2に、上述した潤滑剤貯留穴7と案内部8とからなる潤滑装置10を設置したものである。
【0044】
この形態では、潤滑剤貯留穴7に注入された潤滑剤が回転体(駆動軸)2の回転に伴って回転摺動部に供給される。なお、ブッシュ11は回転しない。従って、供給された潤滑剤の飛散防止策は不要である。
【0045】
図8は、回転体(図のそれも駆動軸)2の端末部の外周に歯車12を設け{この歯車12は、回転体(駆動軸)2に固定されたものでもよい}、その歯車12を被回転体(図のそれは被駆動軸)3に装着された歯車13に噛み合わせたものであって、歯車12,13の歯の噛み合い部が潤滑対象の摺動部になっている。
【0046】
この形態でも、回転体(図のそれも駆動軸)2に対して上述した潤滑剤貯留穴7と案内部8とからなる潤滑装置10を設けており、その潤滑装置10の潤滑剤貯留穴7に注入された潤滑剤が回転体(駆動軸)2の回転に伴って潤滑剤貯留穴7から流出し、それが、歯の噛み合い部(摺動部)に供給されて噛み合い面の潤滑がなされる。
【0047】
このように、この発明の潤滑装置の用途は、カップリング装置の潤滑に限定されない。
この発明の潤滑装置は、例えば、自動車用ブレーキ液圧制御ユニットに適用される。より具体的には、そのブレーキ液圧制御ユニットに内蔵される液圧発生用ポンプとそのポンプを駆動する電動モータとを連結するカップリング装置や、ポンプ駆動軸や電動モータ軸の回転支持部など、摺動する箇所が適用対象になる。
【0048】
自動車用ブレーキ液圧制御ユニットは、自動車のエンジンコンパートメントなど、熱や振動の影響が大きい厳しい環境下で使用されながら、自動車の制動機能を担うと言う、非常に高い信頼性が求められる装置であり、本発明は、そうした状況下でブレーキ液圧制御ユニットの信頼性を極力高めるためになされたものである。また、このブレーキ液圧制御ユニットには、自動車における設置スペースの制限から、更なる小型化も併せて強く求められており、これに伴い、潤滑装置自体の設置スペースも制限される。本発明は、そうした要求にも応え得る有用性(小型かつ簡素)を備えたものである。
【0049】
なお、案内部8として上記螺旋溝8aや螺旋の突条8bを形成する態様については、回転体の回転に係る加速度(角加速度)について、その回転体の回転終了時の加速度(負の角加速度)の絶対値が回転開始時の加速度(正の角加速度)の絶対値よりも小さくなるように回転状態を規制する角加速度規制装置を備えた潤滑装置となし、これにより、回転開始時における潤滑剤の慣性力が回転終了時の慣性力よりも大きくなるようにすることで、摺動部への潤滑剤の供給を促進するようにしてもよい。この場合、本発明の潤滑装置を、回転体と相手部材を結合させるカップリング装置に設ける態様では、角加速度規制装置を、相手部材を介して回転体の回転状態を規制するものとしてもよいし、相手部材を介さずに回転体の回転状態を規制するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カップリング装置
2 回転体
3 相手部材
4 キャップ
4a 開口
5 クレビス溝
6 クレビス突起
7 潤滑剤貯留穴
7a テーパの内周面
8 案内部
8a 螺旋溝
8b 螺旋の突条
9 ハウジング
10 潤滑装置
11 ブッシュ
12,13 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体(2)の回転に伴ってその回転体に連結又は係合した相手部材(3)との間に、径方向、軸方向若しくは径方向と軸方向の滑りが生じる回転体摺動部の潤滑装置であって、
前記回転体(2)に、その回転体の軸方向に延びた潤滑剤貯留穴(7)を設け、その潤滑剤貯留穴(7)は、一端が前記回転体(2)の前記相手部材(3)側の端面に開口するとともに、奥端が塞がれた穴にし、この潤滑剤貯留穴(7)に、当該穴の内部に注入された潤滑剤を前記回転体(2)の回転に伴って開口側に誘導する案内部(8)を設けたことを特徴とする回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項2】
前記回転体(2)の前記潤滑剤貯留穴(7)が開口している側の端部外周にキャップ(4)を被せ、そのキャップ(4)で、前記回転体(2)と前記相手部材(3)の連結部又は係合部の外周を覆った請求項1に記載の回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項3】
前記潤滑剤貯留穴(7)の内周面に、溝位置が前記回転体(2)の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴(7)の奥端側に変位する螺旋溝(8a)を設け、その螺旋溝(8a)で前記案内部(8)を形成した請求項1又は2に記載の回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項4】
前記潤滑剤貯留穴(7)の内周面に螺旋の突条(8b)を設け、この螺旋の突条(8b)は、その突条(8b)自身の位置が前記回転体(2)の回転方向に移動するに従って潤滑剤貯留穴(7)の奥端側に変位するように形成し、その螺旋の突条(8b)で前記案内部(8)を形成した請求項1又は2に記載の回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項5】
前記潤滑剤貯留穴(7)に螺旋のコイル線材を圧入してそのコイル線材で前記螺旋の突条(8b)を形成した請求項4に記載の回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項6】
前記潤滑剤貯留穴(7)を、開口側の内径が奥端側の内径よりも大きくなるテーパ穴にしてそのテーパ穴の内周面(7a)で前記案内部(8)を形成した請求項1又は2に記載の回転体摺動部の潤滑装置。
【請求項7】
前記テーパ穴を、内周面(7a)のテーパ角が穴軸方向の途中で変化する複数テーパ角設定の穴にした請求項6に記載の回転体摺動部の潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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