説明

回転切断刃

【課題】 凹凸刃縁でありながら、盤体を板面方向(板厚を見る方向)から見たとき凹凸が左右に出入してなく凹凸が同一平面上で刃縁形成方向に一直線に並ぶように配されて、カミソリのような切り味でわら屑などを良好に細断できる回転切断刃を提供すること。
【解決手段】 盤体1の略全周縁部に頂部3Aと谷部3Bとが連続した凹凸刃縁3を形成した回転切断刃Hにおいて、この凹凸刃縁3を、盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部3Aと谷部3Bとが夫々左右に出入した刃縁とせず、頂部3Aと谷部3Bとが同一平面上に位置して盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部3Aと谷部3Bとが刃縁形成方向に一直線上に配される凹凸刃縁3に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクカッターなどに用いる回転切断刃の改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンバインなどに付属するディスクカッターKを使用して牧草やわら屑の切断が行われている。
【0003】
このディスクカッターKを簡単に説明すると、図1に示すように主軸5に数枚の円盤状の回転切断刃Hが一定の間隔で取り付けられ、主軸5と平行に設けられたロータ軸6にも数枚の円盤状の回転切断刃Hが間隔を置いて取り付けられていて、主軸5の並設する回転切断刃H間に、ロータ軸6の各回転切断刃Hが位置するように設けられると共に、図8に示すように主軸5の回転切断刃Hとロータ軸6の回転切断刃Hとは互いの刃縁が近接状態となるように配設されている。また、ロータ軸6には、回転切断刃Hと共に図示省略の送りロータが設けられており、回転するこの送りロータによって近接する回転切断刃Hの間に牧草やわら屑などの被切断物7が引き込まれると、この近接する回転切断刃Hによって被切断物7が細断される構成である(図5参照。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでディスクカッターKに用いられる回転切断刃Hは、単に盤体1(図面では円盤体1を図示している。)の湾曲周縁にわら屑などを切断する凹凸刃縁3を形成しているにすぎなかった。
【0005】
即ち、従来の凹凸刃縁3は、一山一山研削によって刃付することは困難なことから、簡単に凹凸刃縁3(ギザギザ刃)を形成すべく、盤形の板材の全周縁部の板面にプレスによって凹凸面を形成し、この凹凸面を板面に対して斜めにグライディング(研削)して板厚を先鋭にし刃縁を形成することで凹凸刃縁3を形成している(図7参照。)。
【0006】
つまり、円盤体1の全周部分にプレスによって凹凸面を形成し、焼き入れ後、この円盤体1全周縁部の板厚を先鋭とすべく、円盤体1の一側面側から円盤体1の板面に対して他側面側へグライディング面が傾斜するようにグライディングして刃付することで、円盤体1の全周縁部に先鋭な凹凸刃縁3が形成される構成としている。
【0007】
しかし、従来の回転切断刃Hは、安易にこのような手法で凹凸刃縁3を刃付するため、グライディングによって刃縁を先鋭にしたとしても、凹凸刃縁3の頂部3Aと谷部3Bとは、左右に出入することのない同一平面上に位置するように成形することができず、左右に出入した刃縁となってしまい(同一線上の刃縁とはならず)、切れ味は十分とは言えない。
【0008】
即ち、図7,図8に示すように、刃縁を真上から見たとき(円盤体1を板面方向(板厚を見る方向)から見たとき)、刃縁形成方向に対して頂部3Aと谷部3Bとは同一平面上にはなく、頂部3Aと谷部3Bとが夫々この刃縁形成方向に対して左右に出入して位置ズレした刃縁となるため、同一線刃先から形成されるカミソリのような切れ味は生じない。
【0009】
本発明は、回転切断刃の切断性能の重要性を改めて見い出し、簡単な手法にして凹凸刃縁でありながら、盤体を板面方向(板厚を見る方向)から見たとき凹凸が左右に出入してなく凹凸が同一平面上で刃縁形成方向に一直線に並ぶように配されて、カミソリのような切り味でわら屑などを良好に細断できる画期的な回転切断刃を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
盤体1の略全周縁部に頂部3Aと谷部3Bとが連続した凹凸刃縁3を形成した回転切断刃Hにおいて、この凹凸刃縁3を、盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部3Aと谷部3Bとが夫々左右に出入した刃縁とせず、頂部3Aと谷部3Bとが同一平面上に位置して盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部3Aと谷部3Bとが刃縁形成方向に一直線上に配される凹凸刃縁3に形成したことを特徴とする回転切断刃に係るものである。
【0012】
また、前記盤体1の略全周縁部を傾斜折曲すると共に、この傾斜折曲部分に凹凸面をプレス成形し、この盤体1の板面に沿って前記凹凸面を形成した傾斜折曲部4をグライディングして前記凹凸刃縁3を形成したことを特徴とする請求項1記載の回転切断刃に係るものである。
【0013】
また、前記傾斜折曲部4は、前記盤体1の表側方向若しくは裏側方向へ傾斜折曲する構成とし、前記盤体1の表面若しくは裏面に沿って傾斜折曲部4をグライディングすることで前記盤体1の略全周縁部に前記凹凸刃縁3を形成したことを特徴とする請求項2記載の回転切断刃に係るものである。
【0014】
また、前記盤体1の略全周縁部を表側方向若しくは裏側方向に傾斜折曲すると共にこの傾斜折曲部分に凹凸面をプレス成形して、表側若しくは裏側に傾斜折曲されていて凹凸面を有する前記傾斜折曲部4を形成し、この盤体1の表面若しくは裏面に沿ってこの盤体1の板面方向と略同方向に傾斜折曲部4をグライディングすることで盤体1の表面若しくは裏面の板面方向と略同方向の同一平面上に頂部3A及び谷部3Bが連続形成された前記凹凸刃縁3を形成したことを特徴とする請求項3記載の回転切断刃に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、簡単な手法にして凹凸刃縁でありながら、盤体を板面方向(板厚を見る方向)から見たとき凹凸が左右に出入してなく、凹凸即ち、頂部と谷部とは刃縁形成方向に一直線(刃縁形成方向は盤体の外縁に沿った方向であるため数学的には直線ではないが、この刃縁形成方向に対して左右に出入のないという意味での一直線である。)上(同一平面上)に位置するため、カミソリのような切り味で牧草やわら屑などの被切断物を良好に細断できることとなり、従ってこれまでの回転切断刃に比べて著しく切断抵抗が低下し切れ具合が良好となり、切り味の持続性が向上するためディスクカッターの動力負荷の軽減も図れることになるなど、極めて実用性に秀れた画期的な回転切断刃となる。
【0016】
また、請求項2,3,4記載の発明においては、一層簡易な手法で容易に本発明を実現できる。
【0017】
しかも、特に請求項4記載の発明においては、盤体の表面若しくは裏面の板面方向と略同方向の同一平面上に頂部及び谷部が連続形成された切り味の良い凹凸刃縁を実現できるため、回転切断刃をディスクカッターの主軸及びロータ軸にセットすると、この凹凸刃縁は主軸及びロータ軸の長さ方向に対して略直交する方向の同一平面上に頂部及び谷部が連続することになる。即ち、主軸及びロータ軸の回転により回転切断刃を回転せさると、凹凸刃縁の頂部と谷部は主軸及びロータ軸の長さ方向と略直交する同一平面上を常に回転移動することになるため、確実に上記したカミソリのような切り味で被切断物を極めて良好に細断できることになる極めて実用性に秀れた構成の回転切断刃となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
本発明では、簡単な手法にして凹凸刃縁3でありながら、盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て凹凸が左右に出入してなく、凹凸即ち、頂部3Aと谷部3Bとは刃縁形成方向に一直線(この種回転切断刃には、後述の実施例で示す円盤形以外にも色々な形状のもの(例えば、意匠登録第847212号,意匠登録第847216号,意匠登録第852577号,意匠登録第861505号等)があるが、形にかかわらず刃縁形成方向は盤体1の外縁に沿った方向である。そのため数学的に言うところの直線ではないが、この刃縁形成方向に対して左右に出入のないという意味で一直線という言葉を用いているものである。)上(同一平面上)に位置するため、カミソリのような切り味で牧草やわら屑等の被切断物7を良好に細断できることとなる。
【0020】
従って、これまでの回転切断刃Hに比べて著しく切れ具合が良好となるため、切断抵抗が少なく耐久性に秀れると共に、ディスクカッターKの動力負荷の軽減も図れることになるなど、極めて実用性に秀れた回転切断刃Hとなり、秀れたディスクカッターKを提供できることになる。
【0021】
しかも、グライディング(研削)は、盤体1の板面に沿って行うため、傾斜させてグライディングする場合に比べてこのグライディングを容易に行えることになる。
【0022】
また、盤体1の表面若しくは裏面に沿ってこの盤体1の板面方向と略同方向に傾斜折曲部4をグライディングするため、本発明品をディスクカッターKの主軸5及びロータ軸6にセットした際、グライディング面と主軸5及びロータ軸6の長さ方向とが略直交関係となる凹凸刃縁3が形成されることになる。
【0023】
即ち、主軸5及びロータ軸6の回転により本発明品を回転させると、凹凸刃縁3の頂部3Aと谷部3Bとは主軸5及びロータ軸6の長さ方向と略直交する同一平面上を常に回転移動することになるため、確実にカミソリのような切り味を発揮して被切断物7を極めて良好に細断できることになる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、ディスクカッターK用であって、円盤形状を呈する回転切断刃Hに適用している。
【0026】
具体的には、図2,図3に示すように、円盤体1の全周縁部に頂部3Aと谷部3Bとが連続した凹凸刃縁3を形成した回転切断刃Hであって、プレス加工によって円盤体1たる金属製の円形板材の全周部分を、例えば裏側(図3において右側)方向に傾斜折曲すると共に、このプレス時にこの傾斜折曲部分に凹凸面をプレス成形して傾斜折曲部4を形成する。
【0027】
即ち、円盤体1を成形型にセットし(図6(a)参照。)、型押しによって円盤体1の全周部を裏側(図6では上側)に傾斜折曲すると共に、円盤体1の全周縁部に凹凸面を形成して傾斜折曲部4を形成している(図6(b),(c)参照。)。
【0028】
そして、焼き入れ後、このプレス成形した傾斜折曲部4を、円盤体1の裏面に沿って傾斜折曲部4をグライディングすることで、円盤体1の裏面の板面方向と同方向の同一平面上に頂部3A及び谷部3Bが連続する前記凹凸刃縁3を形成している(図6(d)参照。)。
【0029】
従って、本実施例では、簡単な手法にして凹凸刃縁3でありながら、円盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て凹凸が左右に出入してなく、凹凸即ち、頂部3Aと谷部3Bとは、円盤体1の板面方向(板厚を見る方向)から見て刃縁形成方向に一直線(本実施例では円盤のため、刃縁形成方向は円方向であり数学的には直線ではなく、左右に出入のない円弧線)上に位置するため、カミソリのような切り味でわらを良好に細断できることとなる。
【0030】
また、従来のように傾斜させてグライディングするのではなく、円盤体1の凹凸刃縁3を形成する部分(全周部分)を裏側へ傾斜折曲させておき、この裏側に突出する全周部(傾斜折曲部4)を円盤体1の裏面に沿って円盤体1の全周縁部をグライディングするため、このグライディング作業を容易に行うことができる。
【0031】
また、本実施例では、円盤体1の裏面に沿ってこの円盤体1の板面方向と略同方向に傾斜折曲部4をグライディングする(円盤体1の板面と略平行なグライディング面を形成する)ことで円盤体1の裏面の板面方向と略同方向の同一平面上に頂部3A及び谷部3Bが一直線(左右に出入のないという意味で用いている。)に連続形成された前記凹凸刃縁3を形成している。
【0032】
即ち、本実施例では、ディスクカッターKの主軸5及びロータ軸6に回転切断刃Hをセットすると、図4に示すように、この主軸5,ロータ軸6の長さ方向と略直交する一直線上に凹凸刃縁3の頂部3A及び谷部3Bが連続することになる構成としている。
【0033】
従って、従来の回転切断刃Hでは、ディスクカッターKの主軸5とロータ軸6とにセットすると、図8に示すように凹凸刃縁3の頂部3Aと谷部3Bとがこの刃縁形成方向に対して左右に出入した状態となり、この左右に位置ズレした凹凸刃縁3を回転させて被切断物7を切断していたために、同一線刃先による切断が行われず切り味が不十分であったが、本実施例では、主軸5及びロータ軸6の回転によって回転切断刃Hを回転させた際に、凹凸刃縁3の頂部3Aと谷部3Bとが主軸5及びロータ軸6の長さ方向と略直交する一直線上(同一平面上)を常に回転移動することになるので、これにより確実に同一線刃先から得られるカミソリのような切り味を発揮して被切断物7を細断できる構成としている。
【0034】
図中符号8は、回転切断刃H(円盤体1)の中心部に設けた主軸5あるいはロータ軸6への連結孔である。
【0035】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0036】
また、本実施例では、円盤形を呈する回転切断刃Hに適用した場合を示したが、例えば、三角形や四角形や星形やその他の色々な形の回転切断刃Hにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ディスクカッターへの回転切断刃の使用状態を示す説明斜視図である。
【図2】本実施例を示す説明斜視図である。
【図3】本実施例を示す部分説明平面図である。
【図4】本実施例の使用状態を示す説明平面図である。
【図5】本実施例の使用状態を示す説明斜視図である。
【図6】本実施例の製作手順を示す説明断面図である。
【図7】従来例を示す部分説明平面図である。
【図8】従来例の使用状態を示す説明平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 盤体
3 凹凸刃縁
3A 頂部
3B 谷部
4 傾斜折曲部
H 回転切断刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤体の略全周縁部に頂部と谷部とが連続した凹凸刃縁を形成した回転切断刃において、この凹凸刃縁を、盤体の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部と谷部とが夫々左右に出入した刃縁とせず、頂部と谷部とが同一平面上に位置して盤体の板面方向(板厚を見る方向)から見て頂部と谷部とが刃縁形成方向に一直線上に配される凹凸刃縁に形成したことを特徴とする回転切断刃。
【請求項2】
前記盤体の略全周縁部を傾斜折曲すると共に、この傾斜折曲部分に凹凸面をプレス成形し、この盤体の板面に沿って前記凹凸面を形成した傾斜折曲部をグライディングして前記凹凸刃縁を形成したことを特徴とする請求項1記載の回転切断刃。
【請求項3】
前記傾斜折曲部は、前記盤体の表側方向若しくは裏側方向へ傾斜折曲する構成とし、前記盤体の表面若しくは裏面に沿って傾斜折曲部をグライディングすることで前記盤体の略全周縁部に前記凹凸刃縁を形成したことを特徴とする請求項2記載の回転切断刃。
【請求項4】
前記盤体の略全周縁部を表側方向若しくは裏側方向に傾斜折曲すると共にこの傾斜折曲部分に凹凸面をプレス成形して、表側若しくは裏側に傾斜折曲されていて凹凸面を有する前記傾斜折曲部を形成し、この盤体の表面若しくは裏面に沿ってこの盤体の板面方向と略同方向に傾斜折曲部をグライディングすることで盤体の表面若しくは裏面の板面方向と略同方向の同一平面上に頂部及び谷部が連続形成された前記凹凸刃縁を形成したことを特徴とする請求項3記載の回転切断刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−14641(P2006−14641A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194763(P2004−194763)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(593077250)ナシモト工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】